説明

薄肉耐熱丸型ボトル

【課題】 本発明は、ボトル本体の上胴部と下胴部の一方に装着された巻きラベルの、減圧に伴う弛みの発生を抑制することにより、ボトルに減圧が発生しても、巻きラベルの表示部の良好な表示状態を維持すると共に、巻きラベルのボトルに対する安定した装着を維持することを目的とする。
【解決手段】 胴部1を中央周リブ5により上胴部6と下胴部7とに区画し、上胴部6と下胴部7の一方に、減圧による撓み変形が少ない斜めリブ9を設けると共に、巻きラベル11を巻き付け装着することにより、ボトル本体の減圧による巻きラベル11のシワ13発生による表示部12の体裁劣化や、巻きラベル11のボトル本体からの剥離発生を防止して、薄肉耐熱丸型ボトルにおける巻きラベル11の安全で良好な装着状態の維持を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻きラベルを装着した、内容物を熱充填する合成樹脂製の薄肉の耐熱丸型ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラベルを装着した、内容物を熱充填する合成樹脂製の薄肉耐熱丸型ボトルの例として、特表2010−524789公報に示された従来技術がある。この従来技術は、胴部の上半部分である上胴部部分をラベル装着部分としており、このラベル装着部分を提供する上胴部には、ボトル内に発生した減圧に対する機械的な耐久力を高める周溝状の複数の横リブを平行に設けている。
【0003】
この上記した従来技術にあっては、横リブを設けた上胴部に装着されるラベルは、横リブに対応した箇所に凹みが生じて、ラベルに施された表示部に表示状態の体裁が低下する恐れがあること、またコスト点から、熱収縮を利用するシュリンクラベルではなく、巻きラベルが利用される傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−524789公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術にあって、例えば図3に示すように中央周リブ5で上下に区画された上胴部6と下胴部7のそれぞれに、補強のための横リブ10を設けた構成とした場合、軽量化のために薄肉化を進めると、ボトル内に発生した減圧により、中央周リブ5および各横リブ10が、その溝幅を狭める方向に撓み変形し易くなる。このため、図3の符号Hで示した領域全体が減圧変形部分となり、結果として減圧吸収機能を発揮することになる。
【0006】
しかしながら、上胴部6に巻きラベル11を装着した状態で、この上胴部6の横リブ10に上記した溝幅を狭める撓み変形が発生すると、装着された巻きラベル11に弛みが生じ、この弛みにより巻きラベル11にシワ13が発生、特に横リブ10に対向した巻きラベル11箇所にシワ13が発生(図4参照)し、このシワ13が、巻きラベル11に施されている表示部12に歪み14を生じさせて、表示部12の外観体裁を劣化させることになり、また巻きラベル11に生じた弛みが大きくなると、巻きラベル11そのものが上胴部6から剥がれてしまう、と云う問題があった。
【0007】
この問題を解消する手法として、上胴部6と下胴部7に形成されている横リブ10の全てを、螺旋溝状の斜めリブ9とする手段が考えられるが、この手段にあっては、装着された巻きラベル11に弛みを殆ど生じさせないことができるのであるが、減圧発生時に、斜めリブ9の撓みが少なくなることにより、胴部1が楕円変形し易くなるとか、座屈においても部分的な応力集中が掛かり易くなり、強度が低くなる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、胴部部分に装着された巻きラベルの、減圧に伴う弛みの発生を抑制することを技術的課題とし、もってボトルに減圧が発生しても、巻きラベルの表示部の良好な表示状態を維持すると共に、巻きラベルのボトルに対する安定した装着を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するための本発明の主たる構成は、
有底円筒状の胴部の上端に、上方に縮径したテーパー筒状の肩部を介して、キャップの着脱により開閉される口筒部を設けた合成樹脂製の薄肉な耐熱丸型ボトルであること、
胴部の略中央高さ位置に中央周リブを設けて上胴部と下胴部とに区画すること、
上胴部と下胴部の一方に螺旋溝状をした複数の斜めリブを平行に設けると共に、巻きラベルを巻き付け装着すること、
上胴部と下胴部の他方に周溝状をした複数の横リブを平行に設けること、
にある。
【0010】
斜めリブは、横リブに比べて減圧に伴う撓み変形が発生し難いので、この斜めリブを設けた上胴部と下胴部の一方の胴部部分は、ボトル内に発生した減圧により高さ寸法を減少させる撓み変形を生じることが殆どなく、これによりこの胴部部分に装着された巻きラベルは殆ど弛み変形することがない。
【0011】
このため、巻きラベルを装着した一方の胴部部分は、ボトル内の減圧の有無に関係なく、略一定した形状を安定して維持することになる。
【0012】
横リブを設けた他方の胴部部分は、横リブの作用により、ボトル内に発生した減圧により高さ寸法を減少させる撓み変形が生じ、これにより減圧吸収作用を発揮する。
【0013】
中央周リブは、従来からのこの種の薄肉ボトルに設けられた中央周リブと同様に、胴部に作用する外力に対して補強リブとして機能すると共に、溝幅を狭める撓み変形をすることにより、減圧吸収機能を発揮して、ボトルに減圧吸収能力を与える。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成を、上胴部に、斜めリブを設けると共に、巻きラベルを巻き付け装着した、ものである。
【0015】
上胴部に、斜めリブを設けると共に、巻きラベルを巻き付け装着したものにあっては、ボトルの目に付き易い上胴部に巻きラベルを装着し、この巻きラベルの装着状態を適正に維持させることができるので、巻きラベルに施された表示部を目に付き易くかつ適正な状態に維持させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、巻きラベルを装着した一方の胴部部分は、ボトル内の減圧の有無に関係なく、略一定した形状を安定して維持することになり、巻きラベルの適正な装着を安定して維持することができる。
【0017】
横リブを設けた他方の胴部部分は、横リブの作用により、減圧吸収作用を発揮するので、ボトルに減圧吸収能力を付与して、斜めリブを設けた胴部部分における減圧に対する耐久性の低下の発生を阻止することができる。
【0018】
上胴部に、斜めリブを設けると共に、巻きラベルを巻き付け装着したものにあっては、ボトルの目に付き易い上胴部に巻きラベルを適正に装着した状態を維持させることができるので、巻きラベルに施された表示部に高い表示効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、一部破断した正面図である。
【図2】本発明の他の実施形態例を示す、一部破断した正面図である。
【図3】従来技術の一例を示す、一部破断した正面図である。
【図4】図3に示した従来例の要部を拡大した、説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において、図3および図4の従来技術の説明に用いた符号と同一符号は、同じ部分を示すものとする。また、以下の説明において「上下」とは、ボトル本体の仮想される中心軸に沿って、口筒部4側を「上」、底部2側を「下」とする。
【0021】
本発明による薄肉耐熱丸型ボトルは、PET等の合成樹脂により薄肉に2軸延伸ブロー成形されて内容物を熱充填されるボトル本体と、巻きラベル11とから構成されている。
【0022】
ボトル本体(以下、図1および第2図参照)は、下端を底部2で塞いだ有底円筒形状をした胴部1の上端に、上方に縮径したテーパー筒状の肩部3を介して、キャップの着脱により開閉される口筒部4を起立状に連設して構成されている。胴部1の略中央高さ位置には、溝幅を狭めることにより減圧吸収機能を発揮し得る、溝幅の大きな周溝状の中央周リブ5が陥没状に設けられており、この中央周リブ5により、胴部1は上胴部6と下胴部7とに区画されている。
【0023】
本発明の第1の実施形態例を示す図1の場合、上胴部6には、螺旋溝状の複数の斜めリブ9が平行に設けられており、上胴部6を、ボトル内に発生した減圧に対して妄りに変形しないように機械的に補強している。また、上胴部6の上端部分には、中央周リブ5と同様に、溝幅を狭めることにより減圧吸収機能を発揮し得る上端周リブ8が陥没状に設けられている。
【0024】
表面に表示部12を施したシート製の巻きラベル11は、斜めリブ9が設けられた上胴部6の外表面に巻回状に装着されて、斜めリブ9を覆い隠している。すなわち、巻きラベル11は、上胴部6の外表面に接触して、上胴部6に設けられた斜めリブ9の溝開口部を塞いだ状態となっている。
【0025】
上胴部6に設けられた斜めリブ9は、ボトル本体内の減圧により殆ど撓み変形しないので、この斜めリブ9を設けた上胴部6に巻回装着された巻きラベル11には、ボトル本体内に減圧が発生しても殆ど弛み変形を生じることがない。これにより巻きラベル11に、従来のようにシワ13が発生せず、巻きラベル11の表面に施された表示部12は、歪み14を生じることなく、良好な表示状態を安定して維持することになる。
【0026】
下胴部7に設けられた横リブ10は、変形により減圧を吸収する減圧変形部分Hの主体部分を構成しているが、この横リブ10による減圧吸収力が足らない場合には、図1の中央周リブ5、上端周リブ8のように溝幅を狭め、撓み変形させやすくすることで減圧吸収力を補ってもよい。さらには底部2のボトル内への陥没変形により減圧吸収力を補ってもよい。
【0027】
本発明の第2の実施形態例を示す図2の場合は、図1に示した第1の実施形態例とは逆に、上胴部6に横リブ10を設け、下胴部7に斜めリブ9を設けると共に、巻きラベル11を装着したものである。横リブ10を設けた上胴部6には、中央周リブ5と上端周リブ8が隣接するので、一つの大きな減圧変形部分Hを形成することになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明の合成樹脂製の薄肉耐熱丸型ボトルは、胴部に装着した巻きラベルに対して、ボトル本体内の減圧による不良変形や剥離を防止するものであり、巻きラベルを装着する薄肉耐熱丸型ボトルに対して幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0029】
1 ;胴部
2 ;底部
3 ;肩部
4 ;口筒部
5 ;中央周リブ
6 ;上胴部
7 ;下胴部
8 ;上端周リブ
9 ;斜めリブ
10;横リブ
11;巻きラベル
12;表示部
13;シワ
14;歪み
H ;減圧変形部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状の胴部(1)の上端に、上方に縮径したテーパー筒状の肩部(3)を介して、キャップの着脱により開閉される口筒部(4)を設けた合成樹脂製の薄肉な耐熱丸型ボトルであって、前記胴部(1)の略中央高さ位置に中央周リブ(5)を設けて上胴部(6)と下胴部(7)とに区画し、該上胴部(6)と下胴部(7)の一方に螺旋溝状をした複数の斜めリブ(9)を平行に設けると共に、巻きラベル(11)を巻き付け装着し、前記上胴部(6)と下胴部(7)の他方に周溝状をした複数の横リブ(10)を平行に設けたことを特徴とする合成樹脂製の薄肉耐熱丸型ボトル。
【請求項2】
上胴部(6)に、斜めリブ(9)を設けると共に、巻きラベル(11)を巻き付け装着した請求項1に記載の薄肉耐熱丸型ボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10552(P2013−10552A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145618(P2011−145618)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】