蒸気滅菌装置
【課題】滅菌室内の側面に開口された蒸気導入口から、飽和水蒸気の配管中に溜まったドレンが噴出しても、被滅菌物を濡らすことを防止できる蒸気滅菌装置を提供する。
【解決手段】被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装されている滅菌室12と、滅菌室12の外周面側に設けられ、滅菌室12を加熱するジャケット部とを具備し、滅菌室12内に飽和水蒸気を導入して、前記棚に載置された被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置であって、滅菌室12内の天井近傍の側面に開口された飽和水蒸気を導入する導入管12aの開口部を覆うように設けられた、前記開口部よりも幅広の蒸気導入路60が、滅菌室12内の側面に沿って底面側に延出され、且つ蒸気導入路60に導かれた飽和水蒸気が滅菌室12内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、蒸気導入路60の下端側に蒸気噴出口62が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装されている滅菌室12と、滅菌室12の外周面側に設けられ、滅菌室12を加熱するジャケット部とを具備し、滅菌室12内に飽和水蒸気を導入して、前記棚に載置された被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置であって、滅菌室12内の天井近傍の側面に開口された飽和水蒸気を導入する導入管12aの開口部を覆うように設けられた、前記開口部よりも幅広の蒸気導入路60が、滅菌室12内の側面に沿って底面側に延出され、且つ蒸気導入路60に導かれた飽和水蒸気が滅菌室12内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、蒸気導入路60の下端側に蒸気噴出口62が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気滅菌装置に関し、更に詳細には被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装又は挿脱可能に挿入されている滅菌室内に飽和水蒸気を導入して、前記被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等では、治療に用いられた包帯、メス、鉗子、手術着等の被滅菌物の滅菌には、通常、被滅菌物が収容された滅菌室を水蒸気によって加圧して所定の圧力・温度とした状態を一定時間保持する蒸気滅菌方法が採用されている。この蒸気滅菌方法では、滅菌に用いられる水蒸気としては、通常、飽和水蒸気が用いられている。飽和水蒸気によれば、過熱水蒸気よりも低温であっても、被滅菌物の滅菌を充分に施すことができるためである。
かかる蒸気滅菌方法を採用する蒸気滅菌装置として、例えば下記特許文献1に記載されている蒸気滅菌装置を図8に示す。図8に示す蒸気滅菌装置では、蒸気滅菌装置の本体部100は、被滅菌物を収容する滅菌室102を具備する内筒104と、内筒104の外側に形成された外筒106と、内筒104と外筒106との間に形成されたジャケット部108とから構成される。
ジャケット部108には、制御弁110が設けられた配管112によって飽和水蒸気が導入され、ジャケット部108に導入された飽和水蒸気は、制御弁116が設けられた配管114を経由して滅菌室102に導入される。
更に、配管114には、一端にフィルター118が設けられていると共に、途中に制御弁120及びヒータ122が設けられた配管124が繋ぎ込まれており、ヒータ122によって加熱された空気を滅菌室102内に導入できる。
【0003】
また、ジャケット部108に導入された飽和水蒸気の一部は、外筒106の外壁面及び内筒104の内壁面からの放熱等に因って凝縮して凝縮水となって、一端がジャケット部108に繋ぎ込まれた配管128のドレントラップ126を経由して排出される。
更に、滅菌室102に導入された飽和水蒸気が凝縮した凝縮水は、一端が滅菌室102に繋ぎ込まれた配管130のドレントラップ132を経由して排出される。この配管130の滅菌室102とドレントラップ132との間には、水封式真空ポンプ134が一端に設けられ、制御弁136が設けられた配管138が繋ぎ込まれている。
尚、ドレントラップ132をバイパスする配管142も設けられており、この配管142の途中に制御弁140が設けられている。
【0004】
この図8に示す蒸気滅菌装置を用いて被滅菌物を蒸気滅菌する行程を、図9に示す。図9は、滅菌室102の内圧の経時変化であって、蒸気滅菌の工程は、コンディショニング行程、滅菌行程、排気行程、乾燥行程、及び完了行程の各行程から成る。
先ず、被滅菌物が収納された滅菌室102を気密状態とした後、コンディショニング行程に入る。このコンディショニング行程では、常時、配管112及び制御弁110を経由してジャケット部108に導入されている飽和水蒸気を、配管114の制御弁116を開いて滅菌室102に収納された被滅菌物を加熱する加熱動作と、水封式真空ポンプ134を駆動し且つ制御弁136を開いて滅菌室102内の空気や水蒸気を排気して減圧状態とする減圧動作とを交互に繰り返して行う。このコンディショニング行程は、被滅菌物の内部の空気を確実に排除し、後述する様に、滅菌室102に給蒸して被滅菌物を滅菌温度に加温する際に、被滅菌物の内部温度も表面温度と同程度に昇温させるためである。
かかるコンディショニング行程で被滅菌物を充分に加温した後、滅菌室102に、制御弁116を開き飽和水蒸気を給蒸して所定圧力まで昇圧した後、滅菌室102を所定の圧力・温度で所定時間保持する。かかる保持によって、滅菌室102内の被滅菌物に付着していた細菌等を滅菌することができる。
【0005】
その後、滅菌室102を加圧している加圧蒸気を、制御弁140を開いて排気した後、滅菌行程で濡れた被滅菌物を乾燥する乾燥行程に入る。
この乾燥行程では、加圧蒸気が排気されて大気圧となった滅菌室102内を、制御弁136を開(制御弁140を閉)くと共に、水封式真空ポンプ134を駆動して、滅菌室102を減圧状態にして被滅菌物に保有された水分を蒸発する。
但し、保有水分の蒸発に伴い被滅菌物が低温となって、被滅菌物からの水分の蒸発量が減少する。
このため、被滅菌物から水分を蒸発し易くすべく、制御弁120を開いて加温された清浄な空気を滅菌室102内に導入して滅菌室102内を大気圧近傍まで昇圧し、被滅菌物を昇温する昇温操作を施す。更に、この昇温操作によって昇温された被滅菌物の保有水分を蒸発させて乾燥すべく、再度、滅菌室102内を減圧状態とする減圧操作を行う。
この昇温操作と減圧操作とを複数回繰り返し、被滅菌物を充分に乾燥する。被滅菌物の乾燥が不充分の場合は、被滅菌物を滅菌室102から取り出したとき、空気中の細菌等が被滅菌物に付着して増殖を始めるおそれがあるためである。
かかる乾燥行程が完了した際に、滅菌室102内に制御弁120を開いて清浄な空気を導入して滅菌を完了する。
尚、ジャケット部108への水蒸気は、蒸気滅菌の各行程を通じて供給されており、常に滅菌室102を加温している。
【特許文献1】特開2002−35090
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す蒸気滅菌装置100によれば、滅菌と乾燥とが施された被滅菌物を得ることができる。
ところで、図9に示す乾燥工程での乾燥時間は、被滅菌物が水蒸気の凝縮水で濡れた程度による。一般に被滅菌物の濡れている程度が大きい程、乾燥時間は長くなる。
かかる被滅菌物の濡れは、コンディショニング工程の初期に、蒸気滅菌装置100の運転が停止していた間に溜まった、滅菌室102内に水蒸気を導入する配管114内のドレンが噴出することによって惹起されることがある。
すなわち、通常の蒸気滅菌装置では、図10に示す如く、飽和水蒸気を滅菌室102内に導入する配管114の開口部が、滅菌室102内の天井近傍の側面に開口されて蒸気の導入口を形成している。この開口部の位置は、滅菌室102内に上下方向に内装された棚103,103の最上段の棚よりも高い位置にある。
更に、配管114が開口された開口部は、図10に示す様に、開口部を覆うように箱状の分散部105が設けられている。このため、配管114から供給された飽和水蒸気は、図11に示す様に、分散して滅菌室102内に噴出される。
この様に滅菌室102内に分散して噴出する飽和水蒸気に伴って配管114内に溜まったドレンも滅菌室102内に噴出し、棚103,103上に載置された被滅菌物を直接濡らす。
かかる配管114内には、その水平部分や凹状に曲折する箇所にドレンが溜まり易い。このため、配管114の水平部分や凹状に曲折する部分を極力少なくすることによって、ドレン量を少なくできるものの、例え、配管114の水平部分や凹状に曲折する部分をなくしたとしても、配管114内には多少のドレンが溜まることは避けられない。
また、蒸気滅菌装置100の配置場所等によっては、配管114の水平部分や凹状に曲折する部分を形成することがどうしても避けられない場合も多い。
そこで、本発明は、滅菌室内の側面に開口された飽和蒸気の導入口から、飽和水蒸気の配管中に溜まったドレンが噴出して被滅菌物を濡らす従来の蒸気滅菌装置の課題を解決し、蒸気導入口からドレンが噴出しても、被滅菌物を濡らすことを防止できる蒸気滅菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するには、図10に示す滅菌室102内に上下方向に設けられた棚103,103のうち、最下段の棚103の下方の位置でドレン混じりの飽和水蒸気を噴出することが有効ではないかと考え、先ず、滅菌室102内の側面に開口された配管114の開口部と等しい口径の配管を、開口部から滅菌室102内の側面に沿って底面側方向に延出し、最下段の棚103の下方の位置で滅菌室102の底面に向けて飽和水蒸気が噴出できるようにした。
しかしながら、滅菌室102内の側面に沿って底面側方向に延出された配管の噴出口から噴出された飽和水蒸気の噴出速度が速すぎて、底面に溜まったドレンを吹き上げてしまうことが判明した。
このため、本発明者は、更に検討を重ね、滅菌室102内の天井側近傍の側面に開口された配管114の開口部を覆うように設けた、開口部よりも幅広の蒸気導入路を滅菌室102内の側面に沿って底面側に延出し、この蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気を滅菌室102内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口を設けた。
この蒸気滅菌装置によれば、配管114に溜まったドレンが飽和水蒸気に伴って滅菌室102内に噴出しても、ドレンが棚103,103上に載置した被滅菌物を濡らすことがなく、且つ滅菌室102の底面に溜まったドレンを飽和蒸気の噴出によって巻き上げることも防止できること見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装又は挿脱可能に挿入されている滅菌室と、前記滅菌室の外周面側に設けられ、前記滅菌室を加熱する加熱手段とを具備し、前記滅菌室内に飽和水蒸気を導入して、前記棚に載置された被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置であって、前記滅菌室内の天井近傍の側面に開口された飽和水蒸気の導入口を覆うように設けられた、前記導入口よりも幅広の蒸気導入路が、前記滅菌室内の側面に沿って底面側に延出され、且つ前記蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気が前記滅菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、前記蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口が設けられていることを特徴とする蒸気滅菌装置にある。
かかる本発明において、蒸気導入路の下端側に設けられた蒸気噴出口に、飽和水蒸気が滅菌室内の側面に沿って噴出されるように、ガイド部材を設けることによって、飽和水蒸気を確実に滅菌室内の側面に沿って噴出できる。
この蒸気導入路としては、箱状の蒸気導入路とすることによって、蒸気挿入路を容易に形成できる。
かかる本発明は、飽和水蒸気の導入口が滅菌室の天井側近傍の内側面に開口されている蒸気滅菌装置に好適に適用できる。
更に、蒸気滅菌装置の滅菌室に内装又は挿脱可能に挿入され複数段の棚として、最下段の棚が蒸気導入路の蒸気噴出口以上の高さ位置となる複数段の棚を用いることによって、確実に棚上に載置した被滅菌物を蒸気導入口から噴出するドレンによって濡れないようにできる。
また、複数段の棚を、滅菌室の内壁面との間に水蒸気が通過する隙間が形成されるように内装又は挿脱可能に挿入し、且つ前記複数段の棚のうち、上段の棚自体及び載置されている被滅菌物で凝縮した飽和水蒸気の凝縮水が下段の棚上に載置されている被滅菌部に落下することを防止するように、前記上段の棚の下面を板状体で覆うことによって、更に一層被滅菌物の濡れを軽減できる。
この板状体を滅菌室内の側面の一面側に傾斜して設けることによって、棚自体及び載置されている被滅菌物で凝縮した飽和水蒸気の凝縮水を、滅菌室内の面に沿って底面側に流下できる。
尚、滅菌室を二重筒の内筒内に設け、前記滅菌室を加熱する加熱手段として、前記二重筒の外筒と内筒との間に形成されたジャケット部内に、前記内筒を加熱する水蒸気を導入することによって、滅菌室の内壁面を効率よく加熱できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る蒸気滅菌装置によれば、飽和水蒸気の導入口よりも幅広の蒸気導入路を、滅菌室内の側面に沿って底面側に延出し、且つ蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気を滅菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出するように、蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口を設けている。
このため、導入口から噴出される飽和水蒸気中にドレンが混在していても、ドレン含有する飽和水蒸気は、菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出され、棚上に載置されている被滅菌物をドレンによって濡らすことを防止できる。
更に、飽和水蒸気の導入口から幅広の蒸気導入路に噴出した飽和水蒸気の線速度は遅くなり、蒸気導入路の蒸気噴出口から菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出される飽和水蒸気は、滅菌室の底面にドレンが溜まっていても吹き上げることを防止できる。
その結果、蒸気滅菌装置の運転が再開された際に、蒸気滅菌装置の運転が停止していた間に、滅菌室への飽和水蒸気を導入する配管内のドレンが、コンディショニング工程の初期に滅菌室内に噴出することに起因して発生する被滅菌物の濡れを防止でき、乾燥工程での乾燥時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る蒸気滅菌装置の一例を図1に示す。図1に示す蒸気滅菌装置では、蒸気滅菌装置の本体部10は、被滅菌物を収容する滅菌室12を具備する内筒14と、内筒14の外側に形成された外筒16と、内筒14と外筒16との間に形成されたジャケット部18とから構成される。
ジャケット部18には、制御弁20が設けられた配管22によって飽和水蒸気が導入され、ジャケット部18に導入された飽和水蒸気は、制御弁26が設けられた配管24を経由して滅菌室12に導入される。
更に、配管24には、一端にフィルター28が設けられていると共に、途中に制御弁30及びヒータ32が設けられた配管34が繋ぎ込まれており、ヒータ32によって加熱された空気を滅菌室12内に導入できる。
かかる飽和水蒸気及び空気は、一端が配管24に接続され且つ他端が滅菌室12の内側面に導入口としての開口部が開口されている導入管12aを経由して吹き込まれる。
【0011】
また、ジャケット部18に導入された飽和水蒸気の一部は、外筒16の外壁面及び内筒14の内壁面からの放熱等に因って凝縮して凝縮水となって、一端がジャケット部18に繋ぎ込まれた配管38のドレントラップ36を経由して排出される。
更に、滅菌室12に導入された飽和水蒸気が凝縮した凝縮水は、一端が滅菌室12に繋ぎ込まれた配管40のドレントラップ42を経由して排出される。この配管40の滅菌室12とドレントラップ42との間には、水封式真空ポンプ44が一端に設けられ、制御弁46が設けられた配管48が繋ぎ込まれている。
尚、ドレントラップ42をバイパスする配管52も設けられており、この配管52の途中に制御弁50が設けられている。
【0012】
図1に示す蒸気滅菌装置の滅菌室12内には、飽和水蒸気を滅菌室12に導入する導入口としての導入管12aの開口部は、通常、滅菌室12内の天井近傍の側面に開口されている。この開口部は、開口部よりも幅広の蒸気導入路60によって覆われている。
かかる蒸気導入路60は、滅菌室12内の側面に沿って底面側に延出されており、その下端側に蒸気噴出口62が設けられている。
この様に、蒸気導入路60は、導入管12aの開口部よりも幅広に形成されているため、蒸気導入路60内では、飽和水蒸気の線速度を導入管12aの開口部から噴出した飽和水蒸気の噴出速度よりも低速とすることができる。
この蒸気導入路60は、図2に示す様に、箱状に形成されており、蒸気導入路60の下端側に形成された蒸気噴出口62には、図2及び図3に示す様に、庇状のガイド部材64が設けられている。このガイド部材64によって、導入管12aの開口部から噴出した飽和水蒸気の噴出速度よりも低速の蒸気導入路60内の飽和水蒸気を、図3に示す様に、確実に滅菌室12内の側面に沿って噴出できる。このため、滅菌室12の底面側にドレンが溜まっていても、ドレンを吹き上げることを防止できる。
【0013】
かかる蒸気導入路60が設けられた滅菌室12内には、図4に示す様に、被滅菌物を載置する複数段の棚66a,66bが上下方向に多段に設けられている。この複数段の棚66a,66bのうち、最下段の棚66bを、蒸気導入路60の蒸気噴出口62が設けられている位置以上に設けることが好ましい。かかる位置に最下段の棚66bを設けることによって、蒸気導入路60の蒸気噴出口62から噴出される飽和水蒸気中にドレンが混合されていても、最下段の棚66b上に載置されている被滅菌物に吹き付けることを防止できる。
かかる複数段の棚66a,66bのうち、最上段の棚66aは、下段の棚66bに載置する被滅菌物との関係で、その位置を定めればよいが、通常、導入管12aの開口部が設けられた位置以下の位置に設けられている。
【0014】
図1〜図4に示す蒸気滅菌装置によれば、前述した図9に示す順序で蒸気滅菌工程が進行する。かかる工程のうちで、蒸気滅菌工程の開始工程であって、導入管12a等内に溜まったドレンが噴出し易いコンディショニング行程では、制御弁26を開いて導入管12aから滅菌室12内に飽和水蒸気を供給する。この際に、ドレンを含有する飽和水蒸気は、図3に示す様に、導入管12aの開口部から蒸気導入路60内に噴出される。この蒸気導入路60は導入管12aの開口部よりも幅広であるため、飽和水蒸気の線速度は開口部からの噴出速度よりも低速となり、ドレンの少なくとも一部は飽和水蒸気から分離されて滅菌室12の側面に沿って流下する。
更に、蒸気導入路60内を流下するドレン含有の飽和水蒸気は、図3に示す様に、その蒸気噴出口62から滅菌室12の側面に沿って底面側に向けて噴出される。噴出されたドレン含有の飽和水蒸気は、その流速が更に低速となり、滅菌室12の底面側に分離されたドレンが溜まっていても、ドレンを吹き上げることなく飽和水蒸気とドレンとを分離できる。分離された飽和水蒸気は、棚66a,66b上に載置された被滅菌物を加熱する。
一方、分離されたドレンは、滅菌室12の底面側に残り、ドレントラップ42から系外に排出される。
また、蒸気導入路60の蒸気噴出口62は、図4に示す様に、最下段の棚66b以下の位置に開口されており、ドレン含有の飽和水蒸気を棚66b上の被滅菌物に吹き付けることを防止できる。
この様に、コンディショニング行程で被滅菌物を加熱した後、図9に示す順序で蒸気滅菌工程を進行する。コンディショニング行程後の工程では、導入管12a内に溜まったドレンに起因する被滅菌物の濡れは殆どなく、通常の滅菌工程を進行できる。この滅菌工程については、先に詳述しているため省略する。
【0015】
ところで、コンディショニング行程では、被滅菌物及び棚66a,66bが加熱されておらず、飽和水蒸気が被滅菌物及び棚66a,66bで凝縮して生じたドレンが落下し、下段の棚66b上に載置されている被滅菌物を濡らす場合もある。この場合には、図5に示す様に、上段の棚66aの下面を板状体68で覆うことによって、棚66a自体及び棚66a上に載置されている被滅菌物で飽和水蒸気が凝縮したドレンの落下に起因する、下段の棚66b上に載置されている被滅菌物の濡れを防止できる。
この板状体68としては、図5に示す様に、滅菌室12内の側面の一面側に傾斜して設けることによって、板状体68上に落下したドレンを滅菌室12内の一方側の側面に集め、滅菌室12内の側面に沿って底面側に流下できる。
但し、板状体68を下面に設けた棚66aには、滅菌室12の内壁面との間に飽和水蒸気が通過する隙間が形成されていることが必要である。
また、図1に示す蒸気滅菌装置では、配管22から一旦ジャケット部18に供給した飽和水蒸気を、このジャケット部18から配管24を経由して滅菌室12に供給しているが、図6に示す様に、配管22から配管24を分岐して滅菌室12に飽和水蒸気を供給してもよい。この様に、配管22から配管24を分岐することによって、本体部10に配管24のソケット部を形成することを省略できる。
以上、説明してきた図4、図5に示す棚66a,66bは、滅菌室12内に内装されているが、図7に示す様に、滅菌室12内に被滅菌物67,67・・が載置された棚66,66・・を設けたカート70を挿脱自在に挿入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る蒸気滅菌装置の一例を説明するための概略図である。
【図2】図1に示す蒸気滅菌装置の滅菌室に設けられた蒸気導入路の斜視図である。
【図3】図2に示す蒸気導入路の概略断面図である。
【図4】図2に示す蒸気導入路と棚との関係を説明する説明図である。
【図5】本発明に係る蒸気滅菌装置の他の例を説明するための正面図である。
【図6】本発明に係る蒸気滅菌装置の他の例を説明するための概略図である。
【図7】本発明に係る蒸気滅菌装置の他の例を説明するための概略図である。
【図8】従来の蒸気滅菌装置を説明するための概略図である。
【図9】蒸気滅菌装置の滅菌室の内圧の経時変化を示すグラフである。
【図10】従来の蒸気滅菌装置を構成する滅菌室内における飽和水蒸気の導入口と棚との位置関係を示す正面図である。
【図11】従来の蒸気滅菌装置を構成する滅菌室内における飽和水蒸気の流動方向を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0017】
10 本体部
12 滅菌室
12a 導入管
14 内筒
16 外筒
18 ジャケット部
60 蒸気導入路
62 蒸気噴出口
64 ガイド部材
66,66a,66b 棚
67 被滅菌物
68 板状体
70 カート
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気滅菌装置に関し、更に詳細には被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装又は挿脱可能に挿入されている滅菌室内に飽和水蒸気を導入して、前記被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等では、治療に用いられた包帯、メス、鉗子、手術着等の被滅菌物の滅菌には、通常、被滅菌物が収容された滅菌室を水蒸気によって加圧して所定の圧力・温度とした状態を一定時間保持する蒸気滅菌方法が採用されている。この蒸気滅菌方法では、滅菌に用いられる水蒸気としては、通常、飽和水蒸気が用いられている。飽和水蒸気によれば、過熱水蒸気よりも低温であっても、被滅菌物の滅菌を充分に施すことができるためである。
かかる蒸気滅菌方法を採用する蒸気滅菌装置として、例えば下記特許文献1に記載されている蒸気滅菌装置を図8に示す。図8に示す蒸気滅菌装置では、蒸気滅菌装置の本体部100は、被滅菌物を収容する滅菌室102を具備する内筒104と、内筒104の外側に形成された外筒106と、内筒104と外筒106との間に形成されたジャケット部108とから構成される。
ジャケット部108には、制御弁110が設けられた配管112によって飽和水蒸気が導入され、ジャケット部108に導入された飽和水蒸気は、制御弁116が設けられた配管114を経由して滅菌室102に導入される。
更に、配管114には、一端にフィルター118が設けられていると共に、途中に制御弁120及びヒータ122が設けられた配管124が繋ぎ込まれており、ヒータ122によって加熱された空気を滅菌室102内に導入できる。
【0003】
また、ジャケット部108に導入された飽和水蒸気の一部は、外筒106の外壁面及び内筒104の内壁面からの放熱等に因って凝縮して凝縮水となって、一端がジャケット部108に繋ぎ込まれた配管128のドレントラップ126を経由して排出される。
更に、滅菌室102に導入された飽和水蒸気が凝縮した凝縮水は、一端が滅菌室102に繋ぎ込まれた配管130のドレントラップ132を経由して排出される。この配管130の滅菌室102とドレントラップ132との間には、水封式真空ポンプ134が一端に設けられ、制御弁136が設けられた配管138が繋ぎ込まれている。
尚、ドレントラップ132をバイパスする配管142も設けられており、この配管142の途中に制御弁140が設けられている。
【0004】
この図8に示す蒸気滅菌装置を用いて被滅菌物を蒸気滅菌する行程を、図9に示す。図9は、滅菌室102の内圧の経時変化であって、蒸気滅菌の工程は、コンディショニング行程、滅菌行程、排気行程、乾燥行程、及び完了行程の各行程から成る。
先ず、被滅菌物が収納された滅菌室102を気密状態とした後、コンディショニング行程に入る。このコンディショニング行程では、常時、配管112及び制御弁110を経由してジャケット部108に導入されている飽和水蒸気を、配管114の制御弁116を開いて滅菌室102に収納された被滅菌物を加熱する加熱動作と、水封式真空ポンプ134を駆動し且つ制御弁136を開いて滅菌室102内の空気や水蒸気を排気して減圧状態とする減圧動作とを交互に繰り返して行う。このコンディショニング行程は、被滅菌物の内部の空気を確実に排除し、後述する様に、滅菌室102に給蒸して被滅菌物を滅菌温度に加温する際に、被滅菌物の内部温度も表面温度と同程度に昇温させるためである。
かかるコンディショニング行程で被滅菌物を充分に加温した後、滅菌室102に、制御弁116を開き飽和水蒸気を給蒸して所定圧力まで昇圧した後、滅菌室102を所定の圧力・温度で所定時間保持する。かかる保持によって、滅菌室102内の被滅菌物に付着していた細菌等を滅菌することができる。
【0005】
その後、滅菌室102を加圧している加圧蒸気を、制御弁140を開いて排気した後、滅菌行程で濡れた被滅菌物を乾燥する乾燥行程に入る。
この乾燥行程では、加圧蒸気が排気されて大気圧となった滅菌室102内を、制御弁136を開(制御弁140を閉)くと共に、水封式真空ポンプ134を駆動して、滅菌室102を減圧状態にして被滅菌物に保有された水分を蒸発する。
但し、保有水分の蒸発に伴い被滅菌物が低温となって、被滅菌物からの水分の蒸発量が減少する。
このため、被滅菌物から水分を蒸発し易くすべく、制御弁120を開いて加温された清浄な空気を滅菌室102内に導入して滅菌室102内を大気圧近傍まで昇圧し、被滅菌物を昇温する昇温操作を施す。更に、この昇温操作によって昇温された被滅菌物の保有水分を蒸発させて乾燥すべく、再度、滅菌室102内を減圧状態とする減圧操作を行う。
この昇温操作と減圧操作とを複数回繰り返し、被滅菌物を充分に乾燥する。被滅菌物の乾燥が不充分の場合は、被滅菌物を滅菌室102から取り出したとき、空気中の細菌等が被滅菌物に付着して増殖を始めるおそれがあるためである。
かかる乾燥行程が完了した際に、滅菌室102内に制御弁120を開いて清浄な空気を導入して滅菌を完了する。
尚、ジャケット部108への水蒸気は、蒸気滅菌の各行程を通じて供給されており、常に滅菌室102を加温している。
【特許文献1】特開2002−35090
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す蒸気滅菌装置100によれば、滅菌と乾燥とが施された被滅菌物を得ることができる。
ところで、図9に示す乾燥工程での乾燥時間は、被滅菌物が水蒸気の凝縮水で濡れた程度による。一般に被滅菌物の濡れている程度が大きい程、乾燥時間は長くなる。
かかる被滅菌物の濡れは、コンディショニング工程の初期に、蒸気滅菌装置100の運転が停止していた間に溜まった、滅菌室102内に水蒸気を導入する配管114内のドレンが噴出することによって惹起されることがある。
すなわち、通常の蒸気滅菌装置では、図10に示す如く、飽和水蒸気を滅菌室102内に導入する配管114の開口部が、滅菌室102内の天井近傍の側面に開口されて蒸気の導入口を形成している。この開口部の位置は、滅菌室102内に上下方向に内装された棚103,103の最上段の棚よりも高い位置にある。
更に、配管114が開口された開口部は、図10に示す様に、開口部を覆うように箱状の分散部105が設けられている。このため、配管114から供給された飽和水蒸気は、図11に示す様に、分散して滅菌室102内に噴出される。
この様に滅菌室102内に分散して噴出する飽和水蒸気に伴って配管114内に溜まったドレンも滅菌室102内に噴出し、棚103,103上に載置された被滅菌物を直接濡らす。
かかる配管114内には、その水平部分や凹状に曲折する箇所にドレンが溜まり易い。このため、配管114の水平部分や凹状に曲折する部分を極力少なくすることによって、ドレン量を少なくできるものの、例え、配管114の水平部分や凹状に曲折する部分をなくしたとしても、配管114内には多少のドレンが溜まることは避けられない。
また、蒸気滅菌装置100の配置場所等によっては、配管114の水平部分や凹状に曲折する部分を形成することがどうしても避けられない場合も多い。
そこで、本発明は、滅菌室内の側面に開口された飽和蒸気の導入口から、飽和水蒸気の配管中に溜まったドレンが噴出して被滅菌物を濡らす従来の蒸気滅菌装置の課題を解決し、蒸気導入口からドレンが噴出しても、被滅菌物を濡らすことを防止できる蒸気滅菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するには、図10に示す滅菌室102内に上下方向に設けられた棚103,103のうち、最下段の棚103の下方の位置でドレン混じりの飽和水蒸気を噴出することが有効ではないかと考え、先ず、滅菌室102内の側面に開口された配管114の開口部と等しい口径の配管を、開口部から滅菌室102内の側面に沿って底面側方向に延出し、最下段の棚103の下方の位置で滅菌室102の底面に向けて飽和水蒸気が噴出できるようにした。
しかしながら、滅菌室102内の側面に沿って底面側方向に延出された配管の噴出口から噴出された飽和水蒸気の噴出速度が速すぎて、底面に溜まったドレンを吹き上げてしまうことが判明した。
このため、本発明者は、更に検討を重ね、滅菌室102内の天井側近傍の側面に開口された配管114の開口部を覆うように設けた、開口部よりも幅広の蒸気導入路を滅菌室102内の側面に沿って底面側に延出し、この蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気を滅菌室102内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口を設けた。
この蒸気滅菌装置によれば、配管114に溜まったドレンが飽和水蒸気に伴って滅菌室102内に噴出しても、ドレンが棚103,103上に載置した被滅菌物を濡らすことがなく、且つ滅菌室102の底面に溜まったドレンを飽和蒸気の噴出によって巻き上げることも防止できること見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装又は挿脱可能に挿入されている滅菌室と、前記滅菌室の外周面側に設けられ、前記滅菌室を加熱する加熱手段とを具備し、前記滅菌室内に飽和水蒸気を導入して、前記棚に載置された被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置であって、前記滅菌室内の天井近傍の側面に開口された飽和水蒸気の導入口を覆うように設けられた、前記導入口よりも幅広の蒸気導入路が、前記滅菌室内の側面に沿って底面側に延出され、且つ前記蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気が前記滅菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、前記蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口が設けられていることを特徴とする蒸気滅菌装置にある。
かかる本発明において、蒸気導入路の下端側に設けられた蒸気噴出口に、飽和水蒸気が滅菌室内の側面に沿って噴出されるように、ガイド部材を設けることによって、飽和水蒸気を確実に滅菌室内の側面に沿って噴出できる。
この蒸気導入路としては、箱状の蒸気導入路とすることによって、蒸気挿入路を容易に形成できる。
かかる本発明は、飽和水蒸気の導入口が滅菌室の天井側近傍の内側面に開口されている蒸気滅菌装置に好適に適用できる。
更に、蒸気滅菌装置の滅菌室に内装又は挿脱可能に挿入され複数段の棚として、最下段の棚が蒸気導入路の蒸気噴出口以上の高さ位置となる複数段の棚を用いることによって、確実に棚上に載置した被滅菌物を蒸気導入口から噴出するドレンによって濡れないようにできる。
また、複数段の棚を、滅菌室の内壁面との間に水蒸気が通過する隙間が形成されるように内装又は挿脱可能に挿入し、且つ前記複数段の棚のうち、上段の棚自体及び載置されている被滅菌物で凝縮した飽和水蒸気の凝縮水が下段の棚上に載置されている被滅菌部に落下することを防止するように、前記上段の棚の下面を板状体で覆うことによって、更に一層被滅菌物の濡れを軽減できる。
この板状体を滅菌室内の側面の一面側に傾斜して設けることによって、棚自体及び載置されている被滅菌物で凝縮した飽和水蒸気の凝縮水を、滅菌室内の面に沿って底面側に流下できる。
尚、滅菌室を二重筒の内筒内に設け、前記滅菌室を加熱する加熱手段として、前記二重筒の外筒と内筒との間に形成されたジャケット部内に、前記内筒を加熱する水蒸気を導入することによって、滅菌室の内壁面を効率よく加熱できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る蒸気滅菌装置によれば、飽和水蒸気の導入口よりも幅広の蒸気導入路を、滅菌室内の側面に沿って底面側に延出し、且つ蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気を滅菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出するように、蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口を設けている。
このため、導入口から噴出される飽和水蒸気中にドレンが混在していても、ドレン含有する飽和水蒸気は、菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出され、棚上に載置されている被滅菌物をドレンによって濡らすことを防止できる。
更に、飽和水蒸気の導入口から幅広の蒸気導入路に噴出した飽和水蒸気の線速度は遅くなり、蒸気導入路の蒸気噴出口から菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出される飽和水蒸気は、滅菌室の底面にドレンが溜まっていても吹き上げることを防止できる。
その結果、蒸気滅菌装置の運転が再開された際に、蒸気滅菌装置の運転が停止していた間に、滅菌室への飽和水蒸気を導入する配管内のドレンが、コンディショニング工程の初期に滅菌室内に噴出することに起因して発生する被滅菌物の濡れを防止でき、乾燥工程での乾燥時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る蒸気滅菌装置の一例を図1に示す。図1に示す蒸気滅菌装置では、蒸気滅菌装置の本体部10は、被滅菌物を収容する滅菌室12を具備する内筒14と、内筒14の外側に形成された外筒16と、内筒14と外筒16との間に形成されたジャケット部18とから構成される。
ジャケット部18には、制御弁20が設けられた配管22によって飽和水蒸気が導入され、ジャケット部18に導入された飽和水蒸気は、制御弁26が設けられた配管24を経由して滅菌室12に導入される。
更に、配管24には、一端にフィルター28が設けられていると共に、途中に制御弁30及びヒータ32が設けられた配管34が繋ぎ込まれており、ヒータ32によって加熱された空気を滅菌室12内に導入できる。
かかる飽和水蒸気及び空気は、一端が配管24に接続され且つ他端が滅菌室12の内側面に導入口としての開口部が開口されている導入管12aを経由して吹き込まれる。
【0011】
また、ジャケット部18に導入された飽和水蒸気の一部は、外筒16の外壁面及び内筒14の内壁面からの放熱等に因って凝縮して凝縮水となって、一端がジャケット部18に繋ぎ込まれた配管38のドレントラップ36を経由して排出される。
更に、滅菌室12に導入された飽和水蒸気が凝縮した凝縮水は、一端が滅菌室12に繋ぎ込まれた配管40のドレントラップ42を経由して排出される。この配管40の滅菌室12とドレントラップ42との間には、水封式真空ポンプ44が一端に設けられ、制御弁46が設けられた配管48が繋ぎ込まれている。
尚、ドレントラップ42をバイパスする配管52も設けられており、この配管52の途中に制御弁50が設けられている。
【0012】
図1に示す蒸気滅菌装置の滅菌室12内には、飽和水蒸気を滅菌室12に導入する導入口としての導入管12aの開口部は、通常、滅菌室12内の天井近傍の側面に開口されている。この開口部は、開口部よりも幅広の蒸気導入路60によって覆われている。
かかる蒸気導入路60は、滅菌室12内の側面に沿って底面側に延出されており、その下端側に蒸気噴出口62が設けられている。
この様に、蒸気導入路60は、導入管12aの開口部よりも幅広に形成されているため、蒸気導入路60内では、飽和水蒸気の線速度を導入管12aの開口部から噴出した飽和水蒸気の噴出速度よりも低速とすることができる。
この蒸気導入路60は、図2に示す様に、箱状に形成されており、蒸気導入路60の下端側に形成された蒸気噴出口62には、図2及び図3に示す様に、庇状のガイド部材64が設けられている。このガイド部材64によって、導入管12aの開口部から噴出した飽和水蒸気の噴出速度よりも低速の蒸気導入路60内の飽和水蒸気を、図3に示す様に、確実に滅菌室12内の側面に沿って噴出できる。このため、滅菌室12の底面側にドレンが溜まっていても、ドレンを吹き上げることを防止できる。
【0013】
かかる蒸気導入路60が設けられた滅菌室12内には、図4に示す様に、被滅菌物を載置する複数段の棚66a,66bが上下方向に多段に設けられている。この複数段の棚66a,66bのうち、最下段の棚66bを、蒸気導入路60の蒸気噴出口62が設けられている位置以上に設けることが好ましい。かかる位置に最下段の棚66bを設けることによって、蒸気導入路60の蒸気噴出口62から噴出される飽和水蒸気中にドレンが混合されていても、最下段の棚66b上に載置されている被滅菌物に吹き付けることを防止できる。
かかる複数段の棚66a,66bのうち、最上段の棚66aは、下段の棚66bに載置する被滅菌物との関係で、その位置を定めればよいが、通常、導入管12aの開口部が設けられた位置以下の位置に設けられている。
【0014】
図1〜図4に示す蒸気滅菌装置によれば、前述した図9に示す順序で蒸気滅菌工程が進行する。かかる工程のうちで、蒸気滅菌工程の開始工程であって、導入管12a等内に溜まったドレンが噴出し易いコンディショニング行程では、制御弁26を開いて導入管12aから滅菌室12内に飽和水蒸気を供給する。この際に、ドレンを含有する飽和水蒸気は、図3に示す様に、導入管12aの開口部から蒸気導入路60内に噴出される。この蒸気導入路60は導入管12aの開口部よりも幅広であるため、飽和水蒸気の線速度は開口部からの噴出速度よりも低速となり、ドレンの少なくとも一部は飽和水蒸気から分離されて滅菌室12の側面に沿って流下する。
更に、蒸気導入路60内を流下するドレン含有の飽和水蒸気は、図3に示す様に、その蒸気噴出口62から滅菌室12の側面に沿って底面側に向けて噴出される。噴出されたドレン含有の飽和水蒸気は、その流速が更に低速となり、滅菌室12の底面側に分離されたドレンが溜まっていても、ドレンを吹き上げることなく飽和水蒸気とドレンとを分離できる。分離された飽和水蒸気は、棚66a,66b上に載置された被滅菌物を加熱する。
一方、分離されたドレンは、滅菌室12の底面側に残り、ドレントラップ42から系外に排出される。
また、蒸気導入路60の蒸気噴出口62は、図4に示す様に、最下段の棚66b以下の位置に開口されており、ドレン含有の飽和水蒸気を棚66b上の被滅菌物に吹き付けることを防止できる。
この様に、コンディショニング行程で被滅菌物を加熱した後、図9に示す順序で蒸気滅菌工程を進行する。コンディショニング行程後の工程では、導入管12a内に溜まったドレンに起因する被滅菌物の濡れは殆どなく、通常の滅菌工程を進行できる。この滅菌工程については、先に詳述しているため省略する。
【0015】
ところで、コンディショニング行程では、被滅菌物及び棚66a,66bが加熱されておらず、飽和水蒸気が被滅菌物及び棚66a,66bで凝縮して生じたドレンが落下し、下段の棚66b上に載置されている被滅菌物を濡らす場合もある。この場合には、図5に示す様に、上段の棚66aの下面を板状体68で覆うことによって、棚66a自体及び棚66a上に載置されている被滅菌物で飽和水蒸気が凝縮したドレンの落下に起因する、下段の棚66b上に載置されている被滅菌物の濡れを防止できる。
この板状体68としては、図5に示す様に、滅菌室12内の側面の一面側に傾斜して設けることによって、板状体68上に落下したドレンを滅菌室12内の一方側の側面に集め、滅菌室12内の側面に沿って底面側に流下できる。
但し、板状体68を下面に設けた棚66aには、滅菌室12の内壁面との間に飽和水蒸気が通過する隙間が形成されていることが必要である。
また、図1に示す蒸気滅菌装置では、配管22から一旦ジャケット部18に供給した飽和水蒸気を、このジャケット部18から配管24を経由して滅菌室12に供給しているが、図6に示す様に、配管22から配管24を分岐して滅菌室12に飽和水蒸気を供給してもよい。この様に、配管22から配管24を分岐することによって、本体部10に配管24のソケット部を形成することを省略できる。
以上、説明してきた図4、図5に示す棚66a,66bは、滅菌室12内に内装されているが、図7に示す様に、滅菌室12内に被滅菌物67,67・・が載置された棚66,66・・を設けたカート70を挿脱自在に挿入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る蒸気滅菌装置の一例を説明するための概略図である。
【図2】図1に示す蒸気滅菌装置の滅菌室に設けられた蒸気導入路の斜視図である。
【図3】図2に示す蒸気導入路の概略断面図である。
【図4】図2に示す蒸気導入路と棚との関係を説明する説明図である。
【図5】本発明に係る蒸気滅菌装置の他の例を説明するための正面図である。
【図6】本発明に係る蒸気滅菌装置の他の例を説明するための概略図である。
【図7】本発明に係る蒸気滅菌装置の他の例を説明するための概略図である。
【図8】従来の蒸気滅菌装置を説明するための概略図である。
【図9】蒸気滅菌装置の滅菌室の内圧の経時変化を示すグラフである。
【図10】従来の蒸気滅菌装置を構成する滅菌室内における飽和水蒸気の導入口と棚との位置関係を示す正面図である。
【図11】従来の蒸気滅菌装置を構成する滅菌室内における飽和水蒸気の流動方向を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0017】
10 本体部
12 滅菌室
12a 導入管
14 内筒
16 外筒
18 ジャケット部
60 蒸気導入路
62 蒸気噴出口
64 ガイド部材
66,66a,66b 棚
67 被滅菌物
68 板状体
70 カート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装又は挿脱可能に挿入されている滅菌室と、前記滅菌室の外周面側に設けられ、前記滅菌室を加熱する加熱手段とを具備し、前記滅菌室内に飽和水蒸気を導入して、前記棚に載置された被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置であって、
前記滅菌室内の天井近傍の側面に開口された飽和水蒸気の導入口を覆うように設けられた、前記導入口よりも幅広の蒸気導入路が、前記滅菌室内の側面に沿って底面側に延出され、
且つ前記蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気が前記滅菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、前記蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口が設けられていることを特徴とする蒸気滅菌装置。
【請求項2】
蒸気導入路の下端側に設けられた蒸気噴出口に、飽和水蒸気が滅菌室内の側面に沿って噴出されるように、ガイド部材が設けられている請求項1記載の蒸気滅菌装置。
【請求項3】
蒸気導入路が、箱状の蒸気導入路である請求項1又は請求項2記載の蒸気滅菌装置。
【請求項4】
飽和水蒸気の導入口が、滅菌室内の天井側近傍の側面に開口されている請求項1〜3のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項5】
複数段の棚が、最下段の棚が蒸気導入路の蒸気噴出口以上の高さ位置となるように設けられている請求項1〜4のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項6】
複数段の棚が、滅菌室の内壁面との間に水蒸気が通過する隙間が形成されるように内装又は挿脱可能に挿入され、
且つ前記複数段の棚のうち、上段の棚自体及び載置されている被滅菌物で凝縮した飽和水蒸気の凝縮水が下段の棚上に載置されている被滅菌物に落下することを防止できるように、前記上段の棚の下面が板状体で覆われている請求項1〜5のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項7】
板状体が、滅菌室内の側面の一面側に傾斜して設けられている請求項6記載の蒸気滅菌装置。
【請求項8】
滅菌室が、二重筒の内筒内に設けられており、前記滅菌室を加熱する加熱手段が、前記二重筒の外筒と内筒との間に形成されたジャケット部内に、前記内筒を加熱する水蒸気が導入されている請求項1〜7のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項1】
被滅菌物が搭載される複数段の棚が上下方向に内装又は挿脱可能に挿入されている滅菌室と、前記滅菌室の外周面側に設けられ、前記滅菌室を加熱する加熱手段とを具備し、前記滅菌室内に飽和水蒸気を導入して、前記棚に載置された被滅菌物を滅菌する蒸気滅菌装置であって、
前記滅菌室内の天井近傍の側面に開口された飽和水蒸気の導入口を覆うように設けられた、前記導入口よりも幅広の蒸気導入路が、前記滅菌室内の側面に沿って底面側に延出され、
且つ前記蒸気導入路に導かれた飽和水蒸気が前記滅菌室内の側面に沿って底面側に向かって噴出されるように、前記蒸気導入路の下端側に蒸気噴出口が設けられていることを特徴とする蒸気滅菌装置。
【請求項2】
蒸気導入路の下端側に設けられた蒸気噴出口に、飽和水蒸気が滅菌室内の側面に沿って噴出されるように、ガイド部材が設けられている請求項1記載の蒸気滅菌装置。
【請求項3】
蒸気導入路が、箱状の蒸気導入路である請求項1又は請求項2記載の蒸気滅菌装置。
【請求項4】
飽和水蒸気の導入口が、滅菌室内の天井側近傍の側面に開口されている請求項1〜3のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項5】
複数段の棚が、最下段の棚が蒸気導入路の蒸気噴出口以上の高さ位置となるように設けられている請求項1〜4のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項6】
複数段の棚が、滅菌室の内壁面との間に水蒸気が通過する隙間が形成されるように内装又は挿脱可能に挿入され、
且つ前記複数段の棚のうち、上段の棚自体及び載置されている被滅菌物で凝縮した飽和水蒸気の凝縮水が下段の棚上に載置されている被滅菌物に落下することを防止できるように、前記上段の棚の下面が板状体で覆われている請求項1〜5のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【請求項7】
板状体が、滅菌室内の側面の一面側に傾斜して設けられている請求項6記載の蒸気滅菌装置。
【請求項8】
滅菌室が、二重筒の内筒内に設けられており、前記滅菌室を加熱する加熱手段が、前記二重筒の外筒と内筒との間に形成されたジャケット部内に、前記内筒を加熱する水蒸気が導入されている請求項1〜7のいずれか一項記載の蒸気滅菌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−66099(P2009−66099A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236217(P2007−236217)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000148025)サクラ精機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000148025)サクラ精機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】
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