説明

蓄電デバイス用セパレータ

【課題】 本発明は、薄膜化が可能で、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡および自己放電がしにくく、しかも機械的強度に優れるセパレータを提供する。
【解決手段】 融点が200℃以上の樹脂の連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している不織布もしくは織布上に、セルロース系繊維と融点が200℃以上のフィブリル繊維とを含む繊維を積層してなる蓄電デバイス用セパレータであって、該セルロース系繊維のろ水度が500ml以下であり、該セルロース繊維の平均繊維径とフィブリル繊維の平均繊維径の比が2〜40、セルロース繊維の平均繊維長とフィブリル繊維の平均繊維長の比が3〜12である蓄電デバイス用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電機二重層キャパシタなどの蓄電デバイス用セパレータ(以下、「セパレータ」という。)に関するものであり、特に、電気二重層キャパシタ用のセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的大容量を有し、かつ、超寿命であることを特長とする電気二重層キャパシタは、その急速充放電性を特長として、回生エネルギーの蓄電を目的とした車載用途や、複写機の定着ローラーの急速ウォームアップなど、様々な用途への適用が検討されている。特に、近年、電極の容量アップや低抵抗化に伴い、電極間に存在するセパレータには、より低抵抗化が求められると同時に、セパレータ本来の役割である高い絶縁性を同時に備えることが要望されている。電極材料の容量アップの一つとして、電極材層の厚さを増すことがあげられる。しかし、電気二重層キャパシタの体積が増してしまうため、薄型化の要求に応えるためには、電極材層が厚くなった分セパレータはより薄くすることが求められる。また、電気二重層キャパシタの内部抵抗を低減する目的からもセパレータはより薄くすることが望ましい。しかしながら、単に薄くすると上記の電気絶縁性が損なわれ、自己放電が起きやすくなるばかりでなく、電極間の短絡を起こす場合がある。従って、より薄くて低抵抗であり、しかもこれと相反する特性として自己放電や短絡の生じない薄く緻密で均一な構造を有するセパレータが求められている。
【0003】
このような観点から、種々のセパレータが検討されている。例えば、湿式不織布を用いた電気二重層キャパシタ用セパレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。該セパレータでは、用いる繊維の繊維径を小さくし、更には繊維をフィブリル状にしたものを併用するなど、開口径を小さくし自己放電性を抑制するなどの工夫がなされている。しかしながら、かかる方法では孔径を小さくできるが、製造プロセスにおいて機械的強度が低くなり連続生産ができない場合があり、それゆえに均一な抄紙ができにくい。従って、このような方法では、膜厚を薄く、しかも孔径を均一に制御したセパレータを得ることは、生産性を考慮した場合、非常に難しいのが現状である。
【0004】
一方、このような機械的強度の課題を回避するために、機械的強度が十分な高密度の繊維層を有する第1の層上に、抵抗が低い低密度の別の繊維層を抄き合わせで重ねる方法もある。しかしながら、かかる方法では製造装置系が複雑である。さらに、高密度の第1の層があることで低抵抗化が果たせない。また、予め強度に優れる不織布を準備し、その上に繊維を抄造する方法もある。この方法では、抵抗を下げる目的から不織布の目開きを大きくすると、不織布の目開き以上に抄紙材料からなる上の層の孔径を大きくする必要があるため、非常に短絡が発生しやすく、また、自己放電も起こりやすいセパレータになっていた。
従来、抄造方法を用いたセパレータでは、薄くて均一で、短絡や自己放電の問題を回避でき、しかも生産性にも問題のないものはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−270471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薄膜化が可能で、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡および自己放電がしにくく、しかも機械的強度に優れるセパレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセパレータは、融点が200℃以上の樹脂の連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している不織布もしくは織布上に、セルロース系繊維と融点が200℃以上のフィブリル繊維とを含む繊維を積層してなるセパレータであって、該セルロース系繊維のろ水度が500ml以下であり、該セルロース繊維の平均繊維径とフィブリル繊維の平均繊維径の比が2〜40、セルロース繊維の平均繊維長とフィブリル繊維の平均繊維長の比が3〜12であることを特徴とする。
前記不織布あるいは織布の材質は、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、半芳香族ポリエステルから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0008】
前記フィブリル繊維は、その平均繊維径が3μm以下、平均繊維長が3mm以下であることが好ましく、その材質は、セルロース、アラミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
本発明のセパレータは、厚さが60μ以下であり、密度が0.25g/cm〜0.75g/cmであることが好ましい。
また、本発明のセパレータは、引っ張り強度が、10N/15mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセパレータは、薄膜化が可能で、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡防止も自己放電の抑制も優れており、しかも機械的強度に優れており、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電機二重層キャパシタなどに好適に用いることができ、特に、電気二重層キャパシタ用として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセパレータは、融点が200℃以上の樹脂の連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している不織布もしくは織布上に、セルロース繊維と融点が200℃以上のフィブリル繊維を含む繊維が積層されている。不織布もしくは織布上に積層する方法として、予め用意した不織布もしくは織布の上に、セルロース系繊維とフィブリル繊維を含む繊維を、湿式抄紙法によって好適に積層することができる。
【0011】
本発明のセパレータを構成するセルロース系繊維は、針葉樹或いは広葉樹によるパルプを用いて得ることができるが、特に、溶融紡糸セルロース用いることが好ましい。セルロース系繊維は、電解液の含浸量を多くするために、できるだけ叩解を上げて繊維を細かくして用いるのが好適であり、セルロース系繊維のろ水度は、500ml以下である。ろ水度が500mlより大きいと、繊維が均一に不織布上に形成されず、さらには、フィブリル繊維と組み合わせて積層しても、十分に孔径を小さくできないため、自己放電の抑制や短絡防止に劣る。しかし、叩解を上げ過ぎると、ろ水性が悪くなり生産効率を低下させてしまう恐れがある。従って、セルロース繊維のろ水度としては、30ml〜350mlが好ましく、50ml〜150mlがより好ましい。
【0012】
ここで、ろ水度とは、繊維の水切れの程度を表す指標(数値)であり、繊維の叩解の度合いを示す。ろ水度が小さいほど、水切れが悪いことを示し、叩解の度合いが高い。本発明において、ろ水度の試験方法はJIS P 8121に規定されているカナダ゛標準ろ水度試験方法を採用する。
【0013】
本発明のセパレータを構成するフィブリル繊維は、上記の高叩解度のセルロース系繊維と混合して用いる。混合して用いることによって、不織布上に積層した層の孔径を極めて均一に小さくできるとともに、内部構造を極めて多孔性に富んだ高空隙率のものとすることができる。そのため、電解液の含浸量を多くすることができ、蓄電デバイスの低抵抗化とともに高容量化が可能となる。さらに、セパレータの膜厚方向に適度な弾力性を持たせることができるため、電極と積層する際に良好に密着することが可能となり、従って、電極とセパレータの界面抵抗も下げることができ、より電気化学特性が良好となる。本発明者らの検討によれば、上記の高叩解度セルロース系繊維だけを用いても、孔径を小さくすることが不可能であったが、高叩解度セルロース系繊維と本発明のフィブリル繊維を混合することで、孔径を均一に小さくすることが可能となった。
【0014】
本発明のセパレータを構成する不織布もしくは織布は、膜厚を薄くし、目開きを小さくし、できるだけ緻密にする目的から、細い繊維からなることが好ましい。不織布を薄くすることで、抵抗の低減がはかれるとともに、より緻密かつ均一に目開きを小さくすることによって、その上に形成するセルロース繊維とフィブリル繊維を含む繊維からなる層の目開きが制御され、均一にすることが可能である。
【0015】
不織布もしくは織布の平均繊維径は、不織布そのものの膜厚を薄くすること、また、上層部に形成する層の孔径を極めて小さくすることから、5μm以下であることが好ましい。繊維径が5μmを超える場合は、不織布の目開きが粗くなるために、その上層部の形成層の孔径が大きくなり、また、セパレータの膜厚も厚くなってしまう。
【0016】
本発明において、不織布もしくは織布は、連続フィラメント同士の接点が融着されることによって、薄くても強度が強い不織布が得られ、機械的強度が必要とされる捲回方式で蓄電デバイスを作製することができる。繊維を加熱により融着させたものでもよく、あるいは、不織布もしくは織布の製造工程で融着させたものであってもよい。不織布もしくは織布の引っ張り強度は、10N/15mm以上であることが好ましい。10N/15mmを下回る場合は、捲回方式で蓄電デバイスを作成するときに紙断が発生しやすく、生産効率が悪くなる。
本発明でいう引っ張り強度とは、JIS C 2111に準じて測定した値をいう。
【0017】
不織布もしくは織布は、蓄電デバイスを組み立てる際の耐熱性を持たせるために、融点が200℃以上、または実質的に融点を有さない樹脂材料からなるものであれば、いずれも好適に使用することが可能である。具体的には、全芳香族ポリアミド(以下、「アラミド」という。)、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、半芳香族ポリエステルから選ばれる少なくとも1種以上があげられる。中でも、アラミドまたは全芳香族ポリエステルが、これらの樹脂からなる繊維は耐熱性が優れるとともに、電気化学的な安定性が高いことや有機系の電解液に対する安定性が高いことから、好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、不織布もしくは織布の目開きとしては、バブルポイント法で最大孔径が450μ以下であることが好ましい。450μmを超えると、フィブリル繊維が不織布の隙間から抜け出やすく、連続した安定生産が難しくなる。また、セパレータとしての目開きが大きくなりすぎるために、耐自己放電性が悪化するばかりでなく、短絡も生じやすくなる。
【0019】
本発明において、セルロース繊維の平均繊維径とフィブリル繊維の平均繊維径の比は、2〜40の範囲である。該比が40より大きいと、フィブリル繊維とセルロース繊維の径の差が大きすぎて、セルロース繊維で形成される孔をフィブリル繊維が埋める効果が薄まるために、セパレータとしての孔径を小さくすることができなくなる。該比が2より小さいと、セパレータの孔径は小さくなるものの、セルロース繊維とフィブリル繊維が蜜に詰まりすぎて、高抵抗になり過ぎてしまう。
【0020】
また、セルロース繊維の平均繊維長とフィブリル繊維の平均繊維長の比は、3〜12である。該比が12より大きいと、セルロース繊維とフィブリル繊維の絡み合いが薄れ、セパレータの孔径を小さくできない。該比が3より小さいと、セルロースとフィブリル繊維の絡み合いが強くなりすぎて、セパレータの孔径は小さくなるものの、セルロース繊維とフィブリル繊維を含む層の密度が高くなりすぎ、その結果、抵抗が高くなりすぎてしまう。
【0021】
フィブリル繊維の平均繊維径および平均繊維長は、積層した層の孔径を小さくすることから、平均繊維径は3μm以下、平均繊維長は3mm以下であることが好ましい。平均繊維径が3μmより大きい場合や、あるいは、平均繊維長が3mmより大きいと、積層した層の孔径を小さくしきれず、短絡防止や自己放電の抑制ができにくいという問題を生じやすい。
【0022】
フィブリル繊維の材質は、酸化還元雰囲気における電気化学的な安定性が良好であり、絶縁性を有するものであれば、いずれの材質も用いることができる。セルロース系繊維との絡み合いを強固なものにしたり、また、その絡み合い部分を、抄紙工程における乾燥工程で融着させより膜強度を向上させるためには、セルロース、アラミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1種以上が好適に用いられる。特に、電極表面の凹凸が大きい場合には、なかでも熱融着性があるフィブリル繊維を用いるのが好ましい。
【0023】
本発明のセパレータの厚さは、60μm以下であることが好ましい。セパレータの厚さが60μmを超えると、蓄電デバイスが薄型化になりにくいと同時に、一定のセル体積に入れられる電極材の量が少なくなるばかりでなく、抵抗が高くなり好ましくない。
【0024】
また、セパレータの密度は、0.25g/cm〜0.75g/cmであることが好ましい。0.25g/cm未満であると、セパレータの空隙部分が過多となり、短絡の発生や、耐自己放電性が悪化しやすいなどの不具合を生ずる場合がある。一方、密度が0.75g/cmより大きいと、セパレータを構成する材料の詰まり方が過多となるために、イオン移動が阻害され抵抗が高くなりやすい。本発明のセパレータの空隙率としては、30%〜90%の範囲にあることが、短絡を防止することと抵抗が高くなるのを抑えることを両立させるために好ましい。
【0025】
ここでいう空隙率は、坪量M(g/cm)、厚さT(μm)、密度D(g/cm)を用いて次式により求められる。
空隙率(%)=[1−(M/T)/D]×100
【0026】
以上説明したように、本発明のセパレータは、融点が200℃以上の樹脂の連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している不織布もしくは織布上の上にセルロース系繊維と融点が200℃以上のフィブリル繊維を含む繊維を積層しているので、蓄電デバイス用セパレータ、特に、電気二重層キャパシタ用として、短絡もなく、且つ、イオン透過性に優れた性能を有し、機械強度が強い。また、不織布の層が緻密なため、特にフィブリル繊維の抜け落ちがなく、従って、連続生産においても極めて良好な生産安定性を得るこことができる。それゆえに、比較的高価なフィブリル繊維も無駄にすることがなく、所望の特性向上を果たすことができるので、工業生産上極めて有利である。さらに、不織布上に積層して2層構造としても、非常に薄膜で高性能のセパレータを得ることができる。
【0027】
次に、本発明のセパレータの製造方法の一例について説明する。
先ず、フィブリル繊維を水に分散する。本発明に用いるフィブリル繊維は、通常の離解工程では均一に分散しにくいため、ローター・ステーター型の分散装置や、超音波分散装置を用いることによって、良好な分散が可能である。また、この分散工程で使用する水は、イオン性不純物をできるだけ少なくするために、イオン交換水を用いた方が好ましい。
【0028】
一方、溶融紡糸型セルロースのパルプをイオン交換水に適当な濃度で混ぜ、叩解することによって、ろ水度が500ml以下、セルロース繊維とフィブリル繊維の平均繊維径の比が2〜30の範囲、セルロース繊維とフィブリル繊維の平均繊維長の比が3〜12の範囲になるように、セルロース繊維を調整する。叩解は、一般的な叩解機であるボールミル、ビーター、ランペルミル、PFIミル、SDR(シングルディスクリファイナー)、DDR(ダブルディスクリファイナー)その他のリファイナー等を使用して叩解することができる。
【0029】
上記で得られたフィブリル繊維の分散体と叩解したセルロース繊維を、通常のスクリュータイプの攪拌機で混合しながら離解し、抄紙用のスラリーに適用できるように、好ましくは固形分濃度が0.5%以下になるように濃度調整する。次いで、長網式、短網式、円網式、傾斜式などの湿式抄紙機を適用し、予め通紙してある不織布もしくは織布上に積層し、連続したワイヤーメッシュ状の脱水パートで脱水して、多筒式やヤンキー式ドライヤー等の乾燥パートを通して、セパレータを得ることができる。
【0030】
以下に、本発明のセパレータを実施例によって説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
アラミド製のフィブリル繊維(平均繊維径0.25μm、平均繊維長0.5mm)をイオン交換水に1質量%で分散した液を超音波分散装置で10分間分散し、フィブリル繊維の分散体を作成した。次に、溶融紡糸型セルロースをイオン交換水で1質量%まで希釈した後、叩解装置を使って、ろ水度300mlに調整した。叩解後のパルプの平均繊維径を計測したところ、平均繊維径:3.5μm、平均繊維長:4.5mmであった。
以上のように、平均繊維径比:14、平均繊維長比:9となるようにフィブリル繊維とセルロース系繊維を調整した。
【0032】
上記2種類の抄紙材料を、それぞれの固形分比が、セルロース繊維:フィブリル繊維=3:2(質量比)となるように、混合し、さらに、混合後のセルロース繊維とフィブリル繊維の合計の固形分が、イオン交換水中で0.03質量%となるように混合した後に離解した。離解は、小型の投入型スクリューを用いて、ステンレス容器中で10分間行った。離解後、さらにイオン交換水を用いて、トータルの固形分濃度が0.01%となるようにイオン交換水を添加して抄紙材料を調整した。次に、本発明に用いる不織布として、平均繊維径が3μmの全芳香族ポリエステル繊維(融点260℃)の連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している厚さ15μmの不織布(バブルポイント法による最大孔径:300μm)を準備し、JIS P8222に規定する標準型手抄き装置を用いて、上記調整した抄紙材料を不織布上に積層した。なお、抄紙材料は固形分の単位面積あたりの質量が4g/mとなるように、抄紙した。その後、得られた湿体シートを手抄紙装置から取り出した後に、ヤンキー・ドライヤーにて130℃で乾燥して本発明のセパレータを得た。
得られたセパレータの物性は、密度は0.45g/cm、空隙率は77%、圧縮率は1.24であった。また、セパレータの厚さは25μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例2】
【0033】
フィブリル繊維をポリフェニレンサルファイド(PPS)製のフィブリル繊維(平均繊維径0.15μm、平均繊維長0.6mm)を用い、平均繊維径比:23.3、平均繊維長比:7.5にしたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.46g/cm、空隙率は75%、圧縮率は1.67であった。また、セパレータの厚さは23μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例3】
【0034】
フィブリル繊維を全芳香族ポリエステル製のフィブリル繊維(平均繊維径0.3μm、平均繊維長0.55mm)を用いて、平均繊維径比:11.7、平均繊維長比:8.2にしたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.41g/cm、空隙率は80%、圧縮率は1.23であった。また、セパレータの厚さは25μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例4】
【0035】
フィブリル繊維をアクリル製のフィブリル繊維(平均繊維径0.3μm、平均繊維長0.5mm)を用いて、平均繊維径比:11.7、平均繊維長比:9にしたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.45g/cm、空隙率は77%、圧縮率は1.28であった。また、セパレータの厚さは25μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例5】
【0036】
フィブリル繊維をポリエチレン製のフィブリル繊維(平均繊維径1μm、平均繊維長1.5mm)を用いて、平均繊維径比:3.5、平均繊維長比:3にしたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.43g/cm、空隙率は79%、圧縮率は1.34であった。また、セパレータの厚さは26μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例6】
【0037】
フィブリル繊維をポリプロピレン製のフィブリル繊維(平均繊維径1μm、平均繊維長1.5mm)を用いて、平均繊維径比:3.5、平均繊維長比:3にしたこと以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.45g/cm、空隙率は77%、圧縮率は1.31であった。また、セパレータの厚さは26μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例7】
【0038】
不織布を平均繊維径が3.5μmの連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している厚さが18μmの全芳香族ポリエステル繊維(融点300℃以上)からなる不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.48g/cm、空隙率は74%、圧縮率は1.17であった。また、セパレータの厚さは28μmであり、引っ張り強度は28.2N/15mmであった。
【実施例8】
【0039】
不織布を平均繊維径が2.5μm、厚さが15μmのアラミド繊維(融点320℃)からなり、該アラミド繊維を熱融着させた不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.45g/cm、空隙率は77%、圧縮率は1.27であった。また、セパレータの厚さは25μmであり、引っ張り強度は40.2N/15mmであった。
【実施例9】
【0040】
セルロース系繊維のろ水度を150mlに調整し、該繊維の平均繊維径を2.5μm、平均繊維長を3mmにした以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。このときのセルロース系繊維とフィブリル繊維の平均繊維径比は10、平均繊維長比は6であった。また、得られたセパレータの物性は、密度は0.42g/cm、空隙率は80%、圧縮率は1.44であり、セパレータの厚さは27μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例10】
【0041】
セルロース系繊維のろ水度を80mlに調整し、該繊維の平均繊維径を2.5μm、平均繊維長を2.5mmにした以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。このときのセルロース系繊維とフィブリル繊維の平均繊維径比は10、平均繊維長比は5であった。また、得られたセパレータの物性は、密度は0.43g/cm、空隙率は79%、圧縮率は1.46であり、セパレータの厚さは25μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【実施例11】
【0042】
不織布を平均繊維径が3μmの連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している厚さが25μmの全芳香族ポリエステル繊維(融点260℃)からなる織布を用いた以外は、実施例1と同様にして本発明のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.45g/cm、空隙率は77%、圧縮率は1.27であった。また、セパレータの厚さは35μmであり、引っ張り強度は32.7N/15mmであった。
【0043】
(比較例1)
セルロース系繊維のろ水度を700mlに調整し、該繊維の平均繊維径を8μm、平均繊維長を10mmにした以外は、実施例1と同様にして比較用のセパレータを得た。このときのセルロース系繊維とフィブリル繊維の平均繊維径比は32、平均繊維長比は20であった。また、得られたセパレータの物性は、密度は0.39g/cm、空隙率は83%、圧縮率は1.32であり、セパレータの厚さは29μmであり、引っ張り強度は25.7N/15mmであった。
【0044】
(比較例2)
不織布として平均繊維径が3μmの全芳香族ポリエステル繊維(融点260℃)を湿式抄紙した厚さが25μmの連続フィラメントではない不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして比較用のセパレータを得た。得られたセパレータの物性は、密度は0.43g/cm、空隙率は71%、圧縮率は1.27であった。また、セパレータの厚さは35μmであり、引っ張り強度は4.2N/15mmであった。
【0045】
上記実施例1〜11および比較例1〜2のセパレータの作製に用いた不織布の材質、セルロース系繊のろ水度、平均繊維径および平均繊維長、フィブリル繊維の材質、平均繊維径および平均繊維長、セルロース系繊維とフィブリル繊維の平均繊維径比および平均繊維長比を表1にまとめて示す。
【0046】
【表1】

【0047】
<電気二重層キャパシタの組み立ておよびその評価>
実施例1〜11および比較例1〜2で得られたセパレータについて、各々電極を用いて電気二重層キャパシタを組み立てて、コイン型セルを作製した。コイン型セルの作製においては、電極として電気二重層キャパシタ用の活性炭電極(宝泉社製)を用いた。また、電解液としてプロピレンカーボネートに、1mol/Lとなるようにテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレイトを溶解したものを用いた。
作製されたコイン型セルについて、交流インピーダンス法によって、20℃−1KHzでの抵抗を測定した。また、各々のセルについて、2.5Vにて充電した後に、電気回路を開放して15分後の保持電圧を調べた。得られた結果を表2にまとめる。
【0048】
【表2】

【0049】
表2の結果から、本発明のセパレータを用いた電気二重層キャパシタは、抵抗値も十分に低く、また、自己放電性にも優れていることが確認された。これに対して、比較例1のセパレータを用いた電気二重層キャパシタは、抵抗は低いものの、自己放電が非常に大きく、著しく劣るものであった。
【0050】
<セパレータの引っ張り強度比較>
実施例1〜11及び比較例1〜2の引っ張り強度を、JIS C 2111に準じて測定した。得られた結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3の結果から明らかなように、本発明のセパレータは、引っ張り強度が優れており、蓄電デバイスの組み立てに有効であることが確認された。一方、比較例2のセパレータは、実施例のものに比較して極めて引っ張り強度が劣っていた。
以上の結果から、本発明のセパレータは、薄膜化が可能で、イオン透過性に優れて低抵抗であり、且つ、電極間の短絡防止も自己放電の抑制も優れており、しかも機械的強度に優れており、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池、アルミニウム電解コンデンサ、電機二重層キャパシタなどに好適に用いることができ、特に、電気二重層キャパシタ用として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が200℃以上の樹脂の連続フィラメントからなり、該フィラメントの接点が融着している不織布もしくは織布上に、セルロース系繊維と融点が200℃以上のフィブリル繊維とを含む繊維を積層してなる蓄電デバイス用セパレータであって、該セルロース系繊維のろ水度が500ml以下であり、該セルロース繊維の平均繊維径とフィブリル繊維の平均繊維径の比が2〜40、セルロース繊維の平均繊維長とフィブリル繊維の平均繊維長の比が3〜12であることを特徴とする蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項2】
前記不織布もしくは織布の材質が、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、半芳香族ポリエステルから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
前記フィブリル繊維の材質が、セルロース、アラミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリベンゾイミダゾールから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学用セパレータ。
【請求項4】
前記フィブリル繊維の平均繊維径が3μm以下、平均繊維長が3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項5】
蓄電デバイス用セパレータの厚さが60μ以下であり、密度が0.25g/cm〜0.75g/cmであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項6】
蓄電デバイス用セパレータの引っ張り強度が10N/15mm以上であることを特徴とする請求項1乃至5の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項7】
前記蓄電デバイスが、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、ポリマー電池もしくは電気二重層キャパシタであることを特徴とする請求項1乃至6に記載の蓄電デバイス用セパレータ。

【公開番号】特開2010−239028(P2010−239028A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87250(P2009−87250)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】