説明

蓄電池の劣化判定方法および劣化判定装置

【課題】
負荷に接続された使用中の蓄電池の劣化状態の判定を短時間かつ正確に行うことができる蓄電池の劣化判定方法及び劣化判定装置を提供する。
【解決手段】
蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける蓄電池の劣化状態を判定するに際し、蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、実測された蓄電池の内部抵抗成分を基準温度における値に変換し、この値を基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧に変換し、この基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧を劣化判定しきい値と比較して蓄電池の劣化状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池の劣化判定方法および蓄電池の劣化判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池の残留容量ならびに劣化状態の検査方法に関しては、種々の方法が知られている。例えば、蓄電池を完全に放電させて容量を測定し、その容量から劣化状態を判定する方法がある。しかしながら、この方法は、完全に放電することが必要なため、負荷に接続されて使用中の蓄電池に用いることは難しく、測定時間も長いことから、実用的な方法ではない。そこで、使用中の蓄電池の劣化状態の判定を短時間で行うことができる方法が開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、蓄電池の使用温度が変化する状況で、蓄電池の電池電圧および使用温度を検出し、検出された温度における電池電圧を基準温度における電池電圧に補正することにより蓄電池の劣化状態の判定を行う方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、鉛蓄電池の内部インピーダンスの測定結果を、鉛蓄電池のインダクタンス成分L,電解液抵抗RΩ,電荷移動抵抗Rct,電気二重層容量Cd,ワールブルグインピーダンスWおよびワールブルグ係数σからなる等価回路に当てはめて最適解を求め、インダクタンス成分L,電解液抵抗RΩ,電荷移動抵抗Rct,電気二重層容量Cd,ワールブルグインピーダンスWおよびワールブルグ係数σのうち少なくとも一つを、初期の値と比較することで、電池の寿命を判定する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、鉛蓄電池の内部インピーダンスの測定値の内、位相が0になる周波数のインピーダンスと、周波数が0.1〜10Hzの間で、インピーダンスの虚部の周波数に対する変化分をインピーダンスの実部の周波数に対する変化分で除算した値が−1程度になる周波数でのインピーダンスから、鉛蓄電池の劣化状態を判定する方法が開示されている。
【0006】
さらにまた、特許文献4には、0.001〜1Hzの間の2〜3点の周波数で、鉛蓄電池の内部インピーダンスを測定し、インピーダンスの虚部を測定周波数の−0.5乗に対してプロットし、そのY切片の値から、鉛蓄電池の残留容量を判定し、また、0.01〜0.05Hzの周波数で内部インピーダンスを測定し、その実部を虚部に対してプロットし、その勾配の値から、鉛蓄電池の残留容量を判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−185233号公報
【特許文献2】特許第2536257号
【特許文献3】特許第2546050号
【特許文献4】特許第2792784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の方法では、いくつかの問題点があるため、各種装置のバックアップ用や各種装置の電源用等の蓄電池、車両に搭載される鉛蓄電池、特に負荷変動の大きいあるいは負荷変動が不規則なものや環境変化が大きい等の場合には、使用することができない、あるいは適用することが難しかった。
具体的には、特許文献1に開示された方法では、充電電圧や充電状態が変化する用途または急速放電を行う用途に用いられる蓄電池、特に負荷変動の大きい各種装置の電源用の蓄電池や、自動車等の車両に搭載される蓄電池に適用すると、検出される電池電圧が変動するため、正確に蓄電池の劣化状態の判定を行うことができないという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された方法では、鉛蓄電池の内部インピーダンスの測定結果から、インダクタンス成分L,電解液抵抗RΩ,電荷移動抵抗Rct,電気二重層容量Cd,ワールブルグインピーダンスW,ワールブルグ係数σの6つのパラメータを求める必要がある。そのため、6つのパラメータの最適解を求めるための演算が非常に煩雑になるという問題点があり、煩雑な演算は、測定時間が長くなるだけでなく、測定装置の価格が高くなり、実用的でないという問題点があった。
【0010】
さらに、特許文献3に開示された方法では、内部インピーダンスの位相が0になる周波数を探し出して、測定を行う必要があり、さらに、周波数が0.1〜10Hzの間で、インピーダンスの虚部の周波数に対する変化分をインピーダンスの実部の周波数に対する変化分で除算した値が−1程度になる周波数を探し出して、測定を行う必要がある。即ち、内部インピーダンスの値が特定の条件を満たすような周波数を探し出す必要がある。そのため、周波数を変えた測定を可能とする装置が必要となり、特定の条件を満たすことの判定を行う装置が必要になる。そのため、測定装置が複雑になり、価格も高くなり、実用的でないという問題点があった。
【0011】
さらにまた、特許文献4に開示された方法では、0.001〜1Hzでの内部インピーダンスの値を指標にしている。しかしながら、このような低周波領域の測定は、1Hz以上の領域での測定と比較して、測定装置、特に発振装置が複雑化し、測定時間が長くなるという問題点がある。また、0.001〜1Hzでの内部インピーダンスは、温度によって値が大きく変化する傾向にあるため、温度が大きく変化する場所に設置された鉛蓄電池の測定にあっては、温度による補正が不可欠になるという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、負荷に接続された使用中の蓄電池の劣化状態の判定を短時間にかつ正確に行うことができる蓄電池の劣化判定方法及び劣化判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、前記基準温度における内部抵抗成分と、前記基準温度における前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の前記蓄電池の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求め、前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定し、前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換し、該基準温度における内部抵抗成分の値を、前記抵抗電圧変換係数に基づいて前記基準温度における前記蓄電池の放電時端子間電圧の値に変換し、該基準温度における該蓄電池の放電時端子間電圧を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0014】
第2の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、前記基準温度における内部抵抗成分と、前記基準温度における前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の前記蓄電池の放電時降下電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求め、前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定し、前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換し、該基準温度における内部抵抗成分の値を、前記抵抗電圧変換係数に基づいて前記基準温度における前記蓄電池の放電時降下電圧の値に変換し、該基準温度における該蓄電池の放電時降下電圧を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0015】
第3の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定し、前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換し、該基準温度における内部抵抗成分の値を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0016】
第4の態様の発明は、第1〜第3のいずれかの態様の発明において、前記基準温度は、前記蓄電池の使用温度範囲内であって、かつ前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の放電時端子間電圧の値が最も低くなる温度に設定されることを特徴とする。
【0017】
第5の態様の発明は、第1〜第4のいずれかの態様の発明において、前記あらかじめ定められた放電電流の電流波形は、前記負荷の動作時間中に必要とされる消費電流を表す電流波形と実質的に等価とみなせる電流波形であることを特徴とする。
【0018】
第6の態様の発明は、第1、第4、第5のいずれかの態様の発明において、前記劣化判定しきい値は、前記負荷の動作に必要な最低電圧以上の値とすることを特徴とする。
【0019】
第7の態様の発明は、第2、第4、第5のいずれかの態様の発明において、前記劣化判定しきい値は、前記負荷の動作に必要な最低電圧となる降下電圧値以下の値とすることを特徴とする
【0020】
第8の態様の発明は、第3〜第5のいずれかの態様の発明において、前記劣化判定しきい値は、前記負荷の動作に必要な最低電圧となる内部抵抗成分の値以下の値とすることを特徴とする。
【0021】
第9の態様の発明は、第1、第4、第5、第6のいずれかの態様の発明において、前記基準温度における内部抵抗成分と、前記基準温度における前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の前記蓄電池の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求める工程における前記蓄電池の放電時端子間電圧は、前記蓄電池の放電時の最低電圧であることを特徴とする。
【0022】
第10の態様の発明は、第1、第4、第5、第6のいずれかの態様の発明において、前記基準温度における内部抵抗成分と、前記基準温度における前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の前記蓄電池の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求める工程における前記蓄電池の放電時端子間電圧は、前記蓄電池の放電開始から所定時間経過後の電圧であることを特徴とする。
【0023】
第11の態様の発明は、第1〜第10のいずれかの態様の発明において、2つ以上の蓄電池のうち、少なくとも1つの蓄電池について劣化状態を判定し、前記1つの蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、その状態を認識することを特徴とする。
【0024】
第12の態様の発明は、第1〜第11のいずれかの態様の発明において、少なくとも2つの前記蓄電池の劣化状態を判定し、蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、充電又は交換を要する要対応蓄電池の情報と、継続して使用可能な継続使用蓄電池の情報とを表示する表示部と、前記蓄電池の履歴を記録する記憶部を有し、少なくとも充電して使用する又は継続して使用可能する蓄電池の履歴を保持、又は/及び、継続して判定するプログラムを有する制御・判定部を備えることを特徴とする。
【0025】
第13の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、あらかじめ2以上の温度範囲を定め、該温度範囲ごとに任意の基準温度を設定し、前記蓄電池の劣化状態を判定する際に測定される測定温度を、前記温度範囲に対応する少なくとも1つの基準温度を選択し、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換し、相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求め、求めた前記基準温度における放電性能を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0026】
第14の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する際に測定される測定温度と、該測定温度の値から2以上の基準温度を設定し、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換し、相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求め、前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、前記2以上の基準温度における値を比較又は互いの相関関係を判定して前記蓄電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0027】
第15の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換し、相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求め、求めた前記基準温度における放電性能を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定することを特徴とする。
【0028】
第16の態様の発明は、第13又は第14のいずれかの態様の発明において、前記相関値は、前記蓄電池の内部抵抗成分の直流抵抗値、交流インピーダンス値あるいは前記交流インピーダンスの逆数である交流コンダクタンス値等の導電値であることを特徴とする。
【0029】
第17の態様の発明は、第13〜第15のいずれかの態様の発明において、前記所定の関係式は、負荷の消費電流の時間変化パターンに相当する電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧、あるいは、負荷の消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧であることを特徴とする。
【0030】
第18の態様の発明は、第13〜第16のいずれかの態様の発明において、前記基準温度は、前記蓄電池の所定の使用可能温度範囲の内、蓄電池の放電性能が最も低下する温度に設定されることを特徴とする。
【0031】
第19の態様の発明は、第13〜第16のいずれかの態様の発明において、前記基準温度は、前記所望の温度から一定温度を差し引いた温度に設定されることを特徴とする。
【0032】
第20の態様の発明は、第13〜第16のいずれかの態様の発明において、前記基準温度は、前記所望の温度が属する温度帯域毎に対応する所定の温度に設定されることを特徴とする。
【0033】
第21の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定装置であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、前記基準温度における内部抵抗成分と、前記基準温度における前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の前記蓄電池の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求め、前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定する電池温度測定部と、前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換する内部抵抗成分変換部と、該基準温度における内部抵抗成分の値を、前記抵抗電圧変換係数に基づいて前記基準温度における前記蓄電池の放電時端子間電圧の値に変換する端子間電圧変換部と、該基準温度における該蓄電池の放電時端子間電圧を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する劣化状態判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0034】
第22の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定装置であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、前記基準温度における内部抵抗成分と、前記基準温度における前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の前記蓄電池の放電時降下電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求め、前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定する電池温度測定部と、前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換する内部抵抗成分変換部と、該基準温度における内部抵抗成分の値を、前記抵抗電圧変換係数に基づいて前記基準温度における前記蓄電池の放電時降下電圧の値に変換する放電時降下電圧変換部と、該基準温度における該蓄電池の放電時降下電圧を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する劣化状態判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
第23の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定装置であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定する電池温度測定部と、前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換する内部抵抗成分変換部と、該基準温度における内部抵抗成分の値を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する劣化状態判定部と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
第24の態様の発明は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定装置であって、前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換する相関値変換部と、相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求める放電性能算出部と、求めた前記基準温度における放電性能を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する劣化状態判別部と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
第25の態様の発明は、第21〜第24のいずれかの態様の発明において、2つ以上の蓄電池のうち、少なくとも1つの蓄電池について劣化状態を判定し、前記1つの蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、その状態を認識できる表示部を備えることを特徴とする。
【0038】
第26の態様の発明は、第21〜第25のいずれかの態様の発明において、少なくとも2つの前記蓄電池の劣化状態を判定し、蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、充電又は交換を要する要対応蓄電池の情報と、継続して使用可能な継続使用蓄電池の情報とを表示する表示部と、前記蓄電池の履歴を記録する記憶部を有し、少なくとも充電して使用する又は継続して使用可能する蓄電池の履歴を保持、又は/及び、継続して判定するプログラムを有する制御・判定部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける蓄電池の劣化状態を判定するに際し、蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、実測された蓄電池の内部抵抗成分を基準温度における値に変換し、この値を基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧に変換し、この基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧を劣化判定しきい値と比較して蓄電池の劣化状態を判定するため、負荷に接続された使用中の蓄電池の劣化状態の判定を短時間かつ正確に行うことができる。
【0040】
また、基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧のかわりに、基準温度における蓄電池の放電時降下電圧を用いて劣化判定しきい値と比較してもほぼ同様の効果が得られ、基準温度における内部抵抗成分の値を劣化判定しきい値と比較してもほぼ同様の効果が得られる。
【0041】
さらに、蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、あらかじめ求めた相関値の温度補正式、相関値の測定時の温度および相関値に基づいて、相関値を基準温度における相関値に変換し、相関値と放電性能との所定の関係式及び変換後の相関値に基づいて蓄電池の放電性能を求める。そして求めた基準温度における放電性能が、劣化判定しきい値より大きい場合は、電池は必要な電力出力が可能と判断される。得られた放電性能が、劣化判定しきい値以下で有れば、電池は必要な電力出力が不可能と判断される。
【0042】
しかも、放電性能としては、蓄電池(補助電池)の実際の負荷を想定して規定された消費電流の時間変化パターンの電流を流した時、あるいは、規定された消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した時の、最低保証電圧に対する補助電池の端子間電圧としているため、従来方法の様な電池の残存容量(例えば、5時間率容量)の低下として判断するよりも、はるかに精度良く設備に設置された蓄電池や車載された蓄電池(補助電池)の放電性能の低下を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明が適用されるシステムの第1例を示す説明図である。
【図2】本発明が適用されるシステムの第2例を示す説明図である。
【図3】本発明が適用されるシステムにおいて用いられる電力制御装置の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第1例の流れを説明する流れ図である。
【図5】本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第2例の流れを説明する流れ図である。
【図6】本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第3例の流れを説明する流れ図である。
【図7】負荷使用時の放電電流の時間変化の第1例を示すグラフである。
【図8】負荷使用時の放電電流の時間変化の第2例を示すグラフであって、(イ)は負荷の動作時間中に必要とされる消費電流を表す電流波形、(ロ)は(イ)の電流波形と実質的に等価とみなせる電流波形を示す。
【図9】第1例の方法による、抵抗電圧変換係数を求める際の蓄電池の放電時端子間電圧を蓄電池の放電時の最低電圧とする場合の、放電時端子間電圧と放電電流の関係を示すグラフである。
【図10】第1例の方法による、抵抗電圧変換係数を求める際の蓄電池の放電時端子間電圧を蓄電池の放電開始から所定時間経過後の電圧とする場合の、放電時端子間電圧と放電電流の関係を示すグラフである。
【図11】蓄電池の内部抵抗成分の温度依存性の一例を示すグラフである。
【図12】抵抗温度補正係数の一例を示すグラフである。
【図13】第1例の方法において用いられる抵抗電圧変換係数の一例を示すグラフである。
【図14】第2例の方法において用いられる抵抗電圧変換係数の一例を示すグラフである。
【図15】第2実施形態の処理フローチャートである。
【図16】第2実施形態における内部抵抗成分(内部抵抗値)と負荷電流を放電している最中の最低電圧の関係を示す図である。
【図17】従来方法である電池容量(5時間率容量)と負荷電流を放電している最中の最低電圧の関係を示す図である。
【図18】従来方法の処理フローチャートである。
【図19】変形例のシステム構成図(その1)である。
【図20】変形例のシステム構成図(その2)である。
【図21】変形例のシステム構成図(その3)である。
【図22】変形例のシステム構成図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に本発明の好適な実施形態を、図面を用いて説明する。
[1]第1実施形態
第1実施形態にかかる本発明の蓄電池の劣化判定方法及び蓄電池の劣化判定装置は、蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける蓄電池の劣化状態を、その内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する方法および装置である。
【0045】
本発明の蓄電池の劣化判定方法および蓄電池の劣化判定装置は、充電電圧や充電状態が変化する用途または急速放電を行う用途に用いられる蓄電池に対しても、ほぼ正確に劣化状態を判定することができる点で従来の方法より優れている。ここで、急速放電とは、実際の放電時における放電電流の値(放電電流値)が、定格放電時の放電電流値(定格電流値:一般には5時間率または10時間率)より大きい状態を意味する。
【0046】
また、本発明の第1実施形態である蓄電池の劣化判定方法および蓄電池の劣化判定装置は、下記(1)(2)の事項をあらかじめ定めておくことを特徴としている。
【0047】
(1)蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度として規定すること。この基準温度は、例えば蓄電池の使用温度範囲内であって、かつ前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の放電時端子間電圧の値が最も低くなる温度に設定される。ここで、蓄電池の放電時端子間電圧(放電性能)に与える影響について、通常は蓄電池の内部抵抗成分の温度特性によるものが支配的であるが、他の要因(例えば負荷側の消費電流等の温度特性等)についての影響も考慮することができる。具体的には、蓄電池と負荷との間に逆接続防止用のダイオードが接続されることがあるが、その温度特性等を考慮することもできる。
【0048】
(2)蓄電池の内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求めること。この抵抗温度補正係数は、(1)で規定された基準温度における蓄電池の内部抵抗成分を求めるために用いられる。
また、必要に応じて、下記(3)の事項をあらかじめ定めておくことが望ましい。
【0049】
(3)基準温度における内部抵抗成分と、基準温度における蓄電池から負荷に対して定められた電流を流した際の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求めること。上記(1)のように、蓄電池の放電性能に与える影響について、通常は蓄電池の内部抵抗成分の温度特性によるものが支配的であるため、この影響を直接的に示す係数として抵抗電圧変換係数が用いられる。また、定められた電流の値として、前述の急速放電時の放電電流値を定めることが可能である。この場合には、定格電流の数倍〜数十倍の電流を短時間(たとえば数秒以下)流す場合などがある。また、基準温度における放電時端子間電圧の代わりに、基準温度における放電時降下電圧を用いて抵抗電圧変換係数を求めることもできる。
【0050】
また、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法は、あらかじめ定められた上記(1)〜(3)の事項に基づいて、下記(4)〜(7)の処理を行うことを特徴としている。
【0051】
(4)蓄電池の内部抵抗成分およびその測定時の前記蓄電池の温度を測定する。ここで、蓄電池の温度の測定は、蓄電池の内部抵抗成分の測定と同時に行う必要はなく、蓄電池の温度が実質的に変化していないとみなしうる場合においては、両者の測定のタイミングが一致していなくても問題はない。
【0052】
(5)上記(4)において測定された内部抵抗成分の値を、上記(2)の抵抗温度補正係数に基づいて、基準温度における内部抵抗成分の値に変換する。
【0053】
(6)上記(5)により求められた基準温度における内部抵抗成分の値を、上記(3)の抵抗電圧変換係数に基づいて基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧に変換する。このことにより、負荷の動作電圧との対比が可能となる。
【0054】
(7)上記(6)により求められた基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する。劣化判定しきい値は、例えば負荷の動作に必要な最低電圧(以下、負荷の最低動作電圧とする)とすることができる。蓄電池の放電時端子間電圧が劣化判定しきい値より大きい場合は、蓄電池は必要な電力出力が可能であると判断され、劣化判定しきい値以下であれば、蓄電池は必要な電力出力が不可能であって蓄電池は劣化状態であると判断される。さらに、劣化判定しきい値より大きい側に幅を持たせた電圧値を設定し、その幅を持たせた電圧値以下となった場合に劣化状態に近づいていると判断してもよい。
【0055】
なお、上記(6)(7)の処理のかわりに、下記の(8)または(9)の処理を行うこともできる。その効果は、(6)(7)の処理を行った場合と実質的に同等である。
【0056】
(8)上記(5)により求められた基準温度における内部抵抗成分の値を、抵抗電圧変換係数に基づいて基準温度における蓄電池の放電時降下電圧に変換し、この値をあらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する。この劣化判定しきい値は、例えば負荷の動作に必要な最低電圧となる降下電圧値以下の値とすることができる。このことにより、蓄電池の降下電圧値との対比が可能となる。
【0057】
(9)上記(5)により求められた基準温度における内部抵抗成分の値を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定する。この劣化判定しきい値は、例えば負荷の動作に必要な最低電圧となる内部抵抗成分の値以下の値とすることができる。このことにより、蓄電池の内部抵抗成分の値との対比が可能となる。
【0058】
すなわち、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法は、上記(1)〜(9)の特徴を有するため、さらに具体的には、蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて、蓄電池の放電時端子間電圧や放電時降下電圧に変換し、または蓄電池の内部抵抗成分の値のままそれぞれ劣化判定しきい値と比較するため、負荷に接続された使用中の蓄電池の劣化状態の判定を短時間にかつ正確に行うことができる。
【0059】
ここで、蓄電池の放電性能について説明する。放電性能とは、ある定められた電流を流した時の蓄電池の端子間電圧として考えることができる。つまり、放電性能が低下するということは、同一の電流出力に対して端子間電圧の低下が大きくなることである。従って、放電性能とは、同一の電流出力に対する電圧降下として考えることができる。
【0060】
本発明においては、蓄電池の電圧降下の値を実際に蓄電池の内部抵抗成分の値の変化から求め、この内部抵抗成分の値の増加に基づいて放電性能の低下を判断する。ここで、蓄電池の内部抵抗成分とは、蓄電池の電圧降下の代替指標となるものであればよい。例えば、内部抵抗成分として、インピーダンス(直流抵抗成分のみまたはリアクタンス成分のみでも可)を用いてもよく、アドミタンス(コンダクタンス成分のみまたはサセプタンス成分のみでも可)を用いてもよい。
【0061】
また、本発明においては、蓄電池の使用温度範囲内であって、かつ前記蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の放電時端子間電圧の値が最も低くなる温度での放電性能低下を判断することが、劣化状態を確実に判断する点から望まれる。例えば、蓄電池が鉛蓄電池である場合、使用温度範囲を−10℃〜+40℃としたときの放電性能は、低温にいくほど低下し、蓄電池の使用温度範囲の下限温度において最も厳しくなる。そこで、任意の温度の蓄電池で測定した内部抵抗成分の測定値から、電池の放電性能が最も厳しい温度、すなわち蓄電池の使用温度範囲の下限温度における放電性能を求めることが望ましい。
【0062】
また、本発明では、上述の例のように、蓄電池の使用温度範囲の下限温度における劣化状態を判断すると蓄電池の特性保証が過剰となる場合には、蓄電池の温度に応じて劣化状態を判断する基準温度を変化させてもよい。この基準温度は、必ずしも蓄電池の使用温度範囲の下限温度に設定する必要はなく、蓄電池の使用温度範囲の下限温度より高い温度を基準温度として劣化状態を判断してもよい。
【0063】
例えば、測定した蓄電池の温度から、一定の温度を差し引いた温度を基準温度として劣化状態を判断してもよい。また、例えば蓄電池の使用温度範囲が−30℃〜+55℃である場合において、蓄電池の温度が+25℃〜+55℃であれば基準温度を0℃、蓄電池の温度が0℃〜+25℃であれば基準温度を−15℃、蓄電池の温度が−30℃〜0℃であれば基準温度を−30℃、というように、測定した蓄電池の温度に応じて基準温度を設定してもよい。また、例えば蓄電池の測定温度の履歴を年間を通して記録し、蓄電池の履歴温度範囲が−30℃〜+55℃である場合には基準温度を−30℃、蓄電池の履歴温度範囲が0℃〜+25℃であれば基準温度を−15℃、蓄電池の履歴温度範囲が+25℃〜+55℃であれば基準温度を0℃、蓄電池の履歴温度範囲が−30℃〜0℃であれば基準温度を−30℃、というように、蓄電池の履歴温度範囲に応じて基準温度を設定してもよい。
【0064】
また、例えば、蓄電池の使用温度範囲を−30℃〜+55℃としたとき、その範囲を表1のように、“−30℃以上、0℃未満”、“0℃以上、+30℃以下”、“+30℃超、+55℃以下”の3つに区分し、測定した蓄電池の温度に応じて基準温度の選定パターンを基準温度選定AとB又はCのように複数設定してもよい。例えば、蓄電池の設置場所の温度履歴に応じて基準温度を任意にしてもよい。
【0065】
また、基準温度選定Cは、基準温度選定AとBに比べ、−20℃を基準温度とするので、低い温度(区分1)での判定が緩いものとなる。この判定により劣化と判定し、蓄電池を充電又は交換をするようにしてよい。また、高温側においても、例えば、蓄電池の上限温度程度になった場合、+30℃を基準温度とする判定をしてよい。
【0066】
また、基準温度は測定温度範囲の異なる区分のものから設定してもよい。例えば、基準温度選定Bのとき、測定した蓄電池の温度が+5℃であっても、基準温度として+30℃(表1の基準温度選定Bの区分3)等、基準温度を任意に選択してもよい。なお、測定温度範囲の区分は4つ以上あってもよい。また、測定温度範囲を−30≦区分1<−20℃,・・,0≦区分m<10℃,・・・,50≦区分n<60℃のように10℃程度毎のようにほぼ等間隔に温度範囲に区分してよく。当然に、任意の不等間隔に温度範囲を区分してよい。
【0067】
【表1】

【0068】
さらに、基準温度は複数、1つの基準温度で測定し(測定結果1)、他の基準温度での測定し(測定結果2,3,4,・・n)、例えば、複数の基準温度での電圧値について比較し、最も厳しい判定となる基準温度を選択してよい。
また、1つの蓄電池において、複数の基準温度での電圧値についての相関等の関係と、負荷状況や環境等の使用状態とを考慮し、劣化判定をするようにしてよい。
また、複数の蓄電池について、1つの蓄電池において1以上の基準温度を設定し、互いの相関等の関係、又は/及び、負荷状況や環境等の使用状態を考慮し、劣化判定をするようにしてよい。さらに、複数の蓄電池を判定することにより、ほぼ同時に交換や充電をした蓄電池について、負荷状況や環境等による劣化状況(寿命)を予測することも可能となり、予測される交換や充電時期をユーザに報せることもできる。
【0069】
ここで、負荷の最低動作電圧が温度依存性を有する場合には、基準温度の設定の他に負荷の最低動作電圧の温度依存性についても考慮することが望ましい。例えば、蓄電池の劣化状態を確実に判断する点からは、負荷の最低動作電圧を、負荷の使用温度範囲における最高電圧値に設定することが望ましい。また蓄電池の特性保証が過剰となる場合には、負荷の最低動作電圧を、劣化状態判断時の負荷の温度における最低動作電圧としてもよい。
【0070】
次に、本発明が適用されるシステムの例を説明する。図1は、本発明が適用されるシステムの第1例を示す説明図である。図1において、1は本発明が適用されるシステムである。このシステム1は、システム1を動作させる電力源2と、電力源2からの電力により充電される蓄電池3と、電力源2または蓄電池3からの電力により動作する負荷4と、電力源2または蓄電池3から負荷4への電力の供給を制御する電力制御装置5を備えている。なお、実際のシステム1には、負荷が多数設けられている場合もあるが、図1においては特定の負荷4にのみ着目し、他の負荷については図示および説明を省略する。
【0071】
また、電力制御装置5は、負荷4に接続された蓄電池3の劣化状態を判定する蓄電池劣化判定装置6を備えている。蓄電池3としては、どのような蓄電池を用いてもよく、例えば鉛蓄電池を用いてもよい。具体的には、種類、電圧、容量等の区別なく用いることができる。
【0072】
ここで、蓄電池劣化判定装置6は、蓄電池3の劣化状態を、蓄電池3の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する機能を有する。蓄電池3の劣化状態を判定するために蓄電池3の内部抵抗成分の測定結果を利用すると、例えばシステム1が負荷変動の大きい装置であって電力源2が商用電源や太陽電池、あるいは、自動車等の車両であって電力源2が発電機(オルタネータ)である場合などのように、充電中の蓄電池3の電池電圧が変動する場合にも、従来技術と比較して正確に蓄電池3の劣化状態を判定することができる。
【0073】
また、本発明が適用されるシステムとしては、通常使用される蓄電池と予備の蓄電池を併用するシステムも考えられる。なお、通常使用される蓄電池と予備の蓄電池の数量についての制限は特になく、それぞれ少なくとも1個以上用いたシステムであれば、どのように蓄電池を組み合わせたシステムであっても、本発明を適用することが可能である。
【0074】
図2は、本発明が適用されるシステムの第2例を示す説明図である。
図2において、1は本発明が適用されるシステムである。このシステム1は、システム1を動作させる電力源2と、電力源2からの電力により充電される主蓄電池3Aと、電力源2または主蓄電池3Aからの電力により動作する負荷4と、電力源2または主蓄電池3Aから負荷4への電力の供給を制御する電力制御装置5を備えている。また、システム1は、主蓄電池3Aをバックアップする予備蓄電池3Bを備えている。なお、図2においては、図1と同様に特定の負荷4にのみ着目し、他の負荷については図示および説明を省略する。
【0075】
また、電力制御装置5は、負荷4に接続された主蓄電池3Aまたは予備蓄電池3Bのうち少なくとも一方の劣化状態を判定する蓄電池劣化判定装置6を備えている。主蓄電池3Aおよび予備蓄電池3Bとしては、どのような蓄電池を用いてもよく、例えば鉛蓄電池を用いてもよい。
【0076】
ここで、蓄電池劣化判定装置6は、主蓄電池3Aまたは予備蓄電池3Bの劣化状態を、主蓄電池3Aまたは予備蓄電池3Bの内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する機能を有する。蓄電池劣化判定装置6がこの機能を有する利点は、前述のとおりである。
【0077】
また、図2では主蓄電池3Aと予備蓄電池3Bと複数の蓄電池を備えるものであり、少なくとも1つの蓄電池について劣化状態を判定するようにし、その蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、充電又は交換を要する蓄電池の情報を伝えるものである。また、蓄電池の情報を表示する図19又は図20のような表示部103を設け、ユーザー他に蓄電池の状態を伝え、充電又は交換することを促すことができる。
【0078】
さらに、図2では主蓄電池3Aと予備蓄電池3Bと複数の蓄電池を備えるものであり、少なくとも2つの蓄電池について劣化状態を判定するようにし、蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、充電又は交換を要する要対応蓄電池の情報と、継続して使用可能な継続使用蓄電池の情報とを表示する図19又は図20のような表示部103と、前記蓄電池の履歴を記録する記憶部(図示しない)を有し、少なくとも充電して使用する又は継続して使用可能する蓄電池の履歴を保持、又は/及び、継続して判定するプログラムを有する制御・判定部(図2の電力制御装置5や蓄電池劣化判定装置6等)を備え、蓄電池の劣化状態を判定することができる。このようにすれば、少なくとも1つは常に使用可能な蓄電池とすることが可能である。従って、例えば、常時電源が活きている必要があるようなシステムや装置に本発明を取り入れると有効である。
【0079】
次に、本発明が適用されるシステムにおいて用いられる電力制御装置5の例を説明する。
図3は、本発明が適用されるシステムにおいて用いられる電力制御装置の一例を示す説明図である。ここで、図3の電力制御装置は、図1のシステムに用いられるものとして説明する。
【0080】
図3において、電力制御装置5は、電力源2から蓄電池3への充電電力の有無を検知する充電電力検出手段51と、蓄電池劣化判定装置6からの劣化検知信号を警報信号に変換して外部に発出する警報発生手段52を備えている。なお、充電電力検出手段51は、蓄電池劣化判定装置6による蓄電池3の劣化状態の判定を蓄電池3が充電されていないときに行わせるための手段である。
なお、実際の電力制御装置5には、必要に応じて電力源2から蓄電池3への充電電力を調整する機能などの他の機能が設けられるが、ここでは図示および説明を省略する。
【0081】
また、蓄電池劣化判定装置6は、蓄電池3の内部インピーダンスを測定するインピーダンス測定手段61と、インピーダンス測定手段61からの測定結果を用いて蓄電池3の劣化判断を行う状態検知手段62を備えている。状態検知手段62には温度センサ63が接続されており、蓄電池3の温度または蓄電池3の周辺の温度を測定することができる。また、状態検知手段62はインピーダンス測定手段61を制御する機能と、蓄電池3が劣化している場合の劣化検知信号を警報発生手段52に送出する機能を有する。
【0082】
次に、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の具体的一例について説明する。
図4は、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第1例の流れを説明する流れ図である。以下、ステップごとに分けて説明する。
【0083】
ステップ0:初期値設定
基準温度、抵抗温度補正係数、抵抗電圧変換係数、劣化判定しきい値を、それぞれ初期値として設定する。ここで、抵抗電圧変換係数は、基準温度における内部抵抗成分値を基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧に変換する係数である。また、劣化判定しきい値としては、負荷の最低動作電圧以上の電圧値を用いる。
【0084】
ステップ1:内部抵抗成分の測定
蓄電池の両端に交流電流を流して、内部抵抗成分(具体的には内部インピーダンス)を測定する。この測定は、いわゆる交流4端子法、またはその改良方法により行う。また、交流電流の周波数は適宜選択することができ、必要に応じて複数の周波数を用いて内部抵抗成分を測定することも可能である。
【0085】
ステップ2:蓄電池温度の測定
前述のステップ1の内部抵抗成分値の測定と並行して、蓄電池温度の測定を行う。蓄電池温度の代わりに、蓄電池の周囲の温度を測定してもよい。なお、蓄電池の温度の測定は、蓄電池の内部抵抗成分の測定と同時に行う必要はない。
【0086】
ステップ3:基準温度における内部抵抗成分値への変換
ステップ0において設定された抵抗温度補正係数と、ステップ2において実測された蓄電池温度の値を用いて、ステップ1において実測された蓄電池の内部抵抗成分値を、基準温度における内部抵抗成分値に変換する。
【0087】
ステップ4:放電時端子間電圧への変換
ステップ3において求められた基準温度における内部抵抗成分値を、ステップ0において設定された抵抗電圧変換係数により、基準温度における蓄電池の放電時端子間電圧に変換する。
【0088】
ステップ5:放電時端子間電圧と劣化判定しきい値との比較
ステップ4において求められた放電時端子間電圧と、ステップ0において設定された劣化判定しきい値とを比較する。前者の値が後者の値より大きい場合はステップ6へ進み、それ以外の場合はステップ7へ進む。
【0089】
ステップ6:判定結果(1)〜〜〜蓄電池を正常であると判定
ステップ5において、放電時端子間電圧が劣化判定しきい値より大きい場合は、蓄電池は正常であると判定され、劣化判定の流れは終了する。
【0090】
ステップ7:判定結果(2)〜〜〜蓄電池を劣化していると判定
ステップ5において、放電時端子間電圧が劣化判定しきい値以下である場合は、蓄電池は劣化していると判定され、劣化判定の流れは終了する。
ここで、ステップ6を経由して劣化判定の流れが終了した場合には、時間をおいて次回以降の劣化判定が開始されることがあり、この場合はステップ7を経由して劣化判定の流れが終了するまで、劣化判定が繰り返されることがある。また、図4に例示されたステップ0からステップ7までの一連の劣化判定の流れを、時間をおいて周期的に繰り返し行ってもよい。
【0091】
次に、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第2例を説明する。図5は、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第2例の流れを説明する流れ図である。以下、第1例の説明と同様に、ステップごとに分けて説明する。
【0092】
ステップ0:初期値設定
基準温度、抵抗温度補正係数、抵抗電圧変換係数、劣化判定しきい値を、それぞれ初期値として設定する。ここで、抵抗電圧変換係数は、基準温度における内部抵抗成分値を基準温度における蓄電池の放電時降下電圧に変換する係数である。また、劣化判定しきい値としては、負荷の動作に必要な最低電圧となる降下電圧の値以下の値を用いる。
【0093】
ステップ1:内部抵抗成分の測定
内容は第1例と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
ステップ2:蓄電池温度の測定
内容は第1例と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
ステップ3:基準温度における内部抵抗成分値への変換
内容は第1例と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
ステップ4:放電時降下電圧への変換
ステップ3において求められた基準温度における内部抵抗成分値を、ステップ0において設定された抵抗電圧変換係数により、基準温度における蓄電池の放電時降下電圧に変換する。
【0097】
ステップ5:放電時降下電圧と劣化判定しきい値との比較
ステップ4において求められた放電時降下電圧と、ステップ0において設定された劣化判定しきい値とを比較する。前者の値が後者の値より小さい場合はステップ6へ進み、それ以外の場合はステップ7へ進む。
【0098】
ステップ6:判定結果(1)〜〜〜蓄電池を正常であると判定
ステップ5において、放電時降下電圧が劣化判定しきい値より小さい場合は、蓄電池は正常であると判定され、劣化判定の流れは終了する。
【0099】
ステップ7:判定結果(2)〜〜〜蓄電池を劣化していると判定
ステップ5において、放電時降下電圧が劣化判定しきい値以上である場合は、蓄電池は劣化していると判定され、劣化判定の流れは終了する。
【0100】
なお、図4に例示した第1例と同様、ステップ6を経由して劣化判定の流れが終了した場合には、時間をおいて次回以降の劣化判定が開始されることがあり、この場合はステップ7を経由して劣化判定の流れが終了するまで、劣化判定が繰り返されることがある。また、図5に例示されたステップ0からステップ7までの一連の劣化判定の流れを、時間をおいて周期的に繰り返し行ってもよい。
【0101】
次に、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第3例を説明する。図6は、本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法の第3例の流れを説明する流れ図である。以下、第1例、第2例の説明と同様に、ステップごとに分けて説明する。
【0102】
ステップ0:初期値設定
基準温度、抵抗温度補正係数、抵抗電圧変換係数、劣化判定しきい値を、それぞれ初期値として設定する。ここで、劣化判定しきい値としては、負荷の動作に必要な最低電圧となる内部抵抗成分の値以下の値を用いる。
【0103】
ステップ1:内部抵抗成分の測定
内容は第1例と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
ステップ2:蓄電池温度の測定
内容は第1例と同様であるため、説明を省略する。
【0105】
ステップ3:基準温度における内部抵抗成分値への変換
内容は第1例と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
ステップ4:基準温度における内部抵抗成分値と劣化判定しきい値との比較 ステップ3において求められた基準温度における内部抵抗成分値と、ステップ0において設定された劣化判定しきい値とを比較する。前者の値が後者の値より大きい場合はステップ5へ進み、それ以外の場合はステップ6へ進む。
【0107】
ステップ5:判定結果(1)〜〜〜蓄電池を正常であると判定
ステップ4において、基準温度における内部抵抗成分値が劣化判定しきい値より小さい場合は、蓄電池は正常であると判定され、劣化判定の流れは終了する。
【0108】
ステップ6:判定結果(2)〜〜〜蓄電池を劣化していると判定
ステップ4において、基準温度における内部抵抗成分値が劣化判定しきい値以上である場合は、蓄電池は劣化していると判定され、劣化判定の流れは終了する。
【0109】
なお、図4に例示した第1例と同様、ステップ5を経由して劣化判定の流れが終了した場合には、時間をおいて次回以降の劣化判定が開始されることがあり、この場合はステップ6を経由して劣化判定の流れが終了するまで、劣化判定が繰り返されることがある。また、図6に例示されたステップ0からステップ6までの一連の劣化判定の流れを、時間をおいて周期的に繰り返し行ってもよい。
【0110】
以上、本発明の第1実施形態である蓄電池の劣化判定方法の例を説明した。ここで、各例におけるステップ0で設定される値などについて説明する。
【0111】
まず、負荷使用時の放電電流値について説明する。負荷使用時の放電電流値は、各蓄電池の容量その他の条件により異なるので、あらかじめ劣化状態の異なる複数の同種の蓄電池を用いてデータを収集しておくことが望ましい。以下、蓄電池として鉛蓄電池を用いて、急速放電する場合、放電電流が時間により変化する場合などの例を説明する。
【0112】
図7は、負荷使用時の放電電流の時間変化の第1例を示すグラフである。なお、図7においては、定格電流値をあわせて示している。本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法は、図7のような比較的短時間に定格電流に対して大きい電流(例えば1cA以上)が流れる場合であっても、ほぼ正確に蓄電池の劣化状態を判定することができる。
【0113】
図8は、負荷使用時の放電電流の時間変化の第2例を示すグラフであって、(イ)は負荷の動作時間中に必要とされる消費電流を表す電流波形、(ロ)は(イ)の電流波形と実質的に等価とみなせる電流波形を示す。本発明の実施形態である蓄電池の劣化判定方法は、図8のような時間変化をする電流が流れる場合であっても、ほぼ正確に蓄電池の劣化状態を判定することができる。もちろん、電流値が定格電流に対して大きい電流値(例えば1cA以上)である場合にも十分適用することができる。
【0114】
また、ステップ0で設定される値のうち、抵抗電圧変換係数を求める場合の負荷使用時の放電電流値については、図7および図8に例示されるものとなるが、この放電電流値から抵抗電圧変換係数を求める場合、各蓄電池の容量その他の条件により変換係数が異なるので、あらかじめ劣化状態の異なる複数の同種の蓄電池を用いてデータを収集しておくことが望ましい。
【0115】
例えば、第1例の方法において、基準温度における内部抵抗成分と、基準温度における蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の蓄電池の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求める工程における蓄電池の放電時端子間電圧は、蓄電池の放電時の最低電圧としておくと、確実に蓄電池の劣化状態を判定することができる。この場合の放電時端子間電圧と放電電流のグラフを図9に示す。
【0116】
また、第1例の方法において、基準温度における内部抵抗成分と、基準温度における蓄電池からあらかじめ定められた放電電流を流した際の蓄電池の放電時端子間電圧との関係を抵抗電圧変換係数としてあらかじめ求める工程における蓄電池の放電時端子間電圧は、前記蓄電池の放電開始から所定時間経過後の電圧とすることもできる。この場合の放電時端子間電圧と放電電流のグラフを図10に示す。
【0117】
また、ステップ0で設定される値のうち、内部抵抗成分の温度依存性、抵抗温度補正係数、第1例の方法において用いられる抵抗電圧変換係数、第2例の方法において用いられる抵抗電圧変換係数について、それぞれグラフを図11〜図14に示す。なお、図13および図14においては劣化判定しきい値をあわせて示す。
【0118】
[2]第2実施形態
第2実施形態にかかる本発明の蓄電池の劣化判定方法及び蓄電池の劣化判定装置は、負荷変動の大きい装置に用いられる蓄電池(補助電池)、あるいは、車載された蓄電池(補助電池)の放電性能の低下、すなわち、蓄電池の劣化状態を精度良く判別する方法および装置である。
【0119】
しかも、所望の温度における測定結果に基づいて、測定対象の蓄電池の仕様として規定されている使用可能温度範囲の中で蓄電池の放電性能が最も厳しい温度(もっとも蓄電池の性能が低下する最も低温側の温度)における放電性能低下を判別するものであり、実際に蓄電池(補助電池)から電力を供給する負荷の動作に必要な電力仕様に対する補助電池の性能低下として判断するものである。
【0120】
一般に負荷の動作に必要な電力仕様としては、電流として消費電流の時間変化を規定し、電圧として最低保証電圧が規定されている。
【0121】
従って、規定された消費電流の時間変化パターンの電流、あるいは規定された消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した時に、蓄電池(補助電池)の端子間電圧が最低保証電圧に対してどの程度の余裕度が有るのかによって、蓄電池の放電性能を判断する。
【0122】
ところで、実際の測定温度で蓄電池の放電性能を判断する場合、各種装置や所定の場所に設置した蓄電池、あるいは、車両に搭載される鉛蓄電池等が、実際に稼動するまでのある期間放置される前や、出荷までの保管される前や輸送される前(以後、放置前という)、この放置前の温度では負荷の動作に必要な電力が電池から供給できる様な放電性能を有している電池であっても、到着後あるいは稼動前や使用前等である放置後の温度では、必要な電力が供給できない場合がある。従って、蓄電池が電源として必要なシステムや装置、あるいは、車両の装置等が走行上重要な安全部品の場合は重大な問題となる可能性がある。あるいは、放置後の温度で放電性能の低下が判断できたとして、車両を使用してはいけないと警告する事となり、ユーザーに対して不便を強いることとなる。
【0123】
そこで、本実施形態では、所定の使用可能温度範囲の中で電池の放電性能が最も厳しい温度での放電性能低下を判断している。この理由は、所定の場所に設置した蓄電池、通信装置等を収納した局舎等に備える蓄電池、あるいは、蓄電池を搭載している車両が一時的に放置される場合を想定すると、蓄電池がおかれた環境の温度により蓄電池の放電性能は変化してしまうからである。従って、放置後における蓄電池の劣化状態が不明であることから、放電性能が最も厳しい温度で放電性能を判断するものである。また、言い替えると、各種装置や車両等の負荷状況に対し、蓄電池が使用可能かどうかを判定するものである。もし、放電性能が低下している場合は、事前にユーザーや保守・メンテナンス拠点等に対して蓄電池(補助電池)の充電あるいは交換することを促すことができる。
【0124】
第1実施形態で述べたように、放電性能とは、同一の電流出力に対する電圧降下として考えることができる。
本願発明においては、この放電性能の低下に伴う電圧降下を蓄電池の内部抵抗値(内部抵抗成分)に置き換え、この内部抵抗値を放電性能に相関関係を有する相関値とし、この相関値の温度補正を行い、温度補正後の相関値をあらかじめ求めた関係式に代入することにより放電性能を求め、放電性能の低下(内部抵抗値の増加に相当)を判断する。測定の対象となる内部抵抗値としては、電圧降下の代替指標となるもので有れば、どの様な抵抗値でもかまわない。具体的には、直流抵抗でも良いし、交流インピーダンスでも良い。交流インピーダンスの逆数である交流コンダクタンス等の導電値を示すものでも良い。
【0125】
図15は、第2実施形態の処理フローチャートである。
本発明の蓄電池の劣化判定方法は、蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値、すなわち、内部抵抗成分を所望の温度で測定し(ステップS11)、この内部抵抗成分をあらかじめ求めた温度補正式により測定時の温度で補正し、内部抵抗成分を基準温度における内部抵抗成分に変換し(ステップS12)、変換後の内部抵抗成分と放電性能との所定の関係式に基づいて基準温度における蓄電池の放電性能を求め(ステップS13)、求めた基準温度における放電性能を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して蓄電池の劣化状態を判定する(ステップS14)ことを特徴としている。
【0126】
この場合において、所定の関係式は、負荷の消費電流の時間変化パターンに相当する電流を流した際の蓄電池の端子間電圧、あるいは、負荷の消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した際の蓄電池の端子間電圧であるようにしてもよい。
また、基準温度は、蓄電池の所定の使用可能温度範囲の内、蓄電池の放電性能が最も低下する温度に設定してもよい。
【0127】
本実施形態においても、使用温度範囲の中で電池の放電性能が最も厳しい温度での放電性能低下を判断している。
【0128】
所定の場所に設置した蓄電池、観測装置や通信装置等を収納した局舎等に備える蓄電池、あるいは、車載される蓄電池(補助電池)の使用可能温度範囲としては、例えば、−30℃〜+55℃が挙げられる。この場合には、下限温度である−30℃での電池の放電性能が最も厳しい。従って、任意の温度の電池で測定した抵抗値から、電池の放電性能が最も厳しい温度−30℃での放電性能を求める必要がある。この方法の例としては、あらかじめ計測しておいた抵抗値の温度特性から温度補正式を求めておき、この温度補正式に電池の温度と抵抗値を代入して電池の放電性能が最も厳しい温度−30℃での抵抗値に変換する。変換した抵抗値を、あらかじめ求められた、抵抗値と放電性能の関係を現した所定の関係式に代入することで、電池の放電性能が最も厳しい温度−30℃での放電性能が得られる。得られた放電性能が、劣化状態を判別するための設定したしきい値より大きい場合は、電池は必要な電力出力が可能と判断される。得られた放電性能が、劣化として設定したしきい値以下で有れば、電池は必要な電力出力が不可能と判断される。
【0129】
また、常に使用可能温度範囲の中で電池の放電性能が最も厳しい温度での放電性能低下を判断することによる、過剰な放電性能保証を避ける為に、電池温度に従って、放電性能低下を判断する対象温度を替える方法としても良い。すなわち、基準温度は、所望の温度から一定温度を差し引いた温度に設定してもよい。具体的には、電池の性能としては、低温にいくほどに放電性能が低下するため、例えば、測定した電池温度から、20℃を差し引いた温度を、対象温度として放電性能低下を判断しても良い。
あるいは、基準温度は、所望の温度が属する温度帯域毎に対応する所定の温度に設定してもよい。具体的には、電池温度が+25℃〜+55℃であれば対象温度を0℃、電池温度が0℃〜+25℃であれば対象温度を−15℃、電池温度が−30℃〜0℃であれば対象温度を−30℃、というように、温度帯域毎に対象温度を設定しても良い。
【0130】
いずれにしても、所望の温度の蓄電池で抵抗値を測定し、この測定した抵抗値から、あらかじめ設定した基準温度での放電性能を求める。この方法の例としては、あらかじめ計測しておいた抵抗値の温度特性から、対象温度毎に温度補正式を求めておき、この温度補正式に電池の温度と抵抗値を代入することで、対象温度での抵抗値に変換する。変換した抵抗値を、あらかじめ求められた、基準温度における抵抗値と放電性能の関係を現した式に代入することで、対象温度での放電性能が得られる。得られた放電性能が、劣化として設定したしきい値より大きい場合は、電池は必要な電力出力が可能と判断される。得られた放電性能が、劣化として設定したしきい値以下で有れば、電池は必要な電力出力が不可能と判断される。
【0131】
これらの場合において、基準温度における相関値としての内部抵抗成分(内部抵抗値)と放電性能の関係を現した関係式については、事前にいろいろな劣化程度の電池を用いて、規定された消費電流の時間変化パターンの電流を流した時に、あるいは規定された消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した時に、蓄電池(補助電池)の端子間電圧を測定し、また、電圧降下の代替指標となる抵抗値を測定することで、容易に導くことが出来る。
【0132】
以下に第2実施形態を詳細に説明する。
まず本第2実施形態の従来例に対する優位性を比較する。
図16は、本第2実施形態における内部抵抗成分(内部抵抗値)と負荷電流を放電している最中の最低電圧の関係を示す図である。図17は、従来方法である電池容量(5時間率容量)と負荷電流を放電している最中の最低電圧の関係を示す図である。
本比較のために、使用した蓄電池は鉛シール式電池であり、定格電池容量は12Ahである。蓄電池の試料としては、加速寿命試験により得られたいろいろな劣化程度の蓄電池を使用した。また、蓄電池(補助電池)の放電性能としては、実際に使用される負荷の消費電流の時間変化パターンに準じた電流として、15Aの放電電流を10秒間流した時の、最低電池電圧として評価した。また、蓄電池の仕様上の使用可能温度範囲としては、−30℃〜+55℃であり、下限温度である−30℃での電池の放電性能を求めることとした。
【0133】
まず、試料である蓄電池を−30℃の恒温槽内に設置して、蓄電池の温度が−30℃になるのに必要な時間放置した。また、試料である蓄電池から放電が可能な様に、蓄電池の端子に、リード線の一方端を取り付け、他方端を恒温槽外に引き出しておき、電子負荷装置を接続しておく。
【0134】
また、電池電圧及び放電電流を測定するため、電圧計と電流計を接続した。電子負荷装置には、放電電流15Aで10秒間のみ放電が可能なようにあらかじめ設定した。
【0135】
そして、電子負荷装置を動作させることにより、恒温槽内の試料である蓄電池から、15Aの放電電流が10秒間流れる。このときの電池電圧と放電電流をそれぞれ電圧計と電流計で測定した。
【0136】
次に、試料である蓄電池を常温の状態として、内部抵抗値の測定を行った。測定は、市販の抵抗測定機を用いて、1kHzの交流インピーダンスにより行なった。サンプル電池の抵抗の温度特性は、あらかじめ求めてあり、この温度特性に測定した抵抗値と測定時の電池温度を代入することで、基準温度である−30℃における内部抵抗値を算出した。
【0137】
この算出した内部抵抗値と負荷電流を放電している最中の最低電圧の関係は、図16に示すように、両者の関係は非常に相関性が高く、任意の相関式を当てはめると、相関係数Rの2乗値は、0.9654となっている。また、このときに得られる任意の相関式は、次式の通りに現される。
最低電池電圧=任意の係数×内部抵抗値+定数
従って、相関式に測定した内部抵抗値を代入することで、容易に放電性能に対応する負荷電流の放電最中における最低電圧を算出することができる。さらに、蓄電池の劣化を判断する電圧しきい値(劣化判定しきい値)を設定することにより、電池が必要な電力出力が可能か否かを高精度、かつ、容易に判定することが出来る。
【0138】
図18は従来の処理フローチャートである。
一方、従来の電池容量を測定する方法では、試料である蓄電池を−30℃の恒温槽内に設置して、電池温度が−30℃になり平衡状態となるのに必要な時間放置した。
このとき、試料である蓄電池から放電が可能となる様に、蓄電池の端子に、一方端が取り付けられたリード線の他方端を恒温槽外に引き出しておき、電子負荷装置を接続しておく。
【0139】
また、電池電圧及び放電電流を測定するため、電圧計と電流計を接続した。電子負荷装置には、放電電流2.4A(12A×0.2)で電池電圧が10.5Vとなるまで放電が可能なようにあらかじめ設定した。
【0140】
そして、電子負荷装置を動作させることにより、恒温槽内のサンプル電池から、2.4Aの放電電流が連続して流れ、電池電圧が10.5Vとなるまで放電を継続した。放電開始から放電停止までの放電時間に、放電電流2.4Aを乗算することで、各々の試料である蓄電池の電池容量を求めた(ステップS21〜ステップS23)。電池容量(5時間率容量)と負荷電流を放電している最中の最低電圧の関係を、図17に示す。両者の関係は相関性が高いものの、図16の第2実施形態の場合に比較して相関性は低くなった。すなわち、任意の相関式を当てはめると、相関係数Rの2乗値は、0.9018であった。
【0141】
本従来方法によれば、電池容量を代入することで、放電性能を意味する負荷電流を放電している最中の最低電圧を求めることができるものの、実際の使用時、各種装置の駆動時や車載時においては、所定の電圧まで放電を継続することはできず、電池容量を測定することは困難であることから、他の測定方法による測定結果から電池容量を推定する必要がある。
【0142】
従って、この点においても、負荷電流を放電している最中の最低電圧を求めるにあたっては誤差が増加し、実用的ではないと考えられる。
【0143】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値としての内部抵抗値(内部抵抗成分)を所望の温度で測定し、あらかじめ求めた内部抵抗値の温度補正式、内部抵抗値の測定時の温度および測定した内部抵抗値に基づいて、測定した内部抵抗値を基準温度における内部抵抗値に変換する。
【0144】
そして、内部抵抗値と放電性能との所定の関係式及び変換後の内部抵抗値に基づいて蓄電池の放電性能を求める。そして求めた基準温度における放電性能が、劣化判定しきい値より大きい場合は、電池は必要な電力出力が可能と判断される。得られた放電性能が、劣化判定しきい値以下で有れば、電池は必要な電力出力が不可能と判断される。
【0145】
この場合において、放電性能としては、蓄電池(補助電池)の実際の負荷を想定して規定された消費電流の時間変化パターンの電流を流した時、あるいは、規定された消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した時の、最低保証電圧に対する補助電池の端子間電圧としているため、従来方法の様な電池の残存容量(例えば、5時間率容量)の低下として判断するよりも、はるかに精度良く使用時、各種装置の駆動時や車載された蓄電池(補助電池)の放電性能の低下を判断することができる。
【0146】
以上、本発明の蓄電池の劣化判定方法および蓄電池の劣化判定装置について、具体例を挙げて説明したが、本発明の蓄電池の劣化判定方法は、上述の実施形態に限られることはなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において、適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【0147】
また、例えば、図19に示すように、蓄電池の劣化判定を行うためのシステム100は、二次電池である蓄電池Bの電流、電圧、抵抗、温度等のデータを取得する検知回路101と、検知回路101から、データを受取って蓄電池Bの劣化判定を行う制御・判定装置102と、判定結果を各種態様で表示する表示部103と、を備えるようにしてもよい。
【0148】
このような構成とすることにより、検知回路101は、二次電池である蓄電池Bの電流、電圧、抵抗、温度等のデータを取得し、測定したデータを制御・判定装置102に出力する。
これにより制御・判定装置102は、データを受取って蓄電池Bの劣化判定を行い、判定結果を各種態様で表示部103に表示する。
この結果、ユーザーは、二次電池である蓄電池Bの状態を容易に把握することができる。
【0149】
この場合において、表示部103は、ランプの数や色、文字、音声等とそれらを2つ以上組合せて、二次電池である蓄電池Bの状態、例えば、交換の必要の有無や、推奨される交換時期等を示すように構成することも可能である。
さらに、表示部103は、テレビモニタ、コンピュータディスプレイ、GPS装置(カーナビゲーション等)の表示部等の画面での表示であってよい。
なお、音声のみで伝える方式であってよい。
【0150】
また、図20に示すように、蓄電池の状態を検知、判別するための検知回路101、制御・判定装置102を蓄電池の設置側に配置し、表示部103を所望の位置に設けるように構成することも可能である。
【0151】
例えば、蓄電池の状態を検知、判別するための検知回路101、制御・判定装置102を蓄電池Bの設置側に配置し、制御・判定装置102は、検知回路101からデータを受取って蓄電池Bの劣化判定を行い、判定結果データを無線装置110を介して表示部103側に送信する。
【0152】
この結果、表示部103側に設置された無線装置111を介して、コンピュータ112が判定結果データを受信し、表示部103を制御して判定結果を各種態様で表示する。
【0153】
なお、図20の蓄電池設置側に制御・判定装置102が無くてもよく、検知回路101にて得られる温度、電圧や抵抗等のデータについて無線装置110を介し表示側で受け、表示側に制御・判定装置を設ける、あるいは、コンピュータ112等にて劣化判定をするようにしてもよい。
【0154】
このように構成することにより、例えば、複数の表示部を設ける、又は、複数箇所(蓄電池製造メーカ、保守・メンテナンス拠点等)毎に設けた表示部から蓄電池(二次電池)の状態を監視し、あるいは、1箇所の表示部により、複数の蓄電池(二次電池)の監視や管理を行える。それらの際、蓄電池を区別するシリアル番号やID番号等を付与しておけば、蓄電池の個体識別を容易に行うことが可能となる。
【0155】
また、図19のような有線式、図20のような無線式等の伝送路の形態に係らず、例えば、電話回線やインターネット等のネットワークを介して蓄電池の劣化情報を電子データ(文字、画像、音声)として、携帯電話やコンピュータ等の情報端末等から見られるようにしてもよい。
【0156】
また、その他の実施例として、図21のように複数の蓄電池が離れた場所にあって、1箇所の回路を切換える、又は/及び回路制御することが可能な蓄電池劣化判定装置104において、蓄電池106(A,B,C)に回路を切換えて劣化判定をすることができる。その際、電気的情報(電圧、電流、抵抗等)は離れた場所の蓄電池劣化判定装置で判定可能であるが、温度測定は蓄電池の近傍や蓄電池106毎に温度センサ105を備えることが望ましい。このようにすれば、例えば、観測装置や通信装置毎に設置した複数の蓄電池の劣化判定を行える。また、車両においても座席の下や前後の収納スペース等に複数個設置した場合に、少なくとも1つの蓄電池の劣化判定を行うことができる。さらに、1箇所の蓄電池劣化判定装置やコンピュータで管理することもできる。
【0157】
また、その他の実施例として、図22のように複数の蓄電池106のうち、1つは蓄電池劣化判定装置107が蓄電池106aの近傍にある。他の1つは蓄電池劣化判定装置108が蓄電池106bに取付けられるものである。なお、図22では残る蓄電池106cは劣化判定をしないものである。
【0158】
また、図22では、装置・電源制御装置109には、GPS(Global Positioning System)装置110、照明111、稼動部112等が接続される。装置・電源制御装置109よって電源を供給又は/及び制御をする。例えば、照明111の点灯・消灯、稼動部112の動作制御やエネルギ消費量の制御等をするものである。なお、GPS装置110は位置や標高の他に時間も検出できるので、装置・電源制御装置109他の時刻合わせに利用することができる。このようにすれば、装置・電源制御装置109によって複数の蓄電池106を管理し、表示部103aに蓄電池106の劣化状態を表示することができる。さらに、装置・電源制御装置109、蓄電池劣化判定装置107,108や図示しないコンピュータ等にはコネクタや無線(赤外線等)を介して外部機器と情報の送受信ができ、劣化判定情報の授受や制御プログラムのインストールや更新ができるようにしてよい。また、表示部103は、装置・電源制御装置109や蓄電池劣化判定装置107,108に、液晶画面(LCD)やランプ等が付いている、または、内蔵する構成であってよい。
【符号の説明】
【0159】
1 システム
2 電力源
3 蓄電池
3A 主蓄電池
3B 予備蓄電池
4 負荷
5 電力制御装置
6 蓄電池劣化判定装置
51 充電電力検出装置
52 警報発生装置
61 インピーダンス測定手段
62 状態検知手段
63 温度センサ
100 システム
101 検知回路
102 制御・判定装置
103 表示部
B 蓄電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の内部抵抗成分の測定結果に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、
前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、
前記内部抵抗成分の温度による変化を抵抗温度補正係数としてあらかじめ求め、
前記蓄電池の内部抵抗成分および該内部抵抗成分測定時の前記蓄電池の温度を測定し、
前記測定された内部抵抗成分の値を、前記抵抗温度補正係数に基づいて前記基準温度における内部抵抗成分の値に変換し、
該基準温度における内部抵抗成分の値を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定し、
前記劣化判定しきい値は、前記負荷の動作に必要な最低電圧となる内部抵抗成分の値以下の値とする
ことを特徴とする蓄電池の劣化判定方法。
【請求項2】
蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、
あらかじめ2以上の温度範囲を定め、該温度範囲ごとに任意の基準温度を設定し、
前記蓄電池の劣化状態を判定する際に測定される測定温度を、前記温度範囲に対応する少なくとも1つの基準温度を選択し、
前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、
前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、
あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換し、
相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求め、
求めた前記基準温度における放電性能を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定し、
前記相関値は、前記蓄電池の内部抵抗成分の直流抵抗値、交流インピーダンス値あるいは前記交流インピーダンスの逆数である交流コンダクタンス値の導電値であり、
前記放電性能は、負荷の消費電流の時間変化パターンに相当する電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧、あるいは、負荷の消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧である
ことを特徴とする蓄電池の劣化判定方法。
【請求項3】
蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、
前記蓄電池の劣化状態を判定する際に測定される測定温度と、該測定温度の値から2以上の基準温度を設定し、
前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、
前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、
あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換し、
相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求め、
前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、
前記2以上の基準温度における値を比較又は互いの相関関係を判定して前記蓄電池の劣化状態を判定し、
前記相関値は、前記蓄電池の内部抵抗成分の直流抵抗値、交流インピーダンス値あるいは前記交流インピーダンスの逆数である交流コンダクタンス値の導電値であり、
前記放電性能は、負荷の消費電流の時間変化パターンに相当する電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧、あるいは、負荷の消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧である
ことを特徴とする蓄電池の劣化判定方法。
【請求項4】
蓄電池が負荷に接続された構成を含むシステムにおける前記蓄電池の劣化状態を、該蓄電池の放電性能に基づいて判定する蓄電池の劣化判定方法であって、
前記蓄電池の劣化状態を判定する温度を基準温度としてあらかじめ設定し、
前記蓄電池の放電性能に相関関係を有する相関値を所望の温度で測定し、
あらかじめ求めた前記相関値の温度補正式、前記相関値の測定時の温度および前記相関値に基づいて、前記相関値を前記基準温度における相関値に変換し、
相関値と前記放電性能との所定の関係式及び変換後の前記相関値に基づいて前記蓄電池の放電性能を求め、
求めた前記基準温度における放電性能を、あらかじめ設定した劣化判定しきい値と比較して前記蓄電池の劣化状態を判定し、
前記相関値は、前記蓄電池の内部抵抗成分の直流抵抗値、交流インピーダンス値あるいは前記交流インピーダンスの逆数である交流コンダクタンス値の導電値であり、
前記放電性能は、負荷の消費電流の時間変化パターンに相当する電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧、あるいは、負荷の消費電流の時間変化パターンに準じた電流を流した際の前記蓄電池の端子間電圧である
ことを特徴とする蓄電池の劣化判定方法。
【請求項5】
2つ以上の蓄電池のうち、少なくとも1つの蓄電池について劣化状態を判定し、前記1つの蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態であることを表示することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蓄電池の劣化判定方法。
【請求項6】
少なくとも2つの前記蓄電池の劣化状態を判定し、蓄電池が劣化の見込まれる状態又は劣化状態である場合、充電又は交換を要する要対応蓄電池の情報と、継続して使用可能な継続使用蓄電池の情報とを表示する表示部と、前記蓄電池の履歴を記録する記憶部を有し、少なくとも充電して使用する又は継続して使用可能する蓄電池の履歴を保持、又は/及び、継続して判定するプログラムを有する制御・判定部を備える
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蓄電池の劣化判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−223968(P2010−223968A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106640(P2010−106640)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2004−188148(P2004−188148)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【復代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
【Fターム(参考)】