説明

蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置

【課題】内部抵抗値の測定用の特別な機能やシーケンスを備えることなく、負荷の通常の稼働中に蓄電器の内部抵抗値を測定することのできる、蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】蓄電器の内部抵抗の測定方法は、昇降圧コンバータに接続され、当該昇降圧コンバータによって充放電の制御が行われる蓄電器の内部抵抗の測定方法であって、前記昇降圧コンバータによる充放電の切替に伴う前記蓄電器の端子間電圧値の変化量を測定する電圧値検出工程と、前記昇降圧コンバータによる充放電の切替時に、前記蓄電器と前記昇降圧コンバータの間に通流する電流の値を検出する電流値検出工程と、前記電圧値検出工程で変化量として検出される電圧値を前記電流値検出工程で検出される電流値で除算して得る抵抗値を前記蓄電器の内部抵抗値として導出する内部抵抗導出工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電が繰り返し行われる蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二次電池として用いられる蓄電器として、静電的に電荷を蓄積又は放出するコンデンサが挙げられる。コンデンサは、負荷の要求に応じて充放電を繰り返すことにより、電気エネルギの蓄積又は放出を行う。
【0003】
このようなコンデンサの性能は、一般的に静電容量値や内部抵抗値によって判断される。これらの値のうち、静電容量値は内部抵抗値によっても変化する値であり、また、内部抵抗値はコンデンサの劣化に伴い増大するため、劣化の進行度合を把握するためには内部抵抗値を測定することが必要である。
【0004】
このような内部抵抗値を測定する手法の一つとして、コンデンサの充電後に、充電停止状態においてコンデンサ電圧を測定し、所定期間の一定電流による放電の後に放電を停止し、この放電停止時にコンデンサ電圧を再度測定して内部抵抗値を測定する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−066390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような測定手法を実現するためには、例えば、力行運転及び回生運転を行うモータ等の負荷に、測定のために必要な動作を行わせる必要がある。
【0006】
このため、測定中には負荷の稼働の中断や動作の制限が必要になり、負荷の稼働に影響が生じるという課題があった。
【0007】
また、内部抵抗値の測定に際して一定電流による放電を行う必要があるため、一定電流での放電動作を実現するための機能やシーケンスが必要になる。
【0008】
しかしながら、蓄電器を含む機器が上述のような一定電流で放電する機能やシーケンスを備えない機器である場合は、内部抵抗値を測定するためだけに一定電流で放電する機能やシーケンスを備える必要があった。
【0009】
このような場合には、内部抵抗値を測定するためだけに、通常の稼働時には利用しない機能を備える必要が生じるという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、内部抵抗値の測定用の特別な機能やシーケンスを備えることなく、負荷の通常の稼働中に蓄電器の内部抵抗値を測定することのできる、蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面の蓄電器の内部抵抗の測定方法は、昇降圧コンバータに接続され、当該昇降圧コンバータによって充放電の制御が行われる蓄電器の内部抵抗の測定方法であって、前記昇降圧コンバータによる充放電の切替に伴う前記蓄電器の端子間電圧値の変化量を測定する電圧値検出工程と、前記昇降圧コンバータによる充放電の切替時に、前記蓄電器と前記昇降圧コンバータの間に通流する電流の値を検出する電流値検出工程と、前記電圧値検出工程で変化量として検出される電圧値を前記電流値検出工程で検出される電流値で除算して得る抵抗値を前記蓄電器の内部抵抗値として導出する内部抵抗導出工程とを含む。
【0012】
また、前記電圧値検出工程は、充放電の切替期間の開始時の第1端子間電圧値と、充放電の切替期間の終了時の第2端子間電圧値との変化量を検出する工程であってもよい。
【0013】
また、前記電流値検出工程は、充放電の前後の所定期間内における電流値の平均値を検出する工程であってもよい。
【0014】
また、前記電流値検出工程は、充放電の前後の所定期間内における電流値を直線近似して得る電流値を検出する工程であってもよい。
【0015】
本発明の一局面の内部抵抗測定装置は、昇降圧コンバータに接続され、当該昇降圧コンバータによって充放電の制御が行われる蓄電器の内部抵抗を測定する内部抵抗測定装置であって、前記昇降圧コンバータの充放電の切替を検知する切替検知部と、前記切替検知部によって充放電の切替が検知されると、充放電の切替に伴う前記蓄電器の端子間電圧値の変化量を測定する電圧値検出部と、前記切替検知部によって充放電の切替が検知されると、前記蓄電器と前記昇降圧コンバータの間に通流する電流の値を検出する電流値検出部と、前記電圧値検出部によって変化量として検出される電圧値を前記電流値検出部によって検出される電流値で除算して得る抵抗値を前記蓄電器の内部抵抗値として導出する内部抵抗導出部とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部抵抗値の測定用の特別な機能やシーケンスを備えることなく、負荷の通常の稼働中に蓄電器の内部抵抗値を測定することのできる、蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を提供できるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用した実施の形態について説明する。ここでは、本実施の形態の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置の処理内容を分かり易くするために、本実施の形態の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置をハイブリッド型建設機械に適用した例(適用例)について説明を行う。
【0018】
[実施の形態1]
実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械の適用例について説明するにあたり、まず、図1及び図2を用いてハイブリッド型建設機械の基本構成を説明する。
【0019】
図1は、実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
【0020】
このハイブリッド型建設機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
【0021】
「全体構成」
図2は、実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
【0022】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0023】
コントロールバルブ17は、実施の形態1の建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
【0024】
また、電動発電機12には、インバータ18及び昇降圧コンバータ100を介して蓄電器としてのバッテリ19が接続される。このインバータ18と昇降圧コンバータ100との間は、DCバス110によって接続されている。
【0025】
また、DCバス110には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。DCバス110は、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。
【0026】
DCバス110には、DCバス110の電圧値(以下、DCバス電圧値と称す)を検出するためのDCバス電圧検出部111が配設されている。検出されるDCバス電圧値は、コントローラ30に入力される。
【0027】
また、バッテリ19には、バッテリ電圧値を検出するためのバッテリ電圧検出部106と、バッテリ電流値を検出するためのバッテリ電流検出部107が配設されている。これらによって検出されるバッテリ電圧値とバッテリ電流値は、コントローラ30に入力される。
【0028】
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
【0029】
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1の適用例であるハイブリッド型建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ30が接続されている。
【0030】
このようなハイブリッド型建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
【0031】
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。
【0032】
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ20によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
【0033】
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0034】
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
【0035】
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
【0036】
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
【0037】
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12を電動運転している際には、必要な電力をバッテリ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12を発電運転している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19に充電する。
【0038】
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してインバータ18及びインバータ20に接続されている。これにより、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている際には、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。
【0039】
このバッテリ19の充放電制御は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ100によって行われる。この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部106によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部107によって検出されるバッテリ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。
【0040】
インバータ20は、上述の如く旋回用電動機21と昇降圧コンバータ100との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータが旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力をバッテリ19から昇降圧コンバータ100を介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を昇降圧コンバータ100を介してバッテリ19へ充電する。図2には、旋回電動機(1台)及びインバータ(1台)を含む実施の形態を示すが、その他マグネット機構や旋回機構部以外の駆動部として備えることで、複数の電動機及び複数のインバータをDCバス110に接続するようにしてもよい。
【0041】
昇降圧コンバータ100は、一側がDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21に接続されるとともに、他側がバッテリ19に接続されており、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるようにを昇圧又は降圧を切り替える制御を行う。電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18を介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、DCバス電圧値を昇圧する必要がある。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18を介してバッテリ19に充電する必要があるため、DCバス電圧値を降圧する必要がある。これは、旋回用電動機21の力行運転と回生運転においても同様であり、その上、電動発電機12はエンジン11の負荷状態に応じて運転状態が切り替えられ、旋回用電動機21は上部旋回体3の旋回動作に応じて運転状態が切り替えられるため、電動発電機12と旋回用電動機21には、いずれか一方が電動(アシスト)運転又は力行運転を行い、他方が発電運転又は回生運転を行う状況が生じうる。
【0042】
このため、昇降圧コンバータ100は、電動発電機12と旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。この制御手法については、図2を用いて説明する。
【0043】
DCバス110は、2つのインバータ18及び20と昇降圧コンバータとの間に配設されており、バッテリ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受が可能に構成されている。
【0044】
DCバス電圧検出部111は、DCバス電圧値を検出するための電圧検出部である。検出されるDCバス電圧値はコントローラ30に入力され、このDCバス電圧値を一定の範囲内に収めるための昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0045】
バッテリ電圧検出部106は、バッテリ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、バッテリの充電状態を検出するために用いられる。検出されるバッテリ電圧値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0046】
バッテリ電流検出部107は、バッテリ19の電流値を検出するための電流検出部である。バッテリ電流値は、バッテリ19から昇降圧コンバータ100に流れる電流を正の値として検出される。検出されるバッテリ電流値は、コントローラ30に入力され、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0047】
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
【0048】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
【0049】
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
【0050】
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
【0051】
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
【0052】
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、レバー26A及び26Bとペダル26Cを含む。レバー26Aは、旋回用電動機21及びアーム5を操作するためのレバーであり、上部旋回体3の運転席近傍に設けられる。レバー26Bは、ブーム4及びバケット6を操作するためのレバーであり、運転席近傍に設けられる。また、ペダル26Cは、下部走行体1を操作するための一対のペダルであり、運転席の足下に設けられる。
【0053】
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を運転者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
【0054】
レバー26A及び26Bとペダル26Cの各々が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
【0055】
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
【0056】
圧力センサ29では、操作装置26に対して旋回機構2を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を的確に把握することができる。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。また、ここでは、レバー操作検出部としての圧力センサを用いるハイブリッド型建設機械について説明するが、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
【0057】
「コントローラ30」
コントローラ30は、実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械の駆動制御を行う制御装置であり、旋回駆動制御部40、及び駆動制御部120を含み、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置は、このコントローラ30の一機能として実現される測定方法及び測定装置である。
【0058】
旋回駆動制御部40は、圧力センサ29から入力される信号(操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を表す信号)を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。
【0059】
駆動制御部120は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)、及び、昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるバッテリ19の充放電制御を行うための制御装置である。駆動制御部120は、バッテリ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりバッテリ19の充放電制御を行う。
【0060】
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、バッテリ電圧検出部106によって検出されるバッテリ電圧値、及びバッテリ電流検出部107によって検出されるバッテリ電流値に基づいてコントローラ30によって行われる。
【0061】
図3は、図1及び図2で説明したハイブリッド型建設機械に適用される実施の形態1の電力制御回路を示す図である。この電力制御回路は、昇降圧コンバータ100、DCバス110、モータ120、及びバッテリ19を含み、バッテリ19は、実施の形態1の内部抵抗測定装置によって内部抵抗値が測定される蓄電器である。
【0062】
昇降圧コンバータ100は、リアクトル101、昇圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)102A、降圧用IGBT102B、バッテリ19を接続するための電源接続端子103、モータ120を接続するための出力端子104、一対の出力端子104に並列に挿入される平滑用のコンデンサ105、バッテリ電圧検出部106、及びバッテリ電流検出部107を備える。
【0063】
昇降圧コンバータ100の出力端子104とモータ120との間は、DCバス110によって接続される。なお、モータ120は、図2における電動発電機12と旋回用電動機21に相当する。図3では、図の簡略化のためにインバータ18及び20(図2参照)を省略する。
【0064】
リアクトル101は、一端が昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの中間点に接続されるとともに、他端が電源接続端子103に接続されており、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴って生じる誘導起電力をDCバス9に供給するために設けられている。
【0065】
昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタで構成され、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子である。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bは、コントローラ30からゲート端子にPWM電圧が印加されることによって駆動される。昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bには、整流素子であるダイオード102a及び102bが並列接続される。
【0066】
ここで、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bの駆動制御(充放電の切替制御)は、コントローラ30によって行われる。このため、コントローラ30内では、昇圧用IGBT102A及び降圧用IGBT102Bによる充放電の切替が検知される。
【0067】
なお、ここでは、「充放電の切替」という文言は、放電状態から充電状態への切替、充電状態から放電状態への切替、充放電を行っていない状態から充電状態又は放電状態への切替、あるいは、充電状態又は放電状態から充放電を行っていない状態への切替を表すこととして用い、これは特許請求の範囲においても同様である。
【0068】
バッテリ19は、昇降圧コンバータ100を介してDCバス110との間で電力の授受が行えるように、充放電可能な蓄電器であればよい。なお、図3には、蓄電器としてバッテリ19を示すが、バッテリ19の代わりに、コンデンサ、充放電可能な二次電池、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
【0069】
電源接続端子103及び出力端子104は、バッテリ19及びモータ120が接続可能な端子であればよい。一対の電源接続端子103の間には、バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出部106が接続される。一対の出力端子104の間には、DCバス電圧を検出するDCバス電圧検出部111が接続される。
【0070】
バッテリ電圧検出部106は、バッテリ19の電圧値Vmを検出し、DCバス電圧検出部111は、DCバス110の電圧(以下、DCバス電圧Vdc)を検出する。
【0071】
出力端子104に接続される負荷であるモータ120は、力行運転及び回生運転が可能な電動機であればよく、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。図3には、直流駆動用のモータ120を示すが、インバータを介して交流駆動されるモータであってもよい。
【0072】
平滑用のコンデンサ105は、出力端子104の正極端子と負極端子との間に挿入され、DCバス電圧を平滑化できる蓄電素子であればよい。
【0073】
バッテリ電流検出部107は、バッテリ19に通流する電流の値を検出可能な検出部であればよく、電流検出用の抵抗器を含む。このバッテリ電流検出部107は、バッテリ19に通流する電流値Iを検出する。
【0074】
なお、実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置では、バッテリ19からDCバス110に電流を供給する方向の電流値を正とし、DCバス110からバッテリ19に電流を供給する方向の電流値を負とする。すなわち、バッテリ19を放電する際の電流値が正となり、バッテリ19を充電する際の電流値が負となる。
【0075】
「昇降圧動作」
このような昇降圧コンバータ100において、DCバス110を昇圧する際には、昇圧用IGBT102Aのゲート端子にPWM電圧を印加し、降圧用IGBT102Bに並列に接続されたダイオード102bを介して、昇圧用IGBT102Aのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力をDCバス110に供給する。これにより、DCバス110が昇圧される。
【0076】
また、DCバス110を降圧する際には、降圧用IGBT102Bのゲート端子にPWM電圧を印加し、降圧用IGBT102Bを介して、モータ120によって発生される回生電力をDCバス110からバッテリ19に供給する。これにより、DCバス110に蓄積された電力がバッテリ19に充電され、DCバス110が降圧される。
【0077】
ここで、実施の形態1の昇降圧コンバータ100は、ハイブリッド型建設用機械に適用した場合、バッテリ19の電圧値:約100〜500V、出力端子104における出力定格電圧:約200〜400V、定格出力:約数十kW、瞬時最大出力電力:±100kW、定格電流:±百A、及び、瞬時最大電流:±百Aの仕様値の範囲で用いられる。
【0078】
「内部抵抗値の測定」
バッテリ19の内部抵抗値の測定は、実施の形態1の内部抵抗測定装置として機能するコントローラ30によって行われる。
【0079】
図4は、実施の形態1におけるバッテリ19の等価回路を示す図である。バッテリ19は、容量131と内部抵抗132に分けることができる。バッテリ19の端子間電圧値Vmは、容量131の充電電圧値Vcと内部抵抗132での電圧降下分Vrとの和となる。ここで、内部抵抗132の抵抗値をR、バッテリ19に通流する電流をIとすると、Vr=R×Iと表すことができる。
【0080】
図5は、実施の形態1におけるバッテリ19に通流する電流Iの有無によるバッテリ19の端子間電圧値Vmの変化を表す図である。
【0081】
バッテリ19に電流が通流していないとき(I=0のとき)は、内部抵抗132による電圧降下が生じないため、バッテリ19の端子間電圧値Vmは、容量131の充電電圧値Vcに等しくなる。
【0082】
時刻t=taにおいて、バッテリ19に通流する電流値がΔIとなると、内部抵抗312における電圧降下が生じ、その値は(−R×ΔI(V))となる。これにより、バッテリ19の端子間電圧値Vmは電圧降下分だけ低下し、Vm=Vc−R×ΔI(V)となる。この電圧降下値がバッテリ19の端子間電圧値の変化量である。
【0083】
このため、通電前の端子間電圧Vm、通電後の端子間電圧Vm、及び電流値の変化分ΔIを検出すれば、内部抵抗値を導出することができる。このような内部抵抗値の導出手法は、電流値が零から増大又は減少する場合に限られず、電流値の変化分が判れば、充電から放電、又は放電から充電に切り替わる際にも同様に導出することができる。
【0084】
この図5に示す特性は、電力損失等を無視した理想的な特性であるが、ハイブリッド型建設機械の作業中には、バッテリ19に電流が通流しない状態(I=0)から充電状態又は放電状態に切り替わることにより、電流値Iが増大又は減少する状態がある。また、充電から放電への切替や、放電から充電への切替は頻繁に行われる。
【0085】
このため、実施の形態1では、充放電の切替時にバッテリ19の内部抵抗値を導出する。
【0086】
図6は、実施の形態1におけるバッテリ19の放電状態から充電状態に切り替わる際のバッテリ19の端子間電圧値Vmと電流Iとの関係を示す図である。なお、図6に示す特性は、数10ミリ秒以下の微小時間における特性である。
【0087】
時刻t=0〜t1においては、バッテリ19が放電されているため、端子間電圧値Vmは低下し、電流Iは正の値となっている。
【0088】
時刻t=t1〜t2の切替期間を挟んで、時刻t=t2以降においてバッテリ19は充電されるため、端子間電圧値Vmは上昇し、電流Iは負の値となっている。ここで、t1、t2は電圧値及び電流値の変曲点が示される時間である。
【0089】
ここで、放電の際は、バッテリ19の端子間電圧値Vmが電圧降下分(R×I)だけ低下するため、容量131の充電電圧値Vcは端子間電圧値Vmよりも高い。
【0090】
また、充電の際は、バッテリ19の端子間電圧値Vmが電圧降下分(R×I)だけ上昇することになるため、容量131の充電電圧値Vcは端子間電圧値Vmよりも低い。
【0091】
また、充放電の切替期間(t=t1〜t2)は、例えば、数ミリ秒程度に設定されるため、容量131が十分に多い場合(例えば、数10(F))のような場合には、充放電の切替開始時である時刻t=t1と、充放電の切替終了時である時刻t=t2とではバッテリ19に通流する電流Iは極微小である。このため、キャパシタ13の端子間電圧は、充放電の切替開始時における値Vc1と、充放電の終了時における値Vc2とが略同一の値であり、モータ120の定格出力とバッテリ19の容量(容量131の容量)との関係を考慮すると、その差は例えば、0.01〜0.1%程度と無視できる程度である。
【0092】
ここで、時刻t=t1におけるバッテリ19の端子間電圧をVm1、同時刻における容量131の端子間電圧をVc1、同時刻における内部抵抗132における電圧降下分をVr1、同時刻における電流をI1、時刻t=t2における端子間電圧をVm2、同時刻における容量131の端子間電圧をVc2、同時刻における内部抵抗132における電圧降下分をVr2、同時刻における電流をI2とすると、以下の(1)(2)式が成立する。
【0093】
Vm1=Vc1+Vr1・・・(1)
Vm2=Vc2+Vr2・・・(2)
ここで、充放電の切替開始時における値Vc1と、充放電の終了時における値Vc2とが略同一の値であるため、Vc1=Vc2が成立するので、以下の(3)式を導出できる。
【0094】
ΔV=Vm2−Vm1=Vr2−Vr1・・・(3)
また、時刻t=t1〜t2の間におけるバッテリ19の電流値の変化分ΔIは、(4)式で表すことができる。
【0095】
ΔI=I2−I1・・・(4)
以上より、(3)(4)式を用いると、内部抵抗132の抵抗値Rは(5)式で導出される。
【0096】
R=ΔV/ΔI=(Vm2−Vm1)/(I2−I1)・・・(5)
ここで、端子間電圧値Vm1及びVm2は、時刻t=t1、t2においてバッテリ電圧検出部106によって検出され、電流値I1、I2は、時刻t=t1、t2においてバッテリ電流検出部107によって検出され、すべてコントローラ30に入力される。
【0097】
コントローラ30は、入力される値を表すデータを内部メモリに格納し、(1)〜(5)式に基づく演算を行うことにより、内部抵抗132の抵抗値Rを導出することができる。この処理手順を図7を用いて説明する。
【0098】
図7は、実施の形態1の蓄電器の内部抵抗の測定方法による内部抵抗値の導出手順を示す図である。この処理は、コントローラ30のCPUによって実行される。
【0099】
コントローラ30は、充放電の切替が行われるか否かを判定する(ステップS1)。この判定は、昇圧用IGBT102Aと降圧用IGBT102Bの駆動制御を切り替えるタイミングで検知する。なお、ステップS1の処理は、充放電の切替を検知するまで繰り返し実行される。
【0100】
コントローラ30は、充放電の切替を検知した場合は、切替開始の時刻t=t1における端子間電圧値Vm1と電流値I1を測定する(ステップS2)。測定した端子間電圧値Vm1と電流値I1を表すデータは、コントローラ30の内部メモリに格納される。
【0101】
コントローラ30は、充放電の切替が終了するか否かを判定する(ステップS3)。この判定は、昇圧用IGBT102Aと降圧用IGBT102Bの駆動制御の切替が完了するタイミングで検知する。なお、ステップS3の処理は、充放電の切替を検知するまで繰り返し実行される。
【0102】
コントローラ30は、充放電の切替を検知した場合は、切替開始の時刻t=t2における端子間電圧値Vm2と電流値I2を測定する(ステップS4)。測定した端子間電圧値Vm1と電流値I1を表すデータは、コントローラ30の内部メモリに格納される。これまでのステップS2〜ステップS4の処理により、電圧検出工程TV及び電流検出工程TAが実現される。
【0103】
コントローラ30は、ステップS2及びS4で測定した端子間電圧値Vm1、Vm2と電流値I1、I2を内部メモリから読み出し、(5)式を用いて内部抵抗値を導出する(ステップS5)。このように、コントローラ30では、充放電の切替を検知した際に、内部抵抗132の抵抗値Rを導出することができる。このステップS5により、内部抵抗検出工程TRが実現される。
【0104】
次いで、コントローラ30は、導出した内部抵抗132の抵抗値Rを内部メモリに格納する(ステップS6)。
【0105】
以上で、実施の形態1の蓄電器の内部抵抗の測定方法による測定処理が終了する。
【0106】
このように、実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置によれば、バッテリ19の充放電を切り替える際に、負荷(本適用例では電動発電機12や旋回用電動機21)の稼働の中断や動作の制限を行うことなく、いつでもバッテリ19の内部抵抗132の抵抗値Rを導出することができる。
【0107】
コントローラ30は、バッテリ19、インバータ18、インバータ20、及び昇降圧コンバータ100の駆動制御を行っており、特に昇降圧コンバータ100を駆動制御することによってバッテリ19の充放電制御を行っているため、定期的に内部抵抗132の抵抗値Rを導出して内部メモリに格納しておけば、例えば、内部抵抗132の抵抗値Rの増大に応じてバッテリ充電率(SOC: State Of Charge)の変更等を行うような制御処理を実現することができる。
【0108】
また、バッテリ19の劣化を監視することにより、バッテリ充電率(SOC: State Of Charge)が所定値を達成できない状態になった場合には、交換時期の警報を出力するような警報処理を実現することができる。
【0109】
また、ここでは、実施の形態1の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び測定装置をハイブリッド型建設機械に適用した適用例について説明したが、ハイブリッド型建設機械においては、定電流を流すことができない。これは、ハイブリッド型建設機械では、電動発電機12や旋回用電動機21等のモータを電力制御しているため、バッテリ電圧が変化すると一定電力による制御を行っても電流の値が変化してしまうからである。
【0110】
従来の内部抵抗の測定方法では、定電流を通流させる必要があったため、ハイブリッド型建設機械へは適用できなかったが、実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械によれば、定電流を通流させることなく、作業中にバッテリ19の充放電を切り替える際に、電動発電機12や旋回用電動機21等の負荷の稼働の中断や動作の制限を行うことなく、いつでもバッテリ19の内部抵抗132の抵抗値Rを導出することができるので、特別な機能やシーケンスを備えることなく、負荷の通常の稼働中にバッテリ19の内部抵抗値を正確に測定することができ、正確に導出した内部抵抗132の抵抗値Rを用いて充放電制御の制御性を向上させることができる。
【0111】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置における電圧値及び電流値の処理手法を説明するための図である。この実施の形態2の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置は、実施の形態1と同様に、図1及び図2に示すハイブリッド型建設機械に適用可能である。このため、同一又は同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
実際にハイブリッド型建設機械で検出される電圧値(Vm、Vc、Vr)及び電流値(I)は、図8に示すような振れ幅のある波形となる。このため、上述のような内部抵抗値の導出手法を用いる場合には、電圧値及び電流値ともに平均値を用いた方が、より正確な内部抵抗値を導出することができる。
【0113】
このため、実施の形態2の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置では、時刻t=t1よりもΔt1だけ前(時刻t=t1−Δt1)から時刻t=t1までの間の端子間電圧値Vm1を複数サンプリングし、その平均値Vm1*を用いる点が実施の形態1と異なる。この平均値Vm1*は、充放電の切替開始時である時刻t=t1よりも時間的に少し前の値になるが、その差は微小時間であるため、充放電の切替開始時の端子間電圧値として用いることができる。
【0114】
同様に、時刻t=t2からΔt2だけ後(時刻t=t2+Δt2)までの間の端子間電圧値Vm2を複数サンプリングし、その平均値Vm2*を用いる。この平均値Vm2*は、充放電の切替開始時である時刻t=t2よりも時間的に少し後の値になるが、その差は微小時間であるため、充放電の切替終了時の端子間電圧値として用いることができる。
【0115】
また、電流値については、時刻t=t1よりもΔt1だけ前(時刻t=t1−Δt1)から時刻t=t1までの間の電流値I1を複数サンプリングし、その平均値I1*を用いる。この平均値I1*は、充放電の切替開始時である時刻t=t1よりも時間的に少し前の値になるが、その差は微小時間であるため、充放電の切替開始時のバッテリ19の電流値として用いることができる。
【0116】
同様に、時刻t=t2からΔt2だけ後(時刻t=t2+Δt2)までの間の電流値I2を複数サンプリングし、その平均値I2*を用いる。この平均値I2*は、充放電の切替開始時である時刻t=t2よりも時間的に少し後の値になるが、その差は微小時間であるため、充放電の切替終了時のバッテリ19の電流値として用いることができる。
【0117】
コントローラ30は、(1)〜(5)式に平均値Vm1*、Vm2*、I1*、及びI2*を代入することにより、内部抵抗132の抵抗値Rを導出する。
【0118】
なお、上述の平均値を導出するためにサンプリングした電圧値(Vm1、Vm2)及び電流値(I1、I2)はコントローラ30の内部メモリに格納され、平均値を演算する際に読み込まれる。
【0119】
以上、実施の形態2の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置によれば、図8に示すように電圧波形及び電流波形に振れ幅があって安定しない場合でも、電圧値及び電流値の平均値を用いることにより、正確に内部抵抗132の抵抗値Rを導出することができる。
【0120】
また、実施の形態2の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械によれば、定電流を通流させることなく、作業中にバッテリ19の充放電を切り替える際に、電圧値及び電流値の平均値を用いることにより、電動発電機12や旋回用電動機21等の負荷の稼働の中断や動作の制限を行うことなく、いつでもバッテリ19の内部抵抗132の抵抗値Rを正確に導出することができるので、正確に導出した内部抵抗132の抵抗値Rを用いて充放電制御の制御性を向上させることができる。
【0121】
[実施の形態3]
図9は、実施の形態3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置における電圧値及び電流値の処理手法を説明するための図である。実施の形態3では、電圧値及び電流値の処理に平均値を用いる代わりに、電圧値及び電流値の処理に最小二乗法を用いて正確な内部抵抗値を導出する点が実施の形態2と異なる。
【0122】
このため、実施の形態3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置では、時刻t=t1よりもΔt1だけ前(時刻t=t1−Δt1)から時刻t=t1までの間の端子間電圧値Vm1を複数サンプリングし、サンプリングした値に最小二乗法を用いてサンプルに最もフィットする直線l1を演算する。この直線l1において、時刻t=t1の値Vm1を求める。この電圧値Vm1は、充放電の切替開始時におけるバッテリ19の端子間電圧値である。
【0123】
同様に、時刻t=t2からΔt2だけ後(時刻t=t2+Δt2)までの間の端子間電圧値Vm2を複数サンプリングし、サンプリングした値に最小二乗法を用いてサンプルに最もフィットする直線l2を演算する。この直線l2において、時刻t=t2の値Vm2を求める。この電圧値Vm2は、充放電の切替終了時におけるバッテリ19の端子間電圧値である。
【0124】
また、電流値については、時刻t=t1よりもΔt1だけ前(時刻t=t1−Δt1)から時刻t=t1までの間の電流値I1を複数サンプリングし、サンプリングした値に最小二乗法を用いてサンプルに最もフィットする直線k1を演算する。この直線k1において、時刻t=t1の値I1を求める。この電圧値I1は、充放電の切替開始時におけるバッテリ19の電流値である。
【0125】
同様に、時刻t=t2からΔt2だけ後(時刻t=t2+Δt2)までの間の電流値I2を複数サンプリングし、サンプリングした値に最小二乗法を用いてサンプルに最もフィットする直線k2を演算する。この直線k2において、時刻t=t2の値I2を求める。この電圧値I2は、充放電の切替終了時におけるバッテリ19の電流値である。
【0126】
コントローラ30は、(1)〜(5)式に平均値Vm1、Vm2、I1、及びI2を代入することにより、内部抵抗132の抵抗値Rを導出する。このように、近似直線l1、l2及びk1、k2上において、変曲点となる時刻t1、t2を測定点とすると、電圧降下の影響を顕著に表すことができる。これにより、正確な内部抵抗値を算出することが可能である。
【0127】
なお、サンプリングした電圧値(Vm1、Vm2)及び電流値(I1、I2)はコントローラ30の内部メモリに格納され、平均値を演算する際に読み込まれる。
【0128】
以上、実施の形態3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置によれば、図8に示すように電圧波形及び電流波形が安定しない場合でも、電圧値及び電流値の処理に最小二乗法を用いることにより、充放電の切替開始時及び切替終了時の電圧値及び電流値を演算によって求めることができるので、正確に内部抵抗132の抵抗値Rを導出することができる。
【0129】
また、実施の形態3の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械によれば、定電流を通流させることなく、作業中にバッテリ19の充放電を切り替える際に、最小二乗法によって導出される電圧値及び電流値を用いることにより、電動発電機12や旋回用電動機21等の負荷の稼働の中断や動作の制限を行うことなく、いつでもバッテリ19の内部抵抗132の抵抗値Rを正確に導出することができるので、正確に導出した内部抵抗132の抵抗値Rを用いて充放電制御の制御性を向上させることができる。
【0130】
以上では、実施の形態1乃至3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置が適用されるハイブリッド型建設機械の制御系にPI制御を用いる適用例について説明したが、制御方式はPI制御方式に限られるものではなく、ヒステリシス制御、ロバスト制御、適応制御、比例制御、積分制御、ゲインスケジューリング制御、又は、スライディングモード制御であってもよい。
【0131】
また、以上では、ハイブリッド型建設機械に適用した場合の実施の形態1乃至3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置ついて説明したが、実施の形態1乃至3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置の適用対象は、ハイブリッド型建設機械に搭載されるバッテリ19に限られず、充放電が行われるのであれば、様々な装置に含まれるバッテリの内部抵抗値を導出することができる。
【0132】
また、以上では、実施の形態1乃至3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械について説明したが、適用例としてのハイブリッド型作業機械は、建設機械以外の形態の作業機械であってもよく、例えば、ハイブリッド型の運搬荷役機械(クレーンやフォークリフト)であってもよい。
【0133】
例えば、図2に示すエンジン11及び電動発電機12をクレーンのエンジン及びアシスト用電動発電機として用い、図2に示す旋回用電動機21をクレーンの荷役作業において部品や貨物等を上昇又は下降させるための動力源に用いればよい。特に、部品や貨物等を上昇又は下降させるための動力源は、ワイヤの巻き取り、又は引出に伴って力行運転(巻き取り時)と回生運転(引出時)を行うため、ハイブリッド型作業機械として上述のハイブリッド型建設機械と同様に実施することができる。
【0134】
また、フォークリフトの場合も同様に、図2に示すエンジン11及び電動発電機12をフォークリフトのエンジン及びアシスト用電動発電機として用い、図2に示す旋回用電動機21をフォークリフトの荷役作業においてフォークを上昇又は下降させるための動力源に用いればよい。特に、フォークを上昇又は下降させるための動力源は、上下動作に伴って力行運転(巻き取り時)と回生運転(引出時)を行うため、ハイブリッド型作業機械として上述のハイブリッド型建設機械と同様に実施することができる。
【0135】
以上、本発明の例示的な実施の形態の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
【図2】実施の形態1の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置を適用したハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。
【図3】図1及び図2で説明したハイブリッド型建設機械に適用される実施の形態1の電力制御回路を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるバッテリ19の等価回路を示す図である。
【図5】実施の形態1におけるバッテリ19に通流する電流Iの有無によるバッテリ19の端子間電圧値Vmの変化を表す図である。
【図6】実施の形態1におけるバッテリ19の放電状態から充電状態に切り替わる際のバッテリ19の端子間電圧値Vmと電流Iとの関係を示す図である。
【図7】実施の形態1の蓄電器の内部抵抗の測定方法による内部抵抗値の導出手順を示す図である。
【図8】実施の形態2の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置における電圧値及び電流値の処理手法を説明するための図である。
【図9】実施の形態3の蓄電器の内部抵抗の測定方法及び内部抵抗測定装置における電圧値及び電流値の処理手法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0137】
1 下部走行体
1A、1B 油圧モータ
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
12 電動発電機
13 減速機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
18A、18B インバータ
19 バッテリ
21 旋回用電動機
22 レゾルバ
23 メカニカルブレーキ
24 旋回減速機
25 パイロットライン
26 操作装置
26A、26B レバー
26C ペダル
27 油圧ライン
28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 コントローラ
31 速度指令変換部
32 駆動制御装置
40 旋回駆動制御装置
100 昇降圧コンバータ
101 リアクトル
102A 昇圧用IGBT
102B 降圧用IGBT
103 電源接続端子
104 出力端子
105 コンデンサ
106 バッテリ電圧検出部
107 バッテリ電流検出部
110 DCバス
111 DCバス電圧検出部
120 モータ
131 容量
132 内部抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降圧コンバータに接続され、当該昇降圧コンバータによって充放電の制御が行われる蓄電器の内部抵抗の測定方法であって、
前記昇降圧コンバータによる充放電の切替に伴う前記蓄電器の端子間電圧値の変化量を測定する電圧値検出工程と、
前記昇降圧コンバータによる充放電の切替時に、前記蓄電器と前記昇降圧コンバータの間に通流する電流の値を検出する電流値検出工程と、
前記電圧値検出工程で変化量として検出される電圧値を前記電流値検出工程で検出される電流値で除算して得る抵抗値を前記蓄電器の内部抵抗値として導出する内部抵抗導出工程と
を含む、蓄電器の内部抵抗の測定方法。
【請求項2】
前記電圧値検出工程は、充放電の切替期間の開始時の第1端子間電圧値と、充放電の切替期間の終了時の第2端子間電圧値との変化量を検出する工程である、請求項1に記載の蓄電器の内部抵抗の測定方法。
【請求項3】
前記電流値検出工程は、充放電の前後の所定期間内における電流値の平均値を検出する工程である、請求項1又は2に記載の蓄電器の内部抵抗の測定方法。
【請求項4】
前記電流値検出工程は、充放電の前後の所定期間内における電流値を直線近似して得る電流値を検出する工程である、請求項1又は2に記載の蓄電器の内部抵抗の測定方法。
【請求項5】
昇降圧コンバータに接続され、当該昇降圧コンバータによって充放電の制御が行われる蓄電器の内部抵抗を測定する内部抵抗測定装置であって、
前記昇降圧コンバータの充放電の切替を検知する切替検知部と、
前記切替検知部によって充放電の切替が検知されると、充放電の切替に伴う前記蓄電器の端子間電圧値の変化量を測定する電圧値検出部と、
前記切替検知部によって充放電の切替が検知されると、前記蓄電器と前記昇降圧コンバータの間に通流する電流の値を検出する電流値検出部と、
前記電圧値検出部によって変化量として検出される電圧値を前記電流値検出部によって検出される電流値で除算して得る抵抗値を前記蓄電器の内部抵抗値として導出する内部抵抗導出部と
を含む、内部抵抗測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−294102(P2009−294102A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148294(P2008−148294)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】