説明

蒸気滅菌器

【課題】被滅菌物をチャンバーに収容した状態で蓋を手動で閉じた初期閉蓋状態を、パッキンの圧縮代が減少した場合でも保つことができるようにして、真空引き不良となることを防止する。
【解決手段】チャンバー3内の真空引きの前に蓋側係止部とチャンバー側係止部31Bとの係止によって蓋4を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、閉蓋装置は蓋を閉じたときの環状パッキンによる蓋とチャンバーとの初期閉蓋状態が所期状態になるように、環状パッキンの圧縮代に応じて、チャンバー側係止部が蓋側係止部と係止する位置を調整可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として病院等に設置して医療用器具等の被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する
蒸気滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
前面開口の横型チャンバーを採用し、チャンバーの一側部にヒンジ部にて回動可能に支
持された蓋によって、チャンバーの前面開口を密閉する蒸気滅菌器において、蓋が閉じた
状態をロックするロック手段と、このロック状態検出スイッチを設け、この検出スイッチ
が検知していない場合は、滅菌動作が開始可能にならないようにしたものがある。(特許
文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、チャンバーの前面開口周辺部に円周状に配置され電動機によって
円周上で時計回り或いは反時計回りに回動するロック板を設け、蓋が閉じた状態を閉蓋検
出スイッチが検出したことにより、電動機によってロック板が一方向へ回動してロックバ
ーが固定側ロック部のロック孔と蓋側ロック部のロック孔に進入して蓋をロック状態に保
持し、ロック板がロック状態に回動したことをロック位置検出スイッチが検出したことに
より通電されて、ロック板をロック位置に保持するようプランジャを進出させるロック板
保持用ソレノイドを設け、プランジャの進出を検出するプランジャ検出スイッチの検出に
よって滅菌動作が開始可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−068911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のものは、上記のように、蓋は、ロック板により閉じた状態を保持され、且
つ、ロック板はロック板保持用ソレノイドによって回動したロック位置に保持されるため
、蓋が閉じた状態を二重の安全手段によって保持でき、蒸気滅菌器の安全確保に適したも
のである。また、ロック板がプランジャによって回動位置に保持されたことは、プランジ
ャ検出スイッチで検出されるため、このプランジャ検出スイッチが検知していない場合は
、滅菌動作が開始可能とならない。このため、蓋がチャンバーの前面開口を閉じ、その状
態が保持されていない限り滅菌動作の開始はないため、蒸気滅菌器の運転開始の安全性確
保に優れたものとなっている。
【0006】
このように特許文献1のものは、蓋が閉じた状態を二重の安全手段によって保持できる
優れた効果を発揮するが、構成が複雑であるため構成の簡素化が望まれる。
【0007】
また、このような前面開口の横型チャンバーを採用した蒸気滅菌器においては、チャン
バー内を高温蒸気状態とするために、チャンバー内を真空ポンプによって真空引きする。
そして、このチャンバー内の高温蒸気によって収容した被滅菌物の滅菌を行なうために、
チャンバーの前面開口と蓋との密閉を保つ環状パッキンが蓋の裏側に設けられる。被滅菌
物をチャンバーに収容した状態で、この環状パッキンがチャンバーの開口周縁部に当接す
るように蓋を手動で閉じたとき、蓋をその状態に保持する閉蓋機構が備えられており、こ
れによってその閉蓋状態からチャンバー内を真空ポンプによって真空引きすることによっ
て、蓋がチャンバーの前面開口へ引き寄せられ、この環状パッキンが十分に圧縮された密
閉状態となる。
【0008】
蒸気滅菌器の使用の当初は、環状パッキンのヘタリが無く圧縮代が十分大きいため、蓋
を手動で閉じたときの環状パッキンによる、蓋とチャンバー間の密閉は十分である。しか
し、環状パッキンは製造においてその圧縮代が略同じでも、蒸気滅菌器の使用による経年
変化によって、環状パッキンのヘタリが生じ、その圧縮代が少なくなり(弾力性が低下し
)、蓋を手動で閉じたときの蓋とチャンバーとの間の密閉効果が低下し、蓋とチャンバー
との間に僅かな隙間が生じる虞がある。この密閉不良の状態でチャンバー内を真空ポンプ
によって真空引きしても、所期のチャンバー内の真空度が得られず、所期の滅菌動作が行
なえない状況が懸念される。このような場合、新品の環状パッキンと交換することとなる

【0009】
本発明では、環状パッキンの圧縮代が少なくなった場合でも、直ちに環状パッキンを新
品と交換することなく、継続使用のまま蓋によるチャンバーの正規の密閉効果が得られる
ようにするための技術を提供するものである。また本発明は、パッキンが十分に圧縮され
た正規閉蓋状態を、特許文献1のものに比して簡素化された構成のロック手段によって保
持できる技術を提供する。
【0010】
本発明では、特に、蓋を手動で閉じたとき蓋をその状態に保持する閉蓋機構を調整可能
な構成とすることにより、環状パッキンの圧縮代が少なくなったときにはその調整によっ
て、蓋を手動で閉じたときの環状パッキンの圧縮が所期の状態となるようにすることによ
り、その後行われる真空引きによるチャンバー内の真空度が、所定の状態となるようにで
きる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明は、滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの
前面開口を閉じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記
チャンバーの前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー
内を真空引きする真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャン
バー側係止部との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記
チャンバー内に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記閉蓋装置は、前記蓋を閉じたときの前記環状パッキンによる前記蓋とチャンバーと
の初期閉蓋状態が所期状態になるように、前記環状パッキンの圧縮代に応じて、前記チャ
ンバー側係止部が蓋側係止部と係止する位置を調整可能としたことを特徴とする。
【0012】
第2発明は、滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの
前面開口を閉じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記
チャンバーの前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー
内を真空引きする真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャン
バー側係止部との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記
チャンバー内に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記蓋側係止部は、前記蓋側から前記チャンバー側へ向けて突出し前記蓋を閉じるとき
前記チャンバー側係止部に係止し、前記蓋を開くとき前記チャンバー側係止部から脱する
作動アームを備え、
前記環状パッキンの圧縮代に応じて、前記チャンバー側係止部に対する前記作動アーム
の係止状態が所期状態になるように、前記チャンバー側係止部の取り付け位置が前後に調
整可能としたことを特徴とする。
【0013】
第3発明は、滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの
前面開口を閉じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記
チャンバーの前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー
内を真空引きする真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャン
バー側係止部との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記
チャンバー内に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記蓋を前記チャンバー内が真空引きされた正規閉蓋状態に保持する閉蓋保持装置を備
え、
前記閉蓋保持装置は、前記蓋側ロック部材及び前記チャンバー側ロック部材の両方に係
止する係止状態にて前記蓋を正規閉蓋状態に保持するロックピンと、前記ロックピンを取
り付けたロック作動部材と、前記ロック作動部材を上下動するようにモータによって上下
動するモータ側作動部材を備え、
前記ロック作動部材に対して前記モータ側作動部材は、前記ロック作動部材を押し上げ
作用はするが引っ張り下降作用は行なわない当接関係にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明では、環状パッキンの圧縮代が減少していない正常状態では、チャンバー側係
止部が前方位置である正規の位置にセットされ、環状パッキンの圧縮代が減少した状態で
は、チャンバー側係止部が正規の位置よりも後方位置である調整位置にセットされるため
、環状パッキンの圧縮代が減少した場合においても、蓋を閉じたときの環状パッキンによ
る蓋とチャンバーとの閉蓋状態を所期の正規状態に保つことができる。このため、環状パ
ッキンの圧縮代が減少していない正常状態及び減少した状態のいずれにおいても、チャン
バー内を真空引きした場合には、所期の真空が得られ、滅菌動作への正常な移行が可能と
なる。それゆえ、環状パッキンの圧縮代が減少した場合、直ちに環状パッキンを新品と交
換することなく、継続使用のまま所期の真空が得られ、滅菌動作への正常な移行が可能と
なる。
【0015】
第2発明では、環状パッキンの圧縮代が減少していない正常状態では、チャンバー側係
止部が前方位置である正規の位置にセットされ、環状パッキンの圧縮代が減少した状態で
は、チャンバー側係止部が正規の位置よりも後方位置である調整位置にセットされるため
、環状パッキンの圧縮代が減少した場合においても、蓋を閉じたときのチャンバー側係止
部に対する作動アームの係止状態が、環状パッキンの圧縮代が減少していない正常状態と
同様の状態に調整され、環状パッキンによる蓋とチャンバーとの閉蓋状態を所期の正規状
態に保つことができる。このため、環状パッキンの圧縮代が減少していない正常状態及び
減少した状態のいずれにおいても、チャンバー内を真空引きした場合には、所期の真空が
得られ、滅菌動作への正常な移行が可能となる。それゆえ、環状パッキンの圧縮代が減少
した場合、直ちに環状パッキンを新品と交換することなく、継続使用のまま所期の真空が
得られ、滅菌動作への正常な移行が可能となる。
【0016】
第3発明は、第1発明または第2発明の効果の他に、ロック作動部材に対してモータ側
作動部材は、当接関係であって連結状態にないため、チャンバー側係止部の位置調整がロ
ック作動部材の上下動作に悪影響を及ぼさない構成となり、環状パッキンの圧縮代が減少
した状態でのチャンバー側係止部の位置調整がし易い構成となる。また、閉蓋保持装置の
組み立て及び各部の調整もし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る蒸気滅菌器の前面下部のドアを開いた状態の正面斜視図である。
【図2】本発明に係る蒸気滅菌器の蓋が開いた部分の正面斜視図である。
【図3】本発明に係る蒸気滅菌器の初期閉蓋状態での各部の構成を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る蒸気滅菌器の正規閉蓋状態でのロックピン部分の状態を説明する横断平面図である。
【図5】本発明に係る蒸気滅菌器の正規閉蓋状態での各部の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る蒸気滅菌器のロック装置に係る二本のガイドピンが挿通されるガイドパイプ保持部材の斜視図である。
【図7】本発明に係る蒸気滅菌器の正規閉蓋状態でのロックピン及びガイドピン部分の状態を説明する側面図である。
【図8】本発明に係る蒸気滅菌器のロック装置に係る二本のガイドピンと挿通されるガイドパイプ保持部材の関係を示す縦断側面図である。
【図9】本発明に係る蒸気滅菌器において、(イ)は環状パッキンが正常状態の場合のチャンバー側係止部が前方位置である正規の位置にセットした取り付け状態の説明図、(ロ)は環状パッキン6の圧縮代が減少した場合のチャンバー側係止部が正規の位置よりも後方位置である調整位置にセットした取り付け状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの前
面開口を閉じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記チ
ャンバーの前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー内
を真空引きする真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャンバ
ー側係止部との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記チ
ャンバー内に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記閉蓋装置は、前記蓋を閉じたときの前記環状パッキンによる前記蓋とチャンバーと
の初期閉蓋状態が所期状態になるように、前記環状パッキンの圧縮代に応じて、前記チャ
ンバー側係止部が蓋側係止部と係止する位置を調整可能としたものであり、以下に本発明
の実施例を記載する。
【実施例1】
【0019】
本発明の実施形態を図に基づき説明する。1は本発明の蒸気滅菌器である。蒸気滅菌器
1は、外装ケース1Aで覆われた構成であり、外装ケース1Aの内部には、立法形または
縦長直方形に骨組みされた基礎台2の水平基板2Aに、前面開口3Aの円筒状の横型チャ
ンバー3が固定状態に取り付けられ、チャンバー3の円形状の前面開口3Aを密閉状態に
保持する蓋4が、チャンバー3の一側部(図では右側)においてヒンジ部5にて開閉回動
可能に支持されている。
【0020】
チャンバー3内に被滅菌物を収納し、蓋4がチャンバー3の前面開口3Aを密閉した状
態において、蒸気滅菌器1を運転して、チャンバー3内を高温状態とし、被滅菌物の滅菌
が行なわれる。蓋4によってチャンバー3の前面開口3Aを良好な密閉状態とするために
、パッキン6がチャンバー3または蓋4に設けられる。図示のものは、蓋4の裏側周縁に
環状パッキン6を備え、この環状パッキン6がチャンバー3の前面開口3Aの環状フラン
ジ3A1に密着する構成である。
【0021】
滅菌動作を行なうためには、被滅菌物の種類に応じた滅菌コースの選択、滅菌温度や滅
菌時間の設定、その他の設定等を行なうが、このような選択・設定及びこれらに係る表示
のための操作パネル部PAが、外装ケース1Aの前面上部に設けられている。
【0022】
基礎台2内には、外装ケース1Aの前面下部のドア1Dを開いた部分に、チャンバー3
内での滅菌のために使用する所定量の加熱用水を溜めたポリプロピレン製で内容量が約2
0リットル程度の注排水タンク8と、真空ポンプ7の水封及び冷却用の水を溜める内容量
が約20リットル程度の冷却タンク9が、引き出し自在に収容され、その奥側にはチャン
バー3内を真空引きする真空ポンプ7等を収容している。10は注排水タンク8及び冷却
タンク9の出し入れ用のスロープ板であり、使用時に引き出せるように、基礎台2の下部
に収容可能に設けられている。蒸気滅菌器1の移動のために、基礎台2の底部4隅部にキ
ャスタ11が設けられている。
【0023】
本発明の蒸気滅菌器1は、蓋4を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置P1と、蓋4の初期
閉蓋状態を検出する閉蓋検出装置S1と、蓋4を正規閉蓋状態に保持する閉蓋保持装置P
2と、チャンバー3内を真空引きする真空ポンプ7と、チャンバー3内の圧力を検出する
圧力スイッチ12とを備え、閉蓋装置P1は、蓋4側からチャンバー3側へ向けて突出し
た作動アーム31Aと、前記作動アーム31Aが係脱するよう前記チャンバー3側に設け
た係止部31Bを備え、閉蓋検出装置S1は、作動アーム31Aが係止部31Bに係止し
た閉蓋状態を検出する第1検出スイッチSW1と、作動アーム31Aとは別個に蓋4側か
らチャンバー3側へ向けて突出するよう設けられた作動部32によって閉蓋状態を検出す
る第2検出スイッチSW2を備え、閉蓋保持装置P2は、蓋4側のロック部材33及びチ
ャンバー3側のロック部材34の両方に係止する係止状態にて、蓋4を正規閉蓋状態に保
持するロックピン35と、ロックピン35を前記係止状態と非係止状態とに作動するモー
タ36を備え、第1検出スイッチSW1と第2検出スイッチSW2の両方が閉蓋状態を検
出した状態で真空ポンプ7が作動し、真空ポンプ7によるチャンバー3内の圧力が所定の
低圧に達したことを圧力スイッチ12が検出したとき、モータ36の回転動作に伴ってロ
ックピン35が前記係止状態となるものである。
【0024】
チャンバー3内に収容した被滅菌物の滅菌処理を行なう場合は、蓋4が確実に閉じた状
態にしなければ危険である。本発明では、蓋4が閉じた状態を二重の安全手段によって保
持できるロック装置は、閉蓋装置P1、閉蓋検出装置S1、及び閉蓋保持装置P2を備え
ている。
【0025】
蓋4の開閉は取っ手部30によって行なう。取っ手部30は、蓋4の前面に溶接等にて
固定した蓋支持体30Bの左端側に設けられ、蓋支持体30Bの右端側がヒンジ部5にて
開閉回動可能に支持され、それによって、蓋4が左右に開閉可能である。
【0026】
閉蓋装置P1は、蓋4側には、蓋側係止部として、蓋支持体30Bの左端側からチャン
バー3側へ向けて突出した作動アーム31Aが、蓋支持体30Bに溶接等にて取り付けら
れている。またチャンバー3側には、チャンバー側係止部として、作動アーム31Aの先
端係止部31A1が係脱する棒状のチャンバー側係止部31Bを設けている。チャンバー
側係止部31Bは、通常状態では、蓋4が閉じるときの作動アーム31Aの先端が衝突す
る上方位置を保つように、コイルバネSPの引っ張りにて保持されている。
【0027】
この構成において、蓋4が閉じるとき、上部作動アーム31Aの先端が外装ケース1A
の前面の孔1A1から進入して、チャンバー側係止部31Bを押すことに伴って、チャン
バー側係止部31BがコイルバネSPに抗して下方へ移動し、作動アーム31Aの先端が
チャンバー側係止部31Bを乗り越えたとき、チャンバー側係止部31BがコイルバネS
Pの引っ張りにて上方へ復帰することにより、作動アーム31Aの先端係止部31A1が
チャンバー側係止部31Bに係止する構成である。
【0028】
チャンバー側係止部31BとコイルバネSPは、閉蓋保持装置P2のモータ36の支持
基板37に取り付けられており、チャンバー側係止部31Bは、支持基板37に軸38で
回動可能に支持された回動板39に取り付けられ、コイルバネSPは、その一端が回動板
39に取り付けられ他端が支持基板37に取り付けられている。支持基板37の取り付け
構成は後述する。
【0029】
また、チャンバー側係止部31Bを固定とし、作動アーム31Aがバネによって付勢さ
れて、上記同様に、作動アーム31Aの先端係止部31A1がチャンバー側係止部31B
に係止する構成としたものであってもよい。いずれにしても、チャンバー側係止部31B
または作動アーム31Aがバネによって付勢されていて、蓋4を閉じることによって、そ
のバネ力に抗して作動アーム31Aがチャンバー側係止部31Bを乗り越えた後、そのバ
ネ力にて作動アーム31Aがチャンバー側係止部31Bに係止する構成であればよい。
【0030】
なお、蓋4を開く方向へ取っ手部30を強く引っ張ることによって、コイルバネSP力
に抗して作動アーム31Aがチャンバー側係止部31Bを乗り越えた後、作動アーム31
Aがチャンバー側係止部31Bの係止から開放され、蓋4を開くことができる。
【0031】
閉蓋検出装置S1は、第1検出スイッチSW1と第2検出スイッチSW2を備えており
、作動アーム31Aが係止部31Bに係止した状態(閉蓋状態)を検出する第1検出スイ
ッチSW1は、支持基板37に取り付けたバネ性の補助作動板40を介して作動アーム3
1Aの前進及び後退によってスイッチ動作をする構成である。このため、上記のように、
蓋4を閉じることによって、作動アーム31Aが前進し、チャンバー側係止部31Bを乗
り越えた後、作動アーム31Aの先端係止部31A1がチャンバー側係止部31Bに係止
する動作に伴って、作動アーム31Aの先端が補助作動板40の下方に延びたバネ性作動
辺40Aを押すことにより、第1検出スイッチSW1の作動辺SW11が押され、第1検
出スイッチSW1がONとなる。なお、第1検出スイッチSW1を押す動作安定のために
設けた補助作動板40を省略して、作動アーム31Aの先端が第1検出スイッチSW1の
作動辺SW11を直接押す構成でもよい。
【0032】
また、蓋4側からチャンバー3側へ向けて突出するよう設けられた作動部32によって
閉蓋状態を検出する第2検出スイッチSW2は、チャンバー3の側面部に取り付けられて
いる。チャンバー3側のロック部材34を構成する上ロック辺34Aと下ロック辺34B
が、上下位置に間隔を存して水平配置状態となるように、チャンバー3の側面部に溶接に
て固定されている。第2検出スイッチSW2は、下ロック辺34Bの下面に取り付け具4
2によって取り付けられている。第2検出スイッチSW2は第1検出スイッチSW1と同
様の構成である。この構成において、上記のように、蓋4が閉じるとき、作動部32の先
端が外装ケース1Aの前面の孔1A2から進入して、第2検出スイッチSW2の作動辺が
押され、第2検出スイッチSW2がONとなる。
【0033】
閉蓋保持装置P2は、蓋4側のロック部材33、チャンバー3側のロック部材34、ロ
ックピン35及びモータ36を備えており、蓋4側のロック部材33は、蓋支持体30B
の左端側に固定されてチャンバー3側へ向けて突出した四角枠状をなし、その先端部に調
整ネジ43を備えている。蓋4が閉じるとき、ロック部材33が外装ケース1Aの前面の
孔1A3から進入して、チャンバー3側の上ロック辺34Aと下ロック辺34Bの間に進
入する関係である。ロックピン35は、後述のようにモータ36の回転に伴って垂直方向
に上下動するロック作動部材44に固定されている。
【0034】
ロック部材33、上ロック辺34A、及び下ロック辺34Bには、ロックピン35が上
下作動するロック孔45、46、及び47をそれぞれ形成している。ロック孔46及び4
7は上下対向位置であり、ロックピン35の外径よりも若干大きい直径に形成され、ロッ
ク孔45は、実施例では四角形状の孔で形成し、前後左右の長さL1、L2がロックピン
35の外径よりも若干大きく、且つロック孔46及び47の直径よりも若干大きい寸法に
形成している。なお、ロック孔45は円形孔でもよく、その場合も、ロックピン35の外
径よりも若干大きく、且つロック孔46及び47の直径よりも若干大きい寸法に形成する
。このような寸法関係は、ロックピン35が上ロック辺34A、ロック部材33及び下ロ
ック辺34Bを挿通したロック状態となるように、上下動がスムースに行なえるためであ
る。
【0035】
モータ36の回転によってロックピン35が上下動する構成として、支持基板37に取
り付けたモータ36と、モータ36の回転によって回転する円形状のカム板48と、カム
板48の円周部に下端が回動可能に支持された第1作動部材49と、第1作動部材49の
上端に回動可能に連結され、モータ36の支持基板37に取り付けた支持部51に上下動
可能に支持された第2作動部材50と、第2作動部材50の上端に当接するロック作動部
材44を備えている。第1作動部材49及び第2作動部材50は、モータ側作動部材であ
る。
【0036】
ロック作動部材44は、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bを上下から挟む関係と
なるように、上辺44Aと下辺44Bと連結辺44Cにて略コ字状をなし、上辺44Aの
先端部にロックピン35が下方へ向けて垂直状態に固定されている。また、上辺44Aと
下辺44Bには、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bを貫通する二本のガイドピン5
2A、52Bが垂直状態に固定されており、二本のガイドピン52A、52Bによって、
上下動が円滑に行なえる構成である。また、第2作動部材50の上端は、ロック作動部材
44の下辺44Bの下面に当接する関係であり、後述のように、モータ36の回転によっ
て第2作動部材50が下降することによって、ロック作動部材44は自重にて下降する仕
組みである。
【0037】
上ロック辺34A及び下ロック辺34Bには、ガイドピン52A、52Bが貫通する孔
53A、53Bを形成している。上下の孔53A及び上下の孔53Bによって、ガイドピ
ン52A、52Bの上下動が保持されるようにするために、孔53A、53Bの直径と、
ガイドピン52A、52Bの直径を同等にして、孔53A、53Bによってガイドピン5
2A、52Bが、殆んどガタツキが無い状態で上下動可能に保持される構成であれば、モ
ータ36の回転によってロックピン35が安定して上下動することができる。
【0038】
しかし、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bは、蓋4がチャンバー3の前面開口3
Aを密閉状態に保持するための十分な強度を保つために、チャンバー3の側面部に溶接に
て固定される。この溶接作業において、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bの取り付
け位置に若干の誤差が生じることがある。孔53A、53Bの直径と、ガイドピン52A
、52Bの直径が同等である場合には、この誤差が生じた場合には、孔53Aと53Bの
対応位置にズレが生じ、孔53A、53B内をガイドピン52A、52Bが上下動できな
いようになる。この溶接作業によって生じる孔53Aと53Bの対応位置のズレに対処す
るために、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bの孔53Aの一方または両方を大きく
し、また上ロック辺34A及び下ロック辺34Bの孔53Bの一方または両方を大きくす
る方法がある。このようにした場合は、蒸気滅菌器1ごとに上下の孔53Aとガイドピン
52Aとの対応、及び上下の53Bとガイドピン52Bとの対応が異なり、孔53A、5
3Bとガイドピン52A、52Bとの間にガタツキが生じて、孔53A、53B内をガイ
ドピン52A、52Bが安定した状態で上下動できないようになることが懸念される。
【0039】
本発明では、このような点に鑑み、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bがチャンバ
ー3の側面部に溶接にて固定される構成であっても、孔53Aとガイドピン52A、孔5
3Bとガイドピン52Bとの間にガタツキが生じない安定状態でもって、ガイドピン52
A、52Bの上下動が達成できる構成としている。
【0040】
このため、図8に示すように、孔53A、53Bはガイドピン52A、52Bの直径よ
りも十分大きい寸法とし、上ロック辺34A及び下ロック辺34Bの間に、ガイドピン5
2A、52Bの直径と同等の貫通孔55A、55Bのガイドパイプ54A、54Bを取り
付ける。このガイドパイプ54A、54Bは、図6に示すように、それぞれガイドピン5
2A、52Bが挿通された状態で、ガイドパイプ保持部材56の上辺56Aと下辺56B
に亘って取り付けられる。この取り付けは、図3、図7及び図8に示すように、上ロック
辺34Aと下ロック辺34Bとの間にガイドパイプ54A、54Bが配置されて、孔53
Aの範囲内に貫通孔55A全体が入り、孔53Bの範囲内に貫通孔55B全体が入る状態
で、保持部材56をロック部材34にネジ57によって取り付けている。実施例では、ガ
イドパイプ保持部材56を下ロック辺34Bにネジ57によって取り付けている。
【0041】
ガイドパイプ保持部材56をロック部材34にネジ57によって取り付ける場合、ガイ
ドパイプ54A、54B内でのガイドピン52A、52Bの上下動、及びロックピン35
の上下動がスムースになる位置で、ネジ57を締めつけ固定する。第2作動部材50の上
端にロック作動部材44が連結されず当接した構成であるため、ガイドパイプ保持部材5
6のこの取り付けは、モータ36の回転によって第2作動部材50が上下動する機構に影
響を与えないので、調整がし易くなる。
【0042】
ロックピン35が下降したロック状態(ロック位置ともいう)を検出する第3検出スイ
ッチSW3が支持基板37の上部に取り付けられている。モータ36の回転によってロッ
クピン35がロック位置に下降したとき、第3検出スイッチSW3の作動辺SW31がロ
ック作動部材44の上辺44Aによって押されて、第3検出スイッチSW3がONする。
また、モータ36の回転によってロックピン35が非ロック位置へ上昇したとき、ロック
作動部材44の上辺44Aによる第3検出スイッチSW3の作動辺SW31の押しが解除
され、第3検出スイッチSW3がOFFする仕組みである。上記ロック位置は、蓋4側の
ロック部材33がロックピン35によって蓋4が閉じた状態に保持される状態であり、上
記非ロック位置は、ロックピン35が蓋4側のロック部材33から外れて、取っ手部30
を引っ張ることにより、蓋4を開くことができる状態である。
【0043】
チャンバー3内に収容した被滅菌物を滅菌する滅菌モードについて説明する。先ず、蒸
気滅菌器1を運転可能状態とするために、電源スイッチ60をON状態にする。この状態
で、図3のように、カム板48のカム部である窪み48Aに第4検出スイッチSW4の作
動辺SW41が進入して第4検出スイッチSW4がOFFしている場合は、モータ36が
停止しており、第1作動部材49及び第2作動部材50を介してロック作動部材44が上
昇位置に支持されており、ロックピン35が上昇した非ロック位置である。この状態は、
ロックピン35の下端が、上ロック辺34Aと下ロック辺34Bとの間の空間へ突出して
いない状態であり、スタンバイ状態と称する。
【0044】
もし、電源スイッチ60がONしたとき、このスタンバイ状態にない場合は、第4検出
スイッチSW4の作動辺SW41が窪み48Aから外れてカム板48の円周部に当節して
おり、第4検出スイッチSW4がONしているため、制御部の動作によってモータ36が
始動し、カム板48が回転し、図3のように、窪み48Aに第4検出スイッチSW4の作
動辺SW41が進入して第4検出スイッチSW4がOFFしたとき、モータ36が停止し
、蒸気滅菌器1はスタンバイ状態となる。このスタンバイ状態は、操作パネル部PAに設
けた表示部65にLEDの点灯にて表示される。
【0045】
このスタンバイ状態において、被滅菌物をチャンバ3内に入れ、手動で蓋4を閉じる。
蓋4を閉じることによって、作動アーム31Aがチャンバー側係止部31Bに係止して第
1検出スイッチSW1がONし、また、作動部32によって第2検出スイッチSW2がO
Nとなる。この状態で表示部65のLEDがっ消灯する。更に、蓋4側のロック部材33
が、上ロック辺34Aと下ロック辺34Bの間進入した状態である。作動アーム31Aが
チャンバー側係止部31Bに係止した状態は、環状パッキン6がチャンバー3の前面開口
3Aの環状フランジ3A1に当接して若干押された閉蓋状態であり、初期閉蓋状態または
仮閉蓋状態と称することができる。これは、環状パッキン6が十分圧縮されてチャンバー
3の前面開口3Aが所期の完全密閉状態となる正規閉蓋状態に達する前の段階である。
【0046】
この初期閉蓋状態または仮閉蓋状態において、操作パネル部PAに設けた滅菌条件設定
スイッチ61によって、滅菌条件を設定した後、操作パネル部PAに設けたスタートスイ
ッチ62をON操作することにより、滅菌モードが指令される。設定した滅菌条件の温度
及び時間は、操作パネル部PAに設けた上下の表示部63にそれぞれ表示される。
【0047】
滅菌モードは、第1検出スイッチSW1及び第2検出スイッチSW2がONになってい
るとき、スタートスイッチ62がONしたときにスタートし、制御部の動作によって進行
する。滅菌モードのスタートによって、真空ポンプ7がON(通電にて運転)してチャン
バー3内が真空引きされ、チャンバー3内が所定の低圧状態に保たれる。滅菌モードの進
行状況は、操作パネル部PAに設けたプロセスモニタ64に順次表示されるので、それに
よって現在の進行状況を視認できる。
【0048】
上記のように、チャンバー3内が真空引きによって低圧になることに伴って、蓋4が環
状パッキン6を圧縮させつつチャンバー3側へ引っ張られ、チャンバー3の密閉状態が進
行する。このようにして、チャンバー3内が真空引きによってチャンバー3内が低圧とな
り、例えば0.07MPaのような所定の低圧に達したことを圧力スイッチ12が検出し
たときモータ36が始動し、その回転動作に伴ってカム板48が回転し、第1作動部材4
9及び第2作動部材50が下降する。この場合、調整ネジ43が存在しない場合は、ロッ
クピン35が蓋4側のロック部材33の先端部分の上に当接している間は、ロック作動部
材44の下降が阻止される。また、調整ネジ43を設けた場合は、ロックピン35が蓋4
側のロック部材33の先端部分から外れてロック孔45へ入り、調整ネジ43の上に当接
している間は、ロック作動部材44の下降が阻止される。そして、更に0.07MPaを
超えて所定の低圧を圧力スイッチ12が検出するまで真空引きを行なうことによって、環
状パッキン6の圧縮が進むことにより、ロック部材33と共に調整ネジ43がチャンバー
3側へ移動するため、上記のようなロック部材33の先端部分または調整ネジ43による
ロックピン35の下降阻止状態は解除され、ロック作動部材44及びロックピン35等の
自重によってロック作動部材44及びロックピン35が下降する。
【0049】
この下降動作は、ガイドパイプ54A、54Bに案内されてガイドピン52A、52B
が下降し、それに伴ってロックピン35が調整ネジ43の先端側を下降し、ロック孔45
、46、及び47に嵌った状態となり、ロックピン35によって蓋4側のロック部材33
がロックされた状態、即ち、図5に示すように、また図7の実線のように、蓋4が開くこ
とが阻止されたロック状態に保持される。この状態は、図4に示すように、調整ネジ43
の先端がロックピン35の側面に当接または近接した状態であり、少なくとも調整ネジ4
3の先端がロックピン35の側面に当接した位置で、蓋4が開くことが阻止される正規閉
蓋状態である。このような正規閉蓋状態となるように、製造段階で調整ネジ43の突出長
さが予め調整されている。
【0050】
このロック状態において、第3検出スイッチSW3の作動辺SW31がロック作動部材
44の上辺44Aによって押されるため、第3検出スイッチSW3がONし、モータ36
が停止し、真空ポンプ7がOFF(通電OFF)して真空引きが停止され、所定の低圧を
圧力スイッチ12が検出した状態において、制御部の動作によって、次の工程に移行し、
121℃〜134℃のように所定の高温蒸気の雰囲気のもとで、被滅菌物の滅菌工程が行
われる。所定の滅菌工程の終了によって、チャンバー3内の高温蒸気が排気された後、チ
ャンバー3内を電気ヒータで加熱する乾燥工程を経て、滅菌モードが終了する。
【0051】
滅菌モードの終了によって、チャンバー3内の圧力が蓋4を手動で開くことができる程
度の所定圧力に上昇していることを圧力スイッチ12が検出したとき、制御部の動作によ
ってモータ36が始動し、カム板48が回転し、第1作動部材49及び第2作動部材50
が上昇して、ロック作動部材44を上昇させる。この上昇は、ガイドパイプ54A、54
Bに案内されてガイドピン52A、52Bが下降し、それに伴ってロックピン35がロッ
ク孔47及び45から外れた状態となり、ロックピン35による蓋4側のロック部材33
のロックが解除された非ロック状態となる。
【0052】
このようにして非ロック状態となったとき、図3のように、窪み48Aに第4検出スイッ
チSW4の作動辺SW41が進入して第4検出スイッチSW4がOFFするため、モータ
36が停止し、蒸気滅菌器1は、次の滅菌モードの開始を待つスタンバイ状態となる。こ
のスタンバイ状態は、操作パネル部PAに設けた表示部65にLEDの点灯にて表示され
る。
【0053】
このため、蓋4を開く方向へ取っ手部30を強く引っ張ることによって、コイルバネS
P力に抗して作動アーム31Aがチャンバー側係止部31Bを乗り越えた後、作動アーム
31Aがチャンバー側係止部31Bの係止から開放され、蓋4がチャンバー3の前面開口
3Aを開放するため、被滅菌物を取り出せる状態となる。
【0054】
上記のように、チャンバー側ロック部材34と蓋側ロック部材33とに進入して蓋を正
規閉蓋状態に保持するロックピン35がロック作動部材44に取り付けられ、モータ36
の回転動作によって上下動するロック作動部材44は、ロック作動部材44に取り付けた
二本のガイドピン52A、52Bが、チャンバー側ロック部材34に取り付けたガイドパ
イプ54A、54B内を上下摺動する関係によって、チャンバー側ロック部材34の取り
付け状態に誤差があっても、安定した上下動が達成できるものとなる。
【0055】
また、ロックピン35が正規閉蓋状態となったことが、第3検出スイッチSW3によっ
て検出されることにより、滅菌動作の開始状態となるため、チャンバー3内の真空引きが
不良で蓋4が確実に密閉状態になっていない状態では、滅菌動作が開始されず、安全且つ
安定動作が得られるものである。
【0056】
上記の構成及び動作において、環状パッキン6は、その製造においてその圧縮代が略同
じでも、蒸気滅菌器1の使用による経年変化によってその圧縮代が少なくなり(弾力性が
低下し)、蓋4によるチャンバー3の密閉効果に差異が生じ、密閉不良の状態となること
が懸念される。このため、本発明では、環状パッキン6の圧縮代が少なくなった場合でも
、調整によって蓋4によるチャンバー3の正規の密閉効果が得られるようにする技術を提
供する。
【0057】
そのため本発明では、環状パッキン6の圧縮代が減少した場合には、蓋4を閉じたとき
の環状パッキン6による蓋4とチャンバー3との閉蓋状態を所期の正規状態に調整する技
術を提供するものであり、蓋4側の作動アーム31Aがチャンバー側係止部31Bに係止
する状態が、実質同じ状態となるように、チャンバー側係止部31Bの取り付け位置を調
整可能とするものである。具体的には、環状パッキン6の圧縮代が減少していない正常状
態では、チャンバー側係止部31Bが前方位置である正規の位置にセットした取り付け状
態とし、環状パッキン6の圧縮代が減少した状態では、チャンバー側係止部31Bが正規
の位置よりも後方位置である調整位置にセットされるように、調整可能としたものである
。この構成について、以下に説明する。
【0058】
モータ36の支持基板37は、垂直状態になるように、その下端部は、取り付けフラン
ジ37Aを水平基板2Aの上面にネジ止めし、上端部は上ロック辺34Aの側面にネジ止
めする。その具体的構成として、水平基板2Aには、前方部に調整ネジ孔70A、70B
が前後配置に形成され、後方部には固定ネジ孔70C、70Dが形成されている。一方、
取り付けフランジ37Aには、前方部に調整ネジ孔70Aに対応するネジ貫通孔71A、
及び調整ネジ孔70Bに対応するネジ貫通孔71Bが形成され、後方部には固定ネジ孔7
0Cに対応するネジ貫通長孔71C、及び固定ネジ孔70Dに対応するネジ貫通長孔71
D形成されている。また、支持基板37の上端部には、ネジ73が緩く貫通する(所謂バ
カ孔状態である)貫通孔74が形成され、上ロック辺34Aの側面にはネジ73が螺合す
る固定ネジ孔72が形成されている。
【0059】
この構成によって、環状パッキン6の圧縮代が減少していない正常状態では、モータ3
6の支持基板37は、その下部の取り付けフランジ37Aにおいて、図9(イ)に示すよ
うに、ネジ貫通孔71Aを調整ネジ孔70Aに対応させる。これによって、ネジ貫通孔7
1Bは調整ネジ孔70Bからズレた非対応状態である。これと共に、固定ネジ孔70Cに
ネジ貫通長孔71Cが対応し、固定ネジ孔70Dにネジ貫通長孔71Dが対応する状態と
なる。この状態で、ネジ貫通孔71Aを貫通して調整ネジ孔70Aにネジ41Aを螺合し
、ネジ貫通長孔71Cを貫通して固定ネジ孔70Cにネジ41Cを螺合し、ネジ貫通長孔
71Dを貫通して固定ネジ孔70Dにネジ41Dを螺合する。また、支持基板37の上部
は、貫通孔74を貫通して固定ネジ孔72にネジ73を螺合する。これによって、モータ
36の支持基板37は、基礎台2の水平基板2Aに垂直状態に固定され、チャンバー側係
止部31Bが前方位置である正規の位置にセットされる。このため、蓋4を閉じることに
よって作動アーム31Aの先端係止部31A1がチャンバー側係止部31Bに係止したと
き、環状パッキン6がチャンバー3の前面開口3Aの周縁部に当接密着して若干圧縮され
た状態となる。この状態から上記のように真空引きによって、環状パッキン6の圧縮が進
むことにより、モータ36が回転し、ロック作動部材44及びロックピン35が下降し、
蓋4がロック状態となる。
【0060】
また、環状パッキン6の圧縮代が減少した状態では、モータ36の支持基板37は、そ
の下部の取り付けフランジ37Aにおいて、図9(ロ)に示すように、ネジ貫通孔71B
を調整ネジ孔70Bに対応させる。これによって、ネジ貫通孔71Aは調整ネジ孔70A
からズレた非対応状態である。これと共に、固定ネジ孔70Cにネジ貫通長孔71Cが対
応し、固定ネジ孔70Dにネジ貫通長孔71Dが対応する状態となる。この状態で、ネジ
貫通孔71Bを貫通して調整ネジ孔70Bにネジ41Aを螺合し、ネジ貫通長孔71Cを
貫通して固定ネジ孔70Cにネジ41Cを螺合し、ネジ貫通長孔71Dを貫通して固定ネ
ジ孔70Dにネジ41Dを螺合する。また、支持基板37の上部は、貫通孔74を貫通し
て固定ネジ孔72にネジ73が螺合する。これによって、モータ36の支持基板37は、
基礎台2の水平基板2Aに垂直状態に固定され、チャンバー側係止部31Bが正規の位置
よりも後方位置である調整位置にセットされる。このため、蓋4を閉じることによって作
動アーム31Aの先端係止部31A1がチャンバー側係止部31Bに係止したとき、圧縮
代が減少した環状パッキン6は、チャンバー3の前面開口3Aの周縁部に当接密着して若
干圧縮された状態となる。この状態から上記のように真空引きによって、環状パッキン6
の圧縮が進むことにより、モータ36が回転し、ロック作動部材44及びロックピン35
が下降し、蓋4がロック状態となる。
【0061】
このように、環状パッキン6の圧縮代が減少していない正常状態では、チャンバー側係
止部31Bが前方位置である正規の位置にセットされるように、モータ36の支持基板3
7の取り付け位置を前方に固定し、環状パッキン6の圧縮代が減少した状態では、チャン
バー側係止部31Bが正規の位置よりも後方位置である調整位置にセットされるように、
モータ36の支持基板37の取り付け位置を後方に固定する。このため、環状パッキン6
の圧縮代が減少した場合には、蓋4を閉じたときの環状パッキン6による蓋4とチャンバ
ー3との閉蓋状態を所期の正規状態に調整することができる。
【0062】
また、このように支持基板37の取り付け位置を変更しても、第2作動部材50の上端
はロック作動部材44の下辺44Bの下面に当接し、両者が連結状態にない関係であるた
め、ロック作動部材44の上下動作には悪影響を及ぼさない構成となる。
【0063】
もし、チャンバー側係止部31Bの位置を正規の位置のままとし、チャンバー側係止部
31Bの位置が調整できない構成であれば、環状パッキン6の圧縮代が減少していない正
常状態では問題ないが、環状パッキン6の圧縮代が減少した状態では、蓋4を閉じること
によって作動アーム31Aの先端係止部31A1がチャンバー側係止部31Bに係止した
とき、環状パッキン6がチャンバー3の前面開口3Aの周縁部に当接せずに、僅かな隙間
が生じる虞がある。この状態において、チャンバー3内の真空引きを行なった場合、この
隙間から外気が吸い込まれて所期の真空引きが達成できない虞が生じる。本発明ではこの
ようなことが防止できるものとなる。
【0064】
なお、チャンバー側係止部31Bをモータ36の支持基板37以外の支持部材に取り付
ける構成である場合は、上記のようにモータ36の支持基板37の取り付け位置の調整構
成と同様に、この支持部材の取り付け位置を調整できるようにすればよい。その場合は、
モータ36の支持基板37の取り付け位置は変更しなくてよく、第2作動部材50の上端
とロック作動部材44の下辺44Bとが連結された構成とすることができる。
【0065】
上記では、チャンバー側係止部31Bの位置が、正規の位置と後退した調整位置の2段
階であるが、この調整位置を3段階、4段階とすることによって、環状パッキン6の圧縮
代の減少の程度に応じた細かい調整が可能となる。
【0066】
実施例において、環状パッキン6を蓋4の裏側周縁部に取り付けた理由は、環状パッキ
ン6が破損などによって使用不良になった場合に、新品と交換し易くするためのものであ
る。このため、環状パッキン6を新品と交換し易い取り付け構造であれば、チャンバー3
の前面開口3A周縁部に取り付けることでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は上記実施例に示した構成に限定されず、横型チャンバーの種々の形態の蒸気滅
菌器に適用できるものであり、本発明の技術範囲において種々の形態を包含するものであ
る。
【符号の説明】
【0068】
1・・・・・蒸気滅菌器
2・・・・・基礎台
3・・・・・チャンバー
3A・・・・前面開口
3A1・・・環状フランジ
4・・・・・蓋
5・・・・・ヒンジ部
6・・・・・環状パッキン
7・・・・・真空ポンプ
8・・・・・注排水タンク
9・・・・・冷却タンク
10・・・・スロープ板
12・・・・圧力スイッチ
30・・・・取っ手部
30B・・・蓋支持体
31A・・・作動アーム
31B・・・チャンバー側係止部
32・・・・作動部
33・・・・蓋側ロック部材
34・・・・チャンバー側ロック部材
34A・・・上ロック辺
34B・・・下ロック辺
35・・・・ロックピン
36・・・・モータ
37・・・・支持基板
37A・・・取り付けフランジ
41A、41C、41D・・・・ネジ
43・・・・調整ネジ
44・・・・ロック作動部材
45、46、47・・・・ロック孔
48・・・・カム板
49・・・・第1作動部材(モータ側作動部材)
50・・・・第2作動部材(モータ側作動部材)
52A、52B・・・・・ガイドピン
53A、53B・・・・・孔
54A、54B・・・・・ガイドパイプ
55A、55B・・・・・貫通孔
56・・・・ガイドパイプ保持部材
70A、70B・・・調整ネジ孔
70C、70D・・・固定ネジ孔
71A、71B・・・ネジ貫通孔
71C、71D・・・ネジ貫通長孔
SP・・・・コイルバネ
SW1・・・第1検出スイッチ
SW2・・・第2検出スイッチ
SW3・・・第3検出スイッチ
SW4・・・第4検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの前面開口を閉
じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記チャンバーの
前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー内を真空引き
する真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャンバー側係止部
との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記チャンバー内
に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記閉蓋装置は、前記蓋を閉じたときの前記環状パッキンによる前記蓋とチャンバーと
の初期閉蓋状態が所期状態になるように、前記環状パッキンの圧縮代に応じて、前記チャ
ンバー側係止部が蓋側係止部と係止する位置を調整可能としたことを特徴とする蒸気滅菌
器。
【請求項2】
滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの前面開口を閉
じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記チャンバーの
前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー内を真空引き
する真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャンバー側係止部
との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記チャンバー内
に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記蓋側係止部は、前記蓋側から前記チャンバー側へ向けて突出し前記蓋を閉じるとき
前記チャンバー側係止部に係止し、前記蓋を開くとき前記チャンバー側係止部から脱する
作動アームを備え、
前記環状パッキンの圧縮代に応じて、前記チャンバー側係止部に対する前記作動アーム
の係止状態が所期状態になるように、前記チャンバー側係止部の取り付け位置が前後に調
整可能としたことを特徴とする蒸気滅菌器。
【請求項3】
滅菌器本体内に前面開口の横型チャンバーが設けられ、前記チャンバーの前面開口を閉
じるようにヒンジ部で回動可能に支持された蓋と、前記蓋を閉じたとき前記チャンバーの
前面開口周縁部と前記蓋との間を密閉する環状パッキンと、前記チャンバー内を真空引き
する真空ポンプと、前記チャンバー内の真空引きの前に蓋側係止部とチャンバー側係止部
との係止によって前記蓋を初期閉蓋状態に保持する閉蓋装置とを備え、前記チャンバー内
に収納された被滅菌物を高温蒸気下で滅菌する蒸気滅菌器であって、
前記蓋を前記チャンバー内が真空引きされた正規閉蓋状態に保持する閉蓋保持装置を備
え、
前記閉蓋保持装置は、前記蓋側ロック部材及び前記チャンバー側ロック部材の両方に係
止する係止状態にて前記蓋を正規閉蓋状態に保持するロックピンと、前記ロックピンを取
り付けたロック作動部材と、前記ロック作動部材を上下動するようにモータによって上下
動するモータ側作動部材を備え、
前記ロック作動部材に対して前記モータ側作動部材は、前記ロック作動部材を押し上げ
作用はするが引っ張り下降作用は行なわない当接関係にあることを特徴とする蒸気滅菌器


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−90706(P2012−90706A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239278(P2010−239278)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302071092)テガ三洋工業株式会社 (244)
【Fターム(参考)】