説明

薄着色ロジンエステルおよび接着性組成物

【課題】薄着色エステル化生成物を含む接着性組成物を提供すること。
【解決手段】ロジンと少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分とから調製される、薄着色エステル化生成物であって、但し、該ヒドロキシル基は、該部分において少なくとも4個の炭素原子によって隔てられている、薄着色エステル化生成物。好ましくは、この生成物は不均化反応を受けており、脱水素反応を受けておらず、2.5未満のGardner値の色を有し、抗酸化剤またはUV安定剤のような安定剤を含み、および/または少なくとも3のGardner値の色を有する原料ロジンから調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ロジンエステル、およびロジンエステルを含む接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ロジンおよび多価アルコール(ポリオール)のエステルは、一般にロジンエステルと呼ばれ、70年にわたって公知である。例えば、Symmesの特許文献1を参照のこと。それらは、典型的には、ロジン(C20三環式モノカルボン酸異性体の混合物)のペンタエリスリトールのような多価アルコール(本明細書中以下において「ポリオール」)との反応によって調製される。ロジンエステルは現在、包装のための粘着付与剤および感圧性接着剤などを含む多くの用途、および化粧品処方物における広範囲な商業的使用が見出されている。
【0003】
多くの用途において、ロジンエステルの色は、その商業的実行可能性を決定する特性である。ロジンエステルの色合いは、典型的にはGardner色尺度で測定され、Gardner色がゼロの場合は無色であり、そしてGardner色が15の場合は赤茶色である。市場が、色が薄いロジンエステルにプレミアムを置き、非常に黒ずんだ色のエステルを受け入れない。しかし、薄着色ロジンエステルは、調製および維持するのが困難であり、そして/または高価である。初めに薄く着色され、かつ延長貯蔵期間および/または特定の最終製品へのその処方の間にエステルが供され得る加熱プロセスの間に、この薄い色合いを維持するロジンエステルを製造することに、相当な量の研究が指向されている。例えば、Webbらの特許文献2;Glennらの特許文献3およびMaedaらの特許文献4を参照のこと。これらは代表的なものに過ぎない。Maedaらの’920特許(特許文献4)は、原料ロジンおよび/または最終ロジンエステルの大規模な精製、不均化反応および脱水素反応を通して1以下のGardner色を有するロジンエステルを生成することが可能(しかし、実際には、おそらく高コスト)であることを開示する。
【0004】
相当な量の研究にも関わらず、当該分野において、薄着色(light−colored)ロジンエステルを得る低コストな(cost−effective)方法が要求されるままである。本発明は、この要求を満たし、そして本明細書中で説明されるような関連する利点を提供する。
【特許文献1】米国特許第1,696,337号明細書
【特許文献2】米国特許第2,409,173号明細書
【特許文献3】米国特許第3,423,389号明細書
【特許文献4】米国特許第5,395,920号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
1局面において、本発明は、ロジンと、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分との薄着色エステル化生成物を提供し、但し、これらのヒドロキシル基は少なくとも4個の炭素原子によって部分に分けられる。好ましい実施態様において、この生成物は不均化反応を受けており、脱水素反応を受けておらず、2.5未満のGardner値の色を有し、抗酸化剤またはUV安定剤のような安定剤を含み、および/または少なくとも3のGardner値の色を有する原料ロジンから調製される。
【0006】
本発明の別の局面は、ポリマー、およびそれらの改質剤として上記のようにロジンと少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分との薄着色エステル化生成物を含む接着性組成物を提供する。
【0007】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明を参照すれば明らかとなる。この目的のために、明確さおよび完全性を目的のために特定の引用文献が本明細書中に引用される。このような引用文献は、本明細書中で全体を通して参考として援用される。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
(項目1) ロジンと少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分とから調製される、薄着色エステル化生成物であって、但し、該ヒドロキシル基は、該部分において少なくとも4個の炭素原子によって隔てられている、薄着色エステル化生成物。
(項目2) 不均化反応を受けた、項目1に記載の生成物。
(項目3) 脱水素反応を受けていない、項目1に記載の生成物。
(項目4) 前記ロジンが、少なくとも3のGardner値の色を有する、項目1に記載の生成物。
(項目5) 前記ロジンが、2.5未満のGardner値の色を有する、項目1に記載の生成物。
(項目6) 前記ロジンが、0.5と2.5未満との間のGardner値の色を有する、項目5に記載の生成物。
(項目7) 以下の式を有する項目1に記載の生成物であって:
【化1】


ここで、Rは、4〜36個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素部分であり、そしてロジンは、樹脂酸部分である、生成物。
(項目8) 項目7に記載の生成物であって、ここで、Rが、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分である、生成物。
(項目9) 1,4−シクロヘキサンジメタノールから調製される項目8に記載の生成物であって、該生成物は、以下の式を有し:
【化2】


ここで、ロジンが樹脂酸部分を示す、生成物。
(項目10) 前記炭化水素部分が、40個未満の炭素原子を含む、項目1に記載の生成物。
(項目11) 前記少なくとも2個のヒドロキシル基を含む炭化水素部分が、1,4−ブタンジオールである、項目1に記載の生成物。
(項目12) 前記少なくとも2個のヒドロキシル基を含む炭化水素部分が、1,6−ヘキサンジオールである、項目1に記載の生成物。
(項目13) 前記少なくとも2個のヒドロキシル基を含む炭化水素部分が、ダイマージオールである、項目1に記載の生成物。
(項目14) 項目1に記載の生成物であって、該生成物が、ホスフィン酸の存在下で加熱することによって、前記少なくとも2個のヒドロキシル基を含む炭化水素部分でロジンをエステル化することによって形成される、生成物。
(項目15) 項目1に記載の生成物であって、該生成物が、ホスホン酸塩の存在下で加熱することによって、前記少なくとも2個のヒドロキシル基を含む炭化水素部分でロジンをエステル化することによって形成される、生成物。
(項目16) 項目1に記載の生成物であって、該生成物が、フェノールスルフィド化合物の存在下で加熱することによって、前記少なくとも2個のヒドロキシル基を含む炭化水素部分でロジンをエステル化することによって形成される、生成物。
(項目17) ポリマーおよび、そのための改質剤として項目1に記載の前記ロジンエステル化生成物を含む、接着性組成物。
(項目18) 項目17に記載の接着性組成物であって、ここで、前記接着性ポリマーが、以下:
エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンn−ブチルアクリレートコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、ポリエステル、ネオプレン、ウレタン、ポリ(アクリレート)、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリエーテルケトン、ポリアミド、スチレンブロックコポリマー、水素付加スチレンブロックコポリマー、ランダムスチレンコポリマー、アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ポリエステルコポリマー、天然ゴム、ポリエステル、イソプレン、およびEPDM、
からなる群から選択される、組成物。
(項目19) 項目17に記載の接着性組成物であって、該組成物が、以下:
ワックス、プロセス油、脂環式炭化水素樹脂、C5炭化水素樹脂、C5−C9炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、およびロジンとポリオールのエステルであって、該ポリオールのヒドロキシル基が、4個未満の炭素原子によって隔てられている点で特徴付けられる、エステル
からなる群から選択される添加剤をさらに含む、組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ロジンと少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分とのエステル化生成物に関する。本発明はまた、これらのロジンエステルを含む接着性組成物に関する。ロジンエステルが少なくとも4個の炭素原子によって分離されるエステル基を有する場合、このエステルは非常に薄い色を有し、接着処方物における粘着付与剤として非常に優れた性能特性を有することが、驚くことに発見された。
【0009】
ロジンは、主として、ピマリン酸およびアビエチン酸に代表されるC20三環式縮合環モノカルボン酸の混合物であり、これらは、通常「ロジン酸」と呼ばれる。本発明での使用に適切なロジンは、多くの原料から得られ得、そして広範囲な純度を有し得る。例えば、ウッドロジンが本発明に使用され得、ここでウッドロジンは、松の切り株を収穫し、この切り株を小片に削り、この小片をヘキサンまたは高沸点パラフィンで抽出し、そしてウッドロジンを得るためにこのヘキサンまたはパラフィンを蒸留する工程の後に、得られる。ガムロジンは、松の木を刻み、滲出樹液を採集し、次いで揮発性成分から蒸留する工程の後に得られるロジンにつけられた名称であり、これはまた、本発明において使用され得る。
【0010】
このロジンは、トール油ロジンであり得、これは、紙を製造するためのクラフト(すなわち、硫酸塩)パルプ化プロセスの副生成物である。このプロセスに従って、松の木はアルカリおよびスルフィドで消化され、副生成物としてトール油石鹸および粗硫酸塩テルビンを生成する。この石鹸の酸性化後の粗トール油の分留は、トール油ロジンおよび脂肪酸を生成する。ロジン中に存在する任意の1つ以上のC20環式カルボン酸含有異性体は、本発明で使用され得る。
【0011】
その原料にも関わらず、ロジンは典型的にはその酸価によって特徴付けられ、本発明によれば、約160〜約195の範囲の酸価を有するロジンが好ましい。ロジンはまた、そのGardner色によって特徴付けられ得、Gardner色数が低いほどより薄く着色したロジンを示す。薄着色ロジンは、粘着付与剤の調製に好ましい。しかし、本発明が商業的実行可能性を有するためには、ロジンが大規模な精製プロセスまたは改質プロセスに供されないことが好ましく、これらのプロセスはロジンエステルを生成するためのプロセスに必然的にコストを加える。従って、好ましい実施態様において、ロジンは、海軍軍需品の多くの商業的蒸留器から容易に入手可能である、「標準」グレードロジンである。この標準グレードロジンは、本発明のエステル化反応での使用の前に不均化反応プロセスまたは脱水素化反応プロセスに供されていない。さらに、標準グレードのロジンはまた、不純物を除去するための再蒸留手順(すなわち、粗トール油から蒸留によってすでに単離された後のロジンのさらなる蒸留)、再結晶手順または抽出手順のような任意の特別な精製手順を経ていない。その代わりに、本発明の好ましいロジンは、粗トール油の蒸留の際に製造される標準グレードのロジンであり、多くの供給元から入手可能である。このような「標準グレード」ロジンは、少なくとも3、より典型的には少なくとも4、そしてさらにより典型的には少なくとも5のGardner値の色を有する。1実施態様において、本発明は、エステル化反応容器に充填されたロジンの色と少なくとも同程度に薄い色を有するロジンエステルを提供し、そして典型的には、原料ロジンよりも、少なくとも1、少なくとも1.5または少なくとも2のGardner値単位だけ、色が薄いロジンエステルを提供する。
【0012】
本発明の重要な利点は、それが標準グレードロジンから薄く着色しかつ低臭のロジンエステルを提供することである。当然のことながら、所望される場合、精製したロジンはまた、本発明に使用され得る。脱水素化ロジンが本発明に使用され、そしてこのロジンが粗トール油に由来する場合、全ての触媒がトール油ロジンに存在する硫黄体によって失活されないために、脱水素化を達成するために、トール油ロジンは実質的により高い触媒レベル(例えば、ガムまたは木ロジンと比較して)を要求する。
【0013】
好ましい標準グレードのロジンは、UNI−TOL(登録商標)商標でUnion Camp Corporation(Wayne,NJ)から市販される。IndonesianおよびChineseガムロジンを含むガムロジンは、本発明のロジンエステルを調製するための別の適切なロジンであり、ガムロジンは等量のトール油ロジンを使用して得られ得る高融点ロジンエステルを与え得るが、トール油ロジンから得られ得る色の薄さを提供し得ない。
【0014】
本発明のエステル化生成物は、上記のようなロジンおよびポリオールから調製され、ここでポリオールは少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分であり、ここでそれらのヒドロキシル基は、少なくとも4個の炭素原子によって互いに分離される。本明細書中で使用されるように、炭化水素部分は、単に水素および炭素からなり、そして芳香族または脂肪族のいずれかであり得る。炭化水素は、環式(ここで、環式炭化水素は芳香族または脂肪族のいずれかであり得る)または非環式であり得、ここで、この非環式炭化水素は、脂肪族であり、直鎖または分枝、飽和または不飽和、あるいはそれらの任意の組み合わせのいずれかであり得る。芳香族は、(4n+2)π電子(n=1、2、3など)を含む任意の共役した環式ポリエンをいう。飽和炭化水素は、任意の二重または三重炭素−炭素結合を含まず、すなわち付加によって物質を吸収できない。不飽和炭化水素は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むか、または少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む。
【0015】
上記のように、芳香族または脂肪族の炭化水素部分は、少なくとも2個のヒドロキシル基を含む。さらに、ヒドロキシル基の全ては、少なくとも4個の炭素原子によって互いに分離され、そして本発明の1実施態様では、少なくとも6個の原子によって互いに分離される。炭化水素部分が環式である場合、任意の2個のヒドロキシル基を分離するための1より多くの経路の炭素原子が観察され得る。このような状況において、2個のヒドロキシル基を分離する最少数の炭素原子をカウントする必要があり、そしてこの炭化水素部分が本発明のエステル化生成物を提供するために、その最少数は4個以上でなければならない。
【0016】
本発明は、予期外に、薄い着色ロジンエステルが少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリオールから調製され得るという驚くべき発見に関し、ここで、全てのヒドロキシル基は、少なくとも4個の炭素原子によって互いに分離され、そして本発明の1実施態様では、少なくとも6個の炭素原子によって互いに分離される。エステル化生成物を調製するために使用されるポリオールの炭化水素部分は、必ず少なくとも4個の炭素原子を含み、そして本発明の1実施態様では、少なくとも6個の炭素原子を含む。従って、厳密に4個の炭素原子を含む1,4−ブタンジオールは、本発明で使用され得る最小のポリオールである。このポリオールは、約40個程度の炭素原子を含み得る。好ましいポリオールは、ダイマージオールとして公知であり、36個の炭素原子を含み、そしてダイマー酸の還元生成物である。ダイマージオールは、例えば、Unichema International,Chicago、ILからPRIPLASTTM2033として市販される。
【0017】
1実施態様において、ポリオールは4〜10個の炭素原子を含む。この範囲内の炭素数を有する適切なポリオールは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオールを含む。4〜10個の炭素原子を有する別のポリオールは、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、これは、Chemical Abstract Registry Number105−08−8を有する。1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび他のC4−C10ポリオールは、例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee.WI)から入手可能である。
【0018】
このポリオールは芳香環を含み得る。例えば、本発明のエステル化生成物を調製するための適切なポリオールは、1,4−(CH2OH)2Arであり、ここでArは、ベンゼン核を表し、そして2個のメチロール基(CH2OH)2は、ベンゼン環の周りにパラの関係で配置される。
【0019】
好ましい実施態様において、原料ロジンまたはそのエステル化生成物は、不均化反応を経て本発明の生成物を提供する。不均化反応は、ロジンエステル化分野で通常使用される公知の不均化反応触媒によって容易に達成される。例示的な不均化反応触媒として、炭素担持ロジウム、炭素担持白金、および炭素担持パラジウムのような支持金属触媒が挙げられるが、これらに限定されない。金属粉末はまた、不均化反応触媒として作用し得、ここで例示的な金属粉末として、白金、ニッケル、ヨウ素、およびヨウ化鉄のようなヨウ化金属が挙げられるが、これらに限定されない。これらの不均化反応触媒は、多くの市販供給元(例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI))から容易に入手可能である。それらは、ロジンとポリオールの総重量に対して0.01〜5重量%の濃度で典型的に使用され、好ましくは、0.01〜1重量%の濃度で使用される。
【0020】
好ましい不均化反応触媒は、フェノールスルフィド化合物である。好ましいフェノールスルフィド化合物は、以下の式:
【0021】
【化3】


を有し、ここでアリール基はフェニルまたはナフチルであり得、R1、R2およびR3は、同じかまたは異なり得、炭化水素(ヒドロカルビルとしても公知である)基であり、ここで「a」および「b」は、独立して0、1または2であり、そしてここで「c」は0と20との間の整数である。好ましいフェノールスルフィド化合物は、アミルフェノールジスルフィドポリマー(CAS Registry No.68555−98−6)であり、ここでこのようなポリマーは、Elf Atochem North America,Inc.,Philadelphia,PAからVULTACTM2として入手可能である。代表的には、アミルフェノールジスルフィドポリマーは、ロジンおよびポリオールの総重量に基づき約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度でロジンおよびポリオールに加えられる。好ましくは、エステル化反応を開始する前に、フェノールスルフィド化合物が溶融ロジンに加えられるが、それは後の段階で加えられ得る。このフェノールスルフィド化合物は、ロジンエステルに対して酸化安定性を与え、そしてロジンエステルの形成の間に幾らかの漂白を与えると考えられる。
【0022】
本発明の薄着色エステル化生成物(すなわち、ロジンエステル)は、好ましくは、脱水素反応に供されていない。脱水素反応は、別の原子の置換なしに、ロジンエステルからの水素の除去をいう。別の原子の同時付加がない水素の除去は、炭素−炭素単結合から炭素−炭素二重結合の形成を生じる。ロジンまたはロジンエステルが上昇温度で脱水素触媒に供される場合、脱水素反応が生じる。
【0023】
本発明のロジンエステルを形成するために使用されるロジンは、好ましくは「標準グレード」であるが、このロジンはエステル化反応の間、インサイチュで安定化し得る。本明細書中で使用されるように、「安定化」は、ロジン、またはロジンエステルのロジン部分の化学修飾をいい、これは得られるロジンエステルに向上した熱または酸化安定性を付与する。安定化の例として、不均化反応、水素付加および脱水素反応が挙げられる。上記のように、本発明のロジンエステル化生成物は、好ましくは不均化反応を経るが、好ましくは、さらなる脱水素反応または水素付加反応を経ない。
【0024】
1つ以上の様々な添加剤および触媒が、ロジンエステル化反応の間に存在し得る。1つの有用な添加剤は、ヒンダード(hindered)フェニルホスホネートまたはジフェニルホスホネートのカルシウム塩またはマグネシウム塩(本明細書以下において「ホスホン酸塩」)のような金属塩であり、これは反応物(ロジンおよびポリオール)に加えられ得る。これらのホスホネートは、例えば、米国特許第3,310,575号に記載される。好ましいホスホン酸塩は、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)からIRGANOXTM1425として市販される、カルシウムビスモノエチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)ホスホネート(65140−91−2)である。約0.1重量%〜約0.5重量%、および好ましくは約0.15重量%〜約0.25重量%のホスホン酸塩が反応物に加えられ得、ここで、ここのおよびこの開示全体を通しての重量%の値は、反応容器に加えられるロジンおよびポリオールの合わせた重量に基づく。
【0025】
別の有用なリン含有添加剤は、式(R−O−)3−Pを有し、ここでRは独立してC1−C22ヒドロカルビルラジカルである。この一般式の例示的なリン含有添加剤として、トリフェニルホスフィト、トリス(ノニルフェニル)ホスフィト、フェニルジイソデシルホスフィトなどのようなホスフィト化合物が挙げられるが、これらに限定されない。ホスフィン酸は、別の有用な添加剤であり、そして式H2P(O)OHによって表され、ここでホスフィン酸は市販される。ホスフィン酸は別の有用な添加剤である。リン酸は別の有用な添加剤である。このようなリン含有添加剤は、代表的には、ロジンおよびポリオールの総重量に基づいて0.01〜1重量%で使用される。リン含有物質は、必要に応じて、VULTACTM2と組み合わせて、本発明のエステル反応を触媒するために使用され得る。
【0026】
本発明の1実施態様において、本エステル化生成物は、以下の式を有し:
【0027】
【化4】


ここで、Rは、4〜36個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族の炭化水素部分を示し、そして「ロジン」は、樹脂酸(例えば、アビエチン酸またはその安定化形態)のラジカルを示し、この樹脂酸は、樹脂酸の特徴であるカルボン酸の後の除去を残している。さらなる実施態様において、Rは、4〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分である。この脂肪族炭化水素は、環式であってもまたは非環式であっても良く、ここで、この非環式部分は、直鎖であってもまたは分枝であっても良く、そしてこの部分は環式部分および非環式部分の両方を含み得る。本エステル化生成物は、都合良く、ロジン、および4〜36個の炭素原子を有する二価ポリオール(すなわち、厳密に2個のヒドロキシル基を有する、ジオール)から作製される。別の実施態様において、三価ポリオール(すなわち、厳密に3個のヒドロキシル基を有する、トリオール)(例えば、1,3,5−ベンゼントリメタノール、1,2,4−ベンゼントリメタノール、1,3,5−シクロヘキサントリメタノール、および1,2,4−シクロヘキサトリメタノール)が使用され得る。
【0028】
別の実施態様において、本エステル化生成物は、以下の式を有し:
【0029】
【化5】


ここで「R」は、特定のC8脂環式部分である。本エステル化生成物は、都合良く、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびロジンから調製される。
【0030】
本発明は、薄着色ロジンエステルを提供し、これは、好ましくは、標準グレードの(すなわち、精製していない)ロジンから調製される。1実施態様において、本エステル化生成物(すなわち、ロジンエステル)は、2.5未満のGardener値の色を有する。さらなる実施態様において、本エステル化生成物は、0.5と2.5未満との間のGardener値を有する。さらなる実施態様において、本エステル化生成物は、2.0未満のGardener値を有し、そしてさらなる実施態様において、0.5と2.0未満との間のGardener値を有する。
【0031】
1実施態様において、本発明は、以下を含有する接着性組成物を提供する:ポリマー、ならびにその改質剤として、上記で定義されるロジンおよび少なくとも2個のヒドロキシル基を含む芳香族または脂肪族炭化水素部分のエステル化生成物。このポリマーはまた、エラストマーまたは接着性ポリマー成分としていわれ得る。このポリマーは、接着的安定なポリマーであるべきであり、ここで、これは、本発明のロジンエステルと共に処方され得、その結果、接着性特性を有する組成物を提供する。接着剤の調製のために適切であると当該分野において認識されるポリマーは、本発明の接着性組成物に適切なポリマーである。
【0032】
適切な接着性ポリマーには、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イソプレンベースブロックコポリマー、ブタジエンベースブロックコポリマー、水素付加ブロックコポリマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリエステル、ポリエステルベースコポリマー、ネオプレン、ウレタン、ポリ(アクリレート)、アクリレートコポリマー(エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンn−ブチルアクリレートコポリマー、およびエチレンメチルアクリレートコポリマー)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、スチレンブロックコポリマー、水素付加スチレンブロックコポリマー、ランダムスチレンコポリマー、エチレン−プロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリエステルコポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリビニルアセテート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、およびアタクチックポリプロピレンを含むポリプロピレン)、ならびにEPDM。
【0033】
本発明の接着性組成物の好ましいポリマーには、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレンn−ブチルアクリレートコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、ポリエステル、ネオプレン、ウレタン、ポリ(アクリレート)、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、スチレンブロックコポリマー、水素付加スチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、ポリエステルコポリマー、天然ゴム、ポリエステル、イソプレン、およびEPDM。典型的には、本発明の接着性組成物の好ましいポリマーは、本発明のロジンエステルと適合性であり、ここで、適合性は、不透明よりむしろ透明であるポリマーおよびロジンエステルの混合物によって実証される。
【0034】
典型的には、本接着性組成物は、有意な量のロジンエステルおよびポリマーの両方を含有する。例えば、ロジンエステルの100部当たり、本接着性組成物は、50〜300部のポリマーを含有し得る。
【0035】
本接着性組成物は、さらに、特定の用途に特に適切である組成物を与える添加剤を含み得る。多くのこのような添加剤の使用は、当該分野に周知であり、そしてそれらは、本発明の接着性組成物において意図される目的のために使用され得る。例えば、この接着剤が、ホットメルトパッケージング接着剤(hot melt packaging adhesive)として役立つことが意図される場合、ワックスが、有用なさらなる成分である。適切なワックスには、微結晶性ワックス、パラフィンワックス、Fischer−Tropschプロセスによって作製されるワックス、植物性ワックスなどが挙げられるが、これらに限定されない。通常、ワックスは、本組成物中に、ポリマー成分の100部当たり40部と100部との間の量で含まれる。
【0036】
この接着剤が、感圧性接着剤(PSA)のために意図されるならば、油が有用な成分であり得る。適切な油には、ナフテン油、パラフィン油、鉱油、トリグリセリド油などが挙げられる。1以上の可塑剤が本組成物へ添加され得、ここで、適切な可塑剤には、ジブチルフタレートおよびジオクチルフタレートなどのエステル、塩素化パラフィンが挙げられるが、これらに限定されない。1以上の充填剤、例えば、カーボンブラック、酸化チタンおよび酸化亜鉛。エキステンダー油が、本組成物中に存在し得、ここで、例示的なエキステンダー油には、流動パラフィン、ヒマシ油、ナタネ油、鉱油などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
他の樹脂が、本接着性組成物中に存在し得、ここで、適切な樹脂には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:脂環式炭化水素樹脂、C5炭化水素樹脂、C5/C9炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、全体的または部分的水素付加炭化水素樹脂、テルペン樹脂、改質テルペン樹脂(テルペンフェノールまたはスチレン化テルペン(styrenated terpene))、液体樹脂、他のロジンエステルなど。
【0038】
従って、本発明の接着性組成物は、ポリマーおよび本発明の1以上のロジン樹脂に加えて、以下から選択される添加剤を含み得る:ワックス、プロセス油、脂環式炭化水素樹脂、C5炭化水素樹脂、C5−C9炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、およびロジンとポリオールとのエステル(これは、そのヒドロキシル基が、4個未満の炭素原子によって隔てられている点で特徴付けられる)。
【0039】
本発明の接着性組成物は、従来の技法および装置を使用して、上述のようなロジンエステル、接着性ポリマーおよびさらなる成分から調製され得る。例えば、本接着性組成物の成分は、ミキサー(例えば、Sigmaブレードミキサー、ツインスクリュー押出し成形機など)中でブレンドされ得る。本接着性組成物は、押し出し成形、圧縮成形、カレンダリング(calendaring)のような従来の適切な技法によって、所望の形態(例えば、テープまたはシート)に型付けられ得る。
【0040】
本接着性組成物は、この組成物を融解し、次いで当該分野で認識される従来のホットメルト接着剤塗布装置(hot melt adhesive application equipment)を使用することによって、基板へ塗布され得る。適切な基板には、織布、紙、ガラス、プラスチックおよび金属が挙げられる。典型的には、約5〜50g/m2の接着性組成物が、基板に塗布され得る。本接着性組成物は、ホットメルト接着剤が一般に利用される適用のためのホットメルト接着剤として広く有用である。本発明は、このロジンエステル粘着付与剤の融点が、意図される本接着性組成物の最終目的に適するように選択され得ることを提供する。
【0041】
本発明のロジンエステルは、長時間の高温での保存に曝しても、色の大きな変化を示さない。このように形成された本ロジンエステルは、高温での良好な色彩安定性を有し、そしてこれらから作製したホットメルト接着剤は、剥離(skinning)のほとんどない良好な粘性安定性を有する。加熱すると、受容可能なロジンエステルは、色合いの最小の増加を示す。本発明のプロセスに従うロジンエステルは、接着性ポリマー(例えば、PETROLITE BESQUARETM185またはELVAXTM250)と共に混合し、そして176℃で96時間、加熱熟成(heat aged)しても、ほとんど剥離を示さない。
【0042】
本発明のプロセスは、最小の労力および費用を伴う、薄着色および良好な色彩安定性を有するロジンのエステルを提供する。従って、本発明のロジンエステルは、粘着付与剤としての使用および薄着色、色彩安定性ロジンエステルが必要または所望される他の用途において非常に適している。本発明のロジンエステルは、特に、ホットメルト接着性粘着付与剤および感圧性接着性粘着付与剤として非常に適しており、なぜならば、これらは、ほとんど接着性剥離なしに、高温での良好な色彩安定性を示し、そして接着性粘性の受容可能な変化を示すからである。
【0043】
本発明に従ってロジンエステルを調製するための一般的なプロセスにおいて、ロジンは、不活性(すなわち、非酸化雰囲気、典型的には窒素)下、反応容器へ充填されて、そして約160℃〜195℃の温度まで加熱される。本ロジンエステルは、薄着色を有し、そして色は酸素曝露に対して感受性であり、この反応は、好ましくは、このような酸素曝露を最小化するために不活性雰囲気下で実施される。次いで、少量の反応速度エンハンサーおよび/または他の添加剤(例えば、上述のような安定化剤)が、ポリオールと共に添加される。加熱(典型的には、約240〜280℃の温度まで)が続けられ、エステル化反応によって形成される水の同時回収を伴う。
【0044】
この反応の進行は、サンプルを定期的に抜き取り、そしてサンプルの酸価を測定することによってモニターされ得る。酸価を測定する技法は、当該分野において周知であり、本明細書中に記載する必要はない。例えば、ASTM D−465(1982)を参照のこと。典型的には、270〜280℃での12時間の反応時間は、約10の酸価を有するロジンエステルを提供し得る。
【0045】
この生成混合物の酸価が約50、好ましくは25、に達すると、この反応容器は、275℃またはわずかに上の好ましい温度で、約10〜50mbarの圧力まで真空にされ得る。同時に、不活性ガス(好ましくは、スチームまたは窒素)が、この融解したロジンエステルへ注入され得る。これらの「ストリッピング」条件が、この生成混合物の酸価が所望の標的値に達するまで維持される。真空、窒素またはスチームスパージングおよび約275℃またはそれ以上の温度の使用は、揮発性ロジン物質(例えば、脱炭酸化樹脂)の除去を提供する。これらの揮発性物質は、望ましくは、この樹脂についての標的軟化点を達成するように除去されて、そしてまた、これらは、このロジンエステル生成物の匂い、色および色彩安定性に逆に影響を与える傾向があるからである。
【0046】
代替の好ましいプロセスにおいて、ロジンは、不活性(すなわち、非酸化雰囲気、典型的には窒素)下で、反応容器に充填されて、そして約140℃〜170℃まで加熱される。次いで、上記で定義したような少量のホスホン酸塩、そして好ましくは、ビスモノエチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ホスホネートを、この融解したロジンへ添加する。好ましいホスホン酸塩は、IRGANOXTM1425である。約0.1重量%〜約0.5重量%、そして好ましくは約0.15重量%〜約0.25重量%のホスホン酸塩が、このロジンへ添加される。
【0047】
ホスホン酸塩のロジンへの添加の前、同時、または直後のいずれかで、フェノールスルフィド化合物がまた、このロジンへ添加され得る。好ましくは、このフェノールスルフィド化合物が、ホスホン酸塩の添加の前に迅速に添加され、そしてこのフェノールスルフィド化合物は、上記で与えられた式を有する。好ましいフェノールスルフィド化合物は、アミルフェノールジスルフィドポリマー(例えば、上述のようなVULTACTM2)であり、そして約0.05重量%〜約0.5重量%(ロジンおよびポリオールの総重量に基づいて)の量で、この反応混合物へ添加される。次に、この融解したロジンへポリオールを添加する。
【0048】
亜リン酸エステル/誘導体が、このエステルの色の減少を助けるために、このエステル化反応混合物へ添加され得る。適切なアリールホスフィトの例は、トリス(ノニルフェニル)ホスフィトである。1以上のこれらの物質は、この反応混合物へこのフェノールスルフィド化合物を添加する前、同時、または後のいずれかに、添加され得る。
【0049】
亜リン酸エステルおよびホスホン酸塩の組み合わせは、ロジンまたはポリオールが、当量過剰であるかどうかにかかわらず、または実際にこのロジンの当量がポリオールの当量に等しい場合でも、使用され得る。
【0050】
形成ロジンエステルへの亜リン酸エステル添加は、好ましくは、このロジンの充填の後になされる。この亜リン酸エステルの添加後、このロジンエステル化反応が、この生成混合物の酸価が約50〜25に達するまで、進められる。次いで、この反応容器が、約10〜50mbarの圧力まで真空下に配置する一方、不活性ガス、好ましくは窒素またはスチームを、前述のように、融解したロジンエステルへ注入する。これらの「ストリッピング」条件を、この酸価が所望の標的値(粘着付与剤として使用されるロジンエステルについての標的値は、約5〜15である)に達するまで維持する。
【0051】
本発明のロジンエステルは、パッケージング接着剤、製本接着剤、家具接着剤、織物接着剤、木材結合(wood bonding)接着剤、使い捨て(不織)接着剤、自動車用接着剤、電気器具接着剤、履物接着剤、感圧性接着剤および建設接着剤のための粘着付与剤としての、ならびに中でも化粧処方物において商業的有用性が見出され得る。
【0052】
少なくとも4個の炭素原子によって、好ましくは少なくとも6個の炭素原子によって隔てられたヒドロキシル官能基を有するポリオールから調製される、本発明のロジンエステルは、4個未満の炭素原子によって隔てられたヒドロキシル基を有するポリオールから調製されるロジンエステルと比較して、驚くほど色が薄い。薄い色を有する上に、これらはまた、他の驚くべき利点を提供する。例えば、これらは、驚くほど少ない匂いを有する。これらはまた、接着性組成物に処方され得、そして、これらは、典型的に、低軟化点を有するので、この接着性組成物は、比較的低い温度で調製されそして使用され得る。このような低い温度は、典型的に望ましく、なぜならば、接着剤は、温度が低くなるほど酸化されにくくそして分解されにくくなるからである。本発明のロジンエステルは、低軟化点を有するが、これは、依然として、高温ででも優れた接着性特性を実証する接着性処方物において使用され得、このことは、驚くべき結果である。さらに、これらは、ロジンエステルのブレンドの多くに関して優れた性能を有する低軟化点物質を提供し、このブレンドは、同一の低軟化点を提供するように設計された組成物を有する。
【0053】
直鎖ジオール(これらは、これらから本発明のロジンエステルを調製するために好ましいポリオールである)から調製された場合、これらは、ミッドブロック特異的(midblock specific)(スチレンブロックコポリマーにおいて)である一方、低い表面エネルギー基板への接着のためにいくらかの極性を保持する。これらは、多くの異なるポリマーと適合性であり、このことは、液体C5炭化水素樹脂については言えない。これらは、ホットメルトPSA処方物において接着と粘着との間の優れたバランスを提供する。また、これらは、典型的な市販の競合的樹脂(例えば、WINGTACTM10)よりも低い室温粘性を与える。
【0054】
脂環式ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール)(これは、これらから本発明のロジンエステルを調製するために好ましい別のポリオールである)から調製される場合、得られるロジンエステルは、色が驚くほど薄く、そして驚くほど匂いが少ない。これらのロジン樹脂はまた、接着性処方物における粘着付与剤のほとんどない移動によって分かるように、スチレンブロックコポリマーにおいてミッドブロック特異性を実証する。これらは、他のロジンエステルに匹敵する感圧性接着剤(PSA)において接着特性を提供する一方、低い匂いおよび色を保持する。脂環式ロジンエステルは、広範なポリマーと良好な適合性を実証した。EnBAポリマー(エチレン−n−ブチルアクリレートポリマー)との組み合わせにおいて、これらは、この処方された接着剤のレオロジー交差点(crossover point)によって分かるように、2倍の軟化点を有する樹脂と比較して予想されるより高い熱抵抗を有する接着剤を提供する。これらの樹脂はまた、先行技術の樹脂よりも低いTg(レオロジー測定値当たり)を提供した。Tgと交差点との間のこの差異に起因して、この処方者は、良好な開放時間および高い粘着強度を有する、低い適用温度接着剤を作製し得る。
【0055】
ここで、本発明は、本発明の有利な性質を立証する以下の非制限的な実施例によって、より詳細に例示される。他に示さなければ、部およびパーセンテージは、重量によるものである。
【0056】
トール油ロジン(CAS#8050−09−7)を、実施例で使用した。他に示さなければ、試薬は、化学薬品供給会社(例えば、Aldrich Chemical、Milwaukee、WI)から得られるような標準市販グレードのものである。VULTACTM2(これは、アミルフェノールジスルフィドポリマー(CAS#68555−986である)を、Elf Atochem North America,Inc.、Philadelphia、Pennsylvania(これと同じフェノールスルフィドが、他の溶媒中で溶液として得られ、使用され得、そして溶媒なしの形態で使用され得る)から得た。IRGANOXTM1425触媒(CAS#65140−91−2)(これは、カルシウムビス(モノエチル(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート)である)を、Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown、NY)から得た。
【0057】
適切な安定剤(これは、ロジンエステルの重量を基準として約1wt%まで存在し得る)は、以下のCiba Specialty Chemicals(Tarrytown、NY)から得られた1種以上を含む:IRGANOXTM565(CAS#991−84−4)(これは、4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−s−トリアジン−2−イル)アミノ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールである)、IRGANOXTM1010(CAS6683−19−8)(これは、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタノールである)、またはIRGANOXTM1520(CAS110553−27−0)(これは、2−メチル−4,6−ビス{(オクチルチオ)メチル}フェノールである)。ULTRANOXTM257(これは、ジシクロペンタジエンおよびイソブチレン(CAS#68610−51−5)と4−メチルフェノールとの反応生成物である)、ならびにULTRANOXTM236(CAS96−69−5)(これは、4,4’−チオ−ビス−(2−tert−ブチル−5−メチルフェノールである)は、GE Specialty Chemicals、Parkersburg、West Virginiaから得られた。WESTONTM618安定剤(これは、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(CAS#3806−34−6)を、GE Specialty Chemicals、Morgantown、West Virginiaから得た。
【0058】
以下の実施例において、反応物の化学量論に関し、用語「当量過剰(equivalent excess」が使用され、当該分野で使用されるような標準的な意味を有することが意図される。しかし、さらに明瞭にするために、当量とは、1分子の1モル量中に存在する反応基の数を言うことに留意のこと。従って、モノカルボン酸(例えば、ロジン)の1モルは、1当量のカルボン酸を有し、ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール)の1モルは、2当量のヒドロキシルを有する。ロジンの10%当量過剰とは、ロジンの1.1molのカルボン酸基が、ポリオールのそれぞれ1.0モルのヒドロキシル基に対して反応混合物中に存在する事実を言う。
【0059】
用語「AN」とは、酸価を言い、そして当該分野で周知の技術によって測定され得る。例えば、ASTM D−465(1982)を参照のこと。用語「gsm」とは、g/m2を言う。軟化点は、軟化点リングを有するMettler FP80 Central ProcessorおよびMettler FP83 HT Dropping point cellで測定され、摂氏度で以下に報告される。
【0060】
より高い精度のために、Gardner色およびGardner値が、吸光度(Abs)モードに設定したSpectronic 301分光光度計(Milton Roy、Rochester、NY)で測定された。Gardner値は、Gardner色のデジタルバージョンである。例えば、3−のGardner色は、2.50〜2.82のGardner値に等しく;そして3のGardner色は、2.83〜3.17のGardner値に等しく;そして3+のGardner色は、3.17〜3.49のGardner値に等しい。Spectronic 301は、マイクロプロセッサで制御される単一ビームの可視領域の分光光度計である。波長領域は、+/−2nmの精度および+/−1nmの波長精度を有する325〜900nmである。Spectronic 301は、−0.1〜2.5のAbs単位の光度計範囲を有する。Spectronic 301は、正確にこれらの範囲を維持するために30分間の予熱を必要とし、そしてMilton Roy Spectronic標準を使用して毎年較正される。波長および光度測定データは、RS−232Cポート内蔵の外部コンピュータに送信された。この外部コンピュータは、データである、Gardner色標準を基準とした10nmの増分で、200nm〜700nmの波長での吸光度を解釈する。このデータは、ASTM標準E308を使用して変換され、そしてGardner色およびGardner値の両方のプリントアウトを提供する。このソフトウエアは、Paul N.Grander Company Inc(Pompano Beach、Fl)から入手可能である。
【0061】
流体力学的な測定は、同定するために有用である流体力学的曲線を得るために使用される場合、以下のパラメータを用いて操作される、TA Instruments TA Rheolyst 1000−N(New Castle、DE)で実施された:例えば、クロス(cross)−オーバーポイント(over point);ジオメトリ−4cm平行プレート;間隔−1000ミクロン;周波数−6.28rad/sec;温度範囲=−20℃から150℃;ランプ速度(Ramp rate)−3ディグリー/分(150℃〜−20℃);歪み−10%一定。
【0062】
(実施例)
(実施例1)
(1,4−シクロヘキサンジメタノールロジンエステル)
適切な反応容器中に、10%当量過剰のトール油ロジン(酸価が約180.0)を充填し、そして減圧除去後、窒素ブランケット下で融解した。このロジンを約200℃で融解し、そして0.33%の50%VULTACTM2(トルエン中)、0.18%IRGANOXTM1425および17.5%の1,4−シクロヘキサンジメタノールをこの容器に添加した。反応温度を、275℃まで上昇させ、そして25未満のANが達成されるまで、約8時間この温度を維持した。この後、揮発性の化合物を、減圧下、窒素を噴霧した状態で生成物の混合物から除去した。この反応温度を、200℃未満まで下げた。次いで、安定剤を添加し、15分攪拌した。最終生成物を分析すると、13.7の酸価、59.5の軟化点、および1.50のGardner値を有した。
【0063】
(実施例2)
(1,8−オクタンジオールロジンエステル)
実施例1の手順を、1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりに、17.69%の1,8−オクタンジオールを使用したことを除いて、同じように実施した。生成物は、17.8の酸価を有し、室温で流動し、そして1.78のGardner値を有した。
【0064】
(実施例3)
(1,4−ブタンジオールロジンエステル)
実施例1の手順を、1,4−シクロヘキサンジメタノールの3回に分けた添加の代わりに、全部で23.51%の1,4−ブタンジオールを使用したことを除いて、同じように実施した。11.73%の1,4−ブタンジオールの反応物中への最初の添加を、約4時間後の5.86%の第二の添加、および約6時間での5.92%の第三添加の前に行った。この反応は、107.6%の当量過剰の1,4−ブタンジオールを有した。この生成物は、13.3の酸価を有し、室温で流動し、そして2.39のGardner値を有した。
【0065】
(実施例4)
(1,6−ヘキサンジオールロジンエステル)
実施例1の手順を、1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりに、14.62%の1,6−ヘキサンジオールを使用したことを除いて、同じように実施した。生成物は、22.5の酸価を有し、室温で流動し、そして1.69のGardner値を有した。このロジンエステルは、例えば包装接着性処方物に使用され得る。
【0066】
(実施例5)
(ダイマージオールエステル)
実施例1の手順を、1,4−シクロヘキサンジメタノールの代わりに、全部で47.88%のダイマージオール(PRIPLASTTM2033、Unichema International、Chicago、IL)を使用したことを除いて、同じように実施した。この反応は、5.6%の当量過剰のダイマージオールを有した。この生成物は、4.4の酸価を有し、室温で流動し、そして1.20のGardner値を有した。
【0067】
(比較実施例1)
(1,3−プロパンジオールロジンエステル)
実施例1の手順を、1,4−シクロヘキサンジメタノールの2回に分けた添加の代わりに、全部で13.96%の1,3−プロパンジオールを使用したことを除いて、同じように実施した。11.18%の1,3−プロパンジオールの反応物中への最初の添加を、約4時間後に2.78%の第二の添加の前に行った。この反応は、31.8%の当量過剰の1,3−プロパンジオールを有した。この生成物は、17.2%の酸価、41.8℃の軟化点、および2.71のGardner値を有した。
【0068】
(比較実施例2)
(グリセリンロジンエステル)
適切な反応容器中に、トール油ロジン(酸価が約180.0)を充填し、そして減圧除去後、窒素ブランケット下で融解した。このロジンを約200℃で融解し、そして0.51%の50%VULTACTM2(トルエン中)、0.18%IRGANOXTM1425、0.37%の50%WESTONTM399(トルエン中)および10.1%(15%過剰当量)のグリセリンをこの容器に添加した。反応温度を、8〜9時間かけて上昇させながら270℃まで上昇させた。この反応を、15未満のANに達するまで270℃で維持した。この後、揮発性成分を、減圧下、窒素を噴霧した状態で生成物の混合物から除去した。この反応温度を、200℃未満まで下げた。次いで、安定剤を添加し、15分攪拌した。最終生成物を分析すると、9.4の酸価、82.4℃の軟化点、および3.32のGardner値を有した。
【0069】
(比較実施例3)
(ペンタエリスリトールロジンエステル)
適切な反応容器中に、10%当量過剰のトール油ロジン(酸価が約180.0)を充填し、そして減圧除去後、窒素ブランケット下で融解した。このロジンを約200℃で融解し、そして0.33%の50%VULTACTM2(トルエン中)、0.19%IRGANOXTM1425および9.03%ペンタエリスリトールをこの容器に添加した。反応温度を、280℃まで上昇させ、そして約8時間この温度を維持した。この反応を、25未満のANに達するまで280℃で維持した。この後、揮発性成分を、減圧下、窒素を噴霧した状態で生成物の混合物から除去した。この反応温度を、200℃未満まで下げた。次いで、安定剤を添加し、15分攪拌した。最終生成物を分析すると、15.1の酸価、100.8℃の軟化点、および4.10のGardner値を有した。
【0070】
(実施例6)
(ジオールのロジンエステルからの感圧接着性組成物)
(A.接着性調製物)
全ての接着剤を以下の装置を使用して混合した:ベンチトップメタルサイド加熱マントル(bench top metal−sized heating mantle);パドル型攪拌棒;電気的可変スピードモーター;プリントサイズカン(print−sized can);および電気的温度制御器。この接着剤を200gのバッチで調製した。
【0071】
接着剤を、第一に油(SHELLFLEXTM371)、抗酸化剤(IRGANOXTM1010)、およびロジンエステルまたは他の樹脂の全てを、プリントサイズカンに添加することにより配合した。このカンを、加熱マントルに配置し、窒素ブランケット下で350°Fまで加熱させた。この固体樹脂が溶融するとすぐに、樹脂混合物をミキサーを回転させることにより攪拌した。この混合物を、350°Fの設定ポイントで完全に均一にするとすぐに、熱可塑性ゴム(KRATONTM1107)をゆっくりと添加した。このゴムを、300°F未満の温度に下がらないように、十分にゆっくり添加し、ゴムの粒子を一塊にさせた。いったんゴムを完全に溶解させ、そして完全に混合させてしまうと、接着剤を、シリコーンを裏打ちしたダンボールに注ぎ、そして冷却した。接着剤に対する全混合時間は、1〜4時間の間であった。この混合時間は、ゴムの型および処方物に使用される樹脂に対するゴムの濃度に依存する。
【0072】
表Aに示されるような処方物を、上記記載のように調製した。
【0073】
【表1】


(B.接着剤の評価)
表Aに示されるような接着性処方物1〜8を以下の試験方法に従って評価し、表Bに記載される結果を得た。PSTC−1を使用して180剥離を測定し、ここでSSは、ステンレス鋼を示し、PEは、ポリエチレンを示し、pliは、ポンド/直線インチを示し、そしてサンプルは、1×8インチであった。
【0074】
本明細書中の表において、「s」は粘性スプリットを意味し、「ss」は、わずかな粘性スプリットを意味し、そして「c」は、試験パネル上に接着剤の残りを有さない接着性不良を表す。これらの意味は、感圧性接着剤テープを試験する場合の不良のモードを表す。より詳細には、「c」は、清除を意味し、そして接着剤が接着剤の界面に沿って、試験パネルに対して接着しないという事実を意味する。これは、最も所望される不良の形態である。これは、破面を接着剤の塊内に生じさせることなしに、表面に接触させ、そして結合を形成させる接着剤の能力の指標を与える。「清除」不良を示す接着剤は、より高い粘性強度を有する(流体学的測定または剪断強度測定のいずれによってもまた示される)。基本的に、全ての接着剤は、テープ表面に残ったままであるので、接着剤の内部の強度は、接着レベルよりも高い。
【0075】
表示「ss」は、わずかなスプリットを意味する。これは、接着剤の塊の特定の領域に沿って接着剤が、粘着しないという観測を意味する。わずかなスプリットとは、接着剤の塊に破面が出来るが、それ自体を広げないことを表す。この不良モードは、所望されないが、完全な粘性スプリット(「s」、以下を参照のこと)よりも良い。「ss」不良とは、接着剤の粘性強度が、接着剤よりさらに高いこを表す。ほとんどの接着剤は、試験パネル上にいくらかの目立つ染色をテープ表面上に残したままである。
【0076】
表示「s」は、スプリットを表す。これは、接着剤の粘性的に剥がされる傾向を意味する。より詳細には、「s」は、接着剤の破面が、接着剤の塊の始めに出来、接着剤の塊の全体にそれ自体を広げることを意味する。この観測は、接着剤の内部の強度が、試験パネルに対する結合強度よりも弱いことを意味する。このような結果は、結合の強度が決して増加しない場合には所望されない。これはまた、接着剤の固定剪断がまた乏しいことを表す。粘性スプリットは、テープの表面および試験パネルの両方の上に等しい量の接着性を残す。
【0077】
「剪断(Shear)」は、PSTC−7に従って実施される静的(static)剪断試験を意味し、ここで、minは、分を意味し、RTは、室温(約25℃)を意味し、ETは、高温(65.5℃)を意味し、ここで剪断試験は、RTまたはETのいずれかで実施し、そしてRTで評価したサンプルは、0.5×0.5インチ×1,000gであり、一方、ETで評価したサンプルは、1×4インチ×500gであった。PSTC−5を使用して、ループタック(Loop
Tack)を測定し、ここでpliは、ポンド/直線インチを表し、そしてこのサンプルは、1×8インチであった。一般的に、より高い値の180ピール(peel)、ループタック、および剪断時間が好ましい。
【0078】
【表2】


表Bのデータは、本発明の組成物(これは、本発明のロジンエステルを取り込む)、ならびに特定の処方物3、4、5および6が、良好で、優れた全体的な性能特性を有し、さらに先行技術の組成物に比べて薄い色を有することを表す。
【0079】
(実施例7)
(1,4−シクロヘキサンジメタノールのロジンエステル由来の圧感性接着性組成物)
A.接着剤の調製
接着剤を、実施例6に記載の手順に従って、表Cに記載の成分(およびそれらの量)を使用して調製した。「1,4−CHDM」は、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびロジンから調製されるロジンエステルを示す。処方物9および10の各々を、2.5時間の総混合時間で200グラムのバッチで調製した。処方物9は、ロジンエステルを1,4−CHDMから調製し、そして処方物10を調製するために使用した場合と同じ軟化点(60℃)を有するように選択される、UNI−TACTMR85およびUNI−TACTMXL−10の重量比を含む。
【0080】
【表3】


B.接着剤の評価
表Cに記載されるような接着性処方物9および10の性能を、表Dに記載されるような結果で評価した。表Dにおいて、「s」は、粘性スプリットを示し、「ss」は、わずかに粘性のスプリットを示し、そして「c」は、試験パネル上に接着剤の残りがない接着性不良を示す(表Bと関連して上記で定義される通り)。
【0081】
【表4】


表Dにおけるデータは、本発明の1,4−CHDMエステルが2つの先行技術のロジンエステルの等価軟化点ブレンドと比較して優れた性能特性を有することを示す。例えば、CHDMエステルを用いて処方された接着剤は、高い接着レベルを保持しながら、良好なせん断抵抗を望ましく示すようである。さらに、処方物10は、処方物9より優れている。なぜならば、前者は、接着不良のみを示すが、それに対して、後者は、粘性不良を示すからである。
【0082】
(実施例8)
(ホットメルトパッケージング接着性組成物)
A.接着剤の調製
接着剤を、実施例6に記載の手順に従って、表EおよびFに記載の成分(およびそれらの量)を使用して調製した。混合時間は、接着剤の各々について45〜70分間のオーダーであった。表Eに記載される接着剤について、ポリマー成分は、エチレンn−ブチルアクリレートコポリマー(EnBA)であり、一方、表Fに記載される接着剤について、ポリマー成分は、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)であった。表EおよびFの各々において、「CHDM ESTER」は、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびロジンから調製されるロジンエステルを示す(これは、60℃の軟化点を有する)。表EおよびFにおいてもまた、「MIXED WINGTACS」は、WINGTACTM95とWINGTACTM10とのブレンド(30重量%のWINGTACTM95および20重量%のWINGTACTM10、合計50重量%)をいい、これは、CHDM
ESTERの軟化点と一致する軟化点(すなわち、60℃の軟化点)を有する。
【0083】
【表5】


B.接着剤の適合性
CHDM ESTERおよび競合樹脂と、EnBAおよびEVAの各々との適合性は、表Gに記載される結果で測定され、ここで、「C」は、良好な適合性を示し、「SIC」は、ある程度不適合性であることを示し、そして「IC」は、不適合性を示す。これらの適合性は、このブレンドの視覚的検査によって決定し、ここで、不透明度が高いほど、より高い不適合性を示した。
【0084】
【表6】


C.接着剤の評価
表Eに記載されるような接着性処方物11〜15および17の特定の性能特性を、表Hに記載されるような結果で評価した。表Hにおいて、Tg測定は、TA
Rheolyst 1000−N(TA Instruments,New Castle,DE)で行い、不透明度は、視覚的検査によって決定した。ここで、番号1〜6は、ほとんど不透明(6)から少ない不透明(1)までであり;そして「交差点(cross over point)」は、流体力学的測定に従って「G’’」曲線と「G’」曲線とのクロス点(cross point)をいう。
【0085】
より詳細には、TA Rheolyst 1000−Nまたは等価のレオメータから得られるような流体力学的曲線は、3つの部分から構成される。第1は、G’曲線であり、これは、接着剤の弾性成分を示す。第2は、G’’曲線であり、これは、接着剤の粘性成分を決定する。第3は、Tan Delta曲線であり、これは、G’’曲線とG’曲線との比(特にG’’/G’)である。流体力学的曲線における「交差点」は、グラフの流体領域におけるG’’曲線とG’曲線との交差点である。詳細には、交差点は、G’’曲線上の点として定義され、そしてG’曲線は、グラフの流体領域における1つに等しいTan Delta曲線であった。「流体領域」は、弾性プラトー領域(rubbery plateau region)後に起こる曲線のエリアである。流体領域は、接着剤が軟化および融解し始める温度で接着剤の特性に影響を与える領域であるとして呼ばれる。より詳細には、交差点は、接着剤の軟化点、および/またはSAFT(せん断接着不良温度(Shear Adhesion Failure Temperature))値を考慮され得る。交差点は、接着剤が粘性強度がないかまたは非常に小さな粘性強度を示す温度よりも高い温度である。
【0086】
接着剤(または他のサンプル)のTgは、接着剤が強固なガラス状態からアモルファスな弾性状態まで変わる点として定義される。機械的に、この点は、レオメータを使用して決定され、Tan Delta曲線の極小前の領域のそのピークを同定する。Tan Delta曲線の極小は、グラフの弾性領域において見出される。Tgより下の温度では、接着剤はもはや接着特性を有さない。
【0087】
交差点とTgとの間の差は、接着剤の「オープンタイム」の指標を与える。このことは、最も低い可能な適用温度と、接着剤がもはや表面に接着しない温度より低い温度との間の差を示す。交差温度とTgとの間の差が大きくなればなるほど、より長く、消費者は接着剤を適用し、基板と一緒に接着しなければならない。この時間が長い場合、消費者は、「オープンタイム」を犠牲にすることなく、低い温度で接着剤を適用し得る。
【0088】
EnBAポリマーと組み合わせた本発明のロジンCHDMエステルは、試験された任意の組み合わせの交差点とTgとの間の最も大きな差の1つを有する。このような大きな差により、CHDM ESTERは接着強度を犠牲にすることなく低い適用温度の接着剤を作製する能力を処方者の許容度に与えることが推測される。
【0089】
【表7】


表Hにおけるデータは、本発明の接着性組成物(および詳細には、処方物番号14(これは、本発明のロジンエステルを組み込む))は、EnBAポリマーとの優れた適合性(2の不透明度値によって示されるような)を有し、なおまた交差とTgとの間の広い差(ここで、この広い差は、処方物の低いTgの反映(低い適用温度がこの処方物に関して使用され得ることを反映する)であるが、高い交差点の反映(この組成物が良好な熱抵抗を有することを反映する)である)を有することを示す。
【0090】
表EおよびFに記載されるような選択された接着性処方物11〜24のオープンタイム範囲を、表Iに記載されるような結果で評価した。この評価を以下のように行った:約27gのEnBAベースの接着剤を、パイントカン中に配置し、そして150℃のオーブン中に配置し、融解した。フィルムアプリケータをまた、オーブン中に配置し、加熱した。4×12インチの厚紙の部分(タブレットバック)を、オーブンの上部に配置し、加温し、そして水分を取り除いた。次いで、厚紙を、大きなバインダークリップを有するベニヤ板のテフロン(登録商標)コーティングされた切片の上部の上に確保した。アプリケータをオーブンから取り出し、そして厚紙の上に置き、5milのフィルムを得た。次いで、融解した接着剤を、オーブンから取り出し、そして小さなビードをアプリケータの幅の内側に詰めた。融解した樹脂を有するアプリケータを、次いで、比較的スムーズな動きで厚紙の長さに渡って動かし、降下を完了した。このとき、タイマーを開始し、そして2秒間隔でクラフト紙の小片(0.5×2インチ)をフィルム上に置き、人差し指で堅く押し、繊維をサイドから降ろした。これを、接着剤がセットアップするまで、繰り返す。約1時間後、各小片を剥ぎ取った。第2に、オープンタイムを、ASTM D4497−89に従って、フィルム上に残る繊維が50%である小片によって決定した。これらの評価からの結果を、表Iに示す。
【0091】
【表8】


表Iにおけるデータは、本発明のロジンエステル(および詳細には、CHDMロジンエステル)を組み込む、本発明の接着性組成物が、適合可能な、および多くの場合に先行技術の粘着付与剤から調製された接着剤のオープンタイムよりも優れた、良好なオープンタイムを有することを示す。
【0092】
表EおよびFに記載されるような選択された接着性処方物11〜24に関する重なりせん断(Lap Shear)特性データを、ASTM D3163−73に従い、以下の手順に従って評価した:1×4インチのABSサンプル(粗い側面)上に、ラインを片端部から1インチでマークした。少量の接着剤を、金属皿中で融解した。ABS小片をスケール上に置き、そしてタールを塗り、次いで、0.4gの融解した接着剤を1インチエリアに注いだ。すぐに、第2の1×4インチ小片のABSを、中程度の圧で上部の上に(1インチのマークに)置いた。サンプルを一晩、平衡化させた。次いで、このサンプルを、Instron、方法50(n=3)で試験した。この手順は、EnBA処方された接着剤の分離を生じるのに必要とされる力(psi)を測定する。この結果を、表J(EnBAベースの接着剤について)および表K(EVAベースの接着剤について)に記載し、ここで、最大負荷値(Max Load value)は、2〜4の測定値の平均である。
【0093】
【表9】

【0094】
【表10】


表JおよびKにおけるデータは、本発明のロジンエステルを組み合わせる、本発明の接着性組成物が、接着剤の形成を容易にする低い軟化点を有し、(このような低い軟化点の粘着付与剤に関する)著しく高い接着強度をなお与え、これは、適合性であり、そしていくつかの場合において、非常に高い軟化点を有する粘性付与剤よりも優れていることを示す。
【0095】
上記から、本発明の特定の実施態様が例示の目的で本明細書中に記載されるが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によって限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載されるロジンと芳香族または脂肪族炭化水素部分とから調製される、薄着色エステル化生成物。

【公開番号】特開2008−45138(P2008−45138A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258166(P2007−258166)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2000−562443(P2000−562443)の分割
【原出願日】平成11年7月27日(1999.7.27)
【出願人】(504293447)インターナショナル・ペーパー・カンパニー (15)
【Fターム(参考)】