説明

蓋材

【課題】生産適性が良好で、湯上での排出部剥離適性と排出孔領域の接着強度を両立し、排出部外周および排出孔形状の自由度も広い、長期保存下でもその剥離性は劣化せず、優れた実用上の効果を発揮する湯切機能付き容器蓋材を提供する。
【解決手段】上シートは下シートとの間の界面剥離により下シートから全面で剥離可能に構成されており、一方のシートの界面はプラスチック材による界面であり、他方のシートの界面はポリオレフィン系の接着性樹脂による界面であり、プラスチック材は二軸延伸フィルムであり接着性樹脂との界面に積層された剥離強度を高めるためのコーティング層が、ニトロセルロース樹脂を含有し成分比が10%から70%である蓋材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を密封する容器の蓋材に関し、特に、使用時に内部に入れた水や湯などの液体を外部に排出させるための排出孔を露出させる必要がある蓋材に関するもので、詳しくは排出孔を露出させるときに行なう剥離適性を付与する為の技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、普段は物品を密封して保管するとともに、使用時に内部に入れた水や湯などの液体を排出孔から外部に排出させる構造の容器として、即席食品の容器が知られている。このような容器を必要とする即席食品は、例えば焼きそば、スパゲティである。これらの即席食品の喫食に際しては、注湯を行い、所定時間(即席食品を可食状態にするための時間)経過した後、速やかに容器内から排湯する必要がある。
【0003】
この即席食品の容器の一例として、特許文献1に記載されたものが知られている。この容器の本体は、発泡ポリスチレン樹脂(PS)成形容器、ポリプロピレン樹脂(PP)成形容器、あるいは、ポリスチレン樹脂(PS)シートとポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートとをラミネートした積層材料により成形されている。この容器本体に、麺、具、ソースなどが収納される。この容器本体にプラスチック成形の蓋を嵌合させて封止し、その全体がシュリンクフィルムでシュリンク包装される。この包装形態で保管される。
【0004】
上述した蓋は、表面シートと呼ばれる上シートと、その下層をなす下シートとから成る。この下シートは、特許文献1では複合層からなる複合シートと呼ばれており、容器本体の開口部の縁に剥離可能に密着させる。上シートと下シートの間の一部の円弧状領域に易剥離剤を塗布して易剥離層が形成されている。このため、蓋材は、その平面視において、易剥離層が形成された部分が易剥離領域と、それ以外の接着(非剥離)領域とに分けられる。
【0005】
上シートには、易剥離層の円弧状領域の直線部分に沿って直線状にミシン目が形成されている。下シートの易剥離領域には切り込みによる複数の湯切り孔12がその表裏を貫通するように設けられている。また、上シートの円弧状領域の端の方の一部には、外側に突き出るように湯切り用プルタブが延設されている。一方、接着領域の一部には、容器本体から蓋材を剥がすために用いる開封用プルタブが外側に突き出るように延設されている。
【0006】
このため、喫食時に、ユーザは、開封用プルタブを持ち上げて蓋を一部開放し、湯を容器本体に注入する。その後、その開封用プルタブを閉じて容器本体の縁に折り曲げるように係止し、湯の加熱による調理時間の間、待つ。その後、湯切り用プルタブを下シートから剥がすように引き上げつつ、下シートの易剥離領域を開放させ、引き上げた上シートの円弧状領域の部分をミシン目から切り取る。これにより、下シートの易剥離領域に複数の湯切り孔12が出現する。そこで、容器を傾けて湯切り孔12から加熱調理後の湯を排出する。湯切りが終わると、開封用プルタブを再び引き上げて、蓋を容器本体から分離させることで、喫食が可能になる。
【0007】
しかしながら、この容器の蓋の場合、剥離界面に部分的に易剥離層を設けなければならず、印刷加工の煩雑さ、後加工と剥離箇所との位置精度が製品品質に大きく影響する。
【0008】
そこで、この問題を改善するため、特許文献2に記載の蓋材が提案されている。この蓋材は、一縁部に片寄った領域に湯切り孔が形成された基材と、この基材上を覆う表面材とが
積層されていると共に、基材の湯切り孔上を覆う表面材の一縁部と表面材のその他の部分との間に切り離しラインが形成されており、この切り離しラインより湯切り孔側の表面材の縁部が外方に延出して剥離用タブを形成している即席食品用湯切り蓋材において、共押し出し積層された層間剥離可能な第1層と第2層とからなる易剥離性積層フィルムを介して基材と表面材が積層されており、基材と易剥離性積層フィルムを貫通して湯切り孔が形成されていることを特徴としており、本基材と表面材との接着強度が製品全域に渡り、剥離可能な強度で積層されていることから、積層後のハーフカット加工により配置される湯切り部の位置精度が問われず、表面材と基材を剥離することが可能である。
【0009】
しかしながら、湯上で湯切り部の表面材を部分的に剥離する際、湯の加温により易剥離性積層フィルムの樹脂が軟化した結果、剥離強度が低下し、湯切り孔が囲う基材層が表面材から落下する剥離エラーが生じる。これに対し、表面層および基材層の腰強度、湯切り孔形状に制約を設け、剥離適性を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−203653号公報
【特許文献2】特開2004−59028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点を解決しようとするもので、その目的とするところは、印刷およびハーフカット、抜きにおける加工適性を改善すると共に、ユーザが湯切り用プルタブを操作するときに要求される操作適性を改善し、湯切り用プルタブを引き剥がすときに下シートの破れや湯切り孔内の下シート材の離脱が無く、剥離領域に確実に湯切り孔(液体排出孔)を出現させることができる、湯切り操作を容易化させる容器の蓋材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の発明は請求項1に記載の通り、容器本体の開口部の縁に沿って形成されたフランジに剥離可能に密着して被せる蓋材であって、
前記フランジの外形と略同等の大きさを有し、前記開口部及び前記フランジを一体に覆うシート状の蓋本体と、前記フランジの外側に位置するように前記蓋本体に一体に延設され且つ当該蓋本体を前記開口部から分離するときに使用する第1のプルタブと、前記蓋本体に一体に延設され且つ当該容器本体から液体を排出させる排出孔を当該蓋本体に出現させるときに使用する第2のプルタブとを備え、前記蓋本体、前記第1のプルタブ、及び前記第2のプルタブは、少なくとも、下面を前記フランジに剥離可能に密着させる下シートと、この下シートの上面に積層され且つ上面を当該蓋本体の表面とする上シートとを備えた積層体で構成され、前記第2のプルタブの根本部分を横断する両側のそれぞれに位置する前記下シートの外縁の2点を結ぶように前記下シートの下面から当該下シートを貫通する第1のハーフカットが形成され、この第1のハーフカットを開始線として前記蓋本体の面上の内方に向かって延びる部分的な領域に、前記下シートの下面から当該下シートを貫通するように、前記容器本体内の液体の複数の排出孔にそれぞれ対応した所望形状を有し且つ当該領域内で所望の配列を有する複数の排出孔用ハーフカットが形成され、前記蓋本体の面上にて前記第2のプルタブから前記下シートの外縁上の前記2点よりもそれぞれ遠い前記上シートの外縁上の2つの位置、又は、前記蓋本体の面上にて前記下シートの外縁上の前記2点と一致する前記上シートの外縁上の2つの位置を2つの起点とし、この2つの起点からそれぞれ前記蓋本体の面上の内方に向かって延びて相互に合流し又は一部、切残しを設けた状態で略合流して前記部分的な領域を当該蓋本体に画成するように前記上シートの上面から当該上シートを貫通する第2のハーフカットが形成され、前記第2のプルタブに引き剥がし動作により、前記排出孔用ハーフカットが付された前記下シートの部分を前記上シートの前記部分的な領域の部分に付着させた状態で、当該上シートの当該部分的な領域の部分を前記下シートから剥離可能に構成したことを特徴とする蓋材において、前記上シートは前記下シートとの間の界面剥離により当該下シートから全面で剥離可能に構成されており、前記上シートと前記下シートとの間の両界面のうち、一方のシートの界面はプラスチック材による界面であり、他方のシートの界面はポリオレフィン系の接着性樹脂による界面であり、前記プラスチック材は二軸延伸フィルムであり、前記二軸延伸フィルムの前記接着性樹脂との界面に、剥離強度を高めるためのコーティング層が全面に積層されており、そのコーティング層を成すワニスが、少なくともニトロセルロース樹脂をバインダーとして含有し、その成分比が重量換算で10%以上、70%未満であることを特徴とする蓋材である。
【0013】
第2の発明は、前記ワニスのバインダー成分として、ポリアミド樹脂を含有し、その成分比が重量換算で70%以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋材である。
【0014】
第3の発明は、前記ワニスのバインダー成分として、ウレタン樹脂を含有し、その成分比が重量換算で30%以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋材である。
【0015】
第4の発明は、前記ワニスには剥離剤として、シリコン系ワックス、ポリエステル系ワックス、脂肪酸アマイド系ワックスから選ばれる一種以上のワックスが含有されており、その軟化点が95℃以上、125℃未満であり、ワニス固形分全量に対して10重量%以下の添加量で添加されていることを特徴とする請求項1記載の蓋材である。
【0016】
第5の発明は、前記ワニスは芳香族系溶剤及び非芳香族系溶剤を含有するグラビア印刷インキを塗布してなり、その塗布量としては0.5〜3.0g/mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋材である。
【0017】
第6の発明は、前記下シートにアルミニウム箔が含まれており、そのアルミニウム箔の厚さが5μm以上且つ15μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓋材である。
【0018】
第1の発明では、ワニス中のバインダー成分について、ニトロセルロース樹脂の重量比率を限定している。ニトロセルロース樹脂の皮膜は、耐熱性があり、加温時にも軟化せずに安定した凝集力を確保することが出来る。ニトロセルロース樹脂の含有量が10%未満であれば剥離性が良すぎ、接着不良を来たす。また耐熱性が不足し、湯上の剥離強度が確保出来ない。含有量が70%以上であれば剥離強度が過剰となり、常態での剥離適性が得られないことから、この重量比率の範囲で限定することにより、剥離適性と湯上での強度確保を両立することが出来る。
【0019】
第2の発明では、ワニス中のバインダー成分を、ポリアミド樹脂とニトロセルロース樹脂とし、その成分比率を限定している。ポリアミド樹脂はニトロセルロース樹脂との相溶性も良く、また皮膜が脆く凝集破壊力を調整することが出来る一方で、加温時に軟化する特性があることから、ニトロセルロース樹脂との成分比を限定することにより、剥離強度と温度依存性を調整し、湯上での剥離適性を発揮することが出来る。
【0020】
第3の発明では、ワニス中のバインダー成分を、ポリアミド樹脂ではなく、ウレタン樹脂とニトロセルロース樹脂の組み合わせとし、その成分比率を限定している。ウレタン樹脂はニトロセルロース樹脂との相溶性も良く、加温時に軟化する特性を利用して、ニトロセルロース樹脂との成分比を限定することにより、剥離強度と温度依存性を調整し、湯上での剥離適性を発揮することが出来る。
【0021】
第4の発明では、ワニス中に添加するワックス成分の軟化点および添加量を限定している。ワックス成分は特に湯上で加温された際に軟化し、剥離適性を改善する目的で添加するものであるが、ワックスの軟化点が95℃以下であると加温時の接着強度が極端に低下、125℃以上であると、湯上での加温ではコーティング層の軟化が不足し、剥離適性を改善するに至らない。また、ワックスの添加量については、10重量%以上であると、バインダー成分との混合適性、塗液の安定性が低減すると共に、湯上での剥離強度が極端に悪化してしまうことから、上記範囲に限定することにより、湯上での剥離適性を確保するものである。
【0022】
第5の発明では、ワニスの塗布量を限定している。本発明の蓋材は、ワニスにより積層されるコーティング層の凝集破壊により、剥離適性が付与される機構であるが、塗布量が0.5g/m以下の場合、安定したコーティング層が得られず、剥離モードがコーティング層の凝集破壊と、コーティング層に隣接する層との界面剥離が混在し、全領域で均質な剥離強度・剥離感が得られない。また、3.0g/m以上の場合、コーティング層に含まれるワックス成分の絶対量が増える為、湯上での剥離強度が低減する。また、過剰なコーティング層を積層することは、コスト面にも悪影響がある。よって、塗布量をこの範囲で限定するものである。
【0023】
第6の発明では、下シートにアルミニウム箔が含まれる場合、そのアルミニウム箔の厚さを限定している。アルミ層が5μm未満の場合、アルミニウム箔を積層する目的とするデッドフォールド性が得られず、カール抑制効果も不足する。またアルミ層が15μm以上である場合、下材の腰強度が過剰に高まる結果、湯切り領域の上シートを剥離する際、湯切り孔に囲まれた下シートが上シートの湾曲に追随せずに落下する事故も発生し、また、製品側面で手を切るなどの扱い難さも発生する。そして、過剰な資材厚みを採用することにより、経済的にも劣るという問題もある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の蓋材が提供する積層構成の採用により、生産適性良好、また、湯上での湯切り部剥離適性と湯切り孔領域の接着強度を両立し、湯切り部外周および湯切り孔形状の自由度も広い、湯切機能付き容器蓋材を得ることができ、長期保存下でもその剥離性は劣化せず、優れた実用上の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の蓋材の例を正面から見た時の概観図である。
【図2】本発明の蓋材を用いた容器全体の断面略図である。
【図3】本発明の蓋材の一部を拡大した断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る蓋材の実施形態について図1から図3を援用して説明する。
図3に断面をしめしたように、本発明の蓋材(41)は、下シート(52)とこれを被覆する上シート(51)が、全領域にわたりほぼ均一な接着力で剥離可能に積層されている。この下シート(52)と上シート(51)との間には、界面剥離による剥離層としてコーティング層(55)が形成される。つまり、この界面剥離による剥離層であるコーティング層(55)を以って上シート(51)及び下シート(52)が相互に積層されている。蓋材(41)は、下シート(52)とこれを被覆する上シート(51)が、全領域にわたりほぼ均一な接着力で、接着界面となるコーティング層(55)において剥離可能に積層されて積層体を形成している。上シート(51)と下シート(52)の材質、構成については、特に制限はないが、蓋材全体として要求される諸性能や上シートを剥離する際の操作性、さらには経済性等を満足するために、最も好ましい構成が決定される。
【0027】
また、図1に示した排出用プルタブ(45)の近傍には、排出孔(47)を形成するための、下シート(52)を垂直方向に貫通する排出孔用ハーフカット(47a)が複数個配置されており、排出用プルタブ(45)と排出孔(47)を含む剥離領域Aと、開封用プルタブ(43)を含む非剥離領域Bとを区分する位置に上シート(51)を垂直方向に貫通する第二のハーフカットである部分剥離用ハーフカット(46a)が配置されている。排出用プルタブ(45)を引っ張って、剥離領域Aの上シート(51)を剥離することにより、排出孔用ハーフカット(47a)の内側部分の下シート(52)を上シート(51)に随伴させて除去することで排出孔(47)を露出させることができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る蓋材(41)を使用した容器の使用方法について図1、図2を参考に説明する。
容器(40)に内容物を収納し、容器のフランジ(42)に蓋材(41)を熱シールする。喫食時には、まず開封用プルタブ(43)を少し開封し、所定量の湯を注ぐ。開封用プルタブ(43)は、フランジに引っ掛けて再封止するのが好ましい。規定時間経過後、排出用プルタブ(45)を引き上げて上シート(51)のみを除去する。この時、排出用プルタブ(45)の付け根部分に、下シートのみを貫通する第一のハーフカットであるプルタブ用ハーフカット(45a)を設けておくと、円滑に上シートのみを剥離することができる。この操作によって排出孔(47)が露出するので、容器を傾けて排出孔から湯を排出する。
上シート(51)と下シート(52)の接着界面であるコーティング層(55)において、一方の側は二軸延伸フィルム(26)であり、他の側はポリオレフィン系の接着性樹脂(25)である構成とする。これにより、適度な剥離性を安定して発揮させる事が容易に可能となる。この場合、どちらが上シート側に来るか、下シート側に来るかは、目的とする層構成に応じてどちらの場合もあり得る。
【0029】
本発明では、上述の二軸延伸フィルムの、前記接着性樹脂との接着界面側一面に剥離強度を高めるためのコーティング層を積層することにより、剥離性をさらに最適に設定することを可能としている。
【0030】
蓋材の最も一般的な層構成としては、上シートとして上から順に紙/ポリオレフィン系接着性樹脂、下シートとして上から順にコーティング層/二軸延伸フィルム/接着剤/ガスバリア層/接着性樹脂層/シーラント層という構成が挙げられる。
【0031】
紙(22)としては、坪量79.4g/m 〜127.9g/m程度の片面アート紙や片面コート紙、上質紙等が使用される。また紙の表面には通常、最終商品として必要な印刷や、保護ニス等が施される。
【0032】
ポリオレフィン系の接着性樹脂(25)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。
二軸延伸フィルム(26)としては、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム、二軸延伸PPフィルム(OPP)、二軸延伸ナイロンフィルム等が用いられる。
【0033】
ガスバリア層(23)としては、アルミニウム箔等の金属箔、あるいは、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレートフィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等に酸化アルミニウムや酸化珪素等の無
機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層を用いることができる。
【0034】
ガスバリア層(23)として、厚さ5μm以上且つ15μm以下のアルミニウム箔を下シートに用いる場合、これにより、ガスバリア性に加えて遮光性も十分に確保される。特に軟質のアルミニウム箔を用いた場合には、排出孔部分の上シートを剥離する際、排出孔ハーフカット内部の下シートに上シートから分離される方向に発生する弾性反発力を低減し、且つ注湯口を開口する際に必要な開口保持性を付与する他、一旦開封して湯を注いだ後に、開封部分を再封止する時のデッドフォールド性が良好となる。アルミニウム箔の厚さとしては、5μm未満では取り扱いが困難であり、またデッドフォールド性が劣る。15μmを超える厚さであると、腰がありすぎて好ましくない上、経済的にも劣る。
【0035】
シーラント層(27)としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
シーラント層(27)としては、上記材料の単層でもよいが、高価なイージーピールシーラントを用いる場合などには、シーラント層を薄くするために接着性樹脂との共押出しとしてもよい。
【0036】
また、コーティング層(55)を形成するワニスの限定内容については既に上述の項にて説明しているが、本発明で使用する樹脂材料について、先ず、ニトロセルロース樹脂は、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものであり、平均重合度が50〜150の範囲のものが好適に使用される。平均重合度が50未満の場合、形成する易剥離領域Aは表面タック切れが悪く剥離しないといった不具合を招き、逆に150を越えた場合は、溶剤への溶解性、他樹脂との相溶性の低下を招くので好ましくない。
【0037】
また、ポリアミド樹脂は、多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得られるような従来からの既知の方法で製造出来る熱可塑性ポリアミドであり、製造方法は特に制限されるものではない。また、ポリアミド樹脂の軟化点は、80〜150℃の範囲であることが好ましい。軟化点が80℃未満の場合、形成する易剥離領域Aは表面タック切れが悪く剥離しないといった不具合を招き、逆に150℃を越えた場合は、易剥離領域Aの皮膜が硬くなり、凝集破壊といった外観不良を起こすので好ましくない。
コーティング層を積層する方法は、二軸延伸フィルムの片面に、上述のワニスをグラビア印刷加工により積層し、他基材を積層する方法が望ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて、本発明に係る蓋材の実施形態についてさらに具体的に説明する。
<実施例1>
まず、コーティング層を形成するワニスの処方について説明する。
【0039】
<ニトロセルロースワニスの調整>平均重合度が50であるニトロセルロース(旭化成(
株)製)30部を、酢酸エチル30部とイソプロピルアルコール40部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ニトロセルロースワニス1を得た。
【0040】
<ポリアミドワニスの調整>軟化点が105℃〜111℃であるポリアミド樹脂(レオマイドS−2110PL 花王(株)製)30部をトルエン50部、イソプロピルアルコール20部に混合溶解させて、固形分30%の試験用ポリアミドワニス2を得た。
【0041】
<ポリウレタンワニスの調整>撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる数平均分子量2000のポリエステルジオール315.34部とイソホロンジイソシアネート63.08部および酢酸エチル60.0部を仕込み、窒素気流下に90℃で6時間反応させた。次いでイソホロンジアミン20.83部、アセトアミド0.75部、酢酸エチル440.0部、イソプロピルアルコール 210.0部を添加し、固形分40%の試験用ポリウレタン樹脂ワニス3を得た。
上述の処方で得られた試験用ニトロセルロースワニス1、試験用ポリアミドワニス2、試験用ポリウレタン樹脂ワニス3およびポリエチレンワックス(軟化点104℃)を、表1(A)に示す調合条件で混合してしてワニスA〜Eを得た。
【0042】
次に、積層体の加工方法を説明する。PETフィルム(東洋紡績社製:E5200(厚さ12μm、両面コロナ処理))の片面に、ワニスAをグラビア印刷加工により0.6g/m塗布した後、非コーティング面とアルミニウム箔(住友アルミニウム社製:軟質アルミニウム箔(厚さ9μm))をドライラミネート接着剤にて貼り合わせた。次に、この得られた積層体のPETコーティング面と紙(王子製紙社製:片面アート紙(グラビアアート坪量84.9g/m))とをLDPE(住友化学社製:L2340E(厚さ20μm))の押出ラミネートによって積層して積層体を得た。押出時のダイ下温度は320℃とした。その後、積層体のアルミニウム箔面にシーラント層として接着性樹脂(三井デュポン社製:EMAA N1108C(厚さ10μm))とイージーピールシーラント層(三井デュポン社製:VN503(厚さ10μm))とを共押出ラミネート法によって積層し、上シート/下シート積層体を得た。
【0043】
この得られた積層体のシーラント面の側から図3に示した形状の排出孔用ハーフカットとプルタブ用ハーフカットを形成した。シーラント層側からは、剥離開始線と排出孔用ハーフカットを、中間層のLDPE層に到達する深さの切込み線として形成した。一方、紙面側からは、部分剥離用ハーフカットをPETフィルムに到達する深さの切込み線として形成した。なお、排出孔の幅は6mmで、長さは6mmとした。
【0044】
<実施例2>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスBを用い、塗布量0.8g/mのコーティング層を設けた以外は実施例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0045】
<実施例3>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスCを用い、塗布量1.5g/mのコーティング層を設けた以外は実施例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0046】
<実施例4>
PETフィルムの片面に、ワニスAを用い、コーティング層の塗布量を2.5g/mとした以外は実施例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0047】
<比較例1>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスDを用い、コーティング層を設けた以
外は実施例1と同様にして、蓋材を作成した。
【0048】
<比較例2>
PETフィルムの片面に、ワニスAに代えてワニスEを用い、コーティング層を設けた以外は実施例1と同様にして、蓋材を作成した。
以上の実施例および比較例に関わる蓋材の製造条件をまとめて表1(B)に示す。
【0049】
以上の各条件の下で製造された蓋材を発泡ポリスチレン樹脂製のカップのフランジにヒートシールして容器として完成させた。この後、排出用プルタブを持ち上げ、排出領域の上シートを剥離除去して常態剥離評価を行った。また、容器の開口部の一部から熱湯を標線まで注ぎ、開口部を再封止して3分間保持した後に排出領域の上シートを剥離除去する湯上剥離評価を行った。このときの剥離適性について結果を表1(C)に示す。
【表1】

【0050】
剥離性の評価結果の基準について:評価結果の○×は以下に示した剥離性能の総合評価であり、剥離がうまくいかず排出孔の脱落があった場合に○、なかった場合に×の2つの表示で評価結果を示した。
紙切れ:剥離を行ったときに紙切れが生じなかった場合及び紙切れを生じた場合の2つの区分で評価した。
孔残り:排出孔を成す下シートの部分が剥離に伴って上シートに付随して排出孔が開く場合及び付随せずに残る(排出孔がきっちりと開かない)場合という2つの区分で評価した。
孔落ち:排出孔を成す下シートの部分が剥離に伴って上シートから落下した場合及び落下せずに付随した(排出孔がきっちりと開いた)場合の2つの区分で評価した。
【0051】
表1の結果から、上述の実施例に示す構成を有する蓋材は、剥離領域の剥離性が良好であり、孔落ち、孔残りもなく、安定した性能を発揮することが分かる。
したがって、本実施形態の排出孔の構成を採用すれば、前述した実施形態及びその変形形態で得られた利点に加え、従来知られた特許文献1、特許文献2に記載された構成のものとは異なり、本発明に独自の優れた作用効果を発揮することができる。これを以下に述べる。
【0052】
すなわち、全面剥離可能な積層構成を採用することにより、加工時の見当精度を軽減しているものであり、これにより製品品質を大幅に改善できるものである。
【0053】
また、本実施形態では、上シートと下シートが剥離可能に積層された接着界面において、一方の側が二軸延伸フィルムであり、他の側がポリオレフィン系の接着性樹脂である。このため、適度な剥離性を安定して発揮させることが容易になる。これは、被着容器との熱接着を行う際、剥離界面が接着性樹脂同士の界面であると、熱による接着強度への影響が大きいが、二軸延伸フィルムと接着性樹脂の界面においては二軸延伸フィルム層の熱安定性により接着強度が保たれ、安定した剥離適性を発揮できる。
【0054】
さらに、接着界面に剥離強度を高めるためのコーティング層を含む場合、湯上シートを部分的に剥離するときの剥離の重さを最適に且つ容易に設計することができる。また、コーティング層を形成するワニスが、ニトロセルロース樹脂とをバインダーとして含有し、その成分比が重量換算で10%〜70%であることにより、接着適性と、注湯後の剥離適性において、加温時および剥離界面に蒸気が介在したときの剥離強度の低減を回避することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、下シートにアルミニウム箔を含むので、以下のような様々な
利点もある。つまり、蓋材のガスバリア性及び遮光性が向上し、内容物の保存性が高まる。また、剥離領域の上シートを部分的に剥離するときに、排出孔用ハーフカットの内部の下シートに上シートから分離される方向に発生する弾性反発力を低減できる。また、注湯口を開口する際に必要な開口保持性を付与できる。さらに、一旦開封して湯を注いだ後に、開封部分を再封止するときのデッドホールド性も良好である。
【0056】
以上のように本実施形態によれば、全面剥離可能な積層構成の蓋材において、排出孔用ハーフカットが規定する排出孔の形状によらず、上シートの剥離時に、そのハーフカットの内側の下シート部分を確実に上シートに随伴させ、安定した剥離強度で剥離除去して排出孔を出現させることができる。この結果、排出孔の形状として、剥離しやすい丸型、横長トラック型以外の形状を採用することが可能であり、それにより、排湯速度の改善、デザイン面における自由度の向上などの利点が得られる。
【0057】
従って本発明により、生産上適度な剥離強度及び良好な剥離外観を有する、湯切付即席食品容器蓋材を得ることが出来、長期保存下でもその剥離性は劣化せず、湯切付即席食品容器蓋材として、優れた実用上の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0058】
26…二軸延伸フィルム
23…アルミニウム箔
27…シーラント層
40…容器
41…蓋材
42…フランジ
43…第一のプルタブ(開封用プルタブ)
45…第二のプルタブ(排出用プルタブ)
45a…第一のハーフカット(プルタブ用ハーフカット)
46a…第二のハーフカット(部分剥離用ハーフカット)
47…排出孔
47a…排出孔用ハーフカット
51…上シート
52…下シート
55…コーティング層
A…排出孔を含む部分的な領域(剥離領域)
B…開封用プルタブを含む部分的な領域(非剥離領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部の縁に沿って形成されたフランジに剥離可能に密着して被せる蓋材であって、前記フランジの外形と略同等の大きさを有し、前記開口部及び前記フランジを一体に覆うシート状の蓋本体と、前記フランジの外側に位置するように前記蓋本体に一体に延設され且つ当該蓋本体を前記開口部から分離するときに使用する第1のプルタブと、前記蓋本体に一体に延設され且つ当該容器本体から液体を排出させる排出孔を当該蓋本体に出現させるときに使用する第2のプルタブとを備え、前記蓋本体、前記第1のプルタブ、及び前記第2のプルタブは、少なくとも、下面を前記フランジに剥離可能に密着させる下シートと、この下シートの上面に積層され且つ上面を当該蓋本体の表面とする上シートとを備えた積層体で構成され、前記第2のプルタブの根本部分を横断する両側のそれぞれに位置する前記下シートの外縁の2点を結ぶように前記下シートの下面から当該下シートを貫通する第1のハーフカットが形成され、この第1のハーフカットを開始線として前記蓋本体の面上の内方に向かって延びる部分的な領域に、前記下シートの下面から当該下シートを貫通するように、前記容器本体内の液体の複数の排出孔にそれぞれ対応した所望形状を有し且つ当該領域内で所望の配列を有する複数の排出孔用ハーフカットが形成され、前記蓋本体の面上にて前記第2のプルタブから前記下シートの外縁上の前記2点よりもそれぞれ遠い前記上シートの外縁上の2つの位置、又は、前記蓋本体の面上にて前記下シートの外縁上の前記2点と一致する前記上シートの外縁上の2つの位置を2つの起点とし、この2つの起点からそれぞれ前記蓋本体の面上の内方に向かって延びて相互に合流し又は一部、切残しを設けた状態で略合流して前記部分的な領域を当該蓋本体に画成するように前記上シートの上面から当該上シートを貫通する第2のハーフカットが形成され、前記第2のプルタブに引き剥がし動作により、前記排出孔用ハーフカットが付された前記下シートの部分を前記上シートの前記部分的な領域の部分に付着させた状態で、当該上シートの当該部分的な領域の部分を前記下シートから剥離可能に構成したことを特徴とする蓋材において、
前記上シートは前記下シートとの間の界面剥離により当該下シートから全面で剥離可能に構成されており、前記上シートと前記下シートとの間の両界面のうち、一方のシートの界面はプラスチック材による界面であり、他方のシートの界面はポリオレフィン系の接着性樹脂による界面であり、前記プラスチック材は二軸延伸フィルムであり、前記二軸延伸フィルムの前記接着性樹脂との界面に、剥離強度を高めるためのコーティング層が全面に積層されており、そのコーティング層を成すワニスが、少なくともニトロセルロース樹脂をバインダーとして含有し、その成分比が重量換算で10%以上、70%未満であることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記ワニスのバインダー成分として、ポリアミド樹脂を含有し、その成分比が重量換算で70%以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋材。
【請求項3】
前記ワニスのバインダー成分として、ウレタン樹脂を含有し、その成分比が重量換算で30%以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋材。
【請求項4】
前記ワニスには剥離剤として、シリコン系ワックス、ポリエステル系ワックス、脂肪酸アマイド系ワックスから選ばれる一種以上のワックスが含有されており、その軟化点が95℃以上、125℃未満であり、ワニス固形分全量に対して10重量%以下の添加量で添加されていることを特徴とする請求項1記載の蓋材。
【請求項5】
前記ワニスは芳香族系溶剤及び非芳香族系溶剤を含有するグラビア印刷インキを塗布してなり、その塗布量としては0.5〜3.0g/mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋材。
【請求項6】
前記下シートにアルミニウム箔が含まれており、そのアルミニウム箔の厚さが5μm以上且つ15μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓋材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1428(P2013−1428A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135198(P2011−135198)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】