説明

蓋体開閉装置

【課題】蓋体の開閉を容易に行うことができるとともに、蓋体を安定した速度で開閉することのできる蓋体開閉装置を提供すること。
【解決手段】蓋体開閉装置10は、断面で見たときに、重心位置以外の位置を支点33aとして回動可能に支持される蓋体30と、蓋体30の重心位置と支点33aを挟んで反対側で、自重を作用させるカウンターウェイト40と、を備え、カウンターウェイト40は、剛体から構成され、カウンターウェイト40は、カウンターウェイト40の重心位置以外の第1連結部41aで、蓋体30の支点33aから離れた位置に回動可能に連結され、カウンターウェイト40の重心位置以外で、第1連結部41aとは別のカウンターウェイト40の第2連結部41bは、カウンターウェイト40に対して水平方向に抗力を生じさせる軌道X上に沿って移動するように連結されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重量の大きい蓋体の開閉を補助する機構として、蓋体にカウンターウェイト(又はバランスウェイトともいう)を取り付けた機構がある。例えば、特許文献1では、蓋体の裏面に取り付けられたアームとバランスウェイトが固着されたアームとを互いに噛合する歯車を介して連動させ、蓋体を開いたときにバランスウェイトが降下するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−146570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓋体にカウンターウェイトを取り付けることによって、カウンターウェイトを有さない場合よりも蓋体の開閉を容易に行うことができるようになるものの、開閉速度が安定しないという問題や、蓋体の開閉の負荷を減らしたいという要望があった。例えば、蓋体の開閉の負荷を減らそうとした場合、蓋体が開き易くなり過ぎて、蓋体を取り付けた構造物に対して当該蓋体が開閉時に勢いよく衝突して蓋体や構造物が損傷しないように、開閉を慎重に行わなければならなかった。また、蓋体が開き易くなりすぎないようにするあまり、蓋体の開閉に要する負荷が増えることもあった。
【0005】
本発明は、蓋体の開閉を容易に行うことができるとともに、蓋体を安定した速度で開閉することのできる蓋体開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓋体開閉装置は、断面で見たときに、重心位置以外の位置を支点として回動可能に支持される蓋体と、前記蓋体の重心位置と前記支点を挟んで反対側で、自重を作用させるカウンターウェイトと、を備え、前記カウンターウェイトは、剛体から構成され、前記カウンターウェイトは、当該カウンターウェイトの重心位置以外の第1連結部で、前記蓋体の前記支点から離れた位置に回動可能に連結され、前記カウンターウェイトの重心位置以外で、前記第1連結部とは別の前記カウンターウェイトの第2連結部は、前記カウンターウェイトに対して水平方向に抗力を生じさせる軌道上に沿って移動するように連結されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、カウンターウェイトに起因する蓋体を開こうとする方向のモーメント(開方向モーメント)、及び蓋体の重量に起因する蓋体を閉じようとする方向のモーメント(閉方向モーメント)が蓋体に作用する。なお、支点を中心として左回り方向を正、右回り方向を負とする。さらに、モーメントの値が正のとき開方向モーメントとし、モーメントの値が負のとき閉方向モーメントとする。
そして、カウンターウェイトの重量を適切に設定することで、蓋体を開く角度が増大するにつれて、カウンターウェイト重量起因の開方向モーメントと蓋体重量起因の閉方向モーメントの合計が減少するように設定することができる。
また、第2連結部によってカウンターウェイトに対して水平方向の抗力を生じさせ、この抗力に起因する蓋体を開こうとする方向のモーメント(開方向モーメント)が蓋体に作用する。
蓋体に作用するこれら3つのモーメントのバランスを調整し、蓋体を開く角度が小さい場合には、当該3つのモーメントの合計が正値となるようにして、蓋体に開方向のモーメントを作用させる。そして、蓋体を開く角度が大きくなるに従って、当該3つのモーメントの合計値は減少させる。さらに、回転角が大きくなると、当該3つのモーメントの合計値は負値になるようにして、蓋体に閉方向のモーメントを作用させる。
このように、蓋体を開く動作中にモーメントのバランスを変化させることができるので、蓋体を開く動作を軽い負荷で行うことができるとともに、蓋体の回転角が大きくなると蓋体を開く動作を抑制することができる。
よって、本発明によれば、蓋体の開閉を容易に行うことができるとともに、蓋体を安定した速度で開閉することができる。
【0008】
本発明の蓋体開閉装置は、前記蓋体の重心位置と前記支点とを結ぶ線分、及び前記第1連結部と前記支点とを結ぶ線分が成す角度は、鉛直下方側で180度未満であることが好ましい。
【0009】
この発明によれば、当該角度の範囲で、当該角度を小さくすることで、カウンターウェイトの重量に起因する開方向モーメントを小さくすることができる。そのため、蓋体に作用する3つのモーメントの合計値が大きい正値をとって、蓋体が急激に開かないように、カウンターウェイトの重量に起因する開方向モーメントを小さくさせて、当該3つのモーメントの合計値が大きい正値とならないように調節し、より安定した速度で蓋体を開閉することができる。
【0010】
本発明の蓋体開閉装置において、前記第2連結部の軌道は、鉛直方向に延在していることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、第2連結部の軌道は鉛直方向に制限されるので、カウンターウェイトに対する水平方向の抗力をより効率的に生じさせることができる。
さらに、第2連結部の水平方向への移動が抑制されているので、蓋体開閉装置を作動させるためのスペースを小さくすることができる。
【0012】
本発明の蓋体開閉装置において、前記断面に直交し、前記支点を通る支持軸を有し、前記カウンターウェイトは、前記支持軸の軸方向端部の少なくともいずれか一方に設けられていることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、蓋体開閉装置が取り付けられる箱体等の構造体において、カウンターウェイトを構造体内部の側面側に設けることができる。そのため、構造体内部の空間を広く確保することができるとともに、構造体内部に収容する物との接触を防ぐこともできる。
【0014】
本発明の蓋体開閉装置において、前記第1連結部、及び前記第2連結部とは別の前記カウンターウェイトの第3連結部は、前記蓋体の回動角度に応じて前記カウンターウェイトの回動を制御する制動装置に連結されていることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、蓋体の回動角度に応じてカウンターウェイトの回動を制御することができるので、蓋体が所定角度だけ開いた所で、蓋体の開動作を静止させることができる。そのため、蓋体の急激な回動を停止させることが出来る。
また、例えば、この蓋体開閉装置を備えた構造体を使用する者が、蓋体を所定角度まで開いたところで、手を離しても制動装置により蓋体の動作を静止させることができ、両手を使って当該構造体内部に物を収容するなどの作業を行い易くすることができる。
【0016】
本発明の蓋体開閉装置において、前記制動装置は、少なくとも2つ以上の滑車と、前記第3連結部の回動範囲の外側に設定された2つの固定端部に掛け渡されるベルトと、を備え、前記制動装置は、前記蓋体及び前記カウンターウェイトが回動するときに前記少なくとも2つ以上の滑車を前記ベルト上で転動させることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、滑車がベルト上を転動することによって生ずる摩擦力を利用した簡易的な構成の制動装置で、カウンターウェイトの回動を制御するとともに、蓋体の急激な回動を停止させることが出来る。さらに、この発明によれば、蓋体の開閉動作にシリンダーを用いるような方式と比較して、優れた耐久性を示す。さらに、ベルトの代わりにチェーンやワイヤーなどを用いた制動装置よりも、本発明の制動装置の方が優れた耐久性を示し、滑車の転動時に生ずる音を小さくすることができる。
【0018】
本発明の蓋体開閉装置において、前記ベルトの長さは、前記2つの固定端部を結ぶ線分の長さよりも長いことが好ましい。
【0019】
この発明によれば、蓋体が閉じているときはベルトを弛緩させた状態とすることができる。そして、蓋体が回動すると、カウンターウェイトも回動し、第1連結部から第3連結部へ向かう方向に制動装置の滑車が付勢される。このとき、ベルトも当該方向に付勢されるので、ベルトを緊張させた状態とすることができる。ベルトを緊張させた状態では、滑車の転動が抑制されるので、カウンターウェイトの回動が抑制されることになる。
このように、蓋体を開く動作の初期は軽い負荷で行うことができるとともに、蓋体の回転角が大きくなるとカウンターウェイト回動が抑制されて、蓋体の開動作を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る蓋体開閉装置の原理及び構造を説明する図。
【図2】構造体BCDの力のバランスについて説明する図。
【図3】構造体AOBの回転角γに応じた点A,点O,点Bの位置関係を示す図。
【図4】図3とは別の条件下における構造体AOBの回転角γに応じた点A,点O,点Bの位置関係を示す図。
【図5】構造体AOB、及び構造体BCDにおける、点A,点O,点B,点C、点Dの位置関係を示す図。
【図6】図5とは別の条件下における構造体AOB、及び構造体BCDにおける、点A,点O,点B,点C、点Dの位置関係を示す図。
【図7】本発明の実施形態に係るゴミ箱を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る蓋体開閉装置を示す前記ゴミ箱の断面図。
【図9】図8における蓋体開閉装置の蓋体を開いた状態を示す前記ゴミ箱の断面図。
【図10】本発明の実施形態に係る制動装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔本発明の原理及び構造〕
[1]構造・位置の説明
図1は、本発明に係る蓋体開閉装置の原理及び構造を、その断面を見て説明する図である。ここでは、XY座標系を用いて説明する。なお、重力は、Y軸の負方向に作用するものとする。
また、次式(1)に示すようなベクトルを、以下、ベクトルOA、と表すこととする。
【0022】
【数1】

【0023】
三角形(または直線)AOBは、点Oを支点として自在に回転し得る構造体とし、蓋体開閉装置における蓋体に相当し、以下、構造体AOBという。
点Oは、XY座標系の原点であると共に構造体AOBを自在に回転させるための支点であり、左回り方向を正としている。
点Aは、蓋体の荷重が作用する点である。
点Bは、後述するカウンターウェイト(三角形BDC)が連結される点であって、カウンターウェイトによる力が作用する点である(第1連結部)。
ベクトルOAとベクトルOBとが成すY軸負方向の角度は、π−α(rad)で表される。ここで、αは、0からπ/3の間の値に設定する。すなわち、点O、点A、及び点Bは、α=0のとき、線分AOBとなる。αが0(rad)を超える(α>0)とき、線分OAと線分OBとが点Oで交わる。ここで、ベクトルOAの長さをkaとし、ベクトルOBの長さをkbとする。
蓋体が点Oを支点としてどの程度回転したかについては、ベクトルOAとX軸(正方向)とがなす回転角度γ(X軸からの反時計回りの角度)で表す。
直線OBとX軸(負方向)がなす角度(反時計回り)をθとすると、次式(2)の関係が成り立つ。
【0024】
【数2】

【0025】
三角形BDCは、第1連結部としての点Bで線分ABに連結されており、点Bを支点として自在に回転し得る構造の剛体とし、蓋体開閉装置におけるカウンターウェイトを表し、以下、構造体BDCという。
点Cは、剛体上の一部であり、必要に応じてカウンターウェイトに対して制動力を作用させる第3連結部となる点である。制動力を作用させるには、後述する制動装置を用いる。
点Dは、後述するカウンターウェイトガイドによって形成される軌道上に連結されるカウンターウェイトの第2連結部であり、直線L上を移動する点である。
ベクトルBCとベクトルBDとが成すY軸負方向の角度をβとする。構造体BDCは剛体なので、βは定数となる。ここで、ベクトルBCの長さをkcとし、ベクトルBDの長さをkdとする。
ベクトルBCとX軸(正方向)とは時計回りで角度ωをなす。構造体AOBが回転(蓋体が開閉)すると、点Oを中心とした円弧を描きながら点Bの位置が変位し、それとともに、点Cの位置も変位するので、ωは構造体AOBの回転による変数である。
なお、構造体BDCは必ずしも三角形でなくてもよく、3点B,D,Cが相互に剛体的位置関係を保持できればよい。
【0026】
直線Lは、構造体BDC(カウンターウェイト)の点Dが連結され、点Dが移動し得る軌道を表す直線である。構造体BDCの点Dは、この直線L上に拘束されて移動する。なお、この直線Lは、蓋体開閉装置における制御部材(カウンターウェイトガイド)によって形成される軌道に相当する。
この拘束によって、線分OAと線分OBの角度θが任意の値をとるときに、これに対応して、構造体BDCの位置(点Bの位置、及び角度ω)が一意的に定まる。
なお、直線Lは、必ずしも直線である必要はなく、湾曲する曲線であってもよい。すなわち、構造体BDCに対して水平方向に抗力を作用させるように点Dを移動させる軌道であればよく、蓋体の回動に伴って点Bの移動軌跡とは異なる軌道に沿って点Dを移動させる軌道であれば、水平方向に抗力を生じさせることができる。
【0027】
次に線分ABの角度θに任意の値を与えたときの、構造体BDCの位置(点C、及び点Dの位置、並びにベクトルBCの角度ω)を求める。
点Aの座標(ベクトルOAの成分)、点Bの座標(ベクトルOBの成分)、ベクトルBCの成分、及びベクトルBDの成分は次のように表される。
【0028】
【数3】

【0029】
点Cの座標(ベクトルOCの成分)は、ベクトルOBの成分とベクトルBCの成分の和となるので次のように表される。
【0030】
【数4】

【0031】
点Dの座標(ベクトルODの成分)は、ベクトルOBの成分とベクトルBDの成分の和となるので次のように表される。
【0032】
【数5】

【0033】
ここで、直線は一般的に次式(3)で表される。ただし、a,b,及びcは定数とする。
【0034】
【数6】

【0035】
点Dが直線L上(カウンターウェイトガイド)に位置するときは、点Dの(x,y)座標が式(9)を満たすことなる。
ここでは、直線Lがy軸に対して平行な直線の場合で考えると、直線Lは、次式(10)で表すことができる。ただし、Lcは定数とする。
【0036】
【数7】

【0037】
点Dの(x,y)座標、及び式(10)から次式(11)が導き出される。
【0038】
【数8】

【0039】
この式(11)をωについて解くと、次式(12)が導き出される。
【0040】
【数9】

【0041】
この式(12)に基づいて、点C及び点Dの座標を求めることができる結果、三角形(構造体)BDCの位置も求めることができる。
【0042】
[2]カウンターウェイトの力のバランス
図2は、カウンターウェイト(構造体BDC)の力のバランスについて説明する図である。直線Lは垂直(y軸に対して平行)であり、重力の方向は垂直方向とする。
カウンターウェイトには、次の3つの力が作用する。
ベクトルFW:カウンターウェイトの重心Mに作用する重力。
ベクトルFN:カウンターウェイトガイド(直線L)からの反作用による抗力。
向きは直線Lに対して垂直方向。
ベクトルFC:カウンターウェイトが構造体AOBの点Bから受ける力。
カウンターウェイトが構造体AOBに作用する力の反作用。
【0043】
この3つの力のバランスは次式(13)で表される。
【0044】
【数10】

【0045】
そして、点Bを基準とするモーメントのバランス式は、次式(14)で表される。
【0046】
【数11】

【0047】
ここで、ベクトルBDの成分は、前記したように、次式(15)で表される。
【0048】
【数12】

【0049】
また、ベクトルBMの長さ(点Bから点Mまでの距離)をkdとし、ベクトルBCとベクトルBMとが成す角度をεとすると、ベクトルBMの成分は、次式(16)で表される。ここでεは定数である。
【0050】
【数13】

【0051】
そして、カウンターウェイトの重量をfwとすると、ベクトルFWの成分は、次式(17)で表される。ここで、fwは正値である。
【0052】
【数14】

【0053】
さらに、カウンターウェイトがカウンターウェイトガイド(直線L)から受ける抗力をfnとすると、ベクトルFNの成分は、次式(18)で表される。
【0054】
【数15】

【0055】
そうすると、ベクトルFCの成分は、式(13),(17),及び(18)より、次式(19)で表される。
【0056】
【数16】

【0057】
また、式(14)〜(17)より、抗力fnを求めることができ、次式(20)で表される。
【0058】
【数17】

【0059】
式(20)より、fw,km,kd,β,εは定数なので、ωが決まると抗力fnが決まることが分かる。すなわち、蓋体の開閉によって、ωが変化し、それとともに抗力fnも変化することになる。
【0060】
[3]次に、構造体AOBに作用するモーメントについて説明する。
[3−1]点Bに作用する力
カウンターウェイトが構造体AOBの点Bに作用する力は、次式(21)で表される。
【0061】
【数18】

【0062】
したがって、この力が構造体AOBに作用するモーメントは、ベクトルMBとして次式(22)で表される。
【0063】
【数19】

【0064】
X軸方向の単位ベクトルベクトルEx、Y軸方向の単位ベクトルをベクトルEyとすると、ベクトルOBとベクトルFCは、それぞれ次式(23),(24)のように表される。
【0065】
【数20】

【0066】
そうすると、ベクトルMBは、次式(25)のように計算される。
【0067】
【数21】

【0068】
式(25)の最右辺スカラー係数の第1項:(fw・kb・cosθ)は、カウンターウェイトの荷重が点Bに鉛直方向下向きに作用することによって生ずる、点Oについての、力のモーメントの大きさを示している。
また、式(25)の最右辺スカラー係数の第2項の係数:(fn・kb・sinθ)は、カウンターウェイトを直線Lに拘束することによって生ずるモーメント(抗力であるベクトルFNに起因)である。fnは既に、式(20)で得られているので、当該第2項の係数は、次式(26)で表される。
【0069】
【数22】

【0070】
[3−2]点Aに作用する力
蓋体の重量は、構造体AOBの点Aに作用する。蓋体の重量をfaとすると、蓋の重量ベクトルFAは、次式で表される。ここで、faは正値である。
【0071】
【数23】

【0072】
したがって、この力が構造体AOBに作用するモーメントは、ベクトルMAとして次式(28)で表される。
【0073】
【数24】

【0074】
ここで、X軸方向の単位ベクトルベクトルEx、Y軸方向の単位ベクトルをベクトルEyとすると、ベクトルOAとベクトルFAは、それぞれ次式(29),(30)のように表される。
【0075】
【数25】

【0076】
そのため、ベクトルMAは、次式(31)のように計算される。
【0077】
【数26】

【0078】
このように、蓋体の重量によって、点Oについて(fa・ka・cosγ)の大きさのモーメントが、負方向、すなわち、図における時計回りに作用することが分かる。
【0079】
[4]蓋体開閉装置のシミュレーション
次に、構造体AOB(蓋体)を開閉させるときに、構造体AOBに作用するモーメントについて、例を挙げて説明する。
[4−1]CASE1
構造体AOBの点A,点O,点Bが同一直線状にある(α=0)とともに、カウンターウェイトが空間的広がりをもたず、点Bにのみ作用する場合で考える。蓋体開閉装置の各条件を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
構造体AOB(蓋体)を開く際にはγ(=θ)の値が大きくなり、そのときのカウンターウェイトの重量に起因するモーメント、及び構造体AOB(蓋体)の重量に起因するモーメント(−fa・ka・cosγ)の関係を表2に示す。各モーメント値の符号が正(プラス)のときは、蓋体が開く方向にモーメントが作用し、符合が負(マイナス)のときは、蓋体が閉じる方向にモーメントが作用する。また、図3には、γ=0,30,60(度)のときの、構造体AOBにおける、点A,点O,点Bの位置関係を示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2に示すように、CASE1では、構造体AOB(蓋体)を開いた角度γによらず、カウンターウェイト起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントはゼロとなり、蓋体が開こうとする力と閉じようとするモーメントのバランスが保たれていることが分かる。
なお、CASE1では、カウンターウェイトが空間的広がりをもたないため、カウンターウェイトは直線L(カウンターウェイトガイド)に拘束されず、fn起因のモーメントは生じない。
【0084】
[4−2]CASE2
CASE2では、CASE1とは異なり、OAとOBとが所定の角度を成す場合としてα=20(度)とした。その他は、CASE1と同様の条件とした。蓋体開閉装置の各条件を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
また、カウンターウェイト起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントの関係を表4に示す。さらに、図4には、γ=0,30,60(度)のときの、構造体AOBにおける、点A,点O,点Bの位置関係を示す。
【0087】
【表4】

【0088】
表4に示すように、OAとOBとが所定の角度を成す場合は、fw起因のモーメントが、CASE1の場合よりも小さくなる。そして、全モーメントは、γ=0〜60(度)の範囲で負の値を示し、蓋体が閉じようとするモーメント(負方向モーメント)が蓋体に対して作用している。そのため、蓋体には閉じようとするモーメントが加わっており、CASE2では、蓋体を開き難い構造となっていることが分かる。
【0089】
[4−3]CASE3
次に、CASE2に対して、蓋体が開き易くなるようにカウンターウェイトの重量を140Nに増やした場合について示す。その他は、CASE2と同様の条件とした。蓋体開閉装置の各条件を表5に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
また、カウンターウェイト起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントの関係を表6に示す。なお、γ=0,30,60(度)のときの、構造体AOBにおける、点A,点O,点Bの位置関係は図4と同様である。
【0092】
【表6】

【0093】
表6に示すように、全モーメントは、γ=0(度)のとき、12.6N・mとなっており、蓋体が開こうとするモーメント(開方向モーメント)が大きく、γ=60(度)のとき、−10.3N・mとなっており、蓋体が閉じようとするモーメント(閉方向モーメント)が大きいことが分かる。すなわち、蓋体の開動作初期及び後期において蓋体に作用するモーメント変化が大きいため、安定した速度での開閉ができないといえる。蓋体の開動作初期の蓋体が開こうとするモーメントが大きいため、蓋体が勝手に開いたり、蓋体が勝手に開かないようにフックなどで固定していても、フックを外した途端に蓋体が勢いよく開いたりするため、開動作を行い難い。さらに、60(度)まで開くと閉方向モーメントが大きくなり、勢い良く蓋体が閉じようとするので、蓋体を開けたまま作業を行い難い。
【0094】
[4−4]CASE4
次に、CASE1において、カウンターウェイトが空間的広がりを有する剛体である場合で説明する。ここでは、カウンターウェイトを三角形(構造体)BDCとして表現するが、平面に限られないものとする。点Dが直線L(カウンターウェイトガイドによって形成される軌道)上に位置する場合について説明する。蓋体開閉装置の各条件を表7に示す。
【0095】
【表7】

【0096】
また、カウンターウェイト起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントの関係を表8に示す。さらに、図5には、γ=0,30,60(度)のときの、構造体AOB、及び構造体BCDにおける、点A,点O,点B,点C、点Dの位置関係を示す。
【0097】
【表8】

【0098】
表8に示すように、全モーメントは蓋体が開くに従って(γが大きくなるに従って)大きくなることが分かる。この全モーメントの増大は、カウンターウェイトの重量起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントはゼロとなっており、カウンターウェイトの点Dを直線L(カウンターウェイトガイド)上に位置させることで生ずるモーメント(fn起因モーメント)によるものである。
このように、蓋体の開動作初期において、CASE3のように蓋体が開こうとするモーメントが大きくないので、容易かつ安定して開動作を行うことが出来る。ただし、開動作後期において蓋体が開こうとするモーメントがさらに大きくなるため、蓋体の開く速度が速くなりすぎることのないように、制動装置を蓋体開閉装置に取り付けることが好ましい。この制動装置の詳細については後述する。
【0099】
[4−5]CASE5
次に、CASE4において、CASE2のようにOAとOBとが所定の角度を成す場合としてα=20(度)とした。その他は、CASE4と同様の条件とした。蓋体開閉装置の各条件を表9に示す。
【0100】
【表9】

【0101】
また、カウンターウェイト起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントの関係を表10に示す。さらに、図6には、γ=0,30,60(度)のときの、構造体AOB、及び構造体BCDにおける、点A,点O,点B,点C、点Dの位置関係を示す。
【0102】
【表10】

【0103】
表10に示すように、γ=0〜60(度)の範囲で全モーメントの変化がCASE3のように大きくない。カウンターウェイトの重量起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントの合計は、γ=0〜60(度)の範囲で負の値を示しており、蓋体には閉じようとするモーメントが作用している。fn起因モーメントは、γ=0〜60(度)の範囲で正の値を示しており、蓋体には開こうとするモーメントが作用している。つまり、fn起因モーメントが作用することによって、全モーメントの変化が少なくなっているので、安定した速度で蓋体の開閉ができる。特に、蓋体の開動作初期の全モーメントはCASE3のように大きくないので、急激に開いたりすることがなく、ゆっくり開こうとするので、開動作を行い易い。また、開動作後期の全モーメントはCASE4のように大きくないので、開動作後期に蓋体の開く速度が速くなりすぎることが無い。
なお、全モーメントの符号が、45度<γ<60度の範囲で逆転していることから、蓋体の開閉途中でカウンターウェイト起因のモーメントと蓋体重量起因のモーメントとの全モーメントがゼロとなって、バランスがとられる。
以上、CASE5のように、構造体AOB(蓋体)のOAとOBとに所定の角度を設けるとともに、カウンターウェイトを直線L(カウンターウェイトガイド)上に位置するように制御することによって、より容易かつ安定した蓋体の開閉ができる。
【0104】
[4−6]制動装置
上記制動装置としては、好ましくは、滑車とベルトとを有する機構を採用する。具体的には、2つ以上の滑車を同一の構造体としてのカウンターウェイト(三角形BDC)上に固定し、その滑車の間にベルトを通し、当該ベルトを弛緩させた状態で固定端に固定する。そして、滑車がベルト上を転動することで、カウンターウェイトに対して制動力を作用させる。
図1において、固定端を点E,点Fとし、制動装置による制動力の作用点を点Cとする。点E,点Fは、点Cの回動範囲の外側に設定され、図1では、点Cを通る垂線を挟んで左右両側にそれぞれ設けられている。
蓋体が開くに従って(γが大きくなるに従って)、点Cは点Fに近づいて、線分ECと線分FCとの合計長さが増大する。これによって、ベルトは弛緩した状態から緊張した状態に変化し、次第に点Cは点Fに近づき難くなり、最終的には点Cがそれ以上点Fに近づけなくなる。これは、回転角γのそれ以上の増大が阻止されることであり、すなわち、構造材AOB(蓋体)の回転が制御されることになる。
このような制動装置によって、構造体AOB(蓋体)が勢い良く回転しようとしたときに、衝撃を生じさせることなしに構造材AOB(蓋体)の回転を円滑に停止させることができる。
【0105】
[5]本発明を具体化した実施形態
次に、本発明の蓋体開閉装置を具体化した実施形態として、本発明の蓋体開閉装置を適用した構造体を例に挙げて説明する。
図7は、集合住宅等のゴミ集積所に置かれるゴミ箱1の斜視図である。
図8は、ゴミ箱1を箱体20の側面部22側から見た断面図である。蓋体30には、カウンターウェイト40が取り付けられている。
ゴミ箱1は、箱体20と、この箱体20に対して回動可能に取り付けられた蓋体30及びカウンターウェイト40を有する蓋体開閉装置10とを備えており、片開き構造となっている。
箱体20は、正面部21、側面部22、背面部23、上面部24、及び底面部25を有している(図7、及び図8参照)。箱体20は、上面部24から正面部21に向かって下方向に傾斜した形状となっている。そのため、蓋体30も当該傾斜角度に合わせるようにして、傾斜して箱体20に取り付けられている。
【0106】
蓋体30は、箱体20に取り付けられる蓋本体部31と、後述するカウンターウェイト40が取り付けられる取付部32と、を有している。
蓋本体部31は、略長方形の板状部材であり、箱体20の正面部21側で図8に示すように下方向へ屈曲している。蓋体30を閉じた際には、正面部21と蓋体30の当該屈曲させた部分とが、ゴミ箱1の表面側鉛直方向で揃うようになっている。
また、蓋本体部31は、図8の紙面に直交し、支点33aを通る支持軸33によって軸支され、箱体20に対して支持軸33を中心に回動可能に取り付けられている。ゴミ箱1では、支持軸33の両端部が支点33aとなっている。
そして、正面部21側の蓋本体部31には、蓋体30を開閉する際に握る把手34が設けられている。さらに、把手34と正面部21の上端側とには、蓋体30が勝手に開くのを防ぐための一対の固定部材50a,50bが取り付けられている。
取付部32は、板状部材であり、その一端32aは蓋本体部31の上面部24側に固定されている。また、取付部32の他端32bにはカウンターウェイト40が回動可能に取り付けられている。
蓋体30の重心位置は、箱体20の正面部21側とする。そのため、蓋体30の重量によって、蓋体30を閉じる方向のモーメント(閉方向モーメント)が生じる。
【0107】
カウンターウェイト40は、蓋体30に取り付けられる本体アーム部41と、この本体アーム部41の取付端41a(第1連結部)と先端41b(第3連結部)とを結ぶ直線に交差する方向に本体アーム部41から延在する制御アーム部42と、本体アーム部41の先端41b側に取り付けられたウェイト部43と、を有している。カウンターウェイト40は、支持軸33の軸方向端部の少なくともいずれか一方に設けられている。すなわち、カウンターウェイト40は、箱体20内部の側面部22側に位置する。
本体アーム部41は、略長方形の長尺板状部材である。取付端41aは、蓋体30の取付部32の他端32bに回転可能に取り付けられている。先端41b側には、ウェイト部43の他、後述する制動装置60が取り付けられている。
制御アーム部42は、略長方形の短尺板状部材である。制御アーム部42の基端42aは、本体アーム部41の取付端41a側に固定されている。一方、制御アーム42部の先端(第2連結部)42bは、先端42bの水平方向の移動を抑制するための制御部材(カウンターウェイトガイド)44に取り付けられている。
【0108】
ここで、制御アーム部42の先端42bには、車輪42cが回転可能に取り付けられている。また、制御部材44は、略U字状の部材であり、背面部23(箱体20の内側)に固定されている。つまり、先端42bは、制御部材44と背面部23とで挟まれた領域内を車輪42cが転動するように取り付けられている。
ゴミ箱1では、図8に示すように、制御部材44と背面部23とで挟まれた領域は、鉛直方向に延びているため、車輪42cは、この領域を軌道Xとして鉛直方向に移動する。
ウェイト部43の重量や取付位置については、設定する蓋体30の重量との関係やカウンターウェイト40の重心位置に応じて設定される。ゴミ箱1では、カウンターウェイト40の重心位置は、箱体20の正面部21側とする。そのため、カウンターウェイト40の重量は、蓋体30の取付部32における他端32bに作用し、蓋体30を開こうとする方向のモーメント(開方向モーメント)を生じさせる。
【0109】
本体アーム部41の先端(第3連結部)41bには、カウンターウェイト40の移動を制御する制動装置60が連結されている。
図10は、制動装置60を示す概略図である。ゴミ箱1の制動装置60は、図10(A)に示すように、滑車61(61a,61b,61c)と、2つの固定端部62a,62bと、この固定端部62a,62に掛け渡されたベルト63と、を備えている。滑車61は、2枚のプレート64で挟まれて固定されている(図10では、1枚のプレート64を省略)。このプレート64が、本体アーム部41の先端41bに連結されている。
なお、制動装置60は、図10(B)に示すように2つの滑車61a,61bとを備えた構成であっても良い。
【0110】
ここで、滑車61a,61cと、滑車61bとが互いに位置をずらして、プレート64に固定されている。図8に示すように、本体アーム部41の取付端41aから先端41bへ向かって外側に滑車61a,61cが取り付けられ、滑車61a,61cよりもその内側に滑車61bが固定されている。これらの滑車61a,61b,61cの間にベルト63が掛けられて、滑車61a,61b,61cはベルト63に沿って移動する。
2つの固定端部62a,62bは、カウンターウェイト40の先端41bが移動する軌道に応じた位置に取り付けられる。ここで、本体アーム部41の先端41bは、本体アーム部41の取付端41aが蓋体30の取付部32の他端32bに回転可能に取り付けられているので、当該取付端41aを中心にして回転する。そのため、固定端部62a,62bは、滑車61a,61b,61cが当該回転に伴ってベルト63と接触しながら移動するように取り付けられる。ゴミ箱1では、固定端部62aは、箱体20の側面部22の正面部21側に取り付けられ、固定端部62bは、箱体20の底面部25の背面部23側に取り付けられている。
【0111】
ベルト63としては、横断面が台形状のVベルトが好ましい。ベルト63の当該台形の上底、及び下底の内、辺の長さが長い方を滑車61a,61cと接触するようにして、2つの固定端部62a,62bに掛け渡す。このようにすることで、ベルト63と滑車61a,61cとの接触面積が大きくなり、摩擦による制動力を大きくすることが出来る。
ベルト63の長さは、2つの固定端部62a,62bを結ぶ直線の長さよりも長くし、ベルト63が弛緩した状態にしておく。
【0112】
ゴミ箱1の蓋体30を開く動作について説明する。
図8は蓋体30を閉じた状態を示し、図9は蓋体30が開いた状態を示す。
図8に示すように、蓋体30が閉じているときは、本体アーム部41の先端41bは、正面部21側にあり、制御アーム部42の先端42b、及び車輪42cは、軌道Xの上方にある。
【0113】
次に、図9に示すように、蓋体30を開いていくと、取付部32の他端32b、及び本体アーム部41の取付端41aは、図9における右下方向へ動く(支点33aを中心にして円弧状に動く)。このとき、本体アーム部41の先端41bは、本体アーム部41の取付端41aが、蓋体30の取付部32の他端32bに回転可能に取り付けられているので、取付端41aを中心にして図における時計回り方向へ回転する。制御アーム部42の先端42bは、軌道Xが鉛直方向に延びているため、時計回り方向に回転することが出来ない。先端42bは、上下方向に移動できるものの、水平方向(図9における左方向)への移動は制限される。すなわち、蓋体30を開いていくときに、先端42bに取り付けられた車輪42cは、箱体20の背面部23側に付勢されながら、軌道Xに沿って移動する。そのとき、車輪42cが付勢される方向とは反対向きの水平抗力が、背面部23側からカウンターウェイト40に対して作用することになる。この水平抗力は、蓋体30が開こうとするモーメント(開方向モーメント)を生じさせる。
【0114】
また、蓋体30を開いていくと、制動装置60は、滑車61がベルト63上を転動し、固定端部62a側から固定端部62b側へと移動していく。そのとき、滑車61a,61cは、本体アーム部41の取付端41aをカウンターウェイト40の回転中心としてみた場合の外側方向に付勢される。この付勢によってベルト63は、弛緩した状態から徐々に緊張した状態となり、滑車61の転動が停止される。その結果、カウンターウェイト40の回転が制御され、さらに蓋体30の開動作が制御される。
【0115】
本実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)制御部材44と背面部23とで形成された軌道Xで車輪42cを移動させることによってカウンターウェイト40に対して水平方向の抗力を生じさせ、この抗力に起因する蓋体30の開方向モーメントを生じさせることができる。この抗力に起因するモーメントと、蓋体30の閉方向モーメントと、カウンターウェイト40による開方向モーメントとを蓋体30に対して互いに作用させ、その結果、蓋体の開閉を容易に行うことができるとともに、蓋体を安定した速度で開閉することができる。
【0116】
(2)本体アーム部41の先端41bには、制動装置60が設けられているので、蓋体30の開動作を円滑に制御することができるとともに、滑車61とベルト63とによる簡易的な構成で制動力を生じさせることができる。
さらに、ベルト63の代わりにチェーンやワイヤーなどを用いると滑車61の転動時の音が大きく、耐久性も低いが、ベルト63であれば転動時の音が小さく、耐久性にも優れる。
【0117】
(3)カウンターウェイト40は、箱体20内部の側面部22側に位置するので、箱体20内部の空間を広く確保することができるとともに、箱体20内部に収容する物との接触を防ぐこともできる。
【0118】
(4)制御アーム部42の先端42bの位置を制御部材44によって制御することで、蓋体30の動きを制御することが出来る。ゴミ箱1のような片開き構造の場合、蓋体30の取付部32側には機械的機構を設置する空間がほとんど得られないが、蓋体30の重心位置側の空間を活用することが出来る。
【0119】
[実施形態の変形]
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
前記実施形態では、蓋体30へ連結するカウンターウェイト40の位置を取付端41aとしたが、このように端部に限られず、その他の位置で連結して第1連結部としてもよい。
また、前記実施形態では、制動装置60を滑車61とベルト63とを用いた構成としたが、これに限られず、本体アーム部41の先端41bの回動をバネ機構やシリンダー機構で制御してもよい。
【0120】
さらに、制動装置を、回動可能に軸支された構造体の回動を抑制するための制動装置として次のような構成とすることもできる。まず、制動装置は、構造体BDCの軸支された位置から離れた位置に設けられる少なくとも2つ以上の滑車と、この構造体BDCの回動範囲の外側に設定された2つの固定端部と、この2つの固定端部同士を連結するベルトと、を備えている。このベルトの長さは、前記2つの固定端部を結ぶ線分の長さよりも長く、このベルトは、前記少なくとも2つ以上の滑車に捲回されている。そして、この制動装置において、構造体BDCが回動する際の前記少なくとも2つ以上の滑車の移動軌跡と、2つの固定端部を焦点とする楕円軌道とが、少なくとも1以上の点で交差する。
ここで、2つの固定端部同士を結ぶ線分の長さよりも長いベルトに張力を加えた状態で描かれる軌道は、2つの固定端部を焦点とする楕円軌道となる。また、構造体AOBの開動作に伴って構造体BDCが回動する際に、当該滑車は、2つの固定端部を結ぶ線分の長さよりも長いベルトが当該滑車に捲回されているため、当該ベルト上を転動しながら移動する。そして、当該滑車の移動軌跡と当該楕円軌道とが交差するので、当該滑車が移動して当該楕円軌道上に位置するとき、当該ベルトに張力が加わって、当該ベルトは弛緩した状態から緊張した状態に変化し、当該滑車の転動が抑制される。さらに、構造体AOBの開動作に伴って構造体BDCが回動しようとすると、当該ベルトに加わる張力は大きくなり、当該滑車の転動がより強く抑制される。当該滑車の転動が抑制されるため、構造体BDCの回動が抑制され、結果として、構造体AOBの開動作が停止される。この制動装置は、耐久性に優れ、蓋体の急激な開閉動作を十分に制動できる。
なお、この制動装置において、前記少なくとも2つ以上の滑車のうち少なくとも1つ以上には前記ベルトが係合可能な溝が形成されていることが好ましい。このような溝が形成されていると、当該ベルトに張力が加わるときに、溝が形成されていない場合に比べて、当該滑車に対してベルトが強く係合するとともに、滑車とベルトとの接触面積が大きいので摩擦力が大きくなって、制動装置の制動力を強くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の蓋体開閉装置は、ゴミ箱の蓋体、ピアノの鍵盤蓋、床板(スラブ)の開口(ハッチ)に設けられた蓋体等の開閉に用いることができる。
【符号の説明】
【0122】
10…蓋体開閉装置
30…蓋体
32…取付部
32a…一端
33…支持軸
33a…支点
40…カウンターウェイト
41…本体アーム部
41a…取付端(第1連結部)
41b…先端(第3連結部)
42b…先端(第2連結部)
60…制動装置
61(61a,61b,61c)…滑車
62a,62b…固定端部
63…ベルト
X…軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面で見たときに、重心位置以外の位置を支点として回動可能に支持される蓋体と、
前記蓋体の重心位置と前記支点を挟んで反対側で、自重を作用させるカウンターウェイトと、を備え、
前記カウンターウェイトは、剛体から構成され、
前記カウンターウェイトは、当該カウンターウェイトの重心位置以外の第1連結部で、前記蓋体の前記支点から離れた位置に回動可能に連結され、
前記カウンターウェイトの重心位置以外で、前記第1連結部とは別の前記カウンターウェイトの第2連結部は、前記カウンターウェイトに対して水平方向に抗力を生じさせる軌道上に沿って移動するように連結されていることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓋体開閉装置において、
前記蓋体の重心位置と前記支点とを結ぶ線分、及び前記第1連結部と前記支点とを結ぶ線分が成す角度は、鉛直下方側で180度未満であることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓋体開閉装置において、
前記第2連結部の軌道は、鉛直方向に延在していることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の蓋体開閉装置において、
前記断面に直交し、前記支点を通る支持軸を有し、
前記カウンターウェイトは、前記支持軸の軸方向端部の少なくともいずれか一方に設けられていることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の蓋体開閉装置において、
前記第1連結部、及び前記第2連結部とは別の前記カウンターウェイトの第3連結部は、前記蓋体の回動角度に応じて前記カウンターウェイトの回動を制御する制動装置に連結されていることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蓋体開閉装置において、
前記制動装置は、少なくとも2つ以上の滑車と、前記第3連結部の回動範囲の外側に設定された2つの固定端部に掛け渡されるベルトと、を備え、
前記制動装置は、前記蓋体及び前記カウンターウェイトが回動するときに前記少なくとも2つ以上の滑車を前記ベルト上で転動させることを特徴とする蓋体開閉装置。
【請求項7】
請求項6に記載の蓋体開閉装置において、
前記ベルトの長さは、前記2つの固定端部を結ぶ線分の長さよりも長いことを特徴とする蓋体開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−144552(P2011−144552A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5881(P2010−5881)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(509084389)株式会社井上工業 (1)
【Fターム(参考)】