蓄電装置、携帯機器及び電動車両
【課題】蓄電装置内の蓄電素子が有する電荷を有効に利用することができるインピーダンス測定機能付き蓄電装置、携帯機器及び電動車両を提供すること。
【解決手段】インピーダンス測定機能付き蓄電装置100は、1周期の中に、少なくとも、第1の蓄電素子101からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第2の蓄電素子102に電流を流す期間と、第2の蓄電素子102からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第1の蓄電素子101に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114をオンオフ制御する。
【解決手段】インピーダンス測定機能付き蓄電装置100は、1周期の中に、少なくとも、第1の蓄電素子101からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第2の蓄電素子102に電流を流す期間と、第2の蓄電素子102からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第1の蓄電素子101に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114をオンオフ制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置、蓄電装置からの電源供給を受けて動作する携帯機器及び電動車両に関し、特に蓄電装置内部の蓄電素子のインピーダンスを測定する機能を有する蓄電装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電素子、あるいは複数の蓄電素子をまとめた電池パックに代表される蓄電装置のインピーダンス測定には、ソーラトロン社(登録商標)の製品に代表される大型装置が用いられている。
【0003】
図22は、蓄電素子のインピーダンス測定方法を示す図であり、上記大型システムを用いた電気化学測定の概略図を示す。
【0004】
図22(a)において、1は蓄電素子、10は周波数掃引発振器10A及びインピーダンス測定器10Bを備えるユニット、20は増幅器20A及び電圧・電流モニタ20Bを備えるユニットである。蓄電素子1には、4端子測定のための電圧、電流の端子が装着される。また、増幅器20AはAC電源15等の外部電源から電源供給を受ける。測定手順としては、周波数掃引発振器10Aが例えば10point/decadeの間隔で周波数を段階的に変化させながら、それぞれの周波数において1周期ずつ正弦波を発振させる(図22(b)参照)。この正弦波信号を受けて、増幅器20Aが蓄電素子に正弦波の微小電流乃至微小電圧の振幅を与え、電圧・電流モニタ20Bが蓄電素子1の電圧乃至電流をモニタする。このモニタされた蓄電素子の電圧、電流の応答を基にインピーダンス測定器10Bが蓄電素子1のインピーダンスを測定する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図23は、蓄電素子のインピーダンス特性図である。図23(a)は縦軸にインピーダンスZの絶対値、横軸に周波数f(原点が高周波側)をとった特性図、図23(b)は縦軸に位相角θを、横軸は周波数f(原点が高周波側)をとった特性図である。図23(c)は複素平面上のベクトル軌跡(通称cole−coleプロット)である。
【0006】
上記蓄電素子のインピーダンス測定方法をもとに、図23(a),(b)に示すインピーダンスの周波数特性、あるいは図23(c)に示す複素平面上のベクトル軌跡(cole−coleプロット)を作成し、電気化学素子の特性、劣化や信頼性などを評価することが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,743,855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の蓄電素子のインピーダンス測定方法にあっては、蓄電素子が有する電荷を有効に利用していなかったため、以下に述べるように外部電源や大型測定器を必要とするなど種々の問題点があった。
【0009】
(1)正弦波の半分の期間に充電、もう半分の期間に放電を行っているが、充電に必要な電荷は外部電源から増幅器を通じて与えられており、放電した電荷は増幅器の内部で熱エネルギとして消費されている。このため、増幅器に冷却ファンが取り付けられたり、あるいは放熱板の表面積を一定以上確保する必要が生じる。結果として増幅器を含めた測定装置全体が大型になるといった課題がある。また、かかる測定装置は非常に高価である。
【0010】
(2)また、電気2重層コンデンサや電解コンデンサ、電池といった蓄電素子の周波数特性は、主にkHzの領域からmHzあるいはμHzの領域を測定する必要があることから、測定には通常のセラミックコンデンサやインダクタなどの電子部品の周波数特性とは桁違いの時間が必要であった。そのため簡易的には1kHzのインピーダンスだけを測定する装置も市販されているが、測定結果のインピーダンスは劣化や信頼性などの評価に際しては目安程度にしかならなかった。
【0011】
(3)また、測定に際しては蓄電素子あるいは蓄電装置は、通常本体である電子機器との接続端子以外は安全上の理由により端子を持たない。このためインピーダンス測定の際は蓄電素子あるいは蓄電装置を本体から取り外して測定を行う必要がある。上記理由により測定時間が測定周波数の逆数だけ必要になり、数十分から数時間、場合によっては一晩程度と長いため、使い勝手の面でも不都合が多かった。
【0012】
(4)さらに、複数の蓄電素子を1つにまとめた蓄電装置は、やはり安全上の理由から内部を触られないように設計、製造することが多く、1つ1つの蓄電素子の特性を測定するための端子が無い。このため、そのインピーダンスを測定しなければならない場合、蓄電装置を解体する必要があった。この場合、解体された蓄電装置は使用不可能になる。
【0013】
(5)同様の理由で、複数の蓄電素子を1つにまとめた蓄電装置の、1つ1つの蓄電素子の特性を測定することができない。特に各セルに適用したインピーダンス測定ができなかったため、各セルの組み合わせからなる蓄電装置の性能を正確に把握することができなない。すなわち、不良セルの特定ができないことで電池寿命の有効な予測実現が困難である。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蓄電装置内の蓄電素子が有する電荷を有効に利用することができるインピーダンス測定機能付き蓄電装置、携帯機器及び電動車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の蓄電装置は、直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、前記第1及び第2の蓄電素子の各端子に接続された複数のスイッチと、前記複数のスイッチのオンオフ動作によって選択された前記1又は第2の蓄電素子の各端子間電圧が印加されるインダクタと、前記複数のスイッチを所定タイミングで切替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、前記複数のスイッチをオンオフする構成を採る。
【0016】
本発明の蓄電装置は、直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、前記第1及び第2の蓄電素子の両端に接続された第1のスイッチと第2のスイッチとの直列構成からなるスイッチ対と、前記第1の蓄電素子と前記第2の蓄電素子との接続点と、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点との間に接続されたインダクタと、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを交互にオンオフする制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、前記スイッチ対をオンオフする構成を採る。
【0017】
本発明の携帯機器は、蓄電装置からの電源供給により動作する携帯機器であって、上記いずれかに記載の蓄電装置を備える構成を採る。
【0018】
本発明の電動車両は、蓄電装置からの電源供給を受けて駆動する電動車両であって、上記いずれかに記載の蓄電装置を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓄電装置内部の蓄電素子の電荷を用いるため外部電源や大型測定器を必要とせず、可搬性・簡便性に富み、夜間などの不使用時間を利用して蓄電素子のインピーダンスを測定することができる。
【0020】
また、蓄電装置を取り外すことなくインピーダンス測定器する場合に、必要となる蓄電装置内部の各蓄電素子の端子を蓄電装置外部に出す必要が無いため、蓄電装置外部での短絡により生じる事故に対しても安全性を確保できるとともに、端子やそれを結ぶ結線などが不要なのでコストも削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図2】上記実施の形態1に係る蓄電装置の動作波形図
【図3】上記実施の形態1に係る蓄電装置の電流と電圧をPWM変調で正弦波状にする例を示す図
【図4】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図5】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図6】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図7】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図8】本発明の実施の形態2に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図9】上記実施の形態2に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図10】上記実施の形態2に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図11】本発明の実施の形態3に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図12】上記実施の形態3に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図13】上記実施の形態3に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図14】本発明の実施の形態4に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図15】上記実施の形態4に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図16】上記実施の形態4に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図17】本発明の実施の形態5に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図18】上記実施の形態5に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図19】本発明の実施の形態6に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図20】上記実施の形態6に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図21】上記実施の形態6に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図22】従来の蓄電装置の蓄電素子のインピーダンス測定方法を示す図
【図23】従来の蓄電素子のインピーダンス特性図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。本実施の形態は、蓄電素子が2素子の蓄電装置に適用した例である。
【0024】
図1において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100は、第1の蓄電素子101と、第2の蓄電素子102と、第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子に接続された第1〜第4のスイッチ111〜114と、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフ動作によって選択された第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114に制御信号VG1〜VG4を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路130とを備えて構成される。
【0025】
インダクタ120と第1〜第4のスイッチ111〜114とは、フルブリッジ回路121を構成する。通常、電源装置に使用されるフルブリッジ回路は、インダクタをトランスとして2次側に整流、平滑回路を用いるブリッジ回路として用いられるが、本実施の形態のフルブリッジ回路121は、1次側のみを用いるため2次側は不要となる。
【0026】
第1〜第4のスイッチ111〜114は、例えばFET又はMOSトランジスタからなるスイッチ素子である。
【0027】
インダクタ120の一端は、第1のスイッチ111を介して第1の蓄電素子101の正極に接続されるとともに、第2のスイッチ112を介して第1の蓄電素子101の負極に接続され、インダクタ120の他端は、第4のスイッチ114を介して第2の蓄電素子102の正極に接続されるとともに、第3のスイッチ113を介して第2の蓄電素子102の負極に接続される。第1〜第4のスイッチ111〜114のスイッチングにより第1の蓄電素子101に流れる電流Ibatt1は、電流計141により検出され、電圧Vbatt1は、電圧計151により検出される。また、第1〜第4のスイッチ111〜114のスイッチングにより第2の蓄電素子102に流れる電流Ibatt2は、電流計142により検出され、電圧Vbatt2は、電圧計152により検出される。
【0028】
駆動回路130は、第1及び第2の蓄電素子101,102のうち、一方の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、他方の蓄電素子から充放電するように第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフを切替える。ここでは、駆動回路130は、1周期の中に、少なくとも、第1の蓄電素子101からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第2の蓄電素子102に電流を流す期間と、第2の蓄電素子102からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第1の蓄電素子101に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114をオンオフする。
【0029】
以下、上述のように構成された蓄電装置100の動作について説明する。
【0030】
図2は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置の動作波形図であり、図2(a)は第1の蓄電素子101の電圧Vbatt1とその電流Ibatt1を示し、図2(b)は図2(a)の動作波形の要部拡大図を示す。
【0031】
第1〜第4のスイッチ111〜114は、駆動回路130からの制御信号VG1〜VG4により後述するようにオンオフを繰り返す。これにより、第1の蓄電素子101は、スイッチング周期ごとに小刻みに充電又は放電される。第1の蓄電素子101に流れる電流Ibatt1と電圧Vbatt1は、図2に示すように平均して正弦波状となるように制御される。例えば、図2(a)のIbatt1に示すように、電流Ibatt1が増加したとき(充電時)、図2(b)のVbatt1に示すように電圧Vbatt1は増加し、電流Ibatt1が0になると電圧Vbatt1はその電圧を保つ。電流Ibatt1及び電圧Vbatt1の減少時(放電時)についても同様である。以上の動作が繰り返され、それをある時間幅で観測すると正弦波のような波形(擬似正弦波)となる。但し、この擬似正弦波を実現するためには、適当なインダクタ120のインダクタンスLと第1〜第4のスイッチ111〜114のオン時間の調整が必要である。本発明者らによれば、百回(100パルス/1サイクル)以上の繰り返しにより、蓄電素子101,102のインピーダンス測定に十分な波形を得ることが確認された。なお、インピーダンス測定を行う場合、電流あるいは電圧のいずれを擬似正弦波とするかは任意である。
【0032】
図3は、電流Ibatt1と電圧Vbatt1をPWM変調で正弦波状にする例を示す図である。図3(a)に示すように、正弦波170をパルス表現した電圧Vbatt171を第1の蓄電素子101に与えると、図3(b)に示すように電圧Vbatt171に対応する電流Ibatt172が流れる。図3(c)は、電流Ibatt172を流すインダクタ電流173を示す。
【0033】
次に、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフによる第1及び第2の蓄電素子101,102の放電/充電動作について説明する。
【0034】
図4は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1の蓄電素子101の放電により第2の蓄電素子102が充電される期間の第1〜第4のスイッチ111〜114の動作を示す。図4中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。図5は、図4の蓄電装置100の各部動作波形図である。
【0035】
図4(a)において、第1の蓄電素子101には電荷が蓄積されているものとする。この状態で、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113を同時にオンし、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオフすると、第1の蓄電素子101の正極から第1のスイッチ111、インダクタ120、第3のスイッチ113及び第2の蓄電素子102の負極に至る経路が導通し、第1の蓄電素子101の放電によりインダクタ電流I_L=0の状態からインダクタ電流I_Lが流れインダクタ電流I_Lが増加する。
【0036】
その後、第1のスイッチ111をオフし、第2のスイッチ112をオンすると、図4(b)の状態となる。第1〜第4のスイッチ111〜114は、FET又はMOSトランジスタからなるスイッチ素子を想定しているため、第2のスイッチ112のオンにより第2のスイッチ112はオン抵抗のみを持つダイオード(ボディダイオード)としての機能を発揮し、図4(b)のループで循環電流が流れ始める。
【0037】
図4(b)の状態は、第2のスイッチ112と第3のスイッチ113を同時にオンし、第1のスイッチ111と第4のスイッチ114をオフすることで、第4のスイッチ114がボディダイオードとなりインダクタ120、第3のスイッチ113、第2のスイッチ112及びインダクタ120に至る閉ループを形成し、インダクタ120と第1の蓄電素子101及び第2の蓄電素子102とは切り離される。この閉ループをインダクタ電流I_Lが循環(回生)することでインダクタ電流I_Lを保つ。ここで、第1のスイッチ111と第2のスイッチ112、また第3のスイッチ113と第4のスイッチ114の同時オンはなく貫通電流は防止される。また、上記ボディダイオードとなるオン開始時間を所定デッドタイミングとして取ることで貫通電流は防止される。
【0038】
その後、図4(c)において、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114を同時にオンし、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオフすると、第1の蓄電素子101の負極から第2のスイッチ112、インダクタ120、第4のスイッチ114及び第2の蓄電素子102の正極に至る経路が導通し、インダクタ電流I_Lが第2の蓄電素子102に流入し第2の蓄電素子102がインダクタ電流I_Lによって充電される。
【0039】
その後、インダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になった後、図4(d)に示すように全てのスイッチをオフする。
【0040】
以上の動作により、第1の蓄電素子101の電荷を第2の蓄電素子102へ移動させることができる。
【0041】
正弦波の上側半分の周期は図4(a)に示す右向きの循環電流、正弦波の下側半分の周期は図4(c)に示す左向きの循環電流である。また、駆動回路130が第1〜第4のスイッチ111〜114のオン時間を工夫したPWM駆動を行うことで、擬似的ではあるが正弦波(図3参照)のような波形を生成し、この擬似正弦波を用いて電圧あるいは電流を計測することで第1及び第2の蓄電素子101,102のインピーダンスを測定することができる。本発明者らによれば、蓄電素子101,102のインピーダンス測定には十分な波形を得ることができた。
【0042】
図6は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第2の蓄電素子102の放電により第1の蓄電素子101が充電される期間の第1〜第4のスイッチ111〜114の動作を示す。図6中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。図7は、図6の蓄電装置100の各部動作波形図である。
【0043】
図6(a)において、第2の蓄電素子102には電荷が蓄積されているものとする。この状態で、第4のスイッチ114と第2のスイッチ112を同時にオンし、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオフすると、第2の蓄電素子102の正極から第4のスイッチ114、インダクタ120、第2のスイッチ112及び第1の蓄電素子101の負極に至る経路が導通し、第2の蓄電素子102の放電によりインダクタ電流I_L=0の状態からインダクタ電流I_Lが流れインダクタ電流I_Lが減少する。
【0044】
その後、第4のスイッチ114をオフし、第3のスイッチ113をオンすると、図6(b)の状態となる。図6(b)の状態は、第2のスイッチ112と第3のスイッチ113を同時にオンし、第1のスイッチ111と第4のスイッチ114をオフすることで、インダクタ120、第2のスイッチ112、第3のスイッチ113及びインダクタ120に至る閉ループを形成し、インダクタ120と第1の蓄電素子101及び第2の蓄電素子102とは切り離される。この閉ループをインダクタ電流I_Lが回流することでインダクタ電流I_Lを保つ。
【0045】
その後、図6(c)において、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113を同時にオンし、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオフすると、第2の蓄電素子102の負極から第3のスイッチ113、インダクタ120、第1のスイッチ111及び第1の蓄電素子101の正極に至る経路が導通し、インダクタ電流I_Lが第1の蓄電素子101に流入し第1の蓄電素子101がインダクタ電流I_Lによって充電される。
【0046】
その後、インダクタ電流I_Lが増加してI_L=0になった後、図6(d)に示すように全てのスイッチをオフする。
【0047】
以上の動作により、第2の蓄電素子102の電荷を第1の蓄電素子101へ移動させることができる。
【0048】
インダクタ120に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、第1の蓄電素子101に対して正弦波状に電流及び電圧を変化させることが可能となる(図2及び図3参照)。同様に、第2の蓄電素子102に対しても正弦波状に電流及び電圧変化をさせることが可能となる。この際、第1及び第2の蓄電素子101,102の端子電圧とその電流を検出し、演算することで、正弦波状に変化させた周波数での第1及び第2の蓄電素子101,102のインピーダンスを測定することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100は、第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子に接続された第1〜第4のスイッチ111〜114と、選択された第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路130とを備え、駆動回路130は、1周期の中に、少なくとも、第1の蓄電素子101からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第2の蓄電素子102に電流を流す期間と、第2の蓄電素子102からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第1の蓄電素子101に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114をオンオフ制御するので、第1及び第2の蓄電素子101,102のうち、一方の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、他方の蓄電素子から充放電する、すなわち、蓄電素子に蓄えられた電荷は全て蓄電装置内の別の蓄電素子から供給されることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置内部で測定に必要な電荷をまかなうことができる。このため、蓄電装置を機器から取り外したり、蓄電素子の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に流すことができ、その蓄電素子のインピーダンス測定が可能となる。また、インピーダンス測定情報を電池の劣化検出、状態検知に用いることができる。
【0050】
本実施の形態の効果をまとめると以下のようになる。
【0051】
(1)まず、電池パックの非破壊検査であることが挙げられる。
【0052】
(2)次に、高価で大型な測定器を使わずにインピーダンス測定を行うことができる。インピーダンス測定を、高速かつ小型な測定器で実現できる理由の一つは、蓄電装置内部で測定に必要な電荷をまかなうことができ、測定に用いたエネルギの有効活用できることではじめて実現できた。
【0053】
(3)インピーダンス測定時間が飛躍的に短縮されるので不使用時間帯を有効活用することができる。実際には、携帯機器に搭載されるバッテリパック内の蓄電素子(セル)は、例えば6乃至16個、電動車両などの蓄電装置内の蓄電素子(セル)に至っては数百個となる場合がある。本実施の形態の蓄電装置100は、蓄電素子(セル)の一つ一つのインピーダンスを測定できるのは勿論のこと、セルかたまりであるバッテリ(又は複数セルのブロック)のインピーダンスを測定することができる。多数のセルのインピーダンスを測定するには、本実施の形態の電源装置100のように、測定時間の飛躍的な向上がなければ実現できない。
【0054】
(4)各セルに適用することができ、各セルの細かなインピーダンス測定が可能になる。これにより、よりきめ細かな電池検査と、劣化セル判定、及びそれを迂回するバイパスルートの確保が可能になる。また、電池寿命の有効な予測が実現できる。
【0055】
(5)スイッチのオンオフにより擬似正弦波を生成しインピーダンス測定を行っている。スイッチのオンオフで波形を生成しているため、装置の使用目的や測定の精度に合わせた波形生成が容易に行える。このことはインピーダンス測定器としての自由度が高いこと、すなわち適用範囲が広く携帯機器や電動車両の電源装置として広範囲に適用可能であることにつながる。なお、トランス結合ではないので漏れ磁束による効率低下や結合係数の差によるアンバランスは発生しない。
【0056】
ここで、蓄電素子の電圧を測定する際、スイッチング周波数領域を遮断し、正弦波周波数領域を通過させるフィルタなどノイズ除去の仕組みを適宜組み合わせ用いることにより、検出精度を向上できる。
【0057】
また、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフ順を最適化すれば、ノイズをより低減することができる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態1は、蓄電素装置内の蓄電素子を2個としたが、各蓄電素子に設けたスイッチを切り替えるなどの方法を採れば、3個以上の蓄電素子の直列構成が可能になる。
【0059】
図8は、本発明の実施の形態2に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図1と同一構成部分には、同一符号を付している。
【0060】
図8において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置200は、直列接続された第1〜第6の蓄電素子201〜206と、インダクタ120とフルブリッジ回路121を構成する第1〜第4のスイッチ111〜114と、第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子と第1〜第4のスイッチ111〜114とに接続された複数のスイッチ211〜222と、第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222のオンオフ動作によって選択された第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222に制御信号VG1〜VG4,VG11〜VG22を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路230とを備えて構成される。
【0061】
駆動回路230は、直列接続されたn(nは2以上の整数。いまn=6)個の蓄電素子201〜206のうち、第k(kはn以下の整数)の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、他のいずれかの蓄電素子から充放電するように第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222のオンオフを切替える。ここでは、駆動回路230は、1周期の中に、少なくとも、第kの蓄電素子からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第k+1の蓄電素子に電流を流す期間と、第k+1の蓄電素子からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第k+2の蓄電素子に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222をオンオフする。
【0062】
複数のスイッチ211〜222は、第1〜第4のスイッチ111〜114と同様に、例えばFET又はMOSトランジスタからなるスイッチ素子である。
【0063】
以下、上述のように構成された蓄電装置200の動作について説明する。
【0064】
図9は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置200の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1の蓄電素子201の放電により第2の蓄電素子202が充電される期間のスイッチ111〜114,211〜222の動作を示す。図9中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。
【0065】
また図10は、図9の蓄電装置200の各部動作波形図であり、図9(a)〜(h)の遷移状態は、それぞれ図10の動作タイミングa.〜h.に対応する。
【0066】
図9(a)において、第1の蓄電素子201の電圧をVbatt201,第2の蓄電素子202の電圧をVbatt202とし、インダクタ120のインダクタンスをL、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113のオン時間をそれぞれTon13、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114のオン時間をTon24とする。各蓄電素子201〜206の両端に接続されたスイッチ211〜222のうち、第1の蓄電素子201の両端に接続されたスイッチ211とスイッチ213のみをオン状態にし、フルブリッジ回路121の第1のスイッチ111と第3のスイッチ113のみをオンする。他のスイッチは全てオフにする。これにより第1の蓄電素子201の両端からインダクタ120にインダクタ電流I_Lを流す(図10a.の状態参照)。
【0067】
図9(b)に示すように、インダクタ電流I_LがTon13秒後には、Vbatt201×Ton13/Lとなり、この時、第1のスイッチ111をオフして第2のスイッチ112をオンすると、インダクタ120に流れるインダクタ電流I_Lはその値を維持しつつ循環電流が流れる。このときスイッチ211とスイッチ212はオフされる(図10b.の状態参照)。
【0068】
次いで図9(c)に示すように、スイッチ213とスイッチ214をオンし、第3のスイッチ113をオフして第4のスイッチ114をオンすると、循環電流は第2の蓄電素子202に流れ込むとともに、その電流値を減らす(図10c.の状態参照)。励磁に要したTon13秒後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図9(d)及び図10d.の状態参照)。この時、電流は0なので蓄電素子側のスイッチをどのような状態にしていても第1のスイッチ111と第4のスイッチ114さえオフしていれば、インダクタ120の電流を0に維持できるのでスイッチの状態は全てオフでなくても構わない。
【0069】
次いで図9(e)に示すように、各蓄電素子201〜206の両端に接続されたスイッチ211〜222のうち、第1の蓄電素子201の両端に接続されたスイッチ211とスイッチ212のみをオン状態にし、フルブリッジ回路121の第2のスイッチ112と第4のスイッチ114のみをオンする。これにより、第1の蓄電素子201の両端からインダクタ120にインダクタ電流I_Lを流す(図10e.の状態参照)。
【0070】
図9(f)に示すように、インダクタ電流I_LがTon24秒後には、Vbatt201×Ton24/Lとなり、この時、第4のスイッチ114をオフし、第3のスイッチ113をオンすると、インダクタ120に流れるインダクタ電流I_Lはその値を維持しつつ循環電流が流れる。このときスイッチ211とスイッチ212はオフされる(図10f.の状態参照)。
【0071】
次いで図9(g)に示すように、スイッチ213とスイッチ214をオンし、第2のスイッチ112をオフして第1のスイッチ111をオンすると、循環電流は第2の蓄電素子202に流れ込むとともに、その電流値を減らす(図10g.の状態参照)。励磁に要したTon24秒後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図9(h)及び図10h.の状態参照)。
【0072】
上記、図9(a)〜(g)の様子を各スイッチのゲート電圧で示したタイミングチャートで示したものが図10である。第1〜4のスイッチ111〜114の各ゲート電圧をVG1〜VG4、スイッチ211〜222のうちスイッチ211〜214の各ゲート電圧をVG11〜VG14を示している。
【0073】
以上説明した図9(e)から図9(g)での過程は、図9(a)から図9(d)の過程を繰り返しても動作上なんら支障は無いが、実際はオン時間やオフするタイミングのばらつきなどで徐々にインダクタ120が偏磁する可能性もあるため、本実施の形態では磁性体の動作のバランスを考慮してインダクタ電流I_Lは交流状に変化させるように、図9(e)から図9(g)のステップ(図10e.−g.参照)を設けている。
【0074】
また、第1の蓄電素子201から放電し、第2の蓄電素子202に充電する場合を例に採り説明したが、同様の方法により、第1の蓄電素子201から第3の蓄電素子203、第2の蓄電素子202から第1の蓄電素子201など、各蓄電素子間同士で電荷を移動させることができる。また、第1の蓄電素子201と第2の蓄電素子202の直列蓄電ブロックから第3の蓄電素子203と第4の蓄電素子204の直列蓄電ブロックへの電荷の移動など、各種組み合わせが可能である。さらに、2直列ブロックから3直列ブロックや単一蓄電素子の間でも電荷のやりとりを行うことができる。
【0075】
また、図8では便宜上各蓄電素子は全て直列で示したが、2並列を3直列、3並列を2直列など必要に応じて並列数を増やしても同様の効果を発揮する。
【0076】
したがって、本実施の形態によれば、蓄電装置200内に蓄電素子が3個以上ある場合において、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、各蓄電素子のインピーダンスを測定することができる。携帯機器に搭載されるバッテリパック内の蓄電素子(セル)は、例えば6乃至16個、電動車両などの蓄電装置内の蓄電素子(セル)は数百個となる場合があり、本実施の形態の蓄電装置200は、かかる装置に適用して好適である。
【0077】
(実施の形態3)
直列数の多い蓄電装置では、蓄電素子の両端に単にスイッチを設ける方法を採るとスイッチの数とそれを制御する配線や回路が膨大になる。実施の形態3は、直列接続された蓄電素子が多い蓄電装置においてスイッチの数と回路を低減する例について説明する。
【0078】
図11は、本発明の実施の形態3に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図8と同一構成部分には、同一符号を付している。また、スイッチ数の削減に特徴があり、それ以外の構成要素は図8と同様であるため記載を省略している。
【0079】
図11において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置300は、直列接続された第1〜第6の蓄電素子201〜206(図11では第3の蓄電素子203まで図示)と、インダクタ120とフルブリッジ回路121を構成する第1〜第4のスイッチ111〜114と、第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子に接続された複数のスイッチ211〜222(図11ではスイッチ214まで図示)と、第1〜第4のスイッチ111〜114とスイッチ211及びスイッチ212〜222との間で全波整流回路のように接続された第1〜第4の中間スイッチ311〜314と、第1〜第4のスイッチ111〜114、第1〜第4の中間スイッチ311〜314及び複数のスイッチ211〜222のオンオフ動作によって選択された第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114、第1〜第4の中間スイッチ311〜314及び複数のスイッチ211〜222にこの順で制御信号VG1〜VG4,VG31〜VG34,VG11〜VG22を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路330とを備えて構成される。
【0080】
以下、上述のように構成された蓄電装置300の動作について説明する。
【0081】
蓄電装置300は、第1〜第4の中間スイッチ311〜314を設けて図10と同様の電荷の授受を行う。
【0082】
図12及び図13は、インピーダンス測定付き蓄電装置300の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図である。図12は、第1の蓄電素子201の放電により第3の蓄電素子203が充電される期間、図13は、第2の蓄電素子202の放電により第4の蓄電素子204が充電される期間のスイッチ111〜114,311〜314,211〜222(該当スイッチのみ図示)の動作をそれぞれ示す。図12及び図13中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。
【0083】
まず、図12(a)において、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ211とスイッチ212をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第1の中間スイッチ311と第4の中間スイッチ314をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオンすると、第1の蓄電素子201からインダクタ120へ電流が流れる。
【0084】
次いで図12(b)に示すように、第1のスイッチ111をオフし、第2のスイッチ112をオンすると、インダクタ120の電流I_Lはその値を保持しつつ、循環電流がインダクタ120、第3のスイッチ113、第2のスイッチ112を経由して流れ続ける。図12(b)では、スイッチ211〜215や第1〜第4の中間スイッチ311〜314はオフしているように図示したが、直前のオンの状態を維持していても構わない。すなわち、各蓄電素子201〜206、あるいはそれを複数個まとめた蓄電ブロックの両端を短絡する構成など、蓄電素子201〜206から電流が流れる構成でなければ、どのような状態でも構わない。
【0085】
次いで図12(c)に示すように、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ213とスイッチ214をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第1の中間スイッチ311と第4の中間スイッチ314をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオンすると、循環電流は第3の蓄電素子203に流れ込むとともに、その電流値を減らす。励磁に要した時間と同じ時間後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図12(d)参照)。この時、電流は0なので蓄電素子側のスイッチをどのような状態にしていても第1のスイッチ111と第4のスイッチ114さえオフしていれば、インダクタ120の電流を0に維持できるのでスイッチの状態は全てオフでなくてもよく、各蓄電素子、あるいはそれを複数個まとめた蓄電ブロックの両端を短絡する構成等など、蓄電素子から電流が流れる構成でなければ、どのような状態でも構わない。
【0086】
以上、第1の蓄電素子201から第3の蓄電素子203へ電荷を移動させる場合を例に採り説明したが、同様の方法により、任意の蓄電素子から他の蓄電素子に電荷を移動することも同様の方法により可能である。
【0087】
図13は、第2の蓄電素子202から第4の蓄電素子204へ電荷を移動させる場合のスイッチの切り替えの例である。まず、図13(a)において、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ212とスイッチ213をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第2の中間スイッチ312と第3の中間スイッチ313をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオンすると、第2の蓄電素子202からインダクタ120へ電流が流れる。
【0088】
次いで図13(b)に示すように、第1のスイッチ111をオフし、第2のスイッチ112をオンすると、インダクタ120の電流I_Lはその値を保持しつつ、循環電流がインダクタ120、第3のスイッチ113、第2のスイッチ112を経由して流れ続ける。図13(b)では、スイッチ211〜215や第1〜第4の中間スイッチ311〜314はオフしているように図示したが、直前のオンの状態を維持していても構わない。
【0089】
次いで図13(c)に示すように、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ214とスイッチ215をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第2の中間スイッチ312と第3の中間スイッチ313をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオンすると、循環電流は第4の蓄電素子204に流れ込むとともに、その電流値を減らす。励磁に要した時間と同じ時間後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図13(d)参照)。この時、電流は0なので蓄電素子側のスイッチをどのような状態にしていても第1のスイッチ111と第4のスイッチ114さえオフしていれば、インダクタ120の電流を0に維持できるのでスイッチの状態は全てオフでなくてもよい。
【0090】
上述した図13に示すとおりの順序でスイッチのオンオフを行えば、図12と同様の効果を発揮する。この場合、スイッチ212とスイッチ213を用いているため、蓄電素子の両端に備えられたスイッチが隣合う蓄電素子の両端スイッチと兼用されていてもフルブリッジ回路121にかかる電圧の向きを同じにできるため、直列数が多い蓄電装置においてスイッチ数の削減が可能となる。また、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のスイッチのうち、第1の中間スイッチ311と第4の中間スイッチ314の組み合わせでオンする場合と、第2の中間スイッチ312と第3の中間スイッチ313の組み合わせでオンする場合を適宜切り替えることにより、奇数番号と偶数番号の蓄電素子間で電荷の授受を行うことができる。
【0091】
かかる構成によれば、インダクタ120に蓄えられた電荷は、全て蓄電装置300内の別の蓄電素子へ蓄えられることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置300内部で測定に必要な電荷をまかなうことができるため、蓄電装置300を機器から取り外したり、蓄電素子の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に付与し、蓄電素子のインピーダンス測定が可能となる。
【0092】
ここで、第2のスイッチ112と第3のスイッチ113をオンしてインダクタ電流I_Lを循環する期間や、インダクタ電流I_L=0の状態で全てのスイッチをオフした期間は、電荷の移動に関与していない期間であり、必要に応じて短くしたり省いたりしても構わない。
【0093】
このように、本実施の形態によれば、第1〜第4のスイッチ111〜114とスイッチ211及びスイッチ212〜222との間に第1〜第4の中間スイッチ311〜314を設けているので、実施の形態2と同様の効果を得ることができるとともに、各第1〜第6の蓄電素子201〜206の両端から第1〜第4のスイッチ111〜114に接続されるスイッチの数を削減することができる。特に、電動車両などの蓄電装置内の蓄電素子(セル)は数百個となる場合があり、このような場合にスイッチ数の削減は、スイッチ素子や駆動回路の規模、配線数低減につながり、コスト面や省電力化の観点から好ましい。
【0094】
なお、本実施の形態では、フルブリッジ回路121を例に採り説明をしているが、ハーフブリッジ回路やプッシュプル回路などの基本回路を応用しても同様の効果を発揮する。
【0095】
また、電荷の移動元である第1の蓄電素子201と移動先である第2の蓄電素子202の電圧が同じと仮定して説明をしているが、この仮定は必須のものではなく、第1の蓄電素子201と第2の蓄電素子202の電圧が違う場合でも、I_Lの増加傾きが第1の蓄電素子201の電圧に応じて変化し、インダクタの電流I_Lが増加しても飽和領域に入らない限り循環電流を流すことができる。また、インダクタ電流I_Lが減少するときの傾きは、循環電流の値を初期値として第2の蓄電素子202の電圧に応じて変化する。このときインダクタ電流I_Lが0になった時点でスイッチをオフすることにより、励磁時間と減磁時間が異なるが同様の動作となり、同様の効果を発揮することができる。
【0096】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。本実施の形態は、蓄電素子が2素子の蓄電装置に適用した例である。
【0097】
図14において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置400は、直列接続された第1の蓄電素子401及び第2の蓄電素子402と、第1及び第2の蓄電素子401,402の両端に接続された第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との直列構成からなるスイッチ対410と、第1の蓄電素子401と第2の蓄電素子402との接続点と第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との接続点との間に接続されたインダクタ420と、第1及び第2のスイッチ411,412に制御信号VG41,VG42を出力して第1のスイッチ411と第2のスイッチ412を交互にオンオフする駆動回路430とを備えて構成される。
【0098】
第1及び第2のスイッチ411,412は、直列接続されたスイッチであり、並列に直列接続された第1及び第2の蓄電素子401,402と、インダクタ420をはさんでハーフブリッジ回路421を構成している。
【0099】
以下、上述のように構成された蓄電装置400の動作について説明する。
【0100】
図15は、インピーダンス測定付き蓄電装置400の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1及び第2のスイッチ411,412の動作を示す。図15中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。図16は、図15の蓄電装置400の各部動作波形図である。
【0101】
図15(a)に示すように、まず、インダクタ電流I_L=0の状態から第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加する期間(図16a.期間参照)と、図15(b)に示すように、第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になる期間(図16b.期間参照)とを交互に設けることにより、第1の蓄電素子401の電荷を第2の蓄電素子402へ移動させる。
【0102】
同様に、インダクタ電流I_L=0の状態から第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少する期間と、第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加してI_L=0になる期間を交互に設けることにより、第2の蓄電素子402の電荷を第1の蓄電素子401へ移動させる。
【0103】
インダクタ420に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、第1の蓄電素子401に対して正弦波状に電流又は電圧を変化させることが可能となる。同様に、第2の蓄電素子402に対しても正弦波状の電流又は電圧変化をさせることが可能となる。この際、第1及び第2の蓄電素子401,402の端子電圧と流れ出る電流を検出し、演算することで、正弦波状に変化させた周波数での蓄電素子のインピーダンスが測定できる。正弦波状に電流又は電圧を変化させることについては、図2及び図3で述べた実施の形態1と同様である。
【0104】
ここで、第1及び第2の蓄電素子401,402の電圧を測定する際、スイッチング周波数領域を遮断し、正弦波周波数領域を通過させるフィルタなどノイズ除去の仕組みを適宜組み合わせ用いることにより、検出精度を向上できる。かかる構成を採れば、インダクタ420に蓄えられた電荷は全て蓄電装置400内の別の蓄電素子へ蓄えられることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置内部で測定に必要な電荷をまかなうことができるため、蓄電装置を機器から取り外したり、蓄電素子の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に流すことができ、その結果蓄電素子のインピーダンス測定が可能となる。
【0105】
(実施の形態5)
実施の形態4は、蓄電素装置内の蓄電素子を2個としたが、各蓄電素子に設けたスイッチを切り替えるなどの方法を採れば、3個以上の蓄電素子の直列構成が可能になる。
【0106】
図17は、本発明の実施の形態5に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図14と同一構成部分には、同一符号を付している。
【0107】
図17において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置500は、直列接続された第1〜第4の蓄電素子401〜404と、第1〜第4の蓄電素子401〜404の両端に接続された第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との直列構成からなるスイッチ対410と、各蓄電素子401〜404の両端に並列接続された第1〜第12の中間スイッチ511〜522と、隣合う蓄電素子401〜404との接続点と第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との接続点との間に接続されたインダクタ420と、第1及び第2のスイッチ411,412、及び第1〜第12の中間スイッチ511〜522に制御信号VG41,VG42,VG51〜VG62を出力して第1のスイッチ411と第2のスイッチ412を交互にオンオフする駆動回路530とを備えて構成される。
【0108】
第1及び第2のスイッチ411,412は、直列接続されたスイッチであり、並列に直列接続された第1及び第2の蓄電素子401,402と、インダクタ420をはさんでハーフブリッジ回路421を構成している。
【0109】
なお、図17では、4個の蓄電素子401〜404とこれら蓄電素子401〜404の両端に並列接続される12個の中間スイッチ511〜522の構成例を示したが、これらは図示の便宜上であり、任意の数により構成されることは言うまでもない。
【0110】
以下、上述のように構成された蓄電装置500の動作について説明する。
【0111】
図18は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置500の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1及び第2のスイッチ411,412、及び第1〜第12の中間スイッチ511〜522の動作を示す。また、動作をより分かり易くするため、図17の構成例のうち、第1〜第3の蓄電素子401〜403と第1〜第6の中間スイッチ511〜516、及び第1及び第2のスイッチ411,412からなる要部構成を示している。図18中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示す。
【0112】
図18(a)に示すように、インダクタ電流I_L=0の状態から第1の中間スイッチ511、第3の中間スイッチ513及び第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加する期間と、図18(b)に示すように、第3の中間スイッチ513、第5の中間スイッチ515及び第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になる期間とを交互に設けることにより、第1の蓄電素子401の電荷を第2の蓄電素子402へ移動させる。
【0113】
同様に、インダクタ電流I_L=0の状態から第3の中間スイッチ513、第5の中間スイッチ515及び第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少する期間と、第1の中間スイッチ511、第3の中間スイッチ513及び第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加してI_L=0になる期間を交互に設けることにより、第2の蓄電素子402の電荷を第1の蓄電素子401へ移動させる。
【0114】
図18(a),(b)は、第1の蓄電素子401から第2の蓄電素子402へ、また第2の蓄電素子402から第1の蓄電素子401への電荷の移動例であるが、同様にして、図18(c),(d)に示す第2の蓄電素子402と第3の蓄電素子403間の電荷の移動、図18(e),(f)に示す第2の蓄電素子402と第1の蓄電素子401間の電荷の移動、図18(g),(h)に示す第3の蓄電素子403と第2の蓄電素子402間の電荷の移動がそれぞれ可能である。
【0115】
この場合もインダクタ420に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、各蓄電素子401〜404に対して正弦波状に電流又は電圧を変化させることが可能となり、各蓄電素子401〜404の端子電圧と流れ出る電流を検出し、演算することで、正弦波状に変化させた周波数での蓄電素子のインピーダンスが測定できる。
【0116】
このように、3個直列の場合は、図18に示すようにスイッチを操作することにより、第1の蓄電素子401と第2の蓄電素子402の間での電荷移動、第2の蓄電素子402と第3の蓄電素子403の間での電荷移動、また第1の蓄電素子401と第3の蓄電素子403の間や、第1の蓄電素子401と第2及び第3の蓄電素子402,403の直列ブロックとの間、第1及び第2の蓄電素子401,402の直列構成と第3の蓄電素子403との間などで適宜電荷を移動でき、インピーダンス測定に応用できるという効果を奏する。
【0117】
なお、上記各実施形態のインピーダンス測定機能付き蓄電装置を、電気自動車などでよく使われる蓄電装置に応用する際は、蓄電装置内部に予め設けられた各蓄電素子、あるいは蓄電素子を複数まとめた各蓄電ブロック電圧を測定するための配線およびスイッチを、インピーダンス測定用のスイッチとして兼用することも可能である。このように構成すれば、スイッチコストを削減することができる。
【0118】
(実施の形態6)
上記各実施の形態は、蓄電素装置内の複数の蓄電素子のインピーダンス測定であった。しかし、本インピーダンス測定方法によれば、蓄電装置内の1つの蓄電素子が有する電荷を有効に利用することができる。以下この例を実施の形態6により説明する。
【0119】
図19は、本発明の実施の形態6に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図1と同一構成部分には、同一符号を付している。
【0120】
図19において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置600は、蓄電素子601と、蓄電素子601の両端の端子に接続された第1〜第4のスイッチ611〜614と、第1〜第4のスイッチ611〜614のオンオフ動作によって選択された蓄電素子601の端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ611〜614に制御信号VG71〜VG74を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路630とを備えて構成される。
【0121】
インダクタ120と第1〜第4のスイッチ611〜614とは、フルブリッジ回路621を構成する。
【0122】
インダクタ120の一端は、第1のスイッチ611を介して蓄電素子601の正極に接続されるとともに、第2のスイッチ612を介して蓄電素子601の負極に接続され、インダクタ120の他端は、第4のスイッチ614を介して蓄電素子601の正極に接続されるとともに、第3のスイッチ613を介して蓄電素子601の負極に接続される。第1〜第4のスイッチ111〜114のスイッチングにより蓄電素子601に流れる電流Ibattは、電流計141により検出され、電圧Vbattは、電圧計151により検出される。
【0123】
駆動回路630は、蓄電素子601のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を充放電するように第1〜第4のスイッチ611〜614のオンオフを切替える。
【0124】
以下、上述のように構成された蓄電装置600の動作について説明する。
【0125】
図20は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置600の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、蓄電素子601が充放電される期間のスイッチ611〜614の動作を示す。図20中の矢印は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。
【0126】
また図21は、図20の蓄電装置600の各部動作波形図である。
【0127】
図20(a)〜(c)において、まず、インダクタ電流I_L=0の状態から第1のスイッチ611と第3のスイッチ613を同時にオンしてインダクタ電流I_Lが増加した後、インダクタ電流I_Lを保つように第2のスイッチ612と第3のスイッチ613を同時にオンする期間を設け、第2のスイッチ612と第4のスイッチ614を同時にオンしてインダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になった後、全てのスイッチ611〜614をオフすることにより、蓄電素子601の電荷を回生させることが可能になる(図21参照)。
【0128】
また、図20(d)〜(h)において、インダクタ電流I_L=0の状態から第2のスイッチ612と第4のスイッチ614が同時にオンしてインダクタ電流I_Lが減少した後、インダクタ電流I_Lを保つように第2のスイッチ612と第3のスイッチ613を同時にオンする期間を設け、第1のスイッチ611と第3のスイッチ613が同時にオンしてインダクタ電流I_L=が増加してI_L=0になった後、全てのスイッチ611〜614をオフすることにより、蓄電素子601の電荷を回生させることが可能になる(図21参照)。
【0129】
インダクタ120に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、蓄電素子601に対して正弦波状に電流乃至電圧を変化させることが可能となる。この際、蓄電素子601の端子電圧を電圧計151で、また流れ出る電流を電流計141により検出し、図示しないインピーダンス測定器により演算することで、正弦波状に変化させた周波数での蓄電素子601のインピーダンスを測定することができる。
【0130】
なお、蓄電素子の電圧を測定する際、スイッチング周波数領域を遮断し、正弦波周波数領域を通過させるフィルタなどノイズ除去の仕組みを適宜組み合わせ用いることにより、検出精度をより向上させることができる。
【0131】
本実施の形態によれば、インダクタ120に蓄えられた電荷は全て蓄電装置600内の別の蓄電素子へ蓄えられることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置600内部で測定に必要な電荷をまかなうことができるため、蓄電装置600を機器から取り外したり、蓄電素子601の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に流すことができ、その結果蓄電素子のインピーダンス測定が可能になる。
【0132】
また、第2のスイッチ612と第3のスイッチ613をオンしてインダクタ電流I_Lを循環する期間や、インダクタ電流I_L=0の状態で全てのスイッチをオフした期間は、電荷の移動に関与していない期間であり、必要に応じて短くしたり省いたりしても構わない。
【0133】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0134】
例えば、上記各実施の形態における蓄電装置内の蓄電素子の数や接続状態は、限定されない。スイッチは、例えばMOSトランジスタを使用するのが一般的であるが、スイッチング動作を行う素子であればどのようなスイッチであってもよい。
【0135】
また、上記各実施の形態では蓄電装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、二次電池、蓄電池、インピーダンス測定装置等であってもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る蓄電装置は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置として、携帯機器、電動車両に有用である。またバックアップ電源等の用途にも応用できる。また、携帯機器、電動車両以外の電子機器における蓄電装置にも広く適用され得るものである。
【符号の説明】
【0137】
100,200,300,400,500,600 インピーダンス測定機能付き蓄電装置
101,102,201〜206,401〜404,601 蓄電素子
111〜114,411,412,611〜614 スイッチ
120,420 インダクタ
121 フルブリッジ回路
130,230,330,430,530,630 駆動回路
141,142 電流計
151,152 電圧計
211〜222,511〜522 中間スイッチ
410 スイッチ対
421 ハーフブリッジ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置、蓄電装置からの電源供給を受けて動作する携帯機器及び電動車両に関し、特に蓄電装置内部の蓄電素子のインピーダンスを測定する機能を有する蓄電装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電素子、あるいは複数の蓄電素子をまとめた電池パックに代表される蓄電装置のインピーダンス測定には、ソーラトロン社(登録商標)の製品に代表される大型装置が用いられている。
【0003】
図22は、蓄電素子のインピーダンス測定方法を示す図であり、上記大型システムを用いた電気化学測定の概略図を示す。
【0004】
図22(a)において、1は蓄電素子、10は周波数掃引発振器10A及びインピーダンス測定器10Bを備えるユニット、20は増幅器20A及び電圧・電流モニタ20Bを備えるユニットである。蓄電素子1には、4端子測定のための電圧、電流の端子が装着される。また、増幅器20AはAC電源15等の外部電源から電源供給を受ける。測定手順としては、周波数掃引発振器10Aが例えば10point/decadeの間隔で周波数を段階的に変化させながら、それぞれの周波数において1周期ずつ正弦波を発振させる(図22(b)参照)。この正弦波信号を受けて、増幅器20Aが蓄電素子に正弦波の微小電流乃至微小電圧の振幅を与え、電圧・電流モニタ20Bが蓄電素子1の電圧乃至電流をモニタする。このモニタされた蓄電素子の電圧、電流の応答を基にインピーダンス測定器10Bが蓄電素子1のインピーダンスを測定する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図23は、蓄電素子のインピーダンス特性図である。図23(a)は縦軸にインピーダンスZの絶対値、横軸に周波数f(原点が高周波側)をとった特性図、図23(b)は縦軸に位相角θを、横軸は周波数f(原点が高周波側)をとった特性図である。図23(c)は複素平面上のベクトル軌跡(通称cole−coleプロット)である。
【0006】
上記蓄電素子のインピーダンス測定方法をもとに、図23(a),(b)に示すインピーダンスの周波数特性、あるいは図23(c)に示す複素平面上のベクトル軌跡(cole−coleプロット)を作成し、電気化学素子の特性、劣化や信頼性などを評価することが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,743,855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の蓄電素子のインピーダンス測定方法にあっては、蓄電素子が有する電荷を有効に利用していなかったため、以下に述べるように外部電源や大型測定器を必要とするなど種々の問題点があった。
【0009】
(1)正弦波の半分の期間に充電、もう半分の期間に放電を行っているが、充電に必要な電荷は外部電源から増幅器を通じて与えられており、放電した電荷は増幅器の内部で熱エネルギとして消費されている。このため、増幅器に冷却ファンが取り付けられたり、あるいは放熱板の表面積を一定以上確保する必要が生じる。結果として増幅器を含めた測定装置全体が大型になるといった課題がある。また、かかる測定装置は非常に高価である。
【0010】
(2)また、電気2重層コンデンサや電解コンデンサ、電池といった蓄電素子の周波数特性は、主にkHzの領域からmHzあるいはμHzの領域を測定する必要があることから、測定には通常のセラミックコンデンサやインダクタなどの電子部品の周波数特性とは桁違いの時間が必要であった。そのため簡易的には1kHzのインピーダンスだけを測定する装置も市販されているが、測定結果のインピーダンスは劣化や信頼性などの評価に際しては目安程度にしかならなかった。
【0011】
(3)また、測定に際しては蓄電素子あるいは蓄電装置は、通常本体である電子機器との接続端子以外は安全上の理由により端子を持たない。このためインピーダンス測定の際は蓄電素子あるいは蓄電装置を本体から取り外して測定を行う必要がある。上記理由により測定時間が測定周波数の逆数だけ必要になり、数十分から数時間、場合によっては一晩程度と長いため、使い勝手の面でも不都合が多かった。
【0012】
(4)さらに、複数の蓄電素子を1つにまとめた蓄電装置は、やはり安全上の理由から内部を触られないように設計、製造することが多く、1つ1つの蓄電素子の特性を測定するための端子が無い。このため、そのインピーダンスを測定しなければならない場合、蓄電装置を解体する必要があった。この場合、解体された蓄電装置は使用不可能になる。
【0013】
(5)同様の理由で、複数の蓄電素子を1つにまとめた蓄電装置の、1つ1つの蓄電素子の特性を測定することができない。特に各セルに適用したインピーダンス測定ができなかったため、各セルの組み合わせからなる蓄電装置の性能を正確に把握することができなない。すなわち、不良セルの特定ができないことで電池寿命の有効な予測実現が困難である。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蓄電装置内の蓄電素子が有する電荷を有効に利用することができるインピーダンス測定機能付き蓄電装置、携帯機器及び電動車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の蓄電装置は、直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、前記第1及び第2の蓄電素子の各端子に接続された複数のスイッチと、前記複数のスイッチのオンオフ動作によって選択された前記1又は第2の蓄電素子の各端子間電圧が印加されるインダクタと、前記複数のスイッチを所定タイミングで切替える制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、前記複数のスイッチをオンオフする構成を採る。
【0016】
本発明の蓄電装置は、直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、前記第1及び第2の蓄電素子の両端に接続された第1のスイッチと第2のスイッチとの直列構成からなるスイッチ対と、前記第1の蓄電素子と前記第2の蓄電素子との接続点と、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点との間に接続されたインダクタと、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを交互にオンオフする制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、前記スイッチ対をオンオフする構成を採る。
【0017】
本発明の携帯機器は、蓄電装置からの電源供給により動作する携帯機器であって、上記いずれかに記載の蓄電装置を備える構成を採る。
【0018】
本発明の電動車両は、蓄電装置からの電源供給を受けて駆動する電動車両であって、上記いずれかに記載の蓄電装置を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蓄電装置内部の蓄電素子の電荷を用いるため外部電源や大型測定器を必要とせず、可搬性・簡便性に富み、夜間などの不使用時間を利用して蓄電素子のインピーダンスを測定することができる。
【0020】
また、蓄電装置を取り外すことなくインピーダンス測定器する場合に、必要となる蓄電装置内部の各蓄電素子の端子を蓄電装置外部に出す必要が無いため、蓄電装置外部での短絡により生じる事故に対しても安全性を確保できるとともに、端子やそれを結ぶ結線などが不要なのでコストも削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図2】上記実施の形態1に係る蓄電装置の動作波形図
【図3】上記実施の形態1に係る蓄電装置の電流と電圧をPWM変調で正弦波状にする例を示す図
【図4】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図5】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図6】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図7】上記実施の形態1に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図8】本発明の実施の形態2に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図9】上記実施の形態2に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図10】上記実施の形態2に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図11】本発明の実施の形態3に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図12】上記実施の形態3に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図13】上記実施の形態3に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図14】本発明の実施の形態4に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図15】上記実施の形態4に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図16】上記実施の形態4に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図17】本発明の実施の形態5に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図18】上記実施の形態5に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図19】本発明の実施の形態6に係る蓄電装置の構成を示す回路図
【図20】上記実施の形態6に係る蓄電装置の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図
【図21】上記実施の形態6に係る蓄電装置の各部動作波形図
【図22】従来の蓄電装置の蓄電素子のインピーダンス測定方法を示す図
【図23】従来の蓄電素子のインピーダンス特性図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。本実施の形態は、蓄電素子が2素子の蓄電装置に適用した例である。
【0024】
図1において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100は、第1の蓄電素子101と、第2の蓄電素子102と、第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子に接続された第1〜第4のスイッチ111〜114と、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフ動作によって選択された第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114に制御信号VG1〜VG4を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路130とを備えて構成される。
【0025】
インダクタ120と第1〜第4のスイッチ111〜114とは、フルブリッジ回路121を構成する。通常、電源装置に使用されるフルブリッジ回路は、インダクタをトランスとして2次側に整流、平滑回路を用いるブリッジ回路として用いられるが、本実施の形態のフルブリッジ回路121は、1次側のみを用いるため2次側は不要となる。
【0026】
第1〜第4のスイッチ111〜114は、例えばFET又はMOSトランジスタからなるスイッチ素子である。
【0027】
インダクタ120の一端は、第1のスイッチ111を介して第1の蓄電素子101の正極に接続されるとともに、第2のスイッチ112を介して第1の蓄電素子101の負極に接続され、インダクタ120の他端は、第4のスイッチ114を介して第2の蓄電素子102の正極に接続されるとともに、第3のスイッチ113を介して第2の蓄電素子102の負極に接続される。第1〜第4のスイッチ111〜114のスイッチングにより第1の蓄電素子101に流れる電流Ibatt1は、電流計141により検出され、電圧Vbatt1は、電圧計151により検出される。また、第1〜第4のスイッチ111〜114のスイッチングにより第2の蓄電素子102に流れる電流Ibatt2は、電流計142により検出され、電圧Vbatt2は、電圧計152により検出される。
【0028】
駆動回路130は、第1及び第2の蓄電素子101,102のうち、一方の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、他方の蓄電素子から充放電するように第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフを切替える。ここでは、駆動回路130は、1周期の中に、少なくとも、第1の蓄電素子101からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第2の蓄電素子102に電流を流す期間と、第2の蓄電素子102からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第1の蓄電素子101に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114をオンオフする。
【0029】
以下、上述のように構成された蓄電装置100の動作について説明する。
【0030】
図2は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置の動作波形図であり、図2(a)は第1の蓄電素子101の電圧Vbatt1とその電流Ibatt1を示し、図2(b)は図2(a)の動作波形の要部拡大図を示す。
【0031】
第1〜第4のスイッチ111〜114は、駆動回路130からの制御信号VG1〜VG4により後述するようにオンオフを繰り返す。これにより、第1の蓄電素子101は、スイッチング周期ごとに小刻みに充電又は放電される。第1の蓄電素子101に流れる電流Ibatt1と電圧Vbatt1は、図2に示すように平均して正弦波状となるように制御される。例えば、図2(a)のIbatt1に示すように、電流Ibatt1が増加したとき(充電時)、図2(b)のVbatt1に示すように電圧Vbatt1は増加し、電流Ibatt1が0になると電圧Vbatt1はその電圧を保つ。電流Ibatt1及び電圧Vbatt1の減少時(放電時)についても同様である。以上の動作が繰り返され、それをある時間幅で観測すると正弦波のような波形(擬似正弦波)となる。但し、この擬似正弦波を実現するためには、適当なインダクタ120のインダクタンスLと第1〜第4のスイッチ111〜114のオン時間の調整が必要である。本発明者らによれば、百回(100パルス/1サイクル)以上の繰り返しにより、蓄電素子101,102のインピーダンス測定に十分な波形を得ることが確認された。なお、インピーダンス測定を行う場合、電流あるいは電圧のいずれを擬似正弦波とするかは任意である。
【0032】
図3は、電流Ibatt1と電圧Vbatt1をPWM変調で正弦波状にする例を示す図である。図3(a)に示すように、正弦波170をパルス表現した電圧Vbatt171を第1の蓄電素子101に与えると、図3(b)に示すように電圧Vbatt171に対応する電流Ibatt172が流れる。図3(c)は、電流Ibatt172を流すインダクタ電流173を示す。
【0033】
次に、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフによる第1及び第2の蓄電素子101,102の放電/充電動作について説明する。
【0034】
図4は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1の蓄電素子101の放電により第2の蓄電素子102が充電される期間の第1〜第4のスイッチ111〜114の動作を示す。図4中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。図5は、図4の蓄電装置100の各部動作波形図である。
【0035】
図4(a)において、第1の蓄電素子101には電荷が蓄積されているものとする。この状態で、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113を同時にオンし、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオフすると、第1の蓄電素子101の正極から第1のスイッチ111、インダクタ120、第3のスイッチ113及び第2の蓄電素子102の負極に至る経路が導通し、第1の蓄電素子101の放電によりインダクタ電流I_L=0の状態からインダクタ電流I_Lが流れインダクタ電流I_Lが増加する。
【0036】
その後、第1のスイッチ111をオフし、第2のスイッチ112をオンすると、図4(b)の状態となる。第1〜第4のスイッチ111〜114は、FET又はMOSトランジスタからなるスイッチ素子を想定しているため、第2のスイッチ112のオンにより第2のスイッチ112はオン抵抗のみを持つダイオード(ボディダイオード)としての機能を発揮し、図4(b)のループで循環電流が流れ始める。
【0037】
図4(b)の状態は、第2のスイッチ112と第3のスイッチ113を同時にオンし、第1のスイッチ111と第4のスイッチ114をオフすることで、第4のスイッチ114がボディダイオードとなりインダクタ120、第3のスイッチ113、第2のスイッチ112及びインダクタ120に至る閉ループを形成し、インダクタ120と第1の蓄電素子101及び第2の蓄電素子102とは切り離される。この閉ループをインダクタ電流I_Lが循環(回生)することでインダクタ電流I_Lを保つ。ここで、第1のスイッチ111と第2のスイッチ112、また第3のスイッチ113と第4のスイッチ114の同時オンはなく貫通電流は防止される。また、上記ボディダイオードとなるオン開始時間を所定デッドタイミングとして取ることで貫通電流は防止される。
【0038】
その後、図4(c)において、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114を同時にオンし、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオフすると、第1の蓄電素子101の負極から第2のスイッチ112、インダクタ120、第4のスイッチ114及び第2の蓄電素子102の正極に至る経路が導通し、インダクタ電流I_Lが第2の蓄電素子102に流入し第2の蓄電素子102がインダクタ電流I_Lによって充電される。
【0039】
その後、インダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になった後、図4(d)に示すように全てのスイッチをオフする。
【0040】
以上の動作により、第1の蓄電素子101の電荷を第2の蓄電素子102へ移動させることができる。
【0041】
正弦波の上側半分の周期は図4(a)に示す右向きの循環電流、正弦波の下側半分の周期は図4(c)に示す左向きの循環電流である。また、駆動回路130が第1〜第4のスイッチ111〜114のオン時間を工夫したPWM駆動を行うことで、擬似的ではあるが正弦波(図3参照)のような波形を生成し、この擬似正弦波を用いて電圧あるいは電流を計測することで第1及び第2の蓄電素子101,102のインピーダンスを測定することができる。本発明者らによれば、蓄電素子101,102のインピーダンス測定には十分な波形を得ることができた。
【0042】
図6は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第2の蓄電素子102の放電により第1の蓄電素子101が充電される期間の第1〜第4のスイッチ111〜114の動作を示す。図6中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。図7は、図6の蓄電装置100の各部動作波形図である。
【0043】
図6(a)において、第2の蓄電素子102には電荷が蓄積されているものとする。この状態で、第4のスイッチ114と第2のスイッチ112を同時にオンし、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオフすると、第2の蓄電素子102の正極から第4のスイッチ114、インダクタ120、第2のスイッチ112及び第1の蓄電素子101の負極に至る経路が導通し、第2の蓄電素子102の放電によりインダクタ電流I_L=0の状態からインダクタ電流I_Lが流れインダクタ電流I_Lが減少する。
【0044】
その後、第4のスイッチ114をオフし、第3のスイッチ113をオンすると、図6(b)の状態となる。図6(b)の状態は、第2のスイッチ112と第3のスイッチ113を同時にオンし、第1のスイッチ111と第4のスイッチ114をオフすることで、インダクタ120、第2のスイッチ112、第3のスイッチ113及びインダクタ120に至る閉ループを形成し、インダクタ120と第1の蓄電素子101及び第2の蓄電素子102とは切り離される。この閉ループをインダクタ電流I_Lが回流することでインダクタ電流I_Lを保つ。
【0045】
その後、図6(c)において、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113を同時にオンし、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオフすると、第2の蓄電素子102の負極から第3のスイッチ113、インダクタ120、第1のスイッチ111及び第1の蓄電素子101の正極に至る経路が導通し、インダクタ電流I_Lが第1の蓄電素子101に流入し第1の蓄電素子101がインダクタ電流I_Lによって充電される。
【0046】
その後、インダクタ電流I_Lが増加してI_L=0になった後、図6(d)に示すように全てのスイッチをオフする。
【0047】
以上の動作により、第2の蓄電素子102の電荷を第1の蓄電素子101へ移動させることができる。
【0048】
インダクタ120に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、第1の蓄電素子101に対して正弦波状に電流及び電圧を変化させることが可能となる(図2及び図3参照)。同様に、第2の蓄電素子102に対しても正弦波状に電流及び電圧変化をさせることが可能となる。この際、第1及び第2の蓄電素子101,102の端子電圧とその電流を検出し、演算することで、正弦波状に変化させた周波数での第1及び第2の蓄電素子101,102のインピーダンスを測定することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、インピーダンス測定機能付き蓄電装置100は、第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子に接続された第1〜第4のスイッチ111〜114と、選択された第1及び第2の蓄電素子101,102の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路130とを備え、駆動回路130は、1周期の中に、少なくとも、第1の蓄電素子101からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第2の蓄電素子102に電流を流す期間と、第2の蓄電素子102からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第1の蓄電素子101に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114をオンオフ制御するので、第1及び第2の蓄電素子101,102のうち、一方の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、他方の蓄電素子から充放電する、すなわち、蓄電素子に蓄えられた電荷は全て蓄電装置内の別の蓄電素子から供給されることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置内部で測定に必要な電荷をまかなうことができる。このため、蓄電装置を機器から取り外したり、蓄電素子の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に流すことができ、その蓄電素子のインピーダンス測定が可能となる。また、インピーダンス測定情報を電池の劣化検出、状態検知に用いることができる。
【0050】
本実施の形態の効果をまとめると以下のようになる。
【0051】
(1)まず、電池パックの非破壊検査であることが挙げられる。
【0052】
(2)次に、高価で大型な測定器を使わずにインピーダンス測定を行うことができる。インピーダンス測定を、高速かつ小型な測定器で実現できる理由の一つは、蓄電装置内部で測定に必要な電荷をまかなうことができ、測定に用いたエネルギの有効活用できることではじめて実現できた。
【0053】
(3)インピーダンス測定時間が飛躍的に短縮されるので不使用時間帯を有効活用することができる。実際には、携帯機器に搭載されるバッテリパック内の蓄電素子(セル)は、例えば6乃至16個、電動車両などの蓄電装置内の蓄電素子(セル)に至っては数百個となる場合がある。本実施の形態の蓄電装置100は、蓄電素子(セル)の一つ一つのインピーダンスを測定できるのは勿論のこと、セルかたまりであるバッテリ(又は複数セルのブロック)のインピーダンスを測定することができる。多数のセルのインピーダンスを測定するには、本実施の形態の電源装置100のように、測定時間の飛躍的な向上がなければ実現できない。
【0054】
(4)各セルに適用することができ、各セルの細かなインピーダンス測定が可能になる。これにより、よりきめ細かな電池検査と、劣化セル判定、及びそれを迂回するバイパスルートの確保が可能になる。また、電池寿命の有効な予測が実現できる。
【0055】
(5)スイッチのオンオフにより擬似正弦波を生成しインピーダンス測定を行っている。スイッチのオンオフで波形を生成しているため、装置の使用目的や測定の精度に合わせた波形生成が容易に行える。このことはインピーダンス測定器としての自由度が高いこと、すなわち適用範囲が広く携帯機器や電動車両の電源装置として広範囲に適用可能であることにつながる。なお、トランス結合ではないので漏れ磁束による効率低下や結合係数の差によるアンバランスは発生しない。
【0056】
ここで、蓄電素子の電圧を測定する際、スイッチング周波数領域を遮断し、正弦波周波数領域を通過させるフィルタなどノイズ除去の仕組みを適宜組み合わせ用いることにより、検出精度を向上できる。
【0057】
また、第1〜第4のスイッチ111〜114のオンオフ順を最適化すれば、ノイズをより低減することができる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態1は、蓄電素装置内の蓄電素子を2個としたが、各蓄電素子に設けたスイッチを切り替えるなどの方法を採れば、3個以上の蓄電素子の直列構成が可能になる。
【0059】
図8は、本発明の実施の形態2に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図1と同一構成部分には、同一符号を付している。
【0060】
図8において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置200は、直列接続された第1〜第6の蓄電素子201〜206と、インダクタ120とフルブリッジ回路121を構成する第1〜第4のスイッチ111〜114と、第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子と第1〜第4のスイッチ111〜114とに接続された複数のスイッチ211〜222と、第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222のオンオフ動作によって選択された第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222に制御信号VG1〜VG4,VG11〜VG22を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路230とを備えて構成される。
【0061】
駆動回路230は、直列接続されたn(nは2以上の整数。いまn=6)個の蓄電素子201〜206のうち、第k(kはn以下の整数)の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、他のいずれかの蓄電素子から充放電するように第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222のオンオフを切替える。ここでは、駆動回路230は、1周期の中に、少なくとも、第kの蓄電素子からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第k+1の蓄電素子に電流を流す期間と、第k+1の蓄電素子からインダクタ120に電流を流す期間と、インダクタ120から第k+2の蓄電素子に電流を流す期間を有するように第1〜第4のスイッチ111〜114及び複数のスイッチ211〜222をオンオフする。
【0062】
複数のスイッチ211〜222は、第1〜第4のスイッチ111〜114と同様に、例えばFET又はMOSトランジスタからなるスイッチ素子である。
【0063】
以下、上述のように構成された蓄電装置200の動作について説明する。
【0064】
図9は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置200の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1の蓄電素子201の放電により第2の蓄電素子202が充電される期間のスイッチ111〜114,211〜222の動作を示す。図9中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。
【0065】
また図10は、図9の蓄電装置200の各部動作波形図であり、図9(a)〜(h)の遷移状態は、それぞれ図10の動作タイミングa.〜h.に対応する。
【0066】
図9(a)において、第1の蓄電素子201の電圧をVbatt201,第2の蓄電素子202の電圧をVbatt202とし、インダクタ120のインダクタンスをL、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113のオン時間をそれぞれTon13、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114のオン時間をTon24とする。各蓄電素子201〜206の両端に接続されたスイッチ211〜222のうち、第1の蓄電素子201の両端に接続されたスイッチ211とスイッチ213のみをオン状態にし、フルブリッジ回路121の第1のスイッチ111と第3のスイッチ113のみをオンする。他のスイッチは全てオフにする。これにより第1の蓄電素子201の両端からインダクタ120にインダクタ電流I_Lを流す(図10a.の状態参照)。
【0067】
図9(b)に示すように、インダクタ電流I_LがTon13秒後には、Vbatt201×Ton13/Lとなり、この時、第1のスイッチ111をオフして第2のスイッチ112をオンすると、インダクタ120に流れるインダクタ電流I_Lはその値を維持しつつ循環電流が流れる。このときスイッチ211とスイッチ212はオフされる(図10b.の状態参照)。
【0068】
次いで図9(c)に示すように、スイッチ213とスイッチ214をオンし、第3のスイッチ113をオフして第4のスイッチ114をオンすると、循環電流は第2の蓄電素子202に流れ込むとともに、その電流値を減らす(図10c.の状態参照)。励磁に要したTon13秒後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図9(d)及び図10d.の状態参照)。この時、電流は0なので蓄電素子側のスイッチをどのような状態にしていても第1のスイッチ111と第4のスイッチ114さえオフしていれば、インダクタ120の電流を0に維持できるのでスイッチの状態は全てオフでなくても構わない。
【0069】
次いで図9(e)に示すように、各蓄電素子201〜206の両端に接続されたスイッチ211〜222のうち、第1の蓄電素子201の両端に接続されたスイッチ211とスイッチ212のみをオン状態にし、フルブリッジ回路121の第2のスイッチ112と第4のスイッチ114のみをオンする。これにより、第1の蓄電素子201の両端からインダクタ120にインダクタ電流I_Lを流す(図10e.の状態参照)。
【0070】
図9(f)に示すように、インダクタ電流I_LがTon24秒後には、Vbatt201×Ton24/Lとなり、この時、第4のスイッチ114をオフし、第3のスイッチ113をオンすると、インダクタ120に流れるインダクタ電流I_Lはその値を維持しつつ循環電流が流れる。このときスイッチ211とスイッチ212はオフされる(図10f.の状態参照)。
【0071】
次いで図9(g)に示すように、スイッチ213とスイッチ214をオンし、第2のスイッチ112をオフして第1のスイッチ111をオンすると、循環電流は第2の蓄電素子202に流れ込むとともに、その電流値を減らす(図10g.の状態参照)。励磁に要したTon24秒後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図9(h)及び図10h.の状態参照)。
【0072】
上記、図9(a)〜(g)の様子を各スイッチのゲート電圧で示したタイミングチャートで示したものが図10である。第1〜4のスイッチ111〜114の各ゲート電圧をVG1〜VG4、スイッチ211〜222のうちスイッチ211〜214の各ゲート電圧をVG11〜VG14を示している。
【0073】
以上説明した図9(e)から図9(g)での過程は、図9(a)から図9(d)の過程を繰り返しても動作上なんら支障は無いが、実際はオン時間やオフするタイミングのばらつきなどで徐々にインダクタ120が偏磁する可能性もあるため、本実施の形態では磁性体の動作のバランスを考慮してインダクタ電流I_Lは交流状に変化させるように、図9(e)から図9(g)のステップ(図10e.−g.参照)を設けている。
【0074】
また、第1の蓄電素子201から放電し、第2の蓄電素子202に充電する場合を例に採り説明したが、同様の方法により、第1の蓄電素子201から第3の蓄電素子203、第2の蓄電素子202から第1の蓄電素子201など、各蓄電素子間同士で電荷を移動させることができる。また、第1の蓄電素子201と第2の蓄電素子202の直列蓄電ブロックから第3の蓄電素子203と第4の蓄電素子204の直列蓄電ブロックへの電荷の移動など、各種組み合わせが可能である。さらに、2直列ブロックから3直列ブロックや単一蓄電素子の間でも電荷のやりとりを行うことができる。
【0075】
また、図8では便宜上各蓄電素子は全て直列で示したが、2並列を3直列、3並列を2直列など必要に応じて並列数を増やしても同様の効果を発揮する。
【0076】
したがって、本実施の形態によれば、蓄電装置200内に蓄電素子が3個以上ある場合において、実施の形態1と同様の効果を得ることができ、各蓄電素子のインピーダンスを測定することができる。携帯機器に搭載されるバッテリパック内の蓄電素子(セル)は、例えば6乃至16個、電動車両などの蓄電装置内の蓄電素子(セル)は数百個となる場合があり、本実施の形態の蓄電装置200は、かかる装置に適用して好適である。
【0077】
(実施の形態3)
直列数の多い蓄電装置では、蓄電素子の両端に単にスイッチを設ける方法を採るとスイッチの数とそれを制御する配線や回路が膨大になる。実施の形態3は、直列接続された蓄電素子が多い蓄電装置においてスイッチの数と回路を低減する例について説明する。
【0078】
図11は、本発明の実施の形態3に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図8と同一構成部分には、同一符号を付している。また、スイッチ数の削減に特徴があり、それ以外の構成要素は図8と同様であるため記載を省略している。
【0079】
図11において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置300は、直列接続された第1〜第6の蓄電素子201〜206(図11では第3の蓄電素子203まで図示)と、インダクタ120とフルブリッジ回路121を構成する第1〜第4のスイッチ111〜114と、第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子に接続された複数のスイッチ211〜222(図11ではスイッチ214まで図示)と、第1〜第4のスイッチ111〜114とスイッチ211及びスイッチ212〜222との間で全波整流回路のように接続された第1〜第4の中間スイッチ311〜314と、第1〜第4のスイッチ111〜114、第1〜第4の中間スイッチ311〜314及び複数のスイッチ211〜222のオンオフ動作によって選択された第1〜第6の蓄電素子201〜206の各端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ111〜114、第1〜第4の中間スイッチ311〜314及び複数のスイッチ211〜222にこの順で制御信号VG1〜VG4,VG31〜VG34,VG11〜VG22を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路330とを備えて構成される。
【0080】
以下、上述のように構成された蓄電装置300の動作について説明する。
【0081】
蓄電装置300は、第1〜第4の中間スイッチ311〜314を設けて図10と同様の電荷の授受を行う。
【0082】
図12及び図13は、インピーダンス測定付き蓄電装置300の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図である。図12は、第1の蓄電素子201の放電により第3の蓄電素子203が充電される期間、図13は、第2の蓄電素子202の放電により第4の蓄電素子204が充電される期間のスイッチ111〜114,311〜314,211〜222(該当スイッチのみ図示)の動作をそれぞれ示す。図12及び図13中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。
【0083】
まず、図12(a)において、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ211とスイッチ212をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第1の中間スイッチ311と第4の中間スイッチ314をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオンすると、第1の蓄電素子201からインダクタ120へ電流が流れる。
【0084】
次いで図12(b)に示すように、第1のスイッチ111をオフし、第2のスイッチ112をオンすると、インダクタ120の電流I_Lはその値を保持しつつ、循環電流がインダクタ120、第3のスイッチ113、第2のスイッチ112を経由して流れ続ける。図12(b)では、スイッチ211〜215や第1〜第4の中間スイッチ311〜314はオフしているように図示したが、直前のオンの状態を維持していても構わない。すなわち、各蓄電素子201〜206、あるいはそれを複数個まとめた蓄電ブロックの両端を短絡する構成など、蓄電素子201〜206から電流が流れる構成でなければ、どのような状態でも構わない。
【0085】
次いで図12(c)に示すように、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ213とスイッチ214をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第1の中間スイッチ311と第4の中間スイッチ314をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオンすると、循環電流は第3の蓄電素子203に流れ込むとともに、その電流値を減らす。励磁に要した時間と同じ時間後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図12(d)参照)。この時、電流は0なので蓄電素子側のスイッチをどのような状態にしていても第1のスイッチ111と第4のスイッチ114さえオフしていれば、インダクタ120の電流を0に維持できるのでスイッチの状態は全てオフでなくてもよく、各蓄電素子、あるいはそれを複数個まとめた蓄電ブロックの両端を短絡する構成等など、蓄電素子から電流が流れる構成でなければ、どのような状態でも構わない。
【0086】
以上、第1の蓄電素子201から第3の蓄電素子203へ電荷を移動させる場合を例に採り説明したが、同様の方法により、任意の蓄電素子から他の蓄電素子に電荷を移動することも同様の方法により可能である。
【0087】
図13は、第2の蓄電素子202から第4の蓄電素子204へ電荷を移動させる場合のスイッチの切り替えの例である。まず、図13(a)において、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ212とスイッチ213をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第2の中間スイッチ312と第3の中間スイッチ313をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第1のスイッチ111と第3のスイッチ113をオンすると、第2の蓄電素子202からインダクタ120へ電流が流れる。
【0088】
次いで図13(b)に示すように、第1のスイッチ111をオフし、第2のスイッチ112をオンすると、インダクタ120の電流I_Lはその値を保持しつつ、循環電流がインダクタ120、第3のスイッチ113、第2のスイッチ112を経由して流れ続ける。図13(b)では、スイッチ211〜215や第1〜第4の中間スイッチ311〜314はオフしているように図示したが、直前のオンの状態を維持していても構わない。
【0089】
次いで図13(c)に示すように、直列に接続された各蓄電素子201〜206の両端に設けられたスイッチ211〜222のうちスイッチ214とスイッチ215をオン、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のうち第2の中間スイッチ312と第3の中間スイッチ313をオン、フルブリッジ回路121を構成する第1〜4のスイッチ111〜114のうち、第2のスイッチ112と第4のスイッチ114をオンすると、循環電流は第4の蓄電素子204に流れ込むとともに、その電流値を減らす。励磁に要した時間と同じ時間後に電流は0になるので、その時点で全てのスイッチをオフする(図13(d)参照)。この時、電流は0なので蓄電素子側のスイッチをどのような状態にしていても第1のスイッチ111と第4のスイッチ114さえオフしていれば、インダクタ120の電流を0に維持できるのでスイッチの状態は全てオフでなくてもよい。
【0090】
上述した図13に示すとおりの順序でスイッチのオンオフを行えば、図12と同様の効果を発揮する。この場合、スイッチ212とスイッチ213を用いているため、蓄電素子の両端に備えられたスイッチが隣合う蓄電素子の両端スイッチと兼用されていてもフルブリッジ回路121にかかる電圧の向きを同じにできるため、直列数が多い蓄電装置においてスイッチ数の削減が可能となる。また、第1〜第4の中間スイッチ311〜314のスイッチのうち、第1の中間スイッチ311と第4の中間スイッチ314の組み合わせでオンする場合と、第2の中間スイッチ312と第3の中間スイッチ313の組み合わせでオンする場合を適宜切り替えることにより、奇数番号と偶数番号の蓄電素子間で電荷の授受を行うことができる。
【0091】
かかる構成によれば、インダクタ120に蓄えられた電荷は、全て蓄電装置300内の別の蓄電素子へ蓄えられることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置300内部で測定に必要な電荷をまかなうことができるため、蓄電装置300を機器から取り外したり、蓄電素子の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に付与し、蓄電素子のインピーダンス測定が可能となる。
【0092】
ここで、第2のスイッチ112と第3のスイッチ113をオンしてインダクタ電流I_Lを循環する期間や、インダクタ電流I_L=0の状態で全てのスイッチをオフした期間は、電荷の移動に関与していない期間であり、必要に応じて短くしたり省いたりしても構わない。
【0093】
このように、本実施の形態によれば、第1〜第4のスイッチ111〜114とスイッチ211及びスイッチ212〜222との間に第1〜第4の中間スイッチ311〜314を設けているので、実施の形態2と同様の効果を得ることができるとともに、各第1〜第6の蓄電素子201〜206の両端から第1〜第4のスイッチ111〜114に接続されるスイッチの数を削減することができる。特に、電動車両などの蓄電装置内の蓄電素子(セル)は数百個となる場合があり、このような場合にスイッチ数の削減は、スイッチ素子や駆動回路の規模、配線数低減につながり、コスト面や省電力化の観点から好ましい。
【0094】
なお、本実施の形態では、フルブリッジ回路121を例に採り説明をしているが、ハーフブリッジ回路やプッシュプル回路などの基本回路を応用しても同様の効果を発揮する。
【0095】
また、電荷の移動元である第1の蓄電素子201と移動先である第2の蓄電素子202の電圧が同じと仮定して説明をしているが、この仮定は必須のものではなく、第1の蓄電素子201と第2の蓄電素子202の電圧が違う場合でも、I_Lの増加傾きが第1の蓄電素子201の電圧に応じて変化し、インダクタの電流I_Lが増加しても飽和領域に入らない限り循環電流を流すことができる。また、インダクタ電流I_Lが減少するときの傾きは、循環電流の値を初期値として第2の蓄電素子202の電圧に応じて変化する。このときインダクタ電流I_Lが0になった時点でスイッチをオフすることにより、励磁時間と減磁時間が異なるが同様の動作となり、同様の効果を発揮することができる。
【0096】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。本実施の形態は、蓄電素子が2素子の蓄電装置に適用した例である。
【0097】
図14において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置400は、直列接続された第1の蓄電素子401及び第2の蓄電素子402と、第1及び第2の蓄電素子401,402の両端に接続された第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との直列構成からなるスイッチ対410と、第1の蓄電素子401と第2の蓄電素子402との接続点と第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との接続点との間に接続されたインダクタ420と、第1及び第2のスイッチ411,412に制御信号VG41,VG42を出力して第1のスイッチ411と第2のスイッチ412を交互にオンオフする駆動回路430とを備えて構成される。
【0098】
第1及び第2のスイッチ411,412は、直列接続されたスイッチであり、並列に直列接続された第1及び第2の蓄電素子401,402と、インダクタ420をはさんでハーフブリッジ回路421を構成している。
【0099】
以下、上述のように構成された蓄電装置400の動作について説明する。
【0100】
図15は、インピーダンス測定付き蓄電装置400の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1及び第2のスイッチ411,412の動作を示す。図15中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。図16は、図15の蓄電装置400の各部動作波形図である。
【0101】
図15(a)に示すように、まず、インダクタ電流I_L=0の状態から第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加する期間(図16a.期間参照)と、図15(b)に示すように、第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になる期間(図16b.期間参照)とを交互に設けることにより、第1の蓄電素子401の電荷を第2の蓄電素子402へ移動させる。
【0102】
同様に、インダクタ電流I_L=0の状態から第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少する期間と、第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加してI_L=0になる期間を交互に設けることにより、第2の蓄電素子402の電荷を第1の蓄電素子401へ移動させる。
【0103】
インダクタ420に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、第1の蓄電素子401に対して正弦波状に電流又は電圧を変化させることが可能となる。同様に、第2の蓄電素子402に対しても正弦波状の電流又は電圧変化をさせることが可能となる。この際、第1及び第2の蓄電素子401,402の端子電圧と流れ出る電流を検出し、演算することで、正弦波状に変化させた周波数での蓄電素子のインピーダンスが測定できる。正弦波状に電流又は電圧を変化させることについては、図2及び図3で述べた実施の形態1と同様である。
【0104】
ここで、第1及び第2の蓄電素子401,402の電圧を測定する際、スイッチング周波数領域を遮断し、正弦波周波数領域を通過させるフィルタなどノイズ除去の仕組みを適宜組み合わせ用いることにより、検出精度を向上できる。かかる構成を採れば、インダクタ420に蓄えられた電荷は全て蓄電装置400内の別の蓄電素子へ蓄えられることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置内部で測定に必要な電荷をまかなうことができるため、蓄電装置を機器から取り外したり、蓄電素子の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に流すことができ、その結果蓄電素子のインピーダンス測定が可能となる。
【0105】
(実施の形態5)
実施の形態4は、蓄電素装置内の蓄電素子を2個としたが、各蓄電素子に設けたスイッチを切り替えるなどの方法を採れば、3個以上の蓄電素子の直列構成が可能になる。
【0106】
図17は、本発明の実施の形態5に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図14と同一構成部分には、同一符号を付している。
【0107】
図17において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置500は、直列接続された第1〜第4の蓄電素子401〜404と、第1〜第4の蓄電素子401〜404の両端に接続された第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との直列構成からなるスイッチ対410と、各蓄電素子401〜404の両端に並列接続された第1〜第12の中間スイッチ511〜522と、隣合う蓄電素子401〜404との接続点と第1のスイッチ411と第2のスイッチ412との接続点との間に接続されたインダクタ420と、第1及び第2のスイッチ411,412、及び第1〜第12の中間スイッチ511〜522に制御信号VG41,VG42,VG51〜VG62を出力して第1のスイッチ411と第2のスイッチ412を交互にオンオフする駆動回路530とを備えて構成される。
【0108】
第1及び第2のスイッチ411,412は、直列接続されたスイッチであり、並列に直列接続された第1及び第2の蓄電素子401,402と、インダクタ420をはさんでハーフブリッジ回路421を構成している。
【0109】
なお、図17では、4個の蓄電素子401〜404とこれら蓄電素子401〜404の両端に並列接続される12個の中間スイッチ511〜522の構成例を示したが、これらは図示の便宜上であり、任意の数により構成されることは言うまでもない。
【0110】
以下、上述のように構成された蓄電装置500の動作について説明する。
【0111】
図18は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置500の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、第1及び第2のスイッチ411,412、及び第1〜第12の中間スイッチ511〜522の動作を示す。また、動作をより分かり易くするため、図17の構成例のうち、第1〜第3の蓄電素子401〜403と第1〜第6の中間スイッチ511〜516、及び第1及び第2のスイッチ411,412からなる要部構成を示している。図18中の太実線は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示す。
【0112】
図18(a)に示すように、インダクタ電流I_L=0の状態から第1の中間スイッチ511、第3の中間スイッチ513及び第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加する期間と、図18(b)に示すように、第3の中間スイッチ513、第5の中間スイッチ515及び第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になる期間とを交互に設けることにより、第1の蓄電素子401の電荷を第2の蓄電素子402へ移動させる。
【0113】
同様に、インダクタ電流I_L=0の状態から第3の中間スイッチ513、第5の中間スイッチ515及び第2のスイッチ412をオンしてインダクタ電流I_Lが減少する期間と、第1の中間スイッチ511、第3の中間スイッチ513及び第1のスイッチ411をオンしてインダクタ電流I_Lが増加してI_L=0になる期間を交互に設けることにより、第2の蓄電素子402の電荷を第1の蓄電素子401へ移動させる。
【0114】
図18(a),(b)は、第1の蓄電素子401から第2の蓄電素子402へ、また第2の蓄電素子402から第1の蓄電素子401への電荷の移動例であるが、同様にして、図18(c),(d)に示す第2の蓄電素子402と第3の蓄電素子403間の電荷の移動、図18(e),(f)に示す第2の蓄電素子402と第1の蓄電素子401間の電荷の移動、図18(g),(h)に示す第3の蓄電素子403と第2の蓄電素子402間の電荷の移動がそれぞれ可能である。
【0115】
この場合もインダクタ420に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、各蓄電素子401〜404に対して正弦波状に電流又は電圧を変化させることが可能となり、各蓄電素子401〜404の端子電圧と流れ出る電流を検出し、演算することで、正弦波状に変化させた周波数での蓄電素子のインピーダンスが測定できる。
【0116】
このように、3個直列の場合は、図18に示すようにスイッチを操作することにより、第1の蓄電素子401と第2の蓄電素子402の間での電荷移動、第2の蓄電素子402と第3の蓄電素子403の間での電荷移動、また第1の蓄電素子401と第3の蓄電素子403の間や、第1の蓄電素子401と第2及び第3の蓄電素子402,403の直列ブロックとの間、第1及び第2の蓄電素子401,402の直列構成と第3の蓄電素子403との間などで適宜電荷を移動でき、インピーダンス測定に応用できるという効果を奏する。
【0117】
なお、上記各実施形態のインピーダンス測定機能付き蓄電装置を、電気自動車などでよく使われる蓄電装置に応用する際は、蓄電装置内部に予め設けられた各蓄電素子、あるいは蓄電素子を複数まとめた各蓄電ブロック電圧を測定するための配線およびスイッチを、インピーダンス測定用のスイッチとして兼用することも可能である。このように構成すれば、スイッチコストを削減することができる。
【0118】
(実施の形態6)
上記各実施の形態は、蓄電素装置内の複数の蓄電素子のインピーダンス測定であった。しかし、本インピーダンス測定方法によれば、蓄電装置内の1つの蓄電素子が有する電荷を有効に利用することができる。以下この例を実施の形態6により説明する。
【0119】
図19は、本発明の実施の形態6に係るインピーダンス測定機能付き蓄電装置の構成を示す回路図である。図1と同一構成部分には、同一符号を付している。
【0120】
図19において、インピーダンス測定機能付き蓄電装置600は、蓄電素子601と、蓄電素子601の両端の端子に接続された第1〜第4のスイッチ611〜614と、第1〜第4のスイッチ611〜614のオンオフ動作によって選択された蓄電素子601の端子間電圧が印加されるインダクタ120と、第1〜第4のスイッチ611〜614に制御信号VG71〜VG74を出力してオンオフを適切なタイミングで切替える駆動回路630とを備えて構成される。
【0121】
インダクタ120と第1〜第4のスイッチ611〜614とは、フルブリッジ回路621を構成する。
【0122】
インダクタ120の一端は、第1のスイッチ611を介して蓄電素子601の正極に接続されるとともに、第2のスイッチ612を介して蓄電素子601の負極に接続され、インダクタ120の他端は、第4のスイッチ614を介して蓄電素子601の正極に接続されるとともに、第3のスイッチ613を介して蓄電素子601の負極に接続される。第1〜第4のスイッチ111〜114のスイッチングにより蓄電素子601に流れる電流Ibattは、電流計141により検出され、電圧Vbattは、電圧計151により検出される。
【0123】
駆動回路630は、蓄電素子601のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を充放電するように第1〜第4のスイッチ611〜614のオンオフを切替える。
【0124】
以下、上述のように構成された蓄電装置600の動作について説明する。
【0125】
図20は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置600の各スイッチがオンオフする状態遷移を示す図であり、蓄電素子601が充放電される期間のスイッチ611〜614の動作を示す。図20中の矢印は、該当するスイッチがオンして電流が流れる経路を示している。
【0126】
また図21は、図20の蓄電装置600の各部動作波形図である。
【0127】
図20(a)〜(c)において、まず、インダクタ電流I_L=0の状態から第1のスイッチ611と第3のスイッチ613を同時にオンしてインダクタ電流I_Lが増加した後、インダクタ電流I_Lを保つように第2のスイッチ612と第3のスイッチ613を同時にオンする期間を設け、第2のスイッチ612と第4のスイッチ614を同時にオンしてインダクタ電流I_Lが減少してI_L=0になった後、全てのスイッチ611〜614をオフすることにより、蓄電素子601の電荷を回生させることが可能になる(図21参照)。
【0128】
また、図20(d)〜(h)において、インダクタ電流I_L=0の状態から第2のスイッチ612と第4のスイッチ614が同時にオンしてインダクタ電流I_Lが減少した後、インダクタ電流I_Lを保つように第2のスイッチ612と第3のスイッチ613を同時にオンする期間を設け、第1のスイッチ611と第3のスイッチ613が同時にオンしてインダクタ電流I_L=が増加してI_L=0になった後、全てのスイッチ611〜614をオフすることにより、蓄電素子601の電荷を回生させることが可能になる(図21参照)。
【0129】
インダクタ120に電圧を印加する時間を制御することにより、単位時間当たりの移動電荷量を制御でき、スイッチング周波数に対して十分長い時間の変化であれば、蓄電素子601に対して正弦波状に電流乃至電圧を変化させることが可能となる。この際、蓄電素子601の端子電圧を電圧計151で、また流れ出る電流を電流計141により検出し、図示しないインピーダンス測定器により演算することで、正弦波状に変化させた周波数での蓄電素子601のインピーダンスを測定することができる。
【0130】
なお、蓄電素子の電圧を測定する際、スイッチング周波数領域を遮断し、正弦波周波数領域を通過させるフィルタなどノイズ除去の仕組みを適宜組み合わせ用いることにより、検出精度をより向上させることができる。
【0131】
本実施の形態によれば、インダクタ120に蓄えられた電荷は全て蓄電装置600内の別の蓄電素子へ蓄えられることになり、外部電源を用いることなく蓄電装置600内部で測定に必要な電荷をまかなうことができるため、蓄電装置600を機器から取り外したり、蓄電素子601の端子を外に出したりする必要が無く、インピーダンス測定に必要な交流電流を被測定蓄電素子に流すことができ、その結果蓄電素子のインピーダンス測定が可能になる。
【0132】
また、第2のスイッチ612と第3のスイッチ613をオンしてインダクタ電流I_Lを循環する期間や、インダクタ電流I_L=0の状態で全てのスイッチをオフした期間は、電荷の移動に関与していない期間であり、必要に応じて短くしたり省いたりしても構わない。
【0133】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0134】
例えば、上記各実施の形態における蓄電装置内の蓄電素子の数や接続状態は、限定されない。スイッチは、例えばMOSトランジスタを使用するのが一般的であるが、スイッチング動作を行う素子であればどのようなスイッチであってもよい。
【0135】
また、上記各実施の形態では蓄電装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、二次電池、蓄電池、インピーダンス測定装置等であってもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る蓄電装置は、インピーダンス測定機能付き蓄電装置として、携帯機器、電動車両に有用である。またバックアップ電源等の用途にも応用できる。また、携帯機器、電動車両以外の電子機器における蓄電装置にも広く適用され得るものである。
【符号の説明】
【0137】
100,200,300,400,500,600 インピーダンス測定機能付き蓄電装置
101,102,201〜206,401〜404,601 蓄電素子
111〜114,411,412,611〜614 スイッチ
120,420 インダクタ
121 フルブリッジ回路
130,230,330,430,530,630 駆動回路
141,142 電流計
151,152 電圧計
211〜222,511〜522 中間スイッチ
410 スイッチ対
421 ハーフブリッジ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、
前記第1及び第2の蓄電素子の各端子に接続された複数のスイッチと、
前記複数のスイッチのオンオフ動作によって選択された前記1又は第2の蓄電素子の各端子間電圧が印加されるインダクタと、
前記複数のスイッチを所定タイミングで切替える制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、
前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、
前記複数のスイッチをオンオフすることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、
前記第1及び第2の蓄電素子の両端に接続された第1のスイッチと第2のスイッチとの直列構成からなるスイッチ対と、
前記第1の蓄電素子と前記第2の蓄電素子との接続点と、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点との間に接続されたインダクタと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを交互にオンオフする制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、
前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、
前記スイッチ対をオンオフすることを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
前記交流電流あるいは電圧は、擬似正弦波形を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記インダクタと前記複数のスイッチとは、フルブリッジ回路を構成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記制御手段は、スイッチ周期を重ねるごとに蓄電素子を徐々に充電した後に放電する動作を繰り返し、
前記第1及び第2の蓄電素子に流れる電流と該蓄電素子の両端電圧を計測し、前記充放電周期における前記第1及び第2の蓄電素子のインピーダンスを測定する測定回路を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項6】
蓄電装置からの電源供給により動作する携帯機器であって、
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の蓄電装置を備えることを特徴とする携帯機器。
【請求項7】
蓄電装置からの電源供給を受けて駆動する電動車両であって、
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の蓄電装置を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項1】
直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、
前記第1及び第2の蓄電素子の各端子に接続された複数のスイッチと、
前記複数のスイッチのオンオフ動作によって選択された前記1又は第2の蓄電素子の各端子間電圧が印加されるインダクタと、
前記複数のスイッチを所定タイミングで切替える制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、
前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、
前記複数のスイッチをオンオフすることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
直列接続された第1の蓄電素子及び第2の蓄電素子と、
前記第1及び第2の蓄電素子の両端に接続された第1のスイッチと第2のスイッチとの直列構成からなるスイッチ対と、
前記第1の蓄電素子と前記第2の蓄電素子との接続点と、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとの接続点との間に接続されたインダクタと、
前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを交互にオンオフする制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第2の蓄電素子からの充放電により供給し、
前記第2の蓄電素子のインピーダンスを測定するために必要な交流電流あるいは電圧を、前記第1の蓄電素子からの充放電により供給するように、
前記スイッチ対をオンオフすることを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
前記交流電流あるいは電圧は、擬似正弦波形を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記インダクタと前記複数のスイッチとは、フルブリッジ回路を構成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記制御手段は、スイッチ周期を重ねるごとに蓄電素子を徐々に充電した後に放電する動作を繰り返し、
前記第1及び第2の蓄電素子に流れる電流と該蓄電素子の両端電圧を計測し、前記充放電周期における前記第1及び第2の蓄電素子のインピーダンスを測定する測定回路を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項6】
蓄電装置からの電源供給により動作する携帯機器であって、
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の蓄電装置を備えることを特徴とする携帯機器。
【請求項7】
蓄電装置からの電源供給を受けて駆動する電動車両であって、
前記請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の蓄電装置を備えることを特徴とする電動車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−185167(P2012−185167A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86470(P2012−86470)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【分割の表示】特願2006−122682(P2006−122682)の分割
【原出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【分割の表示】特願2006−122682(P2006−122682)の分割
【原出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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