説明

蓄熱材及び保温・保冷用品・医療器具

【課題】繰り返して使用することができ、温度調節が容易で低温火傷などを起こさず、安全に使用でき、保冷への応用も可能で硬くなり過ぎず、耐圧性に優れた高蓄熱密度の蓄熱体及び保温・保冷用品を提供する。
【解決手段】ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物から選ばれたポリアルコール1を繊維あるいは多孔質板、ハニカム、突起板、波板、蛇腹板、網、ブラシ、ばね、たわし、チューブ、スポンジ及びそれらを成形した三次元多孔体10に含浸し、容器あるいは袋に密封したことを特徴とする蓄熱体及び前記蓄熱体を電子レンジで加熱して用いることを特徴とする蓄熱体の使用方法、前記蓄熱体を用いたことを特徴とする保温・保冷用品・医療器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱技術に関するもので、詳しく言えば、ポリアルコールの相転移に伴う熱の吸収・放出を利用した潜熱利用型の蓄熱材とそれを用いた保温・保冷用品・医療器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防寒用保温材、特に携帯用の保温材としては、カイロがよく知られている。これには桐灰やベンジンなどの燃料を徐々に燃やしていくものと、鉄粉などを徐々に酸化していくものがあり、それによって発生する熱を利用するものであった。しかし、これらは1回しか使用できず、繰り返して使用することができないという問題や、使用した後、ゴミになってしまうなどの問題があり、しかも、温度調節が難しく、低温火傷を起こしてしまうという欠点があった。また、それらは桐灰やベンジン、鉄粉などの可燃性・引火性が高いものを使用しているため、危険であり、しかも保冷などへの応用は不可能であった。また、保冷パックのように水をゲル化材に染み込ませたものも開発されているが、水とゲル化材の顕熱を利用しているため、蓄熱密度が小さく、短時間しか保温・保冷することができなかった。さらに、蓄熱密度の大きなポリエチレングリコールなどを用いたものも開発されているが、これを靴の中などに敷いて足の保温・保冷などに使用しようとした場合、保冷パックの袋が足で踏まれて押し潰されて破裂してしまうなど、圧力がかかる場合の使用が難しかった。加えて、保冷などで凍らせて使用しようとした場合、カチカチになってしまい、触ると痛いほど硬くなり過ぎてしまうなどの欠点があった。
【特許文献1】特許公開2006−169286
【特許文献2】特許公開2005−218817
【特許文献3】特許公開平01−247478
【特許文献4】特許公開昭62−253682
【特許文献5】特許公開昭61−064782
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の点に鑑み、繰り返して使用することができ、温度調節が容易で低温火傷などを起こさず、安全に使用でき、保冷への応用も可能で硬くなり過ぎず、耐圧性に優れた高蓄熱密度の蓄熱体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ポリアルコールは加熱して融解することにより蓄熱し、冷却して凝固することによって放熱するため、蓄熱材として繰り返し利用できる。そして、1)分子量が増大するにつれて融解温度が上昇し、分子量を選択することによって幅広い融解温度を設定できるため、ポリアルコールの分子量を選択することによってさまざまな蓄熱温度を持つ蓄熱製品をつくることができる、2)過冷却や相分離現象を起こず、安定的に蓄熱・放熱を行う、3)融解・凝固の潜熱を利用するため、蓄熱密度が高く、1g当たり約40calも蓄熱することができる。4)大量生産されており、安価で食品に使用できるほど安全性が高い、などの利点を持っている。しかし、実際に蓄熱材として用いると加熱−冷却の繰り返しによって短時間のうちに劣化してしまい、急速に蓄熱能力が失われてしまうという欠点を持っていた。
本発明者は前記の目的を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、ポリアルコールを酸素と触れないようにしたり、あるいはラジカル捕捉剤を添加したりして、それを繊維あるいは多孔体に含浸し、容器や袋に密封するという簡単な方法により、繰り返して使用することができ、幅広い蓄熱温度の設定が容易で、冷却凝固させて蓄冷することにより保冷への応用も可能で硬くなり過ぎず、耐圧性に優れた高蓄熱密度の蓄熱体が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0005】
本発明は以下の発明からなる。
(1)ポリアルコールを三次元多孔体に含浸し、容器あるいは袋に密封したことを特徴とする蓄熱体。
(2) 三次元多孔体が、繊維あるいは多孔質板、ハニカム、突起板、波板、蛇腹板、網、ブラシ、ばね、たわし、チューブ、スポンジ及びそれらの成形体から選ばれたことを特徴とする蓄熱体。
(3) ポリアルコールが融点の異なる複数のポリアルコールから成ることを特徴とする蓄熱体。
(4)ポリアルコールが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物から選ばれたことを特徴とする蓄熱体。
(5)ポリアルコールがラジカル捕捉剤を含有していることを特徴とする蓄熱体。
(6)前記ラジカル捕捉剤が、フェノール類、アミン類、及びそれらの混合物から選ばれたことを特徴とする蓄熱体。
(7)ポリアルコールがペレットを含有していることを特徴とする蓄熱体。
(8)ペレットが遠赤外線放射セラミックスもしくは微量の放射性物質を含んだセラミックスでできていることを特徴とする蓄熱体。
(9)容器あるいは袋が水及び水蒸気を透過しないことを特徴とする蓄熱体。
(10)容器あるいは袋が酸素を透過しないことを特徴とする蓄熱体。
(11)前記蓄熱体を電子レンジで加熱して用いることを特徴とする蓄熱体の使用方法。
(12)前記蓄熱体を用いたことを特徴とする保温あるいは保冷用品。
(13)前記蓄熱体の表面に粘着性物質を用いたことを特徴とする保温あるいは保冷用品。
(14)前記蓄熱体にヒーターあるいはペルチエ素子を取り付けたことを特徴とする保温あるいは保冷用品。
(15)前記蓄熱体を用いたことを特徴とする医療器具。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蓄熱体は、ポリアルコールを繊維あるいは多孔質板、ハニカム、突起板、波板、蛇腹板、網、ブラシ、ばね、たわし、チューブ、スポンジ及びそれらを成形した三次元多孔体に含浸し、容器あるいは袋の中に密封されてできており、繰り返して使用することができ、温度調節が容易で低温火傷などを起こさず、安全に使用でき、保冷への応用も可能で硬くなり過ぎず、耐圧性に優れた高蓄熱密度の蓄熱体で、食品に使用できるほど安全性が高い。これを加熱すると、ポリアルコールが融解し、融解熱が蓄えられる。そして、冷えて固まるときに、熱を放出するため、その熱を保温に利用することができる。また、冷えて固まったものは融解する際に熱を吸収するため、保冷に利用することができる。通常、蓄熱体の加熱は湯の中に漬けることで行われるが、湯を沸かすのが手間である。本発明の蓄熱体は湯を沸かさなくても、そのまま電子レンジにかけるだけで簡単に加熱・蓄熱することができる。しかも、融点の高いポリアルコールと融点の低いポリアルコールを混合して用い、融点の高いポリアルコールが放熱して冷えて固まる際に融点の低いもう一方のポリアルコールは液体のままであるようにポリアルコールを選択すると、放熱して冷えて固まるときに全体がカチカチの個体にならず、軟らかく肌触りが良くなる。また、ポリアルコールは酸素があると酸化され劣化していくが、ラジカル捕捉剤を添加しておくと劣化が防止され、繰り返し使用することができる。さらに、ポリアルコールは分子量によって融解温度が異なり、分子量を選ぶことによって零下から65℃程度まで蓄熱温度を選択することができる。したがって、低温火傷を生じない温度で保温することができる。そのため、直接肌に張り付けて保温することも可能である。また、蓄熱体をサポーターやベルト、ベルクロなどのついた保持器具にとりつけ、患部に固定可能することも可能である。これによって温湿布が可能で、肩こりや筋肉痛、ガン治療などに使用することができる。その際、石の粒や金属の粒、プラスチックスペレット、セラミックスペレット、粘土の成形体などや、特に遠赤外線放射セラミックスや微量の放射性物質を含んだセラミックス、磁石、電気石などのペレットを蓄熱体に混ぜておくことにより、指圧効果や放射線効果、磁気効果、静電気効果などによる複合効果が得られる。さらに、本発明の蓄熱体は、患部の形状に沿って固まるので、温湿布以外にも簡単なギブスとして応用できるし、蓄熱体の表面に粘着性の高い超軟質のシリコン樹脂やウレタン樹脂を使用して、食器や容器に取り付けて使用する保温器具として利用することもできる。融点の高いポリアルコールと融点の低いポリアルコールの混合物を、突起をつけた板を入れた袋の中に注入して作った蓄熱体を腰などに押しあてて使用した場合には、温熱効果と同時に指圧効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられるポリアルコールは水酸基を有する高分子であり、その中でポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールがコストの面と入手の容易さから最も好ましい。本発明では色々な分子量のポリアルコールを使用するが、ハイサーム、サームエス、カロリア、シリコンオイルなど各種の流体と混ぜてスラリー状として使用することもできるし、融点の高いものと低いものという複数のポリアルコールを混ぜて使用することもできる。こうすると、保冷などのために凍らせて使用しようとする場合、カチカチになって硬くなり過ぎることもなく、加熱して蓄熱する場合も流体が存在するため、熱伝達が効率良く行われて融解しやすくなり蓄熱しやすくなる。
【0008】
本発明に用いられる三次元多孔体は、繊維あるいは多孔質板、ハニカム、突起板、波板、蛇腹板、網、ブラシ、ばね、たわし、チューブ、スポンジ及びそれらを成形したものである。そして、本発明に用いられる繊維は木綿や麻などの天然繊維でもポリエチレンなどの合成繊維でもステンレスなどの金属繊維でも良いが、織物にしたものが好ましい。また、本発明に用いられる三次元多孔体の材質はプラスチックスなどの有機物でも陶磁器やセラミックスなどの無機物でもステンレスなどの金属でも良く、その形状はハニカム状やスポンジ状、突起のたくさん付いたシート状など、軽くて丈夫なものが好ましい。そして、それにポリアルコールを染み込ませて使用するため、ハニカムや突起やスポンジの壁が薄い方が単位重量当たりの蓄熱量が大きくなるため、好ましい。また、靴の中などに敷いて足の保温・保冷などに使用した場合を想定して、足で踏んでも壊れないぐらいの強度をもっているものや、足が痛くならないような柔らかさをもっているものが望ましい。
【0009】
本発明に用いられる容器あるいは袋は水及び水蒸気を透過しない材質であることが好ましく、酸素を透過しない材質であることが好ましい。水及び水蒸気が透過するとポリアルコールが水溶液となって蓄熱温度が変化してしまい、蓄熱量も減少してしまう。また、容器あるいは袋が酸素を透過すると、ポリアルコールが酸化劣化して急速に蓄熱能力が失われてしまう。
【0010】
本発明に用いられるラジカル捕捉剤はポリアルコールの酸化劣化を防止するものであり、ラジカル捕捉剤としては、さまざまなものがあるが、その中でフェノール、クレゾール、ヒドロキノン、カテコール、アニソール、キシレノール、t−ブチル−p−クレゾールやN−ニトロソアニリン、N−ニトロソアミン、フェニレンジアミン、エチレンジアミンなどのフェノール類、アミン類やそれらの誘導体がコストの面と入手の容易さから最も好ましい。使用にあたっては、ポリアルコールにこれらの物質を加えた後、撹拌して混合しても良いし、加熱して融解させたポリアルコールにこれらの物質を溶解混合させても良い。また、流体と混ぜてスラリー状となったポリアルコールに添加しても良い。これらのラジカル捕捉剤は単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。そして、ポリアルコールに対するラジカル捕捉剤の添加量としては0.001〜20%で、特に0.01〜5%が好ましいが、蓄熱体の使用期間により、それが長い場合は添加量を増やすなど、適宜増減することができる。
【0011】
本発明に用いられるペレットとしては、エネルギーを吸収しやすく遠赤外線を放射するようなセラミックスのペレットなどが好ましく、石の粒や金属の粒、プラスチックスペレット、セラミックスペレット、粘土の成形体など、いろいろなものが挙げられ、微量の放射性物質を含んだセラミックスや磁石、電気石などを含んでいてもよい。また、ペレットの形状としては球状が最も好ましい。ペレットの大きさとしては、直径1mm〜20mmが好ましい。
【0012】
本発明に用いられる蓄熱体の形状は、球形、板状、円柱状、角柱状、円錐状、ラグビーボール状、管状、棒状、円盤状、靴下状、手袋状、帯状、靴状など、さまざまなものが挙げられ、使用形態に応じて選択されるが、特に、シート状がよく使用される。蓄熱体に対するペレットの含有率は蓄熱体1平方cm当たりの1〜20個が好ましい。
【0013】
本発明の蓄熱体は、温水や冷水に浸漬したり、ヒーターや冷蔵庫などで蓄熱・蓄令したりして使用することができるが、本発明の蓄熱体はマイクロ波を吸収するため、さらに簡便には、電子レンジにかけて短時間に加熱・蓄熱して使用することができる。
【0014】
本発明では、上記蓄熱体を用いることにより、加熱・保温用品や保冷用品、医療器具を作製し、提供することができる。本発明による加熱・保温器具や保冷用品、医療器具として温湿布、肩こり用保温具、ガンの温熱治療具、筋肉痛治療具、腹痛治療具、冷え性治療具など、さまざまな製品が挙げられる。そして、その際、蓄熱体の表面に粘着性物質を用いた場合には、患部などに貼り付けて固定して使用することが可能な医療器具や食器や容器に取り付けることが可能な保温器具を提供することができる。
【0015】
本発明では、さらに上記蓄熱体にヒーターあるいはペルチエ素子を取り付けることによって長時間加熱・保温あるいは冷却・保冷することが可能な製品を提供することができる。
【0016】
次に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
分子量4000のポリエチレングリコール100グラムと分子量400のポリエチレングリコール20グラムを加え、さらにt−ブチル−p−クレゾールを1グラム加えてよく混合して加熱融解した後、図1に示すように、ガーゼに染み込ませ、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂のシートで密封した。これを家庭用電子レンジに入れ、500Wで1分加熱し、ほかほかカイロとして使用した結果、42℃で3時間保温でき、固まったときも柔らかく肌触りがよく、繰り返して使用することができた。
【実施例2】
【0018】
分子量5000のポリエチレングリコールにN−フェニル−N‘−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミンを1%加えてよく混合した後、加熱融解して不織布に染み込ませ、60mm×100mm×6mmの板を作った。そして、図2に示すように、底辺が90mm×130mm深さが30mm程度の型の底に、2mm程度の厚さになるまでシリコン樹脂を流し込み硬化させた。そこへ先ほど作ったポリエチレンオキシド板をシリコンの補強のためにトリコットメッシュで包んで型の中央に置き、全体が隠れるまでシリコン樹脂を流し込んで、厚みが10mm程度となるようにした。トリコットメッシュを用い、完全にシリコン樹脂を含浸させることで、シリコン樹脂自体を引っ張りに強いものにすることができた。こうして得られた蓄熱体を電子レンジで3分加熱すると、ポリエチレンオキシド板が完全に融解して柔らかくて温かいシリコン樹脂のブロックシートになった。それを患部に当てサポーターなどで固定すると、約3時間保温することができた。また、加熱約30分後からポリエチレングリコールの固形化が始まり、1時間後には患部の形状に沿って固まり、暖かいギブスのようになった。ポリエチレングリコールは不織布に染み込ませてあるため、融解時に型くずれするのが防止されている。
【実施例3】
【0019】
分子量3000のポリエチレングリコールを加熱融解してスポンジに染み込ませ60mm×100mm×6mmの大きさの板を作った。そして、図3に示すように、90mm×130mmに裁断した不織布の片面に、補強のために同じ大きさのガーゼを重ねた。その上からオキシムタイプのシリコン樹脂をすき間無く2mm程度の厚みまで塗布し、不織布とガーゼがシリコンで密着し積層されたシートを2枚作った。硬化後、再度シリコン樹脂を塗布し、同時にポリエチレングリコールの中央の穴の部分にもシリコン樹脂を充填した。その後、シリコン面を内側にした、2枚のシリコンシートの間にポリエチレングリコールを挟んで、空気を押し出しながら密着させ周囲にはみ出したシリコンシート同士を貼り合わせて硬化させた。そうしてできたものを電子レンジで加熱した結果、実施例2と同様の効果があった。
【実施例4】
【0020】
図4に示すように、分子量10000のポリエチレンオキシドを加熱融解して多孔質セラミックスの板に染み込ませて60mm×50mm×6mmの大きさの板を作り、上下にガラス繊維を重ねて周囲を縫合し余分な部分を切り取って、この板を完全に繊維で覆った。これを、すっぽり入れることのできる大きさの型に入れ、全体が隠れるまでシリコン樹脂を注入すると、繊維とポリエチレングリコールの隙間にもシリコン樹脂が含侵して、硬化後は全体が一体化した蓄熱体を作ることができた。
【実施例5】
【0021】
図5に示すように、ポリビニルアルコールを加熱融解して微量の放射性物質を含んだペレットを備えたガラス繊維の織物に染み込ませて60mm×50mm×6mmの大きさの板を作り、上下にガラス繊維を重ねて周囲を縫合し余分な部分を切り取って、この板を完全に繊維で覆った。これを、シリコン樹脂で満たされた容器に漬けて、全体にくまなくシリコン樹脂を含侵させ、引き上げたのち硬化させることで、全体が一体化した蓄熱体を作ることができた。そうしてできたものを電子レンジで加熱して使用した結果、指圧効果や放射線効果などによる複合効果が得られた。
【実施例6】
【0022】
実施例5と同様にして作製した蓄熱体を並列に多数収納することのできる不織布でつくったホルダーに収容することで、広い面積を持った保温器具を作製した。得られた保温器具は、表面がシリコン樹脂製で薬品にも強く、湯水で洗うこともできた。そして不織布のホルダーは使い捨てにすることで、医療機関などでも清潔な使用環境を保つことができた。
【実施例7】
【0023】
図6に示すように、底辺が直径120mm、高さが13mmで、補強のためシリコン樹脂の中にガラス繊維を入れた、底と側面の厚さが5mm程度のシリコン樹脂製の広口容器を作り、PET樹脂製のハニカムを入れ、内部に融解した分子量6000のポリエチレンオキシドを厚さ6mm程度になるよう流し込み冷却して固形化させた。その後、ポリエチレンオキシドの上に直径120mmにカットしたガラス繊維をかぶせ、粘着性の高い超軟質ウレタン樹脂を、シリコン樹脂製の容器にいっぱいになるように流し込み、ポリエチレンオキシドをシリコン樹脂と超軟質ウレタン樹脂で完全に覆った。硬化後、電子レンジで3分加熱し、鍋やお皿の底に貼り付けた結果、内容物を数時間保温することができた。しかも、シリコン樹脂の表面温度が必要以上に上昇しないので、テーブルなどに置くときにも鍋敷き等が必要なかった。また、寒冷時に、加熱して自動車のバッテリーに貼り付けると、バッテリーの電圧の降下を防ぐことが出来て、エンジンの始動が容易になった。
【実施例8】
【0024】
まず、ベルクロの生地を広範囲に使用した腰痛ベルトやサポーターを制作した。次に、実施例2と同様にして作成した蓄熱体がぴったり収納できる袋を作り、袋の片面にベルクロテープを付けておくと、前述の腰痛ベルトやサポーターを使用する際、必要に応じて必要な場所に蓄熱体を取り付けることが可能となった。また、収納する袋生地の厚さ加減や、蓄熱体を腰痛ベルトやサポーターの表あるいは裏面に取り付けることなどで、温度調節が出来た。さらに、収納袋の中に、石の粒や金属の粒、プラスチックスペレット、セラミックスペレット、粘土の成形体などや、特に微量の放射性物質を含んだペレットや磁石、電気石などのペレット入れた物を、同様の方法で取り付けることで、指圧効果や放射線効果、磁気効果、静電気効果などによる複合効果が得られた。なお、蓄熱体に直接ベルクロテープを取り付けて使用することも可能である。
【実施例9】
【0025】
図7に示すように、実施例6と同様に、ベルクロの生地を広範囲に使用した腰までの長さの襟付き貫頭衣を作った。この貫頭衣は、両脇の下で前身頃と後身頃をベルトやベルクロ等で付け外すことができ、人体への密着度を調整することができる。使用する際は、蓄熱体をベルクロの付いた収納袋に入れ、貫頭衣の任意の場所に取り付けた上、人体に密着するように貫頭衣の両脇の下の部分で調節しながら装着する。ベルクロの生地が貫頭衣の裏表の両面に使用してあれば、服の表でも裏にでも取り付けることが出来る。さらに、実施例8にあるような様々な物質を収納袋に入れ使用することによって、首から腰までの様々な部位で複合効果が得られた。
【実施例10】
【0026】
カセットコンロなどで使用するカセットボンベは、気温の低いところで使用する際、内部の液化ブタンが気化しにくくなり、ガスの安定供給ができない場合がある。そこで、図8に示すように、シリコン樹脂に包まれた蓄熱体を、カセットボンベの容器に密着できるような形状に成形し、接合面に超軟質ウレタンを塗布した。そうしてできたものを加熱してボンベに貼り付ける事で、内部の液化ブタンの気化を助けることが出来た。また同様の方法で、様々な缶スプレー製品にも応用することができた。
【実施例11】
【0027】
自転車やオートバイのハンドルグリップに被せることが可能な、筒状に成形した蓄熱体を作った。そうしてできたものを加熱した後、ベルクロでハンドルグリップに固定すると、寒い時でも手や指先を暖めることができた。ポリエチレングリコールの量は少なくなるものの、一般的な通勤や通学時間内であれば、十分に効果が得られた。
【実施例12】
【0028】
足の形に切り取ったステンレス製の網にポリビニルアルコールを加熱融解して染み込ませてウレタン樹脂で密封し、靴の中敷きの蓄熱体を作った。そうしてできたものを加熱した後、靴の中に入れると、寒い時でも足を暖めることができ、一般的な通勤や通学時間内であれば、十分に効果が得られた。
【実施例13】
【0029】
頭にすっぽり被せるような半球状の形をした不織布に分子量400のポリエチレングリコールを染み込ませてウレタン樹脂で密封し、帽子の中に入れる蓄冷体を作った。そうしてできたものを冷蔵庫で冷やした後、帽子の下に被ると、暑い日でも頭を冷やすことができ、一般的な通勤や通学時間内であれば、十分に効果が得られた。
【実施例14】
【0030】
図9に示すように、分子量5000のポリエチレングリコールに分子量200のポリエチレングリコールを加えてよく混合して加熱融解した後、突起の沢山付いたシリコンゴム板を入れたウレタン樹脂製の袋の中に注入して密封し、蓄熱体を作った。これを電子レンジに入れて加熱した後、腰にあてて仰向けに寝た。その結果、分子量の異なるポリエチレングリコールを混ぜたため、柔らかくなり、突起が腰にあたって温熱効果と同時に指圧効果が得られた。しかも、エチレングリコールが突起と突起の間に保持されているため、偏ることなく形状を保持することができた。
【実施例15】
【0031】
分子量6000のポリエチレングリコールと分子量300のポリエチレングリコールに2,6,ジ−t−ブチル−p−クレゾールを加えてよく混合して加熱融解した後、不織布に染み込ませ、ウレタン樹脂で密封して長さ2m、幅50cm、厚さ4cmのマットレスを作った。この底面にヒーターとペルチエ素子を張り、トラックなどで使用する仮眠用ベッドを作った。これをトラックに積んで使用した結果、走行中にヒーターあるいはペルチエ素子で蓄熱あるいは蓄冷することができ、仮眠する際に空ふかしして暖房する必要がなく、エンジンを切ることができるため、排ガスも出ず環境に優しく燃料の節約にもなり、寝心地がよく快適に仮眠をとることができた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は以上説明したように、ポリアルコールを繊維あるいは多孔質板、ハニカム、突起板、波板、蛇腹板、網、ブラシ、ばね、たわし、チューブ、スポンジ及びそれらを成形した三次元多孔体に含浸し、容器あるいは袋の中に密封されてできており、繰り返して使用することができ、温度調節が容易で低温火傷などを起こさず、安全に使用でき、保冷への応用も可能で型くずれせず硬くなり過ぎず、耐圧性に優れた高蓄熱密度の蓄熱体で、食品に使用できるほど安全性が高い。本発明の蓄熱体はそのまま電子レンジにかけるだけで簡単に加熱・蓄熱することができ、加熱効率が非常に良く、電子レンジに数分かけると数時間保温に使用できる。そして、繰り返し使用することができ、低温火傷を生じない温度で保温することができる。そのため、温湿布が可能で、肩こりや筋肉痛、ガン治療などに使用することができる。その際、石の粒や金属の粒、プラスチックスペレット、セラミックスペレット、粘土の成形体などや、特に微量の放射性物質を含んだセラミックスや遠赤外線放射セラミックス、磁石、電気石などのペレットを蓄熱体に混ぜておくことにより、指圧効果や放射線効果、磁気効果、静電気効果などによる複合効果が得られる。しかも、蓄熱体にヒーターやペルチエ素子などを取り付けることにより、蓄熱マットレスや蓄冷マットレスなどをつくることができてベッドなどにも使用でき、保温器具や加熱器具、保冷器具、温湿布や肩こり用保温具、ガンの温熱治療具、筋肉痛治療具、腹痛治療具、冷え性治療具などの医療器具など、さまざまな分野で使用でき、その際、蓄熱体の表面に粘着性物質を用いた場合には、患部などに貼り付けて固定して使用することが可能な医療器具や食器や容器に取り付けることが可能な保温器具を提供することができる。さらに上記蓄熱体にヒーターあるいはペルチエ素子を取り付けることによって長時間加熱・保温あるいは保冷することが可能な製品を提供することができるため、経済効果、波及効果が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】樹脂シートで密封した蓄熱体の断面図
【図2】トリコットメッシュとシリコン樹脂で包んだ、蓄熱体と型の断面図
【図3】シリコン樹脂シートで包んだ蓄熱体の断面図
【図4】(a)シリコン樹脂を注入して出来た蓄熱体と型の断面図 (b)多孔質板に含浸したポリアルコールの破断断面図
【図5】(a)シリコン樹脂を注入して出来た蓄熱体と型の断面図 (b)ペレットを備えたガラス繊維の織物に含浸したポリアルコールの破断断面図
【図6】(a)一面が超軟質ウレタン樹脂で覆われた蓄熱体の断面図(b)ハニカムに含浸したポリアルコールの破断断面図
【図7】貫頭衣型装着服の斜視図
【図8】カセットボンベと、半球型蓄熱体の斜視図
【図9】(a)蓄熱体の断面図 (b)突起板に含浸したポリアルコールの破断断面図
【符号の説明】
【0034】
1ポリアルコール
2樹脂シート
3シリコン樹脂
4型
5トリコットメッシュ
6ガーゼ
7不織布
8ガラス繊維
9超軟質ウレタン樹脂
10多孔質体
11繊維の織物
12ペレット
13ハニカム
14ベルクロ生地で作られた貫頭衣型装着服
15ベルクロテープ付収納袋に入れた蓄熱体
16調節用ベルクロテープ
17カセットボンベ
18半球型蓄熱体
19突起板
20繊維に含浸したポリアルコール
21不織布に含浸したポリアルコール
22スポンジに含浸したポリアルコール
23多孔質板に含浸したポリアルコール
24繊維の織物に含浸したポリアルコール
25ハニカムに含浸したポリアルコール
26突起板に含浸したポリアルコール
27ウレタン樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルコールを三次元多孔体に含浸し、容器あるいは袋の中に密封したことを特徴とする蓄熱体。
【請求項2】
三次元多孔体が、繊維あるいは多孔質板、ハニカム、突起板、波板、蛇腹板、網、ブラシ、ばね、たわし、チューブ、スポンジ及びそれらの成形体から選ばれたことを特徴とする請求項1記載の蓄熱体。
【請求項3】
ポリアルコールが融点の異なる複数のポリアルコールから成ることを特徴とする請求項1又は2記載の蓄熱体。
【請求項4】
ポリアルコールが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物から選ばれたことを特徴とする請求項1又は2又は3記載の蓄熱体。
【請求項5】
ポリアルコールがラジカル捕捉剤を含有していることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の蓄熱体。
【請求項6】
ラジカル捕捉剤が、フェノール類、アミン類、及びそれらの混合物から選ばれたことを特徴とする請求項5記載の蓄熱体。
【請求項7】
ポリアルコールがペレットを含有していることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4又は5記載の蓄熱体。
【請求項8】
ペレットが遠赤外線放射セラミックスもしくは微量の放射性物質を含んだセラミックスでできていることを特徴とする請求項7記載の蓄熱体。
【請求項9】
容器あるいは袋が水及び水蒸気を透過しないことを特徴とする請求項1記載の蓄熱体。
【請求項10】
容器あるいは袋が酸素を透過しないことを特徴とする請求項1記載の蓄熱体。
【請求項11】
前記蓄熱体を電子レンジで加熱して用いることを特徴とする蓄熱体の使用方法。
【請求項12】
前記蓄熱体を用いたことを特徴とする保温あるいは保冷用品。
【請求項13】
前記蓄熱体の表面に粘着性物質を用いたことを特徴とする請求項12記載の保温あるいは保冷用品。
【請求項14】
前記蓄熱体にヒーターあるいはペルチエ素子を取り付けたことを特徴とする請求項12又は13記載の保温あるいは保冷用品。
【請求項15】
前記蓄熱体を用いたことを特徴とする医療器具。


【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−197136(P2009−197136A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40399(P2008−40399)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(597105740)
【Fターム(参考)】