説明

薄切片搬送装置および薄切片搬送方法

【課題】包埋ブロックから作製された薄切片が回収ポイントに到達したときに、この薄切片を確実に基板上にすくい取る。
【解決手段】薄切片Mを、薄切片Mが供給される供給ポイントP1から回収ポイントP2まで搬送して基板G上にすくい取る薄切片搬送装置1であって、供給ポイントP1と回収ポイントP2とを通過するように配設された水路2と、水路2内の液体Waを供給ポイントP1から回収ポイントP2に向けて流動させることにより、薄切片Mを回収ポイントP2に向けて搬送する流動手段3と、回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを基板G上にすくい取るすくい取り手段7と、が備えられるとともに 回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mに、流動方向L1の下流側に向けて風を吹き付ける送風手段8が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋されてなる包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、該薄切片が供給される供給ポイントから回収ポイントまで搬送して基板上にすくい取る薄切片搬送装置および薄切片搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の薄切片搬送装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、供給ポイントと回収ポイントとを通過するように配設された水路と、この水路内の液体を供給ポイントから回収ポイントに向けて流動させることにより、薄切片を回収ポイントに向けて搬送する流動手段と、基板を、水路内の液体の流動方向における上流側に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜させた状態で、前記水路内に対して進退可能に保持するすくい取り手段と、が備えられ、基板を、その前記流動方向の上流側に位置する部分を回収ポイントの液中に浸漬させた状態で待機させ、回収ポイントに薄切片が到達したときに、基板を後退移動させることにより、この基板上に薄切片をすくい取る構成が知られている。
【特許文献1】特開2007−178286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の薄切片搬送装置では、すくい取り手段により基板を前記水路内に対して後退移動させた際に、基板上から薄切片が滑り落ちるおそれがあった。
【0004】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、包埋ブロックから作製された薄切片が回収ポイントに到達したときに、この薄切片を確実に基板上にすくい取ることができる薄切片搬送装置および薄切片搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の薄切片搬送装置は、生体試料が包埋されてなる包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、該薄切片が供給される供給ポイントから回収ポイントまで搬送して基板上にすくい取る薄切片搬送装置であって、前記供給ポイントと回収ポイントとを通過するように配設された水路と、この水路内の液体を前記供給ポイントから回収ポイントに向けて流動させることにより、前記薄切片を回収ポイントに向けて搬送する流動手段と、基板を、前記水路内の液体の流動方向における上流側に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜させた状態で、前記水路内に対して進退可能に保持するすくい取り手段と、が備えられ、基板を、その前記流動方向の上流側に位置する部分を前記回収ポイントの液中に浸漬させた状態で待機させ、薄切片が前記回収ポイントに到達したときに、この基板を前記水路内に対して後退移動させることにより、基板上に薄切片をすくい取る構成とされ、前記回収ポイントに搬送されてきた薄切片に、前記流動方向の下流側に向けて風を吹き付ける送風手段が備えられていることを特徴とする。
また、本発明の薄切片搬送方法は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、該薄切片が供給される供給ポイントから回収ポイントまで搬送して基板上にすくい取る薄切片搬送方法であって、本発明の薄切片搬送装置を用いて前記薄切片を搬送し基板上にすくい取ることを特徴とする。
本発明では、回収ポイントに搬送されてきた薄切片に、前記流動方向の下流側に向けて風を吹き付ける送風手段が備えられているので、すくい取り手段により基板を前記水路内に対して後退移動させるのに先立って、送風手段から前記流動方向の下流側に向けた風圧を前記薄切片に作用させることにより、この薄切片の基板上への乗り上げ量を増大することが可能になり、基板を前記水路内に対して後退移動させた際にこの基板上から薄切片が滑り落ちるのを抑制することができる。したがって、包埋ブロックから作製された薄切片が回収ポイントに到達したときに、この薄切片を確実に基板上にすくい取ることができる。
【0006】
ここで、前記すくい取り手段は、前記回収ポイントに薄切片が到達したときに、基板を、少なくともその前記流動方向の上流側の端部は前記回収ポイントの液中に浸漬した状態に保ったまま前記薄切片に向けて押し付けるように移動させ、その後、この基板を前記水路内に対して後退移動させ前記薄切片をすくい取る構成とされてもよい。
この場合、すくい取り手段が、回収ポイントに薄切片が到達したときに、基板を、少なくともその前記流動方向の上流側の端部は前記回収ポイントの液中に浸漬した状態に保ったまま前記薄切片に向けて押し付けるように移動させ、その後、この基板を前記水路内に対して後退移動させ薄切片をすくい取る構成とされているので、基板を前記水路内に対して後退移動させ液中から完全に抜き出す前に、薄切片において基板上に乗り上げた部分に基板を押し付けるようにしてこれらの間に介在している液体を排出し易くすることが可能になり、この介在液量を低減することができる。したがって、基板を前記水路内に対して後退移動させ液中から完全に抜き出す際に、薄切片が基板上から滑り落ちるのを抑制することができる。
【0007】
また、前記すくい取り手段には、前記基板を前記水路内に対して後退移動させ薄切片をすくい取る際に、この薄切片を基板との間で挟み込むクランプ機構が設けられてもよい。
この場合、すくい取り手段にクランプ機構が設けられているので、例えば、薄切片を基板の表面とクランプ機構とによって挟み込んだ状態で、基板を前記水路内に対して後退移動させ液中から抜き出すことが可能になり、薄切片が基板上から滑り落ちるのを確実に抑えることができる。
また、基板を前記水路内に対して後退移動させる前に、クランプ機構で薄切片を基板との間で挟み込み、その後この挟み込みを解除した後に、基板を前記水路内に対して後退移動させるようにしても、薄切片において基板上に乗り上げた部分と基板との間に介在していた液体が、前記クランプ機構による挟み込み時に押し出され、両者を密接させることが可能になるので、薄切片が基板上から滑り落ちるのを確実に抑えることができる。
なお、クランプ機構において薄切片に当接するクランプ部は、疎水性を有するフェルトやスポンジ等の多孔質弾性体で形成されるのが好ましい。
さらに、クランプ部に、下方に向けて突出するクランプ突部を設け、この突部を、例えば当該薄切片搬送装置の上面視において前記流動方向に直交する方向に間隔をあけて複数設けたり、あるいは1つだけ設けたりして、クランプ部で挟み込まれる薄切片の面積を極力小さくするのが好ましい。
これらの場合、クランプ機構を設けたことによって、薄切片が基板上から滑り落ちるのを抑えられる反面、薄切片に大きな負荷が作用して破損し易くなるのを防ぐことができる。
【0008】
さらにまた、この構成において、クランプ機構による薄切片の挟み込みに先立って、送風手段から薄切片に風を吹き付けて、薄切片の基板上への乗り上げ量を大きくした後に、この乗り上げた部分をクランプ部と基板とで挟み込むようにすると、例えば、クランプ部は基板には当接するものの薄切片には届かずにこの薄切片を挟み込めなくなったり、あるいは薄切片において液面に浮かんでいる部分にクランプ部が当接してこの部分を突き破ったりするのを防ぐことが可能になり、このクランプ機構による薄切片の挟み込みを容易かつ確実に実現することができる。
さらに、クランプ機構による薄切片の挟み込みに先立って、基板を前述のように鉛直方向上方に向けて移動させると、薄切片において基板上に乗り上げた部分と基板との間に介在している液体の量を低減できるので、クランプ部が薄切片に当接したときに、この薄切片が例えば前述のように破れたり、あるいは液膜の作用により基板上を滑りこの基板に対する薄切片の載置位置がずれたりするのを防ぐことが可能になるとともに、前述の介在液量をより一層低減することもできる。
【0009】
さらに、前記回収ポイントに到達した薄切片を感知する感知手段と、この感知手段が前記薄切片を感知したときに、この薄切片に前記送風手段から前記流動方向の下流側に向けて風を吹き付ける制御部と、を備えてもよい。
この場合、前記感知手段と制御部とを備えているので、薄切片が回収ポイントに到達したときに限ってこの薄切片に前記流動方向の下流側に向けて風を吹き付けることが可能になり、水路内の液面が波打つのを抑えることができる。したがって、薄切片が供給ポイントから回収ポイントに向けて搬送される過程で、その姿勢が崩れたり、水路内で詰まったりするのを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る薄切片搬送装置および薄切片搬送方法によれば、包埋ブロックから作製された薄切片が回収ポイントに到達したときに、この薄切片を確実に基板上にすくい取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る薄切片搬送装置の一実施形態を、図1から図7を参照して説明する。この薄切片搬送装置1は、生体試料Sが包埋されてなる包埋ブロックBを薄切して作製された薄切片Mを、薄切片Mが供給された供給ポイントP1から回収ポイントP2まで搬送してスライドガラス(基板)G上にすくい取る装置である。
【0012】
まず、包埋ブロックBは、図1(a)に示すように、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによって直方体状に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。なお、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択される。
また、薄切片Mは、この包埋ブロックBを図示しない切断刃によって例えば、3μm〜5μmに薄切することで平面視長方形状に作製されたものである。
【0013】
本実施形態の薄切片搬送装置1は、図2および図3に示すように、供給ポイントP1と回収ポイントP2とを通過するように配設された水路2と、この水路2内の水(液体)Waを供給ポイントP1側から回収ポイントP2側に向けて流動させることにより、薄切片Mを回収ポイントP2に向けて搬送する流動手段3と、回収ポイントP2に到達した薄切片Mをスライドガラス(基板)G上にすくい取るすくい取り手段7と、回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを感知する感知手段4と、スライドガラスGに到達した薄切片Mを検出する検出手段10と、これら各構成部品および後述する各構成部品を総合的に制御する制御部5と、を備えている。
【0014】
図示の例では、包埋ブロックBから薄切された薄切片Mが、無端ベルト6を介して水路2内の搬送ポイントP1まで搬送されるようになっている。この無端ベルト6は、その移送方向の上流側から下流側に向けて下方に向けて傾斜した状態で配置され、その下流側の部分が水路2内に浸漬している。
【0015】
水路2は、後述する回収槽12内に設けられるとともに、図示の例では、その水路幅は、前記流動方向L1の上流端に位置する供給ポイントP1で薄切片Mの対角線の長さよりも大きく、かつ前記流動方向L1の下流端に位置する回収ポイントP2で薄切片Mの短辺の長さと同等となるように、上流側から下流側に向けて漸次狭くなっている。また、水路2の上流端における深さは、この水路2内に浸漬された無端ベルト6の移送方向における下流側の端部が底面に接触しないように局所的に深くなっている。
【0016】
さらにこの水路2は、図3に示すように、その底面2aが回収槽12の底面12aから上方に離れて位置するように設計されている。この回収槽12は、上面視長方形状に形成されており、内側に水路2と、後述する第1貯水槽15および第2貯水槽16とを完全に収容できるサイズに形成されている。また、回収槽12の上端は、水路2の上端よりも上方に位置している。
【0017】
流動手段3は、図2および図3に示すように、供給ポイントP1よりも上流側で水路2に接続された第1貯水槽15と、回収ポイントP2で水路2に接続された第2貯水槽16と、第1貯水槽15に接続され内部を水Waが流れる供給路17と、第2貯水槽16に接続され、内部を水Waが流れる排出路18と、供給路17と排出路18とにそれぞれ接続された貯水タンク19と、供給路17に設けられ第2貯水槽16から第1貯水槽15に向かう方向に水Waを送り出す供給ポンプ20とを備えている。
【0018】
第1貯水槽15は、回収槽12の底面12aと側面12cとの一部分を利用して形成されており、底面12aに形成された給水口15aを介して前記供給路17に接続されている。
また、本実施形態の第1貯水槽15には、第1貯水槽15に溜まった水Waの水位を一定量に規制する蓋部15bが開口を塞ぐように設けられている。そして、第1貯水槽15に供給された水Waが、この蓋部15bの裏面に接触する。
【0019】
また、この蓋部15bは、第1貯水槽15側から水路2側に延出しており、水路2の底面2aの上方にも位置している。そして、これら水路2の底面2aと2つの側面と蓋部15bの裏面とで囲まれるスリット空間P3によって、第1貯水槽15から水路2に流れ込む水Waの流量を絞り込んで一定量に規制することができると共に、水Waの流れを整えることができる。つまり、スリット空間P3は、第1貯水槽15に隣接して設けられ、供給ポイントP1から回収ポイントP2に向けて水Waの流れを整える整流手段の機能を果たしている。
【0020】
第2貯水槽16は、回収槽12の底面12aの一部分を利用して形成されており、仕切り板16aを挟んで2部屋構造になっている。一方の部屋は、回収ポイントP2に位置しており、その内部にすくい取り手段7によって保持されたスライドガラスGが待機している。また、他方の部屋は、底面12aに形成された排水口16bを介して排出路18に接続されている。この第2貯水槽16は、通常時では一方の部屋が水路2を流れてきた水Waで満たされている。また、仕切り板16aを越えて他方の部屋に侵入した水Waが、排水口16bを介して排出路18から排出されている。
【0021】
また、排出路18には、排出路18を閉塞するバルブ25が設けられている。このバルブ25は、制御部5によって制御される。また、バルブ25によって排出路18を閉塞した場合には、水路2内の水位が上昇し、水路2から溢れる。そして、回収槽12がこの溢れた水Waを回収する。この回収槽12の底面12aには、第2貯水槽16と同様に排水口12bが形成されており、排水口12bに回収管路26が接続されている。この回収管路26は、貯水タンク19に接続されている。つまり、回収槽12に溢れ出た水Waは、排水口12bおよび回収管路26を介して貯水タンク19に戻る。
【0022】
感知手段4は、図3に示すように、回収ポイントP2上に配置されており、回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを感知している。この感知手段4は、内部にレーザ光を照射する照射部(不図示)と、回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mで反射したレーザ光を受光する受光部(不図示)とを有しており、反射強度の差から薄切片Mの感知を行う非接触型のセンサである。但し、反射強度の差に限られるものではない。また、非接触型ではなく、接触により感知する接触型でも構わない。
そして感知手段4は、薄切片Mを感知すると、感知信号を制御部5に出力してその旨を知らせる。
【0023】
制御部5は、供給ポイントP1に無端ベルト6によって薄切片Mが搬送されてきてから所定時間以内に感知手段4からの信号を受信し、受信してから一定時間経過後にバルブ25を作動させて、排出路18を閉塞させるように制御を行っている。
さらに制御部5は、供給ポイントP1に無端ベルト6によって薄切片Mが供給されてきてから、所定時間経過してもまだ感知手段4から感知信号が送られてこない場合にも、やはり同様にバルブ25を作動させて排出路18を閉塞させるように制御を行っている。
【0024】
検出手段10は、回収ポイントP2上において感知手段4よりも前記流動方向L1の下流側に配置され、スライドガラスGに到達した薄切片Mを検出している。この検出手段10は、例えばカメラ等の撮像手段であり、撮像データを制御部5に出力している。そして、制御部5が、検出手段10からの撮像データに基づいて、薄切片MがスライドガラスGに到達している、つまり薄切片Mにおいて前記流動方向L1の下流側の端部がスライドガラスG上に乗り上げられているか否かを判断する。
【0025】
すくい取り手段7は、スライドガラスGを、前記流動方向L1の上流側に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜させた状態で、この傾斜方向に沿って水路2内に対して進退可能に保持している。ここで図示の例では、スライドガラスGは平面視長方形状に形成されており、すくい取り手段7は、このスライドガラスGの長手方向を前記流動方向L1に沿って延在させて、前述のように傾斜させた状態で、その前記流動方向L1の下流側に位置する部分を把持している。
【0026】
そして、このすくい取り手段7は、薄切片Mが回収ポイントP2に搬送されてくるまで、スライドガラスGを、その前記流動方向L1の上流側に位置する部分を第2貯水槽16の前記一方の部屋内の水中(回収ポイントP2の液中)に浸漬させた状態で待機させ、薄切片Mが回収ポイントP2に到達したときに、スライドガラスGをその傾斜方向に沿って後退移動させることにより、このスライドガラスG上に薄切片Mをすくい取るように構成されている。なお、すくい取り手段7は、スライドガラスGを把持した状態で、このスライドガラスGを自在に操ることができる例えば多関節ロボット等となっている。
【0027】
さらに本実施形態では、すくい取り手段7は、スライドガラスGを前記傾斜方向のみならず鉛直方向にも移動可能に保持している。そして、すくい取り手段7は、回収ポイントP2に薄切片Mが到達したときに、スライドガラスGを、少なくともその前記流動方向L1の上流側の端部は水中に浸漬した状態に保たれる程度まで鉛直方向上方に向けて移動させ、その後、このスライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させ水中から完全に抜き出して薄切片Mをすくい取るようになっている。このすくい取り手段7の鉛直方向上方に向けた移動は、制御部5が、検出手段10からの撮像データに基づいて薄切片MがスライドガラスGに到達していると判断したときに行われる。
【0028】
そして、本実施形態では、回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mに、前記流動方向L1の下流側に向けて風を吹き付ける送風手段8が備えられている。送風手段8は、水路2の上方において前記流動方向L1における下流側の部分に配置され、この水路2の幅方向における全域にわたって風を吹き付けられるようになっている。なお、この送風手段8からは例えばエア等の気体が前記流動方向L1の下流側に向けて吹き出される。また、本実施形態では、送風手段8による前述の風の吹き付けは、前記制御部5が感知手段4からの感知信号を受信したときから所定時間内に限って行われる。
【0029】
さらにすくい取り手段7には、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させ薄切片Mをすくい取る際に、この薄切片MをスライドガラスGとの間で挟み込むクランプ機構9が設けられている。
クランプ機構9は、すくい取り手段7に取り付けられた基台部9aと、このクランプ機構9において前記流動方向L1の上流側の端部に配置され薄切片MをスライドガラスGとの間で挟み込むクランプ部9bと、基台部9aとクランプ部9bとを連結する連結部9cと、を備えている。
【0030】
クランプ部9bは、連結部9cを介して基台部9aにより前記流動方向L1に沿って移動可能に支持されている。また、クランプ部9bは平面視長方形状の板状体に形成されるとともに、その長手方向が水路2の幅方向に沿って延在させられた状態で設けられている。さらに、このクランプ部9bの表裏面のうち下方を向く裏面において前記流動方向L1の上流側の端部には、その長手方向に間隔をあけて複数のクランプ突部9dが下方に向けて突設されている。さらにまた、このクランプ部9bおよびクランプ突部9dは、疎水性を有するフェルトやスポンジ等の多孔質弾性体で一体に形成されている。また、クランプ部9bの前記流動方向L1における下流側の端部は、その長手方向に沿って延びる軸線を中心に回動可能に支持されている。
【0031】
以上のクランプ機構9は、検出手段10がスライドガラスGに到達した薄切片Mを検出した後に、制御部5によって次のように動作させられる。
すなわち、まず、基台部9aによりクランプ部9bを前記流動方向L1の上流側に向けて前進移動させ、このクランプ部9bをスライドガラスGにその上方から対向させる。その後、クランプ部9bを、前記軸線を中心に下方に向けて回動させて、クランプ突部9dを、薄切片MにおいてスライドガラスG上に乗り上げた部分に当接させることによって、この薄切片Mをクランプ突部9dとスライドガラスGとの間で挟み込み、その後この状態で、スライドガラスGをクランプ機構9とともに前記傾斜方向に沿って後退移動させ、スライドガラスG上に薄切片Mをすくい取るようになっている。
【0032】
次に、以上のように構成された薄切片搬送装置1により、供給ポイントP1から回収ポイントP2まで薄切片Mを搬送し、この薄切片Mをすくい取り手段7によりスライドガラスG上にすくい取る方法について説明する。なお、初期状態として、第1貯水槽15、水路2および第2貯水槽16には、決められた量の水Waが既に満たされた状態となっているものとする。
【0033】
まず初めに、制御部5は、無端ベルト6および供給ポンプ20に信号を出力して両者を作動させる。無端ベルト6は、この信号を受けて切断刃によって薄切された薄切片Mの搬送を開始する。この際、制御部5は、内部タイマのカウントを開始し、感知手段4からの感知信号の受信を待つ待機状態に移行する。一方、供給ポンプ20は、貯水タンク19に貯留されている水Waを、供給路17を介して第1貯水槽15に供給する。供給された水Waは、蓋部15bの裏面に当たって流速や乱流が抑えられた後、スリット空間P3を通過して水路2側に流れ始める。
【0034】
これにより、既に満たされている水Waが供給ポイントP1から回収ポイントP2に向かって一定の速度で流れ始める。そして、無端ベルト6により供給ポイントP1に搬送されてきた薄切片Mは、水Waに浸かることで無端ベルト6から離間して水路2の水面に浮かぶと共に、水Waの流れに沿って移動しはじめる。
なお、水路2を流れた水Waは、第2貯水槽16に溜まった後、排水口16bを介して排出路18を流れ、貯水タンク19に流れる。その後、再び供給ポンプ20によって供給路17を通って第1貯水槽15に流される。このように、供給ポンプ20を作動させることで水Waを循環させることができるので、無駄のない効率的な使用を行うことができる。
【0035】
そして、回収ポイントP2に薄切片Mが流れてくると、感知手段4が薄切片Mを感知して感知信号を制御部5に出力する。制御部5は、感知信号を受信すると、内部タイマのカウントを停止すると共に、その間に要した時間が予め決められた所定時間内であるか否かを判断する。ここで、所定時間内であった場合には、制御部5は薄切片Mが水路2の途中で詰まる等の不具合もなく良好に搬送されてきたと判断し、まず、送風手段8に送風を開始する旨の信号を出力する。
【0036】
この信号を受けた送風手段8は、図4に示されるように、回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mに、前記流動方向L1の下流側に向けて風を吹き付ける。
これにより、すくい取り手段7でスライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させるのに先立って、送風手段8から前記流動方向L1の下流側に向けた風圧を薄切片Mに作用させることにより、この薄切片MのスライドガラスG上への乗り上げ量を増大することが可能になり、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させた際にこのスライドガラスG上から薄切片Mが滑り落ちるのを抑制することができる。
【0037】
また、制御部5と感知手段4とが備えられることによって、薄切片Mが回収ポイントP2に到達したときに限って送風手段8から薄切片Mに前記流動方向L1の下流側に向けて風を吹き付けることが可能になるので、水路2内の液面が波打つのを抑制することができる。したがって、薄切片Mが供給ポイントP1から回収ポイントP2に向けて搬送される過程で、例えばその姿勢が崩れたり、水路2内で詰まったりするのを抑制することもできる。
【0038】
そして、制御部5は、検出手段10からの撮像データに基づいて、薄切片MがスライドガラスGに到達していると判断した場合には、すくい取り手段7に、図5に示されるように、スライドガラスGを、少なくともその前記流動方向L1の上流側の端部は回収ポイントP2の液中に浸漬した状態に保ったまま鉛直方向上方に向けて移動させる旨の信号を出力する。本実施形態では、このようにスライドガラスGを鉛直方向上方に向けて移動させたときにもなお、スライドガラスGは、薄切片Mの前記流動方向L1に沿った長さ(図示の例では薄切片Mの長辺の長さ)程度は水中に漬かっている。また、感知手段4が回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを感知した後から、すくい取り手段7がスライドガラスGを前述のように鉛直方向上方に向けて移動するまでの間は、送風手段8から薄切片Mに前記流動方向L1の下流側に向けて風を継続して吹き付け続ける。
【0039】
これにより、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させ液中から完全に抜き出す前に、薄切片MにおいてスライドガラスG上に乗り上げた部分にスライドガラスGを押し付けるようにしてこれらの間に介在している水Waを排出し易くすることが可能になり、この介在水量を低減することができる。したがって、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させ水中から完全に抜き出す際に、薄切片MがスライドガラスG上から滑り落ちるのを抑制することができる。
さらに本実施形態では、すくい取り手段7がスライドガラスGを前述のように鉛直方向上方に向けて移動するまでの間は、送風手段8から薄切片Mに前記流動方向L1の下流側に向けて風を継続して吹き付け続けるので、送風手段8からの風圧によって薄切片MにおいてスライドガラスG上に乗り上げた部分をさらにスライドガラスG上に押し付けることが可能になり、前述の介在水量をより一層確実に低減することができる。
【0040】
次に、制御部5は、送風手段8に送風を停止する旨の信号を出力するとともに、クランプ機構9には、薄切片MをスライドガラスGとの間で挟み込む旨の信号を出力する。
すなわち、まず、基台部9aによりクランプ部9bを前記流動方向L1の上流側に向けて前進移動させ、図6の二点鎖線で示されるように、クランプ部9bをスライドガラスGにその上方から対向させる。次に、クランプ部9bを、前記軸線を中心に下方に向けて回動させて、クランプ突部9dを、薄切片MにおいてスライドガラスG上に乗り上げた部分に当接させることによって、この薄切片Mをクランプ突部9dとスライドガラスGとの間で挟み込む。
この際、クランプ部9bおよびクランプ突部9dが前述のように疎水性を有する多孔質弾性体で一体に形成されるとともに、薄切片Mに当接するクランプ突部9dが、当該薄切片搬送装置1の上面視において前記流動方向L1に直交する方向に間隔をあけて複数設けられているので、薄切片Mに作用する負荷が抑えられ、この薄切片Mが破損し易くなるのを防ぐことができる。
【0041】
ここで、前述したように、クランプ機構9による薄切片Mの挟み込みに先立って、本実施形態では、送風手段8から薄切片Mに風を吹き付けて、薄切片MのスライドガラスG上への乗り上げ量を大きくした後に、この乗り上げた部分をスライドガラスGとで挟み込むので、例えば、クランプ突部9dはスライドガラスGには当接するものの薄切片Mには届かず、この薄切片Mを挟み込めなくなったり、あるいは薄切片Mにおいて水面に浮かんでいる部分にクランプ突部9dが当接してこの部分を突き破ったりするのを防ぐことが可能になり、クランプ機構9による薄切片Mの挟み込みを容易かつ確実に実現することができる。
さらに、クランプ機構9による薄切片Mの挟み込みに先立って、スライドガラスGを前述のように鉛直方向上方に向けて移動させることにより、薄切片MにおいてスライドガラスG上に乗り上げた部分とスライドガラスGとの間に介在している水Waの量を低減するので、クランプ突部9dが薄切片Mに当接したときに、例えば前述のように破れたり、あるいは水膜の作用によりスライドガラスG上を滑り、このスライドガラスGに対する薄切片Mの載置位置がずれたりするのを防ぐことが可能になるとともに、前述の介在水量をさらに低減することもできる。
【0042】
そして、制御部5は、クランプ突部9dとスライドガラスGとの間で薄切片Mを挟み込んだ状態のまま、すくい取り手段7にスライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動する旨の信号を出力する。
このように、薄切片MをスライドガラスGの表面とクランプ突部9dとで挟み込んだ状態で、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させ水中から抜き出すので、薄切片MがスライドガラスG上から滑り落ちるのを確実に抑えることができる。
以上より、包埋ブロックBから作製された薄切片Mが回収ポイントP2に到達したときに、この薄切片Mを確実にスライドガラスG上にすくい取ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、水Waを利用して薄切片Mを搬送しているので、供給ポイントP1から回収ポイントP2まで搬送する間に、薄切片Mを伸展させることができる。よって、搬送と伸展とを同時に行うことができ、作業効率を高めることができる。
【0044】
また、制御部5は、感知信号を受けてから一定時間が経過した後、薄切片Mのすくい取りが回収ポイントP2で終了したと判断して、バルブ25に作動信号を送る。バルブ25は、この作動信号を受けて排出路18を閉塞する。すると、第2貯水槽16内の水Waが排出路18を通って排出されないので、徐々に水位が上昇する。そして、ついには水路2から水Waが溢れ出す(オーバーフロー)。これにより、先ほど搬送した薄切片Mに付着していた塵埃等を水路2外に排除することができる。
このように、薄切片Mを1枚処理する毎に、水Waを水路2外に溢れさせて塵埃等を排除するので、水路2内の水Waを常に清浄に維持することができる。よって、薄切片Mの詰まりや塵埃等が溜まってしまうことを未然に防止することができる。
【0045】
また、排除された塵埃等は、溢れ出た水Waと共に回収槽12に回収され、排水口12bを介して回収管路26を通った後、貯水タンク19に流れる。また、回収した水Waを、供給ポンプ20によって再度第1貯水槽15に供給することができる。そのため、水Waを無駄にすることなく、有効利用することができる。
【0046】
そして、制御部5は、一定時間上記オーバーフローを行わせた後、バルブ25に再度作動信号を送って、排出路18の閉塞を解除させる。これにより、水位が徐々に減少して再度元の水位となる。その後制御部5は、次の薄切片Mを搬送してくるように無端ベルト6に信号を送って作動させる。そして、上述した動作を繰り返して、次の薄切片Mを回収ポイントP2まで搬送すると共に、スライドガラスG上にすくい取る。これを複数回繰り返すことで、スライドガラスG上に薄切片Mが載置された薄切片標本を必要枚数作製することができる。
【0047】
ここで、上述した薄切片Mの搬送中において、制御部5が内部タイマをカウントし始めてから予め決められた所定時間経過しても、いまだ感知手段4から感知信号が送られて来ない場合には、該制御部5は、搬送中に何らかの不具合が生じたと判断する。例えば、水路2の途中で薄切片Mが詰まったり、薄切片Mが破けたりする等の不具合が生じたと判断する。すると制御部5は、この場合にもバルブ25に作動信号を送って排出路18を閉塞させ、水Waを水路2から溢れ出させる。これにより、不具合が生じた薄切片Mを水Waと一緒に水路2外に排除することができ、次の薄切片Mの搬送に備えることができる。このように搬送途中で薄切片Mに何らかの不具合が生じたとしても、これらの不具合に即座に対応して該不具合を最小限の範囲に抑えることができ、薄切片Mの無駄な消費を抑えることができる。
【0048】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、クランプ部9bに、下方に向けて突出するクランプ突部9dを複数設けたが、1つだけ設けてもよいし、あるいはクランプ部9bの先端部に前記長手方向の全長にわたって延在させてもよいし、さらにはクランプ突部9dは設けなくてもよい。
さらに、前記実施形態では、すくい取り手段7として、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って水路2内に対して進退可能に保持した構成を示したが、これに代えて例えば鉛直方向等に沿って水路2内に対して進退可能に保持させてもよい。
さらにまた、前記実施形態では、すくい取り手段7として、スライドガラスGを水中から完全に抜き出すのに先立って、スライドガラスGを、少なくともその前記流動方向L1の上流側の端部は水中に浸漬した状態に保ったまま薄切片Mに向けて押し付けるように鉛直方向上方に向けて移動させたが、これに代えて例えば、スライドガラスGを前記流動方向L1の上流側に向かう斜め上方や、スライドガラスGをその前記流動方向L1の下流側の端部を中心に上流側の端部が上方に移動するように回動させる等して、スライドガラスGにおいて少なくともその前記流動方向L1の上流側の端部は水中に浸漬した状態に保ったまま薄切片Mに向けて押し付けるようにもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、クランプ機構9が設けられた構成を示したが、このクランプ機構9は設けなくてもよい。さらに、すくい取り手段7として、回収ポイントP2に薄切片Mが到達したときに、スライドガラスGを、少なくともその前記流動方向L1の上流側の端部は回収ポイントP2の水中に浸漬した状態に保たれる程度まで鉛直方向上方に向けて移動させる構成を示したが、送風手段8からの風圧によって薄切片MをスライドガラスG上に乗り上げさせた後に、このスライドガラスGを鉛直方向上方に移動させずに、前記傾斜方向に沿って後退移動させるようにしてもよい。
【0050】
さらにまた、検出手段10は設けずに、制御部5において感知手段4からの感知信号を受信したときから内部タイマのカウントを開始して、予め設定した時間が経過したときに、すくい取り手段7によりスライドガラスGを前述のように鉛直方向上方に向けて移動させるようにしてもよい。
さらに、送風手段8は、薄切片Mが回収ポイントP2に搬送されてきたときに限らず、供給ポイントP1から回収ポイントP2に搬送され、スライドガラスG上にすくい取られるまでの間、常に前記流動方向L1の下流側に向けて風を吹き付けるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、送風手段8として、水路2の幅方向における全域にわたって風を吹き付ける構成を示したが、これに代えて例えば、水路2の幅方向における両端部に限定して風を吹き付けるようにしてもよい。この場合、送風手段8からの風によって水路2内の薄切片Mが回転するのを防ぐことができる。
【0051】
また、前記実施形態では、感知手段4が回収ポイントP2に搬送されてきた薄切片Mを感知した後から、すくい取り手段7によりスライドガラスGを前述のように鉛直方向上方に向けて移動するまでの間は、送風手段8から薄切片Mに前記流動方向L1の下流側に向けて風を継続して吹き付け続けたが、これに代えて、送風手段8からの送風を停止した後に、すくい取り手段7によりスライドガラスGを前述のように鉛直方向上方に向けて移動してもよい。
【0052】
さらに、前記実施形態に代えて、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させる前に、クランプ機構9で薄切片MをスライドガラスGとの間で挟み込み、その後この挟み込みを解除した後に、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させるようにしてもよい。この場合においても、薄切片MにおいてスライドガラスG上に乗り上げた部分とスライドガラスGとの間に介在していた水Waが、クランプ機構9による挟み込み時に押し出され、両者を密接させることが可能になるので、薄切片MがスライドガラスG上から滑り落ちるのを確実に抑えることができる。
【0053】
さらに、前記実施形態に代えて、送風手段8を有さない薄切片搬送装置を採用してもよい。すなわち、すくい取り手段7が、回収ポイントP2に薄切片Mが到達したときに、スライドガラスGを、少なくともその前記流動方向L1の上流側の端部は回収ポイントP2の液中に浸漬した状態に保たれる程度まで鉛直方向上方に向けて移動させた後に、クランプ機構9により薄切片MをスライドガラスGとの間で挟み込み、その後、スライドガラスGを前記傾斜方向に沿って後退移動させて薄切片Mをすくい取るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る薄切片搬送装置で搬送されて基板上にすくい取られる薄切片を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る薄切片搬送装置の一実施形態を示す一部上面図である。
【図3】図2に示す薄切片搬送装置の断面矢視A−A図である。
【図4】図2および図3に示す薄切片搬送装置において、回収ポイントに搬送されてきた薄切片に風を吹き付けている状態を示す概略図であって、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【図5】図2および図3に示す薄切片搬送装置において、回収ポイントに薄切片が到達したときに、スライドガラスを鉛直方向上方に移動させた状態を示す概略図であって、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【図6】図2および図3に示す薄切片搬送装置において、クランプ機構により薄切片を基板との間で挟み込んでいる状態を示す概略図であって、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【図7】図2および図3に示す薄切片搬送装置において、クランプ機構により薄切片を基板との間で挟み込んだ状態でこの基板を水中から抜き出したときの概略図であって、(a)は側面図であり、(b)は上面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 薄切片搬送装置
2 水路
3 流動手段
4 感知手段
5 制御部
7 すくい取り手段
8 送風手段
9 クランプ機構
B 包埋ブロック
G スライドガラス(基板)
L1 流動方向
M 薄切片
P1 供給ポイント
P2 回収ポイント
S 生体試料
Wa 水(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋されてなる包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、該薄切片が供給される供給ポイントから回収ポイントまで搬送して基板上にすくい取る薄切片搬送装置であって、
前記供給ポイントと回収ポイントとを通過するように配設された水路と、
この水路内の液体を前記供給ポイントから回収ポイントに向けて流動させることにより、前記薄切片を回収ポイントに向けて搬送する流動手段と、
基板を、前記水路内の液体の流動方向における上流側に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜させた状態で、前記水路内に対して進退可能に保持するすくい取り手段と、が備えられ、
基板を、その前記流動方向の上流側に位置する部分を前記回収ポイントの液中に浸漬させた状態で待機させ、薄切片が前記回収ポイントに到達したときに、この基板を前記水路内に対して後退移動させることにより、基板上に薄切片をすくい取る構成とされ、
前記回収ポイントに搬送されてきた薄切片に、前記流動方向の下流側に向けて風を吹き付ける送風手段が備えられていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の薄切片搬送装置であって、
前記すくい取り手段は、前記回収ポイントに薄切片が到達したときに、基板を、少なくともその前記流動方向の上流側の端部は前記回収ポイントの液中に浸漬した状態に保ったまま前記薄切片に向けて押し付けるように移動させ、その後、この基板を前記水路内に対して後退移動させ前記薄切片をすくい取る構成とされたことを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の薄切片搬送装置であって、
前記すくい取り手段には、前記基板を前記水路内に対して後退移動させ薄切片をすくい取る際に、この薄切片を基板との間で挟み込むクランプ機構が設けられていることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の薄切片搬送装置であって、
前記回収ポイントに到達した薄切片を感知する感知手段と、この感知手段が前記薄切片を感知したときに、この薄切片に前記送風手段から前記流動方向の下流側に向けて風を吹き付ける制御部と、を備えることを特徴とする薄切片搬送装置。
【請求項5】
生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切して作製された薄切片を、該薄切片が供給される供給ポイントから回収ポイントまで搬送して基板上にすくい取る薄切片搬送方法であって、
請求項1から4のいずれかに記載の薄切片搬送装置を用いて前記薄切片を搬送し基板上にすくい取ることを特徴とする薄切片搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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