説明

蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法

【課題】 蒸気発生器用伝熱管からのNi溶出防止処理を、きわめて簡単な構成かつ低コストの装置で以って、少ない処理工数でかつ処理作業コストを低減して行い得る蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、前記伝熱管を蒸気発生器本体内に組み付け、表面処理液を前記蒸気発生器の高温流体出入口室を介して前記伝熱管内に通流させて、前記伝熱管内面に表面被膜を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電設備の蒸気発生器用伝熱管に適用され、Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電設備の蒸気発生器は、3000本程度の熱交換用の伝熱管をU字状に曲げて蒸気発生器本体内に組み付け、該伝熱管内を原子炉からの高温水(加熱流体)を通流させて給水と熱交換し、該給水から蒸気タービン駆動用の蒸気を発生させるように構成されている。
かかる伝熱管は、通常、高Niの(Ni含有量の多い)Ni−Cr−Fe系合金が使用されているが、原子炉との間を循環する高温水中で、該高温水と接触している伝熱管内面から合金中の主成分であるNiの溶解が生じることがある。
【0003】
前記のようなNiの溶解を防止するための、蒸気発生器用伝熱管内面の表面処理方法の1つとして、特許文献1(特開平5−195191号公報)の技術が提供されている。
かかる技術においては、Cr6+イオンを0.5グラム/リットル以上添加した濃度10〜40%で40℃以上の硝酸液中に0.1時間以上浸漬処理した後、
10-2〜10-4torrの真空中において、所定温度範囲で所定時間熱処理することによって、Ni等の伝熱管内への溶出を抑制している。
【特許文献1】特開平5−195191号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、特許文献1(特開平5−195191号公報)にて提供されている技術では、高NiのNi−Cr−Fe系合金製の蒸気発生器用伝熱管において、原子炉との間を循環する高温水中で伝熱管内面からNiの溶解が生じるのを抑制するため、該伝熱管硝酸液中に0.1時間以上浸漬処理した後、真空中において、所定温度範囲で所定時間熱処理を施している。
しかしながら、前記従来技術にあっては、前記伝熱管のNi溶出防止処理を、硝酸液槽中での浸漬処理と熱処理炉中での熱処理とを組み合わせて行うように構成されており、浸漬処理と熱処理を別途行っていたため、装置が複雑かつ大型となって装置コストが上昇するとともに、硝酸液槽中での浸漬処理と熱処理炉中での熱処理との2工程の処理を組み合わせて行うために、Ni溶出防止処理に多くの工数を要し、処理作業コストも上昇するという不具合があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、蒸気発生器用伝熱管からのNi溶出防止処理を、きわめて簡単な構成かつ低コストの装置で以って、少ない処理工数でかつ処理作業コストを低減して行い得る蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、Ni−Cr−Fe系合金(通常、30〜80%Ni、10〜40%Cr、および残りがFeの組成であり、具体的には、例えば、600合金の70%Ni、15%Cr、残りがFeの組成、あるいは690合金の60%Ni、30%Cr、残りがFeの組成などが挙げられる。)からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、前記伝熱管を蒸気発生器本体内に組み付け、表面処理液を前記蒸気発生器の高温流体出入口室を介して前記伝熱管内に通流させて、前記伝熱管内面に表面被膜を形成している。
前記表面処理液としては、硝フッ酸水溶液、硝酸水溶液、クエン酸水溶液等を用い、かかる表面処理液をポンプによって伝熱管内を循環させるのが好ましい。
ここで、本発明における「伝熱管」とは、伝熱細管単独、及び以下の実施形態に示すように前記伝熱細管を複数本束にした伝熱管束の双方を含む。
【0007】
前記発明に加えて、好ましくは次のように構成する。
(1)前記蒸気発生器本体内に、所定温度に加温した加温空気を供給して前記伝熱管を加温し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させる。
(2)前記蒸気発生器本体内に、所定温度に加温した純水を供給して前記伝熱管を加温し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させる。
【0008】
また、本発明は、Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、前記伝熱管を蒸気発生器本体から取り外した前記伝熱管単体の状態で、表面処理液を前記伝熱管内を通流させて、前記伝熱管内面に表面被膜を形成する。
【0009】
また、前記発明に加えて、好ましくは次のように構成する。
(1)前記伝熱管単体の状態で、前記伝熱管をヒーターで加温して所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させる。この場合、前記ヒーターは、伝熱管の複数本毎に束ねて巻回するのが好ましい。
(2)前記伝熱管を単体の状態で、該伝熱管を恒温層内に収納して所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させる。この場合、前記恒温層としては所定温度に加温された水を用い、この恒温水内に前記伝熱管を浸漬するのが好ましい。
【0010】
また、本発明は、Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、U字状に形成された前記伝熱管を単体の状態で、前記表面処理液の入口及び出口を上方に向けて立て、前記伝熱管の前記入口から表面処理液を注入し、前記伝熱管の内面を前記表面処理液に所定時間浸漬することにより、前記伝熱管内面に表面被膜を形成している。
【0011】
前記発明に加えて、好ましくは次のように構成する。
即ち、内部に加温された温水が収容されている温水槽内に前記伝熱管を浸漬し、前記伝熱管を所定温度に保持し、前記伝熱管内面を表面処理液に所定時間浸漬させる。
また本発明は、蒸気発生器から取り外した複数本の伝熱細管からなる伝熱管束の開口部の一方に入口ダクトを接続するとともに他方に出口ダクトを接続し、前記伝熱管束に同時に表面処理を施す方法も含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、伝熱管を蒸気発生器本体内に組み付けたままの状態で、所定の濃度に調製した表面処理液を、表面処理液循環用の管路に設けたポンプを用いて伝熱管内を通流させ、前記伝熱管内面に表面被膜を形成することによって、実際の運転時において前記伝熱管内面からのNiの伝熱管内加熱流体中への溶出を抑制できる。
【0013】
従って本発明によれば、伝熱管を蒸気発生器本体内に組み付けたまま、所定の濃度に調製した表面処理液を、ポンプを用いて一回の操作で複数本の伝熱細管からなる伝熱管内を通流させるという、きわめて簡単な操作でかつ少ない作業工数で、伝熱管内面からのNiの溶出防止処理を行うことができ、作業コストを低減できる。即ち、複数本の伝熱細管からなる伝熱管の処理を同時に行うことが可能となる。
また、伝熱管を蒸気発生器本体内に組み付けた状態で、蒸気発生器本体の高温流体出入口ノズルをそのまま利用し、表面処理液循環用の管及び循環用ポンプを設置するのみで、表面処理液を伝熱管に通流させることができるので、従来技術のように、格別な浸漬処理槽が不要となり、従来技術に比べて装置が簡単かつ小型になるとともに、装置コストを大幅に低減できる。
【0014】
また、前記発明に加えて、前記蒸気発生器本体内に、蒸気発生器本体のノズルを介して所定温度に加温した加温空気を供給して前記伝熱管を加温し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させるように構成し、あるいは前記蒸気発生器本体内に、所定温度に加温した純水を蒸気発生器本体のノズルを介して供給して前記伝熱管を加温し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させるように構成すれば、前記加温空気あるいは所定温度に加温した純水によって、伝熱管が外面側から加熱されて高温に保持された状態で、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることが可能であり、蒸気発生器そのものを利用する為、別途熱処理炉が不要となる。また、常温時よりも伝熱管内面における表面被膜の形成時間を短縮できるとともに、表面処理の作業工数を低減できる。
【0015】
また、本発明によれば、前記伝熱管を蒸気発生器本体から取り外し、前記伝熱管単体の状態で、表面処理液を前記伝熱管内に通流させて前記伝熱管内面に表面被膜を形成するので、伝熱管単体の状態で、所定の濃度に調製した表面処理液をポンプを用いて一回の操作で伝熱管内を通流させるという、きわめて簡単な操作でかつ少ない作業工数で、伝熱管内面からのNiの溶出防止処理を行うことができ、作業コストを低減できる。また、本発明は伝熱管単体で表面処理をする為、表面処理を実施する場所を自由に選択できる。
【0016】
また、前記発明に加えて、前記伝熱管単体の状態で、前記伝熱管をヒーターで加温して所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させるように構成すれば、前記ヒーターによって、前記伝熱管が外面側から加熱されて高温に保持された状態で、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることが可能となり、常温時よりも伝熱管内面における表面被膜の形成時間が短縮されて、表面処理の作業工数の低減化が図れる。
【0017】
また、前記発明に加えて、前記伝熱管単体の状態で、所定温度に保持された恒温層内に収納して前記伝熱管を所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させるように構成すれば、目標とする一定温度に管理された恒温層内に単体の伝熱管全体を収納して、伝熱管の外面側から一様に加熱し高温に保持するので、伝熱管の温度を常時目標の高温に保持した状態で、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることが可能となり、表面被膜の形成時間を最小限まで短縮できて、表面処理の作業工数のさらなる低減を実現できる。
【0018】
また、本発明によれば、前記伝熱管を、表面処理液入口及び出口を上方に向けて立てて、前記伝熱管の入口から表面処理液を注入し、前記伝熱管の内面を表面処理液に所定時間浸漬して前記伝熱管内面に表面被膜を形成するので、表面処理液を立てられた伝熱管内に流し込み一定時間保持するのみで、伝熱管内面に表面被膜を形成でき、表面処理液循環用のポンプや配管が不要となる。
【0019】
また、前記発明に加えて、内部に加温された温水が収容された温水槽内に前記伝熱管を浸漬して、前記伝熱管を所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させるように構成すれば、高温に保持された温水槽内に単体の伝熱管全体を収納して、前記伝熱管の温度を常時高温に保持した状態で、前記伝熱管内に表面処理液を流し込み一定時間保持することが可能となり、前記各発明よりも簡単な手段で表面被膜の形成時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
ここで、以下の実施の形態において、「伝熱管」とは、伝熱細管単独、及び前記伝熱細管を複数本束にした伝熱管束の双方を含む。
図1は本発明の第1実施形態に係る蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法を示す要部断面図である。
図1において、100は蒸気発生器、1は蒸気発生器100の蒸気発生器本体を構成するシェル、120はシェル1の下部内周に固定された管板、2は下端部を管板120に支持された伝熱管である。これら伝熱管2は高NiのNi−Cr−Fe系合金からなり、下端部が開放されたU字状の曲管に形成され、各伝熱管2の下端部が前記管板120にロウ付け等によって固定されている。
4は高温流体(高温水)が導入される高温流体入口室、5は高温流体出口室であり、これら高温流体入口室4と高温流体出口室5とは仕切板04で仕切られている。10は高温流体入口室4に高温流体を導入するための高温流体入口ノズル、11は高温流体出口室5からの高温流体を導出するための高温流体出口ノズルである。
【0021】
3は前記伝熱管2の中間部の複数箇所を支持する管支持板、9は前記シェル1の内周に固定されたラッパー筒であり、該ラッパー筒9により各管支持板3の外周部が支持されている。01は前記シェル1のダウンカマー、6はシェル1内部の上方部位に形成された蒸気室、7はダウンカマー01に給水を導入するための給水入口ノズル、8は蒸気室6内の蒸気を導出するための蒸気出口ノズルである。
【0022】
このように構成された蒸気発生器100の運転時においては、図示しない原子炉で生成された高温流体(高温水)が高温流体入口ノズル10から高温流体入口室4に導入され、高温流体入口室4に開口する伝熱管2に入り、伝熱管2内を通流する間に給水入口ノズル7からダウンカマー01に導入された給水と熱交換し、該給水を加熱して蒸気を発生せしめている。
かかる熱交換によって降温された高温流体は、前記伝熱管2内から高温流体出口室5に流出し、高温流体出口ノズル11を通って原子炉に戻されている。一方、前記高温流体との熱交換により給水から発生した蒸気は蒸気室6に溜められた後、蒸気出口ノズル8を通って図示しない蒸気タービンに送られ、膨張仕事を行い動力を発生せしめている。
【0023】
本発明は、以上のように構成された蒸気発生器用伝熱管2の表面処理方法に係るものである。
本発明の第1実施形態では、伝熱管2をシェル(蒸気発生器本体)1内に組み付けたままの状態、つまり蒸気発生器100の組立状態で、蒸気発生器100の高温流体入口ノズル10及び高温流体出口ノズル11を利用して、処理液ポンプ12が介装された処理液管13の入口フランジ13aを高温流体入口ノズル10に接続し、処理液管13の出口フランジ13bを高温流体出口ノズル11に接続し、処理液ポンプ12によって表面処理液を伝熱管2に通流させるように構成している。
【0024】
前記表面処理液としては、硝フッ酸水溶液、硝酸水溶液、クエン酸水溶液等が用いられ、好ましくは、0.1〜5重量%のフッ酸水溶液と3〜30重量%の硝酸水溶液にて調製した硝フッ酸水溶液、5〜50重量%の硝酸水溶液、5〜20重量%のクエン酸水溶液(あるいはクエン酸アンモン水溶液、以下同じ)を用いる。これら所定の濃度に調製した表面処理液は、前記処理液ポンプ12によって、処理液管13から高温流体入口室4を経て多数の伝熱管2内に入り、伝熱管2内を通流する間に伝熱管2の内面に表面被膜が形成される。即ち、表面処理液は、伝熱管2内面に表面被膜を形成しつつ、処理液ポンプ12→処理液管13→高温流体入口室4→伝熱管2内→高温流体出口室5→処理液管13→処理液ポンプ12の経路を循環するようになっている。なお、本発明の第1実施形態では、まず最初に伝熱管2の内面を硝フッ酸水溶液にて処理し、使用上好ましくない腐食した酸化皮膜であるスケールを溶解させた後、硝酸水溶液処理してCrを濃縮させた酸化表面被膜を形成させる。Crを濃縮させた表面皮膜を形成させることにより、Ni(ニッケル)の流出が抑制される。硝フッ酸処理工程としては、0.1〜5重量%HF、3〜30%重量HNO3で調製した硝フッ酸水溶液を用いて、室温〜100℃にて30〜120分間の処理が好適に挙げられる。また、前記硝酸処理工程としては、5〜50%HNO3水溶液を用いて、室温〜100℃にて30〜120分間の処理条件が挙げられる。また、別に、まず最初にクエン酸水溶液にて流通処理し、スケールを除去した後、硝酸水溶液により表面皮膜を形成させてもよい。
【0025】
このように第1実施形態によれば、伝熱管2をシェル(蒸気発生器本体)1内に組み付けたままの状態で、所定の濃度に調製した表面処理液を、表面処理液循環用の管路である処理液管13に設けた処理液ポンプ12を用いて伝熱管2内を通流させ、伝熱管2内面に表面処理により表面被膜を形成することによって、実際の運転時における伝熱管2内面からのNiの伝熱管内加熱流体中への溶出を抑制できる。本発明は、伝熱管を蒸気発生器本体に組み付けて伝熱管内の表面処理をする方法であるので、新品の伝熱管の洗浄に対し適用可能である方法であることは勿論のこと、実機の運転を止めて第1実施形態により伝熱管内の表面処理を行うことも可能である。
【0026】
したがって、第1実施形態によれば、伝熱管2を蒸気発生器本体内に組み付けたまま、所定の濃度に調製した表面処理液を、処理液ポンプ12を用いて一回の操作で複数本の伝熱細管からなる伝熱管2内を通流させるという、きわめて簡単な操作でかつ少ない作業工数で、伝熱管2内面からのNiの溶出防止処理を行うことができ、作業コストを低減できる。
また、前記のように、伝熱管2をシェル(蒸気発生器本体)1内に組み付けた状態で、シェル(蒸気発生器本体)1の高温流体出入口10,11のノズルをそのまま利用し、表面処理液循環用の処理液管13及び処理液循環用の処理液ポンプ12を設置するのみで表面処理液を伝熱管2に通流させることができるので、従来技術のような格別な浸漬処理槽や熱処理炉が不要となり、かかる従来技術に比べて装置が簡単かつ小型になる。
【0027】
図2は本発明の第2実施形態を示す図1に対応した要部断面図である。
この第2実施形態においては、前記第1実施形態に加えて、シェル(蒸気発生器本体)1の上部における給水入口ノズル7を利用して、空気供給装置15から所定温度に加温された加温空気が通流する空気管14の入口フランジ14aを給水入口ノズル7に接続し、空気供給装置15から所定温度に加温した加温空気をダウンカマー01内に供給して伝熱管2を加温し(加温空気の温度は、室温より高い温度から100℃以下の温度範囲で表面処理をすることが好ましい。)、前記第1実施形態と同様に、伝熱管2内に表面処理液を通流させるように構成している。
前記第1実際形態と同一の部材は同一の符号で示し、説明を省略する。
【0028】
かかる第2実施形態によれば、所定温度に加温した加温空気によって、伝熱管2が外面側から加熱され、高温に保持された状態で、伝熱管2内に表面処理液を通流させることが可能となり、前記第1実施形態のような常温時よりも伝熱管2内面における表面被膜の形成時間を短縮できるとともに、表面処理の作業工数を低減できる。
その他の構成及び手順は前記第1実施形態(図1)と同様である。
【0029】
図3は本発明の第3実施形態を示す図1に対応した要部断面図である。
この第3実施形態においては、前記第1実施形態に加えて、シェル(蒸気発生器本体)1の上部における給水入口7のフランジを利用して、純水タンク19から純水ポンプ18により所定温度に加温された純水を供給するための純水管17の入口フランジ17aを給水入口ノズル7に接続し、純水ポンプ18により、所定温度に加温した純水を水室01内に供給して伝熱管2を加温し、前記第1実施形態と同様に、伝熱管2内に表面処理液を通流させるように構成している。該加温水の加熱により、室温より高い温度から100℃以下の温度範囲で表面処理をすることが好ましい。
なお、前記第1実際形態と同一の部材は同一の符号で示し、説明を省略する。
【0030】
かかる第3実施形態によれば、所定温度に加温した純水によって伝熱管2が外面側から加熱され、高温に保持された状態で、伝熱管2内に表面処理液を通流させることが可能となり、前記第1実施形態のような常温時よりも伝熱管2内面における表面被膜の形成時間を短縮できるとともに、表面処理の作業工数を低減できる。
その他の構成及び手順は前記第1実施形態(図1)と同様である。
【0031】
図4は、本発明の第4実施形態に係る伝熱管単体の表面処理方法を示す要部側面図である。
この第4実施形態においては、図4に示すように、伝熱管2を蒸気発生器100のシェル1内に組み込む前、あるいは蒸気発生器100から取り外した伝熱管2単体の状態で、伝熱管2入口側に入口ダクト23を接続し、伝熱管2出口側に出口ダクト24を接続し、さらにこれら入口ダクト23と出口ダクト24との間を、処理液ポンプ12が介装された処理液管13で接続している。図4に示すように、ダクト23,24に安定して伝熱管2を接続するため、固定板121を設けてもよい。
【0032】
そして、この第4実施形態において、表面処理液は、処理液ポンプ12によって、処理液管13から入口ダクト23を経て多数の伝熱管2内に入り、該伝熱管2内を通流する間に伝熱管2内面に該表面処理液の表面被膜を形成している。即ち、表面処理液は伝熱管2内面に表面被膜を形成しつつ、処理液ポンプ12→処理液管13→入口ダクト23→伝熱管2内→出口ダクト24→処理液管13→処理液ポンプ12の経路を循環するようになっている。なお、第4実施形態の表面処理方法の前には、前記硝フッ酸処理を行っている。
本実施形態も第1実施形態と同様な表面処理液、スケール除去してから、クロム含有量の多い表面皮膜を形成する表面処理工程を適用することができる。
【0033】
このように第4実施形態によれば、伝熱管2を蒸気発生器100から取り外した、伝熱管2単体の状態で、表面処理液を伝熱管2内を通流させて伝熱管2内面にクロム含有量の多い表面被膜を形成するので、伝熱管単体の状態で、所定の濃度に調製した表面処理液を処理液ポンプ12を用いて一回の操作で複数の伝熱管2内を通流させる事も可能という、きわめて簡単な操作でかつ少ない作業工数で、伝熱管2内面からのNiの溶出防止処理を行うことができ、作業コストを低減できる。
さらにかかる第4実施形態によれば、所望の本数の伝熱管の表面処理が可能となる。
【0034】
図5は本発明の第5実施形態を示す図4に対応した要部側面図である。
この第5実施形態においては、前記第4実施形態に加えて、伝熱管2の外周にヒーター25を巻回し、ヒーター25により伝熱管2を加温して所定温度に保持し、前記第4実施形態と同様な手順で、伝熱管2内に表面処理液を通流させるように構成している。ヒーター25はケーブル27を介して電源26に接続されている。なお、前記第4実際形態と同一の部材は同一の符号で示し、説明を省略する。
かかる第5実施形態によれば、ヒーター25によって、伝熱管2が外面側から加温されて高温に保持された状態で、伝熱管2内に表面処理液を通流させることが可能となり、前記第4実施形態の常温時よりも伝熱管2内面における表面被膜の形成時間を短縮できるとともに、表面処理の作業工数を低減できる。該ヒーター25の加熱により、室温より高い温度から100℃以下の温度範囲で表面処理をすることが好ましい。
その他の構成及び手順は前記第4実施形態(図4)と同様である。
【0035】
図6は本発明の第6実施形態に係る伝熱管単体の表面処理方法を示す要部側面図である。
この第6実施形態においては、前記第4実施形態と同様に、前記伝熱管2を蒸気発生器100のシェル1内に組み込む前、あるいは蒸気発生器100から取り外した伝熱管2単体の状態で、伝熱管2の入口側に入口ダクト23を接続し、伝熱管2の出口側に出口ダクト24を接続し、さらにこれら入口ダクト23と出口ダクト24との間を、処理液ポンプ12が介装された処理液管13で接続している。
さらにこの第6実施形態においては、前記のような第4実施形態と同様な伝熱管2の表面処理用組立体を、所定温度に加温流体(恒温層)28が収容された恒温槽025内に横置きに収納して、恒温槽025内を所定温度に保持し、伝熱管2内に表面処理液を通流させている。
29は温度制御装置であり、前記加温流体28への加熱量あるいは冷却量を調整して、加温流体(恒温層)28の温度を目標温度に制御している。なお、前記第4実際形態と同一の部材は同一の符号で示し、説明を省略する。該加温流体の加熱により、室温より高い温度から100℃以下の温度範囲で表面処理をすることが好ましい。
【0036】
かかる第6実施形態によれば、目標とする一定温度に管理された加温流体(恒温層)28内に伝熱管2の表面処理用組立体を収納して、伝熱管2を外面側から一様に加熱し高温に保持するので、伝熱管2の温度を常時目標の高温に保持した状態で、伝熱管2内に表面処理液を通流させることが可能となり、表面被膜の形成時間を最小限まで短縮できるとともに、前記第4〜第5実施形態よりも表面処理の作業工数がさらに低減できる。
【0037】
図7は本発明の第7実施形態に係る伝熱管単体の表面処理方法を示す要部側面図である。
この第7実施形態においては、U字状に形成された前記伝熱管2を単体の状態で、表面処理液の入口及び出口を上方に向けて立て、注入口31を有する表面処理液の入口室30より伝熱管2内に表面処理液を注入して満たし、伝熱管2の内面を前記表面処理液に所定時間浸漬することにより、該伝熱管2内面に表面処理液の表面被膜を形成するように構成されている。なお、第7実施形態の表面処理方法の前には、前記スケール除去の為の硝フッ酸処理やクエン酸処理を行うこともある。
かかる第7実施形態によれば、複数のチューブを一纏めにできる部材である前記固定板121に伝熱管2を取り付けることにより、複数の伝熱細管からなる伝熱管2を一つの処理液の注入口で一度に表面処理をする事ができる。また、図7に示される様に複数の伝熱細管を一纏めにできる固定板121にR部の径の小さいU字状の伝熱細管を内側から連結していくと、小スペースで以って伝熱管2を一度に表面処理することができる。
【0038】
また、かかる第7実施形態によれば、前記伝熱管2を、表面処理液入口及び出口を上方に向けて立てて、注入口31及び入口室30を通して伝熱管2の入口から表面処理液を注入し、伝熱管2の内面を表面処理液に所定時間浸漬して伝熱管2内面に表面被膜を形成するので、表面処理液を、立てられた伝熱管2内に重力によって流し込み一定時間保持するのみで、伝熱管2内面に表面被膜を形成でき、表面処理液循環用の処理液ポンプや処理液管が不要となる。
【0039】
図8は本発明の第8実施形態を示す図6対応図である。
この第8実施形態においては、前記第7実施形態と同様に、U字状に形成された伝熱管2を単体の状態で、内部に加温された温水34が収容された温水槽33内に伝熱管2を浸漬して表面処理液の入口及び出口を上方に向けて立てて、温水34によって伝熱管2を所定温度に昇温して保持し、複数の伝熱細管を一纏めにできる固定板121に取り付けられた表面処理液の注入口31及び入口室30を通して伝熱管2内に表面処理液を注入し、伝熱管2の内面を表面処理液に所定時間浸漬することにより、伝熱管2内面にクロム含有量の多い表面被膜を形成するように構成されている。前記伝熱管2の反対側の開口部は図8のように複数の伝熱細管を一纏めにできる固定板121に固定すると、より安定に表面処理が行える。また、該加温水の加熱により、室温より高い温度から100℃以下の温度範囲で表面処理をすることが好ましい。
尚、前記第7実際形態と同一の部材は同一の符号で示し、説明を省略する。
【0040】
かかる第8実施形態によれば、高温に保持された温水槽33内に単体の伝熱管全体を収納して、伝熱管2の温度を常時高温に保持した状態で、伝熱管2内に表面処理液を流し込み一定時間保持することが可能となり、簡単な手段で前記各実施形態よりも表面被膜の形成時間を短縮できる。
その他の構成及び手順は前記第7実施形態(図7)と同様である。
【0041】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法を示す要部断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す図1に対応した要部断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す図1に対応した要部断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る伝熱管単体の表面処理方法を示す要部側面図である。
【図5】本発明の第5実施形態を示す図4に対応した要部側面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る伝熱管単体の表面処理方法を示す要部側面図である。
【図7】本発明の第7実施形態を示す図4に対応した要部側面図である。
【図8】本発明の第8実施形態を示す図6に対応した要部側面図である。
【符号の説明】
【0043】
100 蒸気発生器
01 ダウンカマー
2 伝熱管
3 管支持板
04 仕切板
4 高温流体入口室
5 高温流体出口室
6 蒸気室
7 給水入口ノズル
8 給水出口ノズル
9 外筒
10 高温流体入口ノズル
11 高温流体出口ノズル
12 処理液ポンプ
120 管板
121 固定板
13 処理液管
14 空気管
15 空気供給装置
17 純水管
18 純水ポンプ
19 純水タンク
23 入口ダクト
24 出口ダクト
25 ヒーター
025 恒温槽
26 電源
27 ケーブル
28 加温流体
29 温度制御装置
30 入口室
31 注入口
33 温水槽
34 加温流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、前記伝熱管を蒸気発生器本体内に組み付け、表面処理液を前記蒸気発生器の高温流体出入口室を介して前記伝熱管内に通流させて、前記伝熱管内面に表面被膜を形成することを特徴とする蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項2】
前記蒸気発生器本体内に、所定温度に加温した加温空気を供給して前記伝熱管を加温し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項3】
前記蒸気発生器本体内に、所定温度に加温した純水を供給して前記伝熱管を加温し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項4】
Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、前記伝熱管を蒸気発生器本体から取り外した前記伝熱管単体の状態で、表面処理液を前記伝熱管内を通流させて、前記伝熱管内面に表面被膜を形成することを特徴とする蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項5】
前記伝熱管を単体の状態で、前記伝熱管をヒーターで加温して所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることを特徴とする請求項4に記載の蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項6】
前記伝熱管を単体の状態で、前記伝熱管を恒温層内に収納して所定温度に保持し、前記伝熱管内に表面処理液を通流させることを特徴とする請求項4に記載の蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項7】
Ni−Cr−Fe系合金からなる蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法であって、U字状に形成された前記伝熱管を単体の状態で、前記表面処理液の入口及び出口を上方に向けて立て、前記伝熱管の前記入口から表面処理液を注入し、前記伝熱管の内面を前記表面処理液に浸漬することにより、前記伝熱管内面に表面被膜を形成することを特徴とする蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項8】
内部に加温された温水が収容されている温水槽内に前記伝熱管を浸漬し、前記伝熱管を保持し、前記伝熱管内面を表面処理液に浸漬させることを特徴とする請求項7に記載の蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。
【請求項9】
蒸気発生器から取り外した状態の複数本の伝熱細管からなる伝熱管束の開口部の一方に入口ダクトを接続するとともに他方に出口ダクトを接続し、前記伝熱管束を同時に表面処理を施すことを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の蒸気発生器用伝熱管の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−292531(P2006−292531A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113062(P2005−113062)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】