説明

蓄電池

【課題】複数の蓄電部を有し、蓄放電の制御が容易な蓄電池を提供する。
【解決手段】蓄電池10は、蓄電池10は複数のバンク11を有する。複数のバンク11のそれぞれは、放電用端子12および蓄電用端子13にそれぞれ電気的に接続される。また複数のバンク11と2つの端子12,13との接続は、切替部31a〜31cによって切り替えられる。BMU30は、放電する場合には、1つまたは複数のバンク11が放電するように、切替部31a〜31cを制御する。またBMU30は、蓄電する場合には、1つまたは複数のバンク11に蓄電するように、切替部31a〜31cを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバンクを有する蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄放電特性が異なる2種類のバッテリを並列に接続し、互いの特徴を活かしてバッテリ全体として小型化を図る技術が開示されている。また特許文献2には、2種類のバッテリを電動車両に搭載して、走行状況に応じていずれのバッテリを放電するか制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−364350号公報
【特許文献2】特開2006−79987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1および特許文献2では、異なる種類のバッテリを組み合わせていかに放電するかという技術が開示されているが、充電(蓄電)に関してはなんら開示されていない。さらに蓄電と放電とを同時に行うことに関してもなんら開示されていない。したがって複数のバッテリを組み合わせたとき、どのように各バッテリの蓄放電を制御するのかが問題となる。
【0005】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、複数の蓄電部を有し、蓄放電の制御が容易な蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
請求項1に記載の発明では、外部へ放電するための放電用端子(12)と、
蓄電するための蓄電用端子(13)と、
放電用端子および蓄電用端子に対してそれぞれ選択的に通電接続されることによって、蓄電用端子から供給される電力を蓄電し、蓄電している電力を放電用端子へ放電する複数の蓄電部(11,11a〜11c)と、
通電接続する端子を放電用端子および蓄電用端子のいずれかに切替える場合と、蓄電部をいずれの端子にも通電接続しない場合とに制御する切替手段(31a〜31c)と、
切替手段を制御し、複数の蓄電部の蓄電および放電を個別に制御する制御手段(30)と、を含み、
制御手段は、
放電する場合には、1つまたは複数の蓄電部が放電するように、切替手段を制御し、
蓄電する場合には、1つまたは複数の蓄電部に蓄電するように、切替手段を制御することを特徴とする蓄電池である。
【0008】
請求項1に記載の発明に従えば、蓄電池は複数の蓄電部を有する。複数の蓄電部のそれぞれは、放電用端子および蓄電用端子にそれぞれ選択的に通電接続される。また各蓄電部と放電用端子および蓄電用端子との接続は、切替手段によって切り替えられる。1つの蓄電部の接続状態として、放電用端子と接続されている状態と、蓄電用端子に接続されている状態と、いずれの端子とも接続されていない状態とがある。制御手段は、切替手段を有し、蓄電部の蓄電量に応じて、蓄放電を切り替える。具体的には、制御手段は、放電する場合には、1つまたは複数の蓄電部が放電するように、切替手段を制御する。したがって、たとえば1つの蓄電部だけを放電用端子に接続するように切替手段を制御し、他の蓄電部は放電用端子に接続しないように制御する。これによって1つの蓄電部から放電することができる。また制御手段は、蓄電する場合には、1つまたは複数の蓄電部に蓄電するように、切替手段を制御する。したがって、たとえば1つの蓄電部だけを蓄電用端子に接続するように切替手段を制御し、他の蓄電部は蓄電用端子に接続しないように制御する。これによって1つの蓄電部に蓄電することができる。また放電する場合には、2つ以上の蓄電部を放電用端子に並列に接続するように切替手段を制御することができる。このように制御するので、たとえば蓄電と放電とを同時に実行する必要がある場合には、1つの蓄電部を蓄電用端子に接続し、他の1つの蓄電部を放電用端子に接続するように制御することによって、蓄電と放電とを同時に実行することができる。したがって本発明の蓄電池では、複数の蓄電部を有するが、各蓄電部の蓄放電を個別に制御することができる。これによって蓄電池の蓄放電の制御を容易にすることができる。
【0009】
また請求項2に記載の発明では、蓄電部の電池状態として、少なくとも蓄電量を監視する監視手段(30)をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に従えば、蓄電部の電池状態として、少なくとも蓄電量を監視する監視手段をさらに含む。蓄電部の蓄電量(SOC)を監視する場合、蓄放電特性のノミナル電圧(平均電圧)付近で蓄放電を繰り返すと、電池電圧に変化が少ないため電圧の変化で蓄電量が把握できない。そのため蓄電量の把握にはクーロンカウント法がある。しかしクーロンカウント法(蓄電池へ出入りした電流(電荷)の積算値)では、SOCの推定値が実SOCとずれてくるという問題がある。この問題を解決するために、蓄電が完了する蓄電終止電圧、および放電が完了する放電終止電圧になった時点でSOCの値をリセットしている。本発明では、複数の蓄電部によって蓄電池が構成されるので、蓄電池の容量は全ての蓄電部の容量の総和となる。1つの蓄電部のみで構成される従来の蓄電池に比べて、合計の電池容量が同じあれば、本発明の各蓄電部の電池容量は従来の1つの蓄電部の容量よりも少なくなる。電池容量が少なくなれば蓄電終止電圧および放電終止電圧に達する機会が増え、SOCの値がリセットされる機会が増える。したがってSOCの検出精度を向上することができる。したがって本発明では、SOCを高精度に監視することができる。
【0011】
さらに請求項3に記載の発明では、監視手段は、放電中の蓄電部が予め定める予定蓄電量以下になったか否かを監視し、
制御手段は、放電中の蓄電部が予定蓄電量以下になった場合には、放電中の蓄電部だけでなく、放電していない他の蓄電部のうち1つまたは複数の蓄電部も放電用端子に並列に接続して、同時に放電するように切替手段を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明に従えば、制御手段は、放電中の蓄電部が予定蓄電量以下になった場合には、放電中の蓄電部だけでなく、放電していない他の蓄電部のうち1つまたは複数を同時に放電するように切替手段を制御する。放電中の蓄電部の蓄電量が少なくなり、放電不可になった場合には、放電する蓄電部を切替える必要がある。しかし放電不可になるまで放電を継続し、放電不可になった後、他の蓄電部に切替えると切替間の瞬間的な電圧降下が発生するという問題がある。そこで本発明では、蓄電量が予定蓄電量以下になり少なくなった場合には、他の蓄電部も並列に接続して、同時に放電するように制御される。したがって切替時に一時的に並列に接続された2つの蓄電部から同時に放電することによって、瞬間的な電圧降下を防ぎ、放電電圧を安定化することができる。
【0013】
さらに請求項4に記載の発明では、複数の蓄電部のうち、少なくとも2つの蓄電部は放電用端子に並列に接続可能であり、
複数の蓄電部のうち、少なくとも2つの蓄電部は電気的に直列に接続可能であり、
直列に接続可能な蓄電部の接続を、直列接続状態と非直列接続状態とで切り替える直列手段(31c)をさらに含み、
制御手段は、必要とされる電池電圧に応じて、直列手段を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明に従えば、複数の蓄電部のうち、少なくとも2つの蓄電部は電気的に直列に接続される。直列手段によって、直列に接続された蓄電部からの電圧を高めることができる。制御手段は、必要とされる電池電圧に応じて、直列手段を制御する。制御手段は、たとえば要求される電池電圧が1つ蓄電部の電圧では不足していると判断した場合には、直列手段が直列接続状態となるように制御し、直列接続状態となった複数の蓄電部から放電するように切替手段を制御する。したがって電池電圧が不足している場合には、直列に接続することによって不足分を補うことができる。また直列接続状態であるか否かを制御することによって、電池電圧を可変にすることができる。これによって電圧が異なるシステムにも対応することができる。したがって負荷ならびに用途の汎用性を高めることができる。
【0015】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の蓄電池10を簡略化して示す模式図である。
【図2】蓄電池10の一例を示す模式図である。
【図3】蓄電池10の他の例を示す模式図である。
【図4】充電システム20を簡略化して示すブロック図である。
【図5】BMU30の放電における処理を示すフローチャートである。
【図6】SOCとOCVとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図6を用いて説明する。図1は、第1実施形態の蓄電池10を簡略化して示す模式図である。蓄電池10は、たとえばリチウムイオン二次電池等からなるバンク11を複数組み合わせた集合体である。蓄電池10は、直流電力を蓄電したり、蓄電された直流電力を放電したりすることが可能となっている。蓄電池10は、外部へ放電するための放電用端子12と、蓄電するための蓄電用端子13とを有する。蓄電池10は、複数のバンク11が筐体14内に収納されて構成されている。筐体14は、直方体状ケースであり、たとえば樹脂および鋼板からなる。
【0018】
各バンク11は、電気絶縁性樹脂の外装ケース15によって覆われる。外装ケース15から露出するように、正極端子16および負極端子17が設けられる。蓄電池10が有するバンク11の個数は、変更可能である。図2は、蓄電池10の一例を示す模式図である。図3は、蓄電池10の他の例を示す模式図である。図1〜図3に示すように、筐体14内のバンク11の数は、適宜変更可能である。たとえば、他の装置で使用条件を満足しないバンク11を、蓄電池10に追加してリサイクル利用することも可能である。バンク11の個数を増加すると、蓄電池10全体として電池容量が増加する。筐体14内に新たなバンク11を設置できる設置スペースがあれば、設置スペース内でバンク11の数を増減させることができる。バンク11の数を増減させても、見かけ上は蓄電池10として同じであるので、蓄電池10外の構成・制御を変更する必要がない。
【0019】
図4は、充電システム20を簡略化して示すブロック図である。充電システム20は、電力供給契約に基づいて電力供給元の電力系統から供給される電力を、建物内の交流電力線21に接続された電気負荷に給電可能なシステムである。電力会社の電力系統から供給される購入電力(系統電力)は、交流電力線21によって建物内に導入される。充電システム20は、たとえば住宅である建物内に配線された交流電力線21と、太陽光によって発電を行う太陽光発電機(図示せず)と、交流電力線21に電気的に接続された一般負荷(図示せず)と、各部を制御する電子制御装置(Electronic Control Unit:略称ECU)24と、電力を変換するパワーコンディショナ(略称パワコン)25と、交流電力線21にパワコン25を介して接続された蓄電池10と、車載用蓄電池22を充電するための充電スタンド23と、を備えている。車両は、比較的容量の大きな車載用蓄電池22を搭載した車両である。
【0020】
太陽光発電機は、太陽光発電手段であって、発電した太陽光電力をパワコン25に系統外電力として供給する。太陽光発電機は、建物の屋根に太陽光パネル(図示せず)を設け、太陽光を利用して発電するものである。
【0021】
パワコン25は、交流電力線21に電気的に接続される。またパワコン25は、太陽光発電機からの直流電力を交流電力に変換して、交流電力線21へ供給する。またパワコン25は、蓄電池10と電気的に接続される。パワコン25は、系統電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を蓄電池10へ蓄電用の電力として供給する。またパワコン25は、蓄電池10が放電した直流電力を交流電力に変換して、交流電力線21へ供給する。またパワコン25は、充電スタンド23とも電気的に接続される。パワコン25は、系統電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を車載用蓄電池22へ充電を含む負荷機器の電力として供給する。またパワコン25は、蓄電池10からの直流電力を昇圧し、昇圧した直流電力を車載用蓄電池22へ充電を含む負荷機器の電力として供給する。パワコン25は、蓄電池10の最大放電電圧および最大放電電流を許容するように構成される。
【0022】
次に、充電スタンド23に関して説明する。充電スタンド23は、たとえば建物の外部に設置されている。充電スタンド23は、パワコン25と電気的に接続される。充電スタンド23は、パワコン25からの電力を充放電コネクタを介して車両に搭載される車載用蓄電池22へ供給する。
【0023】
充電スタンド23には、外部に延出する充放電ケーブル(図示せず)が設けられる。充放電ケーブルの先端部には、接続端子部に相当する充放電コネクタが取付けられている。また充電スタンド23内には、図示は省略するが、ECU24と通信する通信ユニットおよび充電制御する制御装置などが設けられる。制御装置は、通信ユニットによってECU24と通信することにより、車載用蓄電池22の充放電を制御する。
【0024】
車両には、図示は省略するが、充放電コネクタの差込口が設けられている。この差込口に充電スタンド23の充放電コネクタを差し込んで接続することにより、車載用蓄電池22を充電することが可能となっている。
【0025】
充電スタンド23には、報知手段に相当する表示部、各部を操作する操作スイッチ23aおよび安全確保のための非常停止ボタンを備えている。表示部には、たとえば車載用蓄電池22の残量や充電状態などを表示する。また操作スイッチ23aを操作することによって、充電開始および充電終了を指示する。
【0026】
充放電コネクタを車両の差込口に差し込んだ状態で、充電スタンド23を操作して充電の開始操作をすると、要求電流が車両から充電スタンド23に与えられる。充電スタンド23の制御装置は、要求電流をECU24に送信する。すると、ECU24がパワコン25を制御して要求電流に対応した電流が充電スタンド23に供給される。そして充電スタンド23は、パワコン25からの供給電流を充放電コネクタを通して車載用蓄電池22に供給する。これによって車載用蓄電池22が充電される。
【0027】
次に、ECU24に関して説明する。ECU24は、各部を制御する充電用制御手段としての機能も有する。ECU24は、パワコン25および充電スタンド23と通信可能に電気的に接続される。ECU24は、入力された指示に従って、各部が動作するように各部に制御指令を与える。
【0028】
ECU24は、構成の図示は省略するが、各種信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいて各部を制御する制御信号を出力する出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、各種のデータ、演算結果等を記憶する記憶手段としてのロム(Read-Only Memory:略称ROM)、ラム(Random Access Memory:略称RAM)等を内蔵し、あらかじめ設定された定数や変数および制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有し、各処理を実行する。ECU24は、たとえばパワコン25の電力供給先の切替えを制御する。
【0029】
次に、蓄電池10に関して説明する。蓄電池10は、BMU30(Battery Management Unit:電池管理ユニット)30、複数のバンク11a〜11c、複数の切替部31a〜31c、複数のダイオード36a,36bを含んで構成される。図4に示す蓄電池10では、3つのバンク11a〜11cを有し、それぞれ第1バンク11a、第2バンク11b、および第3バンク11cと称する。蓄電池10は、パワコン25と蓄電用配線32および放電用配線33で電気的に接続される。蓄電池10の放電用端子12には、放電用配線33が接続される。蓄電池10の蓄電用端子13には、蓄電用配線32が接続される。放電用端子12から、蓄電池10内には放電用配線33が延びている。また蓄電用端子13から、蓄電池10内には蓄電用配線32が延びている。
【0030】
BMU30は、各切替部31a〜31cを制御する。またBMU30は、各バンク11a〜11cの電池状態を監視する監視手段としての機能、ならびに電圧の変化や電圧のばらつき、および電荷の移動量を計算する計算手段としての機能も有する。BMU30は、ECU24と同様に入力回路、マイクロコンピュータ、および出力回路を備えている。マイクロコンピュータが有する記憶手段には、各バンク11a〜11cの電池状態がデータとして随時蓄積されている。蓄積される電池状態のデータは、たとえば各バンク11a〜11cの電池電圧、畜放電電流および温度などである。BMU30は、記憶手段に記憶されるデータを用いて、各バンク11a〜11cのSOCおよび各バンク11a〜11cの蓄放電能力を把握している。BMU30は、パワコン25に供給可能な電力情報を送信する。
【0031】
第1バンク11aおよび第2バンク11bは、蓄電用配線32および放電用配線33と選択的に通電接続可能である。第1バンク11aの端子には、第1切替部31aが設けられる。第1切替部31aは、第1バンク11aの端子を、蓄電用配線32に通電接続(以下、単に「接続」ということがある)している状態、放電用配線33に接続している状態、いずれの配線とも接続していない状態とを切り替える。第1切替部31aは、BMU30によって制御される。図4では、第1切替部31aは、第1バンク11aの端子と蓄電用配線32とを接続している。
【0032】
第2バンク11bの構成も第1バンク11aと同様である。第2バンク11bの端子には、第2切替部31bが設けられる。第2切替部31bは、第2バンク11bの端子を、蓄電用配線32に接続している状態、放電用配線33に接続している状態、いずれの配線とも接続していない状態とを切り替える。第2切替部31bは、BMU30によって制御される。図4では、第2切替部31bは、第2バンク11bの端子と放電用配線33とを接続している。
【0033】
第3バンク11cは第1バンク11aと接続するための端子35を有する。また第3バンク11cの端子35には、第3切替部31cが設けられる。第3切替部31cは、第3バンク11cの端子35を、第1バンク11aに直列接続している直列接続状態と、第1バンク11aと直列に接続していない非直列接続状態とを切り替える直列手段である。第3切替部31cは、BMU30によって制御される。図4では、第3切替部31cは、第3バンク11cの端子35と接続していない。したがって第1バンク11aと第3バンク11cとは、電気的に直列に接続可能に構成される。
【0034】
また蓄電池10内に設けられるダイオード36a,36bは、電流の逆流を防止するために、各バンク11の端子に設けられる。蓄電用のダイオード36aは、パワコン25から各バンク11へ電流が流れることを許可するように蓄電用配線32に設けられる。また放電用のダイオード36bは、第1バンク11aおよび第2バンク11bからパワコン25へ電流が流れることを許可するように放電用配線33に設けられる。
【0035】
次に、BMU30の制御に関して説明する。BMU30は、蓄電する場合、いずれか1つのバンク11a〜11cを蓄電用配線32と接続するように各切替部31a〜31cを制御する。したがって、たとえば第1バンク11aを蓄電用配線32と接続した場合には、第2バンク11bおよび第3バンク11cは蓄電用配線32とは接続しないように各切替部31a〜31cを制御する。これによって1つのバンク11に対して蓄電することができる。
【0036】
次に、BMU30の制御に関して説明する。図5は、BMU30における処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、繰返し実行される処理である。また図5で示す第1バンク11aは、第1バンク11aと第3バンク11cとが直列接続状態にある場合も第1バンク11aとして記載している。したがって第1バンク11aと第3バンク11cとの接続状態は、図5のフローが開始される前に決定しており、第1バンク11aの蓄電中または放電中に第3切替部31cが切替制御されることはない。第1バンク11aと第3バンク11cとが直列接続状態にある場合に、第1バンク11aを蓄電すると第3バンク11cも同時に蓄電され、第1バンク11aを放電すると第3バンク11cも放電する。
【0037】
フローが開始されると、ステップS1では、第1バンク11aが放電中であるか否かを判断し、放電中の場合には、ステップS2に移り、放電中でない場合には、ステップS8に移る。ステップS2では、放電している第1バンク11aのSOCが20%以下であるか否かを判断し、20%以下である場合には、ステップS3に移り、20%以下でない場合には、SOCに余裕があるので本フローを終了する。
【0038】
ステップS3では、第2バンク11bが蓄電中であるか否かを判断し、蓄電中の場合には、ステップS7に移り、蓄電中でない場合には、ステップS4に移る。ステップS7では、第1バンク11aの放電を中止し、本フローを終了する。ステップS7では、放電中の第1バンク11aのSOCが20%以下と少ないが、第2バンク11bが蓄電中であるので、第2バンク11bからの放電することができない。したがって第1バンク11aの放電を中止する処理を実行している。
【0039】
ステップS4では、第2バンク11bが蓄電中でないので、第2切替部31bを放電用端子12に接続するように切替え、ステップS5に移る。ステップS5では、ステップS4の処理の実行から所定時間(例えば、1秒)が経過したか否かを判断し、1秒を経過している場合には、ステップS6に移り、経過するまでステップS5の処理を繰返す。したがってステップS5における処理では、SOC20%以下のバンク11と、第2バンク11bとが同時に放電している。
【0040】
ステップS6では、第1切替部31aを蓄電用端子13に接続するように切替え、本フローを終了する。このまま放電を続けるとSOC20%以下の第1バンク11aの蓄電量がなくなり放電できなくなるが、既に第2バンク11bが放電しているので、第1バンク11aは蓄電するために制御される。
【0041】
ステップS8では、第1バンク11aが放電中でないので、第1バンク11aが蓄電中であるか否かを判断し、蓄電中の場合には、ステップS9に移り、蓄電中でない場合には、蓄電中でも放電中でもないのでSOCの制御が不要として、本フローを終了する。
【0042】
ステップS9では、第1バンク11aは蓄電中であるので、SOCが100%になったか否かを判断し、100%の場合には、ステップS10に移り、100%でない場合には、本フローを終了する。ステップS10では、SOCが100%であるので、蓄電を終了するように第1切替部31aを制御し、本フローを終了する。
【0043】
このように第1バンク11aが放電中に残量が少なくなり、第2バンク11bが蓄電中でない場合には、第2バンク11bに放電が切り替えられる。そして切り替える際には、1秒経過するまで第1バンク11aと第2バンク11bとが同時に放電するよう、第1バンク11aおよび第2バンク11bの電圧の平均値および昇圧、降圧を考慮した上で制御される。これによって切り替える際に、瞬断を防ぐことができる。
【0044】
また第2バンク11bの処理も、図5に示す第1バンク11aの処理と同様の処理で実行される。具体的には、図5に示す「第1バンク」と「第2バンク」との記載を入れ替えることによって、第2バンク11bの処理となる。
【0045】
BMU30の他の制御として、たとえば第1バンク11aが蓄電中に、放電する場合には、第2バンク11bを放電するように第2切替部31bを制御する。これによって蓄電池10全体としては、蓄電しながら放電することができる。したがってBMU30は、蓄電中に放電する場合には、蓄電していないバンク11を放電するように制御する。同様に放電中に蓄電する場合には、放電していないバンク11を蓄電するように制御する。
【0046】
次に、他のバンク11と同時に放電するタイミングに関して説明する。図6は、1つのバンク11の単セル当たりのSOCとOCV(Open Current Voltage:開放電圧)との関係を示すグラフである。OCVとSOCとは相関関係がある。SOCが約20%以上80%以下では、OCVは平均電圧でほぼ一定であり、たとえば3.2Vである。したがってBMU30は、SOCを算出するため、クーロンカウント法(バンク11へ出入りした電荷(電流)の積算値)に基づいて、SOCを推定する。このSOCの推定値が20%以下になると、推定値の誤差も考慮して、他のバンク11への切替えタイミングと判断する。このように平均電圧の領域で早めに切り替えを行うことによって、切り替え時の電圧低下を最小限に抑えることができる。したがって前述のように、SOCが20%以下になると、BMU30は、他のバンク11も同時に放電するように切替部31a〜31cを制御する。
【0047】
以上説明したように本実施形態の蓄電池10は、蓄電池10は複数の蓄電部として複数のバンク11を有する。複数のバンク11のそれぞれは、放電用端子12および蓄電用端子13にそれぞれ電気的に接続される。また複数のバンク11と2つの端子12,13との接続は、切替手段である切替部31a〜31cによって切り替えられる。1つのバンク11の接続状態として、放電用端子12と接続されている状態と、蓄電用端子13に接続されている状態と、いずれの端子12,13とも接続されていない状態とがある。制御手段であるBMU30は、切替部31a〜31cを制御し、各バンク11の蓄電量に応じて蓄放電を制御する。具体的には、BMU30は、放電する場合には、1つまたは複数のバンク11が放電するように、切替部31a〜31cを制御する。したがって、たとえば1つのバンク11だけを放電用端子12に接続するように切替部31a〜31cを制御し、他のバンク11は放電用端子12に接続しないように制御する。これによって1つのバンク11から放電することができる。またBMU30は、蓄電するには、1つまたは複数のバンク11に蓄電するように、切替部31a〜31cを制御する。したがって、たとえば1つのバンク11だけを蓄電用端子13に接続するように切替部31a〜31cを制御し、他のバンク11は蓄電用端子13に接続しないように制御する。これによって1つのバンク11に蓄電することができる。また放電する場合には、2つ以上のバンク11を放電用端子12に並列に接続するように切替部31a〜31cを制御することができる。このように制御するので、たとえば蓄電と放電とを同時に実行する必要がある場合には、第1バンク11aを蓄電用端子13に接続し、第2バンク11bを放電用端子12に接続するように制御することによって、蓄電と放電とを同時に実行することができる。したがって本実施形態の蓄電池10では、複数のバンク11を有するが、各バンク11の蓄放電を個別に制御することができる。これによって蓄電池10の蓄放電の制御を容易にすることができる。
【0048】
また本実施形態では、BMU30は、複数のバンク11のそれぞれの電池状態のうち、少なくとも蓄電量を監視する監視手段として機能する。バンク11のSOCを監視する場合、蓄放電特性の平均電圧(図6では3.2V)付近で蓄放電を繰り返すと、電池電圧に変化が少ないため電圧の変化で蓄電量の正確な把握できない。そのため蓄電量の把握にはクーロンカウント法がある。しかしクーロンカウント法では、SOCの推定値が実SOCとずれてくるという問題がある。この問題を解決するために、蓄電が完了する蓄電終止電圧(図6では345V)、および放電が完了する放電終止電圧(図6では2.5V)になった時点でSOCの値をリセットしている。本実施形態では、複数のバンク11によって蓄電池10が構成されるので、蓄電池10の容量は全てのバンク11の容量の総和となる。1つのバンクのみで構成される従来の蓄電池に比べて、合計の電池容量が同じあれば、本実施形態の各バンク11の電池容量は従来の1つのバンクの電池容量よりも少なくなる。電池容量が少なくなれば蓄電終止電圧および放電終止電圧に達する機会が増え、SOCの値がリセットされる機会が増える。したがってBMU30は、SOCの検出精度を向上することができる。
【0049】
さらに本実施形態では、BMU30は、放電中のバンク11が予定蓄電量であるSOC20%以下になった場合には、放電中のバンク11だけでなく、放電していない他のバンク11のうち1つまたは複数を同時に放電するように切替部31a〜31cを制御する。放電中のバンク11の蓄電量が少なくなり、放電不可になった場合には、放電するバンク11を切替える必要がある。しかし放電不可になるまで放電を継続し、放電不可になった後、他のバンク11に切替えると切替間の瞬間的な電圧降下が発生するという問題がある。そこで本実施形態では、BMU30は、図5に示すようにSOCが20%以下になり少なくなった場合には、並列に接続されている他のバンク11も同時に放電するように制御する。したがって切替時に一時的に並列に接続された2つのバンク11から同時に放電することによって、瞬間的な電圧降下を防ぎ、放電電圧を安定化することができる。
【0050】
また本実施形態では、複数のバンク11のうち、第1バンク11aと第3バンク11cは電気的に直列に接続される。直列手段である第3切替部31cによって、直列に接続されたバンク11の接続が直列接続状態の場合には、電圧を高めることができる。BMU30は、必要とされる電池電圧に応じて第3切替部31cを制御し、たとえば放電に要求される電池電圧が1つバンク11の電圧では不足している判断した場合には、図6に示すように第3切替部31cが直列接続状態となるように制御する。そして、直列接続状態となった第1バンク11aおよび第3バンク11cから放電するように切替部31a〜31cを制御する。したがって電池電圧が不足している場合には、直列に接続することによって不足分を補うことができる。また直列接続状態か否かを制御することによって、電池電圧を可変にすることができる。これによってパワコン25からの電圧が異なるシステムにも対応することができる。したがって負荷および用途の汎用性を高めることができる。
【0051】
本実施形態の作用および効果を換言すると、蓄電池10を複数の小容量蓄電池であるバンク11を組み合わせて構成し、大容量化を実現することができる。また蓄電池10をバンク構成にするにあたり、以下の利点がある。
【0052】
蓄電池10の蓄放電を繰り返す際、大容量蓄電池1つで構成するのに比べバンク11を構成する小容量蓄電池は、完全放電および満蓄電される頻度が高くなり、SOCの演算を一度リセットできるため、SOCの推定精度が向上することができる。
【0053】
また蓄電池10の容量アップをする際も、バンク11を追加するのみで実現でき、システム全体の見直しも不要なことから、容易である。換言すると、バンク11を増減させても、見かけ上電池パックとしては同じであるため、蓄電池10外の構成は変更する必要がない。
【0054】
また複数のバンク11のそれぞれが放電用端子12および蓄電用端子13に並列に接続可能な構成であるため、1つの蓄電池10で蓄放電が同時に可能となる。これにより、蓄電池10の電力を車両の車載用蓄電池22へ充電しつつ、太陽光発電で発電した電力を蓄電池10に蓄電することができるため、自然エネルギーを最大限に活用することができる。換言すると、蓄電池10から車載用蓄電池22へ蓄電している時も太陽光発電電力を無駄にすることなく蓄電池10に蓄電することができる。将来的には、購入電力料金を減らすことができ、系統電力への負荷低減効果も期待することができる。
【0055】
一方、バンク構成の欠点として、放電時のバンク11切り替えで、瞬時的な電圧降下が発生する点が挙げられるが、前述のように瞬間的に2つのバンク11を同時に放電し、電圧が安定化した時点でバンク11を切り替えすることで、瞬断を防ぐことができる。
【0056】
このように蓄電池10はバンク構成であるが、ECU24およびパワコン25は、蓄電池10がバンク構成であるかどうかは認識しなくても良い。したがって本実施形態の蓄電池10の利点は、制御側の立場で蓄電池10を見たときに、制御が従来の蓄電池と変わらずに使いやすい点がある。
【0057】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0058】
前述の第1実施形態では、蓄電池10は充電システム20に用いられる構成であるが、このようなシステムの適用に限るものではなく、他のシステムに用いてもよい。
【0059】
前述の第1実施形態では、各バンク11の蓄放電特性は互いに等しいが、互いに等しい構成に限るものではなく、各バンク11がそれぞれ異なる蓄放電特性を有していてもよい。
【0060】
また前述の第1実施形態では、直列に接続されるバンク11は、第1バンク11aおよび第3バンク11cであったが、これに限るものではなく、第2バンク11bと第1バンク11aとを直列に接続可能な構成であってもよく、3つ以上を直列に接続する構成であってもよい。
【0061】
また前述の第1実施形態では、直列に接続されるバンク11を有するが、直列に接続されるバンク11を有しない構成であってもよい。したがって全てのバンク11が並列に接続されるように構成してもよい。
【0062】
また前述の第1実施形態では、各バンク11を個別に切替え制御しているが、個別に切替る制御には、グループ毎に切替制御する場合も含まれる。たとえばバンク11の数が多く、2個のバンク11を1つのグループとして、3つのグループを構成し、合計6個のバンク11からなる蓄電池10の場合には、各グループ毎に切替制御してもよい。またグループを構成するバンク11は、固定してもよく、固定せずに変動するようにしてもよい。
【0063】
前述の第1実施形態では、第1バンク11aと第3バンク11cとを直列に接続するかは、第1バンク11aが蓄電中および放電中には実施しないように制御しているが、このような制御に限るものではなく、蓄電中および放電中に第3切替部31cの接続状態を切り替えても良い。
【符号の説明】
【0064】
10…蓄電池
11…バンク(蓄電部)
11a…第1バンク(蓄電部)
11b…第2バンク(蓄電部)
11c…第3バンク(蓄電部)
12…放電用端子
13…蓄電用端子(蓄電用端子)
30…BMU(制御手段,監視手段)
31a…第1切替部(切替手段)
31b…第2切替部(切替手段)
31c…第3切替部(直列手段)
32…蓄電用配線
33…放電用配線
35…第3バンク11cの端子
36a…充電用のダイオード
36b…放電用のダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部へ放電するための放電用端子(12)と、
蓄電するための蓄電用端子(13)と、
前記放電用端子および前記蓄電用端子に対してそれぞれ選択的に通電接続されることによって、前記蓄電用端子から供給される電力を蓄電し、蓄電している電力を前記放電用端子へ放電する複数の蓄電部(11,11a〜11c)と、
前記通電接続する端子を前記放電用端子および前記蓄電用端子のいずれかに切替える場合と、前記蓄電部をいずれの前記端子にも通電接続しない場合とに制御する切替手段(31a〜31c)と、
前記切替手段を制御し、前記複数の蓄電部の蓄電および放電を個別に制御する制御手段(30)と、を含み、
前記制御手段は、
放電する場合には、1つまたは複数の蓄電部が放電するように、前記切替手段を制御し、
蓄電する場合には、1つまたは複数の蓄電部に蓄電するように、前記切替手段を制御することを特徴とする蓄電池。
【請求項2】
前記蓄電部の電池状態として、少なくとも蓄電量を監視する監視手段(30)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。
【請求項3】
前記監視手段は、放電中の前記蓄電部が予め定める予定蓄電量以下になったか否かを監視し、
前記制御手段は、前記放電中の蓄電部が前記予定蓄電量以下になった場合には、前記放電中の蓄電部だけでなく、放電していない他の前記蓄電部のうち1つまたは複数の蓄電部も前記放電用端子に並列に接続して、同時に放電するように前記切替手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の蓄電池。
【請求項4】
前記複数の蓄電部のうち、少なくとも2つの前記蓄電部は前記放電用端子に並列に接続可能であり、
前記複数の蓄電部のうち、少なくとも2つの前記蓄電部は電気的に直列に接続可能であり、
前記直列に接続可能な蓄電部の接続を、直列接続状態と非直列接続状態とで切り替える直列手段(31c)をさらに含み、
前記制御手段は、必要とされる電池電圧に応じて、前記直列手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−9557(P2013−9557A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141931(P2011−141931)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(509193533)株式会社キャプテックス (3)
【Fターム(参考)】