説明

蓄積型放送サービスにおける欠損コンテンツの受信方法及び受信端末装置

【課題】携帯通信網を経由して欠損コンテンツを配信する際の補完サーバ及び携帯通信網の負荷を抑制すること。
【解決手段】この受信端末装置1は、放送波からコンテンツを受信するレンダラ12と、受信コンテンツを蓄積する外部メモリ14と、補完通信開始時間を計算する制御モジュール13とを備える。制御モジュール13は、契約種別によって通信可能時間帯を決定する通信可能時間帯判定部36、通信可能時間帯内からコンテンツ種別によって第1の通信可能レンジを決定する第1の通信可能レンジ決定部38、第1の通信可能レンジ内から通予定データ容量によって第2の通信可能レンジを決定する第2の通信可能レンジ決定部39を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄積型放送サービスにおいて受信できなかった放送コンテンツを、携帯通信網を利用した補完通信にて受け取るための欠損コンテンツの受信方法及び受信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイルマルチメディア放送は、地上アナログ放送終了後の電波の空き周波数を利用して各種コンテンツを配信する携帯端末向けの新しい放送である。モバイルマルチメディア放送は、ワンセグ放送と同様のリアルタイム型放送サービスの他に、電波の受信が可能なときにさまざまなコンテンツを受信端末装置が受信し、受信端末装置のメモリに蓄積する蓄積型放送サービスの提供が予定されている。視聴者は電波の受信の可否にかかわらず、蓄積されているコンテンツによりサービスを利用したいときに利用することが可能となる。
【0003】
一方、携帯端末が放送波を受信し蓄積したデータから欠損や誤りの検出を行い、正常に受信できていない部分のデータを、携帯通信網を利用したデータ通信により補完する放送補完という方式が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、携帯通信網を経由して欠損コンテンツを配信する場合、補完サーバに対するアクセスが多数の携帯端末から集中すると、補完サーバの負荷が増大するばかりでなく、携帯通信網を圧迫して他の携帯サービスに影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、携帯通信網を経由して欠損コンテンツを配信する際の補完サーバ及び携帯通信網の負荷を抑制できる欠損コンテンツの受信方法及び受信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの側面では、放送波又はデータ通信網経由で配信されたコンテンツを受信する受信手段と、前記受信手段で受信されたコンテンツを蓄積する記憶手段と、前記記憶手段に蓄積されたコンテンツのうち配信時に受信できなかった欠損コンテンツをデータ通信網経由で補完サーバから取得する制御手段と、ユーザ操作を受けて、前記記憶手段から取り出されたコンテンツを視聴可能なデータ形式に変換する視聴処理手段と、前記視聴可能なデータ形式に変換されたコンテンツを再生する再生手段とを備えた受信端末装置であり、前記制御手段は、少なくとも、コンテンツ視聴に関する契約種別と前記欠損コンテンツのコンテンツ種別とから、前記補完サーバから欠損コンテンツをダウンロードするための通信開始時間を計算し、計算された通信開始時間に前記補完サーバとの通信を開始して当該欠損コンテンツを受信することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、少なくともコンテンツ視聴に関する契約種別と欠損コンテンツのコンテンツ種別といった受信端末装置で取得可能な情報に基づいて欠損コンテンツをダウンロードするための通信開始時間を計算しているので、複数端末間で補完通信開始時間を分散化できると共に、他端末の状況を把握できない中で補完サーバへのアクセス集中を分散でき、かつデータ通信網が圧迫される不具合を防止できる。
【0009】
上記受信端末装置において、前記制御手段は、ユーザが自発的な視聴意図の下に受信したコンテンツを自発的コンテンツとし、ユーザの意図とは無関係に配信元より配信されたコンテンツを受動的コンテンツとして前記コンテンツ種別を管理し、前記自発的コンテンツを前記受動的コンテンツよりも高い優先度にして通信開始時間を計算することが望ましい。
【0010】
これにより、受信コンテンツを自発的コンテンツと受動的コンテンツとに分類してコンテンツ種別を管理するので、自発的コンテンツを受動的コンテンツよりも高い優先度にすることができ、ユーザが自発的な視聴意図の下に受信したコンテンツについてはその欠損コンテンツを早期に確実に受信することができる。
【0011】
上記受信端末装置において、前記制御手段は、欠損コンテンツの配信可能時間として割り当てられた時間帯から前記契約種別によって通信可能時間帯を決定する通信可能時間帯判定手段と、前記通信可能時間帯内から前記コンテンツ種別によって第1の通信可能レンジを決定する第1の通信可能レンジ決定手段と、前記第1の通信可能レンジ内から通信予定データ容量によって第2の通信可能レンジを決定する第2の通信可能レンジ決定手段と、を具備する構成とすることができる。
【0012】
これにより、ユーザ間の優先度を決める上で大きな要因となる契約種別によって通信開始時間を大きく左右する通信可能時間帯を決定し、次にコンテンツ間での優先度を決める上で大きな要因となるコンテンツ種別によって第1の通信可能レンジを決定し、さらに実際の通信時間を左右する通信予定データ容量によって第2の通信可能レンジを決定するので、契約種別及びコンテンツ種別によって優先度を変えることができると共に補完サーバへの通信開始時間を分散化させることができる。
【0013】
上記受信端末装置において、前記制御手段は、第2の通信可能レンジ内から乱数によって通信開始時間を決定することとしても良い。
【0014】
これにより、第2の通信可能レンジ内で通信開始時間をさらにランダム化させることができる。
【0015】
上記受信端末装置において、前記制御手段は、前記コンテンツ種別が前記受動的コンテンツであった場合、前記契約種別によって通信可能時間帯を決定し、前記補完サーバとの通信は、前記決定した通信可能時間帯の開始時間以降であって帯域の混線状況が所定値よりも良い時間に行い、混線状況が所定値よりも悪化したら通信を中断することとしても良い。
【0016】
これにより、帯域の混線状況が所定値よりも良い時間でのみ受動的コンテンツの補完通信を実施する事で、更なる最適化を図ることができる。混線状況が所定値よりも悪化した場合は、補完通信が完了しないが、ユーザにとっての必要性、緊急性が低いので問題とならない。また、コンテンツ種別が「自発」であるコンテンツの補完通信と時間的に重複する可能性があるが、混線状況が悪化する都度通信中断を行なうため、優先する通信を妨害する事は無い。
【0017】
上記受信端末装置において、前記制御手段は、前記補完サーバ又はその他の通信装置からデータ通信網経由で帯域の混線状況に関する情報を取得し、取得した帯域の混線状況に応じて契約種別に対応した通信可能時間帯を動的に変更するようにしても良い。
【0018】
本発明の他の側面では、蓄積型放送サービスにおける欠損コンテンツの受信方法であって、放送波又はデータ通信網経由で配信されたコンテンツを受信して蓄積するステップと、前記コンテンツのうち配信時に受信できなかった欠損コンテンツをデータ通信網経由で補完サーバから取得するステップとを備え、少なくとも、コンテンツ視聴に関する契約種別と前記欠損コンテンツのコンテンツ種別とから、前記補完サーバから欠損コンテンツをダウンロードするための通信開始時間を計算し、計算された通信開始時間に前記補完サーバとの通信を開始して当該欠損コンテンツを受信することを特徴とする受信方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、携帯通信網を経由して欠損コンテンツを配信する際の補完サーバ及び携帯通信網の負荷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る受信端末装置の機能ブロック図
【図2】受信端末装置において補完通信開始時間を決定するまでの処理内容を示すフロー図
【図3】データ通信管理部でコンテンツ種別等を管理するためのリスト構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る受信端末装置は、モバイルマルチメディア放送の蓄積型放送サービスに対応可能に構成された携帯端末装置であり、受信できなかった欠損コンテンツを携帯通信網経由のデータ通信である補完通信によって取得する機能を備える。
【0022】
図1は本発明の一実施の形態に係る受信端末装置の機能ブロック図であり、主に放送コンテンツの受信並びに補完通信コンテンツの受信に関する部分が図示されている。図1には携帯端末装置として機能するために必要なその他の機能ブロックは省略されている。
【0023】
本実施の形態に係る受信端末装置1は、放送波を受信するチューナ部11、チューナ部11で受信した映像/音声情報等(コンテンツ)を保存処理すると共に視聴対象の映像/音声情報等に再生のための視聴処理を加えるレンダラ12、補完通信開始タイミングを制御する制御モジュール13とを備える。図1では、制御モジュール13が、EMM(Entitlement Management Message)情報及びECM(Entitlement Control Message)情報を処理する制御モジュールで構成されている。制御モジュール13は、例えばCAS(Conditional Access Systems)モジュールである。
【0024】
レンダラ12は、チューナ部11から出力されるデジタル放送の多重化信号であるトランスポートストリーム(TS:Transport Stream)を取り込む。トランスポートストリームは、放送コンテンツを構成する映像/音声情報の他に、EMM情報、ECM情報及びメタデータを含むことができる。トランスポートストリームは、TSパケットが連続した信号列で構成される。TSパケットには、パケットヘッダーが付加されていて、パケットの種類を表すパケット識別子(PID)及びパケット番号が含まれている。
【0025】
レンダラ12の入力段に分離部21が設けられている。分離部21は、トランスポートストリームを、映像/音声情報、EMM情報、ECM情報及びメタデータ等に分離する。分離された映像/音声情報は外部メモリ14へ格納される。レンダラ12の出力段に視聴処理部22が設けられている。視聴処理部22は、視聴権の取得されている映像/音声情報を、ユーザの視聴操作に応じて外部メモリ14から取り出し、取り出された映像/音声情報に再生のための視聴処理を加え、再生された映像信号を表示部15へ出力する一方、音声信号をスピーカ16へ出力する。
【0026】
制御モジュール13は、分離部21でトランスポートストリームから分離されたEMM情報を復号するEMM受信部31と、同様にトランスポートストリームから分離されたECM情報を復号するECM受信部32とを備える。EMM受信部31は、EMM情報を復号して個人契約情報やECM情報の暗号を解くための情報を取得する。復号されたEMM情報のうち少なくとも個人契約情報はEMM保存部33に格納される。放送局が受信機(受信端末装置1)毎に契約状態の変化があった場合にEMM情報を送出することで、EMM保存部33には受信機毎に最新の個人契約情報が蓄積される。
【0027】
受信端末装置1は、携帯通信網経由のデータ通信及び音声通信を行うデータ通信部34を備えている。本実施の形態では、データ通信部34が欠損コンテンツを取得するための携帯通信網を利用した補完通信を実行する。データ通信管理部35は、携帯通信網を利用した補完通信で欠損コンテンツを取得するための補完通信開始時間を管理している。データ通信管理部35において、後述するコンテンツ種別を管理しても良い。
【0028】
受信端末装置1は、レンダラ12で受信したコンテンツに欠損コンテンツがあるか否か判断している。たとえば、外部メモリ14へ格納された映像/音声情報に欠落パケットが発生していれば、補完サーバに対して欠落パケットを欠損コンテンツとして要求する。補完サーバに対して、欠損コンテンツを補完要求する場合、欠落パケットのパケット番号で指定することができる。但し、パケット番号による指定に限定されない。補完サーバにおいて欠落パケットを認識できるのであれば、他の指定方法を採用可能であり、例えば、パケットの指定、Byte Rangeの指定(どこからどこまでのByteが欠損しているかを指定する方法の一つ)であっても良い。
【0029】
本実施の形態では、個々の受信端末装置1において、欠損コンテンツの補完通信開始タイミングがユーザ間で分散化されて時間的に集中しないように補完通信開始時間を計算する。契約種別判定部36は、EMM保存部33に保存されている個人契約内容から契約種別を判定する。本例では、契約種別が、無料(F)、基本(B)、プレミアム(P)の3種類であることを前提として説明する。契約種別をこのように分類することは補完通信開始タイミングをユーザ間で分散化する観点からは好ましいが、本発明はこのような契約種別の分類方式に限定されない。通信可能時間帯判定部37は、契約種別に対応して予め決められた通信可能時間帯を選択する。たとえば、補完通信のための通信可能時間帯は、プレミアム(P)=2時00分から2時59分、基本(B)=3時00分から3時59分、無料(F)=4時から5時59分とする。ここでは、契約種別に対応した各通信可能時間帯が固定しているが、放送波又は補完サーバ等から変更指令を受けて動的に変化させるようにしても良い。放送波の場合、コンテンツを放送受信した際に同時に受信する付加情報(メタデータ)で指定することができる。
【0030】
通信可能レンジ1決定部38は、補完要求する欠損コンテンツが属する本来のコンテンツのコンテンツ種別に応じて通信可能レンジ1を決定する。たとえば、コンテンツ種別が自発的コンテンツであれば、通信可能時間帯Tの前半レンジT1aに決定し、コンテンツ種別が受動的コンテンツであれば、通信可能時間帯Tの後半レンジT1bに決定する。コンテンツ種別は、ユーザが自ら望んで受信したコンテンツを「自発的コンテンツ」と定義し、ユーザの意図とは無関係に配信元より配信されるコンテンツを「受動的コンテンツ」と定義しても良い。たとえば、自発的コンテンツとしてユーザが自分の意思で購入したコンテンツがある。また、受動的コンテンツとして顧客の好みを分析して顧客ごとに適すると推定されて提供(リコメンド)されるコンテンツ、配信元のおすすめコンテンツ、ランキングの上位のコンテンツ等様々なものが想定される。コンテンツ種別を「自発的コンテンツ」と「受動的コンテンツ」に分類することは、補完通信開始タイミングをユーザ間で分散化する観点からは好ましいが、本発明はこのようなコンテンツ種別の分類方式に限定されない。通信可能レンジ1決定部38に対して欠損コンテンツ毎にコンテンツ種別を通知する。
【0031】
本実施の形態では、データ通信管理部35が放送波にて受信されるコンテンツの種別(自発的/受動的)をリストで管理している。たとえば、外部メモリ14にコンテンツが蓄積される度に、新たに蓄積されたコンテンツのコンテンツ情報(コンテンツ名、通信データ量、コンテンツ種別)をリストに追加する。ユーザが受信端末装置1の操作部を操作して取得したコンテンツか否かを操作履歴から判断し、ユーザ操作によりリスト追加されたものを自発的コンテンツと判断し、それ以外のリスト上コンテンツを受動的コンテンツと判断するようにしても良い。または、メタデータを分析してリコメンドコンテンツであるか否かを判断し、リコメンドコンテンツであれば受動的コンテンツと判断し、それ以外のコンテンツを自発的コンテンツと判断しても良い。
【0032】
通信可能レンジ2決定部39は、通信予定データ容量に応じて通信可能レンジ2を決定する。たとえば、通信予定データ量のデータ量閾値をA>Bとした場合、通信予定データ量xが、x≧Aであれば、通信可能レンジ1の前半レンジ1/3を通信時間帯T2aに決定する。また、通信予定データ量xが、A≧x≧Bであれば、通信可能レンジ1の中間レンジ1/3を通信時間帯T2bに決定する。さらに、通信予定データ量xが、B≧xであれば、通信可能レンジ1の後半レンジ1/3を通信時間帯T2cに決定する。本実施の形態では、データ通信管理部35が欠損パケットの通信予定データ量xを管理していて、通信可能レンジ2決定部39に対して欠損コンテンツ毎に通信予定データ量xを通知する。
【0033】
通信開始時間算出部41は、欠損コンテンツ毎に補完サーバから欠損コンテンツをダウンロードするための補完通信の開始時間を計算する。通信可能時間帯判定部37で判定された時間帯T、通信可能レンジ1決定部38で決定した通信可能レンジ1(T1a又はT1b)、通信可能レンジ2決定部39で決定した通信可能レンジ2(T2a、T2b又はT2c)からユーザ毎に送信時間を算出している。さらに、算出した送信時間に対して乱数を利用して補完通信開始時刻を決定している。
【0034】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
図2は受信端末装置1において補完通信開始時間を決定するまでの処理内容を示すフロー図である。放送局から送信された放送波をチューナ部11で受信して受信コンテンツの映像/音声情報が外部メモリ14に格納される。受信端末装置1が放送波の受信中にコンテンツを受信できない状況になると、その間のパケットを受信できないで欠落パケットが発生する。受信端末装置1では、受信したコンテンツに欠落パケットが発生していることを検出すると(ステップS1)、欠落パケットが発生している部分のコンテンツである欠損コンテンツを受信するため、補完通信開始時間を計算する。
【0035】
ここで、前提条件を以下のa)からd)のように定めたケースについて説明する。
欠損コンテンツをデータ通信で補完するための通信可能時間として、閑散時間帯である午前2時0分より午前5時59分が割り当てられている。通信予定データ量をxとし、通信予定データ量のデータ量閾値をA>B>Cとする。契約種別はプレミアム(P)、基本(B)、無料(F)契約の3種とし、優先度はP>B>Fとする。
a)契約種別に対応した通信時間帯Tを以下のように定める。
プレミアムP:午前2時0分から午前2時59分
基本B :午前3時0分から午前3時59分
無料F :午前4時0分から午前5時59分
b)コンテンツ種別に対応した通信可能レンジ1を以下のように定める。
自発的取得:前半1/2
受動的取得:後半1/2
c)通信予定データ容量に対応した通信可能レンジ2を以下のように定める。
x≧A:前半1/3
A≧x≧B:中1/3
B≧x:後半1/3
d)通信開始時刻を決定する乱数α
乱数α(=5とする)を使用
【0036】
上記前提条件の下で、受信端末装置1の契約種別がプレミアム(P)、コンテンツ種別が自発、通信予定データ容量xがx≧Aであるものとして説明する。
契約種別判定部36がEMM保存部33に格納されている個人契約情報から契約種別を判定する(ステップS2)。通信可能時間帯判定部37は、個人契約情報に設定されている契約種別がプレミアム(P)であるので、条件a)より、通信可能時間帯Tとして午前2時0分から午前2時59分を決定する(ステップS3)。このように、契約種別を考慮する事により、優先度の高いユーザの補完通信を優先的に実施する事が可能となる。優先度の高いユーザの補完通信を閑散時間帯の早い時期に開始するので、優先度の高いユーザの補完通信を相対的に早期に完了させることができる。
【0037】
次に、通信可能レンジ1決定部38は、データ通信管理部35にリスト管理されているコンテンツ種別より通信可能レンジ1を決定する(ステップS4)。データ通信管理部35では図3に示す構成のリストが管理されている。通信可能レンジ1決定部38は、データ通信管理部35からコンテンツ種別として「自発」が指示されるので、通信可能レンジ1は前半レンジT1aを決定する。このように、コンテンツ種別を考慮する事により、自発的コンテンツの配信精度を向上させることが可能になる。自発的コンテンツは受動的コンテンツに比べてユーザの視聴希望の強いコンテンツであると考えられ、そのようなコンテンツの補完通信を受動的コンテンツの補完通信よりも早期に開始することで、ユーザが視聴したいコンテンツの補完通信を早期に完了させることが可能になる。
【0038】
次に、通信可能レンジ2決定部39は、データ通信管理部35にリスト管理されている通信予定データ容量より通信可能レンジ2を決定する(ステップS5)。通信予定データ容量xがx≧Aであるので、通信可能レンジ2は前半レンジT2aに決定する。このように、データ容量を考慮する事で、相対的にデータ容量の大きい欠損コンテンツの補完通信開始時間を早めることができ、通信可能時間内に通信完了する可能性を高くすることができる。
【0039】
通信開始時間算出部41は、乱数生成部42で生成される乱数に基づいて補完通信開始時間を算出する(ステップS6,7)。通信可能時間帯Tとして午前2時0分から午前2時59分が決まり、通信可能レンジ1より2時0分〜2時30分となり、更に通信可能レンジ2により2時0分〜2時10分と限定される。通信可能総時間(2時0分〜2時10分)の分単位での範囲から乱数を生成し、最終的な補完通信開始時間を決定する。本例では、1〜10の間の乱数となり、乱数αは5であるため2時5分となる。このように、上記3要素に加え、乱数を用いる事で、通信開始時間の集中を避けることが可能になる。
【0040】
以上のように、契約種別がプレミアム(P)、コンテンツ種別が自発、通信予定データ容量xがx≧Aであるユーザは、極めて早い時間帯から補完通信が開始されることになる(ステップS8)。
【0041】
次に、上記前提条件a)〜d)の下で、受信端末装置1の契約種別がプレミアム(B)、コンテンツ種別が受動、通信予定データ容量xがA≧x≧Bであるものとして説明する。
契約種別判定部36がEMM保存部33より抽出した契約情報より契約種別=Bであるので、通信可能時間帯判定部37が通信可能時間帯を3時0分〜4時59分とする。また、通信可能レンジ1決定部38がデータ通信管理部35から取得したコンテンツ種別が「受動」であるため、通信可能レンジ1は後半レンジT1bとなる。さらに、通信可能レンジ2決定部39がデータ通信管理部35から取得した通信予定データ容量xがA≧x≧Bであるため、通信可能レンジ2は中間レンジT2bとなる。したがって、通信可能時間は通信可能レンジ1より、4時0分〜4時59分となり、更に通信可能レンジ2により4時20分〜4時40分となる。通信開始時間算出部41は、4時20分〜4時40分の期間で通信開始時間を乱数生成部42で生成される乱数に基づいて決定する。本例では1〜20の間の乱数となり、乱数αは5であるため4時25分となる。
【0042】
データ通信管理部35は、通信開始時間算出部41が個々の欠損コンテンツに対して算出した補完通信開始時間からリストのダウンロード順位を決定する。そして、リストの第一優先コンテンツの補完通信開始時間が到来したら、該当する欠損コンテンツを特定する情報(コンテンツID,パケット番号等)をデータ通信部34に通知する。データ通信部34は、データ通信管理部35からの通知を受けて欠損コンテンツを補完サーバに要求する。リストの第一優先コンテンツのダウンロードが完了したら、継続してリストの第二優先コンテンツのダウンロードを開始する。以降、同様にリスト順位に従って欠損コンテンツを継続してダウンロードする。補完サーバから配信されるコンテンツは携帯通信網経由で受信して外部メモリ14へ格納される。その結果、受信端末装置1に欠損コンテンツが補充されて完全なコンテンツがダウンロードされたことになる。
【0043】
以上のように本実施の形態によれば、契約種別を考慮して、優先度の高いユーザの補完通信を優先的に実施するように時間設定すると共に、コンテンツ種別を考慮して自発的コンテンツの優先度を受動的コンテンツに比べて高くしたので、優先度の高いユーザで、かつユーザが視聴を希望しているコンテンツに関する補完通信開始時間を自動的に早い時間に設定できる。しかも、データ容量を考慮する事で、通信可能時間内に通信完了する可能性を高くすることができる。
【0044】
なお、上記受信端末装置1において、補完サーバ又はその他の通信装置からデータ通信網経由で帯域の混線状況に関する情報を取得し、取得した帯域の混線状況に応じて契約種別に対応した通信可能時間帯を動的に変更するようにしても良い。
【0045】
ところで、コンテンツ種別が「受動」の場合は、ユーザにとってコンテンツダウンロードの必要性が低いと予想される。そこで、コンテンツ種別が「受動」であるコンテンツの補完通信は、契約種別から通信可能時間帯を決定し、決定した通信可能時間帯の所定時刻から補完通信を開始するが、帯域の混線状況が悪化したら通信を中断し、混線状況が改善したら通信を再開するようにしても良い。帯域の混線状況は受信端末装置1がパケットロス値もしくは通信速度から予測する。
【0046】
以下、動作概要について説明する。コンテンツ種別が「受動」の場合、契約種別から決まる通信可能時間帯内から任意に補完通信を開始する。補完通信開始時間は乱数を用いて決定してもよい。パケットロス値が規定値(プリセット)を上回った場合は、補完通信を中断する。補完通信を中断した際には、再度乱数を生成しリトライタイミングを決定する。再通信時に再度パケットロス値が規定値を上回った場合は、再度通信を中断し、乱数生成をしてリトライタイミングを決定する。
【0047】
なお、パケットロス値の代替として、通信速度を使用してもよい。通信速度が減少するということは、他端末での通信が発生していることが考えられ、他端末の通信を優先するため、通信を中断する。
【0048】
このように、パケットロス値が規定値(プリセット)以下の混線状況下でのみ受動的コンテンツの補完通信を実施する事で、更なる最適化を図ることができる。パケットロス値が規定値(プリセット)を超える状況が続いた場合は、補完通信が完了しないが、ユーザにとっての必要性、緊急性が低いので問題とならない。また、コンテンツ種別が「自発」であるコンテンツの補完通信と時間的に重複する可能性があるが、パケットロス値を考慮して、混線状況が悪化する都度通信中断を行なうため、優先する通信を妨害する事は無い。
【0049】
また、上記通信可能レンジ2の決定方法として以下の方法を適用することができる。
1分あたりの平均通信速度(A)と通信予定データ量(x)とを比較し、比較結果に基づいて通信可能レンジ2を決定するようにしても良い。
【0050】
たとえば、x/Aが通信可能時間以上の場合、乱数αを生成し、通信可能レンジ開始時間+αを補完通信開始時間とする。ここで、「通信可能時間」とは、通信可能レンジ1決定部38で決定した通信可能レンジ1のレンジ開始時間から、欠損パケットのための補完通信に割り当てられた通信可能時間帯の終了時間(午前5時59分)までの期間である。「通信可能レンジ開始時間」とは、通信可能レンジ1決定部38で決定した通信可能レンジ1のレンジ開始時間である。補完通信開始時間になると補完通信を開始するが、通信可能時間帯の終了時間(午前5時59分)で通信は中断する。
【0051】
また、x/Aが通信可能時間内の場合、通信可能時間の終了時間から逆算した時間を補完通信開始時間とする。例えば、x/A=70の場合、5時59分から70分だけ時間を戻した4時50分が補完通信開始時間となる。
【0052】
このように通信可能レンジ2を決定すれば、通信予定データ量は各端末により異なる可能性が高いため、乱数を用いなくても通信開始時を分散させることができる。また、乱数を使用し、更に算出時間+αからの開始としても良い。
【0053】
また、一般に、欠損コンテンツの通信予定データ量が大きければ、補完サーバと端末の通信時間が長くなり、通信予定データ量が小さければ補完通信の時間が短くなる。そのため、通信予定データ量が大きい場合は、補完通信開始時間が広範囲に分散していることが望まれ、通信予定データ量が小さい場合は補完通信開始時間が近くても同一時間でなければ問題ないと考えられる。
【0054】
そこで、欠損コンテンツの通信予定データ量に対応して乱数のレンジ及び乱数値の間隔を制御するようにしても良い。具体的には、通信予定データ量が大きい場合は、乱数のレンジが相対的に長く、しかも乱数値の間隔が広い乱数を生成する。また、通信予定データ量が小さい場合は、乱数のレンジが相対的に短く、しかも乱数値の間隔が狭い乱数を生成する。乱数の種類は3以上であっても良い。生成した乱数値によって、通信可能レンジ1又は通信可能レンジ2内での通信開始時間を決定する。
【0055】
なお、以上の説明では、端末のチューナ部11で受信できなかった欠損コンテンツを携帯通信網経由のデータ通信で取得していたが、コンテンツの配信は放送波に限定されず、データ通信部34を介して受信されたコンテンツのうち受信できなかった欠損コンテンツに対しても同様に適用可能である。
【0056】
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、モバイルマルチメディア放送の蓄積型放送サービスにおいて欠損コンテンツの補完通信を行う携帯端末に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 受信端末装置
11 チューナ部
12 レンダラ
13 制御モジュール(CASモジュール)
14 外部メモリ
15 表示部
16 スピーカ
21 分離部
22 視聴処理部
31 EMM受信部
32 ECM受信部
33 EMM保存部
34 データ通信部
35 データ通信管理部
36 契約種別判定部
37 通信可能時間帯判定部
38 通信可能レンジ1決定部
39 通信可能レンジ2決定部
41 通信開始時間算出部
42 乱数生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波又はデータ通信網経由で配信されたコンテンツを受信する受信手段と、
前記受信手段で受信されたコンテンツを蓄積する記憶手段と、
前記記憶手段に蓄積されたコンテンツのうち配信時に受信できなかった欠損コンテンツをデータ通信網経由で補完サーバから取得する制御手段と、
ユーザ操作を受けて、前記記憶手段から取り出されたコンテンツを視聴可能なデータ形式に変換する視聴処理手段と、
前記視聴可能なデータ形式に変換されたコンテンツを再生する再生手段と、
を備えた受信端末装置であり、
前記制御手段は、少なくとも、コンテンツ視聴に関する契約種別と前記欠損コンテンツのコンテンツ種別とから、前記補完サーバから欠損コンテンツをダウンロードするための通信開始時間を計算し、計算された通信開始時間に前記補完サーバとの通信を開始して当該欠損コンテンツを受信することを特徴とする受信端末装置。
【請求項2】
前記制御手段は、ユーザが自発的な視聴意図の下に受信したコンテンツを自発的コンテンツとし、ユーザの意図とは無関係に配信元より配信されたコンテンツを受動的コンテンツとして前記コンテンツ種別を管理し、前記自発的コンテンツを前記受動的コンテンツよりも高い優先度にして通信開始時間を計算することを特徴とする請求項1記載の受信端末装置。
【請求項3】
前記制御手段は、欠損コンテンツの配信可能時間として割り当てられた時間帯から前記契約種別によって通信可能時間帯を決定する通信可能時間帯判定手段と、前記通信可能時間帯内から前記コンテンツ種別によって第1の通信可能レンジを決定する第1の通信可能レンジ決定手段と、前記第1の通信可能レンジ内から通信予定データ容量によって第2の通信可能レンジを決定する第2の通信可能レンジ決定手段と、を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の受信端末装置。
【請求項4】
前記制御手段は、第2の通信可能レンジ内から乱数によって通信開始時間を決定することを特徴とする請求項3記載の受信端末装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記コンテンツ種別が前記受動的コンテンツであった場合、前記契約種別によって通信可能時間帯を決定し、前記補完サーバとの通信は、前記決定した通信可能時間帯の開始時間以降であって帯域の混線状況が所定値よりも良い時間に行い、混線状況が所定値よりも悪化したら通信を中断することを特徴とする請求項2記載の受信端末装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記補完サーバ又はその他の通信装置からデータ通信網経由で帯域の混線状況に関する情報を取得し、取得した帯域の混線状況に応じて契約種別に対応した通信可能時間帯を動的に変更することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の受信端末装置。
【請求項7】
蓄積型放送サービスにおける欠損コンテンツの受信方法であって、
放送波又はデータ通信網経由で配信されたコンテンツを受信して蓄積するステップと、
前記コンテンツのうち配信時に受信できなかった欠損コンテンツをデータ通信網経由で補完サーバから取得するステップと、
を備え、
少なくとも、コンテンツ視聴に関する契約種別と前記欠損コンテンツのコンテンツ種別とから、前記補完サーバから欠損コンテンツをダウンロードするための通信開始時間を計算し、計算された通信開始時間に前記補完サーバとの通信を開始して当該欠損コンテンツを受信することを特徴とする受信方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−124619(P2011−124619A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278225(P2009−278225)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】