説明

薄物の位置決め用孔形成方法、及び薄物の位置決め用孔形成装置

【課題】パンチャーに対して刷版を容易にセットすることができ、位置決め孔の形成位置を高精度に定めることができるパンチャーを提供する。
【解決手段】上記課題を解決するためのパンチャー10は、ベース12とテーブル14、前記ベース12に備えられた少なくとも2つの基準ピン20a,20b、及びパンチャーヘッド30(30a〜30d)を有する。そして、このような構成を基本とするパンチャー10は、前記ベース12の板面に対して垂直に設けられた刷版押さえ面を有する刷版押さえ手段60を備えること、及び前記基準ピン20a,20bと前記刷版押さえ手段60との距離を、孔開け対象とする矩形状の刷版の一端に形成された基準孔から前記一端に対向する他端までの長さよりも短く設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄物の位置決め用孔形成方法、及び装置に係り、特に、印刷用の刷版であって、剛性の低い樹脂フィルムの刷版等に対して位置決め用の孔を形成する場合に好適な薄物の位置決め用孔形成方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷工程で用いられ、高い精度で位置決めされることを必要とする薄物は、印刷用の刷版の他、印刷用焼付原板などがある。平板印刷版(刷版)には、アルミニウム等の金属で構成された薄板のPS版や、プラスチックフィルム等で構成された印刷版などがある。刷版は、印刷時の色分けに従って同様な絵柄が複数回刷られるため、個々の刷版を基準位置(例えば版胴)に対して高精度に位置合わせをする必要がある。このため、一般に刷版には、版胴に取付けるための位置決め孔や切欠きが多数設けられている。具体的に説明すると、刷版には最初、印刷機の使用に対応させた位置決め孔を形成するための基準となる基準孔(切欠きを含む)が、刷版に絵柄等を形成するイメージセッター等によって形成される。基準孔は角型やU字型など種々の形状のものがあり、通常は、刷版の一端に2つ以上の基準孔が形成される。そして、位置決め孔は、前記基準孔を基準としてパンチャーと呼ばれる装置にて形成される。パンチャーには、前記基準孔に対応した位置にピン(基準ピン)が設けられており、刷版のセットは、この基準ピンに対して刷版の一端に設けられた基準孔を宛がい、基準孔を設けた端部の反対側に位置する端部を押すことで、基準ピンに対して2つ以上の基準孔を均等に押し付けて位置決めを図ることで成され、この状態で位置決め孔の形成が行われる。
【0003】
ところが、樹脂フィルム等の金属以外の部材で構成された刷版は、PS版に比べて剛性が低く、刷版自体の形状成形の精度も低いため、基準ピンに対して基準孔を均等な力で押し当てることが困難とされてきた。そこで、樹脂フィルム等で構成された刷版に対して高い精度で基準孔を形成する方法が提案され、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている技術は、樹脂フィルム等で構成された刷版の剛性を擬似的に高めるというものであり、樹脂フィルム等で構成された刷版を金属板で構成された支持板に重ねた状態でパンチャーにセットして位置決め用の孔を形成するというものである。
【特許文献1】特開2004−82471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術を実施した場合には、刷版に対する位置決め用孔の形成精度は向上する可能性があると考えられる。しかし、特許文献1の技術を実施する際には、刷版の大きさ、パンチャーの種類、基準孔の位置等それぞれに応じた多くの支持板を予め用意しておく必要があり、使用の統一化が困難な印刷機器にて実施するには現実的でない。また、特許文献1に開示された技術では、支持板に刷版をセットする際の精度出しという点が開示されていないため、この点で精度が悪い場合には位置決め用孔の形成精度を向上させることができなくなってしまう。
【0005】
そこで本発明では、使用に応じた支持板を用意する必要なく、装置に対して刷版を容易にセットすることができ、位置決め孔の形成位置を高精度に定めることができる薄物の位置決め用孔形成方法、及び薄物の位置決め用孔形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る薄物の位置決め用孔形成方法は、薄物の載置領域に少なくとも2つの基準ピンを備える位置決め用孔形成装置を用いて矩形状に形成された薄物に位置決め用の孔を形成する方法であって、薄物の一端に形成された基準孔を前記基準ピンに嵌合させ、前記薄物の前記一端に対向する他端を前記一端側へ押し付けて前記薄物を撓ませてこの状態を保持し、薄物に対して位置決め用の孔を形成することを特徴とする。このような方法によれば、薄物を撓ませることにより薄物自体に弾性エネルギーが蓄えられ、この状態を保持することにより、薄物は前記弾性エネルギーによって基準ピンに基準孔を押し付けることとなる。ここで、薄物は、弾性エネルギーを均等に分散させようとするため、複数の基準ピンに対して各基準孔を押し付ける力は均等なものとなる。
【0007】
また、上記のような薄物の位置決め用孔形成方法では、撓ませた薄物の状態保持は薄物の他端側を押さえることによって実行し、他端側の押さえ位置を、前記基準ピンの中間点とすることが望ましい。このような方法を採ることにより、基準ピンに対する基準孔の押し付け力の均等化の精度を向上させることができる。
【0008】
また、薄物の押さえは、薄物に対して点接触、あるいは線接触で行うようにすることが望ましい。このような方法を採用することにより、基準ピン以外の部位と薄物が接触することを減らすこができるため、押し付け力(薄物に蓄積された弾性エネルギー)が基準ピン以外に分散されることがなくなり、押し付け力の均等化の精度を向上させることができる。
【0009】
また、上記のような薄物の位置決め用孔形成方法では、前記薄物は前記他端側に撓み部を形成し、前記一端側の浮き上がりを防止するようにすることが望ましい。このような方法を採用することにより、撓みによって蓄積した弾性エネルギーを直接基準ピンに伝達することができ、押し付け力のバランスが崩れるおそれが無くなる。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明に係る薄物の位置決め用孔形成装置は、板状に形成された薄物の載置領域、前記薄物の載置領域に備えられた少なくとも2つの基準ピン、及びパンチャーヘッドを有する薄物の位置決め用孔形成装置であって、前記薄物の載置領域の板面に対して垂直に、かつ前記基準ピンに対向する位置に、薄物押さえ面を有する薄物押さえ手段を備え、前記基準ピンと前記薄物押さえ手段との距離を、孔開け対象とする矩形状の薄物の一端に形成された基準孔から前記一端に対向する他端までの長さよりも短く設定したことを特徴とするものである。このような薄物の位置決め用孔形成装置によれば、基準ピンと薄物押さえ手段までの距離を、薄物の一端に形成された基準孔から前記一端に対向する他端までの長さよりも短く設定したことより、薄物を載置領域にセットする際には、薄物に撓みを持たせた状態とすることができる。このため、薄物自体に弾性エネルギーを蓄えさせることができ、薄物は自己に蓄えられた弾性エネルギーによって基準ピンに基準孔を押し付けることとなる。ここで、薄物は、弾性エネルギーを均等に分散させようとするため、複数の基準ピンに対して各基準孔を押し付ける力は均等なものとなる。
【0011】
また、上記構成の薄物の位置決め用孔形成装置では、前記薄物押さえ手段を、少なくとも2つ備える基準ピンの中間点に配置することが望ましい。薄物押さえ手段の配置位置を上記のようにすることで、薄物を押さえる際のバランスをとることができる。
【0012】
また、上記のような構成の薄物の位置決め用孔形成装置では、前記薄物押さえ手段の押さえ面の形状を円弧状とし、薄物に対して点接触、あるいは高さ方向の線接触をするようにすると良い。このような構成とすることにより、薄物を押さえる際のバランスをより高い精度でとることが可能となる。
【0013】
また、上記のような特徴を有する薄物の位置決め用孔形成装置において、前記薄物の載置領域には、薄物の前記一端側が浮き上がることを防止する浮き上がり防止手段を備えるようにすると良い。このような構成とすることにより、薄物を基準ピンに対して安定して押し付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
上記特徴を持つ薄物の位置決め用孔形成方法によれば、薄物の位置決め用孔形成装置に対して薄物を容易にセットすることができ、位置決め孔の形成位置を高精度に定めることができる。また、孔形成をする際に、薄物に対して支持板を備えるという行為も無いため、当然に、これらの支持板を用意する必要も無い。
また上記特徴を持つ薄物の位置決め用孔形成装置によれば、上記方法を実施することができ、その作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の刷版の位置決め用孔形成方法、及び刷版の位置決め用孔形成装置に係る実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明に係る一部の実施形態であり、本発明は、以下の実施形態のみに拘束されるものでは無い。
まず、図4を参照して、本発明の薄物の位置決め用孔形成装置(以下パンチャーという)10(図1参照)を用いて位置決め孔を形成する薄物について説明する。本実施形態で取り扱う薄物としては、金属等で構成されるPS版、紙版、APR樹脂版等の印刷機用刷版の他、台紙、フィルム、印画紙等の印刷用焼付け原板などを挙げることができる。本実施形態では、特に、APR樹脂版等の樹脂フィルムによって構成された刷版を例に挙げて説明をすることとする。本実施形態で取り扱う刷版100は、図4に示すように、矩形形状をしており、厚さは0.15〜0.3mm程度としている。このような構成の刷版100は、いずれかの端部に2つの基準孔(図4では切欠き)102a,102bが形成されている。以下、刷版100については、基準孔102(102a,102b)が形成されている端部を先端部という。なお、図4においては、基準孔102を、U字型と角型の切欠きとしたが、丸孔や楕円孔など設定により種々の孔が形成されることがある。本実施形態のパンチャー10は、このような構成の刷版100に対して、図4に示すような位置決め用孔104を形成するための装置である。
【0016】
次に、図1を参照して、本実施形態に係るパンチャー10について説明する。なお、図1にて図1(A)はパンチャーの平面、同図(B)はパンチャーの側面図である。本実施形態のパンチャー10は、ベース12、テーブル14、及び前記ベース12に備えられた基準ピン20a,20b、及びパンチャーヘッド30a〜30dを有することを基本構成とする。また、本実施形態のパンチャー10には、刷版押さえ手段60と、浮き上がり防止手段70a,70bとが備えられている。
【0017】
前記テーブル14は、位置決め用孔104を形成する刷版100を載置するための役割を担い、基本形状は矩形とされている。前記ベース12及び前記テーブル14は、テーブルステー16に固定されており、当該テーブルステー16の一部には、前記ベース12及び前記テーブル14テーブルの水平、あるいは傾斜を調整するためのアジャスタ手段18が備えられており、任意の高さ調整、水平調整、傾斜調整を可能としている。また、本実施形態のベース12には、複数の凹陥部16a,16b(図2,図3参照)が形成されており、上記基準ピン20(20a,20b)やパンチャーヘッド30(30a〜30d)等を任意の位置に埋め込んで固定することが可能な構成としている。また、前記ベース12及び前記テーブル14における刷版100をセットするための領域、すなわち基準ピン20から刷版押さえ手段60までの距離は、セットされる刷版100の先端部に設けられた基準孔102から後端部までの長さよりも短くなるように構成される。
【0018】
前記基準ピン20は、刷版100に設けられた基準孔102に宛がわれる(嵌め合わされる)ピンであり、本実施形態では、ベース12の幅方向の中心を基点として左右対称な位置に一対、すなわち2本のピンが設けられている。詳細な構成は、図2に示すようなものである。なお、図2において、図2(A)は基準ピン20の構成を示す平面図であり、図2(B)は同図(A)におけるA−A断面を示す図である。図2において、基準ピン本体22は、アジャスタプレート24に立設されており、アジャスタプレート24はベース12に設けられた凹陥部16aに嵌め込まれている。ここで、前記ベース12は、パンチャーヘッドベース12a及びベースカバー12bより構成されており、前記凹陥部16aは前記パンチャーヘッドベース12aに設けられた凹陥部、及び前記ベースカバー12bに設けられた切欠き部とより構成され、全体として長穴形状を構成する。
【0019】
前記アジャスタプレート24には長孔26、及び凹陥部24b、穿孔24aが形成されている。前記ベースカバー12bには、前記凹陥部16aの長手方向両端部に向けて形成された貫通孔12c、貫通孔12dが設けられており、前記貫通孔12c、貫通孔12dにはネジ溝が形成されている。また、前記パンチャーヘッドベース12aには、前記アジャスタプレート24を固定するためのネジ孔12eが形成されている。
【0020】
このような構成のアジャスタプレート24、パンチャーヘッドベース12a、ベースカバー12bでは、前記貫通孔12dに弦巻バネ25bを配置すると共に弦巻バネ25bの先端部を前記アジャスタプレート24に設けられた穿孔24aに挿入する。前記弦巻バネ25bの後端側には前記貫通孔12dのネジ溝に螺号するネジ25aを配置し、弦巻バネ25bの後端部を押圧することによりアジャスタプレート24を図2中右方向へ押し付ける力をかける。前記貫通孔16aには、当該貫通孔16aに形成されたネジ溝に螺号するネジ25cを配置し、ネジ25cの先端部をアジャスタプレート24に設けられた凹陥部24bに接触させ、前記ネジ25cのねじ込み量を調整することにより、前記アジャスタプレート24の位置決めを行う。位置決め後のアジャスタプレート24は、パンチャーヘッドベース12aに形成されたネジ孔12e,12eに螺号されるボルト26,26にて固定される。なお、前記パンチャーヘッドベース12a及びベースカバー12bに形成された凹陥部(長孔)16aの長手方向の幅は、アジャスタプレート24の長手方向の幅に比べて大きく形成されているため、前記アジャスタプレート24の配置位置を調整することができる。
【0021】
前記パンチャーヘッド30は、前述した基準ピン20(正確には基準ピン本体22)に合わせてセットされた刷版100に対して、位置決め用孔104を形成するための手段であり、本実施形態のパンチャーヘッド30は、1つのパンチャー10に対して複数(図1では4つ)配設されている。複数のパンチャーヘッド30a〜30dは、それぞれ個別に作動可能とすることもできるが、本実施形態の場合、長尺の回転軸50によってそれぞれ連結され、当該回転軸50を介して連動して作動する構成としている。回転軸50には、少なくとも1つの駆動レバー52が備えられ、当該駆動レバー52を回動させることによりパンチャーヘッド30が作動するように構成している。
【0022】
具体的構成は、図3に示すような構成である。すなわち、パンチャーヘッド30は、パンチャーヘッド本体32と、当該パンチャーヘッド本体32のシリンダ部32aに設けられるピストン40と、前記ピストン40に連接された孔開け用のピン42とを有する。前記パンチャーヘッド本体32は、大別してベース部32cと、固定部32b、及びシリンダ部32aとより構成される。また、前記固定部32bと前記シリンダ部32aとの間には、位置決め用孔104の形成対象となる刷版100を挿入するための切欠き溝33が形成されている。ここで、前記ベース部32cは、パンチャー10のベースカバー12bに設けられた凹陥部16bに埋め込まれる部分であり、パンチャーヘッド30のズレを防止する作用を担う。また、前記固定部32bは、パンチャーヘッド30をパンチャーヘッドベース12aに固定するための貫通孔34を有し、当該貫通孔34に貫通させたボルト48によってパンチャーヘッド本体32をパンチャーヘッドベース12aに固定する作用を担う。そして、前記シリンダ部32aは、前記ピストン40及びピン42を有し、刷版100に位置決め用孔104を形成する作用を担う。なお、前記パンチャーヘッドベース12aには、貫通孔13が設けられ、刷版100に位置決め用孔104を形成した際に生じる切片が排出される構成となっている。
【0023】
前記シリンダ部32aの詳細な構成は次のようなものである。すなわち、パンチャーヘッド本体32の上部から切欠き溝33にかけて貫通する連通孔であるシリンダ孔36とピン孔38を有する。また、シリンダ部32aには、前記シリンダ孔36の形成軸方向に直交する方向に貫通して形成された回転軸50の軸受孔50bが設けられる。前記シリンダ孔36と前記軸受孔50bとは、孔の一部を互いに共有する構成としている。このような構成のシリンダ部32aに対し、前記ピストン40と前記ピン42、及び前記回転軸50がそれぞれ配置される。配置形態としては、シリンダ孔36に対してピストン40が、ピン孔38に対してピン42が、それぞれ摺動自在に配置され、軸受孔50bに回転軸50が配置されるというものである。ここで、ピストン40と回転軸50とは互いに干渉するため、ピストン40には干渉を避けるための切欠き部40aと、回転軸50の駆動力を得るための噛合い突起40bとを設け、回転軸50には、前記噛合い突起40bと噛合うための噛合い溝50aを形成した。このような構成とすることにより、回転軸50が図中反時計回りに回転することにより、ピストン40が下方へ押し下げられることとなる。このような構成のパンチャーヘッド本体32において、切欠き溝33とピン42との関係は、回転軸50の駆動力を受けてピストン40が降下した際、ピストン40が下死点に達するまでの間に、ピン42がピン孔38から突出し、ベース部32cに設けた逃げ孔44に達する間隔と長さに設定すると良い。
【0024】
このような構成のパンチャーヘッド本体32には、押し下げられたピストン40を定常位置にまで引き上げるためのピストン引き上げ手段46が備えられている。ピストン引き上げ手段46は、パンチャーヘッド本体32のシリンダ孔36上部に配設され、外殻を成す筒体46dと、当該筒体46d内部を摺動自在としたバネ座46aと、前記バネ座46aとパンチャーヘッド本体32上部との間に配置された圧縮弾性体(例えば弦巻バネ)46b、及び前記バネ座46aと前記ピストン40とを連結するロッド46cとから成る。
【0025】
パンチャーヘッド30を上記構成としたことにより、回転軸50の駆動力を受けてピストン40が降下する際、当該ピストン40に連結されたバネ座46aも降下する。バネ座46aの降下に伴い、パンチャーヘッド本体32とバネ座46aとの間に配置された弦巻バネ46bが圧縮される。この状態で、回転軸50に付与されていた駆動力を解除すると、ピストン40が降下する力よりも弦巻バネ46bに蓄えられた弾性エネルギーが勝ることとなり、バネ座46aが引き上げられることに連動してピストン40が定常位置に引き上げられる。なお、上記説明においては、ピストン40の切欠き部40aには、噛合い突起40bを形成し、回転軸50には噛合い溝50aを形成すると記載したが、ピストン40の切欠き部40aにラックギヤ(不図示)を形成し、回転軸50には当該ラックギヤに噛合うギヤ(不図示)を形成し、ラックアンドピニオン方式でパンチャーヘッド30を駆動させる構成としても良い。
【0026】
前記刷版押さえ手段60は、前記2つの基準ピン20a,20bの中間点、すなわちベース12にセットする刷版100の幅方向の中心点に設けられ、刷版100に形成された基準孔102a,102bを前記2つの基準ピン20a,20bに宛がった状態で押し付け力を付与するための手段である。本実施形態の刷版押さえ手段60における押さえ部64は、その断面形状を半円形状(蒲鉾形)としており、点接触あるいは線接触にて刷版100を抑える構成としている。
【0027】
刷版押さえ手段60の具体的構成を図5に示す。刷版押さえ手段60は、水平プレート62bと垂直プレート62a、及び押さえ部64とより成る。前記水平プレート62b及び垂直プレート62aには、図示しない部分も含め長孔66が形成されており、ボルト68により固定する構成とすることにより、水平プレート62b及び垂直プレート62aの配置位置、及び垂直プレート62aに固定される押さえ部64の固定位置を調整可能な構成としている。
【0028】
上述したように、本実施形態のパンチャー10におけるベース12及びテーブルから成る刷版100を載置するための領域、すなわち基準ピン20から刷版押さえ手段60までの距離が、位置決め用孔形成対象とする刷版100の先端部に形成された基準孔102から後端部までの長さよりも短く設定されているため、刷版100のセットは、図6に示すように刷版100の後端部を湾曲状に撓ませることによって成される。このような状態でセットされた刷版100と刷版押さえ手段60とは、幅方向の一点、あるいは高さ方向の一直線にて接触することとなる。撓み状態でセットされた刷版100には、弾性エネルギーが蓄積され、平坦な状態に戻ろうとする力が働く。この力は、基準ピン20a,20bと刷版押さえ手段60とによって制限された領域では、基準ピン20a,20bに対して基準孔102a,102bを押し付ける押し付け力として作用することとなる。そして、刷版押さえ手段60は、刷版100を幅方向の中心の一点、あるいは高さ方向の一直線にて押さえているため、撓み部106に蓄積された弾性エネルギーは、自動調芯作用により、支持点である2つの基準ピン20a,20bと刷版押さえ手段60との間に均等に分散して作用することとなるのである。すなわち、2つの基準ピン20a,20bと刷版押さえ手段60とに作用する押し付け力が略均等となり、刷版100に形成された基準孔102a,102bを基準ピン20a,20bに対して均等な力割合で押し付けることができるのである。
【0029】
前記浮き上がり防止手段70a,70bは、後端部を撓ませてテーブル14にセットした刷版100の先端部が、後端部の撓みの影響を受けてテーブル14から浮き上がることを防止するための手段である。具体的構成としては、テーブル14の上面に、刷版100を挟み込む複数のガイドロール74を設ける構成である。ガイドロール74の配置位置は、刷版100をテーブル14にセットした際に、刷版100の先端部側半分程度を押さえることができる位置であれば良く、テーブル14とガイドロール74との間隔は、刷版100の厚さよりもわずかに広い間隔として、刷版100がテーブル14に沿って摺動することを妨げないように配置すると良い。また、ガイドロール74はテーブル14やテーブルステー16に対して固定ブロック72を介して設置されるようにすれば良い。このような構成とすることにより、テーブル14にセットされた刷版100の先端部側がテーブル14から浮き上がるおそれがなくなる。刷版100の先端部側が浮き上がらないため、撓みによって生成された基準ピン20に対する押し付け力を的確に伝達することができるようになる。また、このような構成の浮き上がり防止手段70(70a,70b)のガイドロール74は回転式としても良い。ガイドロール74を回転式とすることにより、刷版100を、よりスムーズにセットすることが可能となる。
【0030】
上記構成を有するパンチャー10を用いて、刷版100に位置決め用孔104を形成する場合は、次のような工程を経る。まず、位置決め用孔形成対象となる刷版100の先端部を、ガイドロール74とテーブル14との間に通してベース12に配置したパンチャーヘッド30の切欠き溝33近傍まで押し進める。その後、刷版100の先端部に設けられた2つの基準孔102をベース12に設けられた2つの基準ピン20にそれぞれ宛がい、刷版100の先端部側のセットを終了する。
【0031】
刷版100の先端部に設けられた基準孔102から後端部までの長さは、ベース12に設けられた基準ピン20から刷版押さえ手段60までの距離よりも長いため、刷版100の後端部は図6に示すように湾曲状に撓ませてセットする。刷版100の後端部を撓ませてベースにセットする際には、刷版100の後端部の少なくとも一部が、刷版押さえ手段60の押さえ部64と平行になるようにし、刷版押さえ手段60の押さえ部64が刷版100に対して線接触するようにセットすると良い。
【0032】
上記のようにして刷版100をパンチャー10にセットした後、回転軸50に備えられた駆動レバー52を図中(例えば図6)反時計回りに回動させることにより、回転軸50も同様な方向に回転する。回転軸50の回転に伴ってパンチャーヘッド30のシリンダ部32aに配置されたピストン40が押し下げられる。ピストン40が押し下げられることに伴い、ピストン40に連結されたピン42も押し下げられ、ピン42はピン孔38から突出し、パンチャーヘッド30の切欠き溝33に挿入されている刷版100を貫き、刷版100に位置決め用孔104を形成する。駆動レバー52を介してピストン40及びピン42を下死点まで押し下げた後、駆動レバー52を開放することで、引き上げ手段46に蓄えられた弾性エネルギー(バネエネルギー)によってピストン40及びピン42が定常位置にまで引き上げられる。
この後、刷版100をベース12から取り外すことにより、刷版100に対する位置決め用孔104の形成を終了する。
【0033】
上記のようにして刷版100に対して位置決め用孔104を形成することによれば、まず、刷版100の後端部を撓ませ、刷版押さえ手段60と刷版100とが線接触するようにしてセットしているため、刷版100の撓み部106に蓄えられた弾性エネルギーにより自動調芯作用が生じ、刷版100の先端部に設けられた2つの基準孔102a,102bが、ベース12に設けられた2つの基準ピン20a,20bに均等な力で押し当てられることとなる。また、ガイドロール74によって刷版100の先端部側を押さえているため、刷版100の先端部側が撓み部106の影響を受けてベース12から浮き上がるおそれが無い。このため、撓み部106から基準ピン20へ向けて伝達される押し付け力が減衰されることなく刷版100の先端部へ伝達されることとなり、基準ピン20に対する押し付け力の均等化の精度を向上させることができる。
【0034】
上記実施形態においては、刷版押さえ手段60における押さえ部64の断面形状は蒲鉾形と説明したが、刷版との接触面が点接触、線接触、あるいは小さくなるような形状であれば、押さえ部の形状は、図7に示すように、先端側の辺の長さを短くした台形状(図6(A))60aや、三角形の頂点にRを付けた形状(図6(B))60b等、種々の形状であって良い。より好適な条件としては、刷版100と接触する部分に設ける円弧の曲率を小さくし、刷版100との接触面積を減らすようにすることを挙げることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、刷版100の後端部を撓ます際、図6にて、刷版100の後端部を一端、上方へ引き上げ、その後に下方へ向けて下ろすという形で撓み部106を形成するように記載したが、刷版後端部の撓ませ方法はこれに限定するものでは無い。例えば、図8に示すように、刷版押さえ手段60の上端部、すなわち垂直プレート62aの上端部に止め板62cを設ければ、刷版100の後端部を単に上へ引き上げる状体でセットした場合であっても、刷版後端部に撓み部106aを形成したこととなる。また、ベース12の基準ピン20と刷版押さえ手段60との距離に対して、刷版100の先端部に形成された基準孔102から後端部までの長さが相当に長い場合には、撓み部106,106aを葛篭折状にしても良い。ただし、折部は折り跡が付かぬよう、湾曲状とする。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記実施形態では特に、構成部材を樹脂フィルムとする刷版を対象として説明したが、金属で構成された刷版や、印刷用焼付原板などに対する基準孔の形成にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の薄物の位置決め用孔形成装置の概要を示す図である。
【図2】図1に示す薄物の位置決め用孔形成装置における基準ピンの構成を示す図である。
【図3】図1に示す薄物の位置決め用孔形成装置におけるパンチャーヘッドの構成を示す図である。
【図4】図1に示す薄物の位置決め用孔形成装置にて位置決め用孔を形成する薄物の例を示す図である。
【図5】図1に示す薄物の位置決め用孔形成装置における刷版押さえ手段の構成を示す図である。
【図6】薄物の位置決め用孔形成装置に対して薄物をセットした状態、及び装置と薄物との長さ比を模式的に示す図である。
【図7】図1に示す薄物の位置決め用孔形成装置における薄物押さえ手段の断面形状の例を示す図である。
【図8】薄物の位置決め用孔形成装置に対して薄物をセットする場合における他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10………パンチャー(薄物の位置決め用孔形成装置)、12………ベース、14………テーブル、16………テーブルステー、18………アジャスタ手段、20(20a,20b)………基準ピン、22………基準ピン本体、24………アジャスタプレート、30(30a〜30d)………パンチャーヘッド、32………パンチャーヘッド本体、33………切欠き溝、40………ピストン、42………ピン、46………引き上げ手段、50………回転軸、52………駆動レバー、60………刷版押さえ手段、70(70a,70b)………浮き上がり防止手段、74………ガイドロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄物の載置領域に少なくとも2つの基準ピンを備える位置決め用孔形成装置を用いて矩形状に形成された薄物に位置決め用の孔を形成する方法であって、
薄物の一端に形成された基準孔を前記基準ピンに嵌合させ、
前記薄物の前記一端に対向する他端を前記一端側へ押し付けて前記薄物を撓ませてこの状態を保持し、
薄物に対して位置決め用の孔を形成することを特徴とする薄物の位置決め用孔形成方法。
【請求項2】
撓ませた薄物の状態保持は薄物の他端側を押さえることによって実行し、他端側の押さえ位置を、前記基準ピンの中間点としたことを特徴とする請求項1に記載の薄物の位置決め用孔形成方法。
【請求項3】
薄物の押さえは、薄物に対して点接触、あるいは線接触で行うことを特徴とする請求項2に記載の薄物の位置決め用孔形成方法。
【請求項4】
前記薄物は前記他端側に撓み部を形成し、前記一端側の浮き上がりを防止するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の薄物の位置決め用孔形成方法。
【請求項5】
板状に形成された薄物の載置領域、前記薄物の載置領域に備えられた少なくとも2つの基準ピン、及びパンチャーヘッドを有する薄物の位置決め用孔形成装置であって、
前記薄物の載置領域の板面に対して垂直に、かつ前記基準ピンに対向する位置に、薄物押さえ面を有する薄物押さえ手段を備え、
前記基準ピンと前記薄物押さえ手段との距離を、孔開け対象とする矩形状の薄物の一端に形成された基準孔から前記一端に対向する他端までの長さよりも短く設定したことを特徴とする薄物の位置決め用孔形成装置。
【請求項6】
前記薄物押さえ手段を、少なくとも2つ備える基準ピンの中間点に配置したことを特徴とする請求項5に記載の薄物の位置決め用孔形成装置。
【請求項7】
前記薄物押さえ手段の押さえ面の形状を円弧状とし、薄物に対して点接触、あるいは高さ方向の線接触をするようにしたことを特徴とする請求項6に記載の薄物の位置決め用孔形成装置。
【請求項8】
前記薄物の載置領域には、薄物の前記一端側が浮き上がることを防止する浮き上がり防止手段を備えたことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1に記載の薄物の位置決め用孔形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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