説明

蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法

【課題】庫内の温度設定を変える手間を無くし、被冷凍冷蔵物の温度を不必要に下げず、必要以上に冷やされた被冷凍冷蔵物の熱を蓄熱として利用して効率上昇を図り、電力の平準化を図る。
【解決手段】庫内設定温度をA℃で使用する冷凍冷蔵庫Aと、庫内設定温度をA℃よりも高い温度B℃で使用する冷凍冷蔵庫Bと、庫内設定温度をB℃よりも高い温度C℃で使用する冷凍冷蔵庫Cと、凝固点が前記温度A℃より高く前記温度B℃よりも低い潜熱蓄熱材aと、凝固点が前記温度B℃より高く前記温度C℃よりも低い潜熱蓄熱材bと、を備え、蓄熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫A内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫B内に配設し、放熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫B内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫C内に配設して運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法に関するものであり、特に、深夜電力等を利用して蓄熱を行い、その蓄熱エネルギーを昼間利用する蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、昼夜間の電力需要格差を軽減するために、一般に需要の少ない深夜電力を利用して基本冷凍サイクルを運転させて潜熱材を凍結させておき、昼間の電力消費がピークとなる時間帯にその蓄熱エネルギーを利用して電力消費を低減させる蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1等で知られる従来の蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫は、例えば図2にその模式図を示すように、庫51内に設置されている空気冷却器52を蒸発器として通常の基本冷凍サイクルを構成してなる冷凍冷蔵設備と容器内に蓄熱剤を封入してなる潜熱蓄熱材53を庫51内に配置した構成になっている。
【0004】
そして、夜間には空気冷却器52の運転により庫51内の温度を潜熱蓄熱材53の凝固点(例えば、−25℃)よりも低い、温度(例えば−30℃位)を下げて潜熱蓄熱材53を凍らせ、昼間の放熱運転時には潜熱蓄熱材53で蓄積された蓄熱エネルギーを使用して空気冷却器52の運転を停止あるいは弱め、被冷凍冷蔵物(内容物)54に対して許される設定温度を例えば−25℃より高い温度に設定して運転する。これにより、需要の少ない深夜に電力を使用し、電力消費がピークとなる昼間の時間帯には電力消費を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−322412号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の冷凍冷蔵庫は、凝固点が庫内設定温度より低い潜熱蓄熱材を各庫内に1台または複数台を固定設置して、冷凍冷蔵を行っている。
【0007】
この方法では、蓄熱運転時には放熱運転時よりも庫内の設定温度を下げる必要があり、また潜熱蓄熱材以外の被冷凍冷蔵物の温度も一旦下げなければならない。このため、必要以上に冷凍冷蔵設備の効率を低下させることになる。したがって、被冷凍冷蔵物の品質による温度管理が厳しく庫内温度を下げてはならない場合には適用できないと言う問題点があった。
【0008】
そこで、冷凍冷蔵庫内の温度設定を変える手間を無くし、また潜熱蓄熱材以外の被冷凍冷蔵物の温度を不必要に下げずに、さらに必要以上に冷やされた被冷凍冷蔵物の熱が蓄熱として利用されずに搬出されてしまう熱ロスを防止することによって冷凍冷蔵機の効率上昇を図るとともに、昼夜間の電力需要格差を無くして平準化を図るために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、空気冷却器を蒸発器として通常の基本冷凍サイクルを構成してなる冷凍冷蔵設備と、移動可能な潜熱蓄熱材を庫内に配設してなる蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法において、庫内設定温度をA℃で使用する冷凍冷蔵庫Aと、庫内設定温度をA℃よりも高い温度B℃で使用する冷凍冷蔵庫Bと、庫内設定温度をB℃よりも高い温度C℃で使用する冷凍冷蔵庫Cと、凝固点が前記温度A℃より高く前記温度B℃よりも低い潜熱蓄熱材aと、凝固点が前記温度B℃より高く前記温度C℃よりも低い潜熱蓄熱材bと、を備え、蓄熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫A内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫B内に配設し、放熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫B内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫C内に配設して運転する蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法を提供する。
【0010】
この運転方法によれば、蓄熱運転時、被冷凍冷蔵物は庫内に置き、各潜熱蓄熱材だけをそれぞれ潜熱蓄熱材の凝固点よりも低い温度の庫内に移して凍結させて蓄熱を行うので、潜熱蓄熱材以外の被冷凍冷蔵物までも不必要に温度を下げることがなくなる。そして、蓄熱後に放熱運転をする時には、凍結して蓄熱された各潜熱蓄熱材だけをその凝固点よりも高い庫内に移せば、その潜熱蓄熱材の蓄熱エネルギーを利用して冷凍冷蔵を行うことができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の方法において、上記蓄熱運転を深夜電力使用時に設定してなる蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法を提供する。
【0012】
この方法によれば、需要の少ない深夜電力を利用して蓄熱し、昼間の電力消費がピークとなる時間帯にその蓄熱エネルギーを利用できる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、蓄熱運転時に、潜熱蓄熱材以外の被冷凍冷蔵物の温度を不必要に下げることがなくなり、また必要以上に冷やされた被冷凍冷蔵物の熱が蓄熱として利用されずに、搬出されてしまう熱ロスも防止することができるので、効率の低下を防ぐことができる。さらに、温度の下げ過ぎにより被冷凍冷蔵物の品質低下を防ぐことができるので、温度管理が厳しく庫内温度を下げてはならない場合にも適用できる。
【0014】
請求項2記載の発明は、需要の少ない深夜電力を利用して蓄熱し、昼間の電力消費がピークとなる時間帯にその蓄熱エネルギーを利用できるので、昼夜間の電力需要格差の平準化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法を説明するシステム構成の一実施例を示す模式図で、(a)は潜熱蓄熱材が3台の冷凍冷蔵庫内を移動する手順を説明する図、(b)は各運転別に各冷凍冷蔵庫内に配置される潜熱蓄熱材の種類を説明する図、(c)は各潜熱蓄熱材における凝固点の一例を説明する図。
【図2】従来の蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法を説明する模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は冷凍冷蔵庫内の温度設定を変える手間を無くし、また潜熱蓄熱材以外の被冷凍冷蔵物の温度を不必要に下げずに、さらに必要以上に冷やされた被冷凍冷蔵物の熱が蓄熱として利用されずに搬出されてしまう熱ロスを防止することによって冷凍冷蔵機の効率上昇を図るとともに、昼夜間の電力需要格差を無くして平準化を図るという目的を達成するために、空気冷却器を蒸発器として通常の基本冷凍サイクルを構成してなる冷凍冷蔵設備と、移動可能な潜熱蓄熱材を庫内に配設してなる蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法において、庫内設定温度をA℃で使用する冷凍冷蔵庫Aと、庫内設定温度をA℃よりも高い温度B℃で使用する冷凍冷蔵庫Bと、庫内設定温度をB℃よりも高い温度C℃で使用する冷凍冷蔵庫Cと、凝固点が前記温度A℃より高く前記温度B℃よりも低い潜熱蓄熱材aと、凝固点が前記温度B℃より高く前記温度C℃よりも低い潜熱蓄熱材bと、を備え、蓄熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫A内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫B内に配設し、放熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫B内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫C内に配設して運転するようにして実現した。
【0017】
以下、本発明の実施形態による蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法の一実施例を図1を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法を説明するシステム構成の一実施例を示す模式図で、(a)は潜熱蓄熱材が3台の冷凍冷蔵庫内を移動する手順を説明する図、(b)は各運転別に各冷凍冷蔵庫内に配置される潜熱蓄熱材の種類を説明する図、(c)は各潜熱蓄熱材における凝固点の一例を説明する図である。
【0019】
同図において、このシステムは、3つの冷凍冷蔵庫A,B,Cと、各冷凍冷蔵庫A,B,C内をそれぞれ冷却する各冷凍冷蔵庫A,B,C毎に設けられた、空気冷却器12を蒸発器とする冷凍冷蔵設備と、各冷凍冷蔵庫A,B,C内に出し入れ自在に収納可能な潜熱蓄熱材a,b,c等で構成されており、また各冷凍冷蔵庫A,B,Cには内容物、すなわち被冷凍冷蔵物13が出し入れ自在に収納される。
【0020】
前記空気冷却器12を蒸発器として通常の基本冷凍サイクルを構成してなる冷凍冷蔵設備は、各冷凍冷蔵庫A,B,C内の温度を自由に設定できるようになっている。そして、本実施例では、図1(A)に示すように、冷凍冷蔵庫Aの庫内設定温度は−40℃、冷凍冷蔵庫Bの庫内設定温度は−30℃、冷凍冷蔵庫Cの庫内設定温度は−20℃に設定してある。したがって、冷凍冷蔵庫A内では被冷凍冷蔵物13を−40℃で保存することができ、冷凍冷蔵庫B内では被冷凍冷蔵物13を−30℃、冷凍冷蔵庫C内では−20℃でそれぞれ保存することができるようになっている。勿論、これらの庫内の温度は、必要に応じて自由に設定できるものである。
【0021】
前記潜熱蓄熱材a,b,cは、例えば容器内に潜熱蓄熱剤を封入してなるものである。なお、これら各潜熱蓄熱材a,b,cの凝固点は、本実施例では図1(C)に示すように、潜熱蓄熱材aは−35℃、潜熱蓄熱材bは−25℃、潜熱蓄熱材cは−15℃に設定してある。また、これらの潜熱蓄熱材a,b,cも、潜熱蓄熱剤をの種類等を変えることにより、その凝固点を変えたものを使用することができる。
【0022】
そして、図1(B)に示すように深夜の蓄熱運転時(蓄熱モード時)、潜熱蓄熱材aは冷凍冷蔵庫A内、潜熱蓄熱材bは冷凍冷蔵庫B内、潜熱蓄熱材cは冷凍冷蔵庫C内にそれぞれ収容配置され、深夜電力を利用して凍結させ蓄熱を行う。
【0023】
同じく図1(B)に示すように、反対に昼間の所定の蓄熱利用運転時(放熱モード時)、潜熱蓄熱材aは冷凍冷蔵庫B内、潜熱蓄熱材bは冷凍冷蔵庫C内、潜熱蓄熱材cは図示しない他の冷凍冷蔵庫内にそれぞれ収容配置される。なお、前記他の冷蔵庫の設定温度は−15℃より高い温度である。そして、冷凍冷蔵庫Bは潜熱蓄熱材aの−35℃の冷熱源を利用して庫内を冷却し、冷凍冷蔵庫Cは潜熱蓄熱材bの−25℃の冷熱源を利用して庫内を冷却し、前記他の冷凍冷蔵庫は潜熱蓄熱材cの−15℃の冷熱源を利用して庫内を冷却する。
【0024】
したがって、本実施例のようにして運転することにより、蓄熱運転時、各潜熱蓄熱材a,b,cだけを被冷凍冷蔵物13の設定温度よりも低い冷凍冷蔵庫内に移して潜熱蓄熱材a,b,cを凍結させて蓄熱を行うので、潜熱蓄熱材a,b,c以外の被冷凍冷蔵物13までも不必要に温度を下げることがなくなる。また、必要以上に冷やされた被冷凍冷蔵物の熱が蓄熱として利用されずに、搬出されてしまう熱ロスも防止できる。さらに、設定温度を変える手間が無くなるとともに、温度の下げ過ぎにより被冷凍冷蔵物の品質低下を防ぐことができるので、温度管理が厳しく庫内温度を下げてはならない場合にも適用できる。
【0025】
そして、蓄熱後に放熱運転をする時には、蓄熱された各潜熱蓄熱材a,b,cだけをその凝固点よりも高い冷凍冷蔵庫内に移して、その潜熱蓄熱材の蓄熱エネルギーを利用して冷凍冷蔵を行うことができるので、通常冷却運転に比べて使用電力を少なくすることができる。また、放熱モード時、必要によっては空気冷却器12を蒸発器として通常の基本冷凍サイクルを構成してなる冷凍冷蔵設備の運転と併用しても良く、この場合でも少ない使用電力で運転することができる。これにより、昼夜間の電力需要格差の平準化に寄与できる。
【0026】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。即ち、例えば、本発明は叙述したように、潜熱蓄熱材としてa,b,cを使用し、そして、冷凍冷蔵庫もA,B,Cを使用したものについて記述しているが、潜熱蓄熱材が前記a,b,cと異なる他の潜熱蓄熱材を使用し、且つ、前記A,B,Cの冷凍冷蔵庫と異なる他の冷凍冷蔵庫を追加しても本発明と本質的に全く同一であり、本発明が之等追加されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、深夜電力等を利用して蓄熱を行い、その蓄熱エネルギーを昼間利用する蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転以外、例えば同じ昼間内での電力需要格差の低減にも応用できる。
【符号の説明】
【0028】
A〜C 冷凍冷蔵庫
a〜c 潜熱蓄熱材
12 空気冷却器
13 被冷凍冷蔵物(内容物)
51 庫
52 空気冷却器
53 潜熱蓄熱材
54 被冷凍冷蔵物(内容物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の基本冷凍サイクルを構成している空気冷却器と、移動可能な潜熱蓄熱材を庫内に配設してなる蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法において、
庫内設定温度をA℃で使用する冷凍冷蔵庫Aと、
庫内設定温度をA℃よりも高い温度B℃で使用する冷凍冷蔵庫Bと、
庫内設定温度をB℃よりも高い温度C℃で使用する冷凍冷蔵庫Cと、
凝固点が前記温度A℃より高く前記温度B℃よりも低い潜熱蓄熱材aと、
凝固点が前記温度B℃より高く前記温度C℃よりも低い潜熱蓄熱材bと、
を備え、蓄熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫A内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫B内に配設し、放熱運転時は前記潜熱蓄熱材aを前記冷凍冷蔵庫B内に配設するとともに前記潜熱蓄熱材bを前記冷凍冷蔵庫C内に配設して運転することを特徴とする蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法。
【請求項2】
上記蓄熱運転を深夜電力使用時に設定してなることを特徴とする請求項1記載の蓄熱を併用した冷凍冷蔵庫の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−44516(P2013−44516A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185226(P2011−185226)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(390026974)株式会社東洋製作所 (132)
【Fターム(参考)】