説明

薄板鋼板用熱処理炉

【課題】省スペースで設置でき、しかも連続的に薄板鋼板を加熱処理できる薄板鋼板用熱処理炉を提供する。
【解決手段】内部に加熱空間Sが形成されたドラム体5と、ドラム体5の加熱空間S内に横設された熱風供給用の固定管4と、固定管4の外周で回転される外周に間隔をおいて複数のスリット6a,6a,6aを有する回転円板6を備え、回転円板6の各スリット6aに薄板鋼板を嵌め込み、薄板鋼板を加熱空間S内で熱風により加熱できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の加熱空間内で薄板鋼板を熱風により加熱できるように構成した薄板鋼板用熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板鋼板を加熱して熱間成形するために、従来では薄板鋼板を吊り下げた状態で加熱したり、或いは、平に並べて加熱しており、例えば、特許文献1には、プレス等に送給する鋼板の加熱装置が開示されており、この特許文献1の装置では、加熱された上下のロール間に鋼板を挟み込んで、ロールの回転により鋼板を加熱して送り出すように構成されている。
【特許文献1】実開平7−24468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の装置では、鋼板を加熱しながら送り出すための装置が大型のものとなり、設備ラインが長くなり、設置スペースも増大してしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、省スペース化できてラインが極めて短くなり、しかも良好に薄板鋼板を加熱することのできる薄板鋼板用熱処理炉を提供することを目的の1つとし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の薄板鋼板用熱処理炉は、内部に加熱空間が形成されたドラム体と、該ドラム体の加熱空間内に横設された固定管と、該固定管の外周で回転される外周に間隔をおいて複数のスリットを有する回転円板を備え、該回転円板の各スリットに薄板鋼板を嵌め込み、該薄板鋼板を前記加熱空間内で熱風により加熱できるように構成したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の薄板鋼板用熱処理炉によれば、ドラム体内部の加熱空間内に回転円板が設けられており、この回転円板の外周に形成されているスリットに薄板鋼板を嵌め込んで、回転円板を加熱空間内で回転させることにより、加熱空間内で良好に複数毎の薄板鋼板を加熱することができる。
【0006】
また、本発明の薄板鋼板用熱処理炉において、前記固定管の外周に、前記回転円板を横方向に間隔をおいて複数設け、該複数の回転円板を連結バーで連結した構成とすることもできる。
こうすれば、それぞれ外周にスリットが形成された回転円板が固定管の外周に複数配置されているため、寸法の異なる薄板鋼板でも、複数の回転円板のスリットに嵌め込んで熱処理炉内に保持させることができ、薄板鋼板の寸法に対応させることができる。
【0007】
また、本発明の薄板鋼板用熱処理炉において、前記ドラム体には、横長状に開口した薄板鋼板の投入口と、該投入口に対向する位置に薄板鋼板の取出口が形成されている構成とすることもできる。
こうすれば、横長状に開口した投入口から良好に加熱空間内に薄板鋼板を投入して、内部の回転円板のスリットに薄板鋼板を良好に嵌め込むことができ、回転円板の回転に伴い薄板鋼板が加熱されて良好に取出口から排出させることができるものとなり、連続的に多数の薄板鋼板の加熱処理が可能となる。
【0008】
また、本発明の薄板鋼板用熱処理炉において、前記ドラム体の外側の左右の前記固定管の外周には、それぞれ回転可能に駆動部材が設けられ、該左右の駆動部材には前記連結バーが連結されているとともに、該左右の駆動部材を同期回転させるために、同期用軸を含む歯車動力伝達機構が設けられている構成とすることもできる。
こうすれば、左右に設けた駆動部材が、同期用軸を介在させて同期回転されるため、ドラム体側が加熱されて変形等が生じた時にも、回転円板の回転を安定化させることができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は薄板鋼板用熱処理炉の外観斜視図であり、図2は平面構成図、図3は図2のA−A線断面構成図、図4は図2のB−B線断面構成図、図5は内部を一部透視して示す斜視図であり、図6はA−A線断面に対応する斜視図である。
【0010】
図において、薄板鋼板用熱処理炉1は、床面に載置されるベース2の左右端側に立設された一対の支持柱3a,3bを備え、この左右の支持柱3a,3bの上端側に掛け渡し状に固定管4が横設固定されている。
この固定管4の外周には、横方向に間隔をおいて複数枚の回転円板6,6,6が回転可能に設けられている。また、この回転円板6および固定管4は、ドラム体5で外周を包囲されており、このドラム体5内に薄板鋼板を加熱するための加熱空間Sが形成されている。
【0011】
このドラム体5には横長状に切り欠いて投入口5aが形成され、この投入口5aと対向する側に、投入口5aよりも低い位置に横長状に取出口5bが形成されており、この取出口5bの外側に、加熱された薄板鋼板Pを取り出す取出台13が配置されている。
ドラム体5は、左右側に側壁を有する円筒状の外板51の内側に断熱材52が設けられて、この断熱材52の内周側に加熱空間Sが形成されたものである。
この加熱空間S内に横設された前記固定管4は円筒状に形成されており、その左右両端側はドラム体5から外側へ突出して、左右両端側には、熱風を固定管4内に送り込むための熱風入口4a,4aが開口形成されている。
【0012】
この固定管4のドラム体5内の部分には、外周側に多数の孔4b,4bが貫通形成されており、この孔4bから熱風を加熱空間S内に噴出させることができるものである。この固定管4の熱風を噴き出す孔4bを跨ぐようにして、前記複数枚の回転円板6が固定管4の外周に配置されており、孔4bから噴き出される熱風は、一対の回転円板6と回転円板6の間から過熱空間S内に噴き出されるように構成されている。
【0013】
なお、図6に示すように、固定管4の外周に固定側セラミック41の層が形成されており、この固定側セラミック41の外側に回転可能に回転側セラミック61の層が設けられ、この回転側セラミック61の外周に、それぞれ回転円板6,6,6が配置されて、各回転円板6は固定管4の外周でそれぞれ回転できるように構成されている。
この複数の回転円板6,6,6は、固定管4と平行状に設けられた複数本の連結バー7で連結されており、各回転円板6は、外周に15度間隔で複数のスリット6a,6a,6aが形成されたものであり、連結バー7により、各回転円板6のスリット6aの位置が整合されて、複数の回転円板6が同時に同一方向へ回転できるように連結されている。
【0014】
この各回転円板6の外周に多数形成されているスリット6a内に薄板鋼板Pを嵌め込むことができるものであり、薄板鋼板Pは、例えば厚さが2mm程度で、300mm×1200mm程度の寸法を有するものであり、この薄板鋼板Pを、ロボットを用いたり、或いは手作業で、投入口5aから加熱空間S内に投入して、薄板鋼板Pを回転円板6のスリット6aに嵌め込むことができるように構成されている。
【0015】
なお、薄板鋼板Pの寸法の異なるものを加熱する場合においても、回転円板6,6,6が複数間隔をおいて配置されているため、寸法の異なる薄板鋼板Pでも良好に複数の回転円板6のスリット6aに嵌め込んで保持させることができるものである。
なお、薄板鋼板Pは加熱空間S内で加熱されて、複数の回転円板6の回転に伴い取出口5b側に回転されてゆき、取出口5bから取り出されるものであり、このように薄板鋼板Pは加熱処理されて、その後にプレス成形等の工程に回されるものである。
【0016】
次に、複数の回転円板6を回転させるための歯車動力伝達機構10について説明する。
ドラム体5の外側の固定管4の左右の外周には、それぞれギヤ8a,8bが回転可能に設けられており、この左右のギヤ8a,8bには、連結バー7がそれぞれ連結されて、複数の回転円板6,6と連結されている。
左右のギヤ8a,8bは、それぞれ下方に設けられたギヤ10cに噛合されており、ギヤ10cは支持柱3a,3bに設けられたギヤ軸12cに回転可能に支持されている。このギヤ10cは下方側のギヤ10bに噛合されており、このギヤ10bは同期用軸11に設けられたものであり、同期用軸11は左右の支持柱3a,3bの下部部位間に回転可能に設けられたものである。
【0017】
また、図示右側の支持柱3bの外側には、モータ9が設けられており、このモータ9の回転軸のギヤ9aは、ギヤ10aに噛合されており、このギヤ10aはギヤ軸12aで支持されて、支持柱3bの内側のギヤ10aに連繋されており、モータ9が回転されるとギヤ9aの回転によりギヤ10aが回転し、これによりギヤ10b,ギヤ10cを介しギヤ8a,8bが回転されるように構成されている。
即ち、同期用軸11を介して左右側にそれぞれギヤ10b,10cが配置されていることで、ギヤ8a,8bは同期回転されるものであり、ドラム体5側が加熱されて変形したような時にも、同期回転により複数の回転円板6の回転が安定化するように構成されている。
【0018】
このようにドラム体5の左右に配置された複数のギヤで構成される歯車動力伝達機構10により、左右のギヤ8a,8bが同期回転されて、安定して複数枚の回転円板6が固定管4の外周で回転されるものであり、歯車動力伝達機構10により良好にモータ9の回転が減速され、設計した所定回転速度で回転円板6が回転されるものである。なお、回転円板6の回転速度は、適宜変更制御できるように構成されている。
【0019】
このような構成の薄板鋼板用熱処理炉1においては、投入口5aから薄板鋼板Pを投入して回転円板6の複数のスリット6aに次々と嵌め込むことができ、スリット6aの数が多く形成されているため、多数枚の薄板鋼板Pを嵌め込んで、加熱空間S内に複数枚の薄板鋼板Pを同時に配置させることができ、回転円板6の回転により複数の薄板鋼板Pを同時に加熱することができ、順次、取出口5bから排出させることができて、連続的に薄板鋼板Pを加熱処理することができるものである。しかも、ドラム体5は円筒形状であり、コンパクトな形状となっており、狭いスペース内にもコンパクトに設置することができて、省スペース化を図ることができ、工場内のラインを短くすることができるものとなる。
【0020】
なお、本例において、固定管4の外周側の孔4bから熱風を加熱空間S内に噴出させることができるものとしているが、さらに、ドラム体5の円周や側方向より、熱風の供給が可能となるように構成しても良い。
また、本例において、ドラム体5の左右に配置された複数のギヤで構成される歯車動力伝達機構10により、左右のギヤ8a,8bが同期回転されるものとしているが、チェーン駆動式等の動力伝達機構で構成しても良い。
また、本例において、ドラム体5に横長状に投入口5aが形成され、この投入口5aと対向する側に、投入口5aよりも低い位置に横長状に取出口5bが形成されたものとしているが、この投入口5aと取出口5bは設計変更による設定で任意に調整できるものである。さらに、薄板鋼板Pの取り出し方法については、自動落下、ロボット使用等の方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】薄板鋼板用熱処理炉の外観斜視図である。
【図2】薄板鋼板用熱処理炉の平面構成図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】薄板鋼板用熱処理炉の内部を一部透視して示す斜視図である。
【図6】A−A線断面に対応する斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 薄板鋼板用熱処理炉
2 ベース
3a,3b 支持柱
4 固定管
4a 熱風入口
4b 孔
5 ドラム体
5a 投入口
5b 取出口
6 回転円板
6a スリット
7 連結バー
8a,8b ギヤ(駆動部材)
9 モータ
9a,10a,10b,10c ギヤ
10 歯車動力伝達機構
11 同期用軸
12a,12c ギヤ軸
41 固定側セラミック
51 外板
52 断熱材
61 回転側セラミック
P 薄板鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱空間が形成されたドラム体と、該ドラム体の加熱空間内に横設された固定管と、該固定管の外周で回転される外周に間隔をおいて複数のスリットを有する回転円板を備え、該回転円板の各スリットに薄板鋼板を嵌め込み、該薄板鋼板を前記加熱空間内で熱風により加熱できるように構成したことを特徴とする薄板鋼板用熱処理炉。
【請求項2】
前記固定管の外周に、前記回転円板を横方向に間隔をおいて複数設け、該複数の回転円板を連結バーで連結したことを特徴とする請求項1に記載の薄板鋼板用熱処理炉。
【請求項3】
前記ドラム体には、横長状に開口した薄板鋼板の投入口と、該投入口に対向する位置に薄板鋼板の取出口が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄板鋼板用熱処理炉。
【請求項4】
前記ドラム体の外側の左右の前記固定管の外周には、それぞれ回転可能に駆動部材が設けられ、該左右の駆動部材には前記連結バーが連結されているとともに、該左右の駆動部材を同期回転させるために、同期用軸を含む歯車動力伝達機構が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の薄板鋼板用熱処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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