蓄電装置及び電源システム
【課題】蓄電池の経年劣化(保存劣化)を低減できる蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置30は、並列接続される複数の蓄電池33a〜33dと、複数の蓄電池それぞれ33a〜33dのSOCを調整可能に設けられる調整手段31、32a〜32dと、を備える。複数の蓄電池33a〜33dの合計残容量を所定の値として保存する場合に、複数の蓄電池それぞれ33a〜33dのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられる。
【解決手段】蓄電装置30は、並列接続される複数の蓄電池33a〜33dと、複数の蓄電池それぞれ33a〜33dのSOCを調整可能に設けられる調整手段31、32a〜32dと、を備える。複数の蓄電池33a〜33dの合計残容量を所定の値として保存する場合に、複数の蓄電池それぞれ33a〜33dのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置に関し、特に蓄電装置が備える蓄電池の保存による劣化(経年劣化)を低減する技術に関する。また、本発明は、そのような蓄電装置を備える電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の蓄電池(二次電池)の劣化には、充放電時の劣化(サイクル劣化)の他に、充放電していない場合にも進行する経年劣化(保存劣化とも言い換えられる)がある(例えば特許文献1参照)。蓄電池を備える蓄電装置は、例えば無停電電源装置(UPS;Uninterruptible Power Supply)として使用されることがある等、充放電しない状態で保存される期間が長くなる場合もあり、経年劣化の低減は、サイクル劣化の低減とともに重要である。
【0003】
なお、特許文献2には、蓄電池の長寿命化に関する技術が開示される。特許文献2には、蓄電池の長寿命化を図る蓄電池の放電制御装置が開示され、この装置に備えられる制御手段は、放電深度検出手段が検出した放電深度に基づき、蓄電池の寿命を保証する標準放電深度を超えないように被給電機器の運転を制御する。これにより、上記放電制御装置では、過放電による蓄電池の寿命への影響を無くすことができる。以上からわかるように、特許文献2には、蓄電池の経年劣化を低減する技術については開示されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−17138号公報
【特許文献2】特開平10−243572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、蓄電池の経年劣化(保存劣化)を低減できる蓄電装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような蓄電装置を備える電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の蓄電装置は、並列接続される複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池それぞれのSOCを調整可能に設けられる調整手段と、を備える蓄電装置であって、前記複数の蓄電池の合計残容量を所定の値として保存する場合に、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられる構成(第1の構成)になっている。
【0007】
なお、第1の構成において、蓄電池は、単一の蓄電池セルでもよいし、複数の蓄電池セルで構成されるもの(組電池)でもよい。
【0008】
本出願人は、実験によって、保存SOC(保存開始時のSOC)の変化に対する蓄電池の劣化度(経年劣化の度合い)の変化について、非線形な特性を示す蓄電池が存在することを見出している。このために、本構成のように、蓄電池を一定の条件で保存する場合に、複数の蓄電池のSOCを全て同一にせずに複数種類に分けることによって、SOCを全て同一に揃えた場合に比べて、複数の蓄電池の平均の劣化度(経年劣化の度合い)を低減することが可能になる。
【0009】
上記第1の構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池それぞれのSOCは、前記蓄電池の保存開始時のSOCと、前記蓄電池が所定の期間保存された後の劣化度との関係を示す劣化情報に基づいて決定される構成(第2の構成)とするのが好ましい。この第2の構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池それぞれのSOCと前記劣化情報とから想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度が、前記複数の蓄電池それぞれのSOCを全て同一にした場合に前記劣化情報から想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度を下回るように、前記複数の蓄電池それぞれのSOCは決定される構成(第3の構成)とするのが好ましい。
【0010】
上記第1から第3のいずれかの構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池の合計残容量が所定の値になるように保存する場合における、前記複数の蓄電池に対するSOCの割り当てが、所定のタイミングで入れ替えられる構成(第4の構成)としてもよい。本構成によれば、複数の蓄電池それぞれの劣化進行度(経年劣化の進行度)を均等にすることができる。
【0011】
上記第1から第4のいずれかの構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池が充放電される場合においても、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられている構成(第5の構成)としてもよい。蓄電装置が備える蓄電池においては、保存時ばかりではなく、充放電が行われている際にも、経年劣化が進行する。このために、本構成によれば、蓄電装置が備える複数の蓄電池の経年劣化の低減をより有効に行える。
【0012】
上記第1から第5のいずれかの構成の蓄電装置において、前記調整手段には、複数のDC−DCコンバータと、前記複数のDC−DCコンバータを制御する制御部と、が含まれる構成(第6の構成)が採用されてもよい。本構成によれば、SOCの異なる複数の蓄電装置の同時使用が可能であるために、蓄電装置の出力電力を十分に確保可能である。なお、場合によっては、前記DC−DCコンバータに代えて、スイッチが用いられても構わない。
【0013】
上記目的を達成するために本発明の電源システムは、外部負荷に対して電力を供給可能な電力供給源と、前記電力供給源からの電力を充電可能に設けられるとともに、外部負荷に対して放電可能に設けられる、上記第1から第6のいずれかの蓄電装置と、を備える構成(第7の構成)になっている。
【0014】
本構成では、蓄電池の経年劣化の低減が図れる蓄電装置を用いて電源システムが構成されており、電源システムの長寿命化が期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、蓄電池の経年劣化(保存劣化)を低減できる蓄電装置を提供できる。また、本発明によれば、電源システムの長寿命化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電源システムの概略構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態の蓄電装置で実行される蓄電池の経年劣化低減制御処理の流れを示すフローチャート
【図3A】第1実施形態の蓄電装置が備える蓄電池の経年劣化特性の一例を示すグラフ
【図3B】第1実施形態の蓄電装置が備える蓄電池の経年劣化特性の別例を示すグラフ
【図4A】第1実施形態の蓄電装置において、保存時の各蓄電池のSOCの決定方法について説明するための図で、全ての蓄電池のSOCが同一とされた場合の図(比較図)
【図4B】第1実施形態の蓄電装置において、保存時の各蓄電池のSOCの決定方法について説明するための図で、各蓄電池のSOCが複数種類に分けられた場合の図
【図5】第1実施形態における蓄電池の経年劣化低減制御処理の変形例を説明するための図
【図6】第1実施形態の蓄電装置の変形例を示すブロック図
【図7】本発明の第2実施形態に係る電源システムの概略構成を示すブロック図
【図8】第2実施形態の蓄電装置の使用方法について説明するためのグラフ
【図9】第2実施形態の蓄電装置が備える各蓄電池のSOCの変化(一例)を示すグラフ
【図10】第2実施形態における蓄電池の経年劣化低減制御処理の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の蓄電装置及び電源システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電源システム1の概略構成を示すブロック図である。図1において、太線は電力線、細線は信号線を示している。図1に示すように、電源システム1は、電力供給源10と、PCS(Power Conditioning System)20と、蓄電装置30と、を備える。
【0019】
電力供給源10は、外部負荷や蓄電装置30に対して電力を供給する。本実施形態では、電力供給源10として商用交流電源(電力系統に繋がる)を想定している。ただし、電力供給源は、自然エネルギーを利用して発電する自然エネルギー発電装置でもよい。自然エネルギー発電装置としては、例えば太陽光によって発電する太陽光発電装置や風力によって発電する風力発電装置等が挙げられる。
【0020】
PCS20(電力変換部)は双方向コンバータを備える。この双方向コンバータにより、PCS20は、電力供給源10からの交流電力を直流電力に変換するとともに、蓄電装置30からの直流電力を交流電力に変換する。なお、電力供給源として例えば太陽光発電装置が採用される場合には、供給電力が直流となるため、PCSに備えられる電力変換器の種類は適宜変更する必要がある。
【0021】
蓄電装置30は、コントローラ31と、4つのDC−DCコンバータ32a〜32dと、4つの蓄電池33a〜33dとを備える。第1DC−DCコンバータ32aは第1蓄電池33aに接続され、第2DC−DCコンバータ32bは第2蓄電池33bに接続され、第3DC−DCコンバータ32cは第3蓄電池33cに接続され、第4DC−DCコンバータ32dは第4蓄電池33dに接続される。そして、これら4つの組が並列に接続されている。
【0022】
なお、蓄電池33a〜33dは、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の充放電可能な電池から適宜選択すればよい。また、蓄電池33a〜33dは、1つの蓄電池セルで構成されるものでもよいし、複数の蓄電池セルが直列、並列、或いは、直並列に接続された組電池でもよい。また、4つの蓄電池33a〜33dは、劣化していない状態において、同一の満充電容量を有する。
【0023】
コントローラ31は、各DC−DCコンバータ32a〜32dに対して、各DC−DCコンバータ32a〜32dに接続される蓄電池33a〜33dの充放電に関する指令信号を出力する。各DC−DCコンバータ32a〜32dは、当該指令に基づいてPCS20から供給される電力を各蓄電池33a〜33dに適切な電力に変換して出力する。また、各DC−DCコンバータ32a〜32dは、各蓄電池33a〜33dから供給される電力をPCS20に適切な電力に変換して出力する。すなわち、コントローラ31、及び、各DC−DCコンバータ32a〜32dによって、各蓄電池33a〜33dの充放電に関わる制御(電池容量の調整)が実行される。
【0024】
なお、コントローラ31には、蓄電池の経年劣化特性に関するデータ(後述する)が記憶される不揮発性のメモリ31aが備えられる。また、コントローラ31には、各蓄電池33a〜33dから、SOC(State Of Charge)を含む電池情報が送信される。SOCは、電池の充電状態を示す指標であり、満充電容量に対する放電可能容量(残存容量)の比(百分率)で表される。各蓄電池33a〜33dのSOCは、例えば、各蓄電池33a〜33dに流れる充放電電流の積算値から求められる。また、各蓄電池33a〜33dのSOCは、予め決定された、各蓄電池33a〜33dの開放電圧(Open Circuit Voltage(OCV))とSOCとの関係を示す計算式或いはテーブルを参照することにより求めることもできる。
【0025】
なお、4つの蓄電池33a〜33dは、本発明の並列接続される複数の蓄電池の一例である。また、コントローラ31と4つのDC−DCコンバータ32a〜32dとは、本発明の調整手段の一例である。
【0026】
次に、以上のように構成される蓄電装置30において実行される、蓄電池の経年劣化(保存劣化とも呼ばれる)を低減する制御方法について説明する。蓄電装置30の4つの蓄電池33a〜33dは、例えば停電時において蓄電装置30から外部負荷に給電できるようにする等の目的で、合計の残容量が所定の値になるように保存される。所定の値は、電源システム1の運用によって適宜決定される。
【0027】
図2は、第1実施形態の蓄電装置30で実行される蓄電池の経年劣化低減制御処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ31は、4つの蓄電池33a〜33dの合計の残容量が所定の値になるように保存するタイミングになったと判断する(ステップS1でYes)と、メモリ31aに記憶される蓄電池の経年劣化(保存劣化)特性に関するデータ(劣化情報)を読み出す(ステップS2)。
【0028】
ここで、メモリ31aに記憶される劣化情報について、図3Aを参照しながら説明しておく。図3Aは、第1実施形態の蓄電装置30が備える蓄電池33a〜33dの経年劣化特性の一例を示すグラフである。図3Aにおいて、横軸は保存開始時の蓄電池のSOC、縦軸は蓄電池を所定の期間(ここでは一例として12か月としている)保存する前後の満充電容量の比(百分率)を示す。縦軸は、蓄電池の劣化度の指標になる。縦軸が100%の場合は、満充電容量が変化していないために劣化していないこと(劣化進行度ゼロ)になり、縦軸が90%の場合には、保存により満充電容量の減少が見られて容量が10%劣化したことになる。
【0029】
図3Aに示すように、第1実施形態の蓄電装置30が備える蓄電池33a〜33dは、保存開始時のSOC(保存SOC)が大きくなるにつれて、所定の期間保存した後の劣化度が大きくなることがわかる。ただし、保存SOC50%を境に、保存SOCの変化に対する劣化度の変化割合が変わる。すなわち、保存SOCが50%より大きい場合に比べて、保存SOCが50%より小さい場合の方が、保存SOCの変化に対する劣化度の変化割合(増大割合)が小さくなる傾向が認められる。メモリ31aには、このような蓄電池の劣化特性が例えばテーブル化して、或いは計算式化されて記憶されている。
【0030】
図2に戻って、劣化情報を読み出したコントローラ31は、各蓄電池33a〜33dに割り当てるSOCを決定する(ステップS3)。この決定は、次のように行われる。なお、この決定にあたって、上述のように、全ての蓄電池33a〜33dの残容量の合計が所定の値になることが前提とされる。
【0031】
例えば、割り当てられるSOCの種類が2種類(SOCyとSOCz)とされる場合には、以下の式(1)及び式(2)を満足するようにSOCの決定が行われる。なお、SOCxは、全ての蓄電池のSOCが同一とされる場合のSOC値(上述した蓄電池の残容量の合計値を蓄電池の数で割った値)である。また、βxは、蓄電池のSOCがSOCxとされる場合の劣化度(劣化情報から得られる値)である。また、βyは、蓄電池のSOCがSOCyとされる場合の劣化度である。また、βzは、蓄電池のSOCがSOCzとされる場合の劣化度である。
βx>(βy+βz)/2 (1)
SOCx=(SOCy+SOCz)/2 (2)
【0032】
ここで、SOCx=50%とされる場合を例に説明する。各蓄電池33a〜33dのSOCが全て50%とされた場合(図4A参照)における、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度は、先に読み出された劣化情報(図3Aのグラフが相当)に基づいて求められる。図3Aの例では、この劣化度は5%(βx=5%)になる。次に、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度が先に求めた劣化度(βx=5%)を下回るように、先に読み出された劣化情報(図3Aのグラフが相当)に基づいて、各蓄電池33a〜33dのSOCが決定される(複数種類に振り分けられる)。
【0033】
ここで、コントローラ31は、電源システム1に許容される保存時のSOCの下限値を有する蓄電池の数ができるだけ多くなるように、SOCの割り振りを行うのが好ましい。なお、上記SOCの下限値については、例えば、予めメモリ31aに記憶される構成でもよいし、電源システム1のコントローラ(不図示)から与えられる構成でもよい。
【0034】
電源システム1が許容するSOCが25%である場合、例えば図4Bに示すように、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCを25%(SOCy=25%)、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCを75%(SOCz=75%)とするのが好ましい。この場合、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度は、4%(=(2.5%×2+5.5%×2)/4=(βy+βz)/2)になる(図3参照)。すなわち、この劣化度(4%)は、4つの蓄電池33a〜33dのSOCを全て同一にした場合の劣化度(5%)を下回る(式(1)を満足する)。
【0035】
なお、電源システム1が許容するSOCの下限値が0%であれば、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCを0%(SOCy=0%)、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCを100%(SOCz=100%)とするのが好ましい。この場合には、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度は、3%(=(0%×2+6%×2)/4)とできる(βxを下回る)。
【0036】
コントローラ31は、各蓄電池33a〜33dのSOCを決定すると、決定されたSOCとなるように、各蓄電池33a〜33dの充電或いは放電を行う(ステップS4)。各蓄電池33a〜33dを決定されたSOCとする作業は、各蓄電池33a〜33dに対して同時に行われてもよいし、複数の組、或いは、個々に分けて行われてもよい。各蓄電池33a〜33dのSOCが狙いのSOC値となった時点で保存が開始される(ステップS5)。以上により、蓄電池の経年劣化低減制御処理は終了する。
【0037】
以上のように経年劣化低減制御処理を行うことにより、4つの蓄電池33a〜33dの経年劣化(保存劣化)を低減できる。
【0038】
なお、各蓄電池33a〜33dのSOCと経年劣化特性から想定される4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度が、各蓄電池33a〜33dのSOCを全て同一にした場合に経年劣化特性から想定される4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度を下回るように、各蓄電池33a〜33dのSOCが決定できればよい。このために、劣化度の変化割合(保存SOCの変化に対する変化の割合)が変わる点より保存SOCが大きい側で、劣化度の増大割合が小さくなる蓄電池(図3に示す特性が該当)の他、例えば、劣化度が低減する方向に変化する蓄電池(例えば図3における保存SOC50%を頂点としたV字状のグラフを示す蓄電池)等も、本実施形態の蓄電池として用いることができる。
【0039】
図3Bは、第1実施形態の蓄電装置30が備える蓄電池33a〜33dの経年劣化特性の別例を示すグラフである。図3Bの横軸及び縦軸は図3Aと同様である。図3Bも図3A同様に非線形の特性を示すが、更に複雑となっている。大まかに説明すると、保存SOCが0〜25%程度では保存SOCの増加とともに劣化度が大きくなる(保存SOCの変化に対する劣化度の増加率は比較的大きい)。また、保存SOCが25〜50%程度では保存SOCが変化しても劣化度はあまり変化しない(若干大きくなる)。また、保存SOCが50%程度以上となると、保存SOCの増加とともに劣化度が大きくなるが、保存SOCが75%程度までは保存SOCの変化に対する劣化度の増加率はさほど大きくなく、保存SOCが100%に近付くと劣化度の増加率(保存SOCの変化に対する)は比較的大きくなる。
【0040】
このような特性を示す蓄電池が使用される場合も、例えば、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCが10%(図3BのSOCyが該当)、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCが60%(図3BのSOCzが該当)となるように、SOCの割り振りが決定されれば、経年劣化の低減が可能である。なお、ここでは、上記式(2)のSOCx=35%を想定している。図3Bからわかるように、全蓄電池33a〜33dのSOCを同一とする場合には劣化度が5%になるが、上記のようにSOCを割り振る(SOCy=10%、SOCz=60%)ことで、劣化度が4.25%(=(3%×2+5.5%×2)/4)に抑制される。
【0041】
以上に示した経年劣化低減制御処理は、蓄電池33a〜33dの保存を行う場合に毎回行われてもよい。ただし、各蓄電池33a〜33dのSOCの振り分けが一度決まれば、その後は、SOCの決定処理(ステップS2及びS3)は行わず、先に決定されたSOCになるように、各蓄電池33a〜33dの充放電が行われるようにしてもよい。また、予めステップS3で説明した方法に従って保存時における各蓄電池33a〜33dのSOCを決定しておき、この決定された値をメモリ31aに記憶しておくようにしてもよい。この場合は、コントローラ31は、保存時における各蓄電池33a〜33dのSOCについてメモリ31aから読み出す処理のみ行い、SOCの振り分けを決定する演算処理は行わない。
【0042】
また、上記劣化情報は、予め実験で求められたものではなく、蓄電装置30の運用によって得られた劣化情報であってもよい。例えば、最初のうちは、保存時における各蓄電池33a〜33dのSOCの決定処理が、実験で得られた劣化情報を用いて行われ、或るタイミングで、SOCの決定処理が、運用によって得られた劣化情報を用いて行われるように変更されるといった構成が採用されてもよい。
【0043】
ここで、第1実施形態の構成に関する変形例について説明しておく。図5は、第1実施形態における蓄電池の経年劣化低減制御処理の変形例を説明するための図である。この変形例では、保存期間が所定の期間(適宜決定さればよい)を経過すると、各蓄電池33a〜33dの保存時のSOCの割り当てが入れ替えられる(ローテーションされる)ようになっている。
【0044】
図5に示す例では、最初、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bの保存時のSOCが25%とされ、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dの保存時のSOCが75%とされる。そして、保存期間が所定の期間を経過すると、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bの保存時のSOCが75%、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dの保存時のSOCが25%となるように入れ替えが行われる。このような入れ替えが行われることにより、各蓄電池33a〜33dの劣化度の進行が均等になることが期待できる。
【0045】
図6は、第1実施形態の蓄電装置30の変形例を示すブロック図である。図6に示す変形例では、第1実施形態の蓄電装置30における各DC−DCコンバータ32a〜32dが、スイッチ34a〜34dに置き換えられている。このような構成でも、上述したのと同様な経年劣化低減処理を実行可能である。
【0046】
ただし、この変形例の構成では、例えば保存中において停電等が発生して蓄電装置30が使用される場合に、SOCが異なる蓄電池を同時に使用できなくなる。例えば、SOCが大きい第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのみが使用されることになる。このために、蓄電装置30の最大出力電力が低減する。このような構成でも、例えば、停電が発生した場合における外部負荷の要求電力が小さければ、全く問題はない。
【0047】
なお、本構成の場合には、コントローラ31(図1参照)と、コントローラ31によって制御されるスイッチ31a〜31dが、本発明の調整手段に該当することになる。
【0048】
<第2実施形態>
次に第2実施形態の電源システム及び蓄電装置について説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る電源システム2の概略構成を示すブロック図である。図7に示すように、電源システム2は、電力供給源となる太陽光発電装置11及び商用交流電源(電力系統に繋がる)12と、PCS(電力変換部)21と、蓄電装置40と、を備える。
【0049】
PCS21には、DC−DCコンバータ21aと、インバータ21bとが備えられる。PCS21に備えられるDC−DCコンバータ21aは、太陽光発電装置11から供給される直流電力を適切な直流電力に変換する。このDC−DCコンバータ21aから出力される直流電力は、外部負荷(DC機器)、インバータ21b、或いは、蓄電装置40に適宜供給される。インバータ21bは、太陽光発電装置11或いは蓄電装置30から供給される直流電力を適切な交流電力に変換する。インバータ21bから出力される交流電力は、外部負荷(AC機器)に供給されたり、電力系統12に供給されたりする。場合によっては、インバータ21bに代えて双方向コンバータを用いてもよい。
【0050】
なお、蓄電装置40は、第1実施形態の蓄電装置30と同じ部材で構成される。このために、構成の詳細な説明は省略する。また、同じ部材については、第1実施形態と同一の符号を用いて説明する。
【0051】
電源システム2における蓄電装置40の使用方法として、図8に示すような使用方法が想定される。なお、図8は、第2実施形態の蓄電装置40の使用方法について説明するためのグラフである。図8において、横軸は時刻(一日分の時刻)、縦軸は4つの蓄電池33a〜33dの平均のSOCである。
【0052】
図8に示す例では、日中は、太陽光発電装置11で発電される電力で、外部負荷に必要な電力の大部分を賄うことを想定している。そして、太陽光発電装置1で発電される電力のうち、余剰の電力を蓄電装置40に蓄電(充電)することを想定している。図8に示す例で、夕方に蓄電装置40が放電するのは、太陽光発電装置1では賄えない一部の電力を蓄電装置40が賄うためである。夜間においては、太陽光発電装置11が発電しないために、蓄電装置40は充電されず、蓄電装置40は、4つの蓄電池33a〜33dの残容量の合計が所定の値となるように調整され、その後は使用されない(保存される)。
【0053】
なお、図8に示す例では、各蓄電池33a〜33dのSOCが50%とされた場合の残容量の合計値が、上述の所定の値に等しくなることが想定されている。夜間に4つの蓄電池33a〜33dの平均SOCを50%とするのは、例えば蓄電装置40を停電対策として使用できるようにする目的等のためである。
【0054】
図9は、第2実施形態の蓄電装置40が備える各蓄電池33a〜33dのSOCの変化(一例)を示すグラフである。図9において、横軸は時刻(一日分の時刻)、縦軸は各蓄電池33a〜33dのSOCである。なお、図9において、(a)は第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOC変化を示し、(b)は第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOC変化を示す。また、破線のグラフは、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられた場合のSOC変化パターンで、比較用に示されている。
【0055】
図9に示すように、夜間(すなわち、各蓄電池33a〜33dが保存される保存期間)においては、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCが25%、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCが75%で一定となるように調整される(図4Bに示す状態に同じ)。
【0056】
このために、第1実施形態で説明したように、4つの蓄電池33a〜33dが全て同一のSOCに揃えられる場合に比べて、保存期間における4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度(経年劣化の劣化度)が低減される。なお、第1実施形態の場合と同様に、電源システム2が要求する、保存時の各蓄電池33a〜33dの合計の残容量、及び、電源システム2が許容するSOCの下限値によって、保存期間における各蓄電池33a〜33dのSOCの振り分け方は適宜変更されてよい。また、保存期間における各蓄電池33a〜33dのSOCの値は、予め決定されたものがメモリ31aに記憶されている構成であってもよいし、コントローラ31が演算によって適宜決定するものであってもよい。
【0057】
また、第2実施形態では、蓄電装置40が充放電されている場合においても、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられるのではなく、2種類に分けられている。すなわち、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bからなる第1の組と、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dからなる第2の組とで、SOCが異なるように制御される。図9に示す例では、充放電時における、第1の組のSOCと、第2の組のSOCとの平均値が、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられた場合におけるSOCの想定変化パターン(図9の破線グラフ)と同一となるように、各蓄電池33a〜33dにおける充放電レートが決定されている。
【0058】
経年劣化は、充放電中にも生じる。このために、図9に示す例のように各蓄電池33a〜33dを制御することにより、4つの蓄電池33a〜33dが全て同一のSOCに揃えられる場合に比べて、充放電時においても、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度を低減可能である。ただし、充放電中にいつでも劣化の進行を低減する効果があるわけではなく、本例では、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCが50%を超えた時点で劣化の進行を低減する効果はなくなる(図3Aのグラフ参照)。
【0059】
なお、第2実施形態の構成において、充放電パターンは、過放電、過充電、過電流とならない範囲で適宜変更してよい。また、充放電時における、上記第1の組のSOCと、上記第2の組のSOCとの平均値は、SOCが全て同一に揃えられた場合におけるSOCの想定パターンと同一となるように制御する必要は必ずしもない。
【0060】
また、第2実施形態の構成でも、第1実施形態同様に、所定のタイミングで、各蓄電池33a〜33dの保存期間におけるSOCの割り当てがローテーションされる構成が採用されても構わない。例えば、図10に示すように、各蓄電池33a〜33dが放電されるタイミングを利用して、保存期間におけるSOCの割り当てがローテーションされてもよい。図10では、放電後において、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOC(保存期間におけるSOC)が25%から75%に入れ替えられ、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCが75%から25%に入れ替えられている。
【0061】
なお、図10において、横軸は時刻(一日分の時刻)、縦軸は各蓄電池33a〜33dのSOCである。図10において、(a)は第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOC変化を示し、(b)は第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOC変化を示す。また、破線のグラフは、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられた場合のSOC変化パターンで、比較用に示されている。
【0062】
また、第2実施形態の構成でも、蓄電装置40が備える各DC−DCコンバータ32a〜32dについて、スイッチに入れ替えても構わない。この場合、異なるSOCの蓄電池は同時に使用できないので、蓄電池33a〜33dの充放電の制御については変更する必要が生じる。
【0063】
<その他>
以上に示した実施形態は本発明の例示であり、本発明の蓄電装置及び電源システムは、以上に示した構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態の構成は適宜変更可能である。
【0064】
例えば、以上に示した実施形態では、蓄電装置が備える並列接続された蓄電池の数が4つとされた。しかし、これに限定されず、並列接続される蓄電池の数は適宜変更して構わない。また、保存時に設定されるSOCの種類数も適宜変更して構わない。場合によっては、保存時に設定されるSOCが全ての蓄電池で異なってもよい。
【0065】
その他、本発明の蓄電装置及び電源システムは、据え置き型の装置に限らず、例えば車両、船、飛行機、ロボット、電動アシスト自転車等の移動体に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、2 電源システム
10、12 商用交流電源(電力供給源)
11 太陽光発電装置(電力供給源)
30、40 蓄電装置
31 コントローラ(制御部、調整手段の一部)
32a〜32d DC−DCコンバータ(調整手段の一部)
33a〜33d 蓄電池
34a〜34d スイッチ(調整手段の一部)
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置に関し、特に蓄電装置が備える蓄電池の保存による劣化(経年劣化)を低減する技術に関する。また、本発明は、そのような蓄電装置を備える電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の蓄電池(二次電池)の劣化には、充放電時の劣化(サイクル劣化)の他に、充放電していない場合にも進行する経年劣化(保存劣化とも言い換えられる)がある(例えば特許文献1参照)。蓄電池を備える蓄電装置は、例えば無停電電源装置(UPS;Uninterruptible Power Supply)として使用されることがある等、充放電しない状態で保存される期間が長くなる場合もあり、経年劣化の低減は、サイクル劣化の低減とともに重要である。
【0003】
なお、特許文献2には、蓄電池の長寿命化に関する技術が開示される。特許文献2には、蓄電池の長寿命化を図る蓄電池の放電制御装置が開示され、この装置に備えられる制御手段は、放電深度検出手段が検出した放電深度に基づき、蓄電池の寿命を保証する標準放電深度を超えないように被給電機器の運転を制御する。これにより、上記放電制御装置では、過放電による蓄電池の寿命への影響を無くすことができる。以上からわかるように、特許文献2には、蓄電池の経年劣化を低減する技術については開示されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−17138号公報
【特許文献2】特開平10−243572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の点に鑑みて、本発明の目的は、蓄電池の経年劣化(保存劣化)を低減できる蓄電装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような蓄電装置を備える電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の蓄電装置は、並列接続される複数の蓄電池と、前記複数の蓄電池それぞれのSOCを調整可能に設けられる調整手段と、を備える蓄電装置であって、前記複数の蓄電池の合計残容量を所定の値として保存する場合に、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられる構成(第1の構成)になっている。
【0007】
なお、第1の構成において、蓄電池は、単一の蓄電池セルでもよいし、複数の蓄電池セルで構成されるもの(組電池)でもよい。
【0008】
本出願人は、実験によって、保存SOC(保存開始時のSOC)の変化に対する蓄電池の劣化度(経年劣化の度合い)の変化について、非線形な特性を示す蓄電池が存在することを見出している。このために、本構成のように、蓄電池を一定の条件で保存する場合に、複数の蓄電池のSOCを全て同一にせずに複数種類に分けることによって、SOCを全て同一に揃えた場合に比べて、複数の蓄電池の平均の劣化度(経年劣化の度合い)を低減することが可能になる。
【0009】
上記第1の構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池それぞれのSOCは、前記蓄電池の保存開始時のSOCと、前記蓄電池が所定の期間保存された後の劣化度との関係を示す劣化情報に基づいて決定される構成(第2の構成)とするのが好ましい。この第2の構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池それぞれのSOCと前記劣化情報とから想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度が、前記複数の蓄電池それぞれのSOCを全て同一にした場合に前記劣化情報から想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度を下回るように、前記複数の蓄電池それぞれのSOCは決定される構成(第3の構成)とするのが好ましい。
【0010】
上記第1から第3のいずれかの構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池の合計残容量が所定の値になるように保存する場合における、前記複数の蓄電池に対するSOCの割り当てが、所定のタイミングで入れ替えられる構成(第4の構成)としてもよい。本構成によれば、複数の蓄電池それぞれの劣化進行度(経年劣化の進行度)を均等にすることができる。
【0011】
上記第1から第4のいずれかの構成の蓄電装置において、前記複数の蓄電池が充放電される場合においても、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられている構成(第5の構成)としてもよい。蓄電装置が備える蓄電池においては、保存時ばかりではなく、充放電が行われている際にも、経年劣化が進行する。このために、本構成によれば、蓄電装置が備える複数の蓄電池の経年劣化の低減をより有効に行える。
【0012】
上記第1から第5のいずれかの構成の蓄電装置において、前記調整手段には、複数のDC−DCコンバータと、前記複数のDC−DCコンバータを制御する制御部と、が含まれる構成(第6の構成)が採用されてもよい。本構成によれば、SOCの異なる複数の蓄電装置の同時使用が可能であるために、蓄電装置の出力電力を十分に確保可能である。なお、場合によっては、前記DC−DCコンバータに代えて、スイッチが用いられても構わない。
【0013】
上記目的を達成するために本発明の電源システムは、外部負荷に対して電力を供給可能な電力供給源と、前記電力供給源からの電力を充電可能に設けられるとともに、外部負荷に対して放電可能に設けられる、上記第1から第6のいずれかの蓄電装置と、を備える構成(第7の構成)になっている。
【0014】
本構成では、蓄電池の経年劣化の低減が図れる蓄電装置を用いて電源システムが構成されており、電源システムの長寿命化が期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、蓄電池の経年劣化(保存劣化)を低減できる蓄電装置を提供できる。また、本発明によれば、電源システムの長寿命化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電源システムの概略構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態の蓄電装置で実行される蓄電池の経年劣化低減制御処理の流れを示すフローチャート
【図3A】第1実施形態の蓄電装置が備える蓄電池の経年劣化特性の一例を示すグラフ
【図3B】第1実施形態の蓄電装置が備える蓄電池の経年劣化特性の別例を示すグラフ
【図4A】第1実施形態の蓄電装置において、保存時の各蓄電池のSOCの決定方法について説明するための図で、全ての蓄電池のSOCが同一とされた場合の図(比較図)
【図4B】第1実施形態の蓄電装置において、保存時の各蓄電池のSOCの決定方法について説明するための図で、各蓄電池のSOCが複数種類に分けられた場合の図
【図5】第1実施形態における蓄電池の経年劣化低減制御処理の変形例を説明するための図
【図6】第1実施形態の蓄電装置の変形例を示すブロック図
【図7】本発明の第2実施形態に係る電源システムの概略構成を示すブロック図
【図8】第2実施形態の蓄電装置の使用方法について説明するためのグラフ
【図9】第2実施形態の蓄電装置が備える各蓄電池のSOCの変化(一例)を示すグラフ
【図10】第2実施形態における蓄電池の経年劣化低減制御処理の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の蓄電装置及び電源システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電源システム1の概略構成を示すブロック図である。図1において、太線は電力線、細線は信号線を示している。図1に示すように、電源システム1は、電力供給源10と、PCS(Power Conditioning System)20と、蓄電装置30と、を備える。
【0019】
電力供給源10は、外部負荷や蓄電装置30に対して電力を供給する。本実施形態では、電力供給源10として商用交流電源(電力系統に繋がる)を想定している。ただし、電力供給源は、自然エネルギーを利用して発電する自然エネルギー発電装置でもよい。自然エネルギー発電装置としては、例えば太陽光によって発電する太陽光発電装置や風力によって発電する風力発電装置等が挙げられる。
【0020】
PCS20(電力変換部)は双方向コンバータを備える。この双方向コンバータにより、PCS20は、電力供給源10からの交流電力を直流電力に変換するとともに、蓄電装置30からの直流電力を交流電力に変換する。なお、電力供給源として例えば太陽光発電装置が採用される場合には、供給電力が直流となるため、PCSに備えられる電力変換器の種類は適宜変更する必要がある。
【0021】
蓄電装置30は、コントローラ31と、4つのDC−DCコンバータ32a〜32dと、4つの蓄電池33a〜33dとを備える。第1DC−DCコンバータ32aは第1蓄電池33aに接続され、第2DC−DCコンバータ32bは第2蓄電池33bに接続され、第3DC−DCコンバータ32cは第3蓄電池33cに接続され、第4DC−DCコンバータ32dは第4蓄電池33dに接続される。そして、これら4つの組が並列に接続されている。
【0022】
なお、蓄電池33a〜33dは、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の充放電可能な電池から適宜選択すればよい。また、蓄電池33a〜33dは、1つの蓄電池セルで構成されるものでもよいし、複数の蓄電池セルが直列、並列、或いは、直並列に接続された組電池でもよい。また、4つの蓄電池33a〜33dは、劣化していない状態において、同一の満充電容量を有する。
【0023】
コントローラ31は、各DC−DCコンバータ32a〜32dに対して、各DC−DCコンバータ32a〜32dに接続される蓄電池33a〜33dの充放電に関する指令信号を出力する。各DC−DCコンバータ32a〜32dは、当該指令に基づいてPCS20から供給される電力を各蓄電池33a〜33dに適切な電力に変換して出力する。また、各DC−DCコンバータ32a〜32dは、各蓄電池33a〜33dから供給される電力をPCS20に適切な電力に変換して出力する。すなわち、コントローラ31、及び、各DC−DCコンバータ32a〜32dによって、各蓄電池33a〜33dの充放電に関わる制御(電池容量の調整)が実行される。
【0024】
なお、コントローラ31には、蓄電池の経年劣化特性に関するデータ(後述する)が記憶される不揮発性のメモリ31aが備えられる。また、コントローラ31には、各蓄電池33a〜33dから、SOC(State Of Charge)を含む電池情報が送信される。SOCは、電池の充電状態を示す指標であり、満充電容量に対する放電可能容量(残存容量)の比(百分率)で表される。各蓄電池33a〜33dのSOCは、例えば、各蓄電池33a〜33dに流れる充放電電流の積算値から求められる。また、各蓄電池33a〜33dのSOCは、予め決定された、各蓄電池33a〜33dの開放電圧(Open Circuit Voltage(OCV))とSOCとの関係を示す計算式或いはテーブルを参照することにより求めることもできる。
【0025】
なお、4つの蓄電池33a〜33dは、本発明の並列接続される複数の蓄電池の一例である。また、コントローラ31と4つのDC−DCコンバータ32a〜32dとは、本発明の調整手段の一例である。
【0026】
次に、以上のように構成される蓄電装置30において実行される、蓄電池の経年劣化(保存劣化とも呼ばれる)を低減する制御方法について説明する。蓄電装置30の4つの蓄電池33a〜33dは、例えば停電時において蓄電装置30から外部負荷に給電できるようにする等の目的で、合計の残容量が所定の値になるように保存される。所定の値は、電源システム1の運用によって適宜決定される。
【0027】
図2は、第1実施形態の蓄電装置30で実行される蓄電池の経年劣化低減制御処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ31は、4つの蓄電池33a〜33dの合計の残容量が所定の値になるように保存するタイミングになったと判断する(ステップS1でYes)と、メモリ31aに記憶される蓄電池の経年劣化(保存劣化)特性に関するデータ(劣化情報)を読み出す(ステップS2)。
【0028】
ここで、メモリ31aに記憶される劣化情報について、図3Aを参照しながら説明しておく。図3Aは、第1実施形態の蓄電装置30が備える蓄電池33a〜33dの経年劣化特性の一例を示すグラフである。図3Aにおいて、横軸は保存開始時の蓄電池のSOC、縦軸は蓄電池を所定の期間(ここでは一例として12か月としている)保存する前後の満充電容量の比(百分率)を示す。縦軸は、蓄電池の劣化度の指標になる。縦軸が100%の場合は、満充電容量が変化していないために劣化していないこと(劣化進行度ゼロ)になり、縦軸が90%の場合には、保存により満充電容量の減少が見られて容量が10%劣化したことになる。
【0029】
図3Aに示すように、第1実施形態の蓄電装置30が備える蓄電池33a〜33dは、保存開始時のSOC(保存SOC)が大きくなるにつれて、所定の期間保存した後の劣化度が大きくなることがわかる。ただし、保存SOC50%を境に、保存SOCの変化に対する劣化度の変化割合が変わる。すなわち、保存SOCが50%より大きい場合に比べて、保存SOCが50%より小さい場合の方が、保存SOCの変化に対する劣化度の変化割合(増大割合)が小さくなる傾向が認められる。メモリ31aには、このような蓄電池の劣化特性が例えばテーブル化して、或いは計算式化されて記憶されている。
【0030】
図2に戻って、劣化情報を読み出したコントローラ31は、各蓄電池33a〜33dに割り当てるSOCを決定する(ステップS3)。この決定は、次のように行われる。なお、この決定にあたって、上述のように、全ての蓄電池33a〜33dの残容量の合計が所定の値になることが前提とされる。
【0031】
例えば、割り当てられるSOCの種類が2種類(SOCyとSOCz)とされる場合には、以下の式(1)及び式(2)を満足するようにSOCの決定が行われる。なお、SOCxは、全ての蓄電池のSOCが同一とされる場合のSOC値(上述した蓄電池の残容量の合計値を蓄電池の数で割った値)である。また、βxは、蓄電池のSOCがSOCxとされる場合の劣化度(劣化情報から得られる値)である。また、βyは、蓄電池のSOCがSOCyとされる場合の劣化度である。また、βzは、蓄電池のSOCがSOCzとされる場合の劣化度である。
βx>(βy+βz)/2 (1)
SOCx=(SOCy+SOCz)/2 (2)
【0032】
ここで、SOCx=50%とされる場合を例に説明する。各蓄電池33a〜33dのSOCが全て50%とされた場合(図4A参照)における、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度は、先に読み出された劣化情報(図3Aのグラフが相当)に基づいて求められる。図3Aの例では、この劣化度は5%(βx=5%)になる。次に、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度が先に求めた劣化度(βx=5%)を下回るように、先に読み出された劣化情報(図3Aのグラフが相当)に基づいて、各蓄電池33a〜33dのSOCが決定される(複数種類に振り分けられる)。
【0033】
ここで、コントローラ31は、電源システム1に許容される保存時のSOCの下限値を有する蓄電池の数ができるだけ多くなるように、SOCの割り振りを行うのが好ましい。なお、上記SOCの下限値については、例えば、予めメモリ31aに記憶される構成でもよいし、電源システム1のコントローラ(不図示)から与えられる構成でもよい。
【0034】
電源システム1が許容するSOCが25%である場合、例えば図4Bに示すように、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCを25%(SOCy=25%)、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCを75%(SOCz=75%)とするのが好ましい。この場合、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度は、4%(=(2.5%×2+5.5%×2)/4=(βy+βz)/2)になる(図3参照)。すなわち、この劣化度(4%)は、4つの蓄電池33a〜33dのSOCを全て同一にした場合の劣化度(5%)を下回る(式(1)を満足する)。
【0035】
なお、電源システム1が許容するSOCの下限値が0%であれば、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCを0%(SOCy=0%)、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCを100%(SOCz=100%)とするのが好ましい。この場合には、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度は、3%(=(0%×2+6%×2)/4)とできる(βxを下回る)。
【0036】
コントローラ31は、各蓄電池33a〜33dのSOCを決定すると、決定されたSOCとなるように、各蓄電池33a〜33dの充電或いは放電を行う(ステップS4)。各蓄電池33a〜33dを決定されたSOCとする作業は、各蓄電池33a〜33dに対して同時に行われてもよいし、複数の組、或いは、個々に分けて行われてもよい。各蓄電池33a〜33dのSOCが狙いのSOC値となった時点で保存が開始される(ステップS5)。以上により、蓄電池の経年劣化低減制御処理は終了する。
【0037】
以上のように経年劣化低減制御処理を行うことにより、4つの蓄電池33a〜33dの経年劣化(保存劣化)を低減できる。
【0038】
なお、各蓄電池33a〜33dのSOCと経年劣化特性から想定される4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度が、各蓄電池33a〜33dのSOCを全て同一にした場合に経年劣化特性から想定される4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度を下回るように、各蓄電池33a〜33dのSOCが決定できればよい。このために、劣化度の変化割合(保存SOCの変化に対する変化の割合)が変わる点より保存SOCが大きい側で、劣化度の増大割合が小さくなる蓄電池(図3に示す特性が該当)の他、例えば、劣化度が低減する方向に変化する蓄電池(例えば図3における保存SOC50%を頂点としたV字状のグラフを示す蓄電池)等も、本実施形態の蓄電池として用いることができる。
【0039】
図3Bは、第1実施形態の蓄電装置30が備える蓄電池33a〜33dの経年劣化特性の別例を示すグラフである。図3Bの横軸及び縦軸は図3Aと同様である。図3Bも図3A同様に非線形の特性を示すが、更に複雑となっている。大まかに説明すると、保存SOCが0〜25%程度では保存SOCの増加とともに劣化度が大きくなる(保存SOCの変化に対する劣化度の増加率は比較的大きい)。また、保存SOCが25〜50%程度では保存SOCが変化しても劣化度はあまり変化しない(若干大きくなる)。また、保存SOCが50%程度以上となると、保存SOCの増加とともに劣化度が大きくなるが、保存SOCが75%程度までは保存SOCの変化に対する劣化度の増加率はさほど大きくなく、保存SOCが100%に近付くと劣化度の増加率(保存SOCの変化に対する)は比較的大きくなる。
【0040】
このような特性を示す蓄電池が使用される場合も、例えば、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCが10%(図3BのSOCyが該当)、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCが60%(図3BのSOCzが該当)となるように、SOCの割り振りが決定されれば、経年劣化の低減が可能である。なお、ここでは、上記式(2)のSOCx=35%を想定している。図3Bからわかるように、全蓄電池33a〜33dのSOCを同一とする場合には劣化度が5%になるが、上記のようにSOCを割り振る(SOCy=10%、SOCz=60%)ことで、劣化度が4.25%(=(3%×2+5.5%×2)/4)に抑制される。
【0041】
以上に示した経年劣化低減制御処理は、蓄電池33a〜33dの保存を行う場合に毎回行われてもよい。ただし、各蓄電池33a〜33dのSOCの振り分けが一度決まれば、その後は、SOCの決定処理(ステップS2及びS3)は行わず、先に決定されたSOCになるように、各蓄電池33a〜33dの充放電が行われるようにしてもよい。また、予めステップS3で説明した方法に従って保存時における各蓄電池33a〜33dのSOCを決定しておき、この決定された値をメモリ31aに記憶しておくようにしてもよい。この場合は、コントローラ31は、保存時における各蓄電池33a〜33dのSOCについてメモリ31aから読み出す処理のみ行い、SOCの振り分けを決定する演算処理は行わない。
【0042】
また、上記劣化情報は、予め実験で求められたものではなく、蓄電装置30の運用によって得られた劣化情報であってもよい。例えば、最初のうちは、保存時における各蓄電池33a〜33dのSOCの決定処理が、実験で得られた劣化情報を用いて行われ、或るタイミングで、SOCの決定処理が、運用によって得られた劣化情報を用いて行われるように変更されるといった構成が採用されてもよい。
【0043】
ここで、第1実施形態の構成に関する変形例について説明しておく。図5は、第1実施形態における蓄電池の経年劣化低減制御処理の変形例を説明するための図である。この変形例では、保存期間が所定の期間(適宜決定さればよい)を経過すると、各蓄電池33a〜33dの保存時のSOCの割り当てが入れ替えられる(ローテーションされる)ようになっている。
【0044】
図5に示す例では、最初、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bの保存時のSOCが25%とされ、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dの保存時のSOCが75%とされる。そして、保存期間が所定の期間を経過すると、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bの保存時のSOCが75%、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dの保存時のSOCが25%となるように入れ替えが行われる。このような入れ替えが行われることにより、各蓄電池33a〜33dの劣化度の進行が均等になることが期待できる。
【0045】
図6は、第1実施形態の蓄電装置30の変形例を示すブロック図である。図6に示す変形例では、第1実施形態の蓄電装置30における各DC−DCコンバータ32a〜32dが、スイッチ34a〜34dに置き換えられている。このような構成でも、上述したのと同様な経年劣化低減処理を実行可能である。
【0046】
ただし、この変形例の構成では、例えば保存中において停電等が発生して蓄電装置30が使用される場合に、SOCが異なる蓄電池を同時に使用できなくなる。例えば、SOCが大きい第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのみが使用されることになる。このために、蓄電装置30の最大出力電力が低減する。このような構成でも、例えば、停電が発生した場合における外部負荷の要求電力が小さければ、全く問題はない。
【0047】
なお、本構成の場合には、コントローラ31(図1参照)と、コントローラ31によって制御されるスイッチ31a〜31dが、本発明の調整手段に該当することになる。
【0048】
<第2実施形態>
次に第2実施形態の電源システム及び蓄電装置について説明する。図7は、本発明の第2実施形態に係る電源システム2の概略構成を示すブロック図である。図7に示すように、電源システム2は、電力供給源となる太陽光発電装置11及び商用交流電源(電力系統に繋がる)12と、PCS(電力変換部)21と、蓄電装置40と、を備える。
【0049】
PCS21には、DC−DCコンバータ21aと、インバータ21bとが備えられる。PCS21に備えられるDC−DCコンバータ21aは、太陽光発電装置11から供給される直流電力を適切な直流電力に変換する。このDC−DCコンバータ21aから出力される直流電力は、外部負荷(DC機器)、インバータ21b、或いは、蓄電装置40に適宜供給される。インバータ21bは、太陽光発電装置11或いは蓄電装置30から供給される直流電力を適切な交流電力に変換する。インバータ21bから出力される交流電力は、外部負荷(AC機器)に供給されたり、電力系統12に供給されたりする。場合によっては、インバータ21bに代えて双方向コンバータを用いてもよい。
【0050】
なお、蓄電装置40は、第1実施形態の蓄電装置30と同じ部材で構成される。このために、構成の詳細な説明は省略する。また、同じ部材については、第1実施形態と同一の符号を用いて説明する。
【0051】
電源システム2における蓄電装置40の使用方法として、図8に示すような使用方法が想定される。なお、図8は、第2実施形態の蓄電装置40の使用方法について説明するためのグラフである。図8において、横軸は時刻(一日分の時刻)、縦軸は4つの蓄電池33a〜33dの平均のSOCである。
【0052】
図8に示す例では、日中は、太陽光発電装置11で発電される電力で、外部負荷に必要な電力の大部分を賄うことを想定している。そして、太陽光発電装置1で発電される電力のうち、余剰の電力を蓄電装置40に蓄電(充電)することを想定している。図8に示す例で、夕方に蓄電装置40が放電するのは、太陽光発電装置1では賄えない一部の電力を蓄電装置40が賄うためである。夜間においては、太陽光発電装置11が発電しないために、蓄電装置40は充電されず、蓄電装置40は、4つの蓄電池33a〜33dの残容量の合計が所定の値となるように調整され、その後は使用されない(保存される)。
【0053】
なお、図8に示す例では、各蓄電池33a〜33dのSOCが50%とされた場合の残容量の合計値が、上述の所定の値に等しくなることが想定されている。夜間に4つの蓄電池33a〜33dの平均SOCを50%とするのは、例えば蓄電装置40を停電対策として使用できるようにする目的等のためである。
【0054】
図9は、第2実施形態の蓄電装置40が備える各蓄電池33a〜33dのSOCの変化(一例)を示すグラフである。図9において、横軸は時刻(一日分の時刻)、縦軸は各蓄電池33a〜33dのSOCである。なお、図9において、(a)は第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOC変化を示し、(b)は第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOC変化を示す。また、破線のグラフは、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられた場合のSOC変化パターンで、比較用に示されている。
【0055】
図9に示すように、夜間(すなわち、各蓄電池33a〜33dが保存される保存期間)においては、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCが25%、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCが75%で一定となるように調整される(図4Bに示す状態に同じ)。
【0056】
このために、第1実施形態で説明したように、4つの蓄電池33a〜33dが全て同一のSOCに揃えられる場合に比べて、保存期間における4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度(経年劣化の劣化度)が低減される。なお、第1実施形態の場合と同様に、電源システム2が要求する、保存時の各蓄電池33a〜33dの合計の残容量、及び、電源システム2が許容するSOCの下限値によって、保存期間における各蓄電池33a〜33dのSOCの振り分け方は適宜変更されてよい。また、保存期間における各蓄電池33a〜33dのSOCの値は、予め決定されたものがメモリ31aに記憶されている構成であってもよいし、コントローラ31が演算によって適宜決定するものであってもよい。
【0057】
また、第2実施形態では、蓄電装置40が充放電されている場合においても、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられるのではなく、2種類に分けられている。すなわち、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bからなる第1の組と、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dからなる第2の組とで、SOCが異なるように制御される。図9に示す例では、充放電時における、第1の組のSOCと、第2の組のSOCとの平均値が、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられた場合におけるSOCの想定変化パターン(図9の破線グラフ)と同一となるように、各蓄電池33a〜33dにおける充放電レートが決定されている。
【0058】
経年劣化は、充放電中にも生じる。このために、図9に示す例のように各蓄電池33a〜33dを制御することにより、4つの蓄電池33a〜33dが全て同一のSOCに揃えられる場合に比べて、充放電時においても、4つの蓄電池33a〜33dの平均の劣化度を低減可能である。ただし、充放電中にいつでも劣化の進行を低減する効果があるわけではなく、本例では、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOCが50%を超えた時点で劣化の進行を低減する効果はなくなる(図3Aのグラフ参照)。
【0059】
なお、第2実施形態の構成において、充放電パターンは、過放電、過充電、過電流とならない範囲で適宜変更してよい。また、充放電時における、上記第1の組のSOCと、上記第2の組のSOCとの平均値は、SOCが全て同一に揃えられた場合におけるSOCの想定パターンと同一となるように制御する必要は必ずしもない。
【0060】
また、第2実施形態の構成でも、第1実施形態同様に、所定のタイミングで、各蓄電池33a〜33dの保存期間におけるSOCの割り当てがローテーションされる構成が採用されても構わない。例えば、図10に示すように、各蓄電池33a〜33dが放電されるタイミングを利用して、保存期間におけるSOCの割り当てがローテーションされてもよい。図10では、放電後において、第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOC(保存期間におけるSOC)が25%から75%に入れ替えられ、第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOCが75%から25%に入れ替えられている。
【0061】
なお、図10において、横軸は時刻(一日分の時刻)、縦軸は各蓄電池33a〜33dのSOCである。図10において、(a)は第1蓄電池33a及び第2蓄電池33bのSOC変化を示し、(b)は第3蓄電池33c及び第4蓄電池33dのSOC変化を示す。また、破線のグラフは、4つの蓄電池33a〜33dのSOCが全て同一に揃えられた場合のSOC変化パターンで、比較用に示されている。
【0062】
また、第2実施形態の構成でも、蓄電装置40が備える各DC−DCコンバータ32a〜32dについて、スイッチに入れ替えても構わない。この場合、異なるSOCの蓄電池は同時に使用できないので、蓄電池33a〜33dの充放電の制御については変更する必要が生じる。
【0063】
<その他>
以上に示した実施形態は本発明の例示であり、本発明の蓄電装置及び電源システムは、以上に示した構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、以上に示した実施形態の構成は適宜変更可能である。
【0064】
例えば、以上に示した実施形態では、蓄電装置が備える並列接続された蓄電池の数が4つとされた。しかし、これに限定されず、並列接続される蓄電池の数は適宜変更して構わない。また、保存時に設定されるSOCの種類数も適宜変更して構わない。場合によっては、保存時に設定されるSOCが全ての蓄電池で異なってもよい。
【0065】
その他、本発明の蓄電装置及び電源システムは、据え置き型の装置に限らず、例えば車両、船、飛行機、ロボット、電動アシスト自転車等の移動体に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、2 電源システム
10、12 商用交流電源(電力供給源)
11 太陽光発電装置(電力供給源)
30、40 蓄電装置
31 コントローラ(制御部、調整手段の一部)
32a〜32d DC−DCコンバータ(調整手段の一部)
33a〜33d 蓄電池
34a〜34d スイッチ(調整手段の一部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続される複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池それぞれのSOCを調整可能に設けられる調整手段と、
を備える蓄電装置であって、
前記複数の蓄電池の合計残容量を所定の値として保存する場合に、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられる、蓄電装置。
【請求項2】
前記複数の蓄電池それぞれのSOCは、前記蓄電池の保存開始時のSOCと、前記蓄電池が所定の期間保存された後の劣化度との関係を示す劣化情報に基づいて決定される、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記複数の蓄電池それぞれのSOCと前記劣化情報とから想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度が、前記複数の蓄電池それぞれのSOCを全て同一にした場合に前記劣化情報から想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度を下回るように、前記複数の蓄電池それぞれのSOCは決定される、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記複数の蓄電池の合計残容量が所定の値になるように保存する場合における、前記複数の蓄電池に対するSOCの割り当てが、所定のタイミングで入れ替えられる、請求項1から3のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記複数の蓄電池が充放電される場合においても、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられている、請求項1から4のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記調整手段には、複数のDC−DCコンバータと、前記複数のDC−DCコンバータを制御する制御部と、が含まれる、請求項1から5のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項7】
外部負荷に対して電力を供給可能な電力供給源と、
前記電力供給源からの電力を充電可能に設けられるとともに、外部負荷に対して放電可能に設けられる、請求項1から6のいずれかに記載の蓄電装置と、
を備える、電源システム。
【請求項1】
並列接続される複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池それぞれのSOCを調整可能に設けられる調整手段と、
を備える蓄電装置であって、
前記複数の蓄電池の合計残容量を所定の値として保存する場合に、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられる、蓄電装置。
【請求項2】
前記複数の蓄電池それぞれのSOCは、前記蓄電池の保存開始時のSOCと、前記蓄電池が所定の期間保存された後の劣化度との関係を示す劣化情報に基づいて決定される、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記複数の蓄電池それぞれのSOCと前記劣化情報とから想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度が、前記複数の蓄電池それぞれのSOCを全て同一にした場合に前記劣化情報から想定される前記複数の蓄電池の平均の劣化度を下回るように、前記複数の蓄電池それぞれのSOCは決定される、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記複数の蓄電池の合計残容量が所定の値になるように保存する場合における、前記複数の蓄電池に対するSOCの割り当てが、所定のタイミングで入れ替えられる、請求項1から3のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記複数の蓄電池が充放電される場合においても、前記複数の蓄電池それぞれのSOCが、全て同一とされずに複数種類に分けられている、請求項1から4のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記調整手段には、複数のDC−DCコンバータと、前記複数のDC−DCコンバータを制御する制御部と、が含まれる、請求項1から5のいずれかに記載の蓄電装置。
【請求項7】
外部負荷に対して電力を供給可能な電力供給源と、
前記電力供給源からの電力を充電可能に設けられるとともに、外部負荷に対して放電可能に設けられる、請求項1から6のいずれかに記載の蓄電装置と、
を備える、電源システム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−102563(P2013−102563A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243566(P2011−243566)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]