説明

薄膜状体液試料において実施される血清学的凝集イムノアッセイ及び他のイムノアッセイのための方法

液体試料中で血清学的な凝集アッセイを実施するための方法及びシステム。このシステムは、いかなる精密な流体操作用部品も使用することなく、試料分析チャンバ内でインサイチュの試料/試薬混和液を作成するための単純な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/041,784号明細書;2008年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/041,791号明細書;2008年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/041,790号明細書;2008年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/041,794号明細書;2008年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/041,797号明細書;及び2008年4月9日に出願された米国仮特許出願第61/043,571号明細書の利益を主張する。
【0002】
本開示は、液体試料において血清学的な凝集アッセイを実施するための方法及びシステムに関する。このシステムは、いかなる精密な流体操作用部品も使用することなく、試料分析チャンバ内でインサイチュの試料/試薬混和液を作成するための単純な方法を提供する。反応槽のいかに小さい範囲においても、反応液の相対及び絶対濃度を確認し得る。
【背景技術】
【0003】
多くのアッセイでは、分析物の濃度がアッセイの有効範囲となり得るように、被分析試料の正確な希釈度を提供することが必要とされ、この希釈度が分析物の濃度に影響を及ぼすため、検査の正確さ及び精密さは希釈の正確さ及び精密さに大きく依存する。このように希釈する理由の一つとしては、イムノアッセイが前地帯効果として知られる現象によって影響を受けることが挙げられる。用語「前地帯」は、本開示で使用されるとき、一般に沈降又は凝集に基づくイムノアッセイにおいて反応が抑制又は妨害される抗体過剰の状況を指すものとし、後地帯は、イムノアッセイにおいて凝集反応又は沈降反応が抑制される抗原過剰の状況であり、及び「フック効果」は、抗原過剰の状況により結果が偽低値となることである。前地帯効果が起こる状況では、偽陰性及び偽低値の結果が生じ得るため、患者にとっては破局的な結果となる。
【0004】
アッセイの組み合わせごとに実験的に定義された動作範囲があり、アッセイは、適切な希釈度の試料及び反応物で実施しなければならない。このタイプの希釈は、従来から、精密な流体操作用部品を使用するか、又はより高い希釈度の抗体でのアッセイを手動で繰り返して、その陰性が真の陰性であるかどうかを確かめることにより達成されている。これらは非常に正確であるが、入念なキャリブレーションが必要で、自動化された機器の複雑性が大幅に増す。さらに、試料中に存在する分析物の範囲がアッセイのダイナミックレンジを超えることもあり、正確な結果を求めるには、試料をさらに希釈することが必要となり得る。加えて、先行技術は、様々な濃度の反応物を収容するために多数のチャンバを必要とする。
【0005】
感染症の病原体に対する抗体等に関する血清学的アッセイは、存在する免疫について、免疫化によるものも、又は感染病原体に対する過去の、若しくは現在の曝露によるものも(存在している免疫グロブリンのクラスによる)説明する点で重要である。同様に、こうしたアッセイは自己免疫などの検出にも用いられ得る。凝集、補体結合、沈降等を含め、数多くのアッセイタイプが実施されている。かかる検査にほぼ共通する特徴の一つは、抗体がそれ以上は陽性試験をもたらすのに有効ではなくなる点を検出するため、試料を複数回希釈する必要があることである。これは「力価」と称され、力価は、患者の血清又は血漿が検出可能な凝集又は被検抗原との実測反応をもたらす最高の希釈度である。これは、事実上、結果を得るために個別のチャンバにおいて多くの個別の試験を実施することが必要となる。かかるアッセイの別の問題は、エンドポイントの決定が時に困難で、従って力価測定に重大な誤りが加わることである。自動化により試験の効率及び精度は上昇し得るが、機器による希釈の実施は、初めに試験ごとに異なり得る所望の希釈度を定義する必要があることを含め、非常に困難で時間がかかるとともに、複数回の希釈ステップは非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数回の希釈を必要とせず、且つ前地帯効果に起因する偽陰性のリスクを排除した、自動システムで抗体価を測定するための方法及び装置を提供するならば、望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に従えば、インビトロチャンバにおける分析対象の反応の範囲に添加される反応物の濃度測定を可能にするため、感知可能マーカーが使用される。本開示における感知可能マーカーとは、分析対象の反応に干渉せず、且つそれを付加する反応物に近い速度で拡散する色素又は検出可能な物質を意味する。感知可能マーカーは、吸収又は蛍光発光などの光学手段により計測することのできる1つ又は複数の色素であり得る。感知可能マーカーは、使用される薄い分析チャンバに後に添加され、そこで混合されることになる2つ以上の液体のうちの少なくとも1つと合わさった溶液又はコロイド懸濁液として均質に存在する。
【0008】
チャンバの高さは100ミクロン(100μ)未満、好ましくは20ミクロン(20μ)未満であり、且つチャンバの横寸法は好ましくは数センチメートルであるため、垂直方向の寸法と水平方向の寸法との差が1,000倍より大きく、結果として垂直方向の寸法において極めて速く平衡に達し、一方、横方向の寸法における平衡は、数百〜数千倍長くかかる。撮像又は走査された反応チャンバの画像全体、及び画像又は走査の個別の小さい範囲が分析され、ここで個別の分析範囲の横方向アスペクトは、チャンバの高さの1〜3倍の範囲であり、分析に供される容積はほぼ平衡状態である。第1の範囲の横に、ミリメートル又はそれ以上の距離でとられる範囲は、異なる平衡状態を有し得る。混和された感知可能マーカーからの信号が、それに続くさらなる反応物との混合又は拡散の前と後とに計測され、それにより構成成分の相対的な希釈度を反映する最終的な感知可能マーカー濃度の計測値を計算することが可能となる。チャンバに3つ以上の液体が存在する場合、他の感知可能マーカーと識別することが可能な2つ以上の感知可能マーカーが用いられてもよく、各々は、添加される構成成分の1つに対して添加され、それにより構成成分の各々についての相対的な割合の計算が可能となる。構成成分の初期濃度が既知である場合、相対濃度を使用することにより、添加された構成成分の絶対濃度を単位容積当たりの質量として計算してもよい。従って、任意の小さい分析範囲における添加された反応物の相対濃度は、添加した試薬のその濃度を計算可能な仮想の個別反応槽又はチャンバとして取り扱うことができ、実施されるイムノアッセイにおいて用いられる結合対遊離又は凝集又は他の信号についての結果は、添加された抗体又は添加された抗原の各濃度についての試料若しくは標準物質の計算された希釈度当たりの得られた信号として計測してプロットすることができる。
【0009】
従って、本発明の目的は、混合及び拡散を用いて、チャンバ内の薄膜状試料中の2つ以上の混和性を有する液体間に、チャンバの薄い方向の寸法における平衡が極めて速く、且つチャンバの長軸方向における濃度差がアッセイの時間内には平衡に達しないような濃度勾配を生じさせ、最終的な相対的相互希釈度が、所望の化学反応のいずれにも寄与しない感知可能マーカーであって、その特性が、反応チャンバのいかなる小さい範囲においてもその正確な計測を可能とするようなものである感知可能マーカーの相対濃度により計測される方法及び装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の方法の実施に使用されるチャンバの概略的な平面図である。
【図2】図1のチャンバの断面図である。
【図3】図1のチャンバの拡大断面図であり、チャンバの横方向アスペクトにわたる種々の濃度の構築を促進するための、チャンバの上面を撓ませることによるチャンバ内の溶液のポンピングを示す。
【図4】ポンピングステップが完了した後の図1のチャンバの平面図である。
【図5】図1のチャンバからの、図4の線a−aに沿った蛍光発光読み取りのトレースを示し、感知可能マーカーは蛍光色素である。
【図6】図1のチャンバの平面図であり、このチャンバは、試料が最初にチャンバに導入されたときに試料の混合を生じさせる内部バッフルを有し、従って試料を物理的に操作する必要がない。
【図7】図1と同様の概略的な平面図であるが、チャンバ内の試料が比較的少量である。
【図8】図7と同様の平面図であるが、混合後の試料を示す。
【図9】図1のチャンバの概略的な平面図であるが、チャンバに3つの液体を添加した結果を示す。
【図10】本発明に従い形成された検査チャンバの概略的な断面図である。
【図11】図10と同様の検査チャンバの図であり、チャンバに検査試料を添加した後の標的エピトープ含有粒子の凝集と、凝集のない対照粒子とを示す。
【図12】図10と同様の断面図であり、チャンバに検査試料を添加する前に検査チャンバ内に存在する抗体を示す。
【図13】図11と同様の図であり、チャンバに検査試料を添加した後の標的エピトープ含有粒子の凝集と、凝集のない対照粒子とを示す。
【図14A】検査チャンバの複合的な平面図であり、これは、試料中に凝集した標的エピトープ含有粒子が存在することと、対照粒子に凝集がないこととを示す。
【図14B】線a−aに沿った走査から得られた試料中の凝集粒子のグラフであり、試料中に粒子凝集がなくなるカットオフ位置Tを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、この例では四角形の、チャンバ1の概略的な上面図であり、その断面が図2に示される。チャンバは、比較的薄い上面プレートと底面プレートとからなり、そのうちの少なくとも一方は透明でなければならない。チャンバには2つ以上の液体が導入され、一方は分析対象の試料3であり、他方は分析に必要な試薬4である。これらの液体の少なくとも一方は溶解したマーカーを有し、これは、蛍光のように蛍光性であってもよく、又はフェノールレッドなどの吸収性色素であってもよい。マーカーは、所望の分析信号に化学的に干渉しないようなものでなければならず、またマーカー信号は、分析のいかなる信号又は反応生成物からも、補償できないような形の影響を受けてはならない。
【0012】
示される例では、液体4が蛍光マーカーを含む分析試薬であり、液体3が被分析試料である。これらの液体が、示される方向に等量でチャンバに導入される場合、それらはほぼ領域5において交わる。同様にこのチャンバの拡大断面図である図3は、液体がどのように部分的に混合され得るかを示す。チャンバ表面の一方が上下に「ポンピング」されると、ほぼ線6に沿って液体の混合が起こり、結果として、図4に示される希釈勾配が生じる。図4はチャンバの上面図である。
【0013】
好適な混合期間の後、チャンバは、垂直方向の拡散により所与の垂直方向の区間において液体の混合を完了させるのに十分な期間にわたり静置させる。この時点で、領域7及び8の流体は依然として完全に無希釈であり、混合前の本来の状態の液体に相当する。線a−aに沿ってマーカーから蛍光を読み取ると、図5に確認し得るような結果となる。図5は、線a−aに沿ったチャンバの断面図であり、各相対位置におけるチャンバの蛍光を示すグラフと、分析物からの光学的吸収率を示す第2のグラフとを重ね合わせている。
【0014】
信号レベル9は無希釈のマーカー付き試薬からのものを表し、信号レベル10は試料のバックグラウンドレベルを表すため、信号レベル11に対応するチャンバ領域は、正確に半分だけ希釈された試料を含む。従って、所望の反応の信号から推定される分析物濃度に2を掛けることで、正確な濃度を得ることができる。この例において、混合液の当該領域に存在する分析物が多過ぎるために分析物信号が高過ぎることが分かった場合、より高い希釈度の、領域12と同等のマーカー信号を有する領域を見つけ、次に、それに従い分析物の吸光結果を乗算するだけでよい。
【0015】
同様に、前地帯効果が存在する状況下では、機器は、全ての希釈を考慮に入れた後に得られる分析物の最も高い結果を報告し、また、その計算が行われたことも報告する。
【0016】
試料は、チャンバを「ポンピング」する以外の手段で混合してもよい。例えば、図6は、バッフル13を有するチャンバの概略的な上面図であり、バッフル13は、図示されるとおり液体が導入されたときに、試料の混合を生じさせる働きをする。
【0017】
試料又は試薬のいずれかのある部分を無希釈のまま保つ必要はない。例えば、チャンバの別の概略的な上面図である図7には、比較的少量の試料14であって、この場合、マーカーを含む液体である試料と、マーカーを含まない広い試薬領域15とが含まれる。混合前、領域16及び17についての基準読み取り値がとられ、混合後(図8)は、無希釈の試料は残っていないが、元の基準値を使用して上記と同じ計算を行うことができる。マーカーが試料と一様に混合されるこの特定の例は、例えば比較的高い希釈率が必要な場合に特に適している。
【0018】
示された例は全て、希釈勾配の形成を示しているが、これは必ずしも必要というわけではない。単一の近似的な希釈で十分な場合には、試料及びマーカー付き試薬(又はマーカー付き試料)を一様になるまで混合し、任意の好適な領域から読み取り値をとり、ここでもマーカー濃度を使用して最終的な実際の希釈度を計算することができる。
【0019】
上記の例では、チャンバの厚さは一様であると仮定したが、それが絶対的に必要というわけではない。計測点の厚さが既知であるか、若しくは他の手段、例えば、定義された幾何学形状のチャンバの場合には、絶対的な読み取り位置によりそれを測定することのできるチャンバか、又は干渉分光法などのマーカーとは無関係な手段、若しくは米国特許第6,127,184号明細書、米国特許第6,723,290号明細書及び米国特許第6,929,953号明細書(これらの特許は、全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるシステムにより厚さを計測することのできるチャンバであれば、許容され得る。
【0020】
チャンバ厚さは、対流セルを発生させないために十分な薄さでなければならず、また、拡散による完全な垂直方向の混合を妥当な期間内に生じさせ得るためにも十分な薄さでなければならない。好ましい実施形態において、チャンバは厚さ1mm未満であり、好ましくは200μ未満である。チャンバの面積は概して重要ではないが、ほとんどの用途について約4cm2の面積が適当である。
【0021】
反応を進行させるため、混合後にチャンバを長時間にわたりインキュベートしなければならない場合、所望の限度を越えて拡散することで勾配は小さくなる傾向があり得る。そうした場合、デキストラン、又はポリオキシエチレンなどの粘度増強剤、又はゼラチン若しくは寒天などの、少なくとも部分的なゲルを形成することのできる作用剤を使用して、さらなる拡散を遅延させることができる。
【0022】
本発明の特に重要な別の用途は、標準曲線と分析用希釈とを同時に提供するために用いることのできる手段である。標準曲線は、所与の分析のキャリブレーションを行うために頻繁に用いられ、ここでは様々な濃度の既知の標準物質を分析して、試料濃度に対する分析信号の反応曲線が作成される。次に未知の濃度の分析物を含む試料を計測したとき、分析信号を標準曲線と比較すると、試料中の分析物の濃度が得られる。これは、別個の容器での複数回の分析を必要とし、時間に従う再現性がない反応の場合、分析を実行する毎にそのプロセスを反復することが必要となり得る。対照材料の使用に伴っても同様の状況が存在し、対照材料は、事実上、分析が正しく機能していることを保証するため試料と同時にバッチ式に分析される既知の濃度の標準物質といえる。これらのいずれの状況も、記載される本発明の特定の使用により回避することができる。
【0023】
図9は、3つの液体、すなわち、未知の濃度の分析物を含む試料と、マーカーを含む試薬と、適当な濃度の標準物質とが導入されている試料セル18を示す。構成成分が完全に混合されないよう、バッフル19を使用してもよい。先述のとおりチャンバが平衡状態になると、線21に沿った読み取り値を使用して、先述の方法を用いることにより標準曲線が作成され、線20に沿った読み取り値を使用して、分析に適した試料希釈度が求められる。従って、標準曲線及び試料の同時分析を同じ反応チャンバで行うことができ、それにより試料と標準物質との反応条件が同じであることが確実となる。適切な混合が起こる限り、2つ以上の試料について、幾何形状を変更することにより単一のチャンバで実行してもよい。計測されるのは、走査範囲の画素毎の光である。
【0024】
凝集アッセイは、上記のとおりの検査チャンバにおいて実施され、血清学的アッセイに影響する以下の特徴が加わる。好ましくは、標的エピトープを発現する粒子と同様の化学組成だが、標的エピトープは有しない対照粒子が、試料中に標的粒子と共に存在し得る。対照粒子は、その色又は他の特徴により、標的エピトープを含む粒子と区別することができ、従ってリガンドにより引き起こされる凝塊形成は、対照粒子には通常は起こらないはずである。著しい対照粒子の凝集が起こる場合、それは非特異的な凝集を示し、この条件を検査の妥当性の確認に用い得る。例えば、標的エピトープ含有粒子の50%が凝集し、且つ凝集した対照粒子が10%未満であるならば、それは陽性試験を示す。有意な同数の対照粒子と標的エピトープ含有粒子とが凝集したならば、検査は妥当でない。標的にも、又は対照にも有意な凝集がないとき、それは、標的エピトープに対して特異的な標的抗原が被験試料中に存在しないことを意味する。この結果もまた、陰性結果の妥当な検査であると見なされる。
【0025】
図10は、上述される一般的な構造の少なくとも1つの透明な表面101を有する検査チャンバの概略的な断面図である。チャンバの1つの表面に対して第1の粒子102が付着しており、第1の粒子102の表面は、標的抗体が特異性を有する抗原103を発現又は含有する。粒子は、ラテックス、ラテックス−スチレン、スチレン、若しくはポリカーボネートなどの、当該技術分野で周知されているいくつかの手段のいずれかにより抗原が表面に結合した人工的なものであってもよく、又は、花粉、細菌、酵母、糸状菌若しくは真菌などの天然のものであってもよい。粒子は、粒子の凝集が起こったことを判断することが可能な大きさでなければならず、最も好ましくは0.2μ〜20μの粒径範囲である。粒子は可溶性コート104に付着し、好ましくはそれによって被覆され、可溶性コート104は、トレハロースなどの、抗原103の活性を保護する糖を含み得る。また、検査チャンバ内には、標的抗体が特異性を有しない表面抗原114を有する対照粒子115も存在する。対照粒子115は、第1の粒子102と同じ粒径範囲であり、好ましくは第1の粒子102と同じ材料で形成される。
【0026】
検出対象の抗体106を含む液体試料105がチャンバに添加されると、可溶性コート104が溶解し、第1の粒子102及び対照粒子115が放出されて、付着した抗原103が抗体106(試料中に存在する場合)に曝露される。試料を添加してしばらく経った後の図10のチャンバを示す図11に示されるとおり、試料中に抗体106が十分な量で存在する場合には、それにより第1の粒子102の凝集が生じて少なくとも粒子対107が形成され、又はより高濃度で存在する場合には、さらに大きい凝集塊108が形成される。自動機器によりチャンバを調べることで、当該技術分野で周知の何らかの画像処理アルゴリズムを用いて粒子の凝集塊形成の存在が検出され得ることは直ちに明らかである。図11に示される例では、対照粒子115は凝集したり、又は塊状になったりはしない。
【0027】
示される例では、抗体106は、感染に対する反応の初期に形成される抗体であるIg−Mのように多価であると仮定された。しかしながら、免疫反応が長く続く場合、Ig−G抗体が現れ、これは多価ではなく、凝集塊形成を起こす効果はそれほどない。この場合により有効に凝集塊形成を生じさせるためには、可溶性の層104が、検出対象の非多価抗体110のFc断片に連結する働きをする多価の抗Fc抗体を含むべきである。こうすることで、図12及び図13に示されるとおり、層104が溶解すると抗Fc抗体109が放出されて抗体110を結合し、事実上、多価抗体110の形態が作り出され、それにより粒子102が凝集することができる。
【0028】
図14A及び図14Bは、それぞれ、上記に引用された開示及び本開示の特徴を組み合わせたチャンバの概略的な上面図、及び線a−aに沿った位置に対する凝集粒子の存在を表すグラフである。先述のとおりマーカーと混和された試料112と希釈剤113とを、勾配希釈の形成を可能にするような方法でチャンバに導入する。抗原及び検出する抗体の性質に依存する好適なインキュベーション期間後、チャンバを線a−aに沿って走査し、図14Bで分かるとおり、凝集反応又は凝集塊形成がそれ以上起こらない位置を表す領域Tを特定する。この範囲におけるマーカーの相対濃度によって決定されるとおりの、この時点における試料の希釈度の逆数が、抗体の力価に等しい。例えば、マーカー濃度が、元の試料範囲112における濃度と比較して0.2である場合、力価は5である。凝集しない対照粒子115もまた、図14Aに示される。
【0029】
沈降などのように、抗原及び抗体が凝集塊状の粒子ではなく、目に見える複合体を形成する場合の、凝集反応又は凝集塊形成以外の免疫反応を検出し得ることは注記されるべきである。また、本発明に記載される手段は、2008年4月2日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第61/041,784号明細書及び現在本明細書と共に出願中の整理番号7564−0035−1の主題である、分析の方法が仮想で結合物を遊離物から取り分けることを含むものを含め、他のタイプのイムノアッセイにも用いられ得ることも注記されるべきである。後者の場合、本発明を用いて前地帯効果を回避する必要はないが、本発明を使用するとアッセイの動作範囲を最適化することができ、本開示に含まれる詳細から逸脱することなく本発明が実施され得る。
【0030】
本発明は、その特定の詳細な実施形態に関して図示及び説明されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その様々な形態及び詳細の変更が行われ得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の1つ又は複数の標的分析物抗体に対して血清学的凝集アッセイを実施するための方法であって、
a)対向する平面状の表面であって、そのうちの少なくとも一方が透明である表面を有する薄い平面状チャンバを提供するステップと、
b)前記平面状チャンバに有効量の検出可能な第1の粒子を入れるステップであって、前記第1の粒子が、その表面上に、標的分析物抗体が特異性を有する抗原を含む、ステップと、
c)前記第1の粒子と粒径及び形状が同様の第2の対照粒子を前記チャンバに入れるステップであって、前記対照粒子が、色又は蛍光又は他の識別可能な特徴について前記第1の粒子と異なり、及び前記対照粒子が前記抗原を有しない、ステップと、
d)前記検出可能な粒子と前記試料との互いの混和を可能にする、又は生じさせるステップであって、それにより前記標的分析物抗体が、それが存在する場合には、前記第1の粒子の凝集を生じさせる、ステップと、
e)前記混和液を電子的に撮像又は走査して、検出された粒子の凝集によって生じる画素強度のパターンを分析することにより個々の粒子凝集を検出するステップと、
f)任意の凝集した第1の粒子の信号を、任意の凝集した対照粒子の信号と比較することにより、有意な粒子凝集の有無を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記粒子凝集の存在を検出するステップが、凝集した第1の粒子の画素面積を、任意の凝集した対照粒子を含む画素面積と共に計測することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子凝集を検出するステップが、凝集した、又は凝集塊を形成した任意の所与のタイプの粒子の割合を決定することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
個別に識別することのできる検出可能な第1の粒子に2つ以上のクラスがあり、各クラスが異なる抗原を含むため、複数のアッセイが同じ試料チャンバで同時に行われ得る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の粒子と前記対照粒子とが、互いを識別することができるように異なる形で標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液体試料中の1つ又は複数の標的分析物抗体に対して血清学的凝集アッセイを実施するための方法であって、
a)対向する平面状の表面であって、そのうちの少なくとも一方が透明である表面を有する薄い平面状チャンバを提供するステップと、
b)前記平面状チャンバに有効量の検出可能な第1の粒子を入れるステップであって、前記第1の粒子が、その表面上に、前記試料中に存在し得る標的抗原に対するリガンドを含む、ステップと、
c)前記第1の粒子と粒径及び形状が同様の第2の対照粒子を前記チャンバに入れるステップであって、前記対照粒子が、色又は蛍光又は他の識別可能な特徴について前記第1の粒子と異なり、及び前記対照粒子が前記リガンドを有しない、ステップと、
d)前記検出可能な粒子と前記試料との互いの混和を可能にする、又は生じさせるステップであって、それにより前記標的分析物抗体が、それが存在する場合には、前記第1の粒子の凝集を生じさせる、ステップと、
e)前記混和液を電子的に撮像又は走査して、検出された粒子の凝集によって生じる画素強度のパターンを分析することにより個々の粒子凝集を検出するステップと、
f)任意の凝集した第1の粒子の信号を、任意の凝集した対照粒子の信号と比較することにより、有意な粒子凝集の有無を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記粒子凝集の存在を検出するステップが、凝集した第1の粒子を含む画素面積を、任意の凝集した対照粒子を含む画素面積と共に計測することにより行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粒子凝集を検出するステップが、凝集した、又は凝集塊を形成した任意の所与のタイプの粒子の割合を決定することにより行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
個別に識別することのできる検出可能な粒子に2つ以上のクラスがあり、各クラスが異なる抗原を含むため、複数のアッセイが同じ試料チャンバで同時に行われ得る、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の粒子と前記対照粒子とが、互いを識別することができるように異なる形で標識される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
液体試料中の1つ又は複数の標的分析物抗体に対して血清学的凝集アッセイを実施するための方法であって、
a)対向する平面状の表面であって、そのうちの少なくとも一方が透明である表面を有する薄い平面状チャンバを提供するステップと、
b)前記平面状チャンバに有効量の検出可能な粒子を入れるステップであって、前記粒子が、その表面上に、標的分析物抗体又は抗原が特異性を有するリガンドを含む、ステップと、
c)前記検出可能な粒子と前記試料との互いの混和を可能にする、又は生じさせるステップであって、それにより前記標的分析物抗体又は抗原が、それが存在する場合には、前記粒子の凝集を生じさせる、ステップと、
d)前記混和液を電子的に撮像又は走査して、検出された粒子の凝集によって生じる画素強度のパターンを分析することにより個々の粒子凝集を検出するステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2011−517775(P2011−517775A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503173(P2011−503173)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/039303
【国際公開番号】WO2009/124190
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(501354521)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】