説明

蓋開封具

【課題】蓋を開封しやすく、コンパクトな容器蓋の開封具を提供する。
【解決手段】蓋を押し切り開封するための複数の切刃32と、該複数の切刃を設置するための台座31とを備えた蓋開封具1において、該複数の切刃が、突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃32a,32bからなることを特徴としている。こうすることで、蓋を押し切り開封するための複数の切刃の突き出し高さ位置が2種類以上異なっているため、蓋を押し切る際に蓋に最初に接触する切刃の枚数は切刃全枚数より少なくなっているため、切刃1枚に加えられる力は切刃が全て同時に蓋に接触する場合に比べ増加するので、蓋体を押し切りやすい開封具となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蓋を簡易に切り開き開封するための開封具に関するものであり、より詳しくはフィルム部を有する缶蓋によって密封されている缶のフィルム部を簡易に切り開き開封するための開封具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食物等の内容物を充填し保存する容器として缶が使用されている。これらの缶は内容物を収容する缶胴とその缶胴の上端開口部を閉じる缶蓋とからなっていて、缶蓋は通常その外周縁部で缶胴の上端に巻き締め固定されている。
【0003】
缶蓋は缶胴と同様に金属板製であることが多いが、缶蓋の一部分に金属箔やプラスチックのラミネートフィルムなどの膜体を使用する場合がある。
【0004】
本件特許出願の出願人は先にフィルム缶蓋とその開封具を提案した(特許文献1,2)。この提案されたフィルム缶蓋は、中央部寄りに開口部を有し外周縁部に巻き締め部を有するめがね蓋とそのめがね蓋の中央開口部を気密に閉じる膜体からなる膜蓋とから成るものである。
【0005】
また、このフィルム缶蓋の開封具は、短い筒状体である台座の下端に切刃を複数備えたものである。開封操作としては、まず、フィルム缶蓋の膜蓋に開封具の切刃をあて、台座の上端部を手で上から押し込むことによって1次開封し、1次開封で切れ残った部分については、台座を手で回転させ切刃で切り落とす2次開封を行い、膜蓋を切除する。
【0006】
【特許文献1】特開2004−168318
【特許文献2】特開2006−027732
【特許文献3】特開平06−298295
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されているような開封具の場合、切刃が例えば3個、広い間隔を空けて備えられている場合、2次開封で台座を回転させる量が多くなり面倒となる。そこで切刃を増やし、例えば台座に6個設け切刃間の間隔を狭くすると、今度は1次開封時に、個々の切刃に加えられる力が6箇所に分散することによって弱くなり、押し切りにくくなる。また、例えば3個の個々を大きくすることによって切刃間の間隔を狭くすると、押し切りに最適な切刃傾斜角を保ったまま大きくする場合、例えば特許文献3のように個々の切刃が高く大きくすぎて開封具が大きくなり、扱いにくいものになる。
【0008】
本発明は上記の如き事情に鑑みてなされたものであって、1次開封や2次開封が容易に行え、かつ、コンパクトな開封具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的に対し、本発明のフィルム蓋開封具は、蓋を押し切り開封するための複数の切刃と、該複数の切刃を設置するための台座とを備えた蓋開封具において、該複数の切刃が、突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓋開封具では、蓋を押し切り開封するための複数の切刃の突き出し高さ位置が2種類以上異なっているため、蓋を押し切る際に蓋に最初に接触する切刃の枚数は切刃全枚数より少なくなっているため、切刃1枚に加えられる力は切刃が全て同時に蓋に接触する場合に比べ増加するので、蓋体を押し切りやすい開封具となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細の一実施態様を示す図面について説明する。図1において蓋開封具1が本発明の一実施形態であり、図2の容器2の蓋体4を開封するための治具である。容器2は本実施形態においては缶であって、缶胴3の上端に蓋体4を巻締部5において二重巻き締めにより固着したものである。 蓋体4は、外周部分のめがね蓋6と中央部分の膜体7とからなっている。(図2(a)参照)
【0012】
めがね蓋6の中央に円形の開口11が設けられ、その周縁にカール部8が設けられている。膜体7はめがね蓋6の開口部を閉口するように内面側からめがね蓋6に接着されている。膜体7はプラスチックフィルムの単層,多層,アルミ箔単層,アルミ箔とプラスチックフィルムの多層など、用途等に合わせて厚みも含め適宜選択可能である。本実施形態では膜体7が蓋開封具1による開封の対象である。
【0013】
開封具1には本実施形態では短い円筒状の台座31の端部(図1(b)においては下端)に円状に配置された切刃32が8枚下方に突出して設けられている。そして切刃32と台座31との間には段部39が設けられている。切刃32の形状は三角形状であり、また、先端は、好ましくは図のように取り扱い時の怪我防止のため過度に鋭利にならないよう若干丸められている。 また、8枚の切刃32は本実施形態においては互いの両隣を詰めて配置されている。
【0014】
そして、本実施形態の切刃32は、突き出し高さ位置が最も突出している(;図1においては切刃32の先端が最も下方に突き出している)4枚の切刃32aと、切刃32aの突き出し高さ位置よりも台座31側にまで突出している(;図1では、切刃32aの先端よりも上方寄りにまで切刃の先端が突出している)4枚の切刃32bとの2種類が、互い違いに配置されている。
【0015】
また、台座31の切刃32側と反対側の端部側(図1(b)においては上方側)にはフランジ35が設けられている。
【0016】
蓋開封具1はプラスチック材料、例えばポリプロピレンを射出成形することによって製造する可能である。しかし、開封する蓋体4(本実施形態では膜体7)の硬さによっては、材料を適宜変更するのが望ましい。例えば、切刃32のみを金属材料で取り付けられる構成にしてもよいし、あるいは蓋開封具全体を金属材料で例えば鋳物から削りだして製造してもよい。
【0017】
このように構成された蓋開封具1を用いて蓋体4を開封する場合は、まず、開封具1を切刃32が下向きになるよう蓋体4の上に載せる(図2(b))。なお、切刃32aは3枚以上備わっていれば3点支持により蓋体4の上に安定して載置可能である。
【0018】
この状態では切刃32のうち、4枚の切刃32aの先端だけがめがね蓋6の内周縁(カール部8の内周縁)との境で膜体7の外周縁に当接している。この状態から台座31を上から押し下げると、切刃32のうち、まず、4枚の切刃32aの先端から膜体7に力が加えられ、切刃32aが膜体7を突き破り始める。
【0019】
このとき、本発明の蓋開封具1は、従来の開封具ように切刃の突き出し高さ位置が全て(本実施形態で対比すると8枚)同じ場合に比べ、4枚の切刃32a各々に加わる力は大きくなるので、膜体7を突き破りやすくなる。なお、切刃32aは5枚以下であれば、1枚の切刃に加わる力が分散されすぎることがないので、より好ましい。
【0020】
切刃32aは膜体7を一旦突き破ると、突き破るときよりも少ない押し下げ力で膜体7を切り開くことができる。この状態で4枚の切刃32bが膜体7に接触するまで蓋開封具1は押し下がる。
【0021】
切刃32bが膜体7に接触すると(図2(c))、切刃32bが膜体7を突き破るため一旦蓋開封具1を押し下げる力が増加する。しかし、切刃32aはすでに膜体を突き破り、個々に比較的少ない力で膜体7を切り開いているところなので、従来のように全ての切刃(本実施形態に合わせて対比すると8枚の切刃)に同時に突き破るための力を加える必要がある場合に比べ、少ない押し下げ力で4枚の切刃32bを膜体7に突き破らせることが可能となる。
【0022】
切刃32bも膜体7を突き破ると、後は開封具の押し下げ操作によって切刃32aと切刃32bは膜体7を切り開き、蓋開封具1の段部39が蓋体4のカール部8に当接するまで押し下げ可能である。(図2(d)。ここまでの操作をもって、従来の1次開封にあたる操作が終了する。)
【0023】
段部39がカール部8に当接すると、切刃32a,32bの付け根位置(根元)は膜体7の位置より、カール部8の分だけ上方に位置するので、膜体7は完全には切り開かれてはおらず、所々(本実施形態では8箇所)、部分的にわずかに切れ残りがあって繋がった状態である。
【0024】
この状態のとき、蓋開封具1をめがね蓋6に対し、開口11の円形中心を軸にわずかに回転させることで膜体7を全周切り開き、めがね蓋6から分離することができる。(1次開封終了からここまでの操作をもって、従来の2次開封にあたる操作が終了する。)その際、フランジ35があるため、そこに手指を添えると回転操作しやすくなる。
【0025】
なお、切刃32aと切刃32bとの突き出し高さ位置の距離の差dは0.5mm以上に設定するのが好ましいが、蓋体4(膜体7)の開封のしやすさ、目的などにより、適宜設定可能である。
【0026】
例えば、切刃32aによる膜体7の突き破りから切刃32bによる膜体7の突き破りにかけて、なるべく不連続な操作で行わないようにするには、突き出し高さ位置の距離の差dを小さく設定するのが好ましく、0.5mm以上3mm以下が好ましい。
【0027】
また、特許文献1,2のように陽圧容器の蓋を開封する際に用いる場合は、切刃32で膜体7を段部39がカール部8に当接まで突き破り切り開く前に一旦、蓋開封具1の押し下げ操作(1次開封)を休止し、切刃と突き破られた膜体との間から陽圧容器内のガス抜きを行うのが好ましいが、突き出し高さ位置の距離の差dを大きくとると、蓋開封具1の押し下げ操作(1次開封)が不連続になるため、切刃32aが蓋体4(膜体7)を突き破ってから切り開いている間で、切刃32bが蓋体4(膜体7)に接触する前に使用者の押し下げ操作のための手に入れる力が緩められるので、切刃32bが蓋体4(膜体7)に接触したときに、切刃32bが蓋体4(膜体7)によって止められ、その間にガス抜きが出来るので好ましい。その際は突き出し高さ位置の距離の差dを3mmを越すように設定するのが好ましく、3mm超え7mm以下に設定すると、切刃32aの蓋体4(膜体7)の切開き量が大きくなりすぎガスが一度に大量に吹き出す前に押し下げ操作を止めることが出来るので好ましい。
【0028】
以上、本発明の1実施形態について説明したが、本発明はその思想の範囲内で種々の変更が可能である。 例えば、本発明では端部が同一高さの台座31に刃の高さの異なる2種の切刃32a,32bを4枚ずつ備えたが、図3(a)のように端部が異なる高さの台座に刃の高さの等しい切刃を備えることで、切刃の突き出し高さ位置が異なるようにしてもよいし、図3(b)のように、同じ切刃を高さ位置が異なるように配列させ連結させ連結部分を台座部とみたて、また、段部39,フランジ35も適宜省略してもよい。また切刃形状も特許文献2に記載されているような形状に変更してもよいし、隣り合う切刃どうしの間隔も、2次開封の際、不便と感じない範囲で適宜離してもよい。また図3(c)のように柔軟な材料の台座に切刃を取付け蓋体を開口したい形状に、曲げて使用してもよい。また、突き出し高さ位置が等しい切刃の枚数は、切刃32bなど、最も突出している突き出し高さ位置の切刃以外の切刃については特に制限はないが、突き出し高さ位置の距離の差dを3mmを越すような場合は3枚以上あれば切刃32a同様、安定して蓋体4(膜体7)に着座できるので好ましい。また、切刃全部の枚数も、特に制限なく、突き出し高さ位置も3種以上異なるように構成してもよい。 また、容器,蓋体も上実施形態に限らず、実開平01−096832のように膜体(フィルム)をヒートシール(溶着)したカップに適用してもよいし、特開平09−255091のように蓋体としても通常の金属缶蓋を適用し、それを開封するための蓋開封具であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】蓋開封具を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図(図1(a)におけるA−A断面図)、(d)は底面図(下面図)である。
【図2】蓋開封具を容器に使用する状態を示す図で、(a)は切刃を突き刺す前の縦断面図、(b)は最も突出している突き出し高さ位置の切刃が膜体に着座したときの縦断面図、(c)は最も突出している突き出し高さ位置の切刃は膜体を突き刺し切り開き始め、次の突き出し高さ位置の切刃が着座したときの縦断面図、(d)次の突き出し高さ位置の切刃も膜体を突き刺し切り開き台座がカール部に段部で着座したときの縦断面図と容器内側から見た下面図。
【図3】蓋開封具の別形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0030】
1 蓋開封具 2 容器(缶) 3 缶胴 4 蓋体 5 巻締部 6 めがね蓋 7 膜体 8 カール部 11 開口 31 台座 32,32a,32b 切刃 35 フランジ 39 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋を押し切り開封するための複数の切刃と、該複数の切刃を設置するための台座とを備えた蓋開封具において、 該複数の切刃が、突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃からなることを特徴とする、蓋開封具。
【請求項2】
前記突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃のうち、最も突出している突き出し高さ位置の切刃が3枚以上備わっていることを特徴とする、請求項1に記載の蓋開封具。
【請求項3】
前記突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃のうち、最も突出している突き出し高さ位置の切刃の枚数が5枚以下であることを特徴とする、請求項2に記載の蓋開封具。
【請求項4】
前記突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃の、最も突出している突き出し高さ位置と次に突出している突き出し高さ位置との高さ位置の距離の差が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋開封具。
【請求項5】
前記突き出し高さ位置が2種類以上異なる切刃の、最も突出している突き出し高さ位置と次に突出している突き出し高さ位置との高さ位置の距離の差が3mmを超えていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋開封具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195143(P2011−195143A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259829(P2008−259829)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】