説明

蓋付き容器

【課題】蓋を閉じるための閉合力が低減されるとともに、容器内で蓋が確実に密封される蓋付き容器を提供する。
【解決手段】弾性プラスチックから製造される、実験に使用するための蓋付き容器は、一端に容器ベース、他端に容器開口、前記容器の内壁上の保持領域および前記容器開口と前記保持領域との間の挿入領域を有する管状容器と、蓋ベースおよび前記蓋ベースの片側のストッパを有し、かつ、前記容器開口を介して容器内の密封位置へと挿入され得る蓋とを有し、ストッパの密封領域は前記容器の内壁上の密封シート上に置かれ、ストッパの外周上の滑りリングおよび保持リングを有し、滑りリングは、挿入領域に対して、保持リングが保持領域に対して有する滑り摩擦係数より低い滑り摩擦係数を有し、取り付けに際しては、挿入領域上を滑動し、保持領域上の保持リングの密封位置に置かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性プラスチックから製造される、実験に使用するための蓋付き容器に関する。
【0002】
上述のタイプの蓋付き容器は、一般的には、数十ミリリットルまたは数ミリリットルもしくは1ミリリットル未満の容量を有する。
【背景技術】
【0003】
周知の蓋付き容器は、容器と、蓋ベースを有する蓋とを備え、蓋ベースは、片側に、外周上のシール・ビードを有するストッパを備える。蓋は、ストッパ式の中空円筒を使用して容器の開口内へ挿入され、シール・ビードが容器の内壁を密封する(特許文献1参照)。
【0004】
この周知の蓋付き容器は、蓋を閉めるための閉合力が大きい。つまり、蓋付き容器をしっかりと密封するため、容器の内壁に対してシール・ビードを高い表面圧力で押さなければならないためである。この点は、蓋付き容器を、容器内で試料を加熱する用途に使用する場合に特に顕著である。用途としては、例えば、蓋付き容器が蒸気気密でなければならず、蓋は、蓋付き容器および容器内に包含される試料が沸騰水内で加熱される際に跳んで開くようなものであってはならない、といったものが知られている。さらに、蓋が、例えばポリメラーゼ連鎖反応の間に反復される加熱によって周期的負荷を受ける用途も知られている。
【0005】
閉合力が大きい手動の用途は、ユーザにストレスを与え、多くの用途がそうであるが、特に多数の蓋付き容器を閉止しなければならない場合、ユーザにはやっかいなものと見なされる。
【0006】
さらに、容器の壁に付着する蛋白質またはDNAがより少なくなるように、または低い保持効果を達成するように表面が改変されている蓋付き容器も存在する。その結果、不本意にも、滑り摩擦係数は部分的に低減される。この表面改変方法の1つとしての可能性は、蓋付き容器のコーティング、または蓋付き容器が製造されるプラスチックへ添加剤を付加することである。摩擦低減の結果として、容器の蓋は湯浴中に自動的に開くことがある。
【特許文献1】ドイツ国特許DE−A−19645892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであって、蓋を閉じるための閉合力が低減されるとともに、容器内で蓋が確実に密封される蓋付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、請求項1に記載された特徴を有する蓋付き容器によって達成される。本蓋付き容器の効果的な実施形態は、その従属請求項に提示されている。
【0009】
本発明による、弾性プラスチックから製造される、実験に使用する蓋付き容器であって、
一端に容器ベース、他端に容器開口、前記容器の内壁上の保持領域および容器開口と保持領域との間に挿入領域を有する管状容器と、
蓋ベースおよび蓋ベースの片側にストッパを有し、かつ、容器開口を介して容器内の密封位置へと挿入される蓋とを有し、ストッパの密封領域は、容器の内壁上の密封座面上に設定し、
前記ストッパの外周上の滑りリングおよび保持リングを有し、挿入領域に対する滑りリングの滑り摩擦係数は、保持リングが保持領域に対して有する滑り摩擦係数より低く、取り付けに際しては、滑りリングが挿入領域上を滑動し、保持領域上の保持リングの密封位置に設定される。
【0010】
蓋付き容器を閉じる場合、まず、滑りリングが挿入領域上を滑動し、そのために必要な力の消費量は、滑りリングの比較的低い滑り摩擦係数(「摩擦係数」としても知られる)に起因して、挿入領域に比べて著しく低減される。保持リングは、閉止工程の終わりに保持領域に配置されるだけである。したがって、原則的には、力の消費量は僅かながら増大するが、容器内に蓋を取り付けるための労力の大部分は既に注がれていることから、これによってユーザが受けるストレスは極めて少ない。さらに、滑りリングは、挿入領域へ押し込まれると容器を僅かに広げることができる。その結果、保持リングは比較的容易に保持領域へと押し込まれることが可能である。保持リングが保持領域に配置されると、保持領域に対する保持リングの滑り摩擦係数の高さに起因して、湯浴内での容器の加熱による応力(ストレス)にも耐えることができる容器内での確実な蓋の閉止および確実な密封が達成される。さらに、本蓋付き容器の取扱いは、従来の蓋付き容器と変わらない。サイズも増大する必要はないが、周知の蓋付き容器に比べて、扱いが容易であるという点で優れている。さらに、耐化学性設計が可能である。保持領域から保持リングを離脱した後は、滑りリングを挿入領域から容易に引き出すことができるので、本蓋付き容器の場合は、蓋を開けることも利用者本位のものとなっている。さらに、(例えば、保持リングおよび保持領域にポリプロピレンを使用する場合には)調質および/または貯蔵の結果として、開放力が低減される場合がある。
【0011】
滑りリングおよび保持リングは、原則的には、異なる直径を有してもよい。一実施形態によれば、滑りリングと保持リングとは略同じ直径を有する。これにより、挿入領域上での滑りリングの滑動および保持領域における保持リングの配置の連続動作が容易になる。
【0012】
一実施形態によれば、挿入領域は容器開口に向かうにつれて広がっている。その結果、押込み力の次第に増え、および滑りリングの均一なセンタリングによって、挿入領域への滑りリングの押込みが促進される。さらなる実施形態により、滑りリングが保持リングの前で挿入領域に入り、かつ滑りリングが保持リングと略同じ直径を有するように、滑りリングがさらに挿入領域において保持リングの後に配置されれば、挿入の間は、保持リングではなく滑りリングのみが挿入領域を滑動する。その結果、蓋を閉じる力の消費量は極めて少なくなる。
【0013】
一実施形態によれば、密封位置において、滑りリングおよび保持リングは、挿入領域に隣接する内径より大きい内径を有する容器の受容部分へ少なくとも部分的に入る。挿入領域と受容部分との間の移行域では、保持リングおよび/または滑りリングは軸方向に付加的に支持されてもよい。これにより、容器に対する蓋の付加的な固定および/または弾性力が達成される。
【0014】
さらなる実施形態によれば、受容部分と挿入領域との間で容器の内壁に切り込みが存在する。この実施形態では、受容部分は、例えば円筒形状または円錐形状である。この関係において、保持リングまたは滑りリングは、蓋が容器上へスナップ式に閉じるように特にこの切り込みにもたれる。
【0015】
さらなる実施形態によれば、受容部分は、挿入領域から遠ざかるにつれて広がる。滑りリングが取り付け方向で保持リングの後に配置されれば、これはまず広がった受容部分へ入る。したがって、滑りリングに掛かる押圧は保持リングに掛かる押圧より少なく、保持リングはより確実に保持される。
【0016】
この実施形態では、受容部分は、挿入領域の隣接する直径から広がってもよい。ただし、挿入領域から次第に広がる受容部分は、背後の挿入領域に隣接する切り込みから取り付け方向に広がることも可能である。
【0017】
一実施形態によれば、滑りリングおよび/または保持リングは、円筒から放射状(半径方向)に突き出す。これに関連して、滑りリングおよび/または保持リングは、円筒上の外周ビードとして構成される。その結果、挿入領域上の滑りリングおよび保持領域上の保持リングの接触圧の画定が促進される。
【0018】
滑りリングと保持リングとは、例えば円筒上で互いに離隔される、または互いに直近に配置される。
【0019】
一実施形態によれば、ストッパは円筒形状または円錐形状である。
【0020】
原則的に、ストッパは、中実のストッパ(例えば、固体円柱(solid cylinder))として設計することが可能である。一実施形態によれば、ストッパは、中空のストッパ(例えば、中空の円筒)である。これは、画定された接触力がより良く保持され得るように、滑りリングおよび/または保持リングの半径方向の弾性変形を促進する。
【0021】
本発明の実施形態を参照して既に説明したように、挿入領域、滑りリング、および保持リングの大きさを適切に設計して配置することにより、まずは滑りリングが挿入領域上を滑動し、次に保持リングが保持領域に配置されるように確実にできる。さらなる実施形態によれば、滑りリングが温度上昇および/または圧力増加および/または水分増加によって弛緩し、および/または収縮する材料から製造され、および/または保持リングが温度上昇および/または圧力増加および/または水分増加によって容積を増す材料から製造されることによって達成される。本蓋付き容器の使用時に、容器内部の温度および/または圧力および/または水分が増大すれば、滑りリングが接触し、および/または保持リングが広がる。したがって、保持リングは保持領域へと押し込まれる。この実施形態は、挿入領域上での滑りリングの初動滑動およびこれに続く保持領域上への保持リングの配置のために開示した形状および調節と組み合わされてもよい。
【0022】
さらなる実施形態によれば、挿入領域上での滑りリングの初動滑動およびこれに続く保持領域上への保持リングの配置は、中空のストッパが前面の密封位置で容器内壁の軸方向ストップを圧迫し、かつ保持リングが、蓋をさらに押し込むことにより軸方向へ圧縮されることが可能であり、かつ保持領域を密封式に圧迫するまで半径方向の外側へと横向きに押されることが可能な中空ストッパの所定領域であることによって促進される。好適には、外方横向きに押されることが可能な中空ストッパの領域は、低減された肉厚を有し、および/または膜状の形状である。したがって、中空ストッパの軸方向の圧縮下で外方横向きに押されることが可能である。また、この実施形態は、挿入領域上での滑りリングの初動滑動およびこれに続く保持領域上への保持リングの配置を促進する上述の実施形態のうちの1つと組み合わされてもよい。
【0023】
一実施形態によれば、滑りリングおよび/または挿入領域は、挿入領域に対する滑りリングの滑り摩擦係数を低減する滑動手段を搭載し、および/または滑りリングおよび/または挿入領域は、挿入領域に対する滑りリングの滑り摩擦係数を低減する材料から製造される、および/または全体が前記材料から成る外層を有する。
【0024】
滑りリングおよび/または挿入領域の滑り摩擦係数を低減するために、様々な材料の使用が可能である。一実施形態によれば、滑りリングおよび/または挿入領域は、フッ素で処理された滑動手段および/またはフッ素処理された材料から製造された外層を搭載し、および/または全体がフッ素処理された材料から成る。前記フッ素処理された材料は、例えばPTFEである。
【0025】
さらなる実施形態によれば、滑りリングおよび/または挿入領域は、ポリエチレンから製造された滑動手段を搭載し、および/またはポリエチレンから製造された外層を備え、および/または全体がポリエチレンから成る。
【0026】
さらなる実施形態によれば、滑りリングおよび/または挿入領域は、PVDFから製造された滑動手段を搭載し、および/またはPVDFから製造された外層を備え、および/または全体がPVDFから成る。
【0027】
本蓋付き容器としては、複数の適切な材料が考えられる。一実施形態によれば、少なくとも保持領域はポリプロピレンから成り、および/または少なくとも蓋の保持リングはポリプロピレンから成る。一実施形態によれば、容器は、全体がポリプロピレンから成って滑りリングおよび/または挿入領域だけに異なる材料から製造される滑動手段が供給され、および/または異なる材料から製造される外層を備え、かつ/または全体がポリプロピレンとは異なる材料から成る。ポリプロピレンから製造される蓋付き容器は、滑りリングおよび/または挿入領域がポリエチレンで製造されていれば特に効果的である。ポリエチレンは、ポリプロピレンに似た耐化学性を有する規格材料である。
【0028】
さらなる実施形態によれば、滑りリングおよび/または挿入領域は残りの容器部分とは異なる色を有する。その結果、その蓋付き容器に必要な閉合力は低減されていることをユーザに示すことができる。
【0029】
さらなる実施形態によれば、本容器は、全体が滑り摩擦係数を低減する材料から成って保持リングおよび/または保持領域に異なる材料から製造される滑り摩擦係数を上げる手段が供給され、および/または異なる材料から製造される外層を備え、および/または全体が異なる材料から成る。これに関連して、本容器は、先に開示したように、例えば容器に付着する蛋白質またはDNAが少なくなるように、または低い保持効果が達成されるように表面が改変されている容器である。これに付随する滑り摩擦係数の低減は、保持リングおよび/または保持領域の滑り摩擦係数の増大によって補償される。その結果、この蓋付き容器もまた、特に湯浴における加熱に際しても確実に密封される。
【0030】
ストッパの密封領域および容器の密封シートは、様々な配置が可能である。一実施形態によれば、ストッパの密封領域は保持領域および/または滑りリング上に存在し、および/または容器の密封シートは挿入領域の終端および/または保持領域内および/または切り込み上に存在する。したがって、保持リングおよび/または滑りリングは、同時に密封リングとして使用される。例えば、密封シートが挿入領域の終端に配置されている場合には、短い円筒形の端領域が存在する。また、受容領域が挿入領域の終端に近接している、および/または切り込み上にある配置も、容器上に蓋をぱちんと閉めるためにこの領域に保持リングが置かれていれば、特に効果的である。
【0031】
本発明は、容器から分離された蓋が容器開口へと挿入されることが可能な設計を含む。一実施形態によれば、この蓋は、フィルム・ヒンジによって解放不可式に容器へ接続される。
【0032】
さらなる実施形態によれば、蓋は容器を覆って横方向へ突き出すタングを備え、これにより、容器開口への蓋の押込み、および/または容器開口からの蓋の押出しが簡易化される。
【0033】
ある実施形態によれば、本蓋付き容器はマルチ射出成形プロセスにおいて製造され、少なくとも滑りリングは、蓋付き容器の残りの部分とは異なるプラスチックから射出成形されている。例えば、滑りリングはポリエチレンから、蓋付き容器の残りの部分はポリプロピレンから射出成形される。
【0034】
一実施形態によれば、滑りリングは容器上へ射出成形され、または容器が滑りリング上へ射出成形される。本蓋付き容器は、例えば、容器が滑りリングを射出成形するための射出成形用金型内へ導入され、次に滑りリングが射出成形されることによって、もしくは滑りリングが容器を射出成形するための射出成形用金型内へ導入され、次に容器が射出成形されることによって製造することができる。
【0035】
さらなる実施形態によれば、滑りリングは円筒の外周上の環状の溝内に、または突起の間に配置される。その結果、滑りリングは、蓋上へ解放不可式に保持される。これに関連して、引き続き滑りリングを蓋の円筒上へスナップ式に閉じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の本発明の1実施形態をさらに詳しく説明する。
【0037】
本蓋付き容器は、図1、2に示すように、シェル形の容器ベース2、隣接する円錐部分3およびこれに隣接する円筒部分4を備える容器1を有し、円筒部分4は、容器開口5および前記開口を囲む容器フランジ6を備える。容器開口5の領域内において、容器1は、円筒部分4の外周で容器フランジ6の下に設けられたリブ7によって補強されている。
【0038】
容器1は、図3に示すように、容器開口5に隣接するその内壁8に、容器開口5に向かうにつれて広がる円錐形状の挿入領域9を有する。
【0039】
挿入領域9は、直径が最も小さい領域に円筒形の終端領域10を有する。挿入領域9は、切り込み11によって画定される。受容領域12は、切り込み11から容器ベース2に向かうにつれて広がる円錐形状に伸びている。
【0040】
挿入領域9のアプローチ角は、約10゜であり、受容領域12のアプローチ角は、約1゜である。
【0041】
受容領域12の隣には、容器ベース2の方向にその直径が狭まる円錐形状の移行領域13が存在する。移行領域13において、容器1の肉厚は次第に増している。移行領域13から容器ベース2までは、容器1の肉厚は実質的に一様である。
【0042】
本蓋付き容器はさらに蓋14を有する。この蓋14は、ベースライン上に隣り合わせで近接配置される同形状の2つの二等辺四辺形(等脚台形)の形状からなる蓋ベース15を備える。蓋ベース15は、端に安定用の縁16を有する。
【0043】
容器フランジ6は、バンド・ヒンジ17によって蓋14へ接続され、バンド・ヒンジ17は折り目18を中心にして折り畳むことができる。
【0044】
蓋ベース15は、その内側に中空の円筒19を備え、その全外周が縁16から所定距離にあって前記縁より上に突き出ている。中空の円筒19は、外側の自由端に周縁滑りリング20を有する。滑りリング20には、中空の円筒19の前面へ向かって丸み21が設けられている。さらに、これは円筒状のリング部分22を有する。
【0045】
滑りリング20の隣には、中空の円筒19の自由端からさらに離れて保持リング23が存在する。保持リング23は、滑りリング20の円筒状のリング部分22と同じ直径を有し、これに隣接するさらなる円筒状のリング部分24を有する。保持リング23の反対側は、さらなる丸み25を介して中空の円筒19内へ入る。
【0046】
本蓋付き容器は、ポリプロピレンおよびポリエチレンを利用して二成分複合射出成形プロセスで一体的に射出成形される。ポリエチレンで構成されるものは滑りリング20のみであり、本蓋付き容器の残りの部分はポリプロピレンで構成されている。
【0047】
ポリエチレン対ポリプロピレンは、ポリプロピレン対ポリプロピレンより望ましい滑り摩擦係数を有する。
【0048】
本蓋付き容器の閉止に際しては、蓋14は、中空の円筒19が容器開口5内へ入るように、折り目18を中心にして挿入方向Eに折り畳まれる。したがって、保持リング23の後で挿入方向Iに配置される滑りリング20は、円錐形状の挿入領域9上を滑動する。これに続く保持リング23は、挿入領域9に接触しない。挿入領域9のポリプロピレンに対する滑りリング20のポリプロピレンの望ましい滑り摩擦係数に起因して要される力の消費量は比較的少ない(図4)。
【0049】
したがって、終端領域10上へ滑りリング20を押し込むための力の消費量は少ない。最終的に、滑りリング20は切り込み11上へ押されて受容領域12に至り、保持リング23は切り込み11および受容領域12の隣接領域に配置される。受容領域12は、容器1の保持領域26を形成する。このために要する力の消費量は、残りの変位経路が短く、容器1は滑りリング20によって既に広げられていることから比較的少ない。保持リング23が保持領域26の位置に達すると、蓋14は容器1にロックされる。これと同時に、保持領域26は、保持リング23が密封領域28で密封されることにより密封座面(sealing seat)27になる。保持リング23は、密封リングでもある。
【0050】
ロック位置において、ポリプロピレンで製造された保持リング23は、ポリプロピレンで製造された受容領域12および/または切り込み11上に置かれる。ポリプロピレン対ポリプロピレンの滑り摩擦係数は高いことから、蓋14は容器1内に確実に保持される。保持リング23が切り込み11を圧迫することによって生じる弾性力(snapping-on)は、さらに蓋14を容器1内に固定する。
【0051】
図6に示す別実施形態は、滑りリング20が外周上に密封領域28を有し、これが受容領域12の密封座面27上に置かれる点で、図1ないし図5に示す実施形態とは異なる。この目的を達成するために、受容領域12は、容器ベース2の方向へ先細っている。したがって、滑りリング20は同時に密封リングになる。
【0052】
図7に示す別実施形態は、保持リング23が挿入方向Eの滑りリング20の後に配置される点で、上述の実施形態とは異なる。この場合、保持リング23は、受容領域12の密封座面27上に置かれる密封領域28を備える。密封領域28が密封座面27を圧迫するにつれて、蓋14は容器1内に保持される。さらに、滑りリング20が切り込み11を圧迫することにより、蓋は容器1内である程度固定される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】蓋付き容器を上から示す斜視図である。
【図2】上記蓋付き容器の平面図である。
【図3】上記蓋付き容器の容器を示す縦断面図である。
【図4】円筒を容器開口へ取り付ける際の蓋と容器を示す部分断面図である。
【図5】密封位置にある蓋と容器を示す部分断面図である。
【図6】密封領域が滑りリング上にある状態のさらなる蓋付き容器の蓋と容器を示す部分断面図である。
【図7】保持リングが滑りリングの背後で挿入方向に配置されかつ密封領域を備える、さらなる蓋付き容器の蓋と容器を示す部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性プラスチックから製造される、実験に使用する蓋付き容器であって、
一端に容器ベース(2)、他端に容器開口(5)、前記容器の内壁(8)上の保持領域(26)および容器開口(5)と保持領域(26)との間に挿入領域(9)を有する管状容器(1)と、
蓋ベース(18)および蓋ベース(18)の片側にストッパ(19)を有し、かつ、容器開口(5)を介して容器(1)内の密封位置へと挿入される蓋(14)とを有し、ストッパ(19)の密封領域(28)は、容器(1)の内壁(8)上の密封座面(27)上に設定し、
前記ストッパ(19)の外周上の滑りリング(20)および保持リング(23)を有し、挿入領域(9)に対する滑りリング(20)の滑り摩擦係数は、保持リング(23)が保持領域(26)に対して有する滑り摩擦係数より低く、取り付けに際しては、滑りリングが挿入領域(9)上を滑動し、保持領域(26)上の保持リング(23)の密封位置に設定される蓋付き容器。
【請求項2】
前記滑りリング(20)は、前記保持リング(23)と略同じ直径を有する請求項1に記載の蓋付き容器。
【請求項3】
前記挿入領域(9)は、前記容器開口(5)に向かうにつれて広がる請求項1または2に記載の蓋付き容器。
【請求項4】
前記滑りリング(20)は、挿入方向(E)で前記保持リング(23)の後に配置される請求項2または3に記載の蓋付き容器。
【請求項5】
前記密封位置において、前記滑りリング(20)および前記保持リングは、挿入領域(9)に隣接する内径より大きい内径を有する容器(1)の受容部分(12)に少なくとも部分的に入る請求項1ないし4のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項6】
前記受容部分(12)と前記挿入領域(9)との間の前記容器の内壁(8)に切り込み(11)が存在する請求項5に記載の蓋付き容器。
【請求項7】
前記受容部分は、前記挿入領域(9)から遠ざかるにつれて広がる請求項5または6に記載の蓋付き容器。
【請求項8】
前記滑りリング(20)および/または前記保持リング(23)は、前記ストッパ(19)から放射状に突き出す請求項1ないし7のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項9】
前記ストッパ(19)は、円筒状または円錐状である請求項1ないし8のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項10】
前記ストッパ(19)は、中空のストッパである請求項1ないし9のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項11】
前記滑りリング(20)は、温度上昇および/または圧力増加および/または水分増加によって弛緩および/または収縮する材料から製造され、
および/または前記保持リング(23)は、温度上昇および/または圧力増加および/または水分増加によって容積を増す材料から製造される請求項1ないし10のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項12】
前記中空のストッパ(19)は、前面の密封位置で容器(1)の内壁(8)の軸止め(a axial stop)を圧迫し、前記保持リング(23)は、前記蓋(14)をさらに押し込むことにより軸方向へ圧縮されることが可能であり、かつ、前記保持領域(26)を固定クランプ式で圧迫するまで放射状外方へと横向きに押されることが可能な前記中空円筒(19)の所定領域である請求項10または11に記載の蓋付き容器。
【請求項13】
外側へと横向きに押されることが可能な前記中空のストッパ(19)の領域は、中空のストッパ(19)の低減された肉厚の領域である請求項12に記載の蓋付き容器。
【請求項14】
前記滑りリング(20)および/または前記挿入領域(9)は、挿入領域(9)に対する滑りリング(20)の滑り摩擦係数を低減する滑動手段を搭載し、および/または滑りリング(20)および/または挿入領域(9)は、挿入領域(9)に対し、および/または滑りリング(20)に対して低減された滑り摩擦係数を有する材料から製造される、および/または完全に材料から成る外層を有する請求項1ないし13のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項15】
前記滑りリング(20)および/または前記挿入領域(9)は、フッ素で処理された滑動手段を搭載し、および/またはフッ素処理された材料から製造された外層を備え、および/または全体がフッ素処理された材料から成る請求項1ないし14のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項16】
前記滑りリング(20)および/または前記挿入領域(9)は、ポリエチレンから製造された滑動手段を搭載し、および/またはポリエチレンから製造された外層を備え、および/または全体がポリエチレンから成る請求項1ないし15のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項17】
前記滑りリング(20)および/または前記挿入領域(9)は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)から製造された滑動手段を搭載し、および/またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)から製造された外層を備え、および/または全体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)から成る請求項1ないし16のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項18】
前記滑りリング(20)および/または前記挿入領域(9)は、蓋付き容器の残りの部分とは異なる色を有する請求項1ないし17のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項19】
少なくとも前記保持領域(26)は、ポリプロピレンから成り、および/または少なくとも前記保持リング(23)は、ポリプロピレンから成る請求項1ないし18のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項20】
前記容器は、全体がポリプロピレンから成り、前記滑りリング(29)および/または前記挿入領域(9)は、異なる材料から製造される滑動手段を備え、および/または異なる材料から製造される外層を備え、および/または全体が異なる材料から成り、前記他の材料は滑り摩擦係数を低減する請求項19に記載の蓋付き容器。
【請求項21】
前記容器(1)は、全体が滑り摩擦係数を低減する材料から成り、前記保持リング(23)および/または前記保持領域(26)は、異なる材料から製造される滑り摩擦係数を上げる手段を備え、および/または滑り摩擦係数を上げる異なる材料から製造される外層を備え、および/または全体が滑り摩擦係数を上げる異なる材料から成る請求項1ないし13のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項22】
前記ストッパ(19)の前記密封領域(28)は、前記保持領域(23)および/または前記滑りリング(20)上に存在し、および/または前記容器(1)の密封座面(27)は、前記挿入領域(9)の終端および/または前記受容領域(12)内および/または切り込み(11)上に存在する請求項1ないし21のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項23】
前記蓋(14)は、フィルム・ヒンジ(17)によって前記容器(1)に接続されている請求項1ないし22のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項24】
前記蓋(14)は、前記容器(1)を覆って横方向へ突き出す舌片(tongue)を備える請求項1ないし23のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項25】
前記蓋付き容器は、マルチ射出成形プロセスにおいて製造され、少なくとも前記滑りリング(20)は、蓋付き容器の残りの部分とは異なるプラスチックから射出成形されて構成した請求項1ないし24のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項26】
前記滑りリング(20)は、前記容器(1)上へ射出成形され、または前記容器(1)は、前記滑りリング(20)上へ射出成形されて構成した請求項1ないし25のいずれかに記載の蓋付き容器。
【請求項27】
前記滑りリング(20)は、前記円筒(19)の外周上の環状溝内に配置される請求項1ないし26のいずれかに記載の蓋付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−153446(P2007−153446A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323907(P2006−323907)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(591121683)エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフト (23)
【Fターム(参考)】