説明

薄葉紙シート

【課題】先行するシートの引き出しの際に、後続のシートが収納体内で落ち込んでしまうことなく、かつ後続するシートがタイ部分で接続されたまま引き出されてしまうことなく確実に切り離される薄葉紙シートを提供する。
【解決手段】薄葉紙シートにおいて、シート幅方向にミシン目を施し、このミシン目のタイ部分の長さを0.2〜0.3mmとし、シート幅に対する全タイ長の比率を0.6〜1.0%とし、シートの長手方向の伸び率(%)を40〜50%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄葉紙シート、特に紙製カートンなどの収納体に収納された紙製のワイパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
研究検査施設等で、試験管や実験器具等の清掃、液体の吸収、電子部品のワイピング等の作業の際に、毛羽立ちのなく、発塵性の低いシートからなる紙製のワイパー(ウエス)が使用されている。
このようなシートは1枚1枚がミシン目のタイ部分で接続されたC折り又はZ折りのいわゆるジグザグ状で折り畳まれ、収納体に収められている(例えば、特許文献1参照)。なお、ミシン目の切り込みの入った部分をカット部分といい、ミシン目の切込みの入っていない接続部分をタイ部分というものである。
【特許文献1】特開2006−143254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
手によって引き出されるシートとそれに後続するシートとはミシン目のタイ部分で接続されているが、このタイ部分の長さが短ければ後続するシートが引き出されることなく収納体内で落ち込んでしまうという問題があった。
他方、ミシン目のタイ部分の長さが長ければ、手によって引き出されるシートと共に、後続するシートがタイ部分で切り離されることなく接続されたまま引き出されてしまうという問題があった。また、紙の伸びがある場合でも、タイ部分で切り離されることなく接続されたまま引き出されてしまうという問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、先行するシートの引き出しの際に、後続のシートが収納体内で落ち込んでしまうことなく、かつ後続するシートがタイ部分で接続されたまま引き出されてしまうことなく確実に切り離される薄葉紙シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、交互に重なって折り畳まれて積層された状態で収納体内部に収納され、かつ該収納体の上面に形成される取出口から取り出すことができるように構成された薄葉紙シートであって、該薄葉紙シートは、パルプ配合においてNBKPを70〜100%(残り0〜30%をLBKP)とし、米坪を20〜40g/m2とした1プライ又は2プライ以上とされ、シート幅方向にミシン目が施され、このミシン目のタイ部分の長さが0.2〜0.3mmであり、シート幅に対する全タイ長の比率が0.6〜1.0%であり、シートの長手方向の伸び率(%)が40〜50%である、ことを特徴とする薄葉紙シートである。
【0005】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記シートはカチオン系界面活性剤を0.1〜1.0%(全重量に対して)含み、カチオン系柔軟剤を0〜0.3%(全重量に対して)含む、ことを特徴とする請求項1記載の薄葉紙シートである。
【0006】
(作用効果)
ミシン目のタイ部分の長さが0.2〜0.3mmであり、またシート幅に対する全タイ長の比率が0.6〜1.0%であり、さらにシートの長手方向の伸び率(%)が40〜50%であることにより、先行するシートの引き出しの際に、後続のシートが収納体内で落ち込んでしまったり、かつ後続するシートがタイ部分で接続されたまま引き出されてしまうことを防止することができる。
特に、シートの長手方向の伸び率(%)が40〜50%であることにより、ミシン目形成手段によってミシン目のタイ部分で切り離されることなく、かつ後続するシートがタイ部分で接続されたまま引き出されてしまうことを防止することができる。
また、シートがカチオン系界面活性剤を0.1〜1.0%(全重量に対して)含み、カチオン系柔軟剤を0〜0.3%(全重量に対して)含むことにより、紙粉や塵などの、いわゆるリント(Lint)を少なくし、かつ紙の引張強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、先行するシートの引き出しの際に、後続のシートが収納体内で落ち込んでしまうことなく、かつ後続するシートがタイ部分で接続されたまま引き出されてしまうことなく確実に切り離されることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係るポップアップ式のワイパー等の薄葉紙シート1は、図1、図2及び図3に示すように、1枚1枚がミシン目のタイ部分1aで接続されており、ミシン目が施された部分でシート相互を交互に折り重ねることによりC折り又はZ折りのジグザグ状で折り畳まれ、カートンなどの収納体3に収められている。この収納体3の上面には、薄葉紙シート1の取出口が形成されており、この内面にポリエチレンシートなどからなるフィルム2が貼着されている。このフィルム2にはスリット2Aが形成されており、積層され収納された薄葉紙シート1がスリット2Aから引き出されるようになっている。なお、本発明における薄葉紙シートは、1プライ又は2プライ以上のシートでも可能である。
【0009】
本発明に係る薄葉紙シート1は、C折り又はZ折りでジグザグ状に積層されており、長手方向(ライン流れ方向、MD方向)に所定の間隔をおいて幅方向(ライン流れ方向に対して横断方向、CD方向)にミシン目が形成されており、このミシン目を境として切断され分断されるようになっている。
【0010】
薄葉紙シート1は、図3に示すように、インターフォルダのミシン目形成手段9によりミシン目が形成されるようになっている。ミシン目形成手段9は、外周面にアンビル12とジョーピース13とが交互に複数形成され、かつこれらアンビル12とジョーピース13とに吸引孔12a、13aが形成された一対のフォールディングロール10,10と、このフォールディングロール10,10に吸引力により張り付いた薄葉紙シート1にミシン目のカット部分1bを形成するブレード11,11と、を備えている。フォールディングロール10には、吸引用中空部14,14,…が形成されており、これら吸引用中空部14,14,…に吸引孔12a、13aが連結し、吸引用中空部14,14,…に接続された吸引機(図示せず)等で吸引されることにより、フォールディングロール10,10の外周面に張り付くようになっている。
【0011】
ブレード11の先端には、ミシン目のタイ部分1aを残すために、図示はしないが、タイ部分1aの長さ分だけ溝が所定の間隔をもって形成されている。ブレード11は、アンビル12の頂部にと対向するように配設されており、アンビル12の頂部に位置した薄葉紙シート1に対してカット部分1bとタイ部分1aを形成するようになっている。
【0012】
フォールディングロール10のジョーピース13は、断面V字状の溝であり、ここで薄葉紙シート1を掴むようになっている。
【0013】
フォールディングバー15は、軸回転するフォールディングロール10の外周面に近接可能となっており、バー支点を中心に上下に揺動してアンビル12を回避しながらジョーピース13がフォールディングバー15に接近した時に、薄葉紙シート1の吸引がなくなり、ジョーピース13から離された薄葉紙シート1を折り畳むように導く役割をもっている。左右のフォールディングバー15,15が交互にそれぞれのフォールディングロール10,10により、ジョーピース13から離された薄葉紙シート1を導くことにより、薄葉紙シート1が折り畳まれるようになっている。
【0014】
本発明に係る薄葉紙シート1の原料の配合は、パルプとしてNBKPを70〜100%(残り0〜30%をLBKP)、カチオン系界面活性剤を0.1〜1.0%(好ましくは0.2〜0.5%)(全重量に対して)含み、カチオン系柔軟剤を0〜0.3%(好ましくは0.1〜0.2%)(全重量に対して)含み、叩解前のフリーネス(JIS−P8121に基づくカナダ標準ろ水度(CSF))を630〜740ccとし、叩解後0.3〜2.0%ダウン(好ましくは0.5〜1.0%ダウン)させることが好適である。上記配合によって、紙粉や塵などのいわゆるリント(Lint)を少なくし、かつ紙の引張強度を向上させることができる。薄葉紙シートの坪量は限定されるものではないが、20〜40g/m2(好ましくは20〜30g/m2)が望ましい。なお、坪量は、JIS P 8124の規定に準拠して測定される。
【0015】
カチオン系界面活性剤を0.1〜1.0%(全重量に対して)含むこととしたのは、薄葉紙シートが濡れた時の強度を向上させる目的で添加するものであり、カチオン系界面活性剤が0.1%(全重量に対して)未満であると、水分の拭き取り時に薄葉紙シートが破れてしまうからであり、1.0%超である場合は、湿潤強度の効果の向上がみられないからである。
【0016】
カチオン系柔軟剤を0〜0.3%(全重量に対して)含むこととしたのは、カチオン系柔軟剤が0%だと柔らかさがなく拭き取り時にしなやかさがないからであり、0.3%超の場合は、強度がなくリントの発生が懸念されるからである。
【0017】
ミシン目は、前述のように、ミシン目の切り込みの入った部分であるカット部分1bとミシン目の切込みの入っていない接続部分であるタイ部分1aからなるが、このカット部分1bとタイ部分1aの関係並びに薄葉紙シート1の伸びが、先行するシートの引き出しの際に、後続のシートが収納体3内で落ち込んでしまったり、かつ後続するシートがタイ部分1aで接続されたまま引き出されてしまうことを防止することに重要で有ることを本発明者は知見した。
【0018】
具体的には、ミシン目のタイ部分1aの長さ(mm)を0.2〜0.3mmとし、薄葉紙シートのシート幅に対する全タイ長の比率(%)を0.6〜1.0%とし、薄葉紙シートの長手方向の伸び率(%)を40〜50%とすることである。
【0019】
ミシン目のタイ部分1aの長さ(mm)として0.2〜0.3mmが好適であるのは、ミシン目のタイ部分1aの長さ(mm)が0.2mm未満であれば、タイ部分1aが残らず、取り出し時にシートの落込みがあるからであり、0.3mm超であればタイ部分1aが残り、取り出し時にシートが繋がってしまうからである。なお、カット/タイ比(カット部分とタイ部分の長さの比)は、200:1〜100:1が好適である。200:1を超える場合は、ミシン目強度が弱くなるので、取り出し時にシートの落ち込みが生じ易くなる恐れがある。100:1未満の場合は、ミシン目強度が強くなるので、取り出し時にシートが繋がって出てくる恐れがある。
【0020】
シート幅に対する全タイ長の比率(%)として0.6〜1.0%が好適であるのは、シート幅に対する全タイ長の比率(%)が0.6%未満であれば、タイ部分1aが残らず、取り出し時にシートの落込みがあるからであり、1.0%超であれば、タイ部分1aが残り、取り出し時にシートが繋がってしまうからである。
【0021】
シートの長手方向の伸び率(%)として40〜50%が好適であるのは、シートの長手方向の伸び率(%)が40%未満であれば、ミシン目形成手段により薄葉紙シート1にミシン目を形成した後にジョーピース13で薄葉紙シート1を掴む際やフォールディングロール10の吸引孔12a、13aでの吸引時に、タイ部分1aが切り離されてしまうからであり、また、取り出し時に後続するシートが引き出されることなく収納体3内で落ち込んでしまうからである。他方、50%超であれば、ミシン目は形成されるが、収納体3からシートを引き出す際に、後続するシートがタイ部分1aで接続されたまま引き出されてしまったり、また、引き出し時の強度が強くなるため、紙粉や塵などのいわゆるリント(Lint)の発生懸念されるからである。
【実施例】
【0022】
<実施例1>
薄葉紙シート1を収納体3から引き出し、(1)後続のシートが収納体内で落ち込むか否か、(2)後続するシートがタイ部分1aで接続されたまま引き出されてしまうか否かの確認を7サンプルについて行なった。ミシン目で切り離された状態のシートの寸法は、すべて125(幅)mm×195(長さ)mmである。
収納体(カートン):寸法130(幅)mm×120(奥行き)mm×91(高さ)mm、取出口のスリット幅の長さ(L)70mm
サンプルの原料については、表1に示した。
なお、リント測定方法は、光散乱式自動粒子計数器 型式:KC−20A(リオン株式会社)を使用し、収納体3からシートを1枚づつ連続で引き出し、30秒間で20枚引き出した時のリントの粒子径が10〜100μの合計個数を測定するものである。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
サンプル3については、薄葉紙シート1の長手方向の伸び率が20%であったため、ミシン目形成手段により薄葉紙シートにミシン目を形成した後にジョーピース13で薄葉紙シート1を掴む際やフォールディングロール10の吸引孔12a、13aでの吸引時に、タイ部分1aが切り離されてしまった。そのため、連続して取り出す方式では使用できなかった。
【0026】
<実施例2>
薄葉紙シート1の引き出しと収納体3のスリット幅の長さLとの関係を比較した(図1参照)。
使用するシートは、NBKP100%、カチオン系界面活性剤0.32%(全重量に対して)、カチオン系柔軟剤0.06%(全重量に対して)、フリーネスダウン0.7%、坪量23.5g/m2、ミシン目で切り離された状態のシート寸法は125(幅)mm×195(長さ)mmである。
【0027】
【表3】

【0028】
比較の結果、薄葉紙シート1の引き出しはスリット幅の長さLによって影響を受けないか、あるいは影響を受けても微々たるものであることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る薄葉紙シートが収納体に収納された状態を示す斜視図である。
【図2】薄葉紙シートのカット部分とタイ部分とを説明するための概要図である。
【図3】インターフォルダのミシン目形成手段を説明するための概要図である。
【符号の説明】
【0030】
1…薄葉紙シート、1a…タイ部分、1b…カット部分、2…フィルム、2A…スリット、3…収納体、9…ミシン目形成手段、10…フォールディングロール、11…ブレード、12…アンビル、12a…吸引孔、13…ジョーピース、13a…吸引孔、14…吸引用中空部、15…フォールディングバー、L…スリット幅の長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に重なって折り畳まれて積層された状態で収納体内部に収納され、かつ該収納体の上面に形成される取出口から取り出すことができるように構成された薄葉紙シートであって、
該薄葉紙シートは、パルプ配合においてNBKPを70〜100%(残り0〜30%をLBKP)とし、米坪を20〜40g/m2とした1プライ又は2プライ以上とされ、
シート幅方向にミシン目が施され、このミシン目のタイ部分の長さが0.2〜0.3mmであり、
シート幅に対する全タイ長の比率が0.6〜1.0%であり、
シートの長手方向の伸び率(%)が40〜50%である、
ことを特徴とする薄葉紙シート。
【請求項2】
前記シートはカチオン系界面活性剤を0.1〜1.0%(全重量に対して)含み、カチオン系柔軟剤を0〜0.3%(全重量に対して)含む、ことを特徴とする請求項1記載の薄葉紙シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−212250(P2008−212250A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50827(P2007−50827)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】