説明

蓄電装置及び充電方法

【課題】時間とともに変動する供給電力を蓄積する場合に、充電効率を向上できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】二次電池を含んでなる主蓄電部11と、主蓄電部11と直列接続可能に構成され、電気二重層キャパシタを含んでなる補助蓄電部12と、供給電力の変動に応じて、主蓄電部11又は補助蓄電部12のいずれか一方に供給電力を供給する状態と、直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の両方に供給電力を供給する状態と、を切り替える制御部13と、を備える蓄電装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ及び二次電池を用いた蓄電装置及びその充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策の一環として、例えば風力や波力などの自然エネルギーを活用した発電システムが注目されている。また、自動車、鉄道、建設機械などの移動体の駆動により得られる回生電力の回収システムの開発も進められている。これらのシステムによって得られた電気エネルギーを利用するためには、電気エネルギーを貯蔵しておくための蓄電装置が必要となる。このような目的のために、二次電池や電気二重層キャパシタなどを用いた各種の蓄電装置が提案されている(例えば特許文献1,2,3,4参照)。
【特許文献1】特開2005−20805号公報
【特許文献2】特開2007−124719号公報
【特許文献3】特開2001−69688号公報
【特許文献4】特開2005−245046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
二次電池や、二次電池と電気二重層キャパシタとが並列に接続された組電池などを用いた蓄電装置を充電する場合、供給電力が大きすぎると、二次電池が過充電を起こしたり、供給される電力が二次電池内で熱エネルギーなどに転換されて損失となったりする可能性がある。また、供給電力が小さすぎる場合は、そもそも二次電池への充電ができなくなってしまう。そのため、このような蓄電装置に外部から供給される電力は、一定の範囲に制限されることが望ましい。ところが、前述したような自然エネルギーによる発電システムや回生電力の回収システムから供給される電力は、長時間にわたって安定して供給されるとは限らず、時間とともに変動する傾向がある。この変動の幅が大きいと、供給電力が大きすぎたり小さすぎたりするタイミングで蓄電装置の充電ができなくなり、蓄電装置の充電効率を悪化させるおそれがある。
【0004】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、時間とともに変動する供給電力を蓄積する場合に、充電効率を向上できる蓄電装置及び充電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明に係る蓄電装置は、時間とともに変動する供給電力により充電される蓄電装置であって、二次電池を含んでなる主蓄電部と、前記主蓄電部と直列接続可能に構成され、電気二重層キャパシタを含んでなる補助蓄電部と、前記供給電力の変動に応じて、前記主蓄電部又は前記補助蓄電部のいずれか一方に前記供給電力を供給する状態と、直列に接続された前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の両方に前記供給電力を供給する状態と、を切り替える制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、上記蓄電装置において、前記制御部は、前記供給電力の変動と、前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の充電状態と、に応じて、前記供給電力の供給先を切り替えることとしてもよい。
【0007】
また、上記蓄電装置において、前記制御部は、前記供給電力に応じた入力電圧が所定の上限値を上回る場合に、直列に接続された前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の両方に前記供給電力を供給することとしてもよい。
【0008】
さらに、前記制御部は、前記供給電力に応じた入力電圧が所定の下限値を下回る場合に、前記補助蓄電部に前記供給電力を供給することとしてもよい。
【0009】
また、上記蓄電装置は、前記補助蓄電部を複数備え、前記制御部は、前記補助蓄電部それぞれの充電状態に応じて、前記複数の補助蓄電部の中から前記供給電力の供給先を切り替えることとしてもよい。
【0010】
また、本発明に係る充電方法は、二次電池を含んでなる主蓄電部と、前記主蓄電部と直列接続可能に構成され、電気二重層キャパシタを含んでなる補助蓄電部と、を備える蓄電装置を、時間とともに変動する供給電力により充電する充電方法であって、前記供給電力の変動に応じて、前記主蓄電部又は前記補助蓄電部のいずれか一方に前記供給電力を供給する状態と、直列に接続された前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の両方に前記供給電力を供給する状態と、を切り替えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電装置1の回路構成の一例を示す回路図である。蓄電装置1は、外部から供給される電力を蓄積する装置であって、特に本実施形態では、時間とともに変動する供給電力Pによって充電される。このような時間とともに変動する電力の例としては、風力発電や太陽光発電、水力(揚水)発電等によって得られる電力や、自動車等の駆動によって得られる回生電力などが挙げられる。
【0013】
図2は、蓄電装置1の使用例を示す説明図である。この図の例では、蓄電装置1は風力発電装置2によって発電された電力を蓄積して、蓄積した電力を外部に放電する。具体的に、風力発電装置2に内蔵された発電機が風力を電気エネルギーに変換し、この電気エネルギーを蓄電装置1に対して供給する。このとき風力発電装置2から蓄電装置1に対して供給される供給電力Pは、風の状況によって時間とともに変動することになる。蓄電装置1は、風力発電装置2から供給される電力を蓄積して、蓄積された電力を所定のタイミングで外部に放電する。すなわち、蓄電装置1は、比較的短時間の充電によって蓄積された電力を、外部の電力系統へと放電したり、電力系統による電力供給の補助として家庭内で負荷に対して放電したりする。あるいは、例えば昼間に蓄積された電力を夜間に負荷に対して供給するなど、比較的長時間の充電によって蓄積された電力を、一定時間にわたって外部に供給することとしてもよい。
【0014】
以下、蓄電装置1を構成する各部について、説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る蓄電装置1は、主蓄電部11と、複数の補助蓄電部12と、制御部13と、スイッチS1〜S5と、を含んで構成されている。
【0015】
主蓄電部11は、少なくとも二次電池を含んで構成される。具体的に、本実施形態では、主蓄電部11は、二次電池11aと、当該二次電池11aに対して並列に接続された電気二重層キャパシタ11bと、を含んで構成されている。
【0016】
ここで、二次電池11aは、ニッケル−水素電池やリチウムイオン電池、ニッケル−カドミウム電池、また制御弁式鉛−酸電池(シール鉛蓄電池)など、充放電が可能な各種の化学電池であってよい。また、このような二次電池が複数接続されてなる組電池であってもよい。
【0017】
二次電池11aを充電する際に供給される電力は、また過充電を避けつつ充電を行うために、その電圧値が予め定められた範囲内に含まれることが要求される。この電圧値の範囲は、二次電池11aの特性などによって決定される。以下では、二次電池11aに対して許容される入力電圧の範囲は、所定の下限値Vmin以上で、かつ所定の上限値Vmax以下の範囲であることとする。なお、この下限値Vmin及び上限値Vmaxは、二次電池11aの製造者によって設定された定格電圧や、満充電時及び完全放電時の二次電池11aの電圧に応じて定められてもよい。
【0018】
本実施形態では、この二次電池11aに対して、電気二重層キャパシタ11bが並列に接続されている。なお、電気二重層キャパシタ11bは、複数の電気二重層キャパシタセルが複数個並列又は直列に接続された電気二重層キャパシタモジュールであってもよい。このように、二次電池11aに対して電気二重層キャパシタ11bを並列に接続し、両者を相補的に利用して充放電を行うことによって、二次電池11aに流れる電流を抑えることができ、主蓄電部11全体の充電効率を向上するとともに、二次電池11aの寿命を延ばすことができる。
【0019】
複数の補助蓄電部12は、それぞれ電気二重層キャパシタを含み、いずれもスイッチS1を介して主蓄電部11と直列接続可能に構成されている。本実施形態では、蓄電装置1は、補助蓄電部12a,12b及び12cの3個の補助蓄電部12を備えることとする。
【0020】
制御部13は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成され、所定の条件に従って、外部から供給される供給電力Pの供給先となる蓄電部を切り替える制御を行う。また、制御部13は、蓄電装置1が蓄積する電力を放電する場合に、放電を行う蓄電部を切り替える制御も行う。具体的に、制御部13は、スイッチS1〜S5の接続を切り替える制御信号を出力することによって、供給電力Pの供給先となる蓄電部や、放電を行う蓄電部を切り替える。制御部13による切り替え制御の具体例については、後述する。
【0021】
複数の補助蓄電部12と主蓄電部11との間には、スイッチS1が設けられている。このスイッチS1は、制御部13の制御によって、主蓄電部11の一方の端子を、複数の補助蓄電部12それぞれの一方の端子、並びに図1に示される端子Tx及びTyのうちのいずれか一つと接続するよう切り替えられる。スイッチS1が切り替えられることによって、複数の補助蓄電部12は、それぞれ主蓄電部11と直列に接続されることが可能になっている。
【0022】
スイッチS2は、風力発電装置2からの供給電力Pが入力される外部入力端子の一方(以下、入力端子T1という)と接続されている。そして、スイッチS2は、制御部13の制御によって、この入力端子T1を、図1に示される端子Tx、及び各補助蓄電部12のスイッチS1と反対側の端子のうちのいずれか一つと接続するよう切り替えられる。なお、入力端子T1が端子Txと接続されるとともに、スイッチS1も端子Txに接続されることによって、入力端子T1はスイッチS2及びS1を介して主蓄電部11と接続される。
【0023】
スイッチS3は、風力発電装置2からの供給電力Pが入力される外部入力端子のうち、スイッチS2と接続されない側の端子(以下、入力端子T2という)と接続されている。そして、スイッチS3は、制御部13の制御によって、この入力端子T2を、主蓄電部11の両端の端子のいずれかと接続するよう切り替えられる。
【0024】
制御部13の制御によってこれらスイッチS1,S2及びS3が連動して切り替わることによって、供給電力Pの供給先が切り替えられる。すなわち、スイッチS1及びS2が端子Txと接続され、スイッチS3が主蓄電部11のスイッチS1と反対側の端子と接続されることによって、供給電力Pは主蓄電部11に対して供給される。また、スイッチS1及びS2がいずれも同じ補助蓄電部12に接続され、かつスイッチS3が主蓄電部11のスイッチS1側の端子と接続されることによって、供給電力Pは当該補助蓄電部12に対して供給される。さらに、スイッチS1が主蓄電部11と補助蓄電部12のいずれか一つとを接続するとともに、スイッチS2がこの主蓄電部11と接続された補助蓄電部12に接続され、スイッチS3が主蓄電部11のスイッチS1とは反対側の端子と接続されることによって、供給電力Pは直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の両方に対して供給される。なお、図1の例に示すスイッチの接続状態においては、直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12bに対して電力供給が行われる。
【0025】
また、スイッチS4は、蓄電装置1に蓄積された電力を外部に供給する外部出力端子の一方(以下、出力端子T3という)と接続されている。そして、スイッチS4は、制御部13の制御によって、この出力端子T3を、図1に示される端子Ty、及び各補助蓄電部12のスイッチS1と反対側の端子のうちのいずれか一つと接続するよう切り替えられる。なお、出力端子T3が端子Tyと接続されるとともに、スイッチS1も端子Tyに接続されることによって、出力端子T3はスイッチS4及びS1を介して主蓄電部11と接続される。
【0026】
スイッチS5は、蓄電装置1に蓄積された電力を外部に供給する外部出力端子のうち、スイッチS4と接続されない側の端子(以下、出力端子T4という)と接続されている。そして、スイッチS5は、制御部13の制御によって、この出力端子T4を、主蓄電部11の両端の端子のいずれかと接続するよう切り替えられる。
【0027】
制御部13の制御によってこれらスイッチS4及びS5とスイッチS1とが連動して切り替わることによって、外部に電力を放電する蓄電部が切り替えられる。すなわち、スイッチS1及びS4が端子Tyと接続され、スイッチS3が主蓄電部11のスイッチS1と反対側の端子と接続されることによって、主蓄電部11単体から外部への放電が行われる。また、スイッチS1及びS4がいずれも同じ補助蓄電部12に接続され、かつスイッチS5が主蓄電部11のスイッチS1側の端子と接続されることによって、当該補助蓄電部12から外部への放電が行われる。さらに、スイッチS1が主蓄電部11と補助蓄電部12のいずれか一つとを接続するとともに、スイッチS4がこの主蓄電部11と接続された補助蓄電部12に接続され、スイッチS5が主蓄電部11のスイッチS1とは反対側の端子と接続されることによって、直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の両方から外部に電力が放電される。
【0028】
ここで、本実施形態において蓄電装置1によって実現される充放電の態様のいくつかのパターンについて、説明する。蓄電装置1の充放電の態様としては、例えば下記のようなパターンが考えられる。
パターン1:蓄電装置1全体の電力容量に対して1%未満程度の電力量を1秒未満程度の短時間で蓄積し、電力系統に対して放電する
パターン2:蓄電装置1全体の電力容量に対して10%程度の電力量を数分間程度の時間で蓄積し、電力系統に対して放電したり、負荷に対して放電したりする
パターン3:数時間程度の時間をかけて蓄電装置1全体が満充電になるまで電力を蓄積し、その後、電力系統に対して放電したり、負荷に対して放電したりする(例えば昼間に充電して夜間に放電するなど、比較的長周期で充放電を行う場合)
【0029】
特にパターン1の場合、供給電力Pに応じて蓄電装置1に印加される入力電圧が高くなりにくいため、二次電池11aの特性により、主蓄電部11だけでこのような充放電を実現することは難しい。また、パターン2やパターン3の場合にも、供給電力Pに応じた入力電圧が時間とともに変動するので、特に電圧値が下限値Vminを下回るタイミングや、上限値Vmaxを上回るタイミングがあると、主蓄電部11だけでは十分効率よく充電を行うことは困難になる。
【0030】
そこで、本実施形態では、制御部13が、供給電力Pの変動に応じて、供給電力Pを供給する蓄電部を切り替えることとする。具体的に、例えば制御部13は、供給電力Pの大きさに関する情報を取得し、当該取得した情報に応じてスイッチS1〜S3を切り替えることにより、主蓄電部11又は補助蓄電部12のいずれか一方に供給電力Pを供給する状態と、直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の両方に供給電力Pを供給する状態と、を切り替える制御を充電中継続して実行する。
【0031】
以下、制御部13による供給電力Pの供給先の切り替え制御の具体例について、説明する。ここでは制御部13は、供給電力Pによって蓄電装置1に印加される入力電圧が所定の上限値Vmaxを上回る場合には、供給電力Pを直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の両方に供給する。また、入力電圧が所定の下限値Vminを下回る場合には、供給電力Pを補助蓄電部12に供給する。なお、これらの場合において、複数の補助蓄電部12のうちのいずれを供給先とするかは、各補助蓄電部12の充電状態に応じて決定される。また、供給電力Pによって蓄電装置1に印加される入力電圧が下限値Vmin以上で上限値Vmax以下の場合には、制御部13は、供給電力Pを主蓄電部11に供給する。
【0032】
このような制御によって、供給電力Pによって印加される入力電圧が下限値Vminに満たない場合であっても、二次電池11aより低い電圧で充電可能な電気二重層キャパシタから構成される補助蓄電部12に対して供給電力Pを供給することによって、充電を行うことができる。また、電圧が上限値Vmaxを超える場合であっても、直列に接続された主蓄電部11と補助蓄電部12の全体に対して供給電力Pを供給することによって、二次電池11aが過充電にならないようにしながら、充電を行うことができる。
【0033】
図3は、このような入力電圧の時間変動に応じた充電対象の切り替え制御を説明するための図である。この図は、蓄電装置1に印加される入力電圧の時間変動の一例を示している。ここで、入力電圧が下限値Vminを下回る時点(図中破線で囲まれた部分)においては、補助蓄電部12の一つが充電対象として選択される。また、入力電圧が上限値Vmaxを上回る時点(図中一点鎖線で囲まれた部分)においては、直列に接続された主蓄電部11及び一つの補助蓄電部12の両方が、充電対象として選択される。なお、この図の例においては、Vmaxより高い電圧値Vmax2が蓄電装置1全体の上限電圧として設定されている。電圧がこのVmax2を超える時点においては、どの蓄電部にも供給電力Pを供給しないこととしてもよい。
【0034】
また、制御部13は、供給電力Pだけでなく、主蓄電部11及び各補助蓄電部12の充電状態に応じて、供給電力Pの供給先を切り替えることとしてもよい。特に制御部13は、各補助蓄電部12の充電状態に応じて、複数の補助蓄電部12の中から、供給電力Pの供給先を切り替えることとしてもよい。具体的に、例えば制御部13は、補助蓄電部12のうちのいずれか一つを単体で充電対象とする場合や、補助蓄電部12のうちのいずれか一つを主蓄電部11とともに充電対象とする場合、複数の補助蓄電部12のうち、満充電の状態にない補助蓄電部12を充電対象として選択する。そして、充電対象としている補助蓄電部12が満充電の状態になった場合には、いまだ満充電の状態になっていない他の補助蓄電部12を新たな充電対象に切り替える。また、全ての補助蓄電部12が満充電の状態になった場合には、供給電力Pによって印加される入力電圧に関わらず、補助蓄電部12に蓄積された電力の放電が行われるまで補助蓄電部12を充電対象としないこととする。同様に、主蓄電部11が既に満充電の状態になっていれば、供給電力Pによって印加される入力電圧に関わらず、主蓄電部11を充電対象としないこととしてもよい。
【0035】
このような供給電力Pによって蓄電装置1に印加される入力電圧の大きさと、各蓄電部が満充電か否かと、に応じた供給電力Pの供給先の切り替え制御の一例について、下記の表に示す。
【表1】

【0036】
この表において、「H」、「N」、及び「L」はそれぞれ主蓄電部11又は補助蓄電部12全体の充電状態を示しており、「H」は満充電の状態、「L」は空の状態(すなわち、完全に放電がされた状態)、「N」はその中間の状態をそれぞれ示している。なお、補助蓄電部12については、全ての補助蓄電部12が満充電の状態を「H」、全ての補助蓄電部12が空の状態を「L」としている。また、「A」、「B」、「C」及び「D」は、充電時及び放電時の充電対象又は放電対象を示している。具体的に、「A」は主蓄電部11単体が充電又は放電の対象となっている状態、「B」は直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の一つが充放電の対象となっている状態、「C」は補助蓄電部12の一つが単体で充放電の対象となっている状態、「D」はいずれの蓄電部も充放電の対象とならない状態を示している。
【0037】
例えば表の最上段は、主蓄電部11及び補助蓄電部12の全てが満充電の状態を示しており、この場合にはこれ以上の充電はできないので、制御部13は充電時の接続状態が「D」(すなわちどの蓄電部も充電対象としない状態)となるよう接続を切り替える。具体的には、スイッチS2及びS3を開放状態として入力端子T1及びT2を各蓄電部と切り離す。逆に全ての蓄電部が満充電の状態で放電を行う際には、制御部13は直列に接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の一つを放電対象とするよう各スイッチを切り替える。
【0038】
ここで、制御部13が供給電力Pの変動や、各蓄電部の充電状態を検出する方法の具体例について、説明する。
【0039】
例えば制御部13は、各蓄電部の充電状態を、各蓄電部に並列に接続された電圧測定部(不図示)によって測定される電圧によって判別する。すなわち、各蓄電部の電圧が予め定められた値まで上昇すると、当該蓄電部が満充電になったと判定する。また、各蓄電部の電圧が予め定められた値まで下降すると、当該蓄電部が空の状態になったと判定する。あるいは、制御部13は、二次電池11aの種類になどによっては、二次電池11aの出力インピーダンスなどを測定することによって、主蓄電部11の充電状態を判定することとしてもよい。
【0040】
また、供給電力Pが風力発電装置2によって供給される場合、制御部13は、供給電力Pの大きさを、以下のようにして算出する。すなわち、制御部13は、風力発電装置2に内蔵された発電機のモーターの回転数を示す情報を取得することによって、風力発電装置2から出力される電力の大きさを算出する。具体例として、発電機の回転速度dΩ/dtは、回転部品の慣性をJ、発電機の電気トルクをT、空気力学的トルクをTとすると、以下の式によって表される。
【数1】

ここで、風速をω、風車ブレードの長さをrとすると、その先端速度λは
【数2】

となる。また、空気密度ρ、トルク係数Cとすると、Tは、
【数3】

と表される。さらに、電力効率C=λCより、風力発電によって得られる電力Pは、
【数4】

と表される。以上より、予め当該発電機におけるλとCとの関係を求めておくことによって、発電機の回転数から風力発電によって得られる電力が算出される。さらに、この電力がAC−DCコンバータによって変換された後の電流及び電圧の関係から、供給電力Pに応じた蓄電装置1に対する入力電圧が算出される。なお、このような入力電圧の算出は、例えば
H. D. Battista, R. J. Mantz, and F. Garelli, “Power conditioning for a wind-hydrogen energy system”, Journal of Power Sources, 2006, p.478-486 に記載された方法で実行されてよい。
【0041】
あるいは、制御部13は、主蓄電部11に供給電力Pを供給したときの電流の向きを検出することによって、供給電力Pの供給先を切り替えてもよい。具体的に、例えば制御部13は、まず入力端子T1及びT2を直列接続された主蓄電部11及び補助蓄電部12の両端に接続する。そして、蓄電装置1と風力発電装置2との間の電流の向きを検出する。電流の向きが逆向き(蓄電装置1側から風力発電装置2側へ流れる向き)になったことが検出された場合には、供給電力Pに応じた入力電圧が供給先の蓄電部に対して小さくなっているので、制御部13は、供給電力Pを主蓄電部11に供給するよう切り替えを行う。さらにこの状態において、再び電流の向きが蓄電装置1側から風力発電装置2側になったことが検出された場合には、供給電力Pの供給先を補助蓄電部12単体に切り替えることとする。こうすれば、供給電力Pによって生じる入力電圧を直接測定せずとも、供給電力Pの変動に応じてその供給先を切り替えることができる。
【0042】
以上説明した本実施の形態によれば、供給電力Pの変動に応じて、この供給電力Pを供給する蓄電部を切り替えることによって、二次電池11aの特性から許容される範囲を超えて供給電力Pの大きさが変化しても、補助蓄電部12を利用して供給電力Pによる充電を実行することができ、充電効率を損なわないようにすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、主蓄電部11は主として二次電池11aによって構成され、補助蓄電部12は電気二重層キャパシタによって構成されている。この両者は応答特性が異なるので、これを利用して供給電力Pを効率よく蓄積することができる。すなわち、供給電力Pの時間変動のサイクルに応じて予め主蓄電部11の蓄電容量と補助蓄電部12の蓄電容量とを決定することによって、主蓄電部11に一定以上の容量の電力を蓄積するまでの間に、二次電池11aより高速に充放電可能な補助蓄電部12が、供給電力Pの一部の充放電を繰り返し実行することができる。これによって、蓄電装置1は、主蓄電部11が1回の充放電を行うサイクルの間に、蓄電装置1全体の蓄電容量を超える電力の蓄積、及び放電を行うことができ、供給電力Pの変動サイクルに併せて効率のよい充放電を実現できる。
【0044】
なお、以上の説明においては、補助蓄電部12に充電された電力は、直接蓄電装置1の外部に供給されることとしたが、これに限らず、補助蓄電部12に一定容量以上の電力が蓄積された時点で、この電力が主蓄電部11へ供給されることとしてもよい。この場合には、蓄電装置1の外部への電力供給は、主蓄電部11から実行される。
【0045】
また、以上の説明においては、一例として風力発電装置2から供給電力Pが供給される場合について説明したが、これに限らず、供給電力Pは各種の電力供給源によって供給されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蓄電装置および充電方法は、自然エネルギーによる発生電力の変動が大きな発電、すなわち位置エネルギー、運動エネルギーなどの力学的エネルギーや光エネルギーによる風力発電、流水・揚水発電、波力発電、太陽光発電など、によって得られる電力の蓄電装置および充電方法として利用できる。
【0047】
また、力学的エネルギーや熱エネルギーを減衰させるために余剰エネルギーとして排出され、回生されたエネルギーを貯蔵する蓄電装置および充電方法としても応用可能である。具体的には、自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車、各種空港作業車、電動式自動二輪車、電車、LRV(Light Rail Vehicle:次世代型低床路面電車)、電動カート、電動式車椅子、気動車、モノレール、船舶、航空機などの移動体の加速・減速運動;エレベータ、エスカレータ、スライド式移動棚などの搬送装置・設備の昇降運動や移動・停止運動;保冷・冷蔵・冷凍車における冷却機、エアコン、冷蔵庫などの媒体圧縮運動;回転電動工具、ディスク状記録媒体駆動装置を装着したプレーヤーまたはパソコン、洗濯機、ドラム式乾燥機、扇風機、送風機、掃除機などにおける回転体の回転・停止運動;アイロン、ポット、温水器、乾燥機、炊飯器、事務機器、などの発熱体を内装する各種民生用電気機器の蓄熱;玩具、遊具などのばね振動や振り子運動などからの回生エネルギーの蓄電装置および充電方法としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る蓄電装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る蓄電装置の使用例を示す説明図である。
【図3】蓄電装置に印加される入力電圧の時間変動の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 蓄電装置、2 風力発電装置、11 主蓄電部、12 補助蓄電部、13 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間とともに変動する供給電力により充電される蓄電装置であって、
二次電池を含んでなる主蓄電部と、
前記主蓄電部と直列接続可能に構成され、電気二重層キャパシタを含んでなる補助蓄電部と、
前記供給電力の変動に応じて、前記主蓄電部又は前記補助蓄電部のいずれか一方に前記供給電力を供給する状態と、直列に接続された前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の両方に前記供給電力を供給する状態と、を切り替える制御部と、
を備えることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電装置において、
前記制御部は、前記供給電力の変動と、前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の充電状態と、に応じて、前記供給電力の供給先を切り替える
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の蓄電装置において、
前記制御部は、前記供給電力に応じた入力電圧が所定の上限値を上回る場合に、直列に接続された前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の両方に前記供給電力を供給する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の蓄電装置において、
前記制御部は、前記供給電力に応じた入力電圧が所定の下限値を下回る場合に、前記補助蓄電部に前記供給電力を供給する
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載の蓄電装置において、
前記補助蓄電部を複数備え、
前記制御部は、前記補助蓄電部それぞれの充電状態に応じて、前記複数の補助蓄電部の中から前記供給電力の供給先を切り替える
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
二次電池を含んでなる主蓄電部と、
前記主蓄電部と直列接続可能に構成され、電気二重層キャパシタを含んでなる補助蓄電部と、
を備える蓄電装置を、時間とともに変動する供給電力により充電する充電方法であって、
前記供給電力の変動に応じて、前記主蓄電部又は前記補助蓄電部のいずれか一方に前記供給電力を供給する状態と、直列に接続された前記主蓄電部及び前記補助蓄電部の両方に前記供給電力を供給する状態と、を切り替える
ことを特徴とする充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−104116(P2010−104116A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272081(P2008−272081)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2008年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 新エネルギー技術開発 系統連系円滑化蓄電システム技術開発/要素技術開発/高エネルギー密度を有する新型電気二重層キャパシタ及びその蓄電システムの研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】