薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置
【課題】主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減する。
【解決手段】薄膜磁気ヘッド300は,主磁極層26と、ライトシールド層60と、ギャップ層29と、薄膜コイル11,51とが基板1上に積層された構成を有している。薄膜磁気ヘッド300はシールド磁性層40を有している。シールド磁性層40は、主磁極層26に接続されている。シールド磁性層40は、下部前側シールド部42を有している。下部前側シールド部42の前端面42aと、下端面42bとのなす角度を示す前端角αが鈍角に設定されている。前端面42aは、ABS30に配置されている。下端面42bは下部前側シールド部42のうちの最も基板1に近い位置に配置されている。
【解決手段】薄膜磁気ヘッド300は,主磁極層26と、ライトシールド層60と、ギャップ層29と、薄膜コイル11,51とが基板1上に積層された構成を有している。薄膜磁気ヘッド300はシールド磁性層40を有している。シールド磁性層40は、主磁極層26に接続されている。シールド磁性層40は、下部前側シールド部42を有している。下部前側シールド部42の前端面42aと、下端面42bとのなす角度を示す前端角αが鈍角に設定されている。前端面42aは、ABS30に配置されている。下端面42bは下部前側シールド部42のうちの最も基板1に近い位置に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。
【0003】
薄膜磁気ヘッドは、記録方式により大別すると、長手磁気記録方式と垂直磁気記録方式とに分けることができる。長手磁気記録方式はハードディスク(記録媒体)の記録面内(長手)方向にデータを記録する方式であり、垂直磁気記録方式はハードディスクに形成する記録磁化の向きを記録面の垂直方向に形成してデータを記録する方式である。このうち、垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドは長手磁気記録方式に比べて格段に高い記録密度を実現できる上に、記録済のハードディスクが熱揺らぎの影響を受けにくいので、長手磁気記録方式よりも有望視されている。
【0004】
ところで、従来、垂直磁気記録方式の磁気ヘッド(perpendicular
magnetic recording head:以下「PMR」ともいう)は、磁極層と薄膜コイルとを有し、磁極層に薄膜コイルを巻き回した電磁石の構造を有している。
【0005】
従来のPMRとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等には、主磁極層のトレーリング側にシールド層を備えたPMRが開示されている。図46に示すPMR600はそのようなPMRの一例である。
PMR600は記録媒体の垂直方向に沿った記録磁界が通る主磁極層601と、主磁極層601の周りに巻き回わされた薄膜コイル602と、記録ギャップ層603と、記録ギャップ層603を挟んで主磁極層601と対向するシールド層604とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−272958号公報
【特許文献2】特開2010−176732号公報
【特許文献3】特開2010−157303号公報
【特許文献4】特開2009−295262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のPMRでは、薄膜コイルに電流を流し磁界を発生させて記録媒体にデータを記録する。例えば、前述したPMR600の場合であれば、薄膜コイル602に電流を流して記録媒体にデータを記録する。
【0008】
しかし、薄膜コイル602は、電流を流すと発熱するため、その熱が周囲のコイル絶縁層605に伝わってしまう。コイル絶縁層605は、フォトレジスト等の有機物質で形成されているため、薄膜コイル602よりも熱膨張係数が大きい。そのため、コイル絶縁層605は熱が加わると膨張しやすい。コイル絶縁層605が膨張すると、シールド層604の媒体対向面606側の端部が媒体対向面606よりも外側に向かって押し出されて、突出してしまう。
【0009】
PMRは、スライダと呼ばれる電子部品に薄膜形成プロセスを駆使して形成されている。PMRによって記録媒体にデータを記録するときは、スライダを記録媒体から浮上させている。スライダを記録媒体から浮上させる高さ(記録媒体とスライダとの距離)はフライングハイトと呼ばれ、7〜10nm程度のごくわずかな距離であることが知られている。そして、650〜850GB/in2(1インチ平米あたり650〜850ギガバイト)程度の高記録密度を達成するためには、このフライングハイトを5〜8nm以下にすることが求められる。
【0010】
しかしながら、前述のPMR600のように媒体対向面が突出すると、PMRが記録媒体に衝突し、PMRが破損しやすくなる。このようなPMRの破損を回避するためには、PMRが記録媒体に衝突しにくくなるよう、フライングハイトを高くせざるを得ない。そのため、従来のPMRでは、フライングハイトを低くすることが困難である。その結果、従来のPMRでは、記録密度を高めることが極めて困難であった。
【0011】
こうした磁極層の突出(プルトルージョン)は、前述したように、主に薄膜コイルの発熱によって引き起こされる。そのため、磁極層の突出を抑制するためには、薄膜コイルの発熱を抑制すればよい。一般に、電流の流れている導体から発生する熱はジュール熱と呼ばれ、電流の大きさの2乗および導体の電気抵抗に比例することが知られている(ジュールの法則)。したがって、薄膜コイルの発熱を抑制するには、薄膜コイルの電気抵抗を小さくすればよい。
【0012】
薄膜コイルの電気抵抗は薄膜コイルの断面積(電流の流れる方向と交差する方向の断面の面積)に反比例する。そのため、薄膜コイルの電気抵抗を小さくするためには、薄膜コイルの断面積を大きくすればよい。薄膜コイルの磁極層の回りに巻き回される回数(ターン数ともいう)を少なくすれば、薄膜コイルを太くすることができ、断面積を大きくすることができる。しかし、そうすると、薄膜コイルが発生する磁界の強さが弱くなり、PMRの書き込み特性(例えば、オーバーライト特性)が低下するという課題がある。
【0013】
また、薄膜コイルのターン数を変えることなく、薄膜コイルの幅を広げるか、または、薄膜コイルの厚さを大きくしても、薄膜コイルの断面積を大きくすることができる。例えば、PMR600の場合であれば、薄膜コイル602の幅w602を広げるか、厚さh602を大きくしても薄膜コイルの断面積を大きくすることができる。
【0014】
しかし、幅w602を広げると、磁路長を短くすることが難しくなる。磁路長は薄膜コイルが巻かれている磁極層の長さであり、その大きさは主に図46に示す幅LXによって左右される。
【0015】
ところで、薄膜コイルには交流電流が流されるが、そのときのインピーダンスは周波数とインダクタンスに比例する。そのため、磁気記録媒体への記録密度を高めるべく薄膜コイルに周波数の高い交流電流を流すと、インピーダンスが高くなり、電流が流れにくくなる。これを回避するにはインダクタンスを小さくすることが有効であり磁路長の短縮が有効である。しかし、薄膜コイルの幅を広げると磁路長を長くせざるを得ず、PMRのインダクタンスが大きくなってしまう。こうなると、記録信号の周波数を高くすることができなくなり、磁気記録媒体への記録密度を高めることができなくなる。また、薄膜コイルの厚さを大きくしても磁路長を長くせざるを得ない。
【0016】
一方、PMR600では、薄膜コイル602よりも媒体対向面606に近い位置と、薄膜コイル602よりも媒体対向面606から離れた位置のそれぞれにコイル絶縁層605の一部がコイル絶縁層605a,605bとして形成されている。そのため、コイル絶縁層605aの幅とコイル絶縁層605bの幅(媒体対向面606に交差する方向の幅でそれぞれ1.5μm程度、合わせて3μm程度)の分だけ幅LXが長くなってしまう。
【0017】
このような課題を解決し得るPMRとして従来、例えば図47に示されているPMR700が知られていた。特許文献4にも同様のPMRが記載されている。PMR700は、上部薄膜コイル708と、PMR600と同様の主磁極層710を有している。また、PMR700は下部薄膜コイル718と、シールド磁性層720と、絶縁層731,732を有している。
【0018】
このPMR700では、上部シールド層が、主磁極層710に対向するシールド部701と、上部薄膜コイル708の媒体対向面706側に配置された前側シールド部703と、上部薄膜コイル708を跨ぐ連結シールド部704とを有している。さらに、前側シールド部703と対向シールド部701との接続用シールド部702が形成されていた。このPMR700では、隣接する上部薄膜コイル708の間にコイル絶縁層709が配置され、上部薄膜コイル708の外側にはコイル絶縁層709が配置されていない。そのため、前述したPMR600よりも磁路長を短縮することができる。
【0019】
しかしながら、PMR700では、シールド磁性層720の構造に起因した次のような課題が解決されていなかった。図47に示したように、シールド磁性層720は、リーディングシールド部711と、下部前側シールド部712と、接続シールド部713と、連結シールド部714とを有している。下部前側シールド部712は媒体対向面706に配置されたシールド端面712aを有している。また、下部前側シールド部712の下側に対向絶縁層733が配置されていた。対向絶縁層733も、媒体対向面706に配置された前端面733aを有している。シールド磁性層720は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材で形成されているが、対向絶縁層733はアルミナ(Al2O3)等の絶縁材で形成されている。
【0020】
そして、PMR700を製造するときは、基板上に必要な薄膜を形成した後、研磨面が平坦になるように、基板の前端面(図47には図示せず)に対する研磨加工や機械加工を行い、それによって媒体対向面706を形成する。
【0021】
しかし、PMR700では、前端面内において、下部前側シールド部712および対向絶縁層733という材質の異なる2つの層が隣接して配置されていた。そのため、前端面に対する研磨加工や機械加工を行うと、図48に示したように、下部前側シールド部712のシールド端面712aに、鋭く角ばった凸部712Pが出現することがあった。
【0022】
PMR700では、主磁極層710と、リーディングシールド部711との間に非磁性薄膜734が形成されている。しかし、リーディングシールド部711も下部前側シールド部712も、磁性材で形成されているため、透磁率が高い。そのため、記録磁界に応じた磁束が主磁極層710を通過すると、その一部がリーディングシールド部711や下部前側シールド部712に漏れ出すことがある。そして、シールド端面712aに凸部712Pが出現していると、下部前側シールド部712に磁束が漏れ出したとき、その磁束が凸部712Pに集中しやすい。すると、凸部712Pから記録媒体に向けて放出される磁束が強くなりやすいため、記録媒体に書きこまれているデータが消去されたり、書きかえられたりといった不具合が起きやすい。
【0023】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因した、データ消去等を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、シールド磁性層は、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、その下部前側シールド部の媒体対向面内に配置されている前端面と、その前端面に接続され、かつ下部前側シールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されている薄膜磁気ヘッドを特徴とする。
【0025】
この薄膜磁気ヘッドの場合、下部前側シールド部の前端角が鈍角に設定されているから、前端面と下端面の交差する部分に形成される凸部を丸みを帯びた形状で簡易にしかも確実に形成することができる。
【0026】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、下部前側シールド部の前端面と下端面とが交差する部分を前端凸部としたときに、その前端凸部は、前端角が直角に設定されている場合よりも前端面と下端面とが緩やかに交わった凸状部分に対応していることが好ましい。
【0027】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、前端凸部が凸状部分に対応しているため、前端凸部から磁束が漏れ出す場合、その磁束は強さの差が小さい複数の磁束に分散されやすい。
【0028】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの場合、媒体対向面内に配置された前端面を有し、かつ下部前側シールド部の下端面に接する上端面を備えた対向絶縁層を更に有し、その対向絶縁層の上端面が、媒体対向面から離れるにしたがい基板に近づくような下り傾斜状に形成されていることが好ましい。
【0029】
上記薄膜磁気ヘッドでは、対向絶縁層の上端面が下り傾斜状に形成されているため、その対向絶縁層に接するように磁性層を形成すると、その磁性層の前端角が鈍角になる。
【0030】
また、上記薄膜磁気ヘッドの場合、下部前側シールド部に接続され、かつ対向絶縁層よりも媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を更に有し、その接続シールド部の基板から最も離れた上端面とともに、その接続シールド部の最も媒体対向面に近い位置に配置されている前端面が下部前側シールド部に接続されていることが好ましい。
【0031】
この薄膜磁気ヘッドの場合、前端角が直角に設定されている場合よりも、下部前側シールド部と接続シールド部との接触面積が拡大される。
【0032】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドでは、対向絶縁層の上端面の全体が接続シールド部の上端面よりも基板に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0033】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、シールド磁性層は、媒体対向面内に配置されたシールド端面を有し、かつ主磁極層の基板側において非磁性薄膜を介して主磁極層に対向するリーディングシールド部を有し、薄膜コイルは主磁極層と基板との間に配置されている基板側コイル層を有し、リーディングシールド部のシールド端面と、そのシールド端面に接続され、かつリーディングシールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている第1の下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定され、基板との間隔が基板側コイル層の基板から最も離れた位置に配置される上端面と等しく形成された第2の下端面をリーディングシールド部が有する薄膜磁気ヘッドを提供する。
【0034】
上記薄膜磁気ヘッドは、基板側コイル層よりも媒体対向面に近い位置に配置され、かつ基板から最も離れた位置に配置される上端面が基板側コイル層の上端面と段差なく形成されている下部接続シールド部を更に有し、その下部接続シールド部の上端面と、リーディングシールド部の第2の下端面とが直に接続されていることが好ましい。
【0035】
また、上記薄膜磁気ヘッドは、主磁極層の基板に最も近い位置に配置される下端面に非磁性薄膜を介して接するベース絶縁層を更に有し、そのベース絶縁層に基板側コイル層の上端面が直に接していることが好ましい。
【0036】
さらに、ライトシールド層は、媒体対向面内において主磁極層に対向する対向シールド部と、薄膜コイルを跨ぐことなく対向シールド部に接続され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている上部前側シールド部とを有し、上部前側シールド部は媒体対向面内に配置されているシールド前端面と、そのシールド前端面よりも基板から離れた位置に配置され、かつ媒体対向面に交差する交差方向に沿って媒体対向面から離れて形成されているシールド上端面と、シールド前端面とシールド上端面とを直に接続しているシールド接続部とを有することが好ましい。
【0037】
また、上部前側シールド部は、シールド前端面とシールド上端面とを最短距離で結ぶ平坦面よりも媒体対向面から離れるように傾斜した後退傾斜構造をシールド接続部が有するように、媒体対向面側の一部分を切除して形成されていることが好ましい。
【0038】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、以下の(1)から(3)までの各工程を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供する。
(1)薄膜コイルを構成するコイル層のうちの主磁極層と基板との間に配置されている基板側コイル層を形成するための導体層を形成する導体層形成工程
(2)導体層の表面の平坦化処理を行うことによって、媒体対向面内に配置された前端面を有する対向絶縁層を形成する対向絶縁層形成工程
(3)対向絶縁層の表面に直に接するようにして、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を、前端角が鈍角になるように形成する下部前側シールド部形成工程
【0039】
上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、以下(4)の傾斜処理工程を更に有し、その傾斜処理工程によって下り傾斜状に形成された対向絶縁層の表面に直に接するようにして、下部前側シールド部形成工程を実行することが好ましい。
(4)対向絶縁層の表面を、媒体対向面から離れるにしたがい基板に近づくような下り傾斜状に形成する傾斜処理工程
【0040】
上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、以下(5)の接続シールド部形成工程を更に有し、接続シールド部を形成した後、その接続シールド部の媒体対向面側の側面が露出するように、傾斜処理工程を実行することが好ましい。
(5)下部前側シールド部に接続され、かつ対向絶縁層よりも媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を形成する接続シールド部形成工程
【0041】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、対向絶縁層の基板から最も離れた上端面の全体が、接続シールド部の基板から最も離れた上端面よりも基板に近い位置に配置されるように、傾斜処理工程を実行することが好ましい。
【0042】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、以下の(6)から(9)の工程を更に有することが好ましい。
(6)主磁極層を形成した後、ライトシールド層を構成する対向シールド部を媒体対向面内において主磁極層に対向するように形成する対向シールド部形成工程
(7)導体層の媒体対向面側に、ライトシールド層を形成するための第1のシールド部を対向シールド部形成工程によって形成された対向シールド部に接続され、かつ媒体対向面内に配置されるように形成する第1のシールド部形成工程
(8)ライトシールド層を構成する連結シールド部を第1のシールド部形成工程によって形成された第1のシールド部に接続され、かつ薄膜コイルを跨ぎ、さらに媒体対向面から離れるように媒体対向面から後退させて形成する連結シールド部形成工程
(9)第1のシールド部の連結シールド部によって被覆されていない媒体対向面側の一部分を切除するトリミング工程
【0043】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法の場合、トリミング工程は、連結シールド部形成工程によって形成された連結シールド部をマスクに用いて、第1のシールド部の連結シールド部によって被覆されていない媒体対向面側の一部分を切除することが好ましい。
【0044】
そして、本発明は、基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、基台を固定するジンバルとを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、シールド磁性層は、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、その下部前側シールド部の媒体対向面内に配置されている前端面と、その前端面に接続され、かつ下部前側シールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているヘッドジンバルアセンブリを提供する。
【0045】
さらに、薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、シールド磁性層は、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、その下部前側シールド部の媒体対向面内に配置されている前端面と、その前端面に接続され、かつ下部前側シールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているハードディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0046】
以上詳述したように、本発明によれば、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因した、データ消去等を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドのABSを示す正面図である。
【図3】下部薄膜コイルを示す平面図である。
【図4】上部薄膜コイルを示す平面図である。
【図5】下部薄膜コイルの要部を示す平面図である。
【図6】ABSの要部を拡大して示す断面図である。
【図7】(a)は本発明の実施の形態にかかる下部前側シールド部の要部を示す一部省略した断面図、(b)は従来の下部前側シールド部の要部を示す一部省略した断面図である。
【図8】対向シールド部、上部前側シールド部および連結シールド部の要部を示す斜視図である。
【図9】トリム前シールド部と上部前側シールド部とを示す側面図である。
【図10】上部前側シールド部の変形例を示し、(a)は横平坦部を有しない場合、(b)は縦平坦部を有しない場合の側面図である。
【図11】図1の要部を示す断面図である。
【図12】図1に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図13】図12の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図14】図13の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図15】図14の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図16】図15の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図17】図16の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図18】図17の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図19】図18(a)の要部を示す断面図である。
【図20】図18の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図21】図20の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図22】図21の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図23】図22の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図24】図23の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図25】図24の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図26】図25の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図27】図28の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図28】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図29】上部薄膜コイルを構成する第2のコイル層を示す平面図である。
【図30】上部薄膜コイルを構成する第1のコイル層を示す平面図である。
【図31】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造工程を示す一部省略した図1に対応した断面図である。
【図32】図31の後続の工程を示す断面図である。
【図33】図32の後続の工程を示す断面図である。
【図34】図33の後続の工程を示す断面図である。
【図35】図34の後続の工程を示す断面図である。
【図36】図35の後続の工程を示す断面図である。
【図37】図36の後続の工程を示す断面図である。
【図38】変形例にかかる製造工程を示す断面図である。
【図39】図38の後続の工程を示す断面図である。
【図40】図39の後続の工程を示す断面図である。
【図41】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図42】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの変形例を示し、(a)は下部前側シールド部242を有する場合の要部を示す断面図、(b)は下部前側シールド部243を有する場合の要部を示す断面図である。
【図43】本発明の第4の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図44】図43の要部を示す断面図である。
【図45】(a)は本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えたハードディスク装置を示す斜視図、(b)はHGAの裏面側を示す斜視図である。
【図46】従来の薄膜磁気ヘッドの一例を示す断面図である。
【図47】別の従来の薄膜磁気ヘッドを示す断面図である。
【図48】図47の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
第1の実施の形態
(薄膜磁気ヘッドの構造)
まず、図1〜図11を参照して本発明の第1の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドの構造について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300のエアベアリング面(以下「ABS」という)と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図、図2は薄膜磁気ヘッド300のABS30を示す正面図である。図3は下部薄膜コイル11を示す平面図、図4は上部薄膜コイル51を示す平面図である。図5は下部薄膜コイル11の要部を示す平面図である。図6はABS30の要部を拡大して示す断面図である。図7の(a)は下部前側シールド部42の要部を拡大して示す断面図であり、(b)は従来の下部前側シールド部712の要部を拡大して示す断面図である。図8は、対向シールド部61、上部前側シールド部62および連結シールド部63の要部を示す斜視図である。図9はトリム前シールド部と上部前側シールド部とを示す側面図である。図10は、上部前側シールド部62の変形例を示し、(a)は横平坦部を有しない場合、(b)は縦平坦部を有しない場合の側面図である。図11は図1の要部を示す断面図である。
【0049】
薄膜磁気ヘッド300は、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、記録媒体に対向する媒体対向面としてのABS30を有している。なお、以下では、薄膜磁気ヘッド300の主要部の構造について説明し、主要部以外の部分の構造は後述する製造工程の中で説明する。
【0050】
再生ヘッドは、ABS30の近傍に配置された磁気的信号検出用のMR素子5を有している。また、再生ヘッドは、基板1上に形成されている絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3と、MR素子5をシールドしているシールドギャップ膜4とを有している。さらに、再生ヘッドは、シールドギャップ膜4の上に形成されている磁性材料からなる上部シールド層6と、上部シールド層6の上に形成されている絶縁層7とを有している。再生ヘッドは、記録ヘッドよりも基板1に近い位置に配置されている。
【0051】
MR素子5は、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果を示す感磁膜によって構成されている。
【0052】
上部シールド層6は中間に絶縁部6bを有している。また、絶縁部6bよりも下側に第1のシールド部6aが形成され、上側に第2のシールド部6cが形成されている。
【0053】
薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8が絶縁層2に形成されている。加熱部8はDFH(Disk
flying heater)とも呼ばれ、電流が流されることによって発熱し、その熱を上部シールド層6などに伝達させる機能を有している。また、感熱部9が絶縁層7に形成されている。感熱部9はHDI(Head Disk Interlayer)センサとも呼ばれる。感熱部9は上部シールド層6付近の熱(温度)を感知し、その感知した熱に応じて抵抗値が変化する素子を用いて形成されている。
【0054】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8によって上部シールド層6や下部シールド層3を加熱する。上部シールド層6や下部シールド層3は加熱部8から受けた熱によって体積が膨張する。その結果、上部シールド層6や下部シールド層3が図1には図示しない記録媒体に接触したとすると、上部シールド層6や下部シールド層3のABS30付近が摩擦によって熱を帯びる。薄膜磁気ヘッド300ではこの摩擦熱に伴う感熱部9の抵抗値の変化を検出することによって、上部シールド層6や下部シールド層3が記録媒体に接触したかどうかの判定が行われる。また、その判定結果に応じて加熱部8に流れる電流値を制御しながらフライングハイトを制御している。
【0055】
記録ヘッドは、下部薄膜コイル11と、対向絶縁層20と、主磁極層26と、ギャップ層29と、シールド磁性層40と、上部薄膜コイル51と、ライトシールド層60と、上部ヨーク層65、変位抑制層85および保護絶縁層90を有し、これらが基板1上に積層された構成を有している。
【0056】
薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とによって一連の薄膜コイルが形成されている。下部薄膜コイル11は、この一連の薄膜コイルのうちの主磁極層26と基板1との間に配置されている部分に対応している。そのため、下部薄膜コイル11は、本発明の実施の形態に係る基板側コイル層に対応している。
【0057】
図3に示すように下部薄膜コイル11は3つのターン部11b、11d、11fを有している。ターン部11b、11d、11fは後述する接続シールド部41と第1の後側シールド部44との間に配置されている。下部薄膜コイル11はターン部11b、11d、11fがフォトレジスト層15を介して並んだ構造を有している。ターン部11b、11d、11fのうち、ターン部11bがABS30に最も近い位置に配置されているので、ターン部11bが前側ターン部に対応している。ターン部11fが後側ターン部に対応している。
【0058】
そして、下部薄膜コイル11は、リード部13Aからターン部11bにつながるループ部11aと、ターン部11bからターン部11dにつながるワンループ部11cと、ターン部11dからターン部11fにつながるワンループ部11eと、ターン部11fから接続部11hまでのハーフループ部11gを有している。
【0059】
下部薄膜コイル11はリード部13Aから接続部11hまでが一本につながることによってシールド磁性層40の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で3ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図1では、下部薄膜コイル11について、ターン部11b、11d、11f、接続部11hのみが示されている。ターン部11b、11d、11fは横幅よりも厚さ(ABS30に沿った方向(上下方向)の高さ)の大きい縦長の構造を有している。なお、本実施の形態において、横幅とはABS30と交差する方向(交差方向)の幅を意味している。
【0060】
また、下部薄膜コイル11は、図5に示すように、ワンループ部11cがABS30に接近するにしたがい漸次幅が狭まり、ABS30に最も近い箇所で最も幅が狭まる可変幅構造を有している。すなわち、図5に示すようにして、ワンループ部11cの幅をWd1、Wd2、Wd0を定めたときにWd1>Wd2>Wd0となっている。そして、ワンループ部11cのうちの最も幅の狭い部分がターン部11dとなっている。ループ部11aおよびワンループ部11eもワンループ部11cと同様の可変幅構造を有し、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部11b、11fとなっている。ここで、ターン部11b、11d、11fの幅はそれぞれWb0(約0.9μm)、Wd0(約0.9μm)、Wf0(約0.9μm)である。
【0061】
そして、下部薄膜コイル11は、次のような一連の3ターンループを形成している。すなわち、リード部13Aから、ループ部11a、ワンループ部11c、ワンループ部11e、ハーフループ部11gを通って接続部11hにつながることによって、3ターンループが形成されている。
【0062】
なお、図5において、ターン部11bの前側面11bfからABS30までの距離は、下部薄膜コイル11の前側距離を示している。また、ターン部11fの後側面11frからABS30までの距離は、下部薄膜コイル11の後側距離を示している。
【0063】
次に、上部薄膜コイル51について説明する。図4に示すように、上部薄膜コイル51は3つのターン部51g、51e、51cを有している。ターン部51g、51e、51cは、後述する上部前側シールド部62と、後側シールド部64との間に配置されている。上部薄膜コイル51はターン部51g、51e、51cがフォトレジスト層55を介して並んだ構造を有している。ターン部51g、51e、51cのうち、ターン部51gがABS30に最も近い位置に配置されているので、ターン部51gが前側ターン部に対応している。ターン部51cが後側ターン部に対応している。
【0064】
そして、上部薄膜コイル51は、接続部51aからターン部51cにつながるループ部51bと、ターン部51cからターン部51eにつながるワンループ部51dと、ターン部51eからターン部51gにつながるワンループ部51fと、ターン部51gからリード部14Aまでのハーフループ部51hを有している。
【0065】
上部薄膜コイル51は接続部51aからリード部14Aまでが一本につながることによってライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で3ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図1では、上部薄膜コイル51について、ターン部51g、51e、51c、接続部51aのみが示されている。ターン部51g、51e、51cはターン部11b、11d、11fと同様に縦長の構造および可変幅構造を有している。そして、ワンループ部51f、ワンループ部51d、ループ部51bのうち、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部51g、51e、51cとなっている。
【0066】
そして、上部薄膜コイル51は次のような一連の3ターンループを形成している。すなわち、接続部51aから、ループ部51b、ワンループ部51d、ワンループ部51f、ハーフループ部51hを通ってリード部14Aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0067】
また、図1に示したように、上部薄膜コイル51は上端面51Aを有している。上端面51Aは基板1から最も離れた位置に配置されている。この上端面51Aは後述するシールド上端面62fと段差なく形成され、シールド上端面62fとともに共通平坦面59(図25参照)を形成している。さらに、上部薄膜コイル51は層間絶縁膜32だけを介して後述する上部ヨーク層65の上面に接続されている。上部薄膜コイル51は磁性材からなる磁性層を介することなく上部ヨーク層65に接続されている。
【0068】
薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11の接続部11hが上部薄膜コイル51の接続部51aに接続されている。これにより、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とは一連のコイルを形成している。下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とには、記録媒体に記録されるデータに応じた電流が流され、その電流によって記録磁界が発生する。
【0069】
続いて、対向絶縁層20について説明する。対向絶縁層20は、図11に示すように傾斜上端面20aを有している。この傾斜上端面20aは、後述する下部前側シールド部42の傾斜下端面42bに直に接している。また、傾斜上端面20aはABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。傾斜上端面20aは、ABS30から後述する接続シールド部41に到達するまで傾斜が一定に形成されている。表面は凹凸のない平坦面である。
【0070】
また、傾斜上端面20aの全体が接続シールド部41の上端面41aよりも基板1に近い位置に配置されている。絶縁層の表面が削りとられたことによって傾斜上端面20aが形成されている。傾斜上端面20aが形成されていることによって、対向絶縁層20の表面に凹部が形成されている。その凹部に接続シールド部41の後述する前端面41bが出現している。
【0071】
対向絶縁層20は、前端面20bを有している。前端面20bはABS30内に配置されている。そして、図6に示すように、対向絶縁層20では、前端面20bのうちの最も下部前側シールド部42に近い位置に欠落端部20dが形成されている。欠落端部20dは、薄膜磁気ヘッド300の製造工程でABS30を形成するための研磨等を行った際、対向絶縁層20の一部がわずかに欠落することによって形成されている。
【0072】
次に、主磁極層26について説明する。主磁極層26は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体は透磁率(magnetic permeability)が高い。したがって、主磁極層26は、磁束が透過しやすく、より多くの磁束が通る。そのため、記録磁界に応じたより強い磁束が主磁極層26からABS30に向かって放出される。
【0073】
主磁極層26は、図2、図11に示すように、ABS30側に磁極端面26aを有している。磁極端面26aは下部薄膜コイル11側よりも上部薄膜コイル51側の幅が広く、その幅が下部薄膜コイル11に近づくにつれて漸次狭まるベベル形状に形成されている。磁極端面26aの上部薄膜コイル51側の幅がトラック幅を規定している。トラック幅は例えば0.06〜0.12μm程度である。磁極端面26aはABS30内に配置されている。
【0074】
主磁極層26は磁極端面26aを有するトラック幅規定部と、幅広部と、拡幅部とを有している。トラック幅規定部はABS30からの距離に応じて変化しない一定の幅を有している。また、幅広部はトラック幅規定部よりもABS30から離れた位置に配置され、トラック幅規定部よりも幅広に形成されている。また、幅広部はトラック幅規定部との境界部分でトラック幅規定部と同じ大きさの幅を有するとともに、その幅がABS30から離れるにしたがい漸次広がっている。拡幅部は幅広部よりも大きい一定の幅を有している。本実施の形態では、磁極端面26aから、幅が大きくなり始めるまでの部分をトラック幅規定部としている。
【0075】
また、図11に示すように、主磁極層26では、トラック幅規定部に、上傾斜面26cと、下傾斜面26eとが形成されている。
【0076】
上傾斜面26cはABS30から離れるにしたがい基板1から離れるような上り傾斜状に形成されている。上傾斜面26cは磁極端面26aと、上端面26dとに接続されている。
【0077】
下傾斜面26eはABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。下傾斜面26eは磁極端面26aと、幅広部の下端面26fとに接続されている。下傾斜面26eは,トラック幅規定部から幅広部まで形成されている。下端面26fは主磁極層26の中で基板1に最も近い位置に配置されている。
【0078】
図1にも示すように、主磁極層26には、上端面26d上の、後述する対向シールド部61と上部ヨーク層65との間の部分に非磁性層27,28が積層されている。
【0079】
なお、前述のトラック幅規定部におけるABS30からの長さをネックハイトという。ネックハイトは例えば0.05〜0.3μm程度である。
【0080】
ギャップ層29は主磁極層26の上傾斜面26cおよび上端面26dに沿って、対向シールド部61および絶縁層31と、主磁極層26および非磁性層27,28との間に形成されている。ギャップ層29は、上傾斜面26cおよび上端面26dを被覆するようにして形成されている。ギャップ層29は、アルミナ(Al2O3)等の非磁性の絶縁材やRu,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いて形成されている。
【0081】
次に、シールド磁性層40について説明する。図1に示すように、シールド磁性層40は、接続シールド部41と、下部前側シールド部42と、連結シールド部43と、第1の後側シールド部44と、第2の後側シールド部45と、第3の後側シールド部46と、リーディングシールド部47とを有している。シールド磁性層40は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。
【0082】
接続シールド部41と、下部前側シールド部42とは、下部薄膜コイル11よりもABS30側に配置されている。また、接続シールド部41の上に下部前側シールド部42の一部分が重なっている。接続シールド部41はABS30から離れた位置に形成されている。しかし、下部前側シールド部42の一部分がABS30内に配置されている(図11参照)。
【0083】
ここで、図1、図11を参照して接続シールド部41について詳しく説明する。接続シールド部41は下部前側シールド部42と連結シールド部43とを接続している。接続シールド部41は対向絶縁層20よりもABS30から離れた位置に配置されている。
【0084】
接続シールド部41は上端面41aと、前端面41bとを有している。接続シールド部41では、上端面41aとともに前端面41bが下部前側シールド部42に接続されている。上端面41aは、接続シールド部41のうちの基板1から最も離れた位置に配置されている。前端面41bは接続シールド部41のうちのABS30に最も近い位置に配置されている。
【0085】
次に、下部前側シールド部42について、図6、図11を参照して詳しく説明する。下部前側シールド部42は、前端面42aと、傾斜下端面42bと、上端面42cと、起立端面42dと、交差端面42eと、前端凸部42Pを有している。
【0086】
下部前側シールド部42では、前端面42aの全体がABS30内に配置されている。傾斜下端面42bは、対向絶縁層20の前述した傾斜上端面20aに直に接している。傾斜下端面42bは傾斜上端面20aと同様に、ABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。また、傾斜下端面42bはABS30から接続シールド部41に到達するまで傾斜が一定に形成されている。表面は凹凸のない平坦面である。
【0087】
そして、下部前側シールド部42では、図6に示す前端角αが鈍角に設定されている。前端角αは前端面42aと傾斜下端面42bとのなす角度を示している。前端角αは前端面42aから傾斜下端面42bに向かって時計回りに計った角度である。
【0088】
上端面42cは下部前側シールド部42のうちの基板1から最も離れた位置に配置されている。上端面42cの全体が平坦に形成されている。起立端面42dは傾斜下端面42bのABS30から最も離れた位置に形成されている。起立端面42dは傾斜下端面42bからABS30に沿って起立するように形成されている。また、起立端面42dは、接続シールド部41の前端面41bに直に接している。交差端面42eは起立端面42dの最上部からABS30に交差する方向に沿って平坦に形成されている。また、交差端面42eは接続シールド部41の上端面41aに直に接している。
【0089】
そして、図6に詳しく示すように、前端凸部42Pは前端面42aと傾斜下端面42bとが交差する角部に対応している。前端凸部42Pは、丸みを帯びた凸状部分であって、前端角が図6に示す角度βのような直角に設定されている場合と異なり、前端面42aと傾斜下端面42bとが緩やかに交わることによって形成されている。
【0090】
連結シールド部43は、下部薄膜コイル11のターン部11b、11d、11fを跨ぐようにして形成され、接続シールド部41と第1の後側シールド部44とを接続している。連結シールド部43は、主磁極層26から放出された磁束を還流させるリターン磁極としての機能を有している。
【0091】
第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46は、いずれも下部薄膜コイル11のターン部11b、11d、11fよりもABS30から離れた位置に配置されている。また、第1の後側シールド部44の上に第2の後側シールド部45が重なり、第2の後側シールド部45の上に第3の後側シールド部46が重なっている。第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46はABS30に近い前側面からABS30までの距離の等しい三段構造を形成している。第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46は、連結シールド部43を主磁極層26に連結する連結部としての機能を有している。
【0092】
リーディングシールド部47は下部前側シールド部42に接続され、その反対側上面に非磁性薄膜25が形成されている。リーディングシールド部47は幅方向中間部分にV溝部が形成されている。V溝部は概ね断面V字状に形成されている。その底部は主磁極層26のトラック幅規定部の下面に応じた傾斜構造を有している。図2に示すように、V溝部の内側に後述する非磁性薄膜25と、主磁極層26のトラック幅規定部とが納められている。非磁性薄膜25はV溝部の内側内面上に形成されている。V溝部の上側にV溝部を覆うようにしてギャップ層29が形成されている。
【0093】
さらに、リーディングシールド部47は切欠部を有している。切欠部は、V溝部の後側に形成されている。切欠部の内側に主磁極層26の幅広部の一部が納められている。
【0094】
次に、ライトシールド層60について説明する。ライトシールド層60は、対向シールド部61と、上部前側シールド部62と、連結シールド部63と、後側シールド部64とを有している。
【0095】
対向シールド部61はABS30に臨む前端面を有している。また、対向シールド部61はABS30内においてリーディングシールド部47に対峙している。また、対向シールド部61のABS30に臨む前端面に、ギャップ層29が配置される微小スペースが形成されている。その微小スペースにギャップ層29のABS30側部分が形成されている。対向シールド部61はギャップ層29を挟んでABS30側から順に主磁極層26、非磁性層27、非磁性層28に対向するようにして形成されている。また、対向シールド部61は上端面が平坦になっていて、その上端面に上部前側シールド部62が接続されている。
【0096】
上部前側シールド部62は上部薄膜コイル51よりもABS30側に配置されている。この上部前側シールド部62について、図8、図9を参照して詳しく説明する。
【0097】
上部前側シールド部62はシールド前端面62bと、シールド上端面62fと、シールド接続部62cと、シールド下端面62rとを有している。シールド前端面62bはABS30内に配置されている。シールド前端面62bはABS30内に露出している。図8において、網掛けした部分がシールド前端面62bを示している。シールド上端面62fは、シールド前端面62bよりも基板1から離れた位置に配置されている。基板1から離れる側を上側、基板1に近づく側を下側ともいう。シールド上端面62fは、連結シールド部63に接続されている。シールド上端面62fは、ABS30の交差方向に沿って形成されている。しかも、シールド上端面62fは、ABS30から離れて形成されている。シールド上端面62fは、シールド下端面62rよりも小さい大きさを有している。
【0098】
シールド接続部62cはシールド前端面62bとシールド上端面62fとを接続する部分である。シールド接続部62cは、シールド前端面62bとの接続部62xを除くすべての部分がABS30から離れた位置に配置されている。
【0099】
シールド接続部62cは接続部62xから、シールド上端面62fに接続される接続部62yに近づくにしたがい、ABS30から漸次離れるように傾斜した傾斜構造を有している。接続部62xはABS30内に配置されているが、接続部62yはABS30から離れた位置に配置され、ABS30から後退している。
【0100】
そして、図9に示すように、この接続部62xと接続部62yとを結ぶ仮想的な平坦面99を考えた場合、この平坦面99はシールド前端面62bとシールド上端面62fとを最短距離で結ぶ平坦面である。この平坦面99よりも、シールド接続部62cはABS30から離れるように傾斜した後退傾斜構造を有している。さらに、シールド接続部62cは横平坦部62c1と、縦平坦部62c2と、湾曲部62c3とを有し、これらが滑らかにつながり一体となった構造を有している。横平坦部62c1は概ねABS30の交差方向に沿って形成されている。縦平坦部62c2は概ねABS30に沿って形成されている。
【0101】
シールド下端面62rはABS30の交差方向に沿って形成されている。シールド下端面62rはABS30に達する大きさを有している。シールド下端面62rはシールド上端面62fよりも大きい大きさを有している。シールド下端面62rはABS30側に対向シールド部61が接続され、そのABS30から離れた後側に絶縁層31が接続されている。
【0102】
上部前側シールド部62は以上のような構造を有しているので、トリム前前側シールド部62A(図9の上側)よりも、ABS30内に配置されている端面の大きさが小さく、体積も小さい。トリム前前側シールド部62Aは、後述するトリミング工程を実行することによって形成される直前の前側シールド部である。トリム前前側シールド部62Aは、シールド上端面62fがABS30に達し、トリム前前端面62aを有している。そして、トリム前前端面62aとシールド前端面62bの大きさを比較すると、シールド前端面62b<トリム前前端面62aである。
【0103】
次に、連結シールド部63について説明する。連結シールド部63は、上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐようにして形成されている。連結シールド部63はABS30から離れて形成されている。連結シールド部63は上部前側シールド部62と、後側シールド部64とに接続されている。
【0104】
後側シールド部64は上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置に配置されている。後側シールド部64は、連結シールド部63と、上部ヨーク層65とに接続されている。後側シールド部64は上部前側シールド部62と等しい高さに形成されている。そのため、後側シールド部64は、上部薄膜コイル51およびシールド上端面62fとともに共通平坦面59を形成している。
【0105】
上部ヨーク層65は主磁極層26の上端面26dのうちの非磁性層27,28よりもABS30から離れた後側に接続されている。上部ヨーク層65の上端面は対向シールド部61の上端面と段差なく形成されている。上部ヨーク層65の上端面は対向シールド部61の上端面とともに共通平坦面59A(図22参照)を形成している。
【0106】
その他、薄膜磁気ヘッド300は、変位抑制層85を有している。変位抑制層85は連結シールド部63の上端面に接続されている。変位抑制層85は線熱膨張係数の小さい非磁性材料によって形成されている。例えば、変位抑制層85は無機材料または金属材料を用いることが好ましく、例えばSiC,AlN,Si3N4,W(タングステン)を用いることができる。特に、変位抑制層85は硬度の大きい非磁性材料を用いることが好ましい。例えば、SiCはアルミナに比べてビッカース硬度が大きいため、変位抑制層85はSiCを用いることが好ましい。
【0107】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は保護絶縁層90を有している。保護絶縁層90はアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて形成されている。保護絶縁層90は埋込部90aと、カバー部90bとを有し、埋込部90aとカバー部90bとが一体となっている。埋込部90aは、シールド接続部62cの全体に接し、かつシールド接続部62cとABS30との間に隙間なく埋め込まれている。カバー部90bは連結シールド部63および変位抑制層85を覆うように形成されている。
【0108】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
次に、前述の図1、図2、図6、図9とともに、図12(a),図12(b)〜図18(a),図18(b)、図19、図20(a),図20(b)〜図27(a),図27(b)を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド300の製造方法について説明する。
【0109】
ここで、図12(a)〜図18(a)および図20(a)〜図27(a)は、薄膜磁気ヘッド300の各製造工程における図1に対応した断面図、図12(b)〜図18(b)および図20(b)〜図27(b)は、同じく図2に対応した正面図である。なお、各図において、“ABS”とは、後にABSが形成される部分を示している。
【0110】
まず、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料からなる基板1を準備する。そして、図12(a)、図12(b)に示すように、その基板1の上に、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料からなる絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3を順に形成する。絶縁層2を形成するときに加熱部8が形成される。
【0111】
次に、MR素子5をシールドするように絶縁材料を用いてシールドギャップ膜4を形成する。このとき、MR素子5に接続される図示しないリードを形成し、MR素子5およびリードをシールドギャップ膜4で覆う。それから、磁性材料と絶縁材料とを用いてシールドギャップ膜4の上に上部シールド層6(第1のシールド部6a、絶縁部6b、第2のシールド部6c)を形成する。
【0112】
次に、上部シールド層6の上にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて、上部シールド層6と、後に形成される記録ヘッドとを分離するための絶縁層7を形成する。絶縁層7を形成するときに感熱部9が形成される。これまでの工程で記録ヘッドを形成するための積層体が得られる。その後、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて連結シールド部43を形成するための磁性層(厚さは0.6μm程度)を形成して、積層体表面に絶縁層を形成し、化学機械研摩(以下「CMP」という)によって積層体表面の平坦化を行う。すると、対向絶縁層17と連結シールド部43が形成される。このとき、連結シールド部43はABS30から0.3μm〜1μm(本実施の形態では、0.5μm程度)離して形成する。
【0113】
続いて、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)の絶縁層18(膜厚は0.1μm〜0.3μm程度)を形成する。それから、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンをマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、絶縁層18を選択的に開口する。そして、接続シールド部形成工程を実行する。この工程では、フレームめっき法により、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて接続シールド部41,第1の後側シールド部44を厚さ1〜1.5μm程度で形成する。
【0114】
次に、図13(a)、図13(b)に示すように、アルミナ(Al2O3)からなる絶縁層19(膜厚は0.02μm〜0.3μm程度、好ましくは0.1μm〜0.2μm程度)をアトミックレイヤー法によるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で積層体の表面全体に形成する。絶縁層19は、接続シールド部41、第1の後側シールド部44を被覆するように形成される。
【0115】
それから、導体層形成工程を実行して導体層70を形成する。導体層70は、下部薄膜コイル11を形成するために形成する。この工程では、まず、フレームめっき法によって、接続シールド部41と第1の後側シールド部44との間に導体層70を形成する。導体層70は、2つの間隙部70aを備え、かつ絶縁層19を介して接続シールド部41と第1の後側シールド部44とに隙間なく接触するようにして形成する。導体層70は間隙部70aを備えているから間欠導体層である。
【0116】
次に、図14(a)、図14(b)に示すように、導体層70における2つの間隙部70aを埋めるようにフォトレジスト層80(膜厚は1.5μm〜2.5μm程度)を形成する。次いで、アルミナ(Al2O3)を用いて積層体の表面をカバーし得る絶縁膜20を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、接続シールド部41と第1の後側シールド部44が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0117】
すると、図15(a)、図15(b)に示すように、導体層70とともに接続シールド部41と第1の後側シールド部44の平坦化処理が行われる。この場合、平坦化処理を行うことによって、対向絶縁層20が形成されるので、平坦化処理は対向絶縁層形成工程としての意味を有している。また、対向絶縁層20とともに下部薄膜コイル11が形成される。
【0118】
続いて、図16(a)、図16(b)に示すように、対向絶縁層20および絶縁層19の表面を露出させるレジストパターン79を形成する。続いて、傾斜処理工程を実行する。傾斜処理工程では、レジストパターン79をマスクにしてイオンビームエッチング、ウェットエッチング等を行い、図17(a)、図17(b)に示すように対向絶縁層20および絶縁層19の表面を削りとり、対向絶縁層20の表面に凹部を形成する。この場合、削り取った後の表面が下り傾斜状になるように対向絶縁層20の表面および絶縁層19の表面を削りとり、これによって対向絶縁層20の最上面に傾斜上端面20aを形成する。また、傾斜処理工程では、接続シールド部41のABS30側の一部分が露出するようにイオンビームエッチング等を行う。さらに、傾斜処理工程では、対向絶縁層20の最上面(基板1から最も離れた上端面)の全体が上端面41aよりも基板1に近い位置に配置されるようにイオンビームエッチング等を行う。
【0119】
続いて、図18(a)、図18(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層21(膜厚は0.3μm〜0.7μm程度)を形成する。その後、この絶縁層21を選択的に開口する。
【0120】
次に、下部前側シールド部形成工程を実行し、前端角αが鈍角の下部前側シールド部42を形成する。この工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に重ねて下部前側シールド部42と、第2の後側シールド部45とをともに厚さ0.5μm〜1.2μm程度で形成する。この場合、前述した傾斜処理工程によって、対向絶縁層の最上面に下り傾斜状の傾斜上端面20aが形成されているため、その傾斜上端面20aに磁性材が直に接するようにフレームめっき法を実行することによって下部前側シールド部42が形成される。こうして、下部前側シールド部形成工程を実行する。また、傾斜処理工程で接続シールド部41のABS30側を露出させているので、下部前側シールド部42が上端面41aのほか、前端面41bにも接するように形成される。
【0121】
なお、この時点では、まだ、ABS30が形成されていない。そのため、図19に示すように、下部前側シールド部42の前端面と、対向絶縁層20の前端面とによって、段差のない平坦な前端面30hが形成されている。
【0122】
その後、積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。それから、図20(a)、図20(b)に示すように、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いてベース絶縁層24を形成する。ベース絶縁層24を形成するときに加熱部23が形成される。その後、ベース絶縁層24を選択的に開口する。続いて、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてフレームめっき法によって、開口した部分にリーディングシールド部47となるべき磁性層と、第3の後側シールド部46とをそれぞれ厚さ0.5μm〜1.0μm程度で形成する。
【0123】
そして、積層体の表面にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、積層体の表面にレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、リーディングシールド部47となるべき磁性層の表面を、V溝部および切欠部に応じた形状に露出させる形状に形成する。そのレジストパターンをマスクにして反応性イオンエッチング(以下「RIE」という)を行い、積層体の表面のレジストパターンで被覆されない部分を除去する。
【0124】
すると、リーディングシールド部47となるべき磁性層にV溝部および切欠部が形成され、これによって、リーディングシールド部47が形成される。リーディングシールド部47が形成されることによって、シールド磁性層40が形成される。
【0125】
それから、図21(a)、図21(b)に示すように、ベース絶縁層24およびリーディングシールド部47を被覆するようにして非磁性薄膜25を形成する。非磁性薄膜25はRu,NiCr,NiCu等の非磁性金属材料や、アルミナ等の絶縁材料を用いてスパッタリングによって形成する。非磁性薄膜25はリーディングシールド部47のV溝部にも形成される。
【0126】
続いて、CoNiFe、CoFe、NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて積層体の表面全体に0.4〜0.8μm程度の厚さで磁性層75をスパッタリングによって形成する。この磁性層75によって後に主磁極層26が形成される。そして、積層体の表面全体をCMPで研磨して、積層体表面の平坦化を行う。
【0127】
その後、スパッタリングにより積層体の表面全体に、Ru,NiCr,NiCu等の金属材料を用いて非磁性層77(厚さは約0.04〜0.1μm程度)を形成する。非磁性層77は後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層27となる。さらに、積層体の表面全体に、アルミナ(Al2O3)、シリコン酸化物等の無機絶縁材料を用いて非磁性層78(厚さは約0.1〜0.3μm程度)を形成する。非磁性層78は、後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層28となる。
【0128】
続いて、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン81をABS30の近傍に形成する。
【0129】
次に、レジストパターン81をマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性層78の一部を除去する。この場合のエッチングは、エッチングによって形成された溝の底部が非磁性層77の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。そのため、非磁性層78には、非磁性層77と比べて非磁性層78をエッチングする際のエッチングレートの小さい材料を用いる。
【0130】
それからレジストパターン81を除去する。続いて、残された非磁性層78をマスクに用いて例えばIBEによって、非磁性層77の一部をエッチングして除去する。さらに、残された非磁性層77をマスクに用いて例えばIBEにより、磁性層75の一部をエッチングして除去する。この工程を経ることによって、磁性層75のABS側に上傾斜面26cが形成される。
【0131】
続いて、図22(a)、図22(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料や、Ru,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いてスパッタ法またはCVDによってギャップ層29(厚さは約250Å〜350Å程度)を形成する。
【0132】
さらに、例えばスパッタ法により図示しないストッパ膜を形成し、その上に非磁性膜を形成する。その上で、積層体の表面全体に図示しないフォトレジストを塗布する。そして、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、図示しないレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクに用いて、例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性膜をエッチングする。このエッチングはエッチングによって形成された溝の底部がストッパ膜の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。それから、図示しないレジストパターンを除去した後、残された非磁性膜をマスクに用いてRIE等のエッチングを行い、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去する。ここで、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去することによって、上部ヨーク層65を形成するためのスペースを確保している。
【0133】
続いて、対向シールド部形成工程を実行することによって対向シールド部61を形成する。この工程では、まず、積層体の表面全体に磁性層を形成する。この磁性層は、めっき法により、CoNiFe、CoFe、CoFeN,NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて、0.5〜1.2μm程度の厚さで形成する。この磁性層によって、後に対向シールド部61および上部ヨーク層65が形成される。
【0134】
続いて、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層(厚さは1〜3μm程度)を形成する。さらに、磁性層の表面が露出するまで積層体の表面全体をCMPにより研磨して積層体表面の平坦化を行う。すると、対向シールド部61、上部ヨーク層65および絶縁層31が形成される。このとき、対向シールド部61の厚さが0.5〜1.0μm程度になるようにして積層体の表面を研磨する。
【0135】
次に、第1のシールド部形成工程を実行する。この工程では、図23(a),図23(b)に示すように、積層体の表面のうちの上部前側シールド部62と後側シールド部64とを形成しようとする部分にそれぞれトリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64とを形成する。このとき、トリム前前側シールド部62AがABS30内に配置されるので、本発明の実施の形態に係る第1のシールド部に対応している。第1のシールド部形成工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてトリム前前側シールド部62Aおよび後側シールド部64を例えばフレームめっき法によって形成する。このとき、トリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64との間隔が3.0μmから3.5μm程度となるようにする。
【0136】
そして、トリム前前側シールド部62Aは対向シールド部61に接続され、かつABS30内に配置されるように形成する。トリム前前側シールド部62Aは、図9の上側に示したような形状を有している。このトリム前前側シールド部62Aでは、前端面62aのすべてがABS30内に配置されている。
【0137】
それから、図24(a),図24(b)に示すように、積層体の表面における第1のシールド部(トリム前前側シールド部62A)と後側シールド部64との間に導体層71を形成する。この導体層71によって、後に上部薄膜コイル51が形成される。導体層71は2つの間隙部71aを備え、かつ第1のシールド部(トリム前前側シールド部62A)と後側シールド部64に層間絶縁膜32を介して隙間なく接触するようにして形成する。導体層71は、間隙部71aを備えているから間欠導体層である。
【0138】
その後、導体層71における2つの間隙部71aを覆うようにフォトレジスト層55(膜厚は2μm〜3μm程度)を形成し、アルミナ(Al2O3)を用いて積層体の表面をカバーし得る図示しないカバー絶縁膜を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、トリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0139】
すると、図25(a),図25(b)に示すように、上部薄膜コイル51およびフォトレジスト層55が形成される。このとき、上部薄膜コイル51の厚さが1.0μm〜1.8μm程度となるように、積層体表面の平坦化を行う。また、積層体表面の平坦化が行われたことによって、前述した共通平坦面59が形成される。
【0140】
続いて、図26(a),図26(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層34を形成し、絶縁層34を部分的に開口する。その後、連結シールド部形成工程を実行する。この工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって連結シールド部63を形成する。連結シールド部63は、トリム前シールド部62Aに接続されるように形成する。連結シールド部63は、絶縁層34を介して上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐようにして形成する。
【0141】
また、連結シールド部63は前端面30hから後退させて(ABS30からも後退させて)ABS30から離れた位置に形成する。すなわち、ABS30との間に後退スペース63hが確保されるような位置に連結シールド部63を形成する。後退スペース63hはABS30に沿った例えば0.4μmから0.7μm程度の幅を有し、かつ連結シールド部63と同じ高さを備えた細長い部分になる。
【0142】
次に、トリミング工程を実行する。この工程では、図27(a),図27(b)に示すように、連結シールド部63をマスクに用いてイオンビームIBを上方向から照射してIBEを行い、トリム前前側シールド部62Aの連結シールド部63によって被覆されていない部分を切除する。トリム前前側シールド部62Aは、連結シールド部63によってABS30側部分が被覆されていないので、IBEを行うとトリム前前側シールド部62AのABS30側の一部分が切除される。このとき、IBEは、トリム前前側シールド部62AのABS30内に配置されるトリム前前端面62aの一部を残すようにして実行する。こうすることで、図9に示したように、トリム前前端面62aのうち、切除されずに残された部分によって前述したシールド前端面62bが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0143】
前述のトリミング工程では、連結シールド部63自体をマスクに用いているが、連結シールド部63を用いる代わりに連結シールド部63の上面をカバーするフォトレジスト等のマスクを用いてもよい。すなわち、フォトレジスト等を用いて連結シールド部63と大きさの等しいマスクを連結シールド部63の上面に形成し、そのマスクを用いて、トリム前前側シールド部62Aの連結シールド部63によって被覆されていない部分を切除してもよい。
【0144】
また、エッチングに用いるガスプラズマの化学的な作用が伴うと、トリム前前側シールド部62Aの垂直方向(図27の縦方向)だけでなく、水平方向((図27の横方向)にもエッチングが進行するおそれがある。そのため、トリミング工程では、ノンリアクティブなIBE、すなわち、イオンミリングを行うことが好ましい。不活性なイオンを照射したときの物理的な衝撃を利用して行うエッチングをリアクティブイオンエッチングと区別するため、イオンミリングともいう。
【0145】
続いて、図1に示したように変位抑制層85を形成する。それから、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて変位抑制層85をカバーするようにして保護絶縁層90を形成する。その後、前端面30hに対する研磨加工や機械加工を行い、ABS30を形成すると、薄膜磁気ヘッド300が完成する。
【0146】
保護絶縁層90は、シールド接続部62cの全体に接し、かつシールド接続部62cとABS30との間に隙間なく埋め込まれるように形成する。
【0147】
(薄膜磁気ヘッド300の作用効果)
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は下部前側シールド部42を有している。下部前側シールド部42は前端凸部42Pを有し、その前端凸部42Pは丸みを帯びた凸状部分である。そして、主磁極層26から下部前側シールド部42に磁束が漏れ出て、その磁束が下部前側シールド部42の外部に漏れ出すときは、図7(a)に示すように、その磁束が前端凸部42Pから磁束B0、B1、B2のように適宜分散して外部に進行する。
【0148】
しかし、前端凸部42Pが丸みを帯びた緩やかな凸状部分であるため、磁束B0、B1、B2の強さの差が少ない。したがって、磁束B0、B1、B2が記録媒体に到達しても、そのそれぞれによって、記録媒体に記録されているデータが消去されたり、書きかえられたりといった不具合は起こりにくい。そのため、データ消去等が軽減される。
【0149】
一方、図7(b)に示すように、従来の薄膜磁気ヘッド700では、下部前側シールド部712の前端角が直角に設定されているため、凸部712Pが鋭く角張っている。そのため、主磁極層710から下部前側シールド部712に磁束が漏れ出すと、その磁束は凸部712Pに集中しやすい。したがって、中央の磁束B0の強さがその外側の磁束B1、B2よりも強くなってしまう。そのため、磁束B0、B1、B2が記録媒体に到達すると、最も強い磁束B0によって、記録媒体に記録されているデータが消去されたり、書きかえられたりといった不具合が起きやすい。
【0150】
このように、本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300は、下部前側シールド部42を有していることによって、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0151】
また、前端凸部42Pは前端面42aと傾斜下端面42bの交差する角部に対応している。前端角αが鈍角に設定されているため、下部前側シールド部42に接する対向絶縁層20の前端面20bと、傾斜上端面20aとのなす角(前端面20bから傾斜上端面20aに向かって反時計回りに計った角度、反前端角ともいう)が鋭角になる。そうすると、反前端角が直角に設定されている場合よりも、対向絶縁層20の前端面20b(厳密には前端面30h)のうちの、下部前側シールド部42と対峙している鋭角部分の体積が小さい。そのため、ABS30を形成するべく前端面30hに対する研磨加工や機械加工を行ったときに、下部前側シールド部42と対峙している鋭角部分が欠落しやすい(前述の欠落端部20dは、この欠落に起因して形成される)。鋭角部分の欠落に伴い、下部前側シールド部42と対向絶縁層20との境界部分に微小な隙間が形成される。すると、下部前側シールド部42では、前端面42aにおける対向絶縁層20との境界部分において、ABS30の交差方向だけではなくそれとは異なる方向からも研磨等が進行し、その結果、丸みを帯びた前端凸部42Pが形成される。このように、下部前側シールド部42の前端角αを鈍角に設定することによって、前端凸部42Pを簡易にしかも確実に形成することができる。
【0152】
なお、従来のように、前端角が直角に設定されているときは、反前端角も直角に設定されている。すると、前端面30hにおいて、下部前側シールド部42と対向絶縁層20の直角な角部同士が対峙する格好になるため、その下部前側シールド部42と対峙している角部が欠落することがない。したがって、丸みを帯びた前端凸部42Pは形成されない。
【0153】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は、対向絶縁層20を有し、その傾斜上端面20aが下り傾斜状に形成されている。そのため、対向絶縁層20に接する磁性層を形成すれば、その磁性層の前端角が鈍角になる。したがって、対向絶縁層20に重ねて磁性層を形成すれば下部前側シールド部42が得られるから、下部前側シールド部42を確実に形成することができる。
【0154】
そして、薄膜磁気ヘッド300は接続シールド部41を有し、その上端面41aとともに前端面41bが下部前側シールド部42に接続されている。そのため、前端角が直角に設定されている場合よりも、下部前側シールド部42と接続シールド部41との接触面積が拡大される。よって、下部前側シールド部42から接続シールド部41への磁束の伝達が確実に行われる。
【0155】
一方、薄膜磁気ヘッド300は、対向シールド部61と、連結シールド部63との間に配置される磁性層として、上部前側シールド部62だけが形成されている。そのため、前述した従来のPMR700のように、対向シールド部701と連結シールド部704との間に、前側シールド部703と接続用シールド部702という2つの磁性層が形成されている場合に比べて、薄膜磁気ヘッド300は、上下方向に沿った磁路の長さが短くなり、その分、磁路長を短縮することができる。
【0156】
よって、薄膜磁気ヘッド300は記録ヘッドの磁束立ち上がり時間(Flux Rize Time)や、非線形トランジションシフト(Non-linear Transition Shift:NLTS)特性、重ね書き(Over Write)特性等を改善でき、周波数が高く変化の速い記録信号のすばやい変化に追従することが可能になる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、特にサーバに搭載されるハードディスク装置の記録ヘッドとして好適である。
【0157】
その上、上部前側シールド部62は、ABS30から、層間絶縁膜32を介して上部薄膜コイル51に到達し得るだけの横幅を有している。そのため、ライトシールド層60が異距離構造を有しているにもかかわらず、上部前側シールド部62は対向シールド部61と連結シールド部63の双方に確実に接続されている。したがって、主磁極層26に対向する対向シールド部61と、上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐ連結シールド部63とが1本につながり、1本につながった磁気回路を形成することができる。なお、異距離構造とは、対向シールド部61がABS30内に配置され、かつ連結シールド部63がABS30から後退していることによって、対向シールド部61、連結シールド部63それぞれのABS30からの距離が異なっている構造を意味している。
【0158】
ここで、ライトシールド層60が異距離構造を有しているなかで、上部前側シールド部62によって対向シールド部61と連結シールド部63の双方を確実に接続するための構造を考える。トリム前前側シールド部62Aのように、前端面のすべての部分がABS30内に配置されているときに上端面と下端面の大きさが最大になるから、前述の構造を実現するためには、トリム前前側シールド部62Aのように前端面のすべてがABS30内に配置されていることが望ましい。
【0159】
しかし、そうすると、トリム前前端面62aがABS30に大きく露出してしまう。上部前側シールド部62もトリム前前側シールド部62Aも、CoNiFe、CoFe、CoFeN、NiFe等の強磁性体からなる磁性材により形成されている。そのため、トリム前前側シールド部62Aのようにトリム前前端面62aの全体がABS30に露出していると、上部薄膜コイル51の発熱によってフォトレジスト層55が膨張したときの影響をトリム前前側シールド部62Aがより強く受けてしまう。
【0160】
フライングハイトは極めて微小なので、トリム前前端面62aの限られた微小部分が突出しただけでも、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生してしまう可能性がある。トリム前前端面62aの全体がABS30に露出しているということは、突出の対象となりえるそのような微小部分がABS30内にたくさん存在しているということを意味し、それだけ、記録媒体に衝突し得る突出の態様が多く、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生しやすいということを意味している。
【0161】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、図9の下側に示したような構造の上部前側シールド部62を形成している。こうして、ABS30に露出する部分がシールド前端面62bになるようにしている。
【0162】
そして、上部前側シールド部62では、シールド上端面62fがシールド前端面62bよりも基板1から離れた位置に配置されていて、そのシールド前端面62bとシールド上端面62fとを接続するシール接続部62cを上部前側シールド部62が有している。このような構造では、シールド上端面62fがABS30に到達している場合、すなわち、図9の上側に示したようなトリム前前側シールド部62AよりもABS30内に配置される前端面の大きさが小さくなる。そのため、上部前側シールド部62を有することによって、薄膜磁気ヘッド300が記録媒体と衝突する事態を抑制できるようになる。
【0163】
よって、薄膜磁気ヘッド300では、特に上部薄膜コイル51の発熱に伴いライトシールド層60が突出することを抑制することができる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドの突出に伴う破損のおそれが極めて少なくなるから、記録メディアに接近させることができる。
【0164】
そして、薄膜磁気ヘッド300は、図示しないスライダに組み込まれるが、そのスライダの記録媒体表面からの浮上量(フライングハイト)を縮小することができる。よって、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドおよび再生ヘッドの解像度(resolution)を高め、信号対雑音比を向上させることができる。また、薄膜磁気ヘッド300は、記録密度を高めることができる。
【0165】
一方、上部前側シールド部62は、連結シールド部63を形成した後、連結シールド部63が接触していないABS30側の一部分を切除することによって形成されている。そのため、ABS30に露出する部分が小さいにもかかわらず、シールド上端面62fが確実に確保されており、上部前側シールド部62と連結シールド部63とが確実に接続され得る構造となっている。
【0166】
また、上部前側シールド部62のABS30側を切除する際、シールド前端面62bが確保され、トリム前前端面62aのすべてが切除されることなくその一部がシールド前端面62bとして残るようにしている。トリム前前側シールド部62AのABS30側を切除する際、シールド前端面62bが確保されなくなるまでIBEを進めると、シールド下端面62rまでもが切除されるおそれがある。この場合、対向シールド部61に接続される部分が小さくなってしまい、対向シールド部61と、上部前側シールド部62との接続が不十分になるおそれがある。しかし、薄膜磁気ヘッド300では、そのようなおそれは皆無である。
【0167】
そして、上部前側シールド部62はシールド接続部62cを有しているが、このシールド接続部62cは傾斜構造を有している。そのため、上部前側シールド部62は前述の上方向からのIBEによって確実に形成できる構造を有している。傾斜構造を有していない場合、例えば、シールド前端面62bからシールド上端面62fにつながる表面部分がS字状に屈曲していると、IBEによって、上部前側シールド部62を形成するのは困難である。しかし、薄膜磁気ヘッド300では、そのようなおそれは皆無であり、上方向からのIBEによって確実に上部前側シールド部62を形成することができる。
【0168】
また、シールド接続部62cは後退傾斜構造を有しているため、後退傾斜構造を有していない場合に比べて上部前側シールド部62の体積が縮減されている。したがって、上部前側シールド部62が突出する可能性がいっそう抑制されている。
【0169】
さらに、シールド接続部62cは横平坦部62c1を有している。横平坦部62c1は、概ねABS30の交差方向に沿って形成されている。したがって、横平坦部62c1を有していない場合よりも、保護絶縁層90の埋込部90aから縦方向に受ける圧力をシールド接続部62cがより確実に受け止めることができる。よって、薄膜磁気ヘッド300では、保護絶縁層90の埋め込み状態が安定化している。
【0170】
しかも、シールド接続部62cは縦平坦部62c2を有している。縦平坦部62c2は、概ねABS30に沿って形成されている。したがって、上部前側シールド部62は、トリム前前側シールド部62Aに対する上方向からのIBE等によって確実に形成できる構造となっている。
【0171】
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は、磁路長を短縮することができ、しかもABS30の一部が突出することを抑制できるから、媒体対向面の一部が突出することを抑制することと、磁路長の短縮とを両立できる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0172】
そして、下部薄膜コイル11、上部薄膜コイル51が上述のような可変幅構造を有しているから、電流の流れを妨げることが少なく、抵抗値の上昇を抑制することができる。したがって、薄膜磁気ヘッド300は、下部薄膜コイル11、上部薄膜コイル51の熱の発生を効果的に抑制することができる。
【0173】
(変形例1)
薄膜磁気ヘッド300は、下部前側シールド部42の代わりに図42(a)、(b)に示す下部前側シールド部242、243を有していてもよい。下部前側シールド部242,243はそれぞれ傾斜下端面242b、243bを有している。
【0174】
前述した下部前側シールド部42の場合、傾斜下端面42bは対向絶縁層20の傾斜上端面20aおよび絶縁層19の上端面に接しているが、接続シールド部41の上端面41aには接していない。これに対して、下部前側シールド部242の場合、傾斜下端面242bは傾斜上端面20aと、絶縁層19の上端面に接し、さらに接続シールド部241の上端面にも接している。また、傾斜下端面243bは、傾斜上端面20aと、絶縁層19の上端面に接し、さらに接続シールド部244の上端面にも接している。傾斜下端面242bは傾斜角度が一定であるが、傾斜下端面243bは、絶縁層19の上端面と、接続シールド部244の上端面との境界部分で傾斜角度が変化している。
【0175】
このような下部前側シールド部242、243でも、前端角が鈍角に設定されているため、前端凸部42Pのような丸みを帯びた緩やかな凸部部分を簡易にしかも確実に形成することができる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、下部前側シールド部242、243を有していても、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減することができる。
【0176】
(変形例2)
薄膜磁気ヘッド300は、前述した上部前側シールド部62の代わりに図10(a)に示すような上部前側シールド部62Bを有していてもよい。上部前側シールド部62Bは上部前側シールド部62と比べてシールド接続部62cの代わりにシールド接続部62dを有する点で相違している。シールド接続部62dは、シールド接続部62cと比べて横平坦部62c1を有していない点で相違している。
【0177】
また、薄膜磁気ヘッド300は、上部前側シールド部62の代わりに図10(b)に示すような上部前側シールド部62Dを有していてもよい。上部前側シールド部62Dは上部前側シールド部62と比べてシールド接続部62cの代わりにシールド接続部62eを有する点で相違している。シールド接続部62eは、シールド接続部62cと比べて縦平坦部62c2を有していない点で相違している。
【0178】
上部前側シールド部62Bを有する場合、上部前側シールド部62Dを有する場合のいずれも、ABS30内にシールド前端面62bが配置され、ABS30内に露出している部分の大きさがトリム前前側シールド部62Aよりも縮減されている。そのため、トリム前前側シールド部62Aよりも、上部前側シールド部62B、62Dが突出する可能性は確実に抑制されている。したがって、上部前側シールド部62Bを有する場合、上部前側シールド部62Dを有する場合のいずれも媒体対向面の一部の突出を抑制することと、磁路長の短縮とを両立することができる。
【0179】
第2の実施の形態
次に、図28〜図30を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドについて説明する。ここで、図28は、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド310のABS30と交差する方向に沿った図1に対応する断面図である。図29は上部薄膜コイル50を構成する第2のコイル層53を示す平面図、図30は同じく第1のコイル層52を示す平面図である。
【0180】
薄膜磁気ヘッド310は、薄膜磁気ヘッド300と同様に、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、ABS30を有している。なお、薄膜磁気ヘッド310は薄膜磁気ヘッド300と一致する構成を有しているので、以下の説明では、薄膜磁気ヘッド310の薄膜磁気ヘッド300と相違する構成を中心に説明し、共通する構成の説明は省略ないし簡略化する。
【0181】
再生ヘッドは、薄膜磁気ヘッド300と同様に、基板1上に形成されている絶縁層2と、下部シールド層3と、シールドギャップ膜4と、MR素子5と、上部シールド層6、絶縁層7、加熱部8および感熱部9を有している。
【0182】
薄膜磁気ヘッド310の記録ヘッドは、薄膜磁気ヘッド300の記録ヘッドと比較して、上部薄膜コイル51の代わりに上部薄膜コイル50を有する点と、ライトシールド層60の代わりにライトシールド層160を有する点で相違している。また、薄膜磁気ヘッド310の記録ヘッドは、薄膜磁気ヘッド300の記録ヘッドと比較して、連続絶縁膜39を有する点と、保護絶縁層90の代わりに保護絶縁層91および保護絶縁層92を有する点で相違している。
【0183】
前述した薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51の双方が単層構造を有していた。各ターン部がABS30の交差方向に沿って配置され、ABS30に沿った方向に重ならない構造が単層構造である。しかし、薄膜磁気ヘッド310では、下部薄膜コイル11が単層構造を有するものの、上部薄膜コイル50は2層の多重構造を有している。
【0184】
上部薄膜コイル50は、ABS30から離れた位置に配置されている第1のコイル層52および第2のコイル層53を有し、第1のコイル層52および第2のコイル層53によって上部導体群を構成している。
【0185】
そして、第1のコイル層52と、第2のコイル層53とは、ABS30に沿った方向(上下方向)に配置されている。第2のコイル層53がコイル間絶縁層84を介して第1のコイル層52の上に重なっている。上部薄膜コイル50は2層の多重構造を有している。また、上部薄膜コイル50は、第1のコイル層52の前側距離と第2のコイル層53の前側距離とが等しく、第1のコイル層52の後側距離と第2のコイル層53の後側距離も等しい等距離二段構造を有している。
【0186】
第1のコイル層52は、図30に示すようなターン部52cを有している。ターン部52cは第1の上部前側シールド部62と、第1の後側シールド部64との間に配置されている。第1のコイル層52は、第2のコイル層53につながる接続部52aからターン部52cにつながるループ部52dと、ターン部52cから接続部52eまでのハーフループ部52bを有している。第1のコイル層52は接続部52aから接続部52eまでが一本につながることによってライトシールド層160の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で1ターンループを形成している。
【0187】
第2のコイル層53は、2つのターン部53b,53dを有している。ターン部53b,53dは、後述する第2の前側シールド部66と、第2の後側シールド部67との間に配置されている。また、第2のコイル層53は、ターン部53b,53dがフォトレジスト層56を介して並んだ構造を有している。
【0188】
そして、図29に示すように、第2のコイル層53は、第1のコイル層52につながる接続部53fからターン部53dにつながるハーフループ部53eと、ターン部53dからターン部53bにつながるワンループ部53cと、ターン部53bからリード部13aまでのハーフループ部53aを有している。
【0189】
第2のコイル層53は接続部53fからリード部13aまでが一本につながることによってライトシールド層160の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で2ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図28では、第2のコイル層53について、接続部53f、ターン部53b,53dのみが示されている。ターン部53b,53dも、ターン部11b,11d、11fと同様の縦長の構造を有している。また、第2のコイル層53も下部薄膜コイル11と同様に可変幅構造を有している。
【0190】
そして、上部薄膜コイル50は、第1のコイル層52と第2のコイル層53とが次のようにしてつながることによって、一連の3ターンループを形成している。すなわち、接続部52eから、ハーフループ部52b、ターン部52c、ループ部52dを通って接続部52aにつながり、その接続部52aが接続部53fにつながる。続いて接続部53fから、ハーフループ部53e、ターン部53d、ワンループ部53c、ターン部53b、ハーフループ部53aを通ってリード部13aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0191】
つまり、上部薄膜コイル50は第1のコイル層52により1ターンループを形成した後、その真上に位置する第2のコイル層53により2ターンループを形成することによって3ターンループを形成するという(1+2)ターン構造を有している。なお、本実施の形態において(A+B)ターン構造とは、ターン数が“A”のコイル層の上にターン数が“B”のコイル層が重なった多重構造を意味している。
【0192】
ライトシールド層160は、ライトシールド層60と比較して、第2の前側シールド部66と、第2の後側シールド部67とを有する点で相違している。
【0193】
第2の前側シールド部66は、第1の上部前側シールド部62と、連結シールド部63とに接続されている。第2の前側シールド部66は、すべての部分がABS30から離れた位置に配置されている。第2のコイル層53のターン部53b、53dを跨ぐことなく第1の上部前側シールド部62に接続されている。また、第2の前側シールド部66は、上部薄膜コイル50を構成する第2のコイル層53のABS30側に配置されている。
【0194】
第2の前側シールド部66は、第1の上部前側シールド部62のシールド上端面62fに応じた横幅を有している。また、第2の前側シールド部66の交差方向に沿った横幅がシールド上端面62fの交差方向に沿った横幅と等しく形成されている。さらにABS30側の前端面66aが平坦前端面となっている。前端面66aはABS30に沿って平坦に形成されている。また、前端面66aがシールド接続部62cと段差なく接続されている。前端面66aは図35に示されている。
【0195】
第2の後側シールド部67は、第1の後側シールド部64と、連結シールド部63とに接続されている。第2の後側シールド部67は、第1の後側シールド部64に応じた横幅を有している。
【0196】
連続絶縁膜39は、前端面66aおよびシールド接続部62cの表面上に、前端面66aからシールド接続部62cにわたって連続して形成されている。
【0197】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
続いて、前述の図28とともに、図31〜図37を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド310の製造方法について説明する。
【0198】
ここで、図31〜図37は、薄膜磁気ヘッド310の各製造工程における一部省略した図1に対応した断面図である。薄膜磁気ヘッド310を製造する場合、図31に示すように、第1のシールド部形成工程までは薄膜磁気ヘッド300を製造する場合と同様の手順で実行する。ただし、第1の上部前側シールド部62と第1の後側シールド部64との間隔を少し狭め、2.5μmから2.9μm程度で形成する。その後、図31に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)を用いて絶縁層38を形成する。
【0199】
続いて、図32に示すように、積層体の表面における第1のシールド部(第1の上部前側シールド部62)と、第1の後側シールド部64との間に導体層72を形成する。この導体層72は後に第1のコイル層52となる。導体層72は第1のシールド部(上部前側シールド部62)と第1の後側シールド部64に絶縁層38を介して隙間なく接触するようにして形成する。それから、第1の上部前側シールド部62と第1の後側シールド部64が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。すると、図33に示すように第1のコイル層52が形成される。
【0200】
次に、第2のシールド層形成工程を実行する。この工程では、図34に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層(膜厚は0.1μm〜0.15μm程度)を形成した後、その絶縁層を選択的に開口する。この絶縁層は後にコイル間絶縁層84となる。それから、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて、開口した部分に重ねて第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と、第2の後側シールド部67とをフレームめっき法によって厚さ1.0μm〜2.0μm程度で形成する。
【0201】
それから、フォトレジストを用いてマスク88を形成する。マスク88は、図34に示すように、第2の前側シールド部66のABS30側を一部露出させ、ABS30から後退させるようにして形成する。すなわち、第2の前側シールド部66の上面に後退スペース66hが確保されるような位置にマスク88を形成する。後退スペース66hは、後退スペース63hと同様に、例えば0.4μmから0.7μm程度の幅を有する細長い部分である。
【0202】
続いて、トリミング工程を実行する。このトリミング工程では、図35に示すように、上方向からイオンビームIBを照射してIBEを行い、第2の前側シールド部66のABS30側部分と、第1の上部前側シールド部62のABS30側部分とをまとめて切除する。このとき、IBEは上側に配置されている第2の前側シールド部66については前端面がすべて切除されるが、下側の第1の上部前側シールド部62については前端面の一部が残るようにして実行する。こうすることにより、第1の上部前側シールド部62について、前述したシールド接続部62cが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0203】
次に、図36に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁膜39を形成する。この絶縁膜39のうち、第1の上部前側シールド部62の前端面から第2の前側シールド部66の前端面にわたって形成される部分が前述した連続絶縁膜39になる。
【0204】
続いて、図37に示すように、積層体の表面における第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と第2の後側シールド部67との間に、間隙部を1つ備えた導体層73を形成する。この導体層73は後に第2のコイル層53となる。導体層73は第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と第2の後側シールド部67に絶縁膜39を介して隙間なく接触するようにして形成する。
【0205】
その後、導体層73の間隙部にフォトレジスト層86を形成し、アルミナ(Al2O3)を用いて積層体の表面をカバーし得る保護絶縁膜91を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、第2の前側シールド部66と第2の後側シールド部67が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。そして、この後、薄膜磁気ヘッド300の場合と同様に実行することによって、変位抑制層85と保護絶縁層92とを形成すると、薄膜磁気ヘッド310が得られる。
【0206】
(薄膜磁気ヘッド310の作用効果)
薄膜磁気ヘッド310は、下部前側シールド部42を有しているから、薄膜磁気ヘッド300と同様、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0207】
また、薄膜磁気ヘッド310は、下部薄膜コイル11と、上部薄膜コイル50を有している。下部薄膜コイル11も上部薄膜コイル50も、ターン数は3本であるが、上部薄膜コイル50は第1のコイル層52と、第2のコイル層53の多重構造を有している。そのため、1平面あたりのターン数は1本または2本と少ないながら全体で3本のターン数を確保できている。したがって、薄膜磁気ヘッド310はABS30からの奥行きを狭めることができる。
【0208】
その上、薄膜磁気ヘッド310は、薄膜磁気ヘッド300と同様の第1の上部前側シールド部62を有している。この第1の上部前側シールド部62も、薄膜磁気ヘッド300と同様に、シールド前端面62b、シールド上端面62fおよびシールド接続部62cを有し、ABS30に露出する部分がシールド前端面62bになっている。そのため、薄膜磁気ヘッド310では、図9の上側に示したようなトリム前前端面62aよりもABS30に配置される前端面の大きさが小さくなる。したがって、第1の上部前側シールド部62が突出する可能性を抑制することができる。よって、薄膜磁気ヘッド310は薄膜磁気ヘッド300と同様、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0209】
また、第2の前側シールド部66の前端面66aが平坦前端面になっていて、これがシールド接続部62cと段差なく接続されている。そのため、第2の前側シールド部66と第1の上部前側シールド部62とに対し、連続絶縁膜39を確実に形成することができる。さらに、トリミング工程で、第2のシールド部と第1のシールド部のABS30側部分をまとめて切除しているから、段差なくつながる平坦面を確実に形成することができる。しかも、第1の上部前側シールド部62のシールド上端面62fに対して第2の前側シールド部66を位置合わせする必要がないから、その分、製造工程を簡略化することができる。
【0210】
(変形例)
薄膜磁気ヘッド310は、次のようにして製造することもできる。第1のコイル層52を形成するまでの工程を前述の場合と同様の手順で実行した後、図38に示すように、フォトレジストを用いてマスク83を形成する。マスク83は、第1の上部前側シールド部62のABS30側を一部露出させるようにして形成する。すなわち、第1の上部前側シールド部62の上面に後退スペース62hが確保されるような位置にマスク83を形成する。
【0211】
続いて、トリミング工程を実行する。このトリミング工程では、図38に示すように、イオンビームIBを上方向から照射してIBEを行い、第1の上部前側シールド部62のABS30側部分を切除する。このとき、IBEは第1の上部前側シールド部62について、前端面の一部が残るようにして実行する。こうすることにより、第1の上部前側シールド部62について、残された前端面によって前述したシールド前端面62bが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0212】
次に、マスク83を除去した後、図39に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層(膜厚は0.1μm〜0.15μm程度)を形成した後、絶縁層を選択的に開口する。この絶縁層は、後にコイル間絶縁層84となる。この場合、すでにトリミング工程によって、第1の上部前側シールド部62のABS30側の一部分が切除されているので、コイル間絶縁層84の一部がシールド接続部62c上にも形成される。
【0213】
それから、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に重ねて第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と、第2の後側シールド部67とを厚さ1.0μm〜2μm程度で形成する。さらに、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁膜39を形成する。その後の工程を前述の場合と同様に実行すると、図40に示すように、薄膜磁気ヘッド311が得られる。この薄膜磁気ヘッド311は、前述した薄膜磁気ヘッド310と比べて上部薄膜コイル50のABS30側に配置される絶縁層の構造が異なっているが、他は同じ構造を有している。
【0214】
第3の実施の形態
次に、図41を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドについて説明する。ここで、図41は、本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド316のABS30と交差する方向に沿った図1に対応する断面図である。
【0215】
薄膜磁気ヘッド316は、薄膜磁気ヘッド311と比較して、下部薄膜コイル11の代わりに下部薄膜コイル111を有する点と、上部薄膜コイル50の代わりに上部薄膜コイル151を有する点とで相違している。
【0216】
下部薄膜コイル111は、第1のコイル層13および第2のコイル層16を有している。第1のコイル層13および第2のコイル層16はいずれもABS30から離れた位置に配置されている。下部薄膜コイル111は、第1のコイル層13および第2のコイル層16によって下部導体群を構成している。第1のコイル層13、第2のコイル層16はともにターン数が1本である。下部薄膜コイル111は、(1+1)ターン構造を有している。
【0217】
薄膜磁気ヘッド316では、下部薄膜コイル111と上部薄膜コイル151の双方が2層の多重構造を有している。
【0218】
上部薄膜コイル151は、第1のコイル層52および第2のコイル層57を有している。第1のコイル層52および第2のコイル層57はABS30から離れた位置に配置されている。上部薄膜コイル151は、第1のコイル層52および第2のコイル層57によって上部導体群を構成している。第1のコイル層52、第2のコイル層57はともにターン数が1本である。上部薄膜コイル151も(1+1)ターン構造を有している。
【0219】
(薄膜磁気ヘッド316の作用効果)
薄膜磁気ヘッド316は、下部前側シールド部42を有しているから、薄膜磁気ヘッド300と同様、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0220】
また、薄膜磁気ヘッド316は、下部薄膜コイル111と、上部薄膜コイル151を有している。下部薄膜コイル111も上部薄膜コイル151も、ターン数は2本であるが、多重構造を有している。そのため、1平面あたりのターン数は1本と少ないながら全体で2本のターン数を確保できている。したがって、薄膜磁気ヘッド316は、ABS30からの奥行きを狭めることができる。しかも、薄膜磁気ヘッド316は、薄膜磁気ヘッド300と同様の第1の上部前側シールド部62を有しているから、第1の上部前側シールド部62が突出する可能性を抑制することができる。したがって、薄膜磁気ヘッド316は薄膜磁気ヘッド315と同様に、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0221】
第4の実施の形態
次に、図43、図44を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドについて説明する。ここで、図43は、本発明の第4の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド320のABS30と交差する方向に沿った図1に対応する断面図である。また、図44は図43の要部を示す断面図である。
【0222】
薄膜磁気ヘッド320は、薄膜磁気ヘッド300と比較して、シールド磁性層40の代わりにシールド磁性層140を有する点と、薄膜磁気ヘッド300よりも下部薄膜コイル11の高さが高く形成されている点と、絶縁層21を有していない点とで相違している。
【0223】
シールド磁性層140は、シールド磁性層40と比較して、下部前側シールド部42およびリーディングシールド部47の代わりにリーディングシールド部48を有する点と、接続シールド部41の高さが薄膜磁気ヘッド300よりも高く形成されている点と、第3の後側シールド部46を有していない点とで相違している。
【0224】
前述した薄膜磁気ヘッド300の場合、図1に示したように、リーディングシールド部47は、下部前側シールド部42に接続され、対向絶縁層20および絶縁層19には接続されていない。これに対し、薄膜磁気ヘッド320の場合、リーディングシールド部48は、対向絶縁層20および絶縁層19に接続されている。
【0225】
そして、図44に示すように、リーディングシールド部48は、シールド端面48aを有している。また、リーディングシールド部48は、主磁極層26の基板1側において、非磁性薄膜25を介して主磁極層26に対向している。リーディングシールド部48では、シールド端面48aと、第1の下端面48bとのなす角度を示す前端角が鈍角に設定され、前端凸部48Pが丸みを帯びた形状に形成されている。
【0226】
さらに、リーディングシールド部48は、第2の下端面48cを有している。この第2の下端面48cの基板1との間隔がh1に設定されている。そして、下部薄膜コイル11の基板1から最も離れた上端面11xについても、基板1との間隔がh1に設定されている。また、接続シールド部41の上端面41aと、第2の下端面48cとが直に接続されている。
【0227】
この薄膜磁気ヘッド320は、リーディングシールド部48を有するが、そのリーディングシールド部48は、前端角が鈍角に設定され、丸みを帯びた前端凸部48pを有している。したがって、薄膜磁気ヘッド320も、薄膜磁気ヘッド300と同様、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0228】
加えて、薄膜磁気ヘッド320では、下部前側シールド部42を有してなく、第2の下端面48cと、上端面11xの双方の基板1との間隔が等しく、双方とも基板1との間隔が高さh1になるように形成されている。そのため、第2の下端面48cと上端面11xとの間には隙間が形成されていない。すなわち、薄膜磁気ヘッド320は、従来のPMR700に存在していた下部前側シールド部712と絶縁層732とが存在しない形状を有している。
【0229】
従来のPMR700では、下部薄膜コイル718の表面を覆うようにして、絶縁層732が形成されていた。この絶縁層732は、下部薄膜コイル718の高さ拡大という観点からみると単に邪魔な存在に過ぎなかった。
【0230】
しかし、薄膜磁気ヘッド320のように、従来のPMR700における絶縁層732が存在し得ない構造にすることによって、下部薄膜コイル11の高さを拡大し得るだけのスペースを新たに確保することができる。薄膜磁気ヘッド320では、リーディングシールド部48の第2の下端面48cと、下部薄膜コイル11の上端面11xの双方における基板1との間隔が等しい構造にすることによって、PMR700における絶縁層732が存在し得ない構造を実現している。この構造を備えることで、薄膜磁気ヘッド320では、従来のPMR700と比べて、リード・ライト・セパレーション(以下「RWS」ともいう)を0.5μm程度短縮する効果が得られる。そのため、その分、薄膜磁気ヘッド320は下部薄膜コイル11の高さを拡大するための高さ拡大用スペースを確保することができる。なお、リード・ライト・セパレーションとは、主磁極層と再生ヘッドのABSに沿った方向の間隔を示している。
【0231】
一方、PMRでは、このRWSを4.5μm〜5μmの範囲に納めることが求められており、薄膜コイル11の高さを高くすることによって、その制約を破ることは避けなければならない。そのため、薄膜コイル11の高さを高くすることは困難である。
【0232】
しかし、薄膜磁気ヘッド320では、前述の高さ拡大用スペースを用いることによって、下部薄膜コイル11の高さを高くすることができる。すると、下部薄膜コイル11の断面積が大きくなる。したがって、薄膜磁気ヘッド320では、RWSの制約の範囲内で下部薄膜コイル11の電気抵抗を低減することが可能となっている。
【0233】
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態)
次に、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態について、図45を参照して説明する。
【0234】
図45の(a)は、上述の薄膜磁気ヘッド300を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。また、図45の(b)はHGA210の裏面側を示す斜視図である。図45(a)に示すように、ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)210とを有している。ハードディスク装置201は、HGA210を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面が薄膜磁気ヘッド300に対向している。
【0235】
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、図45(b)に示すスライダ208をトラック上に位置決めする。このスライダ208に薄膜磁気ヘッド300が形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アームは、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アームの先端にHGA210が取りつけられている。
【0236】
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
【0237】
次に、HGA210について図45(b)を参照して説明する。HGA210は、サスペンション220の先端部分にスライダ208が固着されている。また、HGA210では、配線部材224の一端部がスライダ208の端子電極に電気的に接続されている。
【0238】
そして、サスペンション220は、ロードビーム222と、ロードビーム222の基部に設けられているベースプレート221と、ロードビーム222上の先端側からベースプレート221の手前側にかけて固着して支持され、弾性を備えたフレクシャ223と、配線部材224とを有している。配線部材224はリード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドを有している。
【0239】
ハードディスク装置201は、HGA210を回転させると、スライダ208がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
【0240】
このようなHGA210およびハードディスク装置201は薄膜磁気ヘッド300を有しているから、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減することができる。
【0241】
特に、ハードディスク装置201が薄膜磁気ヘッド300を有しているときはハードディスク装置201が従来の薄膜磁気ヘッド700を有しているときよりも磁路長を短縮することが可能となる。そのため、薄膜磁気ヘッド300のインダクタンスを小さくすることができる。したがって、薄膜コイルに周波数が高い記録信号を流すことが可能であり、記録媒体に対する記録密度を高くすることができる。
【0242】
なお、以上の各実施の形態では、変位抑制層を有する薄膜磁気ヘッドを例にとって説明しているが、本発明は、変位抑制層を有しない薄膜磁気ヘッドについても適用することができる。また、薄膜コイルがシールド磁性層40、ライトシールド層60の周りに平面渦巻き状に巻回されているが、主磁極層26の周りに螺旋状に巻回されていてもよい。
【0243】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明を適用することにより、主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因した、データ消去等を軽減することができる。本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0245】
1…基板、11,12,111,112…下部薄膜コイル、13,17,52…第1のコイル層、16,53…第2のコイル層,20…対向絶縁層,20a…傾斜上端面,26…主磁極層、26f…底面、29…ギャップ層、30…ABS、40,140…シールド磁性層、41…接続シールド部、41a…上端面,41b…前端面,42…下部前側シールド部、42a…前端面,42b…傾斜下端面,42p…前端凸部,50,51,151…上部薄膜コイル、60,160…ライトシールド層,61…対向シールド部、62…上部前側シールド部、62b…シールド前端面、62c…シールド接続部、62f…シールド上端面、62r…シールド下端面、62c1…横平坦部、62c2…縦平坦部、63…連結シールド部、64…後側シールド部、65…上部ヨーク層、66…第2の前側シールド部、66a…平坦前端面、67…第2の後側シールド部、201…ハードディスク装置、202…ハードディスク、210…HGA、300,310,311,316,320…薄膜磁気ヘッド。
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。
【0003】
薄膜磁気ヘッドは、記録方式により大別すると、長手磁気記録方式と垂直磁気記録方式とに分けることができる。長手磁気記録方式はハードディスク(記録媒体)の記録面内(長手)方向にデータを記録する方式であり、垂直磁気記録方式はハードディスクに形成する記録磁化の向きを記録面の垂直方向に形成してデータを記録する方式である。このうち、垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドは長手磁気記録方式に比べて格段に高い記録密度を実現できる上に、記録済のハードディスクが熱揺らぎの影響を受けにくいので、長手磁気記録方式よりも有望視されている。
【0004】
ところで、従来、垂直磁気記録方式の磁気ヘッド(perpendicular
magnetic recording head:以下「PMR」ともいう)は、磁極層と薄膜コイルとを有し、磁極層に薄膜コイルを巻き回した電磁石の構造を有している。
【0005】
従来のPMRとして、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4等には、主磁極層のトレーリング側にシールド層を備えたPMRが開示されている。図46に示すPMR600はそのようなPMRの一例である。
PMR600は記録媒体の垂直方向に沿った記録磁界が通る主磁極層601と、主磁極層601の周りに巻き回わされた薄膜コイル602と、記録ギャップ層603と、記録ギャップ層603を挟んで主磁極層601と対向するシールド層604とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−272958号公報
【特許文献2】特開2010−176732号公報
【特許文献3】特開2010−157303号公報
【特許文献4】特開2009−295262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のPMRでは、薄膜コイルに電流を流し磁界を発生させて記録媒体にデータを記録する。例えば、前述したPMR600の場合であれば、薄膜コイル602に電流を流して記録媒体にデータを記録する。
【0008】
しかし、薄膜コイル602は、電流を流すと発熱するため、その熱が周囲のコイル絶縁層605に伝わってしまう。コイル絶縁層605は、フォトレジスト等の有機物質で形成されているため、薄膜コイル602よりも熱膨張係数が大きい。そのため、コイル絶縁層605は熱が加わると膨張しやすい。コイル絶縁層605が膨張すると、シールド層604の媒体対向面606側の端部が媒体対向面606よりも外側に向かって押し出されて、突出してしまう。
【0009】
PMRは、スライダと呼ばれる電子部品に薄膜形成プロセスを駆使して形成されている。PMRによって記録媒体にデータを記録するときは、スライダを記録媒体から浮上させている。スライダを記録媒体から浮上させる高さ(記録媒体とスライダとの距離)はフライングハイトと呼ばれ、7〜10nm程度のごくわずかな距離であることが知られている。そして、650〜850GB/in2(1インチ平米あたり650〜850ギガバイト)程度の高記録密度を達成するためには、このフライングハイトを5〜8nm以下にすることが求められる。
【0010】
しかしながら、前述のPMR600のように媒体対向面が突出すると、PMRが記録媒体に衝突し、PMRが破損しやすくなる。このようなPMRの破損を回避するためには、PMRが記録媒体に衝突しにくくなるよう、フライングハイトを高くせざるを得ない。そのため、従来のPMRでは、フライングハイトを低くすることが困難である。その結果、従来のPMRでは、記録密度を高めることが極めて困難であった。
【0011】
こうした磁極層の突出(プルトルージョン)は、前述したように、主に薄膜コイルの発熱によって引き起こされる。そのため、磁極層の突出を抑制するためには、薄膜コイルの発熱を抑制すればよい。一般に、電流の流れている導体から発生する熱はジュール熱と呼ばれ、電流の大きさの2乗および導体の電気抵抗に比例することが知られている(ジュールの法則)。したがって、薄膜コイルの発熱を抑制するには、薄膜コイルの電気抵抗を小さくすればよい。
【0012】
薄膜コイルの電気抵抗は薄膜コイルの断面積(電流の流れる方向と交差する方向の断面の面積)に反比例する。そのため、薄膜コイルの電気抵抗を小さくするためには、薄膜コイルの断面積を大きくすればよい。薄膜コイルの磁極層の回りに巻き回される回数(ターン数ともいう)を少なくすれば、薄膜コイルを太くすることができ、断面積を大きくすることができる。しかし、そうすると、薄膜コイルが発生する磁界の強さが弱くなり、PMRの書き込み特性(例えば、オーバーライト特性)が低下するという課題がある。
【0013】
また、薄膜コイルのターン数を変えることなく、薄膜コイルの幅を広げるか、または、薄膜コイルの厚さを大きくしても、薄膜コイルの断面積を大きくすることができる。例えば、PMR600の場合であれば、薄膜コイル602の幅w602を広げるか、厚さh602を大きくしても薄膜コイルの断面積を大きくすることができる。
【0014】
しかし、幅w602を広げると、磁路長を短くすることが難しくなる。磁路長は薄膜コイルが巻かれている磁極層の長さであり、その大きさは主に図46に示す幅LXによって左右される。
【0015】
ところで、薄膜コイルには交流電流が流されるが、そのときのインピーダンスは周波数とインダクタンスに比例する。そのため、磁気記録媒体への記録密度を高めるべく薄膜コイルに周波数の高い交流電流を流すと、インピーダンスが高くなり、電流が流れにくくなる。これを回避するにはインダクタンスを小さくすることが有効であり磁路長の短縮が有効である。しかし、薄膜コイルの幅を広げると磁路長を長くせざるを得ず、PMRのインダクタンスが大きくなってしまう。こうなると、記録信号の周波数を高くすることができなくなり、磁気記録媒体への記録密度を高めることができなくなる。また、薄膜コイルの厚さを大きくしても磁路長を長くせざるを得ない。
【0016】
一方、PMR600では、薄膜コイル602よりも媒体対向面606に近い位置と、薄膜コイル602よりも媒体対向面606から離れた位置のそれぞれにコイル絶縁層605の一部がコイル絶縁層605a,605bとして形成されている。そのため、コイル絶縁層605aの幅とコイル絶縁層605bの幅(媒体対向面606に交差する方向の幅でそれぞれ1.5μm程度、合わせて3μm程度)の分だけ幅LXが長くなってしまう。
【0017】
このような課題を解決し得るPMRとして従来、例えば図47に示されているPMR700が知られていた。特許文献4にも同様のPMRが記載されている。PMR700は、上部薄膜コイル708と、PMR600と同様の主磁極層710を有している。また、PMR700は下部薄膜コイル718と、シールド磁性層720と、絶縁層731,732を有している。
【0018】
このPMR700では、上部シールド層が、主磁極層710に対向するシールド部701と、上部薄膜コイル708の媒体対向面706側に配置された前側シールド部703と、上部薄膜コイル708を跨ぐ連結シールド部704とを有している。さらに、前側シールド部703と対向シールド部701との接続用シールド部702が形成されていた。このPMR700では、隣接する上部薄膜コイル708の間にコイル絶縁層709が配置され、上部薄膜コイル708の外側にはコイル絶縁層709が配置されていない。そのため、前述したPMR600よりも磁路長を短縮することができる。
【0019】
しかしながら、PMR700では、シールド磁性層720の構造に起因した次のような課題が解決されていなかった。図47に示したように、シールド磁性層720は、リーディングシールド部711と、下部前側シールド部712と、接続シールド部713と、連結シールド部714とを有している。下部前側シールド部712は媒体対向面706に配置されたシールド端面712aを有している。また、下部前側シールド部712の下側に対向絶縁層733が配置されていた。対向絶縁層733も、媒体対向面706に配置された前端面733aを有している。シールド磁性層720は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材で形成されているが、対向絶縁層733はアルミナ(Al2O3)等の絶縁材で形成されている。
【0020】
そして、PMR700を製造するときは、基板上に必要な薄膜を形成した後、研磨面が平坦になるように、基板の前端面(図47には図示せず)に対する研磨加工や機械加工を行い、それによって媒体対向面706を形成する。
【0021】
しかし、PMR700では、前端面内において、下部前側シールド部712および対向絶縁層733という材質の異なる2つの層が隣接して配置されていた。そのため、前端面に対する研磨加工や機械加工を行うと、図48に示したように、下部前側シールド部712のシールド端面712aに、鋭く角ばった凸部712Pが出現することがあった。
【0022】
PMR700では、主磁極層710と、リーディングシールド部711との間に非磁性薄膜734が形成されている。しかし、リーディングシールド部711も下部前側シールド部712も、磁性材で形成されているため、透磁率が高い。そのため、記録磁界に応じた磁束が主磁極層710を通過すると、その一部がリーディングシールド部711や下部前側シールド部712に漏れ出すことがある。そして、シールド端面712aに凸部712Pが出現していると、下部前側シールド部712に磁束が漏れ出したとき、その磁束が凸部712Pに集中しやすい。すると、凸部712Pから記録媒体に向けて放出される磁束が強くなりやすいため、記録媒体に書きこまれているデータが消去されたり、書きかえられたりといった不具合が起きやすい。
【0023】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因した、データ消去等を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、シールド磁性層は、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、その下部前側シールド部の媒体対向面内に配置されている前端面と、その前端面に接続され、かつ下部前側シールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されている薄膜磁気ヘッドを特徴とする。
【0025】
この薄膜磁気ヘッドの場合、下部前側シールド部の前端角が鈍角に設定されているから、前端面と下端面の交差する部分に形成される凸部を丸みを帯びた形状で簡易にしかも確実に形成することができる。
【0026】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、下部前側シールド部の前端面と下端面とが交差する部分を前端凸部としたときに、その前端凸部は、前端角が直角に設定されている場合よりも前端面と下端面とが緩やかに交わった凸状部分に対応していることが好ましい。
【0027】
上記薄膜磁気ヘッドの場合、前端凸部が凸状部分に対応しているため、前端凸部から磁束が漏れ出す場合、その磁束は強さの差が小さい複数の磁束に分散されやすい。
【0028】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの場合、媒体対向面内に配置された前端面を有し、かつ下部前側シールド部の下端面に接する上端面を備えた対向絶縁層を更に有し、その対向絶縁層の上端面が、媒体対向面から離れるにしたがい基板に近づくような下り傾斜状に形成されていることが好ましい。
【0029】
上記薄膜磁気ヘッドでは、対向絶縁層の上端面が下り傾斜状に形成されているため、その対向絶縁層に接するように磁性層を形成すると、その磁性層の前端角が鈍角になる。
【0030】
また、上記薄膜磁気ヘッドの場合、下部前側シールド部に接続され、かつ対向絶縁層よりも媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を更に有し、その接続シールド部の基板から最も離れた上端面とともに、その接続シールド部の最も媒体対向面に近い位置に配置されている前端面が下部前側シールド部に接続されていることが好ましい。
【0031】
この薄膜磁気ヘッドの場合、前端角が直角に設定されている場合よりも、下部前側シールド部と接続シールド部との接触面積が拡大される。
【0032】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドでは、対向絶縁層の上端面の全体が接続シールド部の上端面よりも基板に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0033】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、シールド磁性層は、媒体対向面内に配置されたシールド端面を有し、かつ主磁極層の基板側において非磁性薄膜を介して主磁極層に対向するリーディングシールド部を有し、薄膜コイルは主磁極層と基板との間に配置されている基板側コイル層を有し、リーディングシールド部のシールド端面と、そのシールド端面に接続され、かつリーディングシールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている第1の下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定され、基板との間隔が基板側コイル層の基板から最も離れた位置に配置される上端面と等しく形成された第2の下端面をリーディングシールド部が有する薄膜磁気ヘッドを提供する。
【0034】
上記薄膜磁気ヘッドは、基板側コイル層よりも媒体対向面に近い位置に配置され、かつ基板から最も離れた位置に配置される上端面が基板側コイル層の上端面と段差なく形成されている下部接続シールド部を更に有し、その下部接続シールド部の上端面と、リーディングシールド部の第2の下端面とが直に接続されていることが好ましい。
【0035】
また、上記薄膜磁気ヘッドは、主磁極層の基板に最も近い位置に配置される下端面に非磁性薄膜を介して接するベース絶縁層を更に有し、そのベース絶縁層に基板側コイル層の上端面が直に接していることが好ましい。
【0036】
さらに、ライトシールド層は、媒体対向面内において主磁極層に対向する対向シールド部と、薄膜コイルを跨ぐことなく対向シールド部に接続され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている上部前側シールド部とを有し、上部前側シールド部は媒体対向面内に配置されているシールド前端面と、そのシールド前端面よりも基板から離れた位置に配置され、かつ媒体対向面に交差する交差方向に沿って媒体対向面から離れて形成されているシールド上端面と、シールド前端面とシールド上端面とを直に接続しているシールド接続部とを有することが好ましい。
【0037】
また、上部前側シールド部は、シールド前端面とシールド上端面とを最短距離で結ぶ平坦面よりも媒体対向面から離れるように傾斜した後退傾斜構造をシールド接続部が有するように、媒体対向面側の一部分を切除して形成されていることが好ましい。
【0038】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、以下の(1)から(3)までの各工程を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供する。
(1)薄膜コイルを構成するコイル層のうちの主磁極層と基板との間に配置されている基板側コイル層を形成するための導体層を形成する導体層形成工程
(2)導体層の表面の平坦化処理を行うことによって、媒体対向面内に配置された前端面を有する対向絶縁層を形成する対向絶縁層形成工程
(3)対向絶縁層の表面に直に接するようにして、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を、前端角が鈍角になるように形成する下部前側シールド部形成工程
【0039】
上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、以下(4)の傾斜処理工程を更に有し、その傾斜処理工程によって下り傾斜状に形成された対向絶縁層の表面に直に接するようにして、下部前側シールド部形成工程を実行することが好ましい。
(4)対向絶縁層の表面を、媒体対向面から離れるにしたがい基板に近づくような下り傾斜状に形成する傾斜処理工程
【0040】
上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、以下(5)の接続シールド部形成工程を更に有し、接続シールド部を形成した後、その接続シールド部の媒体対向面側の側面が露出するように、傾斜処理工程を実行することが好ましい。
(5)下部前側シールド部に接続され、かつ対向絶縁層よりも媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を形成する接続シールド部形成工程
【0041】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、対向絶縁層の基板から最も離れた上端面の全体が、接続シールド部の基板から最も離れた上端面よりも基板に近い位置に配置されるように、傾斜処理工程を実行することが好ましい。
【0042】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法は、以下の(6)から(9)の工程を更に有することが好ましい。
(6)主磁極層を形成した後、ライトシールド層を構成する対向シールド部を媒体対向面内において主磁極層に対向するように形成する対向シールド部形成工程
(7)導体層の媒体対向面側に、ライトシールド層を形成するための第1のシールド部を対向シールド部形成工程によって形成された対向シールド部に接続され、かつ媒体対向面内に配置されるように形成する第1のシールド部形成工程
(8)ライトシールド層を構成する連結シールド部を第1のシールド部形成工程によって形成された第1のシールド部に接続され、かつ薄膜コイルを跨ぎ、さらに媒体対向面から離れるように媒体対向面から後退させて形成する連結シールド部形成工程
(9)第1のシールド部の連結シールド部によって被覆されていない媒体対向面側の一部分を切除するトリミング工程
【0043】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法の場合、トリミング工程は、連結シールド部形成工程によって形成された連結シールド部をマスクに用いて、第1のシールド部の連結シールド部によって被覆されていない媒体対向面側の一部分を切除することが好ましい。
【0044】
そして、本発明は、基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、基台を固定するジンバルとを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、シールド磁性層は、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、その下部前側シールド部の媒体対向面内に配置されている前端面と、その前端面に接続され、かつ下部前側シールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているヘッドジンバルアセンブリを提供する。
【0045】
さらに、薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、主磁極層とライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、主磁極層、ライトシールド層または主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、シールド磁性層は、主磁極層の基板側に配置され、かつ薄膜コイルの媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、その下部前側シールド部の媒体対向面内に配置されている前端面と、その前端面に接続され、かつ下部前側シールド部のうちの最も基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているハードディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0046】
以上詳述したように、本発明によれば、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因した、データ消去等を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドのABSを示す正面図である。
【図3】下部薄膜コイルを示す平面図である。
【図4】上部薄膜コイルを示す平面図である。
【図5】下部薄膜コイルの要部を示す平面図である。
【図6】ABSの要部を拡大して示す断面図である。
【図7】(a)は本発明の実施の形態にかかる下部前側シールド部の要部を示す一部省略した断面図、(b)は従来の下部前側シールド部の要部を示す一部省略した断面図である。
【図8】対向シールド部、上部前側シールド部および連結シールド部の要部を示す斜視図である。
【図9】トリム前シールド部と上部前側シールド部とを示す側面図である。
【図10】上部前側シールド部の変形例を示し、(a)は横平坦部を有しない場合、(b)は縦平坦部を有しない場合の側面図である。
【図11】図1の要部を示す断面図である。
【図12】図1に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図13】図12の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図14】図13の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図15】図14の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図16】図15の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図17】図16の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図18】図17の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図19】図18(a)の要部を示す断面図である。
【図20】図18の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図21】図20の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図22】図21の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図23】図22の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図24】図23の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図25】図24の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図26】図25の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図27】図28の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図28】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図29】上部薄膜コイルを構成する第2のコイル層を示す平面図である。
【図30】上部薄膜コイルを構成する第1のコイル層を示す平面図である。
【図31】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造工程を示す一部省略した図1に対応した断面図である。
【図32】図31の後続の工程を示す断面図である。
【図33】図32の後続の工程を示す断面図である。
【図34】図33の後続の工程を示す断面図である。
【図35】図34の後続の工程を示す断面図である。
【図36】図35の後続の工程を示す断面図である。
【図37】図36の後続の工程を示す断面図である。
【図38】変形例にかかる製造工程を示す断面図である。
【図39】図38の後続の工程を示す断面図である。
【図40】図39の後続の工程を示す断面図である。
【図41】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図42】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの変形例を示し、(a)は下部前側シールド部242を有する場合の要部を示す断面図、(b)は下部前側シールド部243を有する場合の要部を示す断面図である。
【図43】本発明の第4の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図1に対応した断面図である。
【図44】図43の要部を示す断面図である。
【図45】(a)は本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えたハードディスク装置を示す斜視図、(b)はHGAの裏面側を示す斜視図である。
【図46】従来の薄膜磁気ヘッドの一例を示す断面図である。
【図47】別の従来の薄膜磁気ヘッドを示す断面図である。
【図48】図47の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
第1の実施の形態
(薄膜磁気ヘッドの構造)
まず、図1〜図11を参照して本発明の第1の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドの構造について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300のエアベアリング面(以下「ABS」という)と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図、図2は薄膜磁気ヘッド300のABS30を示す正面図である。図3は下部薄膜コイル11を示す平面図、図4は上部薄膜コイル51を示す平面図である。図5は下部薄膜コイル11の要部を示す平面図である。図6はABS30の要部を拡大して示す断面図である。図7の(a)は下部前側シールド部42の要部を拡大して示す断面図であり、(b)は従来の下部前側シールド部712の要部を拡大して示す断面図である。図8は、対向シールド部61、上部前側シールド部62および連結シールド部63の要部を示す斜視図である。図9はトリム前シールド部と上部前側シールド部とを示す側面図である。図10は、上部前側シールド部62の変形例を示し、(a)は横平坦部を有しない場合、(b)は縦平坦部を有しない場合の側面図である。図11は図1の要部を示す断面図である。
【0049】
薄膜磁気ヘッド300は、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、記録媒体に対向する媒体対向面としてのABS30を有している。なお、以下では、薄膜磁気ヘッド300の主要部の構造について説明し、主要部以外の部分の構造は後述する製造工程の中で説明する。
【0050】
再生ヘッドは、ABS30の近傍に配置された磁気的信号検出用のMR素子5を有している。また、再生ヘッドは、基板1上に形成されている絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3と、MR素子5をシールドしているシールドギャップ膜4とを有している。さらに、再生ヘッドは、シールドギャップ膜4の上に形成されている磁性材料からなる上部シールド層6と、上部シールド層6の上に形成されている絶縁層7とを有している。再生ヘッドは、記録ヘッドよりも基板1に近い位置に配置されている。
【0051】
MR素子5は、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果を示す感磁膜によって構成されている。
【0052】
上部シールド層6は中間に絶縁部6bを有している。また、絶縁部6bよりも下側に第1のシールド部6aが形成され、上側に第2のシールド部6cが形成されている。
【0053】
薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8が絶縁層2に形成されている。加熱部8はDFH(Disk
flying heater)とも呼ばれ、電流が流されることによって発熱し、その熱を上部シールド層6などに伝達させる機能を有している。また、感熱部9が絶縁層7に形成されている。感熱部9はHDI(Head Disk Interlayer)センサとも呼ばれる。感熱部9は上部シールド層6付近の熱(温度)を感知し、その感知した熱に応じて抵抗値が変化する素子を用いて形成されている。
【0054】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8によって上部シールド層6や下部シールド層3を加熱する。上部シールド層6や下部シールド層3は加熱部8から受けた熱によって体積が膨張する。その結果、上部シールド層6や下部シールド層3が図1には図示しない記録媒体に接触したとすると、上部シールド層6や下部シールド層3のABS30付近が摩擦によって熱を帯びる。薄膜磁気ヘッド300ではこの摩擦熱に伴う感熱部9の抵抗値の変化を検出することによって、上部シールド層6や下部シールド層3が記録媒体に接触したかどうかの判定が行われる。また、その判定結果に応じて加熱部8に流れる電流値を制御しながらフライングハイトを制御している。
【0055】
記録ヘッドは、下部薄膜コイル11と、対向絶縁層20と、主磁極層26と、ギャップ層29と、シールド磁性層40と、上部薄膜コイル51と、ライトシールド層60と、上部ヨーク層65、変位抑制層85および保護絶縁層90を有し、これらが基板1上に積層された構成を有している。
【0056】
薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とによって一連の薄膜コイルが形成されている。下部薄膜コイル11は、この一連の薄膜コイルのうちの主磁極層26と基板1との間に配置されている部分に対応している。そのため、下部薄膜コイル11は、本発明の実施の形態に係る基板側コイル層に対応している。
【0057】
図3に示すように下部薄膜コイル11は3つのターン部11b、11d、11fを有している。ターン部11b、11d、11fは後述する接続シールド部41と第1の後側シールド部44との間に配置されている。下部薄膜コイル11はターン部11b、11d、11fがフォトレジスト層15を介して並んだ構造を有している。ターン部11b、11d、11fのうち、ターン部11bがABS30に最も近い位置に配置されているので、ターン部11bが前側ターン部に対応している。ターン部11fが後側ターン部に対応している。
【0058】
そして、下部薄膜コイル11は、リード部13Aからターン部11bにつながるループ部11aと、ターン部11bからターン部11dにつながるワンループ部11cと、ターン部11dからターン部11fにつながるワンループ部11eと、ターン部11fから接続部11hまでのハーフループ部11gを有している。
【0059】
下部薄膜コイル11はリード部13Aから接続部11hまでが一本につながることによってシールド磁性層40の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で3ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図1では、下部薄膜コイル11について、ターン部11b、11d、11f、接続部11hのみが示されている。ターン部11b、11d、11fは横幅よりも厚さ(ABS30に沿った方向(上下方向)の高さ)の大きい縦長の構造を有している。なお、本実施の形態において、横幅とはABS30と交差する方向(交差方向)の幅を意味している。
【0060】
また、下部薄膜コイル11は、図5に示すように、ワンループ部11cがABS30に接近するにしたがい漸次幅が狭まり、ABS30に最も近い箇所で最も幅が狭まる可変幅構造を有している。すなわち、図5に示すようにして、ワンループ部11cの幅をWd1、Wd2、Wd0を定めたときにWd1>Wd2>Wd0となっている。そして、ワンループ部11cのうちの最も幅の狭い部分がターン部11dとなっている。ループ部11aおよびワンループ部11eもワンループ部11cと同様の可変幅構造を有し、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部11b、11fとなっている。ここで、ターン部11b、11d、11fの幅はそれぞれWb0(約0.9μm)、Wd0(約0.9μm)、Wf0(約0.9μm)である。
【0061】
そして、下部薄膜コイル11は、次のような一連の3ターンループを形成している。すなわち、リード部13Aから、ループ部11a、ワンループ部11c、ワンループ部11e、ハーフループ部11gを通って接続部11hにつながることによって、3ターンループが形成されている。
【0062】
なお、図5において、ターン部11bの前側面11bfからABS30までの距離は、下部薄膜コイル11の前側距離を示している。また、ターン部11fの後側面11frからABS30までの距離は、下部薄膜コイル11の後側距離を示している。
【0063】
次に、上部薄膜コイル51について説明する。図4に示すように、上部薄膜コイル51は3つのターン部51g、51e、51cを有している。ターン部51g、51e、51cは、後述する上部前側シールド部62と、後側シールド部64との間に配置されている。上部薄膜コイル51はターン部51g、51e、51cがフォトレジスト層55を介して並んだ構造を有している。ターン部51g、51e、51cのうち、ターン部51gがABS30に最も近い位置に配置されているので、ターン部51gが前側ターン部に対応している。ターン部51cが後側ターン部に対応している。
【0064】
そして、上部薄膜コイル51は、接続部51aからターン部51cにつながるループ部51bと、ターン部51cからターン部51eにつながるワンループ部51dと、ターン部51eからターン部51gにつながるワンループ部51fと、ターン部51gからリード部14Aまでのハーフループ部51hを有している。
【0065】
上部薄膜コイル51は接続部51aからリード部14Aまでが一本につながることによってライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で3ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図1では、上部薄膜コイル51について、ターン部51g、51e、51c、接続部51aのみが示されている。ターン部51g、51e、51cはターン部11b、11d、11fと同様に縦長の構造および可変幅構造を有している。そして、ワンループ部51f、ワンループ部51d、ループ部51bのうち、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部51g、51e、51cとなっている。
【0066】
そして、上部薄膜コイル51は次のような一連の3ターンループを形成している。すなわち、接続部51aから、ループ部51b、ワンループ部51d、ワンループ部51f、ハーフループ部51hを通ってリード部14Aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0067】
また、図1に示したように、上部薄膜コイル51は上端面51Aを有している。上端面51Aは基板1から最も離れた位置に配置されている。この上端面51Aは後述するシールド上端面62fと段差なく形成され、シールド上端面62fとともに共通平坦面59(図25参照)を形成している。さらに、上部薄膜コイル51は層間絶縁膜32だけを介して後述する上部ヨーク層65の上面に接続されている。上部薄膜コイル51は磁性材からなる磁性層を介することなく上部ヨーク層65に接続されている。
【0068】
薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11の接続部11hが上部薄膜コイル51の接続部51aに接続されている。これにより、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とは一連のコイルを形成している。下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とには、記録媒体に記録されるデータに応じた電流が流され、その電流によって記録磁界が発生する。
【0069】
続いて、対向絶縁層20について説明する。対向絶縁層20は、図11に示すように傾斜上端面20aを有している。この傾斜上端面20aは、後述する下部前側シールド部42の傾斜下端面42bに直に接している。また、傾斜上端面20aはABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。傾斜上端面20aは、ABS30から後述する接続シールド部41に到達するまで傾斜が一定に形成されている。表面は凹凸のない平坦面である。
【0070】
また、傾斜上端面20aの全体が接続シールド部41の上端面41aよりも基板1に近い位置に配置されている。絶縁層の表面が削りとられたことによって傾斜上端面20aが形成されている。傾斜上端面20aが形成されていることによって、対向絶縁層20の表面に凹部が形成されている。その凹部に接続シールド部41の後述する前端面41bが出現している。
【0071】
対向絶縁層20は、前端面20bを有している。前端面20bはABS30内に配置されている。そして、図6に示すように、対向絶縁層20では、前端面20bのうちの最も下部前側シールド部42に近い位置に欠落端部20dが形成されている。欠落端部20dは、薄膜磁気ヘッド300の製造工程でABS30を形成するための研磨等を行った際、対向絶縁層20の一部がわずかに欠落することによって形成されている。
【0072】
次に、主磁極層26について説明する。主磁極層26は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体は透磁率(magnetic permeability)が高い。したがって、主磁極層26は、磁束が透過しやすく、より多くの磁束が通る。そのため、記録磁界に応じたより強い磁束が主磁極層26からABS30に向かって放出される。
【0073】
主磁極層26は、図2、図11に示すように、ABS30側に磁極端面26aを有している。磁極端面26aは下部薄膜コイル11側よりも上部薄膜コイル51側の幅が広く、その幅が下部薄膜コイル11に近づくにつれて漸次狭まるベベル形状に形成されている。磁極端面26aの上部薄膜コイル51側の幅がトラック幅を規定している。トラック幅は例えば0.06〜0.12μm程度である。磁極端面26aはABS30内に配置されている。
【0074】
主磁極層26は磁極端面26aを有するトラック幅規定部と、幅広部と、拡幅部とを有している。トラック幅規定部はABS30からの距離に応じて変化しない一定の幅を有している。また、幅広部はトラック幅規定部よりもABS30から離れた位置に配置され、トラック幅規定部よりも幅広に形成されている。また、幅広部はトラック幅規定部との境界部分でトラック幅規定部と同じ大きさの幅を有するとともに、その幅がABS30から離れるにしたがい漸次広がっている。拡幅部は幅広部よりも大きい一定の幅を有している。本実施の形態では、磁極端面26aから、幅が大きくなり始めるまでの部分をトラック幅規定部としている。
【0075】
また、図11に示すように、主磁極層26では、トラック幅規定部に、上傾斜面26cと、下傾斜面26eとが形成されている。
【0076】
上傾斜面26cはABS30から離れるにしたがい基板1から離れるような上り傾斜状に形成されている。上傾斜面26cは磁極端面26aと、上端面26dとに接続されている。
【0077】
下傾斜面26eはABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。下傾斜面26eは磁極端面26aと、幅広部の下端面26fとに接続されている。下傾斜面26eは,トラック幅規定部から幅広部まで形成されている。下端面26fは主磁極層26の中で基板1に最も近い位置に配置されている。
【0078】
図1にも示すように、主磁極層26には、上端面26d上の、後述する対向シールド部61と上部ヨーク層65との間の部分に非磁性層27,28が積層されている。
【0079】
なお、前述のトラック幅規定部におけるABS30からの長さをネックハイトという。ネックハイトは例えば0.05〜0.3μm程度である。
【0080】
ギャップ層29は主磁極層26の上傾斜面26cおよび上端面26dに沿って、対向シールド部61および絶縁層31と、主磁極層26および非磁性層27,28との間に形成されている。ギャップ層29は、上傾斜面26cおよび上端面26dを被覆するようにして形成されている。ギャップ層29は、アルミナ(Al2O3)等の非磁性の絶縁材やRu,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いて形成されている。
【0081】
次に、シールド磁性層40について説明する。図1に示すように、シールド磁性層40は、接続シールド部41と、下部前側シールド部42と、連結シールド部43と、第1の後側シールド部44と、第2の後側シールド部45と、第3の後側シールド部46と、リーディングシールド部47とを有している。シールド磁性層40は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。
【0082】
接続シールド部41と、下部前側シールド部42とは、下部薄膜コイル11よりもABS30側に配置されている。また、接続シールド部41の上に下部前側シールド部42の一部分が重なっている。接続シールド部41はABS30から離れた位置に形成されている。しかし、下部前側シールド部42の一部分がABS30内に配置されている(図11参照)。
【0083】
ここで、図1、図11を参照して接続シールド部41について詳しく説明する。接続シールド部41は下部前側シールド部42と連結シールド部43とを接続している。接続シールド部41は対向絶縁層20よりもABS30から離れた位置に配置されている。
【0084】
接続シールド部41は上端面41aと、前端面41bとを有している。接続シールド部41では、上端面41aとともに前端面41bが下部前側シールド部42に接続されている。上端面41aは、接続シールド部41のうちの基板1から最も離れた位置に配置されている。前端面41bは接続シールド部41のうちのABS30に最も近い位置に配置されている。
【0085】
次に、下部前側シールド部42について、図6、図11を参照して詳しく説明する。下部前側シールド部42は、前端面42aと、傾斜下端面42bと、上端面42cと、起立端面42dと、交差端面42eと、前端凸部42Pを有している。
【0086】
下部前側シールド部42では、前端面42aの全体がABS30内に配置されている。傾斜下端面42bは、対向絶縁層20の前述した傾斜上端面20aに直に接している。傾斜下端面42bは傾斜上端面20aと同様に、ABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。また、傾斜下端面42bはABS30から接続シールド部41に到達するまで傾斜が一定に形成されている。表面は凹凸のない平坦面である。
【0087】
そして、下部前側シールド部42では、図6に示す前端角αが鈍角に設定されている。前端角αは前端面42aと傾斜下端面42bとのなす角度を示している。前端角αは前端面42aから傾斜下端面42bに向かって時計回りに計った角度である。
【0088】
上端面42cは下部前側シールド部42のうちの基板1から最も離れた位置に配置されている。上端面42cの全体が平坦に形成されている。起立端面42dは傾斜下端面42bのABS30から最も離れた位置に形成されている。起立端面42dは傾斜下端面42bからABS30に沿って起立するように形成されている。また、起立端面42dは、接続シールド部41の前端面41bに直に接している。交差端面42eは起立端面42dの最上部からABS30に交差する方向に沿って平坦に形成されている。また、交差端面42eは接続シールド部41の上端面41aに直に接している。
【0089】
そして、図6に詳しく示すように、前端凸部42Pは前端面42aと傾斜下端面42bとが交差する角部に対応している。前端凸部42Pは、丸みを帯びた凸状部分であって、前端角が図6に示す角度βのような直角に設定されている場合と異なり、前端面42aと傾斜下端面42bとが緩やかに交わることによって形成されている。
【0090】
連結シールド部43は、下部薄膜コイル11のターン部11b、11d、11fを跨ぐようにして形成され、接続シールド部41と第1の後側シールド部44とを接続している。連結シールド部43は、主磁極層26から放出された磁束を還流させるリターン磁極としての機能を有している。
【0091】
第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46は、いずれも下部薄膜コイル11のターン部11b、11d、11fよりもABS30から離れた位置に配置されている。また、第1の後側シールド部44の上に第2の後側シールド部45が重なり、第2の後側シールド部45の上に第3の後側シールド部46が重なっている。第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46はABS30に近い前側面からABS30までの距離の等しい三段構造を形成している。第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46は、連結シールド部43を主磁極層26に連結する連結部としての機能を有している。
【0092】
リーディングシールド部47は下部前側シールド部42に接続され、その反対側上面に非磁性薄膜25が形成されている。リーディングシールド部47は幅方向中間部分にV溝部が形成されている。V溝部は概ね断面V字状に形成されている。その底部は主磁極層26のトラック幅規定部の下面に応じた傾斜構造を有している。図2に示すように、V溝部の内側に後述する非磁性薄膜25と、主磁極層26のトラック幅規定部とが納められている。非磁性薄膜25はV溝部の内側内面上に形成されている。V溝部の上側にV溝部を覆うようにしてギャップ層29が形成されている。
【0093】
さらに、リーディングシールド部47は切欠部を有している。切欠部は、V溝部の後側に形成されている。切欠部の内側に主磁極層26の幅広部の一部が納められている。
【0094】
次に、ライトシールド層60について説明する。ライトシールド層60は、対向シールド部61と、上部前側シールド部62と、連結シールド部63と、後側シールド部64とを有している。
【0095】
対向シールド部61はABS30に臨む前端面を有している。また、対向シールド部61はABS30内においてリーディングシールド部47に対峙している。また、対向シールド部61のABS30に臨む前端面に、ギャップ層29が配置される微小スペースが形成されている。その微小スペースにギャップ層29のABS30側部分が形成されている。対向シールド部61はギャップ層29を挟んでABS30側から順に主磁極層26、非磁性層27、非磁性層28に対向するようにして形成されている。また、対向シールド部61は上端面が平坦になっていて、その上端面に上部前側シールド部62が接続されている。
【0096】
上部前側シールド部62は上部薄膜コイル51よりもABS30側に配置されている。この上部前側シールド部62について、図8、図9を参照して詳しく説明する。
【0097】
上部前側シールド部62はシールド前端面62bと、シールド上端面62fと、シールド接続部62cと、シールド下端面62rとを有している。シールド前端面62bはABS30内に配置されている。シールド前端面62bはABS30内に露出している。図8において、網掛けした部分がシールド前端面62bを示している。シールド上端面62fは、シールド前端面62bよりも基板1から離れた位置に配置されている。基板1から離れる側を上側、基板1に近づく側を下側ともいう。シールド上端面62fは、連結シールド部63に接続されている。シールド上端面62fは、ABS30の交差方向に沿って形成されている。しかも、シールド上端面62fは、ABS30から離れて形成されている。シールド上端面62fは、シールド下端面62rよりも小さい大きさを有している。
【0098】
シールド接続部62cはシールド前端面62bとシールド上端面62fとを接続する部分である。シールド接続部62cは、シールド前端面62bとの接続部62xを除くすべての部分がABS30から離れた位置に配置されている。
【0099】
シールド接続部62cは接続部62xから、シールド上端面62fに接続される接続部62yに近づくにしたがい、ABS30から漸次離れるように傾斜した傾斜構造を有している。接続部62xはABS30内に配置されているが、接続部62yはABS30から離れた位置に配置され、ABS30から後退している。
【0100】
そして、図9に示すように、この接続部62xと接続部62yとを結ぶ仮想的な平坦面99を考えた場合、この平坦面99はシールド前端面62bとシールド上端面62fとを最短距離で結ぶ平坦面である。この平坦面99よりも、シールド接続部62cはABS30から離れるように傾斜した後退傾斜構造を有している。さらに、シールド接続部62cは横平坦部62c1と、縦平坦部62c2と、湾曲部62c3とを有し、これらが滑らかにつながり一体となった構造を有している。横平坦部62c1は概ねABS30の交差方向に沿って形成されている。縦平坦部62c2は概ねABS30に沿って形成されている。
【0101】
シールド下端面62rはABS30の交差方向に沿って形成されている。シールド下端面62rはABS30に達する大きさを有している。シールド下端面62rはシールド上端面62fよりも大きい大きさを有している。シールド下端面62rはABS30側に対向シールド部61が接続され、そのABS30から離れた後側に絶縁層31が接続されている。
【0102】
上部前側シールド部62は以上のような構造を有しているので、トリム前前側シールド部62A(図9の上側)よりも、ABS30内に配置されている端面の大きさが小さく、体積も小さい。トリム前前側シールド部62Aは、後述するトリミング工程を実行することによって形成される直前の前側シールド部である。トリム前前側シールド部62Aは、シールド上端面62fがABS30に達し、トリム前前端面62aを有している。そして、トリム前前端面62aとシールド前端面62bの大きさを比較すると、シールド前端面62b<トリム前前端面62aである。
【0103】
次に、連結シールド部63について説明する。連結シールド部63は、上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐようにして形成されている。連結シールド部63はABS30から離れて形成されている。連結シールド部63は上部前側シールド部62と、後側シールド部64とに接続されている。
【0104】
後側シールド部64は上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置に配置されている。後側シールド部64は、連結シールド部63と、上部ヨーク層65とに接続されている。後側シールド部64は上部前側シールド部62と等しい高さに形成されている。そのため、後側シールド部64は、上部薄膜コイル51およびシールド上端面62fとともに共通平坦面59を形成している。
【0105】
上部ヨーク層65は主磁極層26の上端面26dのうちの非磁性層27,28よりもABS30から離れた後側に接続されている。上部ヨーク層65の上端面は対向シールド部61の上端面と段差なく形成されている。上部ヨーク層65の上端面は対向シールド部61の上端面とともに共通平坦面59A(図22参照)を形成している。
【0106】
その他、薄膜磁気ヘッド300は、変位抑制層85を有している。変位抑制層85は連結シールド部63の上端面に接続されている。変位抑制層85は線熱膨張係数の小さい非磁性材料によって形成されている。例えば、変位抑制層85は無機材料または金属材料を用いることが好ましく、例えばSiC,AlN,Si3N4,W(タングステン)を用いることができる。特に、変位抑制層85は硬度の大きい非磁性材料を用いることが好ましい。例えば、SiCはアルミナに比べてビッカース硬度が大きいため、変位抑制層85はSiCを用いることが好ましい。
【0107】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は保護絶縁層90を有している。保護絶縁層90はアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて形成されている。保護絶縁層90は埋込部90aと、カバー部90bとを有し、埋込部90aとカバー部90bとが一体となっている。埋込部90aは、シールド接続部62cの全体に接し、かつシールド接続部62cとABS30との間に隙間なく埋め込まれている。カバー部90bは連結シールド部63および変位抑制層85を覆うように形成されている。
【0108】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
次に、前述の図1、図2、図6、図9とともに、図12(a),図12(b)〜図18(a),図18(b)、図19、図20(a),図20(b)〜図27(a),図27(b)を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド300の製造方法について説明する。
【0109】
ここで、図12(a)〜図18(a)および図20(a)〜図27(a)は、薄膜磁気ヘッド300の各製造工程における図1に対応した断面図、図12(b)〜図18(b)および図20(b)〜図27(b)は、同じく図2に対応した正面図である。なお、各図において、“ABS”とは、後にABSが形成される部分を示している。
【0110】
まず、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料からなる基板1を準備する。そして、図12(a)、図12(b)に示すように、その基板1の上に、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料からなる絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3を順に形成する。絶縁層2を形成するときに加熱部8が形成される。
【0111】
次に、MR素子5をシールドするように絶縁材料を用いてシールドギャップ膜4を形成する。このとき、MR素子5に接続される図示しないリードを形成し、MR素子5およびリードをシールドギャップ膜4で覆う。それから、磁性材料と絶縁材料とを用いてシールドギャップ膜4の上に上部シールド層6(第1のシールド部6a、絶縁部6b、第2のシールド部6c)を形成する。
【0112】
次に、上部シールド層6の上にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて、上部シールド層6と、後に形成される記録ヘッドとを分離するための絶縁層7を形成する。絶縁層7を形成するときに感熱部9が形成される。これまでの工程で記録ヘッドを形成するための積層体が得られる。その後、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて連結シールド部43を形成するための磁性層(厚さは0.6μm程度)を形成して、積層体表面に絶縁層を形成し、化学機械研摩(以下「CMP」という)によって積層体表面の平坦化を行う。すると、対向絶縁層17と連結シールド部43が形成される。このとき、連結シールド部43はABS30から0.3μm〜1μm(本実施の形態では、0.5μm程度)離して形成する。
【0113】
続いて、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)の絶縁層18(膜厚は0.1μm〜0.3μm程度)を形成する。それから、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンをマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、絶縁層18を選択的に開口する。そして、接続シールド部形成工程を実行する。この工程では、フレームめっき法により、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて接続シールド部41,第1の後側シールド部44を厚さ1〜1.5μm程度で形成する。
【0114】
次に、図13(a)、図13(b)に示すように、アルミナ(Al2O3)からなる絶縁層19(膜厚は0.02μm〜0.3μm程度、好ましくは0.1μm〜0.2μm程度)をアトミックレイヤー法によるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で積層体の表面全体に形成する。絶縁層19は、接続シールド部41、第1の後側シールド部44を被覆するように形成される。
【0115】
それから、導体層形成工程を実行して導体層70を形成する。導体層70は、下部薄膜コイル11を形成するために形成する。この工程では、まず、フレームめっき法によって、接続シールド部41と第1の後側シールド部44との間に導体層70を形成する。導体層70は、2つの間隙部70aを備え、かつ絶縁層19を介して接続シールド部41と第1の後側シールド部44とに隙間なく接触するようにして形成する。導体層70は間隙部70aを備えているから間欠導体層である。
【0116】
次に、図14(a)、図14(b)に示すように、導体層70における2つの間隙部70aを埋めるようにフォトレジスト層80(膜厚は1.5μm〜2.5μm程度)を形成する。次いで、アルミナ(Al2O3)を用いて積層体の表面をカバーし得る絶縁膜20を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、接続シールド部41と第1の後側シールド部44が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0117】
すると、図15(a)、図15(b)に示すように、導体層70とともに接続シールド部41と第1の後側シールド部44の平坦化処理が行われる。この場合、平坦化処理を行うことによって、対向絶縁層20が形成されるので、平坦化処理は対向絶縁層形成工程としての意味を有している。また、対向絶縁層20とともに下部薄膜コイル11が形成される。
【0118】
続いて、図16(a)、図16(b)に示すように、対向絶縁層20および絶縁層19の表面を露出させるレジストパターン79を形成する。続いて、傾斜処理工程を実行する。傾斜処理工程では、レジストパターン79をマスクにしてイオンビームエッチング、ウェットエッチング等を行い、図17(a)、図17(b)に示すように対向絶縁層20および絶縁層19の表面を削りとり、対向絶縁層20の表面に凹部を形成する。この場合、削り取った後の表面が下り傾斜状になるように対向絶縁層20の表面および絶縁層19の表面を削りとり、これによって対向絶縁層20の最上面に傾斜上端面20aを形成する。また、傾斜処理工程では、接続シールド部41のABS30側の一部分が露出するようにイオンビームエッチング等を行う。さらに、傾斜処理工程では、対向絶縁層20の最上面(基板1から最も離れた上端面)の全体が上端面41aよりも基板1に近い位置に配置されるようにイオンビームエッチング等を行う。
【0119】
続いて、図18(a)、図18(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層21(膜厚は0.3μm〜0.7μm程度)を形成する。その後、この絶縁層21を選択的に開口する。
【0120】
次に、下部前側シールド部形成工程を実行し、前端角αが鈍角の下部前側シールド部42を形成する。この工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に重ねて下部前側シールド部42と、第2の後側シールド部45とをともに厚さ0.5μm〜1.2μm程度で形成する。この場合、前述した傾斜処理工程によって、対向絶縁層の最上面に下り傾斜状の傾斜上端面20aが形成されているため、その傾斜上端面20aに磁性材が直に接するようにフレームめっき法を実行することによって下部前側シールド部42が形成される。こうして、下部前側シールド部形成工程を実行する。また、傾斜処理工程で接続シールド部41のABS30側を露出させているので、下部前側シールド部42が上端面41aのほか、前端面41bにも接するように形成される。
【0121】
なお、この時点では、まだ、ABS30が形成されていない。そのため、図19に示すように、下部前側シールド部42の前端面と、対向絶縁層20の前端面とによって、段差のない平坦な前端面30hが形成されている。
【0122】
その後、積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。それから、図20(a)、図20(b)に示すように、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いてベース絶縁層24を形成する。ベース絶縁層24を形成するときに加熱部23が形成される。その後、ベース絶縁層24を選択的に開口する。続いて、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてフレームめっき法によって、開口した部分にリーディングシールド部47となるべき磁性層と、第3の後側シールド部46とをそれぞれ厚さ0.5μm〜1.0μm程度で形成する。
【0123】
そして、積層体の表面にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、積層体の表面にレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、リーディングシールド部47となるべき磁性層の表面を、V溝部および切欠部に応じた形状に露出させる形状に形成する。そのレジストパターンをマスクにして反応性イオンエッチング(以下「RIE」という)を行い、積層体の表面のレジストパターンで被覆されない部分を除去する。
【0124】
すると、リーディングシールド部47となるべき磁性層にV溝部および切欠部が形成され、これによって、リーディングシールド部47が形成される。リーディングシールド部47が形成されることによって、シールド磁性層40が形成される。
【0125】
それから、図21(a)、図21(b)に示すように、ベース絶縁層24およびリーディングシールド部47を被覆するようにして非磁性薄膜25を形成する。非磁性薄膜25はRu,NiCr,NiCu等の非磁性金属材料や、アルミナ等の絶縁材料を用いてスパッタリングによって形成する。非磁性薄膜25はリーディングシールド部47のV溝部にも形成される。
【0126】
続いて、CoNiFe、CoFe、NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて積層体の表面全体に0.4〜0.8μm程度の厚さで磁性層75をスパッタリングによって形成する。この磁性層75によって後に主磁極層26が形成される。そして、積層体の表面全体をCMPで研磨して、積層体表面の平坦化を行う。
【0127】
その後、スパッタリングにより積層体の表面全体に、Ru,NiCr,NiCu等の金属材料を用いて非磁性層77(厚さは約0.04〜0.1μm程度)を形成する。非磁性層77は後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層27となる。さらに、積層体の表面全体に、アルミナ(Al2O3)、シリコン酸化物等の無機絶縁材料を用いて非磁性層78(厚さは約0.1〜0.3μm程度)を形成する。非磁性層78は、後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層28となる。
【0128】
続いて、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン81をABS30の近傍に形成する。
【0129】
次に、レジストパターン81をマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性層78の一部を除去する。この場合のエッチングは、エッチングによって形成された溝の底部が非磁性層77の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。そのため、非磁性層78には、非磁性層77と比べて非磁性層78をエッチングする際のエッチングレートの小さい材料を用いる。
【0130】
それからレジストパターン81を除去する。続いて、残された非磁性層78をマスクに用いて例えばIBEによって、非磁性層77の一部をエッチングして除去する。さらに、残された非磁性層77をマスクに用いて例えばIBEにより、磁性層75の一部をエッチングして除去する。この工程を経ることによって、磁性層75のABS側に上傾斜面26cが形成される。
【0131】
続いて、図22(a)、図22(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料や、Ru,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いてスパッタ法またはCVDによってギャップ層29(厚さは約250Å〜350Å程度)を形成する。
【0132】
さらに、例えばスパッタ法により図示しないストッパ膜を形成し、その上に非磁性膜を形成する。その上で、積層体の表面全体に図示しないフォトレジストを塗布する。そして、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、図示しないレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクに用いて、例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性膜をエッチングする。このエッチングはエッチングによって形成された溝の底部がストッパ膜の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。それから、図示しないレジストパターンを除去した後、残された非磁性膜をマスクに用いてRIE等のエッチングを行い、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去する。ここで、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去することによって、上部ヨーク層65を形成するためのスペースを確保している。
【0133】
続いて、対向シールド部形成工程を実行することによって対向シールド部61を形成する。この工程では、まず、積層体の表面全体に磁性層を形成する。この磁性層は、めっき法により、CoNiFe、CoFe、CoFeN,NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて、0.5〜1.2μm程度の厚さで形成する。この磁性層によって、後に対向シールド部61および上部ヨーク層65が形成される。
【0134】
続いて、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層(厚さは1〜3μm程度)を形成する。さらに、磁性層の表面が露出するまで積層体の表面全体をCMPにより研磨して積層体表面の平坦化を行う。すると、対向シールド部61、上部ヨーク層65および絶縁層31が形成される。このとき、対向シールド部61の厚さが0.5〜1.0μm程度になるようにして積層体の表面を研磨する。
【0135】
次に、第1のシールド部形成工程を実行する。この工程では、図23(a),図23(b)に示すように、積層体の表面のうちの上部前側シールド部62と後側シールド部64とを形成しようとする部分にそれぞれトリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64とを形成する。このとき、トリム前前側シールド部62AがABS30内に配置されるので、本発明の実施の形態に係る第1のシールド部に対応している。第1のシールド部形成工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてトリム前前側シールド部62Aおよび後側シールド部64を例えばフレームめっき法によって形成する。このとき、トリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64との間隔が3.0μmから3.5μm程度となるようにする。
【0136】
そして、トリム前前側シールド部62Aは対向シールド部61に接続され、かつABS30内に配置されるように形成する。トリム前前側シールド部62Aは、図9の上側に示したような形状を有している。このトリム前前側シールド部62Aでは、前端面62aのすべてがABS30内に配置されている。
【0137】
それから、図24(a),図24(b)に示すように、積層体の表面における第1のシールド部(トリム前前側シールド部62A)と後側シールド部64との間に導体層71を形成する。この導体層71によって、後に上部薄膜コイル51が形成される。導体層71は2つの間隙部71aを備え、かつ第1のシールド部(トリム前前側シールド部62A)と後側シールド部64に層間絶縁膜32を介して隙間なく接触するようにして形成する。導体層71は、間隙部71aを備えているから間欠導体層である。
【0138】
その後、導体層71における2つの間隙部71aを覆うようにフォトレジスト層55(膜厚は2μm〜3μm程度)を形成し、アルミナ(Al2O3)を用いて積層体の表面をカバーし得る図示しないカバー絶縁膜を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、トリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0139】
すると、図25(a),図25(b)に示すように、上部薄膜コイル51およびフォトレジスト層55が形成される。このとき、上部薄膜コイル51の厚さが1.0μm〜1.8μm程度となるように、積層体表面の平坦化を行う。また、積層体表面の平坦化が行われたことによって、前述した共通平坦面59が形成される。
【0140】
続いて、図26(a),図26(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて絶縁層34を形成し、絶縁層34を部分的に開口する。その後、連結シールド部形成工程を実行する。この工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって連結シールド部63を形成する。連結シールド部63は、トリム前シールド部62Aに接続されるように形成する。連結シールド部63は、絶縁層34を介して上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐようにして形成する。
【0141】
また、連結シールド部63は前端面30hから後退させて(ABS30からも後退させて)ABS30から離れた位置に形成する。すなわち、ABS30との間に後退スペース63hが確保されるような位置に連結シールド部63を形成する。後退スペース63hはABS30に沿った例えば0.4μmから0.7μm程度の幅を有し、かつ連結シールド部63と同じ高さを備えた細長い部分になる。
【0142】
次に、トリミング工程を実行する。この工程では、図27(a),図27(b)に示すように、連結シールド部63をマスクに用いてイオンビームIBを上方向から照射してIBEを行い、トリム前前側シールド部62Aの連結シールド部63によって被覆されていない部分を切除する。トリム前前側シールド部62Aは、連結シールド部63によってABS30側部分が被覆されていないので、IBEを行うとトリム前前側シールド部62AのABS30側の一部分が切除される。このとき、IBEは、トリム前前側シールド部62AのABS30内に配置されるトリム前前端面62aの一部を残すようにして実行する。こうすることで、図9に示したように、トリム前前端面62aのうち、切除されずに残された部分によって前述したシールド前端面62bが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0143】
前述のトリミング工程では、連結シールド部63自体をマスクに用いているが、連結シールド部63を用いる代わりに連結シールド部63の上面をカバーするフォトレジスト等のマスクを用いてもよい。すなわち、フォトレジスト等を用いて連結シールド部63と大きさの等しいマスクを連結シールド部63の上面に形成し、そのマスクを用いて、トリム前前側シールド部62Aの連結シールド部63によって被覆されていない部分を切除してもよい。
【0144】
また、エッチングに用いるガスプラズマの化学的な作用が伴うと、トリム前前側シールド部62Aの垂直方向(図27の縦方向)だけでなく、水平方向((図27の横方向)にもエッチングが進行するおそれがある。そのため、トリミング工程では、ノンリアクティブなIBE、すなわち、イオンミリングを行うことが好ましい。不活性なイオンを照射したときの物理的な衝撃を利用して行うエッチングをリアクティブイオンエッチングと区別するため、イオンミリングともいう。
【0145】
続いて、図1に示したように変位抑制層85を形成する。それから、アルミナ(Al2O3)等の絶縁材料を用いて変位抑制層85をカバーするようにして保護絶縁層90を形成する。その後、前端面30hに対する研磨加工や機械加工を行い、ABS30を形成すると、薄膜磁気ヘッド300が完成する。
【0146】
保護絶縁層90は、シールド接続部62cの全体に接し、かつシールド接続部62cとABS30との間に隙間なく埋め込まれるように形成する。
【0147】
(薄膜磁気ヘッド300の作用効果)
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は下部前側シールド部42を有している。下部前側シールド部42は前端凸部42Pを有し、その前端凸部42Pは丸みを帯びた凸状部分である。そして、主磁極層26から下部前側シールド部42に磁束が漏れ出て、その磁束が下部前側シールド部42の外部に漏れ出すときは、図7(a)に示すように、その磁束が前端凸部42Pから磁束B0、B1、B2のように適宜分散して外部に進行する。
【0148】
しかし、前端凸部42Pが丸みを帯びた緩やかな凸状部分であるため、磁束B0、B1、B2の強さの差が少ない。したがって、磁束B0、B1、B2が記録媒体に到達しても、そのそれぞれによって、記録媒体に記録されているデータが消去されたり、書きかえられたりといった不具合は起こりにくい。そのため、データ消去等が軽減される。
【0149】
一方、図7(b)に示すように、従来の薄膜磁気ヘッド700では、下部前側シールド部712の前端角が直角に設定されているため、凸部712Pが鋭く角張っている。そのため、主磁極層710から下部前側シールド部712に磁束が漏れ出すと、その磁束は凸部712Pに集中しやすい。したがって、中央の磁束B0の強さがその外側の磁束B1、B2よりも強くなってしまう。そのため、磁束B0、B1、B2が記録媒体に到達すると、最も強い磁束B0によって、記録媒体に記録されているデータが消去されたり、書きかえられたりといった不具合が起きやすい。
【0150】
このように、本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300は、下部前側シールド部42を有していることによって、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0151】
また、前端凸部42Pは前端面42aと傾斜下端面42bの交差する角部に対応している。前端角αが鈍角に設定されているため、下部前側シールド部42に接する対向絶縁層20の前端面20bと、傾斜上端面20aとのなす角(前端面20bから傾斜上端面20aに向かって反時計回りに計った角度、反前端角ともいう)が鋭角になる。そうすると、反前端角が直角に設定されている場合よりも、対向絶縁層20の前端面20b(厳密には前端面30h)のうちの、下部前側シールド部42と対峙している鋭角部分の体積が小さい。そのため、ABS30を形成するべく前端面30hに対する研磨加工や機械加工を行ったときに、下部前側シールド部42と対峙している鋭角部分が欠落しやすい(前述の欠落端部20dは、この欠落に起因して形成される)。鋭角部分の欠落に伴い、下部前側シールド部42と対向絶縁層20との境界部分に微小な隙間が形成される。すると、下部前側シールド部42では、前端面42aにおける対向絶縁層20との境界部分において、ABS30の交差方向だけではなくそれとは異なる方向からも研磨等が進行し、その結果、丸みを帯びた前端凸部42Pが形成される。このように、下部前側シールド部42の前端角αを鈍角に設定することによって、前端凸部42Pを簡易にしかも確実に形成することができる。
【0152】
なお、従来のように、前端角が直角に設定されているときは、反前端角も直角に設定されている。すると、前端面30hにおいて、下部前側シールド部42と対向絶縁層20の直角な角部同士が対峙する格好になるため、その下部前側シールド部42と対峙している角部が欠落することがない。したがって、丸みを帯びた前端凸部42Pは形成されない。
【0153】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は、対向絶縁層20を有し、その傾斜上端面20aが下り傾斜状に形成されている。そのため、対向絶縁層20に接する磁性層を形成すれば、その磁性層の前端角が鈍角になる。したがって、対向絶縁層20に重ねて磁性層を形成すれば下部前側シールド部42が得られるから、下部前側シールド部42を確実に形成することができる。
【0154】
そして、薄膜磁気ヘッド300は接続シールド部41を有し、その上端面41aとともに前端面41bが下部前側シールド部42に接続されている。そのため、前端角が直角に設定されている場合よりも、下部前側シールド部42と接続シールド部41との接触面積が拡大される。よって、下部前側シールド部42から接続シールド部41への磁束の伝達が確実に行われる。
【0155】
一方、薄膜磁気ヘッド300は、対向シールド部61と、連結シールド部63との間に配置される磁性層として、上部前側シールド部62だけが形成されている。そのため、前述した従来のPMR700のように、対向シールド部701と連結シールド部704との間に、前側シールド部703と接続用シールド部702という2つの磁性層が形成されている場合に比べて、薄膜磁気ヘッド300は、上下方向に沿った磁路の長さが短くなり、その分、磁路長を短縮することができる。
【0156】
よって、薄膜磁気ヘッド300は記録ヘッドの磁束立ち上がり時間(Flux Rize Time)や、非線形トランジションシフト(Non-linear Transition Shift:NLTS)特性、重ね書き(Over Write)特性等を改善でき、周波数が高く変化の速い記録信号のすばやい変化に追従することが可能になる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、特にサーバに搭載されるハードディスク装置の記録ヘッドとして好適である。
【0157】
その上、上部前側シールド部62は、ABS30から、層間絶縁膜32を介して上部薄膜コイル51に到達し得るだけの横幅を有している。そのため、ライトシールド層60が異距離構造を有しているにもかかわらず、上部前側シールド部62は対向シールド部61と連結シールド部63の双方に確実に接続されている。したがって、主磁極層26に対向する対向シールド部61と、上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐ連結シールド部63とが1本につながり、1本につながった磁気回路を形成することができる。なお、異距離構造とは、対向シールド部61がABS30内に配置され、かつ連結シールド部63がABS30から後退していることによって、対向シールド部61、連結シールド部63それぞれのABS30からの距離が異なっている構造を意味している。
【0158】
ここで、ライトシールド層60が異距離構造を有しているなかで、上部前側シールド部62によって対向シールド部61と連結シールド部63の双方を確実に接続するための構造を考える。トリム前前側シールド部62Aのように、前端面のすべての部分がABS30内に配置されているときに上端面と下端面の大きさが最大になるから、前述の構造を実現するためには、トリム前前側シールド部62Aのように前端面のすべてがABS30内に配置されていることが望ましい。
【0159】
しかし、そうすると、トリム前前端面62aがABS30に大きく露出してしまう。上部前側シールド部62もトリム前前側シールド部62Aも、CoNiFe、CoFe、CoFeN、NiFe等の強磁性体からなる磁性材により形成されている。そのため、トリム前前側シールド部62Aのようにトリム前前端面62aの全体がABS30に露出していると、上部薄膜コイル51の発熱によってフォトレジスト層55が膨張したときの影響をトリム前前側シールド部62Aがより強く受けてしまう。
【0160】
フライングハイトは極めて微小なので、トリム前前端面62aの限られた微小部分が突出しただけでも、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生してしまう可能性がある。トリム前前端面62aの全体がABS30に露出しているということは、突出の対象となりえるそのような微小部分がABS30内にたくさん存在しているということを意味し、それだけ、記録媒体に衝突し得る突出の態様が多く、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生しやすいということを意味している。
【0161】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、図9の下側に示したような構造の上部前側シールド部62を形成している。こうして、ABS30に露出する部分がシールド前端面62bになるようにしている。
【0162】
そして、上部前側シールド部62では、シールド上端面62fがシールド前端面62bよりも基板1から離れた位置に配置されていて、そのシールド前端面62bとシールド上端面62fとを接続するシール接続部62cを上部前側シールド部62が有している。このような構造では、シールド上端面62fがABS30に到達している場合、すなわち、図9の上側に示したようなトリム前前側シールド部62AよりもABS30内に配置される前端面の大きさが小さくなる。そのため、上部前側シールド部62を有することによって、薄膜磁気ヘッド300が記録媒体と衝突する事態を抑制できるようになる。
【0163】
よって、薄膜磁気ヘッド300では、特に上部薄膜コイル51の発熱に伴いライトシールド層60が突出することを抑制することができる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドの突出に伴う破損のおそれが極めて少なくなるから、記録メディアに接近させることができる。
【0164】
そして、薄膜磁気ヘッド300は、図示しないスライダに組み込まれるが、そのスライダの記録媒体表面からの浮上量(フライングハイト)を縮小することができる。よって、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドおよび再生ヘッドの解像度(resolution)を高め、信号対雑音比を向上させることができる。また、薄膜磁気ヘッド300は、記録密度を高めることができる。
【0165】
一方、上部前側シールド部62は、連結シールド部63を形成した後、連結シールド部63が接触していないABS30側の一部分を切除することによって形成されている。そのため、ABS30に露出する部分が小さいにもかかわらず、シールド上端面62fが確実に確保されており、上部前側シールド部62と連結シールド部63とが確実に接続され得る構造となっている。
【0166】
また、上部前側シールド部62のABS30側を切除する際、シールド前端面62bが確保され、トリム前前端面62aのすべてが切除されることなくその一部がシールド前端面62bとして残るようにしている。トリム前前側シールド部62AのABS30側を切除する際、シールド前端面62bが確保されなくなるまでIBEを進めると、シールド下端面62rまでもが切除されるおそれがある。この場合、対向シールド部61に接続される部分が小さくなってしまい、対向シールド部61と、上部前側シールド部62との接続が不十分になるおそれがある。しかし、薄膜磁気ヘッド300では、そのようなおそれは皆無である。
【0167】
そして、上部前側シールド部62はシールド接続部62cを有しているが、このシールド接続部62cは傾斜構造を有している。そのため、上部前側シールド部62は前述の上方向からのIBEによって確実に形成できる構造を有している。傾斜構造を有していない場合、例えば、シールド前端面62bからシールド上端面62fにつながる表面部分がS字状に屈曲していると、IBEによって、上部前側シールド部62を形成するのは困難である。しかし、薄膜磁気ヘッド300では、そのようなおそれは皆無であり、上方向からのIBEによって確実に上部前側シールド部62を形成することができる。
【0168】
また、シールド接続部62cは後退傾斜構造を有しているため、後退傾斜構造を有していない場合に比べて上部前側シールド部62の体積が縮減されている。したがって、上部前側シールド部62が突出する可能性がいっそう抑制されている。
【0169】
さらに、シールド接続部62cは横平坦部62c1を有している。横平坦部62c1は、概ねABS30の交差方向に沿って形成されている。したがって、横平坦部62c1を有していない場合よりも、保護絶縁層90の埋込部90aから縦方向に受ける圧力をシールド接続部62cがより確実に受け止めることができる。よって、薄膜磁気ヘッド300では、保護絶縁層90の埋め込み状態が安定化している。
【0170】
しかも、シールド接続部62cは縦平坦部62c2を有している。縦平坦部62c2は、概ねABS30に沿って形成されている。したがって、上部前側シールド部62は、トリム前前側シールド部62Aに対する上方向からのIBE等によって確実に形成できる構造となっている。
【0171】
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は、磁路長を短縮することができ、しかもABS30の一部が突出することを抑制できるから、媒体対向面の一部が突出することを抑制することと、磁路長の短縮とを両立できる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0172】
そして、下部薄膜コイル11、上部薄膜コイル51が上述のような可変幅構造を有しているから、電流の流れを妨げることが少なく、抵抗値の上昇を抑制することができる。したがって、薄膜磁気ヘッド300は、下部薄膜コイル11、上部薄膜コイル51の熱の発生を効果的に抑制することができる。
【0173】
(変形例1)
薄膜磁気ヘッド300は、下部前側シールド部42の代わりに図42(a)、(b)に示す下部前側シールド部242、243を有していてもよい。下部前側シールド部242,243はそれぞれ傾斜下端面242b、243bを有している。
【0174】
前述した下部前側シールド部42の場合、傾斜下端面42bは対向絶縁層20の傾斜上端面20aおよび絶縁層19の上端面に接しているが、接続シールド部41の上端面41aには接していない。これに対して、下部前側シールド部242の場合、傾斜下端面242bは傾斜上端面20aと、絶縁層19の上端面に接し、さらに接続シールド部241の上端面にも接している。また、傾斜下端面243bは、傾斜上端面20aと、絶縁層19の上端面に接し、さらに接続シールド部244の上端面にも接している。傾斜下端面242bは傾斜角度が一定であるが、傾斜下端面243bは、絶縁層19の上端面と、接続シールド部244の上端面との境界部分で傾斜角度が変化している。
【0175】
このような下部前側シールド部242、243でも、前端角が鈍角に設定されているため、前端凸部42Pのような丸みを帯びた緩やかな凸部部分を簡易にしかも確実に形成することができる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、下部前側シールド部242、243を有していても、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減することができる。
【0176】
(変形例2)
薄膜磁気ヘッド300は、前述した上部前側シールド部62の代わりに図10(a)に示すような上部前側シールド部62Bを有していてもよい。上部前側シールド部62Bは上部前側シールド部62と比べてシールド接続部62cの代わりにシールド接続部62dを有する点で相違している。シールド接続部62dは、シールド接続部62cと比べて横平坦部62c1を有していない点で相違している。
【0177】
また、薄膜磁気ヘッド300は、上部前側シールド部62の代わりに図10(b)に示すような上部前側シールド部62Dを有していてもよい。上部前側シールド部62Dは上部前側シールド部62と比べてシールド接続部62cの代わりにシールド接続部62eを有する点で相違している。シールド接続部62eは、シールド接続部62cと比べて縦平坦部62c2を有していない点で相違している。
【0178】
上部前側シールド部62Bを有する場合、上部前側シールド部62Dを有する場合のいずれも、ABS30内にシールド前端面62bが配置され、ABS30内に露出している部分の大きさがトリム前前側シールド部62Aよりも縮減されている。そのため、トリム前前側シールド部62Aよりも、上部前側シールド部62B、62Dが突出する可能性は確実に抑制されている。したがって、上部前側シールド部62Bを有する場合、上部前側シールド部62Dを有する場合のいずれも媒体対向面の一部の突出を抑制することと、磁路長の短縮とを両立することができる。
【0179】
第2の実施の形態
次に、図28〜図30を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドについて説明する。ここで、図28は、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド310のABS30と交差する方向に沿った図1に対応する断面図である。図29は上部薄膜コイル50を構成する第2のコイル層53を示す平面図、図30は同じく第1のコイル層52を示す平面図である。
【0180】
薄膜磁気ヘッド310は、薄膜磁気ヘッド300と同様に、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、ABS30を有している。なお、薄膜磁気ヘッド310は薄膜磁気ヘッド300と一致する構成を有しているので、以下の説明では、薄膜磁気ヘッド310の薄膜磁気ヘッド300と相違する構成を中心に説明し、共通する構成の説明は省略ないし簡略化する。
【0181】
再生ヘッドは、薄膜磁気ヘッド300と同様に、基板1上に形成されている絶縁層2と、下部シールド層3と、シールドギャップ膜4と、MR素子5と、上部シールド層6、絶縁層7、加熱部8および感熱部9を有している。
【0182】
薄膜磁気ヘッド310の記録ヘッドは、薄膜磁気ヘッド300の記録ヘッドと比較して、上部薄膜コイル51の代わりに上部薄膜コイル50を有する点と、ライトシールド層60の代わりにライトシールド層160を有する点で相違している。また、薄膜磁気ヘッド310の記録ヘッドは、薄膜磁気ヘッド300の記録ヘッドと比較して、連続絶縁膜39を有する点と、保護絶縁層90の代わりに保護絶縁層91および保護絶縁層92を有する点で相違している。
【0183】
前述した薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51の双方が単層構造を有していた。各ターン部がABS30の交差方向に沿って配置され、ABS30に沿った方向に重ならない構造が単層構造である。しかし、薄膜磁気ヘッド310では、下部薄膜コイル11が単層構造を有するものの、上部薄膜コイル50は2層の多重構造を有している。
【0184】
上部薄膜コイル50は、ABS30から離れた位置に配置されている第1のコイル層52および第2のコイル層53を有し、第1のコイル層52および第2のコイル層53によって上部導体群を構成している。
【0185】
そして、第1のコイル層52と、第2のコイル層53とは、ABS30に沿った方向(上下方向)に配置されている。第2のコイル層53がコイル間絶縁層84を介して第1のコイル層52の上に重なっている。上部薄膜コイル50は2層の多重構造を有している。また、上部薄膜コイル50は、第1のコイル層52の前側距離と第2のコイル層53の前側距離とが等しく、第1のコイル層52の後側距離と第2のコイル層53の後側距離も等しい等距離二段構造を有している。
【0186】
第1のコイル層52は、図30に示すようなターン部52cを有している。ターン部52cは第1の上部前側シールド部62と、第1の後側シールド部64との間に配置されている。第1のコイル層52は、第2のコイル層53につながる接続部52aからターン部52cにつながるループ部52dと、ターン部52cから接続部52eまでのハーフループ部52bを有している。第1のコイル層52は接続部52aから接続部52eまでが一本につながることによってライトシールド層160の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で1ターンループを形成している。
【0187】
第2のコイル層53は、2つのターン部53b,53dを有している。ターン部53b,53dは、後述する第2の前側シールド部66と、第2の後側シールド部67との間に配置されている。また、第2のコイル層53は、ターン部53b,53dがフォトレジスト層56を介して並んだ構造を有している。
【0188】
そして、図29に示すように、第2のコイル層53は、第1のコイル層52につながる接続部53fからターン部53dにつながるハーフループ部53eと、ターン部53dからターン部53bにつながるワンループ部53cと、ターン部53bからリード部13aまでのハーフループ部53aを有している。
【0189】
第2のコイル層53は接続部53fからリード部13aまでが一本につながることによってライトシールド層160の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で2ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図28では、第2のコイル層53について、接続部53f、ターン部53b,53dのみが示されている。ターン部53b,53dも、ターン部11b,11d、11fと同様の縦長の構造を有している。また、第2のコイル層53も下部薄膜コイル11と同様に可変幅構造を有している。
【0190】
そして、上部薄膜コイル50は、第1のコイル層52と第2のコイル層53とが次のようにしてつながることによって、一連の3ターンループを形成している。すなわち、接続部52eから、ハーフループ部52b、ターン部52c、ループ部52dを通って接続部52aにつながり、その接続部52aが接続部53fにつながる。続いて接続部53fから、ハーフループ部53e、ターン部53d、ワンループ部53c、ターン部53b、ハーフループ部53aを通ってリード部13aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0191】
つまり、上部薄膜コイル50は第1のコイル層52により1ターンループを形成した後、その真上に位置する第2のコイル層53により2ターンループを形成することによって3ターンループを形成するという(1+2)ターン構造を有している。なお、本実施の形態において(A+B)ターン構造とは、ターン数が“A”のコイル層の上にターン数が“B”のコイル層が重なった多重構造を意味している。
【0192】
ライトシールド層160は、ライトシールド層60と比較して、第2の前側シールド部66と、第2の後側シールド部67とを有する点で相違している。
【0193】
第2の前側シールド部66は、第1の上部前側シールド部62と、連結シールド部63とに接続されている。第2の前側シールド部66は、すべての部分がABS30から離れた位置に配置されている。第2のコイル層53のターン部53b、53dを跨ぐことなく第1の上部前側シールド部62に接続されている。また、第2の前側シールド部66は、上部薄膜コイル50を構成する第2のコイル層53のABS30側に配置されている。
【0194】
第2の前側シールド部66は、第1の上部前側シールド部62のシールド上端面62fに応じた横幅を有している。また、第2の前側シールド部66の交差方向に沿った横幅がシールド上端面62fの交差方向に沿った横幅と等しく形成されている。さらにABS30側の前端面66aが平坦前端面となっている。前端面66aはABS30に沿って平坦に形成されている。また、前端面66aがシールド接続部62cと段差なく接続されている。前端面66aは図35に示されている。
【0195】
第2の後側シールド部67は、第1の後側シールド部64と、連結シールド部63とに接続されている。第2の後側シールド部67は、第1の後側シールド部64に応じた横幅を有している。
【0196】
連続絶縁膜39は、前端面66aおよびシールド接続部62cの表面上に、前端面66aからシールド接続部62cにわたって連続して形成されている。
【0197】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
続いて、前述の図28とともに、図31〜図37を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド310の製造方法について説明する。
【0198】
ここで、図31〜図37は、薄膜磁気ヘッド310の各製造工程における一部省略した図1に対応した断面図である。薄膜磁気ヘッド310を製造する場合、図31に示すように、第1のシールド部形成工程までは薄膜磁気ヘッド300を製造する場合と同様の手順で実行する。ただし、第1の上部前側シールド部62と第1の後側シールド部64との間隔を少し狭め、2.5μmから2.9μm程度で形成する。その後、図31に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)を用いて絶縁層38を形成する。
【0199】
続いて、図32に示すように、積層体の表面における第1のシールド部(第1の上部前側シールド部62)と、第1の後側シールド部64との間に導体層72を形成する。この導体層72は後に第1のコイル層52となる。導体層72は第1のシールド部(上部前側シールド部62)と第1の後側シールド部64に絶縁層38を介して隙間なく接触するようにして形成する。それから、第1の上部前側シールド部62と第1の後側シールド部64が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。すると、図33に示すように第1のコイル層52が形成される。
【0200】
次に、第2のシールド層形成工程を実行する。この工程では、図34に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層(膜厚は0.1μm〜0.15μm程度)を形成した後、その絶縁層を選択的に開口する。この絶縁層は後にコイル間絶縁層84となる。それから、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて、開口した部分に重ねて第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と、第2の後側シールド部67とをフレームめっき法によって厚さ1.0μm〜2.0μm程度で形成する。
【0201】
それから、フォトレジストを用いてマスク88を形成する。マスク88は、図34に示すように、第2の前側シールド部66のABS30側を一部露出させ、ABS30から後退させるようにして形成する。すなわち、第2の前側シールド部66の上面に後退スペース66hが確保されるような位置にマスク88を形成する。後退スペース66hは、後退スペース63hと同様に、例えば0.4μmから0.7μm程度の幅を有する細長い部分である。
【0202】
続いて、トリミング工程を実行する。このトリミング工程では、図35に示すように、上方向からイオンビームIBを照射してIBEを行い、第2の前側シールド部66のABS30側部分と、第1の上部前側シールド部62のABS30側部分とをまとめて切除する。このとき、IBEは上側に配置されている第2の前側シールド部66については前端面がすべて切除されるが、下側の第1の上部前側シールド部62については前端面の一部が残るようにして実行する。こうすることにより、第1の上部前側シールド部62について、前述したシールド接続部62cが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0203】
次に、図36に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁膜39を形成する。この絶縁膜39のうち、第1の上部前側シールド部62の前端面から第2の前側シールド部66の前端面にわたって形成される部分が前述した連続絶縁膜39になる。
【0204】
続いて、図37に示すように、積層体の表面における第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と第2の後側シールド部67との間に、間隙部を1つ備えた導体層73を形成する。この導体層73は後に第2のコイル層53となる。導体層73は第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と第2の後側シールド部67に絶縁膜39を介して隙間なく接触するようにして形成する。
【0205】
その後、導体層73の間隙部にフォトレジスト層86を形成し、アルミナ(Al2O3)を用いて積層体の表面をカバーし得る保護絶縁膜91を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、第2の前側シールド部66と第2の後側シールド部67が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。そして、この後、薄膜磁気ヘッド300の場合と同様に実行することによって、変位抑制層85と保護絶縁層92とを形成すると、薄膜磁気ヘッド310が得られる。
【0206】
(薄膜磁気ヘッド310の作用効果)
薄膜磁気ヘッド310は、下部前側シールド部42を有しているから、薄膜磁気ヘッド300と同様、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0207】
また、薄膜磁気ヘッド310は、下部薄膜コイル11と、上部薄膜コイル50を有している。下部薄膜コイル11も上部薄膜コイル50も、ターン数は3本であるが、上部薄膜コイル50は第1のコイル層52と、第2のコイル層53の多重構造を有している。そのため、1平面あたりのターン数は1本または2本と少ないながら全体で3本のターン数を確保できている。したがって、薄膜磁気ヘッド310はABS30からの奥行きを狭めることができる。
【0208】
その上、薄膜磁気ヘッド310は、薄膜磁気ヘッド300と同様の第1の上部前側シールド部62を有している。この第1の上部前側シールド部62も、薄膜磁気ヘッド300と同様に、シールド前端面62b、シールド上端面62fおよびシールド接続部62cを有し、ABS30に露出する部分がシールド前端面62bになっている。そのため、薄膜磁気ヘッド310では、図9の上側に示したようなトリム前前端面62aよりもABS30に配置される前端面の大きさが小さくなる。したがって、第1の上部前側シールド部62が突出する可能性を抑制することができる。よって、薄膜磁気ヘッド310は薄膜磁気ヘッド300と同様、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0209】
また、第2の前側シールド部66の前端面66aが平坦前端面になっていて、これがシールド接続部62cと段差なく接続されている。そのため、第2の前側シールド部66と第1の上部前側シールド部62とに対し、連続絶縁膜39を確実に形成することができる。さらに、トリミング工程で、第2のシールド部と第1のシールド部のABS30側部分をまとめて切除しているから、段差なくつながる平坦面を確実に形成することができる。しかも、第1の上部前側シールド部62のシールド上端面62fに対して第2の前側シールド部66を位置合わせする必要がないから、その分、製造工程を簡略化することができる。
【0210】
(変形例)
薄膜磁気ヘッド310は、次のようにして製造することもできる。第1のコイル層52を形成するまでの工程を前述の場合と同様の手順で実行した後、図38に示すように、フォトレジストを用いてマスク83を形成する。マスク83は、第1の上部前側シールド部62のABS30側を一部露出させるようにして形成する。すなわち、第1の上部前側シールド部62の上面に後退スペース62hが確保されるような位置にマスク83を形成する。
【0211】
続いて、トリミング工程を実行する。このトリミング工程では、図38に示すように、イオンビームIBを上方向から照射してIBEを行い、第1の上部前側シールド部62のABS30側部分を切除する。このとき、IBEは第1の上部前側シールド部62について、前端面の一部が残るようにして実行する。こうすることにより、第1の上部前側シールド部62について、残された前端面によって前述したシールド前端面62bが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0212】
次に、マスク83を除去した後、図39に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁層(膜厚は0.1μm〜0.15μm程度)を形成した後、絶縁層を選択的に開口する。この絶縁層は、後にコイル間絶縁層84となる。この場合、すでにトリミング工程によって、第1の上部前側シールド部62のABS30側の一部分が切除されているので、コイル間絶縁層84の一部がシールド接続部62c上にも形成される。
【0213】
それから、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に重ねて第2のシールド層(第2の前側シールド部66)と、第2の後側シールド部67とを厚さ1.0μm〜2μm程度で形成する。さらに、積層体の表面全体にアルミナ(Al2O3)からなる絶縁膜39を形成する。その後の工程を前述の場合と同様に実行すると、図40に示すように、薄膜磁気ヘッド311が得られる。この薄膜磁気ヘッド311は、前述した薄膜磁気ヘッド310と比べて上部薄膜コイル50のABS30側に配置される絶縁層の構造が異なっているが、他は同じ構造を有している。
【0214】
第3の実施の形態
次に、図41を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドについて説明する。ここで、図41は、本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド316のABS30と交差する方向に沿った図1に対応する断面図である。
【0215】
薄膜磁気ヘッド316は、薄膜磁気ヘッド311と比較して、下部薄膜コイル11の代わりに下部薄膜コイル111を有する点と、上部薄膜コイル50の代わりに上部薄膜コイル151を有する点とで相違している。
【0216】
下部薄膜コイル111は、第1のコイル層13および第2のコイル層16を有している。第1のコイル層13および第2のコイル層16はいずれもABS30から離れた位置に配置されている。下部薄膜コイル111は、第1のコイル層13および第2のコイル層16によって下部導体群を構成している。第1のコイル層13、第2のコイル層16はともにターン数が1本である。下部薄膜コイル111は、(1+1)ターン構造を有している。
【0217】
薄膜磁気ヘッド316では、下部薄膜コイル111と上部薄膜コイル151の双方が2層の多重構造を有している。
【0218】
上部薄膜コイル151は、第1のコイル層52および第2のコイル層57を有している。第1のコイル層52および第2のコイル層57はABS30から離れた位置に配置されている。上部薄膜コイル151は、第1のコイル層52および第2のコイル層57によって上部導体群を構成している。第1のコイル層52、第2のコイル層57はともにターン数が1本である。上部薄膜コイル151も(1+1)ターン構造を有している。
【0219】
(薄膜磁気ヘッド316の作用効果)
薄膜磁気ヘッド316は、下部前側シールド部42を有しているから、薄膜磁気ヘッド300と同様、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0220】
また、薄膜磁気ヘッド316は、下部薄膜コイル111と、上部薄膜コイル151を有している。下部薄膜コイル111も上部薄膜コイル151も、ターン数は2本であるが、多重構造を有している。そのため、1平面あたりのターン数は1本と少ないながら全体で2本のターン数を確保できている。したがって、薄膜磁気ヘッド316は、ABS30からの奥行きを狭めることができる。しかも、薄膜磁気ヘッド316は、薄膜磁気ヘッド300と同様の第1の上部前側シールド部62を有しているから、第1の上部前側シールド部62が突出する可能性を抑制することができる。したがって、薄膜磁気ヘッド316は薄膜磁気ヘッド315と同様に、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0221】
第4の実施の形態
次に、図43、図44を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドについて説明する。ここで、図43は、本発明の第4の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド320のABS30と交差する方向に沿った図1に対応する断面図である。また、図44は図43の要部を示す断面図である。
【0222】
薄膜磁気ヘッド320は、薄膜磁気ヘッド300と比較して、シールド磁性層40の代わりにシールド磁性層140を有する点と、薄膜磁気ヘッド300よりも下部薄膜コイル11の高さが高く形成されている点と、絶縁層21を有していない点とで相違している。
【0223】
シールド磁性層140は、シールド磁性層40と比較して、下部前側シールド部42およびリーディングシールド部47の代わりにリーディングシールド部48を有する点と、接続シールド部41の高さが薄膜磁気ヘッド300よりも高く形成されている点と、第3の後側シールド部46を有していない点とで相違している。
【0224】
前述した薄膜磁気ヘッド300の場合、図1に示したように、リーディングシールド部47は、下部前側シールド部42に接続され、対向絶縁層20および絶縁層19には接続されていない。これに対し、薄膜磁気ヘッド320の場合、リーディングシールド部48は、対向絶縁層20および絶縁層19に接続されている。
【0225】
そして、図44に示すように、リーディングシールド部48は、シールド端面48aを有している。また、リーディングシールド部48は、主磁極層26の基板1側において、非磁性薄膜25を介して主磁極層26に対向している。リーディングシールド部48では、シールド端面48aと、第1の下端面48bとのなす角度を示す前端角が鈍角に設定され、前端凸部48Pが丸みを帯びた形状に形成されている。
【0226】
さらに、リーディングシールド部48は、第2の下端面48cを有している。この第2の下端面48cの基板1との間隔がh1に設定されている。そして、下部薄膜コイル11の基板1から最も離れた上端面11xについても、基板1との間隔がh1に設定されている。また、接続シールド部41の上端面41aと、第2の下端面48cとが直に接続されている。
【0227】
この薄膜磁気ヘッド320は、リーディングシールド部48を有するが、そのリーディングシールド部48は、前端角が鈍角に設定され、丸みを帯びた前端凸部48pを有している。したがって、薄膜磁気ヘッド320も、薄膜磁気ヘッド300と同様、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減できるように構成されている。
【0228】
加えて、薄膜磁気ヘッド320では、下部前側シールド部42を有してなく、第2の下端面48cと、上端面11xの双方の基板1との間隔が等しく、双方とも基板1との間隔が高さh1になるように形成されている。そのため、第2の下端面48cと上端面11xとの間には隙間が形成されていない。すなわち、薄膜磁気ヘッド320は、従来のPMR700に存在していた下部前側シールド部712と絶縁層732とが存在しない形状を有している。
【0229】
従来のPMR700では、下部薄膜コイル718の表面を覆うようにして、絶縁層732が形成されていた。この絶縁層732は、下部薄膜コイル718の高さ拡大という観点からみると単に邪魔な存在に過ぎなかった。
【0230】
しかし、薄膜磁気ヘッド320のように、従来のPMR700における絶縁層732が存在し得ない構造にすることによって、下部薄膜コイル11の高さを拡大し得るだけのスペースを新たに確保することができる。薄膜磁気ヘッド320では、リーディングシールド部48の第2の下端面48cと、下部薄膜コイル11の上端面11xの双方における基板1との間隔が等しい構造にすることによって、PMR700における絶縁層732が存在し得ない構造を実現している。この構造を備えることで、薄膜磁気ヘッド320では、従来のPMR700と比べて、リード・ライト・セパレーション(以下「RWS」ともいう)を0.5μm程度短縮する効果が得られる。そのため、その分、薄膜磁気ヘッド320は下部薄膜コイル11の高さを拡大するための高さ拡大用スペースを確保することができる。なお、リード・ライト・セパレーションとは、主磁極層と再生ヘッドのABSに沿った方向の間隔を示している。
【0231】
一方、PMRでは、このRWSを4.5μm〜5μmの範囲に納めることが求められており、薄膜コイル11の高さを高くすることによって、その制約を破ることは避けなければならない。そのため、薄膜コイル11の高さを高くすることは困難である。
【0232】
しかし、薄膜磁気ヘッド320では、前述の高さ拡大用スペースを用いることによって、下部薄膜コイル11の高さを高くすることができる。すると、下部薄膜コイル11の断面積が大きくなる。したがって、薄膜磁気ヘッド320では、RWSの制約の範囲内で下部薄膜コイル11の電気抵抗を低減することが可能となっている。
【0233】
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態)
次に、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態について、図45を参照して説明する。
【0234】
図45の(a)は、上述の薄膜磁気ヘッド300を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。また、図45の(b)はHGA210の裏面側を示す斜視図である。図45(a)に示すように、ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)210とを有している。ハードディスク装置201は、HGA210を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面が薄膜磁気ヘッド300に対向している。
【0235】
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、図45(b)に示すスライダ208をトラック上に位置決めする。このスライダ208に薄膜磁気ヘッド300が形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アームは、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アームの先端にHGA210が取りつけられている。
【0236】
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
【0237】
次に、HGA210について図45(b)を参照して説明する。HGA210は、サスペンション220の先端部分にスライダ208が固着されている。また、HGA210では、配線部材224の一端部がスライダ208の端子電極に電気的に接続されている。
【0238】
そして、サスペンション220は、ロードビーム222と、ロードビーム222の基部に設けられているベースプレート221と、ロードビーム222上の先端側からベースプレート221の手前側にかけて固着して支持され、弾性を備えたフレクシャ223と、配線部材224とを有している。配線部材224はリード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドを有している。
【0239】
ハードディスク装置201は、HGA210を回転させると、スライダ208がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
【0240】
このようなHGA210およびハードディスク装置201は薄膜磁気ヘッド300を有しているから、シールド磁性層の構造に起因したデータ消去等を軽減することができる。
【0241】
特に、ハードディスク装置201が薄膜磁気ヘッド300を有しているときはハードディスク装置201が従来の薄膜磁気ヘッド700を有しているときよりも磁路長を短縮することが可能となる。そのため、薄膜磁気ヘッド300のインダクタンスを小さくすることができる。したがって、薄膜コイルに周波数が高い記録信号を流すことが可能であり、記録媒体に対する記録密度を高くすることができる。
【0242】
なお、以上の各実施の形態では、変位抑制層を有する薄膜磁気ヘッドを例にとって説明しているが、本発明は、変位抑制層を有しない薄膜磁気ヘッドについても適用することができる。また、薄膜コイルがシールド磁性層40、ライトシールド層60の周りに平面渦巻き状に巻回されているが、主磁極層26の周りに螺旋状に巻回されていてもよい。
【0243】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明を適用することにより、主磁極層の基板側に配置されているシールド磁性層の構造に起因した、データ消去等を軽減することができる。本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0245】
1…基板、11,12,111,112…下部薄膜コイル、13,17,52…第1のコイル層、16,53…第2のコイル層,20…対向絶縁層,20a…傾斜上端面,26…主磁極層、26f…底面、29…ギャップ層、30…ABS、40,140…シールド磁性層、41…接続シールド部、41a…上端面,41b…前端面,42…下部前側シールド部、42a…前端面,42b…傾斜下端面,42p…前端凸部,50,51,151…上部薄膜コイル、60,160…ライトシールド層,61…対向シールド部、62…上部前側シールド部、62b…シールド前端面、62c…シールド接続部、62f…シールド上端面、62r…シールド下端面、62c1…横平坦部、62c2…縦平坦部、63…連結シールド部、64…後側シールド部、65…上部ヨーク層、66…第2の前側シールド部、66a…平坦前端面、67…第2の後側シールド部、201…ハードディスク装置、202…ハードディスク、210…HGA、300,310,311,316,320…薄膜磁気ヘッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記シールド磁性層は、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、該下部前側シールド部の前記媒体対向面内に配置されている前端面と、該前端面に接続され、かつ前記下部前側シールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されている薄膜磁気ヘッド。
【請求項2】
前記下部前側シールド部の前記前端面と前記下端面とが交差する部分を前端凸部としたときに、該前端凸部は、前記前端角が直角に設定されている場合よりも前記前端面と前記下端面とが緩やかに交わった凸状部分に対応している請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項3】
前記媒体対向面内に配置された前端面を有し、かつ前記下部前側シールド部の前記下端面に接する上端面を備えた対向絶縁層を更に有し、該対向絶縁層の前記上端面が、前記媒体対向面から離れるにしたがい前記基板に近づくような下り傾斜状に形成されている請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項4】
前記下部前側シールド部に接続され、かつ前記対向絶縁層よりも前記媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を更に有し、該接続シールド部の前記基板から最も離れた上端面とともに、該接続シールド部の最も前記媒体対向面に近い位置に配置されている前端面が前記下部前側シールド部に接続されている請求項3記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項5】
前記対向絶縁層の前記上端面の全体が前記接続シールド部の前記上端面よりも前記基板に近い位置に配置されている請求項3または4項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項6】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記シールド磁性層は、前記媒体対向面内に配置されたシールド端面を有し、かつ前記主磁極層の前記基板側において非磁性薄膜を介して前記主磁極層に対向するリーディングシールド部を有し、
前記薄膜コイルは前記主磁極層と前記基板との間に配置されている基板側コイル層を有し、
前記リーディングシールド部の前記シールド端面と、該シールド端面に接続され、かつ前記リーディングシールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている第1の下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定され、
前記基板との間隔が前記基板側コイル層の前記基板から最も離れた位置に配置される上端面と等しく形成された第2の下端面を前記リーディングシールド部が有する薄膜磁気ヘッド。
【請求項7】
前記基板側コイル層よりも前記媒体対向面に近い位置に配置され、かつ前記基板から最も離れた位置に配置される上端面が前記基板側コイル層の前記上端面と段差なく形成されている下部接続シールド部を更に有し、該下部接続シールド部の前記上端面と、前記リーディングシールド部の前記第2の下端面とが直に接続されている請求項6記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項8】
前記主磁極層の前記基板に最も近い位置に配置される下端面に前記非磁性薄膜を介して接するベース絶縁層を更に有し、該ベース絶縁層に前記基板側コイル層の前記上端面が直に接している請求項6または7記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項9】
前記ライトシールド層は、前記媒体対向面内において前記主磁極層に対向する対向シールド部と、前記薄膜コイルを跨ぐことなく前記対向シールド部に接続され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている上部前側シールド部とを有し、
前記上部前側シールド部は前記媒体対向面内に配置されているシールド前端面と、該シールド前端面よりも前記基板から離れた位置に配置され、かつ前記媒体対向面に交差する交差方向に沿って前記媒体対向面から離れて形成されているシールド上端面と、前記シールド前端面と前記シールド上端面とを直に接続しているシールド接続部とを有する請求項1〜8のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項10】
前記上部前側シールド部は、前記シールド前端面と前記シールド上端面とを最短距離で結ぶ平坦面よりも前記媒体対向面から離れるように傾斜した後退傾斜構造を前記シールド接続部が有するように、前記媒体対向面側の一部分を切除して形成されている請求項9記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項11】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記薄膜コイルを構成するコイル層のうちの前記主磁極層と前記基板との間に配置されている基板側コイル層を形成するための導体層を形成する導体層形成工程と、
前記導体層の表面の平坦化処理を行うことによって、前記媒体対向面内に配置された前端面を有する対向絶縁層を形成する対向絶縁層形成工程と、
前記対向絶縁層の表面に直に接するようにして、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を、前端角が鈍角になるように形成する下部前側シールド部形成工程とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記対向絶縁層の表面を、前記媒体対向面から離れるにしたがい前記基板に近づくような下り傾斜状に形成する傾斜処理工程を更に有し、
該傾斜処理工程によって前記下り傾斜状に形成された前記対向絶縁層の表面に前記下部前側シールド部が直に接するようにして、前記下部前側シールド部形成工程を実行する請求項11記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記下部前側シールド部に接続され、かつ前記対向絶縁層よりも前記媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を形成する接続シールド部形成工程を更に有し、
前記接続シールド部を形成した後、該接続シールド部の前記媒体対向面側の側面が露出するように、前記傾斜処理工程を実行する請求項12記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記対向絶縁層の前記基板から最も離れた上端面の全体が、前記接続シールド部の前記基板から最も離れた上端面よりも前記基板に近い位置に配置されるように、前記傾斜処理工程を実行する請求項12または13記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記主磁極層を形成した後、前記ライトシールド層を構成する対向シールド部を前記媒体対向面内において前記主磁極層に対向するように形成する対向シールド部形成工程と、
前記導体層の前記媒体対向面側に、前記ライトシールド層を形成するための第1のシールド部を前記対向シールド部形成工程によって形成された前記対向シールド部に接続され、かつ前記媒体対向面内に配置されるように形成する第1のシールド部形成工程と、
前記ライトシールド層を構成する連結シールド部を前記第1のシールド部形成工程によって形成された前記第1のシールド部に接続され、かつ前記薄膜コイルを跨ぎ、さらに前記媒体対向面から離れるように前記媒体対向面から後退させて形成する連結シールド部形成工程と、
前記第1のシールド部の前記連結シールド部によって被覆されていない前記媒体対向面側の一部分を切除するトリミング工程とを更に有する請求項11〜14のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記トリミング工程は、前記連結シールド部形成工程によって形成された前記連結シールド部をマスクに用いて、前記第1のシールド部の前記連結シールド部によって被覆されていない前記媒体対向面側の一部分を切除する請求項15記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項17】
基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、前記基台を固定するジンバルとを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記シールド磁性層は、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、該下部前側シールド部の前記媒体対向面内に配置されている前端面と、該前端面に接続され、かつ前記下部前側シールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項18】
薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、前記薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記シールド磁性層は、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、該下部前側シールド部の前記媒体対向面内に配置されている前端面と、該前端面に接続され、かつ前記下部前側シールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているハードディスク装置。
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記シールド磁性層は、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、該下部前側シールド部の前記媒体対向面内に配置されている前端面と、該前端面に接続され、かつ前記下部前側シールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されている薄膜磁気ヘッド。
【請求項2】
前記下部前側シールド部の前記前端面と前記下端面とが交差する部分を前端凸部としたときに、該前端凸部は、前記前端角が直角に設定されている場合よりも前記前端面と前記下端面とが緩やかに交わった凸状部分に対応している請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項3】
前記媒体対向面内に配置された前端面を有し、かつ前記下部前側シールド部の前記下端面に接する上端面を備えた対向絶縁層を更に有し、該対向絶縁層の前記上端面が、前記媒体対向面から離れるにしたがい前記基板に近づくような下り傾斜状に形成されている請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項4】
前記下部前側シールド部に接続され、かつ前記対向絶縁層よりも前記媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を更に有し、該接続シールド部の前記基板から最も離れた上端面とともに、該接続シールド部の最も前記媒体対向面に近い位置に配置されている前端面が前記下部前側シールド部に接続されている請求項3記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項5】
前記対向絶縁層の前記上端面の全体が前記接続シールド部の前記上端面よりも前記基板に近い位置に配置されている請求項3または4項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項6】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記シールド磁性層は、前記媒体対向面内に配置されたシールド端面を有し、かつ前記主磁極層の前記基板側において非磁性薄膜を介して前記主磁極層に対向するリーディングシールド部を有し、
前記薄膜コイルは前記主磁極層と前記基板との間に配置されている基板側コイル層を有し、
前記リーディングシールド部の前記シールド端面と、該シールド端面に接続され、かつ前記リーディングシールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている第1の下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定され、
前記基板との間隔が前記基板側コイル層の前記基板から最も離れた位置に配置される上端面と等しく形成された第2の下端面を前記リーディングシールド部が有する薄膜磁気ヘッド。
【請求項7】
前記基板側コイル層よりも前記媒体対向面に近い位置に配置され、かつ前記基板から最も離れた位置に配置される上端面が前記基板側コイル層の前記上端面と段差なく形成されている下部接続シールド部を更に有し、該下部接続シールド部の前記上端面と、前記リーディングシールド部の前記第2の下端面とが直に接続されている請求項6記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項8】
前記主磁極層の前記基板に最も近い位置に配置される下端面に前記非磁性薄膜を介して接するベース絶縁層を更に有し、該ベース絶縁層に前記基板側コイル層の前記上端面が直に接している請求項6または7記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項9】
前記ライトシールド層は、前記媒体対向面内において前記主磁極層に対向する対向シールド部と、前記薄膜コイルを跨ぐことなく前記対向シールド部に接続され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている上部前側シールド部とを有し、
前記上部前側シールド部は前記媒体対向面内に配置されているシールド前端面と、該シールド前端面よりも前記基板から離れた位置に配置され、かつ前記媒体対向面に交差する交差方向に沿って前記媒体対向面から離れて形成されているシールド上端面と、前記シールド前端面と前記シールド上端面とを直に接続しているシールド接続部とを有する請求項1〜8のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項10】
前記上部前側シールド部は、前記シールド前端面と前記シールド上端面とを最短距離で結ぶ平坦面よりも前記媒体対向面から離れるように傾斜した後退傾斜構造を前記シールド接続部が有するように、前記媒体対向面側の一部分を切除して形成されている請求項9記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項11】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記薄膜コイルを構成するコイル層のうちの前記主磁極層と前記基板との間に配置されている基板側コイル層を形成するための導体層を形成する導体層形成工程と、
前記導体層の表面の平坦化処理を行うことによって、前記媒体対向面内に配置された前端面を有する対向絶縁層を形成する対向絶縁層形成工程と、
前記対向絶縁層の表面に直に接するようにして、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を、前端角が鈍角になるように形成する下部前側シールド部形成工程とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記対向絶縁層の表面を、前記媒体対向面から離れるにしたがい前記基板に近づくような下り傾斜状に形成する傾斜処理工程を更に有し、
該傾斜処理工程によって前記下り傾斜状に形成された前記対向絶縁層の表面に前記下部前側シールド部が直に接するようにして、前記下部前側シールド部形成工程を実行する請求項11記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記下部前側シールド部に接続され、かつ前記対向絶縁層よりも前記媒体対向面から離れた位置に配置されている接続シールド部を形成する接続シールド部形成工程を更に有し、
前記接続シールド部を形成した後、該接続シールド部の前記媒体対向面側の側面が露出するように、前記傾斜処理工程を実行する請求項12記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記対向絶縁層の前記基板から最も離れた上端面の全体が、前記接続シールド部の前記基板から最も離れた上端面よりも前記基板に近い位置に配置されるように、前記傾斜処理工程を実行する請求項12または13記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記主磁極層を形成した後、前記ライトシールド層を構成する対向シールド部を前記媒体対向面内において前記主磁極層に対向するように形成する対向シールド部形成工程と、
前記導体層の前記媒体対向面側に、前記ライトシールド層を形成するための第1のシールド部を前記対向シールド部形成工程によって形成された前記対向シールド部に接続され、かつ前記媒体対向面内に配置されるように形成する第1のシールド部形成工程と、
前記ライトシールド層を構成する連結シールド部を前記第1のシールド部形成工程によって形成された前記第1のシールド部に接続され、かつ前記薄膜コイルを跨ぎ、さらに前記媒体対向面から離れるように前記媒体対向面から後退させて形成する連結シールド部形成工程と、
前記第1のシールド部の前記連結シールド部によって被覆されていない前記媒体対向面側の一部分を切除するトリミング工程とを更に有する請求項11〜14のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記トリミング工程は、前記連結シールド部形成工程によって形成された前記連結シールド部をマスクに用いて、前記第1のシールド部の前記連結シールド部によって被覆されていない前記媒体対向面側の一部分を切除する請求項15記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項17】
基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、前記基台を固定するジンバルとを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記シールド磁性層は、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、該下部前側シールド部の前記媒体対向面内に配置されている前端面と、該前端面に接続され、かつ前記下部前側シールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項18】
薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、前記薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたライトシールド端面を有するライトシールド層と、前記主磁極層と前記ライトシールド層との間に形成されているギャップ層と、前記主磁極層、前記ライトシールド層または前記主磁極層に接続されているシールド磁性層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記シールド磁性層は、前記主磁極層の前記基板側に配置され、かつ前記薄膜コイルの前記媒体対向面側に配置されている下部前側シールド部を有し、該下部前側シールド部の前記媒体対向面内に配置されている前端面と、該前端面に接続され、かつ前記下部前側シールド部のうちの最も前記基板に近い位置に配置されている下端面とのなす角度を示す前端角が鈍角に設定されているハードディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2013−73668(P2013−73668A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168706(P2012−168706)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】
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