説明

薄型電池およびその製造方法

【課題】対向して設けられている外部端子を兼ねる2枚の外装部材の周縁部同士を樹脂で接着して封止する薄型電池であって、接着機能と水分透過抑制機能が共にすぐれ、長期の使用に耐える薄型電池を提供する。
【解決手段】対向して設けられた一方の電極の外部端子を兼ねる第1外装部材と他方の電極の外部端子を兼ねる第2外装部材との間に発電要素が収納され、第1外装部材と第2外装部材の周縁部同士の間に設けられた樹脂により第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されている薄型電池であって、第1外装部材と第2外装部材の周縁部同士を接着する第1樹脂と、第1外装部材と第2外装部材の周縁部からの水分透過を抑制する第2樹脂とにより第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されている薄型電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン(Li)伝導性の固体電解質や非水電解液を用いた薄型電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型薄型化に伴い、電池に対して更なる薄型化が求められている。例えばLi伝導性の固体電解質や非水電解液を用いたリチウム電池においては、従来のガスケットをかしめて封止するシール方式では、厚さが1.4mm程度までしか薄型化することができず、今日求められている充分な薄型化を図ることが困難である。
【0003】
このため、たとえば外装体の構成部材を兼ねる第1外部端子と第2外部端子を対向させ、その周縁端面にポリフェニレンサルファイド製の絶縁封止部材を熱溶着して封止した電池(電気化学素子)が開発されている(例えば、特許文献1)。図3はこのように接着によって封止された薄型電池31の構造の一例を模式的に示す断面図である。外部端子を兼ねる第1外装部材32と第2外装部材33の周縁部同士が、樹脂36を介して接着されることにより封止されている。なお、34は発電要素、35は導電性のバネである。
【0004】
また、封止用の樹脂として、両面に金属接着性樹脂層を設け内部をガスバリア性樹脂層とした3層構造の樹脂(シール材)を用いた薄型電池が開発されている(例えば特許文献2)。図4はこのような薄型電池41の構造を模式的に示す断面図である。図4において第1外装部材42と第2外装部材43の周縁部同士が、金属接着性樹脂層45とガスバリア性樹脂層46の3層構造の樹脂(シール材)47を介して接着されることにより封止されている。なお、44は発電要素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4,390,426号公報
【特許文献2】特開2009−206102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図3に示した単一の封止用の樹脂を用いて封止する方法では、十分な接着機能と水分の封止機能(透過抑制機能)を同時に得ることが困難である。即ち、接着機能が優れる樹脂は、一般的に水素結合する樹脂であるため、水分が透過し易い。一方、封止機能が優れる樹脂は接着機能が充分ではない。このため、長期の使用に耐える薄型電池を作製することが困難であるという問題があった。また、図4に示した3層構造の封止用の樹脂を用いて封止する方法では、接着機能と封止機能のバランスは改善されるものの、封止機能が必ずしも満足できるものではない。
【0007】
そこで、本発明は、対向して設けられている外部端子を兼ねる2枚の外装部材の周縁部同士を樹脂で接着して封止する薄型電池であって、接着機能と封止機能(水分透過抑制機能)が共にすぐれ、長期の使用に耐える薄型電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、薄型電池の封止構造について鋭意検討した結果、上記課題が解決できる手段を見出し本発明を完成させるに至った。以下に、課題を解決するための手段を順次説明する。
【0009】
(1)本発明の薄型電池は、
対向して設けられた一方の電極の外部端子を兼ねる第1外装部材と他方の電極の外部端子を兼ねる第2外装部材との間に発電要素が収納され、前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部同士の間に設けられた樹脂により前記第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されている薄型電池であって、
前記第1外装部材と前記第2外装部材の周縁部同士を接着する第1樹脂と、
前記第1外装部材と前記第2外装部材の周縁部からの水分透過を抑制する第2樹脂と
により前記第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されていることを特徴とする薄型電池である。
【0010】
本発明においては、絶縁のための樹脂として、各々の役割に応じて接着用樹脂と封止用(水分透過抑制用)樹脂を用いて役割分担させているため、各特性を充分に発揮させて、接着機能と封止機能が共に充分に優れ、長期の使用に耐える薄型電池を提供することができる。
【0011】
なお、第1樹脂には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの金属との接着性に優れた樹脂が好ましく用いられる。また、第2樹脂には、ポリアラミド、ポリエチレンナフタレート、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)などの水分透過抑制機能が優れた樹脂が好ましく用いられる。
【0012】
(2)また、本発明の薄型電池は、
前記の薄型電池であって、
前記第2樹脂が、ポリアラミド、ポリエチレンナフタレート、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化エチレンプロピレンのいずれか1種であることを特徴とする。
【0013】
これらの樹脂は、水分透過抑制機能が特に優れているため、水分透過抑制機能に極めて優れた薄型電池を提供することができる。
【0014】
(3)また、本発明の薄型電池は、
前記の薄型電池であって、
前記樹脂の厚さが、5〜100μmであることを特徴とする。
【0015】
接着や封止に必要な樹脂量と、電池の薄型化を考慮した樹脂の最適の厚さは、5〜100μmである。
【0016】
(4)また、本発明の薄型電池は、
前記の薄型電池であって、
前記第1樹脂が、前記第2樹脂の外周部に設けられていることを特徴とする。
【0017】
接着用樹脂を封止用樹脂の外周部に設けることにより、封止機能に優れた薄型電池を提供することができる。
【0018】
(5)本発明の薄型電池の製造方法は、
前記の薄型電池の製造方法であって、
水分透過抑制型の樹脂シートを前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部に貼合わせることにより前記第2樹脂を設けることを特徴とする。
【0019】
水分透過抑制型の樹脂シートを前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部に貼合わせることにより、高価な装置を必要とすることなく、簡易な作業により確実に第2樹脂を設けることができる。
【0020】
(6)また、本発明の薄型電池の製造方法は、
前記の薄型電池の製造方法であって、
接着用樹脂を前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部に、シートとして貼り付け、またはモールドすることにより前記第1樹脂を設けることを特徴とする。
【0021】
接着機能を充分に確保するためには、接着用樹脂を前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部に、シートとして貼り付け、またはモールドすることにより前記第1樹脂を設けることが好ましく、特に、接着用樹脂を前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部にモールド(インサート成形)することにより、前記第1樹脂を設けるため、前記第1外装部材と第2外装部材の対向面だけでなく、前記第1外装部材、第2外装部材の側面にも接着用樹脂を配置することができる。このため、第1外装部材と第2外装部材の対向面間で接着樹脂の塗布ムラ(未塗布箇所の解消)を抑制し安定した接着強度を有することができる。また、第1外装部材と第2外装部材の側面に樹脂を配することにより正負間の接触による短絡が抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、接着機能と封止機能が共に充分優れ、長期の使用に耐える薄型電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態の薄型電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例の薄型電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】従来の薄型電池の構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】従来の薄型電池の構造の他の例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施の形態に基づき図面を用いて説明する。
【0025】
1.薄型電池の構造
(1)概要
はじめに、本発明の薄型電池の構造について説明する。図1は本発明の一実施の形態の薄型電池1の構造を模式的に示す断面図である。図1において、2は一方の電極の外部端子を兼ねる第1外装部材、3は他方の電極の外部端子を兼ねる第2外装部材、4は発電要素、5は導電性を有するバネである。また、8は樹脂であり、接着用の第1樹脂6と封止用の第2樹脂7からなる。なお、図面の理解の便宜上、構成部材間の縮尺は適宜修正されている。
【0026】
第1外装部材2および第2外装部材3は、例えばSUS板製であって、互いに対向して設けられている。第1外装部材2および第2外装部材3の間には、例えばLiと遷移金属の複合酸化物からなる正極とリチウムイオン(Li)伝導性固体電解質と金属Liからなる負極を積層した発電要素4および電導性のバネ5が設けられ、正極と負極はそれぞれ第1外装部材2および第2外装部材3のいずれか一方に接続されている。
【0027】
第1外装部材2と第2外装部材3の周縁部には、樹脂8が設けられており、第1外装部材2と第2外装部材3は絶縁されると共に周縁部同士の間が封止されている。
【0028】
(2)樹脂
樹脂8は、第1外装部材2および第2外装部材3に対する接着機能に優れる例えばエポキシ樹脂などの第1樹脂6と、水分透過量が少なく封止機能に優れる例えばポリアラミドなどの第2樹脂7とからなり、第1樹脂6は、第1外装部材2と第2外装部材3の周縁部を接着し、隣接する第2樹脂は、第1外装部材2と第2外装部材3の周縁部に密着して周縁部同士の間を封止する。
【0029】
このように、樹脂8を、接着機能に優れる第1樹脂6と封止機能に優れる第2樹脂7とで構成させることにより、第1外装部材2と第2外装部材3の接着と封止が共に優れる薄型電池を提供することができる。なお、第1樹脂6の幅は充分な接着強度が得られるように適宜設定され、第2樹脂7の幅は水分透過量が充分に小さくなるように適宜設定される。
【0030】
2.薄型電池の製造方法
(1)発電要素の作製
発電要素の作製には例えばスパッタ法や真空蒸着法などの薄膜の形成に適した気相成長法や粉末を原料とした粉末冶金法を用いる方法が好ましく用いられる。例えば、第2外装部材を基板として、その表面に気相成長法を用いて所定の厚さの正極、固体電解質、負極が順に積層されて発電要素を作製する。
【0031】
(2)第2樹脂の取付け
例えば第1外装部材2の周縁部に第2樹脂として、ポリアラミドやポリエチレンナフタレートのシートを貼合わせることにより第2樹脂7を第1外装部材2に密着した状態で配置する。このように貼合わせを行うことにより、第2樹脂7を対向する第1外装部材と第2外装部材の間にすきま無く配置することができ、このため、より水分透過量を抑制することができる。
【0032】
(3)第1樹脂による接着
第1外装部材2に第2樹脂7を設けた後、第2樹脂の外側の周縁部に例えば第1樹脂としてエポキシ樹脂を充填した後、第1外装部材と第2外装部材を重ね合わせ、重ね合わせた第1外装部材と第2外装部材の周縁部を0.1〜3MPaの加圧下で150℃以上に加熱してエポキシ樹脂を硬化させて第1外装部材と第2外装部材を接着する、あるいは第1樹脂をインサート成形し、金型内温度により硬化させる。このようにして、厚さ0.4〜0.7mm程度の接着機能と封止機能に優れた薄型電池を作成することができる。
【実施例】
【0033】
1、薄型電池の作製
(1)薄型電池の構造と大きさ
(実施例1〜4)
図2は、本実施例の薄型電池21の構造を模式的に示す断面図である。22と23はそれぞれSUS板製の第1外装部材、第2外装部材であり、24は発電要素、27は第1樹脂25と第2樹脂26からなる樹脂の全体部である。
【0034】
薄型電池21は厚さが0.33mm、直径が10mmφの円形であり構成部材の構成と寸法は以下の通りである。なお、第1樹脂および第2樹脂は、表1および表2の実施例1〜4に示す樹脂を用いた。
第1、第2外装部材:SUS板製
厚さ0.15mm、直径16mmφ
発電要素 :正極LiCoO、固体電解質LiS−P合材、
負極Li合金
厚さ0.03mm、直径10mmφ
第1樹脂 :暑さ0.03mm、幅0.25mm
第2樹脂 :厚さ0.03mm、幅0.25mm
【0035】
前記の構成部材を用いて、前記実施の形態に記載した方法で薄型電池を作製した。なお、樹脂の接着は、180℃、1MPaの加圧下で行った。
【0036】
(比較例1)
樹脂27として表1の比較例1に示した第1樹脂を単独で用いたこと以外は、実施例と同じ方法で薄型電池を作製した。
(比較例2、3)
樹脂27として表2の比較例2、3に示した第2樹脂を単独で用いたこと以外は、実施例と同じ方法で薄型電池を作製した。
【0037】
(2)樹脂
イ.第1樹脂
第1樹脂の材質と外装部材に対する接着強度を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、実施例1〜4に用いた第1樹脂は、比較例1に用いた第1樹脂に比べて接着強度が高い。
【0040】
ロ.第2樹脂
第2樹脂の材質と水分透過量を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示すように、実施例1〜4に用いた第2樹脂は、比較例2、3に用いた第2樹脂に比べて水分透過量が少ない。
【0043】
2.薄型電池の性能評価
(1)試験方法
実施例1〜4、比較例1〜3の各電池を、大気雰囲気、室温の下、カットオフ電圧:3.0V〜4.2V、電流密度:0.05mA/cmの条件で充放電サイクル試験を行い、初回の放電容量に対する100サイクル後の放電容量を相対値で表した容量維持率(%)を求めた。
【0044】
(2)試験結果
実施例と比較例の試験結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
表3より実施例1〜4の容量維持率が高いことが分かる。このように実施例の容量維持率が高いのは、第1樹脂と第2樹脂で各役割を分担させることにより、接着機能および封止機能が共に優れているためである。
【0047】
上記したように、本発明によれば長期の使用に耐える薄型電池を作製することができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1、21、31、41 薄型電池
2、22、32、42 第1外装部材
3、23、33、43 第2外装部材
4、24、34。44 発電要素
5、35 バネ
6、25、 第1樹脂
7、26 第2樹脂
8、27、36 樹脂
45 金属接着性樹脂層
46 ガスバリア性樹脂層
47 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して設けられた一方の電極の外部端子を兼ねる第1外装部材と他方の電極の外部端子を兼ねる第2外装部材との間に発電要素が収納され、前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部同士の間に設けられた樹脂により前記第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されている薄型電池であって、
前記第1外装部材と前記第2外装部材の周縁部同士を接着する第1樹脂と、
前記第1外装部材と前記第2外装部材の周縁部からの水分透過を抑制する第2樹脂と
により前記第1外装部材と第2外装部材とが絶縁されていることを特徴とする薄型電池。
【請求項2】
前記第2樹脂が、ポリアラミド、ポリエチレンナフタレート、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化エチレンプロピレンのいずれか1種であることを特徴とする請求項1に記載の薄型電池。
【請求項3】
前記樹脂の厚さが、5〜100μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄型電池。
【請求項4】
前記第1樹脂が、前記第2樹脂の外周部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の薄型電池。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄型電池の製造方法であって、
水分透過抑制型の樹脂シートを前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部に貼合わせることにより前記第2樹脂を設けることを特徴とする薄型電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄型電池の製造方法であって、
接着用樹脂を前記第1外装部材と第2外装部材の周縁部に、シートとして貼り付け、またはモールドすることにより前記第1樹脂を設けることを特徴とする薄型電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−15004(P2012−15004A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151744(P2010−151744)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】