説明

蓄光剤入り誘導ブロック

【課題】 夜間の視認性が良い上に耐久性に優れた誘導プレートを安価に提供すること。
【解決手段】 プレートの表面に点字用凸部を有する誘導ブロックにおいて、プレート表面の凸部の中央部分の10〜90%が、蓄光剤を1〜20%含有するゴムまたは樹脂からなる畜光部分であり、それ以外の部分がゴムまたは樹脂からなる補強部分である誘導ブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者を安全に誘導する誘導ブロックに関するものであり、とくに視覚障害者用誘導ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩道やプラットホーム、地下道に設置された歩行者を誘導する誘導ブロックとしては、コンクリートや陶器が一般的であるが、最近では樹脂製、樹脂モルタル製等も見られるようになり、それらの施工には、アスファルトやコンクリートの下地面に施工すべきタイルやブロックの形状にあわせた基礎工事や接着剤処理を行う施工方法が取られている。
また、最近、福祉施設や公共施設などの屋内用に樹脂製、ゴム製の誘導プレートが使用され始めており、発光材料を用いて視認性を高めたブロックも知られている。
【特許文献1】特開平8−302968号(特許請求の範囲、[0004]、[0005]、[0006])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、視認性を高めるために蓄光剤などの発光材料をゴムまたは樹脂に練りこむ場合、カーボンブラック等の他の補強剤と併用すると発光性能が著しく低下してしまうために、補強剤を添加する事は出来ない。そのため、発光材料を添加したゴムまたは樹脂は耐久性が弱く、履物等で踏まれ続けると崩れてしまうために誘導プレートとしては使えない。さらに、蓄光剤等の発光材料は非常に高価な材料であるため、プレート全面に発光材料を練りこんだ材料を使用すると非常に高価な誘導プレートになってしまう。
本発明は、これらの従来の欠点を解消したものであり、視認性が高く、耐久性能が高い誘導ブロックを安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、プレートの表面に点字用凸部を有する誘導ブロックにおいて、プレート表面の凸部の中央部分の10〜90%が、蓄光剤を1〜20%含有するゴムまたは樹脂からなる畜光部分であり、それ以外の部分がゴムまたは樹脂からなる補強部分である誘導ブロックを提供することにより達成される。
【0005】
さらに、上記目的は、上記プレート表面の凸部の中央部分の20〜70%が、蓄光剤を1〜20%含有するゴムまたは樹脂からなる畜光部分である誘導ブロックを提供することでより好適に達成される。
【0006】
さらに、上記目的は、上記プレートの補強性を有したゴムまたは樹脂から成る部分が、50〜95度のデュロメーター硬さを有する誘導ブロックを提供することでより好適に達成される。
【0007】
さらに、上記目的は、上記プレートの、プレートの素材が、エチレン−プロピレン共重合体ゴムまたはアクリルニトリル−ブタジエン共重合体ゴムを含む素材である誘導ブロックを提供することでより好適に達成される。
【0008】
さらに、上記目的は、上記プレートの裏面の総面積の15〜90%に、凹部を単数または複数個有し、凹部に面フアスナーを設けた、床面と着脱自在な、誘導ブロックを提供することでより好適に達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、夜間でも視認性が高く、しかも耐久性が高い誘導ブロックを安価に提供することができる。また、プレートは、ゴムまたは樹脂製であるために、クッション性があり、車椅子やベビーカーが通り抜ける場合、振動を柔らげたり、誤ってプレート上で転倒しても、衝撃を柔らげる効果がある。また、裏面の凹部にフアスナーを設けることにより、歩行中にめくり上がることのない誘導ブロックを安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、図1のようにプレート1の表面の円錐状の凸部3の中央部分の10〜90%が、蓄光剤を1〜20%含有するゴムまたは樹脂からなる蓄光部分2であり、それ以外の部分がゴムまたは樹脂からなる補強部分である成形体にすることで、夜間でも視認性が高く、また履物に踏まれる領域に補強性を有したゴムまたは樹脂にすることで耐久性が高く、さらにまた高価な蓄光剤を使用する領域を極力減らすことで安価な誘導ブロックにすることが出来る。プレート表面の蓄光部分の占める面積は20〜70%にすることがより好適である。蓄光部分の占める面積が10を下まわると視認性が低くなり、また90%を越えると耐久性が不十分となる。ここで、蓄光部分が、プレートの表面の凸部の中央部分の10〜90%を占めるとは、凸部の頂上のほぼ平面状の表面の面積に対して凸部の中央部分の蓄光部分の面積が10〜90%を占めることを意味する。また、蓄光部分は凸部の頂上表面からある程度の深さまで設けられていることが必要であり、その深さは2〜30mmの範囲から選ばれる。
【0011】
プレートは、50〜95度のデュロメーター硬さ(JIS−6253−5)を有していることが好適であり、さらに好適には55〜90度であり、最適には55〜80度である。プレートの硬さが50度を下まわる場合は、柔軟性に富んでおり施工性は良好であるが、ゴムの摩擦係数が高くなり、プレート上を歩行する場合に、履物とプレートとの間に適度な滑り性がなくなり、突っかかるような感覚が発生しやすいし、またプレートと履物との間の摩擦係数が大きいことにより、履物底の汚れや履物の色がプレートに擦りつけられプレートが汚れやすくなる。また、逆に硬さが95度を超える場合には、プレートの汚れ問題はないが、プレートの柔軟性がなくなり施工性が極端に悪くなる恐れがある。
【0012】
補強部分のプレート(含凸部)の材料としては、ゴムまたは樹脂が使用されるが、ゴム製のプレートが、柔軟性に優れ、施工が容易であることから好適である。ゴム製のプレートである場合は、凹凸のある床面の場合でも施工には障害とならないし、さらに特別な施工技術を必要とすることがなく、敷設工事費も安価である。
【0013】
ゴム製のプレートとしては、天然ゴム、合成ゴムいずれでも使用できるが、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(エチリデンノルボルネンなど)共重合体ゴム(EPDM)、スチレンーブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、多硫化ゴム(OT、BOT)、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(ニトリルゴム)(NBR)、イソプレン−イソブチレン共重体(ブチルゴム)(IIR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴムのうち、EPM、EPDM、NBRが好適である。また、これらのゴム成分は単独または複数を混合して使用することもできる。
【0014】
また、樹脂製のプレートとしては、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂があげられる。前記したゴム成分と樹脂成分とは混合して使用することもできる。たとえば、NBRと塩化ビニル系樹脂との混合物は好適な態様である。
また、蓄光部分は、蓄光剤をゴムまたは樹脂に練りこむことにより得られるが、蓄光剤の含有量はゴムまたは樹脂に対し1〜20重量%である。蓄光剤としては、とくに制限はないが、根本特殊化学株式会社製のG−300M、BG−300Mが好適である。また蓄光剤を練り込むゴムまたは樹脂は、補強部分のプレートとの接着性を考慮するとプレート層と同じ種類の材料が好適であるが、充分な接着力が得られるのであれば別の種類の材料でも構わない。
【0015】
プレートの裏面に凹部を設け、凹部に面ファスナーを設けることにより、これを床面に固定した場合、プレート面と床面に隙間(プレート面の浮き上がり)が見られないか、または極めて少ないため、歩行者が履物をプレートに引っ掛けてプレートの端がめくり上がったり、またそのため転倒したりすることがない。プレートの裏面の凹部に面フアスナーを設ける方法としては、プレートを接着剤により接着する方法、またプレートがゴムである場合は、未加硫ゴムのプレートの裏面の凹部に、接着剤を塗布したファスナーを重ね、加熱加硫して、一体成形する方法が挙げられる。
プレートの裏面の凹部は、プレートの裏面の総面積の15〜90%を占めることが重要で、好適には30〜90%である。
【0016】
プレートの裏面の凹部に設けるフアスナーとしては、一般に使用されている樹脂成形による、鉤状、きのこ形状、錨形状または矢じり形状のフックからなる面フアスナーが挙げられるが、このうちきのこ形状、錨形状または矢じり形状のフックからなる面フアスナーが、床材に、より強固に固定することから好適である。具体的には、クラレ社製「マジロック」(登録商標)、クラレ社製「マルチロック」、アプリックス社製「APLIX#224」(登録商標)が挙げられる。面フアスナーの素材としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂が好適であるが、金属(鋼鉄、銅など)も使用できる。
このようなフアスナーを設けた誘導ブロックは、床材がループからなる面フアスナーを貼り付けた床材、あるいはタイルカーペットである場合に極めて有効である。
また、表面にフックを有する床材の場合は、プレートの裏面の凹部に設ける面フアスナーとして、ループからなる面フアスナーも使用することができる。
【0017】
図2は、本発明の他の実施態様のブロック(角錐台状の凸部6を有するプレート4)を示し、凸部6の中央部分に長方形状の蓄光部分5がある。
【0018】
図3は、図1の断面図を示し、凸部9の中央部分に蓄光部分8がある。蓄光部分は、補強性に乏しい蓄光部分はゴムまたは樹脂からなる補強部分の中央部分に設けることで、履物に踏まれても崩れることがない。さらに、蓄光部分は、補強部分から剥がれないようにするため、蓄光部分8の下面が上面より大きくなるように、たとえば図3に示すとおり、断面が台形状になるようにし、補強部分に引っかかる形状にすることが望ましい。このような構成の複合成形体は、蓄光部分をあらかじめプレス成形または射出成形により成形しておき、次いで補強部分用の金型に成形済みの蓄光部分を置いて、未加硫の補強部分用ゴムをプレス成形または射出成形にて加硫することにより得られる。また、プレートの裏面の凹部10に、ファスナー11が取り付けられている。面フアスナーの全体を凹部に沈ませることで、面ファスナーの高さを吸収して、裏面の浮き上がりをなくするか、または極めて小さくすることができる。そのため、プレートがめくりあがることがない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の誘導ブロックは、福祉施設、公共施設(学校、市庁舎、体育舘など)、商業施設(デパート、スーパーマーケットなど)などの屋内用誘導ブロックとして、とくに面フアスナーを設けた床材、またはタイルカーペットからなる床材の上に設けられる誘導ブロックとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施態様のブロックの斜視図である。
【図2】本発明の他の実施態様のブロックの平面図である。
【図3】図1のブロックの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 プレート
2 プレート表面の凸部の中央部分の蓄光部分
3 プレート表面の凸部(円錐状)
4 プレート
5 プレート表面の凸部の中央部分の蓄光部分
6 プレート表面の凸部(角錐状)
7 プレート
8 プレート表面の凸部の中央部分の蓄光部分
9 プレート表面の凸部(円錐状)
10 プレート裏面の凹部
11 プレート裏面の凹部取り付けのファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートの表面に点字用凸部を有する誘導ブロックにおいて、プレート表面の凸部の中央部分の10〜90%が、蓄光剤を1〜20%含有するゴムまたは樹脂からなる畜光部分であり、それ以外の部分がゴムまたは樹脂からなる補強部分である誘導ブロック。
【請求項2】
プレート表面の凸部の中央部分の20〜70%が、蓄光剤を1〜20%含有するゴムまたは樹脂からなる畜光部分である、請求項1記載の誘導ブロック
【請求項3】
補強性を有したゴムまたは樹脂から成る部分が、50〜95度のデュロメーター硬さを有する請求項1または2に記載の誘導ブロック。
【請求項4】
プレートの素材が、エチレン−プロピレン共重合体ゴムまたはアクリルニトリル−ブタジエン共重合体ゴムを含む素材である請求項1〜3のいずれかに記載の誘導ブロック。
【請求項5】
プレートの裏面の総面積の15〜90%に、凹部を単数または複数個有し、凹部に面フアスナーを設けた、床面と着脱自在な請求項1〜4のいずれかに記載の誘導ブロック。
【請求項6】
誘導ブロックが、視覚障害者用誘導ブロックである請求項1〜5のいずれかに記載の誘導ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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