説明

蓋の離脱防止構造

【課題】 蓋を3点以上で支持することによって、ガタツクが生じることなく、受枠に対して平行な姿勢を維持して所定高さだけ浮上させることができ、しかも、蓋の開閉が容易に行える。
【解決手段】 受枠4に嵌め込まれる鉄蓋1の離脱防止構造において、鉄蓋1の下面両側に、鉄蓋1の中央部を中心として相対して軸着されたロック2と、受枠4の内側に相対して設けられた、ロック2が係合するロック受け5とからなり、ロック2は、鉄蓋1の両側に2個づつ設けられ、受枠4のロック受け5近傍には、スライドガイド6が設けられ、スライドガイド6は、蓋引き上げ方向に上り傾斜に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓋の離脱防止構造、特に、洪水時等において、マンホールから溢れ出る雨水等により蓋が浮上する場合において、蓋を3点以上で支持することによって、ガタツキが生じることなく、受枠に対して平行な姿勢を維持して所定高さだけ浮上させることができ、しかも、蓋の開閉が容易に行える、蓋の離脱防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洪水時等において、マンホールから溢れ出る雨水により鉄蓋が浮上して、鉄蓋が受枠から離脱するとマンホールが開口し、この開口したマンホールに気が付かず、マンホール内に人が誤って落下する事故が起こる恐れがあった。特に、路面が雨水により覆われている場合には、この転落事故が起こりやすかった。このような事故を未然に防止するために、例えば、特許文献1(特開平7−34477号公報)に開示されているように、鉄蓋に蓋の離脱防止構造を設けて、蓋の受枠からの離脱を防止することが知られている。以下、この蓋の離脱防止構造を従来技術という。
【0003】
従来技術は、図9に示すように、鉤状に形成された重量のあるロック12を鉄蓋11の下面に軸着し、ロック12を受枠13の内側に形成されたロック受け13Aに係合させるものである。ロック12の上部には、閉塞蓋12Aが設けられ、鉄蓋11の鍵孔11Aを塞ぐようになっている。ロック12は、その自重により、閉蓋時においてロック受け13Aに自然に係合するが、車による振動等により、この係合が解除されることを防止するために、スプリング14によりロック受け13A側への回転力がロック12に付与されている。
【0004】
上記従来技術において、洪水時等において、マンホールから溢れ出る雨水により鉄蓋11に浮上力が作用すると、鉄蓋11の一端は、ロック12がロック受け13Aに係合することによって保持され、他端は、鉄蓋11と受枠13とを連結する蝶番(図示せず)によって保持されるので、鉄蓋11は、受枠13から完全に離脱せず、マンホールが開口することはない。なお、鉄蓋11を開く場合には、閉塞蓋12Aをバール等により押し下げてロックを解除する。
【0005】
【特許文献1】特開平7−34477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術によれば、鉄蓋11が受枠13から離脱することは防止できるものの、鉄蓋11と受枠13とは2点(ロック12と蝶番)で支持されているので、鉄蓋11は、この2点を中心として左右端が上下に揺動してガタツキが生じる。この結果、持ち上がった側の鉄蓋11に車の車輪が衝突する等の2次災害の原因となる恐れがあった。
【0007】
従って、この発明の目的は、洪水時等において、マンホールから溢れ出る雨水により蓋が浮上する場合において、蓋を3点以上で支持することによって、ガタツキが生じることなく、受枠に対して平行な姿勢を維持して所定高さだけ浮上させることができ、しかも、蓋の開閉が容易に行える、蓋の離脱防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0009】
請求項1記載の発明は、受枠に嵌め込まれる蓋の離脱防止構造において、前記蓋の下面両側に、前記蓋の中央部を中心として相対して軸着されたロックと、前記受枠の内側に相対して設けられた、前記ロックが係合するロック受けとからなり、前記ロックは、一方側に少なくとも1つ、他方側に少なくとも2つ設けられていることに特徴を有するものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、受枠の前記ロック受け近傍には、スライドガイドが設けられ、前記スライドガイドは、蓋引き上げ方向に上り傾斜に形成され、ロックが1つの場合には、蓋開閉時、当該ロックが前記スライドガイド上を摺動し、ロックが2つ以上の場合には、蓋開閉時、蓋引き上げ方向最上流側のロックが前記スライドガイド上を摺動し、ロックが2つ以上の場合には、相対するロック受けの間隔は、蓋引き上げ方向に向うロック受けほど広くなっていることに特徴を有するものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、ロックの下部には、ロック受けに係合する突起が形成され、前記突起の下面は、円弧面状に形成されていることに特徴を有するものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、ロックは、これを蓋の外側に回転させる弾性部材を有していることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか1つに記載の発明において、蓋は、円形状または角形状であることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1から5の何れか1つに記載の発明において、蓋と受枠とは蝶番により連結されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、洪水時等において、マンホールから溢れ出る雨水により蓋が浮上する場合において、蓋を3点以上で支持することによって、ガタツキが生じることなく、受枠に対して平行な姿勢を維持して所定高さだけ浮上させることができ、しかも、蓋の開閉が容易に行える、蓋の離脱防止構造を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の、蓋の離脱防止構造の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。なお、この例は、円形状鉄蓋であるが、角形鉄蓋であっても良い。
【0017】
図1は、この発明の、蓋の離脱防止構造における鉄蓋を示す底面図、図2は、蝶番を取り付けた状態の図1のA−A線断面図、図3は、受枠に嵌め込んだ状態の図1のB−B線断面図、図4は、この発明の、蓋の離脱防止構造における受枠を示す平面図、図5は、図4のA−A線断面図、図6は、鉄蓋が浮上した状態を示す断面図、図7は、鉄蓋を開くときの工程図であり、同図(a)は、鉄蓋が閉じられた状態を示す断面図、同図(b)は、バールにより鉄蓋の片側を若干持ち上げた状態を示す断面図、同図(c)は、スライドガイドに沿ってさらに鉄蓋を引き上げて、ロックの係合を解除した状態を示す断面図、同図(d)は、蝶番の球状部が蝶番受けに乗り上げるようにさらに鉄蓋を引き上げた状態を示す断面図、同図(e)は、蝶番の球状部が蝶番受けに完全に乗り上がった状態を示す断面図、図8は、鉄蓋を180°反転させて開いた状態を示す断面図である。
【0018】
図1から図8において、1は、鉄蓋、2は、ロックであり、鉄蓋1の下面両側に、鉄蓋1の中央部を中心として相対して、軸1A(図3参照)により回転自在に取り付けられている。ロック2は、その頂部に形成され、鉄蓋1の下面に当接するストッパー2B(図3参照)によって、垂直状態から鉄蓋1の外方に回転しないようになっている。ロック2は、一方側に少なくとも1つ、他方側に少なくとも2つ設けられている。
【0019】
この例では、鉄蓋1の両側にそれぞれ2個づつ相対して設けられている。相対するロック2の間隔は、これらに係合する、後述する相対するロック受けの間隔とほぼ等しくなっている。各ロック2は、その下部に、後述するロック受けに係合する突起2Aが形成され、突起2Aの下面は、閉蓋時に、前記ロック受けにロック2が当接したときにロック2が内方に回転しやすいように円弧面状に形成されている。3は、弾性部材としてのスプリングであり、ロック2にこれを鉄蓋1の外方に回転させる弾性力を付与して、ロック2を垂直状態を維持する。なお、ロック2は、その自重によっても垂直に垂れ下がるので、スプリング3は必ずしも必要ではない。
【0020】
4は、受枠、5は、ロック2の突起2Aが係合するロック受けであり、受枠4の内側に、ロック2と対応させて、相対して2個づつ設けられている。6は、ロック受け5近傍の受枠4に設けられたスライドガイドである。スライドガイド6は、蓋引き上げ方向に上り傾斜に形成され、ロック2が1つの場合には、蓋開閉時、当該ロックがスライドガイド6上を摺動し、ロック2が2つ以上の場合には、蓋開閉時、蓋引き上げ方向最上流側のロックがスライドガイド6上を摺動する。ロック2が2つ以上の場合には、相対するロック受けの間隔は、蓋引き上げ方向に向うロック受けほど広くなっている。これによって、1つのロックが1つのロック受けに入り込むことになるので、蓋開閉時にロック受け5内のロック2の摺動ストロークは、1つのロック受けの長さで済み、短くなる。従って、鉄蓋1の開閉時間が短縮される。
【0021】
この例では、スライドガイド6は、図4中左側のロック受け5の近傍に設けられ、左側のロック受け5の相対する間隔は、右側のロック受け5の相対する間隔より広くなっている。
【0022】
7は、鉄蓋1と受枠4とを連結する蝶番であり、その球状部7Aが受枠4に設けられた蝶番受け8に載置された状態で、鉄蓋1が受枠4内に嵌め込まれる。鉄蓋1は、蝶番7を介して、180°反転、あるいは、水平方向に180°旋回させることによって開くことができる。
【0023】
上述した、この発明の、蓋の離脱防止構造によれば、図6に示すように、鉄蓋1が内圧によって浮上した場合、ロック2がロック受け5に係合して、受枠4からの離脱が防止できる。しかも、鉄蓋1は、その片側2点で支持されるので、従来技術の片側1点で支持される場合に比べて、鉄蓋1にガタツキが生じることなく、受枠に対して平行な姿勢を維持して所定高さ(図3中Hで示す)だけ浮上させることができる。しかも、鉄蓋1の開閉時には、後述するように、ロック2がスライドガイド6上を摺動するので、鉄蓋1の開閉が容易に行える。
【0024】
次に、この発明の、蓋の離脱防止構造による、鉄蓋の開閉工程を、図7、図8を参照しながら説明する。
【0025】
図7(a)の閉蓋状態から同図(b)に示すように、バールによって鉄蓋1の片側を若干持ち上げる。次に、同図(c)に示すように、スライドガイド6に沿ってさらに鉄蓋1を引き上げて、ロック2をロック受け5から抜き出して、ロック2の係合を解除する。次に、同図(d)に示すように、蝶番7の球状部7Aが蝶番受け8に乗り上げるようにさらに鉄蓋1を引き上げる。次に、蝶番7の球状部7Aが蝶番受け8に完全に乗り上がるまで、鉄蓋1を引き上げ、そして、鉄蓋1を図8に示すように、180°反転させるか、図示しないが、水平方向に180°旋回させれば、鉄蓋1を完全に開くことができる。
【0026】
一方、鉄蓋1を閉じるには、上述の鉄蓋1を開くときと、逆の操作をすれば良い。この際、ロック2の突起2Aがロック受け5に当接すると、突起2Aの下面が円弧面状に形成されているので、ロック2は、スプリング3の弾性力に抗して鉄蓋1の内側に円滑に回転する。突起2Aがロック受け5を通過すると、ロック2は、スプリング3の弾性力や自重によって垂直になり、係合状態となる。
【0027】
以上のように、この発明によれば、鉄蓋1は、その片側2点で支持されるので、鉄蓋1の受枠4からの離脱が確実に防止できると共に、従来技術の片側1点で支持される場合に比べて、鉄蓋1にガタツキが生じることなく、受枠に対して平行な姿勢を維持して所定高さだけ浮上させることができる。また、鉄蓋1の開閉時には、ロック2がスライドガイド6上を摺動するので、鉄蓋1の開閉が容易に行える。さらに、ロック2を鉄蓋1の両側下面に設けることによって、図9に示す従来技術のロックのように、鉄蓋1に貫通した鍵孔を設ける必要がなくなり、雨水や砂等の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の、蓋の離脱防止構造における鉄蓋を示す底面図である。
【図2】蝶番を取り付けた状態の図1のA−A線断面図である。
【図3】受枠に嵌め込んだ状態の図1のB−B線断面図である。
【図4】この発明の、蓋の離脱防止構造における受枠を示す平面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】鉄蓋が浮上した状態を示す断面図である。
【図7】鉄蓋を開くときの工程図であり、同図(a)は、鉄蓋が閉じられた状態を示す断面図、同図(b)は、バールにより鉄蓋の片側を若干持ち上げた状態を示す断面図、同図(c)は、スライドガイドに沿ってさらに鉄蓋を引き上げて、ロックの係合を解除した状態を示す断面図、同図(d)は、蝶番の球状部が蝶番受けに乗り上げるようにさらに鉄蓋を引き上げた状態を示す断面図、同図(e)は、蝶番の球状部が蝶番受けに完全に乗り上がった状態を示す断面図である。
【図8】鉄蓋を180°反転させて開いた状態を示す断面図である。
【図9】従来技術を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1:鉄蓋
1A:軸
2:ロック
2A:突起
2B:ストッパー
3:スプリング
4:受枠
5:ロック受け
6:スライドガイド
7:蝶番
7A:球状部
8:蝶番受け
11:鉄蓋
11A:鍵孔
12:ロック
12A:閉塞蓋
13:受枠
13A:ロック受け
14:スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠に嵌め込まれる蓋の離脱防止構造において、前記蓋の下面両側に、前記蓋の中央部を中心として相対して設けられたロックと、前記受枠の内側に相対して設けられた、前記ロックが係合するロック受けとからなり、前記ロックは、一方側に少なくとも1つ、他方側に少なくとも2つ設けられていることを特徴とする、蓋の離脱防止構造。
【請求項2】
前記受枠の前記ロック受け近傍には、スライドガイドが設けられ、前記スライドガイドは、蓋引き上げ方向に上り傾斜に形成され、前記ロックが1つの場合には、蓋開閉時、当該ロックが前記スライドガイド上を摺動し、前記ロックが2つ以上の場合には、蓋開閉時、蓋引き上げ方向最上流側のロックが前記スライドガイド上を摺動し、前記ロックが2つ以上の場合には、相対する前記ロック受けの間隔は、蓋引き上げ方向に向う前記ロック受けほど広くなっていることを特徴とする、請求項1記載の、蓋の離脱防止構造。
【請求項3】
前記ロックの下部には、前記ロック受けに係合する突起が形成され、前記突起の下面は、曲面状に形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の、蓋の離脱防止構造。
【請求項4】
前記ロックは、これを前記蓋の外側に回転させる弾性部材を有していることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の、蓋の離脱防止構造。
【請求項5】
前記蓋は、円形状または角形状であることを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載の、蓋の離脱防止構造。
【請求項6】
前記蓋と前記受枠とは蝶番により連結されていることを特徴とする、請求項1から5の何れか1つに記載の、蓋の離脱防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−23588(P2007−23588A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206497(P2005−206497)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【特許番号】特許第3828563号(P3828563)
【特許公報発行日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】