説明

蓋部材を熱封着するための冶具および方法

桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器に蓋部材を封着するための熱封着冶具は、フランジの下面に接するのに適合した第1プレートと、フランジの上側の封止面に対し蓋部材を押し付けるのに適合した第2プレートとを備え、この第2プレートは、フランジの封止面とほぼ同じ曲率に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に蓋部材を熱封着して封止されたパッケージを形成するための熱封着冶具に関し、特にブリスターパックとして知られている、コンタクトレンズのための使い捨てパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトヒドロゲル・コンタクトレンズは、1970年に紹介されて以来人気が増して来ている。このようなコンタクトレンズは、一般的に貯蔵液中に水和状態でパッケージされている。多くのコンタクトレンズは、一般に剛体のポリマーから形成された使い捨てブリスターパック内に水性貯蔵液を用いてパッケージされている。ブリスターパックの実例は特許文献1〜6中に見ることができる。ブリスターパックの基体は、一般に剛体のポリマーから形成された、独自のコンタクトレンズ成形型の一部、または別個に成形された基体であることが可能である。上述のパッケージの形式においては、コンタクトレンズおよび水性貯蔵液を容れた基体は、可撓性を有する蓋部材によって封止されている。この蓋部材は一般に、ユーザーが引き開けて、基体内に容れられたコンタクトレンズを取り出すことができるラミネート箔である。一般に、この蓋部材は、コンタクトレンズを容れた基体の周縁部分に封着されている。この基体の封止領域は、一般に平坦な表面領域であり、あるいは、例えば特許文献5に見られるように、隆起した平坦な環状面である。
【0003】
しかしながら、この封止領域は、持ち上がっているかいないかに拘わらず、封止工程中に問題を惹き起こす可能性があることが判明している。例えばもしブリスターパックを形成するのに成形工程が用いられたとすると、材料が多少は収縮して、封止面が平坦面でなく、多少は凹凸面となる。肉眼では封止面が平坦に見えても、この湾曲は、蓋部材とブリスターパックの封止面との間の封止の質が劣化するのには十分であろう。
【0004】
プラスチック容器のフランジに蓋部材を封着するための封着冶具は、一般に、フランジの直下において容器を支持する下側の面と、パッケージのフランジの封止面に対し蓋部材を押し付ける上側の面とを有する。一般に、上記上側の面は、蓋部材の熱可塑性の基層を溶かすことによって上記フランジの封止面を封止するために加熱される。従来の封着冶具は一般に、蓋部材とパッケージのフランジの下面とを接触させる平坦面を備えている。
【0005】
封止の信頼性を改善するための一つの方法は、冶具によって加えられる封止圧力または温度を高めることである。しかしながら、この方法は、形成された封止および溶着の強度を増大させることになり、需要者がパッケージを開けるときに、蓋部材をパッケージの残りの部分から取り去るのが困難になる。これは望ましくなく、パッケージの収容物をこぼすことにもなり得る。
【特許文献1】米国特許第4,691,820号明細書
【特許文献2】米国特許第5,524,419号明細書
【特許文献3】米国特許第5,578,331号明細書
【特許文献4】米国特許第5,649,410号明細書
【特許文献5】米国特許第5,722,536号明細書
【特許文献6】米国特許第6,082,533号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、開封の容易性を保ちながら優れた封止の信頼性を提供する、ブリスターパックに蓋部材を封着するための熱封着冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器に蓋部材を封着するための熱封着冶具を提供するものであり、この冶具は、上記フランジの下面に接するのに適合した第1プレートと、上記フランジの上側の封止面に対し上記蓋部材を押し付けるのに適合した第2プレートとを備え、この第2プレートは、上記フランジの封止面の曲率とほぼ同じに湾曲している。上記第1プレートも、上記フランジの下面とほぼ同じ曲率に湾曲していることが好ましい。理想的には、上記第2プレートが上記フランジの封止面と一致した曲率に湾曲し、かつ上記第1プレートが、上記フランジの下面と一致した曲率に湾曲していることである。
【発明の効果】
【0008】
上記フランジの湾曲した封止面とほぼ同じ曲率に湾曲している第2プレートを提供することにより、この第2プレートを上記蓋部材に接触させて、上記蓋部材を上記フランジの封止面に押し付けたときに、ほぼ一様な接触時間および接触圧が上記フランジの封止面に亘って供給され、上記フランジの全体に亘ってより一様な封止強度が齎される。上記フランジの下面とほぼ同じ曲率を有する第1面を提供することによって、上記第1および第2プレートが、上記蓋部材および上記フランジの双方を挟んで一緒に締め付けて、上記フランジの封止面全体全体に亘って上記封止工程の全期間に亘ってほぼ一様な圧力が印加されるので、上記一様性がさらに改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ブリスターパックの剛体のポリマー容器を形成するのに従来から用いられている、一般に熱成形である成形工程は、成形後の容器に不均一な収縮を生じ勝ちであり、これが容器のフランジの封止面を凹凸状にすることが判明している。この湾曲は、肉眼で容易に見ることができ、かつその曲率半径は、平坦な基準面からのブリスターパックの端部の立上がりを測定することによって明らかにされる。
【0010】
上記湾曲が僅かであっても(すなわち、曲率半径が大きい)、もし平らなプレートが熱封止冶具に用いられると、上記フランジの封止面全体に亘る封止強度にかなりの差が生じる可能性がある。
【0011】
使用時に上記第1プレートは加熱されず室温にあるが、上記第2プレートは適当な温度に加熱され、両プレートが結合されて上記蓋部材と上記フランジとを挟んだときに、蓋部材を通じて熱が伝導されることによって、ハーメチック・シールが形成される。
【0012】
上記蓋部材は、上記フランジの封止面に接して加熱されたときに、溶けてシールを形成する基層を備えたラミネート箔が適している。ラミネート箔の上部層は、その上に印刷が施される表面であることが好ましい。適当な上部層は、アルミニウム箔のような金属箔が好ましい。
【0013】
上記容器は、例えばポリプロピレンまたはポリスチレンなどの熱可塑性ポリマーのような剛体のポリマーから成形されるのが好ましい。この容器は、水和性溶液を伴ったソフトコンタクトレンズのような、パッケージされるべき物質を保持するための桶状体を備え、かつ蓋部材がそこに封着されて封止されたパッケージを形成するために、上記桶状体を取り囲むフランジを有する。このフランジは、単純にパッケージ自体の上面、または上記桶状体を取り囲む隆起した領域の形態でパッケージの上面に備えられる。上記フランジの封止面は、このフランジの上面の全部または一部であり、封止が施されたときに、桶状体の内容物が気密封止されるように、桶状体を取り囲む封止面を提供する。成形工程の性質は、パッケージの、したがってフランジの凹状または凸状の上面を有する頂面およびフランジの封止面の原因となる。このことは、桶状体を形成する成形工程中における容器を形成するポリマーの不均一な収縮に起因する。
【0014】
上記容器は平坦なポリマーシートとして出発し、次いで、単純に成形されて桶状体を形成し、桶状体のフランジとしての残りの面を残し、フランジの上側の封止面およびフランジの下面は、成形工程において発生する不均一な張力の結果として、同じ曲率が与えられるが、上面が凹面で下面が凸面、あるいはこれと反対の場合も同じである。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明の第1の態様による熱封止冶具を提供する方法に関するもので、桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器を提供し、上記上側の封止面の曲率を測定し、この上側の封止面とほぼ同じ曲率を有する、上記熱封着冶具の第2プレートを提供する諸ステップを含む。
【0016】
この方法は、上記フランジの下面の曲率を測定し、かつ上記フランジの下面とほぼ同じに曲率に湾曲している、上記熱封着冶具の第1プレートを提供するステップをさらに含む。
【0017】
一般に、ポリマー容器の多くの実例は、上記熱封着冶具のための上記第2および/または第1プレートの曲率を提供するために平均的曲率が用いられるように、ポリマー容器の多くの実例が提供され、かつ測定される。
【0018】
上記フランジの下面および上側の封止面の曲率は、顕微鏡による検査または干渉分光法のような何れかの適当な手段によって測定される。
【0019】
本発明の別の態様は、桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器に対し、上記フランジの下面に接するのに適合した第1プレートと、上記フランジの上側の封止面に対し上記蓋部材を押し付けるのに適合した第2プレートとを備えた熱封着冶具を用いて蓋部材を封着する方法を提供するものであり、上記第2プレートは、上記フランジの封止面の曲率とほぼ同じに湾曲している。上記第1プレートは上記フランジの下面と同じ曲率に湾曲していることが好ましい。
【0020】
上記第1および第2プレートが結合されて上記蓋部材と上記容器のフランジとを挟んだ場合に、印加される力が好ましい範囲内に管理されるように、上記冶具が較正されているならば、本発明による熱封着冶具によって行なわれる封止の強度を良好に管理するために好ましいことである。このような較正は、上記第1および第2プレートについての圧力および変位の読みおよびこれらに伴う公式の計算によって達成される。しかしながら好ましい方法は、本発明の熱封着冶具とともに用いられるブリスターパックの封止面と同じ位置にロードセル(荷重試験器)の面を備えたレプリカのブリスターパック内に取り付けられた歪み検出ロードセル(例えば半導体ロードセル)を用いることである。上記レプリカのブリスターパックは、上記第1プレート上に取り付けられ、次いで上記第1および第2プレートがそれらの正規の封止位置に結合され、上記ロードセルに接続されたディスプレー・モニタに示されている力を加える。次に正規の封止位置が調整され、ディスプレーに示された所望の封止力の印加を開始する。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、二つの冶具プレートの間で封止されるブリスターパックを示す本発明による冶具の分解図である。表面の湾曲は大きく誇張されている。
【0023】
この冶具の下側の第1部分1の第1面8には、封止を行なうブリスターパックの桶状部7を収容するための凹部2が形成されている。蓋部材5は、ブリスターパック6のフランジ4の上側の封止面に密着される。上記第1面8は、フランジ4の下面と同じ曲率に湾曲している。冶具の上側の第2部分3の第2面9は、フランジ4の上側の封止面と同じの曲率に湾曲している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】二つの冶具プレートの間で封止されるブリスターパックを示す本発明による冶具の分解図
【符号の説明】
【0025】
1 冶具の第1部分
2 凹部
3 冶具の第2部分
4 フランジ
5 蓋部材
6 ブリスターパック
7 桶状部
8 第1面
9 第2面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器に蓋部材を封着するための熱封着冶具であって、
該冶具が、前記フランジの下面に接するのに適合した第1プレートと、前記フランジの上側の封止面に対し前記蓋部材を押し付けるのに適合した第2プレートとを備え、該第2プレートが、前記フランジの封止面とほぼ同じ曲率に湾曲していることを特徴とする熱封着冶具。
【請求項2】
前記第2プレートが、前記フランジの封止面と一致した曲率に湾曲していることを特徴とする請求項1記載の熱封着冶具。
【請求項3】
前記第1プレートが、前記フランジの下面とほぼ同じ曲率に湾曲していることを特徴とする請求項1または2記載の熱封着冶具。
【請求項4】
前記第1プレートが、前記フランジの下面と一致した曲率に湾曲していることを特徴とする請求項3記載の熱封着冶具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の熱封着冶具を提供する方法であって、
桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器を提供し、
前記上側の封止面の曲率を測定し、
該上側の封止面とほぼ同じ曲率にまたは一致した曲率に湾曲している、前記熱封着冶具の第2プレートを提供する、
諸ステップを含むことを特徴とする前記方法。
【請求項6】
前記フランジの下面の曲率を測定し、
該フランジの下面とほぼ同じ曲率にまたは一致した曲率に湾曲している、前記熱封着冶具の第1プレートを提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
桶状部、ならびに湾曲した上側の封止面および下面を有するフランジを備えた剛体のポリマー容器に対し、前記フランジの下面に接するのに適合した第1プレートと、前記フランジの上側の封止面に対し前記蓋部材を押し付けるのに適合した第2プレートとを備えた熱封着冶具を用いて蓋部材を封着する方法であって、
前記第2プレートが、前記フランジの封止面とほぼ同じ曲率に湾曲していることを特徴とする前記方法。
【請求項8】
前記第1プレートが、前記フランジの下面とほぼ同じ曲率に湾曲していることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項記載の冶具を用いた、請求項5から8のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−522180(P2009−522180A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549084(P2008−549084)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000515
【国際公開番号】WO2007/077533
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(391008847)ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド (137)
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
【Fターム(参考)】