説明

蓄熱式脱臭装置

【課題】排熱回収ボイラで発生する蒸気圧を一定にすることができ、常時、蒸気量を確保することができる排熱回収ボイラを備えた蓄熱式脱臭装置を提供する。
【解決手段】1対の蓄熱体7a,7bを備えた燃焼室2と、排気ガスラインP6に設けた排熱回収ボイラ4と、廃熱回収ボイラ4の出口の排気ガスラインP6から分岐して排ガスを燃焼室2に戻して循環させる循環ファンFcと、排熱回収ボイラ4の蒸気の圧力を検出する圧力検出手段9とを有する。圧力検出手段9による検出圧力に基づいて、循環ファンFcを制御するとともに、バーナ6の燃焼量を制御する。検出圧力が低下すると、循環ファンFcによる排ガスの循環量を増加してバーナ6の燃焼量を増加し、検出圧力が増加すると、循環ファンFcによる排ガスの循環量を低下してバーナ6の燃焼量を低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄熱式脱臭装置、詳しくは蓄熱式脱臭装置に備えられた排熱回収ボイラの蒸気圧を一定に維持することができる蓄熱式脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装、印刷、接着、洗浄等を行う生産工程では、トルエン、キシレン等の多成分の揮発性有機溶剤が使用され、有害な臭気ガスが発生する。これらは、例えばスクラバー等によって有機成分を液体に吸収させて回収する(特許文献1参照)。これらの回収した多成分揮発性有機溶剤(回収溶剤)を有機溶剤として生産工程で再利用するためには、分離蒸留設備により当該揮発性有機溶剤から高純度の単一成分溶剤を分離する必要がある。
しかし、高純度の単一成分溶剤を分離回収することは困難であり、その溶剤中の極微量の不純物が生産品質に影響を与えるため、回収された溶剤を安易に塗装、印刷、接着、洗浄等の生産工程で再利用できず、廃棄している。
【0003】
また揮発性有機溶剤を使用する生産工程では、環境問題を起こさないように、臭気のある有害な排ガス(特に前記有機成分を回収後の排ガス)を脱臭する蓄熱式脱臭装置(RTO)が設けられている(文献2,3参照)。この蓄熱式脱臭装置には、排熱を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラが設けられている(特許文献4,5参照)。
【0004】
蓄熱式脱臭装置では、1対の蓄熱体の一方の蓄熱体の熱で炉内に供給する被燃焼ガスである臭気ガスを加熱するとともに、炉外に排気する排気ガスで他方の蓄熱体を加熱して蓄熱する工程を交番して繰り返している。排気による蓄熱体の蓄熱量は次の吸気の加熱に備えるために、蓄熱体への排気量を一定にする必要がある。
【0005】
しかし、被燃焼ガスである臭気ガス(VOC含有空気)は、生産工程の状況に応じて変動するので、蓄熱体への排気量を一定にすると、排熱回収ボイラへの排気量が減少し、蒸気発生量が減少する。
【0006】
従来の排熱回収ボイラを備えた蓄熱式脱臭装置は、排熱回収ボイラで発生する蒸気量を維持する信頼性が低く、他のボイラの補助的役割しか果たせなかった。
【0007】
近年、設備コストの低減のため、蓄熱式脱臭装置の排熱ボイラだけで安定した蒸気量を確保できることが求められている。
また、排熱回収ボイラで発生した蒸気の使用量は、刻々と変化するが、安定した蒸気量の供給を行うためには、蒸気の使用量が変化しても、蒸気圧力を一定に保持することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−128049号公報
【特許文献2】特開2002−61822号公報
【特許文献3】特開2002−303415号公報
【特許文献4】特許第3957542号公報
【特許文献5】特許第3095531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、前記問題点に鑑みてなされたもので、本来の脱臭の役割に加え、排熱回収ボイラで発生する蒸気圧を一定にすることができ、常時、蒸気量を確保することができる排熱回収ボイラを備えた蓄熱式脱臭装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、第1の手段は、1対の蓄熱体を有し、被燃焼ガスである臭気ガスを一方の蓄熱体で加熱して炉内でバーナにより燃焼させ、排気ガスの一部で他方の蓄熱体を加熱する燃焼室と、
前記燃焼室の排気ガスの残りを排気する排気ガスラインに設けられ、排ガスで水を加熱して蒸気を発生させる廃熱回収ボイラと、
前記廃熱回収ボイラの出口の排気ガスラインから分岐し、排ガスを前記燃焼室に戻して循環させる循環ファンを有する排気ガス循環ラインと、
前記排熱回収ボイラの蒸気の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段による検出圧力に基づいて、前記循環ファンを制御するとともに、前記燃焼室のバーナの燃焼量を制御し、検出圧力が低下すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加して前記バーナの燃焼量を増加し、検出圧力が増加すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を低下して前記バーナの燃焼量を低下するものである。
前記燃焼室のバーナは、回収された多成分揮発性有機溶剤を燃料として供給することができる。
【0011】
第2の手段は、1対の蓄熱体を有し、被燃焼ガスである臭気ガスを一方の蓄熱体で加熱して炉内でバーナにより燃焼させ、排気ガスの一部で他方の蓄熱体を加熱する燃焼室と、
前記燃焼室の排気ガスの残りを排気する排気ガスラインに設けられ、排ガスで水を加熱して蒸気を発生させる廃熱回収ボイラと、
前記燃焼室からの排ガスをバーナにより予熱して前記廃熱回収ボイラに導く予熱器と、
前記廃熱回収ボイラの出口の排気ガスラインから分岐し、排ガスを前記燃焼室に戻して循環させる循環ファンを有する排気ガス循環ラインと、
前記排熱回収ボイラの蒸気の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段による検出圧力に基づいて、前記循環ファンを制御するとともに、前記予熱器のバーナの燃焼量を制御し、検出圧力が低下すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加して前記バーナの燃焼量を増加し、検出圧力が増加すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を低下して前記バーナの燃焼量を低下するものである。
前記予熱器のバーナは、回収された多成分揮発性有機溶剤を燃料として供給することができる。
【0012】
前記第1及び第2の手段において、前記排ガスラインからの前記排気ガス循環ラインの分岐点よりも下流側の前記排ガスラインに開閉弁を設け、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加する際に、前記開閉弁の開度を減少し、前記循環ファンによる排ガスの循環量を低下する際に、前記開閉弁の開度を増加することが好ましい。
【0013】
また、前記燃焼室への被燃焼ガスである臭気ガスの供給が無くなった場合、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加して前記バーナの燃焼量を増加することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
前記第1及び第2の手段による発明によれば、圧力検出手段による検出圧力に基づいて、循環ファンを制御するとともに、バーナの燃焼量を制御するので、本来の脱臭の役割に加え、排熱回収ボイラで発生する蒸気圧を一定にすることができ、常時、蒸気量を確保することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る蓄熱式脱臭装置の一実施形態を示す概略図。
【図2】(a)は図1の処理装置の炉温度の変化を示す図、(b)は燃料としてのLNGの供給タイミングを示す図、(c)は燃料としての回収溶剤の供給タイミングを示す図、(d)は昇温用空気の通風量を示す図、(e)はVOC含有空気の通風量を示す図、(f)は流入するVOCの濃度の変化を示す図。
【図3】(a)は蒸気の使用量の変化を示す図、(b)は蒸気の圧力の変化を示す図。(c)はVOC含有空気のVOC濃度の変化を示す図、(d)は排ガス循環ラインの循環量の変化を示す図、(e)は炉温の変化を示す図、(f)は回収溶剤バーナの燃焼量の変化を示す図。
【図4】本発明に係る蓄熱式脱臭装置の他の実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る蓄熱式脱臭装置1を示す。蓄熱燃焼式脱臭装置1は、燃焼室2と蓄熱室3を有するとともに、廃熱回収ボイラ4を有している。
【0018】
燃焼室2には、複数のLNGバーナ5と複数の回収溶剤バーナ6を備えている。LNGバーナ5には、通常燃料としてLNGを開閉弁V1aを介して供給するLNG供給ラインP1aと、LNG燃焼用空気を開閉弁V1bを介して供給するLNG燃焼用空気供給ラインP1bが接続されている。回収溶剤バーナ6は、回収溶剤が燃焼可能なように設計されたバーナであり、この回収溶剤バーナ6には、回収溶剤を燃料として開閉弁V2aを介して供給する回収溶剤供給ラインP2aと、回収溶剤燃焼用空気を開閉弁V2bを介して供給する回収溶剤燃焼用空気供給ラインP2bが接続されている。
【0019】
燃焼室2には、炉内温度を検出する温度センサ2aが複数箇所に設けられている。温度センサ2aからの信号に基づいて制御装置10は、LNG供給ラインP1aと回収溶剤供給ラインP2aの各開閉弁V1aとV2aと、LNG燃焼用空気供給ラインP1bと回収溶剤燃焼用空気供給ラインP2bの各開閉弁V1bとV2bとを制御し、LNG供給ラインP1aと回収溶剤供給ラインP2aを切り換えたり、LNG供給ラインP1aと回収溶剤供給ラインP2aの流量を制御することができる。
なお、ここでは、便宜上、開閉弁V1aと開閉弁V2aだけを制御するように記載したが、LNGバーナ5と回収溶剤バーナ6の燃焼状態に応じて、開閉弁V1bと開閉弁V2bも制御して適量の空気を流すように制御することは当然である。
【0020】
蓄熱室3には、1対の蓄熱体7a,7bが収容されている。蓄熱体7a,7bは、セラミック製のハニカム構造を有する蓄熱材を複数段積層したもの、セラミックス製あるいは金属製の球状の蓄熱材を所定高さに積層したもの、又は複数本のセラミックス製あるいは金属製のパイプを所定長さに切断したもの等の公知の構成である。各蓄熱体7a,7bには、被燃焼ガスとして多成分揮発性有機溶剤(VOC)を含有する空気を蓄熱体7a,7bを介して燃焼室2に供給するVOC含有空気供給ラインP3と、燃焼室2で燃焼処理された処理ガスを蓄熱体7a,7bを介して排出する処理ガス排出ラインP4とが接続されている。VOC含有空気供給ラインP3には、上流側から開閉弁V3と送風機Fが配設され、送風機Fの下流で分岐してそれぞれ開閉弁V5a、V5bを介して蓄熱室3のそれぞれの蓄熱体7a,7bに接続されている。開閉弁V3と送風機Fの間には、開閉弁V4を有する空気供給ラインP5が合流している。処理ガス排出ラインP4は、開閉弁V6a,V6bを介して蓄熱室3のそれぞれの蓄熱体7a,7bに接続され、開閉弁V6a,V6bの下流で合流して排気塔8に接続されている。
【0021】
VOC含有空気供給ラインP3の開閉弁V5aと開閉弁V5bは、図示しない制御装置により交互に切り替えられ、VOC含有空気を蓄熱体7aと蓄熱体7bに交互に供給できる。また、処理ガス排出ラインP4の開閉弁V6aと開閉弁V6bは、図示しない制御装置により交互に切り替えられ、蓄熱体7aと蓄熱体7bから交互に処理ガスを排出することができる。これにより、処理ガスを蓄熱室3の蓄熱体7aで予熱して燃焼室2に供給し、ここで燃焼した後、処理ガスを蓄熱室3の蓄熱体7bに導いて蓄熱した後、冷却塔8に排気する工程と、処理ガスを蓄熱室3の蓄熱体7bで予熱して燃焼室2に供給し、ここで燃焼した後、処理ガスを蓄熱室3の蓄熱体7aに導いて蓄熱した後、冷却塔8に排気する工程とを交互に繰り返すことができる。
【0022】
VOC含有空気供給ラインP3の開閉弁V3と空気供給ラインP5の開閉弁V4は、図示しない制御装置により制御され、VOC含有空気又は空気のいずれか、又はこれらを混合させたものが送風機Fにより開閉弁V5a、V5bを介して蓄熱室3に供給される。
【0023】
廃熱回収ボイラ4は、燃焼室2から排気塔8に至る排気ガスラインP6に設けられた熱交換器である。廃熱回収ボイラ4は、図示しない水供給源から吸水ラインP7により供給される水を排気ガスとの熱交換により加熱して蒸気を発生させ、蒸気ラインP8を介して図示しない蒸気消費箇所に供給する。廃熱回収ボイラ4の出口には、排気ガス出口とその下流側の開閉弁V7の間から分岐して循環ファンFcを介して燃焼室2に接続する排気ガスの循環ラインP9が設けられている。循環ファンFcは、廃熱回収ボイラ4の蒸気ラインP8に設けた蒸気圧力計9で計測される蒸気圧力に基づいて制御装置10によって駆動され、燃焼室2と廃熱回収ボイラ4の間で排気ガスを強制循環させる。また、制御装置10は循環ファンFcを駆動するとともに、回収溶剤供給ラインP2aの開閉弁V2aの開度を増加して回収溶剤バーナ6への回収溶剤の供給量を増加する。
【0024】
次に、以上の構成からなる装置の動作を説明する。
【0025】
例えば塗装、印刷、接着、洗浄等を行う生産工程で使用されたトルエン、キシレン等の多成分揮発性有機溶剤の排ガスは吸収塔に導かれ、ここで有機吸収液に吸収される。この有機吸収液は蒸留塔に導かれ、ここで炭化水素系溶剤が蒸留され、回収容器に収容されて保存される。
【0026】
図1の装置の回収溶剤供給ラインP2aには、この回収容器に保存されている回収溶剤が、回収溶剤バーナ6の燃料として導入される。また、吸収塔で有機吸収液に吸収されずに通過した多成分揮発性有機溶剤の排ガス(VOC含有空気)がVOC含有空気供給ラインP3を介して蓄熱燃焼式脱臭装置1の被燃焼ガスとして導入される。一方、LNG供給ラインP1aには、LNG源に貯溜されているLNGが導入される。
【0027】
蓄熱燃焼式脱臭装置1を図2に示すように初期に常温からVOC分解温度まで(昇温開始からt1時まで)昇温する際、図2(e)に示すように、開閉弁V3を閉じて、VOC含有空気の導入を遮断し、図2(d)に示すように、開閉弁V4を開いてVOC含有空気最大風量の約1/4の空気を空気供給ラインP5に導入する。次に、図2(b)に示すように、開閉弁V1aを開いて通常燃料であるLNGを燃料としてLNG供給ラインP1aに導入し、LNGバーナ5を点火する。このとき、開閉弁V1bも適宜開いて適用の空気を供給する。
【0028】
LNGバーナ5の点火から例えば約1時間経過後のt1時に、複数の温度センサ2aからの信号に基づいて炉内温度が有臭・有害成分を含有する多成分揮発性有機溶剤(VOC)を分解できる燃焼温度820℃±10℃になると、開閉弁V1aと開閉弁V2aを制御して、LNG供給ラインP1aと回収溶剤供給ラインP2aを切り換える。すなわち、開閉弁V1aを閉じてLNGの導入を停止し、LNGバーナ5を消火した後(図2(b))、開閉弁V2aを開いて回収溶剤を回収溶剤供給ラインP2aに導入し(図2(c))、回収溶剤バーナ6を点火する。この回収溶剤バーナ6による燃焼が安定するt2時までは、図2(d)に示すように、開閉弁V4の開度を維持し、炉内に空気を導入し続ける。燃焼が安定してt2時になると、開閉弁V3を開いてVOC含有空気を通常の風量でVOC含有空気供給ラインP3に導入する(図2(e))とともに、開閉弁V4を閉じて空気の空気供給ラインP5への導入を停止する(図2(d))。そして、VOC含有空気の導入により、VOCが自然着火して燃焼するので、開閉弁V2aを絞り、回収溶剤の燃焼量を減少する(図2(c))。
【0029】
炉内温度は、開閉弁V2aを制御して回収溶剤の回収溶剤供給ラインP2aへの導入量を制御する(図2(c))ことで、前述のように820℃に維持される。一方、VOC含有空気供給ラインP3の開閉弁V5aと開閉弁V5bを交互に切り替え、VOC含有空気を蓄熱室3の蓄熱体7aと蓄熱体7bに交互に供給して予熱する一方、処理ガス排出ラインP4の開閉弁V6aと開閉弁V6bも交互に切り替えて、燃焼室2で燃焼された処理ガスを蓄熱室3の蓄熱体7aと蓄熱体7bから交互に排出する。
【0030】
このようにして、有臭・有害成分を含有するVOC含有空気は、蓄熱燃焼式脱臭装置1の燃焼室2で燃焼され、無臭・無害化されて、排出される。一方回収溶剤は、蓄熱燃焼式脱臭装置1の回収溶剤バーナ6の燃料として燃焼し、無害化されるので、エネルギー源として有効利用することができる。また、回収溶剤は、別途分離蒸留設備により単一成分溶剤に分離する必要もない。
【0031】
塗装工場には様々な塗装設備と塗装ラインが存在するので、VOCの発生タイミングは常時変化し、これに伴いVOC含有空気供給ラインP3を介して導入されるVOC含有空気中のVOC濃度も、図2(f)に示すように変化する。図2(f)に示すt3時において、VOC含有空気の濃度が低減すると、VOCの炉内での自然着火が減少し、図2(a)においてaで示すように、炉温が急激に低下するので、開閉弁V2aを開いて、回収溶剤の燃焼量を増大する(図2(c))。逆に、図2(f)に示すt4時において、VOC含有空気の濃度が増加すると、VOCの炉内での自然着火が増大し、図2(a)においてbで示すように、炉温度が急激に上昇するので、開閉弁V2aを絞って、回収溶剤の燃焼量を減少する(図2(c))。このように、VOC含有空気のVOC濃度の変化に応じて、回収溶剤の燃焼量を変化させるので、炉内温度を一定に維持することができる。
【0032】
蓄熱燃焼式脱臭装置1の燃焼室2の排気ガスの一部は排気ガスラインP6に導かれ、廃熱回収ボイラ4で吸水ラインP7の水を加熱して蒸気を発生させた後、排気塔8から大気に放出される。廃熱回収ボイラ4で発生する蒸気は蒸気ラインP8を介して図示しない消費箇所に送られて消費される。蒸気ラインP8を流れる蒸気の圧力は蒸気圧力計9で測定される。
【0033】
蒸気ラインP8を介して消費箇所に送られる蒸気は、使用量が刻々と変化する。本発明では、以下に説明するように、蒸気圧が一定となるように、循環ラインP9の循環量が制御される。
【0034】
すなわち、図3(a)に示すようにt1時に蒸気の使用量が増加すると、図3(b)に示すように蒸気圧が下がる。なお、ここでは、図3(c)に示すように、被燃焼ガスであるVOC含有空気中のVOC濃度は一定とする。蒸気圧力計9が蒸気圧の低下を検出し、この検出圧力に基づいて図3(d)に示すように循環ファンFcの回転数を増加し、循環ラインP9の風量を増加する。これにより、図3(e)に示すようにt3時に炉内温度が低下するので、温度センサ2aがこれを検出し、この検出温度に基づいて図3(f)に示すように開閉弁V2aを開いて回収溶剤供給ラインP2aより供給される回収溶剤の燃焼量を増加する。
【0035】
逆に、図3(a)に示すようにt4時に蒸気の使用量が低減すると、図3(b)に示すように蒸気圧が上がるので、蒸気圧力計9がこれを検出し、この検出圧力に基づいて図3(d)に示すように循環ファンFcの回転数を減少し、循環ラインP9の風量を低減する。これにより、図3(e)に示すようにt6時に炉内温度が上昇するので、温度センサ2aがこれを検出し、この検出温度に基づいて図3(f)に示すように開閉弁V2aを絞って回収溶剤供給ラインP2aより供給される回収溶剤の燃焼量を低減する。
【0036】
循環ラインP9の循環ファンFcによる循環量の制御と併せて、排気ガスラインP6の排熱回収ボイラの2次側にある開閉弁V7の開度を調節するとよい。すなわち、循環ラインP9の循環量を増加させるときは、開閉弁V7の開度を減少し、循環量を減少させるときは、開閉弁V7の開度を増加する。これにより、循環量を自由に制御することができる。なお、排熱回収ボイラの2次側の開閉弁V7の開度を減少するときは、最少でも完全にゼロとせずに、回収溶剤バーナ6の燃焼排気風量分だけは排気塔8を介して排気することができるように、少し開放しておくとよい。
【0037】
以上のように、蒸気使用量の変動に伴う蒸気圧力の変化に応じて、循環ガスの循環量を制御し、回収溶剤バーナの燃焼量を変化させるので、蒸気圧力を一定に維持することができる。
【0038】
また、被燃焼ガスであるVOC含有空気の供給が無くなった場合、循環ファンFcの回転数を増加し、循環ラインP9の風量を増加するとともに、開閉弁V2aを開いて回収溶剤供給ラインP2aより供給される回収溶剤の燃焼量を増加することで、蒸気圧力を確保することができる。この場合も、排気ガスラインP6の排熱回収ボイラの2次側にある開閉弁V7の開度を減少することが好ましい。
【0039】
前記実施形態では、排気ガス循環時に蓄熱燃焼式脱臭装置1の燃焼室2で排気ガスの追い焚きを行ったが、図4に示すように、蓄熱燃焼式脱臭装置1の排気ガスラインP6に予熱器(追い焚き装置)11を設け、ここで排気ガスの追い焚きを行ってもよい。
【0040】
すなわち、排気ガスラインP6に設けた予熱器11に回収溶剤バーナ12を設け、回収S溶剤供給ラインP2aの開閉弁V2aの上流側から分岐し、開閉弁V8aを介して予熱器11の回収溶剤バーナ12に接続する予熱器用回収溶剤供給ラインP10aを設け、回収溶剤燃焼用空気供給ラインP2bの開閉弁V2bの上流側から分岐し、開閉弁V8bを介して予熱器11の回収溶剤バーナ12に接続する予熱器用回収溶剤燃焼用空気供給ラインP10bを設けるとともに、循環ラインP9を予熱器11に接続する。
【0041】
この実施形態では、通常は予熱器11の回収溶剤バーナ12を点火せずに排気ガスを通過させる。前記実施形態と同様に、蒸気圧力計9により蒸気ラインP8の蒸気圧が低下すると、制御装置10は、排気ガスラインP6の開閉弁V7の開度を減少し、循環ファンFcを駆動するとともに、予熱器用回収溶剤供給ラインP10の開閉弁V8を開き、予熱器11の回収溶剤バーナ12を点火する。これにより、排気ガスが廃熱回収ボイラ4の出口から、循環ラインP9、予熱器11、排気ガスラインP6を通って廃熱回収ボイラ4に流れる循環路が形成され、排気ガスは、この循環路を強制的に循環させられる。廃熱回収ボイラ4の出口から予熱器11に戻った排気ガスは、回収溶剤バーナ12により追い焚きされて温度が上昇し、排気ガスラインP6を通って廃熱回収ボイラ4に至るので、廃熱回収ボイラ4で発生する蒸気圧が増加する。逆に、蒸気ラインP8の蒸気圧が増加すると、制御装置10は、排気ガスラインP6の開閉弁V7の開度を増加し、循環ファンFcの回転数を低減して循環風量を減少し、回収溶剤バーナ12の燃焼量を減少することで、蒸気圧を低減する。
【0042】
前記実施形態では、蓄熱燃焼式脱臭装置の通常燃料をLNG(ガス)としたが、前記LNGバーナ5に代えて液体燃料バーナを使用し、重油などの液体燃料を噴霧燃焼させてもよい。
この場合、別個に液体燃料バーナを備えずとも、回収溶剤バーナ6のみを用いて、回収溶剤に重油等の液体燃料を混合させることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 蓄熱燃焼式脱臭装置
2 燃焼室
2a 温度センサ
3 蓄熱室
4 廃熱回収ボイラ
5 LNGバーナ
6 回収溶剤バーナ
7a,7b 蓄熱体
8 排気塔
9 蒸気圧力計
10 制御装置
11 予熱器
12 回収溶剤バーナ
P1a LNG供給ライン
P2a 回収溶剤供給ライン
P3 VOC含有空気供給ライン
P4 処理ガス排出ライン
P5 空気供給ライン
P6 排気ガスライン
P7 給水ライン
P8 蒸気ライン
P9 循環ライン
P10 予熱器用回収溶剤供給ライン
V1a 開閉弁
V2a 開閉弁
V3 開閉弁
V4 開閉弁
V5a,V5b 開閉弁
V6a,V6b 開閉弁
V7 開閉弁
V8 開閉弁
F 送風機
Fc 循環ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の蓄熱体を有し、被燃焼ガスである臭気ガスを一方の蓄熱体で加熱して炉内でバーナにより燃焼させ、排気ガスの一部で他方の蓄熱体を加熱する燃焼室と、
前記燃焼室の排気ガスの残りを排気する排気ガスラインに設けられ、排ガスで水を加熱して蒸気を発生させる廃熱回収ボイラと、
前記廃熱回収ボイラの出口の排気ガスラインから分岐し、排ガスを前記燃焼室に戻して循環させる循環ファンを有する排気ガス循環ラインと、
前記排熱回収ボイラの蒸気の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段による検出圧力に基づいて、前記循環ファンを制御するとともに、前記燃焼室のバーナの燃焼量を制御し、検出圧力が低下すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加して前記バーナの燃焼量を増加し、検出圧力が増加すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を低下して前記バーナの燃焼量を低下することを特徴とする蓄熱式脱臭装置。
【請求項2】
前記燃焼室のバーナは、回収された多成分揮発性有機溶剤を燃料として供給することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱式脱臭装置。
【請求項3】
1対の蓄熱体を有し、被燃焼ガスである臭気ガスを一方の蓄熱体で加熱して炉内でバーナにより燃焼させ、排気ガスの一部で他方の蓄熱体を加熱する燃焼室と、
前記燃焼室の排気ガスの残りを排気する排気ガスラインに設けられ、排ガスで水を加熱して蒸気を発生させる廃熱回収ボイラと、
前記燃焼室からの排ガスをバーナにより予熱して前記廃熱回収ボイラに導く予熱器と、
前記廃熱回収ボイラの出口の排気ガスラインから分岐し、排ガスを前記燃焼室に戻して循環させる循環ファンを有する排気ガス循環ラインと、
前記排熱回収ボイラの蒸気の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段による検出圧力に基づいて、前記循環ファンを制御するとともに、前記予熱器のバーナの燃焼量を制御し、検出圧力が低下すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加して前記バーナの燃焼量を増加し、検出圧力が増加すると、前記循環ファンによる排ガスの循環量を低下して前記バーナの燃焼量を低下することを特徴とする蓄熱式脱臭装置。
【請求項4】
前記予熱器のバーナは、回収された多成分揮発性有機溶剤を燃料として供給することを特徴とする請求項3に記載の蓄熱式脱臭装置。
【請求項5】
前記排ガスラインからの前記排気ガス循環ラインの分岐点よりも下流側の前記排ガスラインに開閉弁を設け、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加する際に、前記開閉弁の開度を減少し、前記循環ファンによる排ガスの循環量を低下する際に、前記開閉弁の開度を増加することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の蓄熱式脱臭装置。
【請求項6】
前記燃焼室への被燃焼ガスである臭気ガスの供給が無くなった場合、前記循環ファンによる排ガスの循環量を増加して前記バーナの燃焼量を増加することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蓄熱式脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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