説明

蔓性植物による緑化装置

【課題】付着根型蔓植物又は巻き蔓型蔓植物のいずれの蔓性植物にも適用でき、さらに施工の足場が緑化面の前面又は背面のいずれの側にあっても両面からの施工及び保守管理を容易に行うことができる蔓性植物による緑化装置を提供する。
【解決手段】蔓性植物Pの登攀を補助する多孔質の登攀助材2が設けられた蔓性植物による緑化装置1であって、線材を格子状に形成してなる格子体4の水平方向又は鉛直方向に格子の幅よりも狭い幅の帯状登攀助材2が前記格子体4の格子を縫うように付設されると共に、該登攀助材2の両端が格子体4の両端部に固設されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁面や立体駐車場の外周面等を蔓性植物を用いて緑化するための蔓性植物による緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建造物のコンクリート壁面等の垂直面または法面を緑化する方法として、蔓性植物を用いた緑化法が知られている。このような蔓性植物を用いた従来の技術として、特許文献1には、吸着型蔓性植物による緑化器が開示されている。その構成は、登攀助材と網状保護材とスペーサとを有し、登攀助材は吸着型蔓性植物の付着根が浸入し得る多孔質材により形成され、この登攀助材と網状保護材との間にスペーサを介在することにより吸着型蔓性植物の登攀間隙を保つように該網状保護材を留金具で固定したものである。
【0003】
ところで、この特許文献の登攀助材は網状保護材の背面(壁面側)の全面に設けられ、吸着型蔓性植物を網状保護材と登攀助材との間に生育させることにより、吸着型蔓性植物を網状保護材で覆った状態に保護しつつ生育するようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2に記載されている緑化パネルは、登攀助材の表面に、複数の波形線材が、各凹部において登攀助材に接する状態で並設され、かつ各凸部において複数の直状線材が交差するように架設された格子が形成されてなるものである。この特許文献においても、登攀助材は波形線材の背面(壁面側)の全面に設けられ、蔓性植物は波形線材の各凸部の内側に成育することによって保護される構成とされている。
【0005】
上記のように、特許文献1、2のいずれも、登攀助材は壁面の全面に設けられる構成とされているため、風圧荷重が大きく部材強度を大きくする必要がある。また、コンクリート壁面等のように施工者の足場と緑化すべき壁面とが同じ側にある場合に施工可能であるが、立体駐車場の外周面のように、足場は屋内側にあって緑化すべき面は屋外側にある場合、登攀助材が緑化面の全面を占める構成では屋外側の植物を管理するのが困難である。
【特許文献1】特許第3602948号公報
【特許文献2】特開2006−75009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、上記の特許文献1、2は、吸着型蔓性植物(「付着根型蔓植物」と同意である)に好適するものであるが、付着根型蔓植物であっても巻き蔓型蔓植物であっても、いずれの蔓性植物にも適用できる緑化法が望まれるところである。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、付着根型蔓植物又は巻き蔓型蔓植物のいずれの蔓性植物にも適用でき、緑化装置全体にかかる風圧荷重を減少させて、大きな部材強度を必要としない構造にすることができ、さらに施工の足場が緑化面の前面又は背面のいずれの側にあっても両面からの施工及び保守管理を容易に行うことができる蔓性植物による緑化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明における請求項1の蔓性植物による緑化装置は、蔓性植物の登攀を補助する多孔質の登攀助材が設けられた蔓性植物による緑化装置であって、線材を格子状に形成してなる格子体の水平方向又は鉛直方向に格子の幅よりも狭い幅の帯状登攀助材が格子を縫うように付設されると共に、該登攀助材の両端が格子体の両端部に固設されてなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明における請求項2の蔓性植物による緑化装置は、請求項1において、前記格子体の格子を縫うように付設された登攀助材は、各段毎に反対向きに配列されるか、又は各段毎に同列に配列されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明における請求項3の蔓性植物による緑化装置は、請求項1又は2において、前記登攀助材は、合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体、化学繊維の不織布からなる多孔質帯状体、鉱物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、植物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、又はヤシ殻繊維を帯状にして形成してなる多孔質帯状体であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明における請求項4の蔓性植物による緑化装置は、請求項1、2又は3において、前記格子体は平面形状に形成されているか、横断面形状が連続V字形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げた形状からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明における請求項5の蔓性植物による緑化装置は、請求項1、2又は3において、前記格子体は横断面形状が連続四角形となるように折り曲げた形状からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明における請求項6の蔓性植物による緑化装置は、請求項1、2又は3において、前記格子体とプランターとを一体的に構成したことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明における請求項7の蔓性植物による緑化装置は、蔓性植物の登攀を補助する多孔質の登攀助材が設けられた蔓性植物による緑化装置であって、線材を格子状に形成してなる格子体の横断面形状が連続V字形、連続四角形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げ、該格子体の格子面に沿って蔓性植物の根を付着し得る材質による支柱を固設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蔓性植物による緑化装置は、格子体の水平方向又は鉛直方向に帯状の登攀助材が格子を縫うように付設され、該登攀助材の両端が格子体の両端部に固設されてなる構成としたことにより、格子体に帯状の登攀助材を取付ける作業を容易に行うことができ、1個の格子体に複数の登攀助材が一体的に設けられてなる緑化装置を工場生産により作成し、必要数の緑化装置を多層に積み上げて運搬することが可能であり、また夫々の緑化装置を現場で取り付けるだけの作業となるため、製造コストの低減、運搬の容易化、さらには施工の簡易化を達成することが可能となる。
【0016】
また、本発明の緑化装置は、格子体の水平方向又は鉛直方向に格子の幅よりも狭い幅の帯状登攀助材が設けられ、部分的に使用しているため、登攀助材間には隙間を有し、風圧荷重を減少させることができ、大きな部材強度を必要としない耕造にすることができる。
【0017】
また、本発明の緑化装置は、格子体の水平方向又は鉛直方向に格子の幅よりも狭い幅の帯状登攀助材が設けられ、夫々の登攀助材間の隙間から手を入れて作業を行うことができるため、例えば、立体駐車場の外周面を緑化する場合のように、足場は屋内側にあって緑化すべき面は屋外側にある場合でも容易に施工することが可能となり、緑化装置の両側からの施工及び保守管理を実現することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明の緑化装置は、蔓性植物の登攀を補助する多孔質の登攀助材と線材を格子状に形成してなる格子体との組み合わせからなる構成であるため、多孔質の登攀助材に付着根型蔓植物の根が張って生育させることができ、また周囲に隙間を有する格子体に巻き蔓型蔓植物が巻きついて生育することができるため、付着根型蔓植物と巻き蔓型蔓植物との住み分けが可能となる。
【0019】
また、本発明においては、線材を格子状に形成してなる格子体に設ける帯状の登攀助材として、合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体、化学繊維の不織布からなる多孔質帯状体、鉱物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、植物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、またはヤシ殻繊維を帯状に形成してなる多孔質帯状体等の材料を使用することができ、登攀助材の材料選択の自由度が向上するものである。
【0020】
また、格子体の格子を縫うように設けられる登攀助材が、各段毎に反対向きに配列されるか、又は各段毎に同列に配列されてなるものであって、いずれを選ぶかによって意匠性の変化をもたらすことが可能となる。
【0021】
さらに、格子体の形状として、平面形状のほかに、横断面形状が連続V字形、連続四角形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げた形状からなる緑化装置を構成することが可能であり、意匠性が高まり、種々の建築デザインに適用することが可能となる。
【0022】
さらに、格子体の形状として、横断面形状が連続四角形となるように折り曲げた形状からなる緑化装置を構成することにより、緑化装置を床面に自立させることができ、室内の仕切等に使用することが可能となる。また、緑化装置を壁面に使用する場合、縦に切断することにより、寸法が固定した緑化装置の場合に発生する壁面端末のデッドスペースをなくすことができる。また、側面部の緑化も可能であるため、端末の目隠し処理が不要となる。
【0023】
また、本発明において、格子体とプランターとを一体的に構成した緑化装置とすることにより、プランターが格子体を自立させる支持部材として機能するため、室内や室外の任意位置にこの緑化装置を設置して、蔓性植物による緑化を育成することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明において、線材を格子状に形成してなる格子体の横断面形状が連続V字形、連続四角形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げ、該格子体の格子面に沿って蔓性植物の根を付着し得る材質による支柱を固設した構成とすることにより、この支柱に付着根型蔓植物の根が張って生育させ、格子体に巻き蔓型蔓植物が巻きついて生育させることが可能となる。そして、吸盤によってしっかりと張り付く吸着性のあるナツズタ等を植栽する場合、その根が支柱に張るため、壁面等を傷つけるのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0026】
本実施例の蔓性植物による緑化装置1は、図1(a)(b)(c)又は図2(a)(b) (c)又に示すように、蔓性植物Pの登攀を補助する多孔質の登攀助材2が設けられた蔓性植物による緑化装置1であって、ステンレス又は鉄鋼等による線材を格子状に形成してなる格子体4の水平方向又は鉛直方向に格子の幅よりも狭い幅の帯状登攀助材2が格子体4の格子を縫うように付設されると共に、該登攀助材2の両端が格子体4の両端部に固設されてなるものである。
【0027】
このような蔓性植物による緑化装置1について詳細に述べると、図1(b)又は図2(b)に示すように、線材として金属線材5を用い、この金属線材5を複数の横筋5a、5a…と複数の縦筋5b、5b…とに配して、互いに所定間隔をあけて格子状に設けると共に、夫々の接合部を溶接することによって一体的に形成された格子体4を得ることができる。
【0028】
図1(a)(b)(c)に示す緑化装置1の場合、一区画の格子の略半分の幅を有する帯状の登攀助材2が用いられ、この登攀助材2としては植物繊維からなる不織布2Aを用いてあり、この登攀助材2(2A)を水平方向にして縦筋5b、5b…毎に前側と後側を交互に縫うように挿入すると共に、夫々の登攀助材2の両端を格子体4の両側の縦筋5b、5bの端部で折り返し、折返部6、6を止め金7で固定した構成としている。
【0029】
また、本発明による緑化装置1は、各登攀助材2の取り付けパターンとして、図1(a)(b)(c)に示すように各段毎に反対向きに配列されるか、又は図2(a)(b)(c)に示すように各段毎に同列に配列されてなる構成とすることができる。なお、図1又は図2において、(a)は格子体4の各格子の上段の部分横断面を示し、(b)はその下段の部分横断面を示すものである。
【0030】
即ち、図1(a)(b)(c)に示すように、水平方向に配した登攀助材2が所定の縦筋5bの前側を縫うように付設されると共に、その下段の格子においては同一の縦筋5bの後側を縫うように付設されるというように、登攀助材2が同一の縦筋5bについて上下段の各段毎に交互に反対向きに配列されてなる構成とされている。これに対して、図2(a)(b)(c)に示す緑化装置1は、水平方向に配した登攀助材2が所定の縦筋5bの前側を縫うように付設されると共に、その下段の格子においても同一の縦筋5bの前側を縫うように付設されるというように、同一の縦筋5bについて、登攀助材2が上下段の各段毎に同列に配列されてなる構成とされている。
【0031】
また、図3(a)〜(d)に示す緑化装置1は、上記の図1(a)(b)(c)又は図2(a)(b)(c)に示す緑化装置1を基本構成として、その他のバリエーションを示すものである。即ち、図3(a)の緑化装置1は、図1(a)(b)(c)に相当するものであり、緑化装置1の格子体4の各格子毎に帯状の不織布2Aからなる登攀助材2を水平方向にして各格子を縫うように設けると共に、登攀助材2の両端を格子体4の両端の縦筋5b、5bで折り返して、夫々の折返部6、6を止め金7で止めたものである。また、水平方向に配した登攀助材2は、各格子の上下段においては縫い方を互い違いに違えた状態(図1(a)(b)(c)の縫い方に相当する)にしたものとしている。
【0032】
また、図3(b)の緑化装置1は、図3(a)の緑化装置1Aを90度だけ横転した状態にして各登攀助材2を鉛直方向にして左右方向に間隔をあけて設けた構成としたものである。
【0033】
また、図3(c)に示す緑化装置1は、図2(a)(b)(c)の緑化装置1に相当するものであり、上下に水平方向に配した登攀助材2は、各格子毎に同様の縫い方(各格子の上下段において登攀助材2を同一の縦筋5bについてはすべて前側又は後側となるように配して設けた構成)にしたものである。この図3(c)に示す緑化装置1もまた、不図示であるが、図3(b)に示すように90度だけ横転して各登攀助材2を鉛直方向にして左右方向に間隔をあけて設けたものとすることも可能である。
【0034】
さらに、図3(d)に示す緑化装置1は、水平方向に配した登攀助材2を上下段に配するとき、登攀助材2を設けない区画を少なくとも一つおきに設けた構成としたものである。これによって上下段に配された登攀助材2の隙間8が広くあき、その隙間8に作業の手が入れやすくなり、施工及び保守管理の際にも便利になるという利点を有する。また、この図3(d)に示す緑化装置1もまた、不図示であるが、図3(b)に示すように90度だけ横転し各登攀助材2を鉛直方向にして左右方向に間隔をあけて設けたものとすることも可能である。
【0035】
上記の図1〜図3に示す緑化装置1においては、登攀助材2としては植物繊維による不織布2Aを用いた例を示してあるが、他の登攀助材2として、合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体、化学繊維の不織布からなる多孔質帯状体、鉱物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、植物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、またはヤシ殻繊維を帯状に形成してなる多孔質帯状体、さらには発泡樹脂シート、薄厚木板、薄厚竹板等の材料を使用することができる。なお、登攀助材を不燃処理することにより、火災に対する安全性を高めることが可能となる。
【0036】
図4(a)〜(d)に示す緑化装置1は、登攀助材2として合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体2Bを使用したものであり、格子体4の形状や登攀助材2の付設の方法等については図3(a)〜(d)に示すものと同様である。なお、この緑化装置1のように、登攀助材2として合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体2Bを用いた場合、その登攀助材2の両端は格子体4の両端の縦筋5b、5bに対して番線のような金属線材(不図示)又は接着材で固定するようにしてもよい。
【0037】
また、図5(a)は緑化装置1の横断面形状が連続四角形又は連続台形に形成されたものを示す。このような構成は、格子体4の横断面形状が連続的に凹凸となる形状を有し、登攀助材2として不織布又は合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体2Cを用い、これを夫々の凹凸の側部における各格子を縫うように付設した構成を有する。この場合、蔓性植物Pは緑化装置1の凹部に収容された状態で生育させることによって、上記のように各凹凸の側部に設けた多孔質帯状体2Cが風除け等の役割を果たし、蔓性植物Pを保護した状態で育成することが可能となる。
【0038】
また、図5(a)の緑化装置1の横断面形状が連続四角形となるように形成することにより床面等に自立可能な構成となり、室内の仕切等にも使用できる。また、壁面に使用する場合は、縦に切断することにより、端末のデッドスペースに対応することが可能となる。さらに、側面緑化も可能であるため、端末の目隠し処理が不要となる。
【0039】
さらに、図5(b)は緑化装置1の格子体4の横断面形状が連続V字形状に形成されたものを示す。このような構成は、格子体4の横断面形状が連続的にV字形状となるように形成されている。また、この緑化装置1には、図1(a)(b)(c)、又は図2(a)(b)(c)に使用した植物繊維による不織布2Aを水平方向にして各格子を縫うように付設した例を示してあるが、その他に、上記の合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体2B(図4(a)〜(d)参照)、化学繊維の不織布からなる多孔質帯状体、鉱物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、植物繊維の不織布からなる多孔質帯状体等を用いてもよい。このように横断面形状が連続V字形状に形成された格子体4からなる緑化装置1においても、横断面形状の窪みの部位に蔓性植物Pを収容した状態で生育することによって、各登攀助材2が風除け等の役割を果たし、蔓性植物Pを保護した状態で育成することが可能となる。
【0040】
格子体の横断面形状が連続U字形、連続四角形、連続台形又は連続波形となるように折り曲げた形状になることにより、緑化装置全体の強度が高まり、部材強度を低減させることができる。
【0041】
図6(a)〜(d)に示すものは、各種形状の緑化装置1を横積みに重ねて保管又は運搬することが可能であることを示すものである。即ち、図6(a)に示す緑化装置1は平面形状に形成された格子体4を用いてあり、図6(b)に示す緑化装置1は横断面形状が連続台形に形成された格子体4を用いてあり、図6(c)に示す緑化装置1は横断面形状が連続V字形状に形成された格子体4を用いてあり、図6(d)に示す緑化装置1は横断面形状が連続波形状に形成された格子体4を用いてあり、いずれにしても、夫々の格子体4に種々の登攀助材2を付設した状態で多数の緑化装置1を横積みにして保管又は運搬をすることが可能である。
【0042】
また、図7(a)に示すように、本発明は、上記の構成による格子体4とプランター9とを一体的に構成した緑化装置1とすることが可能である。この場合、格子体4の下部を折り曲げてプランター9を包囲するような形状とすることにより、その包囲部10内にプランターを収納するだけで、格子体4とプランター9とが一体化された構成となる。このような構成により、プランター9が格子体4を自立させる支持部材として機能するため、室内や室外の任意位置にこの緑化装置1を設置して、蔓性植物Pによる緑化を実施することが可能となる。
【0043】
また、図7(b)に示す施工状況において、これは立体駐車場のように壁を有しない床面に格子体4を固設し、格子体4の外側(足場の反対側)にプランター9を設置した状況を示すものである。この場合、格子体4は床面11と天井面12とに金具13等で固定することが可能であり、作業者は格子体4の隙間8から手を入れて外側に設置されたプランター9の蔓性植物Pの保守管理等を行うことが可能となる。
【0044】
さらに、図8(a)に示すように、線材を格子状に形成してなる格子体4の横断面形状が連続V字形、連続四角形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げられ(図8(a)又は(b)は連続四角形に折り曲げられたものである)、該格子体4の格子面に沿って蔓性植物の根を付着し得る材質による支柱14を固設した構成とすることにより、この支柱14に付着根型蔓植物の根が張って生育させることができ、また格子体4に巻き蔓型蔓植物が巻きついて生育させることが可能となる。そして、吸盤によってしっかりと張り付く吸着性のあるナツズタ等を植栽する場合、その根が支柱14に張るため、壁面等を傷つけるのを防止することが可能となる。
【0045】
なお、蔓性植物の根を付着し得る材質による支柱14としては、所謂「へご棒」のように、吸水性を有し、付着根型蔓植物の根が食い込む素材であれば利用可能であり、またその形状は断面丸形でも角形でもよい。また、図8(b)は断面形状が連続四角形に形成された格子体4に支柱14を固設する場合の固設位置を示すものであり、凹んだ箇所の何処にも固設可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の蔓性植物による緑化装置は、付着根型蔓植物又は巻き蔓型蔓植物のいずれの蔓性植物にも適用でき、さらに施工の足場が緑化面の前面又は背面のいずれの側にあっても両面からの施工及び保守管理を容易に行うことができ、壁面においては端末のデッドスペースをなくすことができる緑化装置として利用可能である。また、横断面形状が連続四角形に形成することにより、室内の仕切等にも使用できる緑化装置としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例における緑化装置を示すものであり、(a)は格子体の各格子の上段の部分横断面を示し、(b)はその下段の部分横断面を示し、(c)は緑化装置の部分正面図を示すものである。
【図2】本発明の実施例における別態様の緑化装置を示すものであり、(a)は格子体の各格子の上段の部分横断面を示し、(b)はその下段の部分横断面を示し、(c)は緑化装置の部分正面図を示すものである。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の実施例における緑化装置において登攀助材として不織布を用いた種々のバリエーションを示す正面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の実施例における緑化装置において登攀助材として網目状の合成樹脂を用いた種々のバリエーションを示す正面図である。
【図5】本発明の実施例における緑化装置であって、(a)は横断面が連続四角形状からなる緑化装置を示す斜視図であり、(b)は横断面が連続V字形状からなる緑化装置を示す斜視図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の実施例における複数の緑化装置を横積みにした状況を示す側面図である。
【図7】(a)(b)は、本発明の実施例における緑化装置の施工状況を示す側面図である。
【図8】(a)は本発明の他の実施例を示す斜視図、(b)はその横断面図である。
【符号の説明】
【0048】
P 蔓性植物
1 緑化装置
2 登攀助材
2A 不織布(不織布からなる多孔質帯状体)
2B 合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体
2C 不織布又は合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体
4 格子体
5 金属線材
5a 横筋
5b 縦筋
6 折返部
7 止め金
8 隙間
9 プランター
10 包囲部
11 床面
12 天井面
13 金具
14 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蔓性植物の登攀を補助する多孔質の登攀助材が設けられた蔓性植物による緑化装置であって、線材を格子状に形成してなる格子体の水平方向又は鉛直方向に格子の幅よりも狭い幅の帯状登攀助材が格子を縫うように付設されると共に、該登攀助材の両端が格子体の両端部に固設されてなることを特徴とする蔓性植物による緑化装置。
【請求項2】
前記格子体の格子を縫うように付設された登攀助材は、各段毎に反対向きに配列されるか、又は各段毎に同列に配列されてなることを特徴とする請求項1記載の蔓性植物による緑化装置。
【請求項3】
前記登攀助材は、合成樹脂を網状に形成してなる多孔質帯状体、化学繊維の不織布からなる多孔質帯状体、鉱物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、植物繊維の不織布からなる多孔質帯状体、又はヤシ殻繊維を帯状にして形成してなる多孔質帯状体であることを特徴とする請求項1又は2記載の蔓性植物による緑化装置。
【請求項4】
前記格子体は平面形状に形成されているか、横断面形状が連続V字形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げた形状からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の蔓性植物による緑化装置。
【請求項5】
前記格子体は横断面形状が連続四角形となるように折り曲げた形状からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の蔓性植物による緑化装置。
【請求項6】
前記格子体とプランターとを一体的に構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の蔓性植物による緑化装置。
【請求項7】
蔓性植物の登攀を補助する多孔質の登攀助材が設けられた蔓性植物による緑化装置であって、線材を格子状に形成してなる格子体の横断面形状が連続V字形、連続四角形、連続台形、又は連続波形となるように折り曲げ、該格子体の格子面に沿って蔓性植物の根を付着し得る材質による支柱を固設したことを特徴とする蔓性植物による緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−212047(P2008−212047A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53143(P2007−53143)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(390014649)日本地工株式会社 (20)
【Fターム(参考)】