説明

蓄電システム

【課題】 使用済み蓄電装置を搭載可能な安価な蓄電システムを提供する。
【解決手段】 識別子を用いて通信を行う複数の蓄電装置10A〜10Cと、複数の蓄電装置10A〜10Cの識別子を変換する変換装置20と、変換装置20により変換された識別子を用いて変換装置20を介して複数の蓄電装置10A〜10Cと通信を行い、複数の蓄電装置10A〜10Cから出力された直流電力を所定の大きさに変換して出力するとともに所定の大きさの直流電力により蓄電装置10A〜10Cを充電する充放電制御装置30と、充放電制御装置30から出力された直流電力を交流電力に変換するとともに、配電系統から供給される交流電力を直流電力に変換して充放電制御装置30へ供給するAC/DCコンバータ40と、充放電制御装置30およびAC/DCコンバータ40を制御する制御装置50と、を備えた蓄電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池から供給される電力によりモータを駆動する電気自動車(EV:Electric Vehicle)等の車両が普及しつつある。電気自動車は、蓄電池と、蓄電池の充放電制御を行うためのバッテリ管理ユニット(BMU:Battery Management Unit)と、を含む蓄電装置を備えている。バッテリ管理ユニットは、電気自動車の上位制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とCAN(Controller Area Network)通信プロトコルを利用して制御情報のやり取りをしている。CAN通信プロトコルは、その通信エリアにおいてはCANIDという一意の識別子によりお互いの通信情報を識別している。したがって、バッテリ管理ユニットは電気自動車の通信エリア内では、ユニークな識別子を用いて通信をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−65895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車等の車両に搭載される蓄電装置は、蓄電池の蓄電可能容量が所定量以下となった場合に新しい蓄電装置との交換時期とされる。電気自動車で使用された蓄電装置は、電気自動車の電源としては利用できないとしても、他に利用可能な用途が存在し得る。
【0005】
電気自動車の普及に伴い、上記のような電気自動車の電源として利用価値を失った使用済みの蓄電装置が将来大量に発生することが予測される。そこで、この使用済み蓄電装置を再利用することが望まれている。
【0006】
使用済みの蓄電装置の再利用する際には、蓄電池および電池管理ユニットをそのまま利用することが望ましい。しかしながら、複数の同車種の電気自動車においてCAN通信プロトコルによる通信を行っていた電池管理ユニットを組み合わせて蓄電システムを構成すると、制御情報をやり取りするためのCANIDが重複し、共通のバッテリ充放電制御装置による制御が不可能であった。1つの蓄電装置に対して1つの充放電制御装置を設けると、蓄電システムのコストを低下させることが困難であった。
【0007】
また、蓄電装置の種類が異なるとバッテリ管理ユニットの通信速度が異なる場合があり、この場合、CAN通信プロトコルを用いて制御信号の通信が不可能であった。
【0008】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、使用済み蓄電装置を搭載可能な安価な蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、識別子を用いて通信を行う複数の蓄電装置と、前記複数の蓄電装置の前記識別子を変換する変換装置と、前記変換装置により変換された識別子を用いて前記変換装置を介して前記複数の蓄電装置と通信を行い、前記複数の蓄電装置から出力された直流電力を所定の大きさに変換して出力するとともに所定の大きさの直流電力により前記蓄電装置を充電する充放電制御装置と、前記充放電制御装置から出力された直流電力を交流電力に変換するとともに、配電系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記充放電制御装置へ供給するAC/DCコンバータと、前記充放電制御装置および前記AC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備えた蓄電システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す図である。
【図2】第2実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す図である。
【図3】図2に示す蓄電システムのCANゲートウェイの一構成例を説明する図である。
【図4】第3実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す図である。
【図5】図4に示す蓄電システムのCANゲートウェイの一構成例を説明する図である。
【図6】第4実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す図である。
【図7】図6に示す蓄電システムのCANゲートウェイの一構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の蓄電システムについて、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に第1実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す。本実施形態の蓄電システムは、複数の蓄電装置10A、10B、10Cと、変換装置としてのCANゲートウェイ20と、充放電制御装置30と、AC/DCコンバータ40と、制御装置50と、を備えている。
【0013】
まず、本実施形態の蓄電システムの電力系統について説明する。
複数の蓄電装置10A、10B、10Cのそれぞれは、複数の蓄電池セルを含む組電池BTと、バッテリ管理ユニット12と、を備えている。蓄電装置10A、10B、10Cは同一車種の電気自動車で使用されたリユースバッテリである。
【0014】
本実施形態では、組電池BTの蓄電池セルはリチウムイオン電池である。蓄電池セルはリチウムイオン電池に限らず、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、等のその他の蓄電池であってもよい。
【0015】
バッテリ管理ユニット12は、蓄電池セルの温度や電圧の監視、複数の蓄電池セルの充電量の均等化、および、組電池BTの充放電の制御を行う。バッテリ管理ユニット12は、CAN通信プロトコルを用いて通信を行う。
【0016】
充放電制御装置30はPWM(Pulse Width Modulation)制御可能なスイッチング素子を有し、複数の蓄電装置10A、10B、10Cから出力された直流電力を受信して、所定の大きさの直流電力に変換して直流負荷70へ出力する、あるいは、AC/DCコンバータ40から出力された直流電力を受信して、所定の大きさの直流電力に変換して蓄電装置10A、10B、10Cへ出力するDC/DCコンバータである。
【0017】
例えば、蓄電装置10A、10B、10Cと充放電制御装置30との間で200〜300Vの直流電力が互いに送信され、充放電制御装置30とAC/DCコンバータ40との間で350V〜400Vの直流電力が互いに送信される。
【0018】
AC/DCコンバータ40は双方向コンバータであって、配電系統、交流負荷60、充放電制御装置30、および、直流負荷70に接続されている。AC/DCコンバータ40は、PWM制御可能なスイッチング素子を有し、配電系統から供給された交流電力を直流電力に変換して、充放電制御装置30あるいは直流負荷70へ出力する、あるいは、充放電制御装置30から出力された直流電力を交流電力に変換して、配電系統や交流負荷60へ出力する。例えば、配電系統とAC/DCコンバータ40との間では200V〜220Vの交流電力が互いに送信される。
【0019】
次に、本実施形態の蓄電システムにおける通信系統について説明する。
本実施形態の蓄電システムはイーサネット(登録商標)を利用して外部と通信し、蓄電システム内部ではCAN通信プロトコルを利用して通信を行っている。
【0020】
制御装置50は、上位システム80からの制御信号に基づいて、充放電制御装置30およびAC/DCコンバータ40へ制御信号を通信する。制御装置50は上位システム80との間でイーサネットを利用して通信し、充放電制御装置30およびAC/DCコンバータ40との間でCAN通信プロトコルを利用して通信を行う。
【0021】
CANゲートウェイ20は、蓄電装置10A、10B、10CがCAN通信プロトコルを利用して通信する際に用いるCANID(識別子)を、充放電制御装置30で識別可能なCANIDに変換している。
【0022】
CANゲートウェイ20は、例えば、充放電制御装置30や制御装置50から通知された識別子を蓄電装置10A、10B、10CのCANIDとして用いてもよく、蓄電装置10A、10B、10Cが取り付けられたハードウェア構成の位置に応じた識別子を付してもよい。CANゲートウェイ20は、例えば蓄電装置10A、10B、10Cが接続した充放電制御装置30に付された番号と、充放電制御装置30に接続された複数の蓄電装置に順次付された番号と、を用いて識別子を生成してもよい。
【0023】
したがって、複数の蓄電装置10A、10B、10Cで用いられるCANIDが重複している場合であっても、充放電制御装置30はCANゲートウェイ20を介して複数の蓄電装置10A、10B、10Cと通信可能となる。
【0024】
充放電制御装置30は、CANゲートウェイ20を介して複数の蓄電装置10A、10B、10Cと通信を行い、例えば蓄電池セルの過充電や過放電が通知された場合に、制御装置に異常を通知するとともに、充電の停止あるいは放電の停止等により蓄電装置を保護する。
【0025】
上記のように、充放電制御装置30と複数の蓄電装置10A、10B、10CとがCANゲートウェイ20を介して通信を行うことにより、複数の蓄電装置10A、10B、10Cのそれぞれに対応する充放電制御装置を設ける必要がなくなり、リユースバッテリを搭載する場合であっても蓄電システムのコストが高くなることを回避することができる。
【0026】
すなわち、本実施形態の蓄電システムによれば、使用済み蓄電装置を搭載可能な安価な蓄電システムを提供することができる。
【0027】
次に、第2実施形態の蓄電システムについて図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
図2に本実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す。本実施形態の蓄電システムは通信系統の構成が上述の第1実施形態と異なっている。本実施形態の蓄電システムは、複数の蓄電装置10A、10B、10Cの数と同数のCANゲートウェイ20A、20B、20Cを有している。本実施形態の蓄電システムは上記CANゲートウェイ20A、20B、20Cの構成以外は上述の第1実施形態の蓄電システムと同様の構成である。
【0029】
図3に、本実施形態の蓄電システムのCANゲートウェイ20A、20B、20Cの一構成例を示す。CANゲートウェイ20A、20B、20Cそれぞれは、識別子変換部21と、ロータリースイッチSW1、SW2と、を備えている。図3に示す場合では、複数の蓄電装置10A、10B、10Cが通信に用いるCANIDが全て「0x7FF」であって、重複している場合について示している。
【0030】
識別子変換部21は、充放電制御装置30から提供されるDC/DC番号および接続番号と、蓄電装置10A、10B、10Cにおいて設定される第1拡張用IDおよび第2拡張用IDと、を用いて蓄電装置10A、10B、10Cで用いられるCANIDを変換する。
【0031】
充放電制御装置30から提供されるDC/DC番号は、蓄電装置10A、10B、10Cが接続されている充放電制御装置30に付された番号である。本実施形態の蓄電システムは単一の充放電制御装置30を備えているため、蓄電装置10A、10B、10Cには共通のDC/DC番号「1」が提供される。
【0032】
充放電制御装置30から提供される接続番号は、1つの充放電制御装置30に接続された複数の蓄電装置10A、10B、10Cの個々に順次付された番号である。本実施形態では、蓄電装置10Aの接続番号は「1」であり、蓄電装置10Bの接続番号は「2」であり、蓄電装置10Cの接続番号は「3」である。
【0033】
CANゲートウェイ20A、20B、20Cは、例えばつまみの位置に対応する番号が付された2つロータリースイッチSW1、SW2を備え、このロータリースイッチSW1、SW2を操作することにより第1拡張用IDおよび第2拡張用IDが設定される。本実施形態では、蓄電装置10Aの第1拡張用IDは「1」、第2拡張用IDは「1」であり、蓄電装置10Bの拡張用IDは「1」、第2拡張用IDは「2」であり、蓄電装置10Cの拡張用IDは「1」、第2拡張用IDは「3」である。
【0034】
識別子変換部21は、上記DC/DC番号、接続番号、第1拡張用ID、および、第2拡張用IDを用いて、蓄電装置10A、10B、10CのCANIDを変換する。すなわち、蓄電装置10A、10B、10CのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、DC/DC番号、接続番号、第1拡張用ID、第2拡張用IDの順に4桁の番号を付して、新たなCANIDとする。具体的にはCANデータフレームの拡張フォーマット18bitの拡張ID等を利用する。
【0035】
CANゲートウェイ20Aは、蓄電装置10Aから充放電制御装置30へ通信を行う際に、蓄電装置10AのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、「1111」を付して、CANID「0x7FF1111」とし、逆に充放電制御装置30から蓄電装置10Aへ通信を行う際にCANID「0x7FF1111」の末尾4桁を除いてCANID「0x7FF」とする。
【0036】
CANゲートウェイ20Bは、蓄電装置10Bから充放電制御装置30へ通信を行う際に、蓄電装置10BのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、「1212」を付して、CANID「0x7FF1212」とし、逆に充放電制御装置30から蓄電装置10Aへ通信を行う際にCANID「0x7FF1212」の末尾4桁を除いてCANID「0x7FF」とする。
【0037】
CANゲートウェイ20Cは、蓄電装置10Cから充放電制御装置30へ通信を行う際に、蓄電装置10CのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、「1313」を付して、CANID「0x7FF1313」とし、逆に充放電制御装置30から蓄電装置10Cへ通信を行う際にCANID「0x7FF1313」の末尾4桁を除いてCANID「0x7FF」とする。
【0038】
なお、本実施形態では、識別子変換部21は、充放電制御装置30から提供される番号と、CANゲートウェイ20A、20B、20Cにおいて設定される番号とを組み合わせてCANIDを変換していたが、充放電制御装置30から提供される番号のみを用いてCANIDを変換してもよく、CANゲートウェイ20A、20B、20Cにおいて設定される番号のみを用いてCANIDを変換しても良い。
【0039】
上記のように、充放電制御装置30と複数の蓄電装置10A、10B、10CとがCANゲートウェイ20A、20B、20Cを介して通信を行うことにより、上記第1実施形態と同様に、複数の蓄電装置10A、10B、10Cのそれぞれに対応する充放電制御装置を設ける必要がなくなり、リユースバッテリを搭載する場合であっても蓄電システムのコストが高くなることを回避することができる。
【0040】
さらに、複数の蓄電装置10A、10B、10Cの個々にCANゲートウェイ20A、20B、20Cを接続することにより、蓄電システムに搭載される蓄電装置の増減に応じてCANゲートウェイを増減することが可能となり、蓄電システムの規模を変更することが容易となる。
【0041】
すなわち、本実施形態の蓄電システムによれば、使用済み蓄電装置を搭載可能な安価な蓄電システムを提供することができる。
【0042】
次に、第3実施形態の蓄電システムについて図面を参照して以下に説明する。
図4に本実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す。本実施形態の蓄電システムは通信系統の構成が上述の第1実施形態と異なっている。本実施形態の蓄電システムでは、複数の蓄電装置10A、10B、10Bは異なる車種の電気自動車で使用されたリユースバッテリである。蓄電装置10A、10Cのバッテリ管理ユニット12は、蓄電システム内のCAN通信の通信速度(第1速度)[bps]と同じ速度で通信するが、蓄電装置10Bのバッテリ管理ユニット12は蓄電システム内の通信速度よりも遅い通信速度(第2速度)[bps]で通信を行う。
【0043】
本実施形態の蓄電システムは、複数の蓄電装置10A、10B、10Cと同数の変換装置としてCANゲートウェイ20A、20B、20Cを備えている。複数のCANゲートウェイ20A、20B、20CはCAN通信バスライン100に接続されている。CAN通信バスライン100には、充放電制御装置30、AC/DCコンバータ40、および、制御装置50も接続されている。
【0044】
上記のように、CANゲートウェイ20A、20B、20C、充放電制御装置30、および、制御装置50を1つのCAN通信バスライン100に接続することで、充放電制御装置30、および、制御装置50から蓄電装置10A、10B、10Cの情報参照を自由に行うことができる。
【0045】
複数のCANゲートウェイ20A、20B、20Cは蓄電装置10A、10B、10Cが用いるCANIDを変換するとともにCAN通信速度が異なる蓄電装置がある場合には通信速度を協調させる。
【0046】
図5に、本実施形態の蓄電システムのCANゲートウェイ20A、20B、20Cの一構成例を示す。CANゲートウェイ20A、20B、20Cそれぞれは、識別子変換部21と、ロータリースイッチSW1、SW2と、通信速度設定スイッチSW3、SW4と、を備えている。
【0047】
識別子変換部21の動作は上述の第2実施形態の蓄電システムと同様である。すなわち、識別子変換部21は、充放電制御装置30から提供されるDC/DC番号および接続番号と、CANゲートウェイ20A、20B、20Cにおいて設定される第1拡張用IDおよび第2拡張用IDと、を用いて蓄電装置10A、10B、10Cから受信したCANIDを変換する。
【0048】
CANゲートウェイ20Aは、蓄電装置10Aから充放電制御装置30へ通信を行う際に、蓄電装置10AのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、「1111」を付して、CANID「0x7FF1111」とし、逆に充放電制御装置30から蓄電装置10Aへ通信を行う際にCANID「0x7FF1111」の末尾4桁を除いてCANID「0x7FF」とする。
【0049】
CANゲートウェイ20Bは、蓄電装置10Bから充放電制御装置30へ通信を行う際に、蓄電装置10BのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、「1212」を付して、CANID「0x7FF1212」とし、逆に充放電制御装置30から蓄電装置10Aへ通信を行う際にCANID「0x7FF1212」の末尾4桁を除いてCANID「0x7FF」とする。
【0050】
CANゲートウェイ20Cは、蓄電装置10Cから充放電制御装置30へ通信を行う際に、蓄電装置10CのオリジナルのCANID「0x7FF」の末尾に、「1313」を付して、CANID「0x7FF1313」とし、逆に充放電制御装置30から蓄電装置10Cへ通信を行う際にCANID「0x7FF1313」の末尾4桁を除いてCANID「0x7FF」とする。
【0051】
また、CANゲートウェイ20A、20B、20Cは、蓄電装置10A、10B、10Cとの通信速度を設定する通信速度設定スイッチSW3と、充放電制御装置30および制御装置50との通信速度を設定する通信速度設定スイッチSW4と、を備えている。通信速度設定スイッチSW3、SW4は、例えばLo(第2速度)側とHi(第1速度)側とにつまみを切換えるディップスイッチである。
【0052】
本実施形態では、蓄電装置10Bの通信速度(第2速度)が蓄電システム内の通信速度(第1速度)と異なっているため、通信速度設定スイッチSW3がLo側に切換えられ、通信速度設定スイッチSW4がHi側に切換えられている。この場合、CANゲートウェイ20Bは蓄電装置10Bとの間では第2速度で通信するとともに充放電制御装置30および制御装置50との間では第1速度で通信する。このことにより、蓄電システムに搭載される蓄電装置の通信速度が限定されることがなくなり、様々な種類のリユースバッテリを搭載可能となる。
【0053】
上記のように、充放電制御装置30と複数の蓄電装置10A、10B、10CとがCANゲートウェイ20A、20B、20Cを介して通信を行うことにより、上記第1実施形態と同様に、複数の蓄電装置10A、10B、10Cのそれぞれに対応する充放電制御装置を設ける必要がなくなり、リユースバッテリを搭載する場合であっても蓄電システムのコストが高くなることを回避することができる。
【0054】
さらに、上述の第2実施形態と同様に、複数の蓄電装置10A、10B、10Cの個々にCANゲートウェイ20A、20B、20Cを接続することにより、蓄電システムに搭載される蓄電装置の増減に応じてCANゲートウェイを増減することが可能となり、蓄電システムの規模を変更することが容易となる。
【0055】
さらに、本実施形態では、CANゲートウェイ20A、20B、20Cが通信速度設定スイッチSW3、SW4を備えることにより、蓄電システム内の通信速度と異なる通信速度で通信を行う蓄電装置も搭載可能となる。なお、蓄電システム内の通信速度が一定で変化しない場合には、通信速度設定スイッチSW4を省略してもよい。
【0056】
すなわち、本実施形態の蓄電システムによれば、使用済み蓄電装置を搭載可能な安価な蓄電システムを提供することができる。
【0057】
次に、第4実施形態の蓄電システムについて図面を参照して以下に説明する。
図6に本実施形態の蓄電システムの一構成例を概略的に示す。本実施形態の蓄電システムは通信系統の構成が上述の第1実施形態と異なっている。本実施形態の蓄電システムでは、複数の蓄電装置10A、10B、10Bは異なる車種の電気自動車で使用されたリユースバッテリである。蓄電装置10A、10Cのバッテリ管理ユニット12は第1速度(Hi−speed)で通信するが、蓄電装置10Bのバッテリ管理ユニット12は第2速度(Lo−speed)で通信を行う。
【0058】
本実施形態の蓄電システムは、変換装置として複数の蓄電装置10A、10B、10Cと同数のCANゲートウェイ20A、20B、20Cを備えるとともに、充放電制御装置30に接続されたCANゲートウェイ(第2変換装置)32と、AC/DCコンバータ40に接続されたCANゲートウェイ(第3変換装置)42と、をさらに備えている。
【0059】
複数のCANゲートウェイ20A、20B、20Cはイーサネット通信ライン200に接続されている。イーサネット通信ライン200には、CANゲートウェイ32、42、および、制御装置50も接続されている。
【0060】
複数のCANゲートウェイ20A、20B、20Cは、蓄電装置10A、10B、10Cとの間でCANIDを用いて通信を行い、CANゲートウェイ32、42、および制御装置50との間でIPアドレスを用いて通信を行う。
【0061】
CANゲートウェイ32は、充放電制御装置30との間でCANIDを用いて通信を行い、CANゲートウェイ20A、20B、20C、42および制御装置50の間でIPアドレスを用いて通信を行う。
【0062】
CANゲートウェイ42は、AC/DCコンバータ40との間でCANIDを用いて通信を行い、CANゲートウェイ20A、20B、20C、32および制御装置50の間でIPアドレスを用いて通信を行う。
【0063】
上記のように、CANゲートウェイ20A、20B、20C、CANゲートウェイ32、42、および、制御装置50を1つのイーサネット通信ライン200に接続することで、充放電制御装置30、および、制御装置50から蓄電装置10A、10B、10Cの情報参照を自由に行うことができる。また、CANゲートウェイ20A、20B、20C、32、42の一部または全部を一体化した構成とすることも可能である。蓄電装置10A、10B、10CとはCAN通信を行い、制御装置50と前記CANゲートウェイとの間の通信はイーサネット通信とすることも可能である。
【0064】
また、本実施形態の蓄電システムは、外部に他の装置を接続可能な接続部T1、T2を備えている。接続部T1、T2はイーサネット通信ライン200と接続されている。接続部T1、T2には、イーサネット通信を行う装置であれば接続可能であり、例えば、他の直流電源装置やデータセンタと通信端末等を接続することができる。接続部T1、T2に接続された装置は、イーサネット通信ライン200を介して制御装置50やCANゲートウェイ20A、20B、20C、32、42と通信可能である。
【0065】
また、複数のCANゲートウェイ20A、20B、20Cは通信速度が異なる蓄電装置がある場合には通信速度を協調させる。
【0066】
図7に、本実施形態の蓄電システムのCANゲートウェイ20A、20B、20C、32、42の一構成例を示す。CANゲートウェイ20A、20B、20Cそれぞれは、イーサネット変換部22と、ロータリースイッチSW5、SW6と、通信速度設定スイッチSW3と、を備えている。
【0067】
イーサネット変換部22は、ネットワークIDと、第1ホストIDと、第2ホストIDとを用いて、イーサネット通信に用いるIPアドレスを生成する。本実施形態では、蓄電システム内のネットワークIDは「192.168.0.」である。第1ホストIDはロータリースイッチSW5のつまみの位置により設定される。第2ホストIDはロータリースイッチSW6のつまみの位置により設定される。
【0068】
イーサネット変換部22は、上記ネットワークID「192.168.0.」の末尾に第1ホストIDおよび第2ホストIDに対応する番号を付して、IPアドレスを生成する。なお、図7ではイーサネット変換部22はクラスCのIPアドレスを生成している。IPアドレスのクラスはネットワークの規模に応じて選択されることが望ましい。
【0069】
例えば、CANゲートウェイ20Aのイーサネット変換部22は、ネットワークID「192.168.0.」の末尾に、第1ホストID「1」と第2ホストID「1」とに対応する番号「017」を付してIPアドレス「192.168.0.017」を生成する。CANゲートウェイ20Aは、蓄電装置10AのCANID「0x7FF」を用いて蓄電装置10Aと通信を行うとともに、生成したIPアドレス「192.168.0.017」を用いてイーサネット通信ライン200を介した通信を行う。
【0070】
CANゲートウェイ20Bのイーサネット変換部22は、ネットワークID「192.168.0.」の末尾に、第1ホストID「1」と第2ホストID「2」とに対応する番号「018」を付してIPアドレス「192.168.0.018」を生成する。CANゲートウェイ20Bは、蓄電装置10BのCANID「0x7FF」を用いて蓄電装置10Bと通信を行うとともに、生成したIPアドレス「192.168.0.018」を用いてイーサネット通信ライン200を介した通信を行う。
【0071】
CANゲートウェイ20Cのイーサネット変換部22は、ネットワークID「192.168.0.」の末尾に、第1ホストID「1」と第2ホストID「3」とに対応する番号「019」を付してIPアドレス「192.168.0.019」を生成する。CANゲートウェイ20Cは、蓄電装置10CのCANID「0x7FF」を用いて蓄電装置10Cと通信を行うとともに、生成したIPアドレス「192.168.0.019」を用いてイーサネット通信ライン200を介した通信を行う。
【0072】
なお、図7には記載されていないが、CANゲートウェイ32、42もCANゲートウェイ20A、20B、20Cと同様の構成を備え、ネットワークIDと、第1ホストIDと、第2ホストIDとを用いてIPアドレスを生成する。
【0073】
また、CANゲートウェイ20A、20B、20Cは、蓄電装置10A、10B、10Cとの通信速度を設定する通信速度設定スイッチSW3を備えている。通信速度設定スイッチSW3は、例えば第2速度(Lo)側と第1速度(Hi)側とにつまみを切換えるディップスイッチである。
【0074】
本実施形態では、蓄電装置10A、10Cの通信速度が第1速度であり、蓄電装置10Bの通信速度が第2速度である。したがって、CANゲートウェイ20A、20Bの通信速度設定スイッチSW3がHi側に切換えられ、CANゲートウェイ20Cの通信速度設定スイッチSW3がLo側に切換えられている。このことにより、蓄電システムに搭載される蓄電装置の通信速度が限定されることがなくなり、様々な種類のリユースバッテリを搭載可能となる。
【0075】
上記のように、充放電制御装置30と複数の蓄電装置10A、10B、10CとがCANゲートウェイ20A、20B、20Cを介して通信を行うことにより、IPアドレスにより装置を特定することが可能となる。このことにより、複数の蓄電装置10A、10B、10Cのそれぞれに対応する充放電制御装置を設ける必要がなくなり、リユースバッテリを搭載する場合であっても蓄電システムのコストが高くなることを回避することができる。
【0076】
さらに、本実施形態では蓄電システム内においてIPアドレスを用いてイーサネット通信を行っているため、CANIDを用いるよりも識別子の選択の幅が広がる。また、イーサネット通信によれば、CAN通信よりも通信速度を向上させることができ、通信帯域も広くなるため、より多くの情報を高速に通信可能となる。また、蓄電システム内でイーサネット通信を行うことにより、接続部T1、T2に他の装置を接続して装置を拡張することを容易に実現することができ、より汎用性の高いシステムを提供することができる。
【0077】
さらに、上述の第2実施形態と同様に、複数の蓄電装置10A、10B、10Cの個々にCANゲートウェイ20A、20B、20Cを接続することにより、蓄電システムに搭載される蓄電装置の増減に応じてCANゲートウェイを増減することが可能となり、蓄電システムの規模を変更することが容易となる。
【0078】
さらに、本実施形態では、CANゲートウェイ20A、20B、20Cが通信速度設定スイッチSW3を備えることにより、様々な種類の蓄電装置を搭載可能となる。
【0079】
すなわち、本実施形態の蓄電システムによれば、使用済み蓄電装置を搭載可能な安価な蓄電システムを提供することができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
BT…組電池、T1.T2…接続部、SW1、SW2…ロータリースイッチ、SW3、SW4…通信速度設定スイッチ、SW5、SW6…ロータリースイッチ、10A、10B、10C…蓄電装置、12…バッテリ管理ユニット、20、20A、20B、20C…CANゲートウェイ(変換装置)、21…識別子変換部、22…イーサネット変換部、30…充放電制御装置、32…CANゲートウェイ(第2変換装置)、42…CANゲートウェイ(第3変換装置)、40…AC/DCコンバータ、50…制御装置、60…交流負荷、70…直流負荷、80…上位システム、100…CAN通信バスライン、200…イーサネット通信ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別子を用いて通信を行う複数の蓄電装置と、
前記複数の蓄電装置の前記識別子を変換する変換装置と、
前記変換装置により変換された識別子を用いて前記変換装置を介して前記複数の蓄電装置と通信を行い、前記複数の蓄電装置から出力された直流電力を所定の大きさに変換して出力するとともに所定の大きさの直流電力により前記蓄電装置を充電する充放電制御装置と、
前記充放電制御装置から出力された直流電力を交流電力に変換するとともに、配電系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記充放電制御装置へ供給するAC/DCコンバータと、
前記充放電制御装置および前記AC/DCコンバータを制御する制御装置と、を備えた蓄電システム。
【請求項2】
前記変換装置は、前記蓄電装置が接続された前記充放電制御装置の番号と、前記充放電制御装置に接続された複数の前記蓄電装置に順次付された番号と、を用いて前記識別子を変換する請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記変換装置は、前記識別子を変換する際に用いる番号を設定するロータリースイッチを備えている請求項1又は請求項2記載の蓄電システム。
【請求項4】
所定の通信速度で通信を行う複数の蓄電装置と、
前記複数の蓄電装置から出力された直流電力を所定の大きさに変換して出力するとともに所定の大きさの直流電力により前記蓄電装置を充電する充放電制御装置と、
前記充放電制御装置から出力された直流電力を交流電力に変換するとともに、配電系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記充放電制御装置へ供給するAC/DCコンバータと、
前記充放電制御装置および前記AC/DCコンバータを制御する制御装置と、
前記複数の蓄電装置との通信速度を設定する第1通信速度設定手段を含み、前記複数の蓄電装置と前記充放電制御装置との間に介在する変換装置と、を備えた蓄電システム。
【請求項5】
前記変換装置と、前記充放電制御装置と、前記制御装置とが接続された通信バスラインをさらに備える請求項1又は請求項4記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記変換装置と前記制御装置とが接続されたイーサネット通信ラインと、
前記充放電制御装置と前記イーサネット通信ラインとの間に介在して前記充放電制御装置のIPアドレスを生成する第2変換装置と、
前記AC/DCコンバータと前記イーサネット通信ラインとの間に介在して前記AC/DCコンバータのIPアドレスを生成する第3変換装置と、
前記イーサネット通信ラインと外部装置とを接続する接続部と、をさらに備え、
前記変換装置は前記蓄電装置のIPアドレスを生成するイーサネット変換手段を備える請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の蓄電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−31324(P2013−31324A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166778(P2011−166778)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】