説明

薬剤および診断薬の送達のための高分子担体

【課題】あらゆる種類の診断薬、治療薬、またはその他の薬剤の新規または改良された高分子送達システムの提供、送達媒体として高分子主鎖を使用する方法によって送達性を改良し投与体積を減少させること、比較的入手しやすく、比較的安価であり、科学的研究および医学で実証可能な価値を有する高分子の提供。
【解決手段】新規リーシュのオリゴマー主鎖構造への化学結合形成を利用する薬剤および診断薬用の新規高分子担体。これらのリーシュの合成、ならびにそれらの生成、反応、およびキレート化剤およびリガンドとの結合が容易であるため、医薬、特に診断薬への使用に非常に有用となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願のクロスリファレンス)
本出願は、1999年5月14日提出の米国特許仮出願第60/134、329号(このすべての図面を含めた記載内容全体を本明細書に援用する)に対する優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府委託研究に関する言明)
本出願は、NIH交付R01−CA72751による援助によって可能となった。連邦政府は本発明の権利を有することができる。
【0003】
(発明の背景)
本発明の分野は、送達剤として高分子を使用する治療および診断に関する。
【0004】
結合した薬剤および診断薬を標的へ送達する物質としてのある種の高分子の使用または仮説的な使用は公知であるが、現在のところ大きな制限がある。十分な量の薬剤および標的基質を結合させることが可能な安価で非毒性の分子主鎖がないために、治療に関する試みは限定された臨床での成功しか得られていない。磁気共鳴映像法(MRI)およびコンピュータ断層撮影法(CT)に使用される薬剤を結合させて使用する現在の心臓血管および腫瘍撮像技術にも同様の問題がある。
【0005】
薬剤、基質、ならびに撮像および他の診断分子を特性の細胞組織に送達する機能を果たす送達剤の分子主鎖に関心が集中している。現在最も一般的に使用される主鎖は、デキストラン、ポリリシン、合成コポリマー、星形デンドリマー、およびヒト血清アルブミンである。
【0006】
グルコースの分岐ポリマーであるデキストランはヒトに対して大規模に使用されており、分子量当りの結合部位の比が最も高い。デキストランは非常に親水性でもあり、そのため注入体積を少なくすることができる。デキストランは比較的安価であるが、通常の結合部位では化学的自由度が不十分であり、標準的な結合手段によって望ましくない架橋が形成されやすいという欠点を有する。
【0007】
対照的にポリリシンは非常に高価であり、ヒトへの使用も非常に制限されてきた。それにもかかわらず、ポリリシンは種々の鎖長で使用することが可能であるという利点を有し、さらに薬剤と受容体基質の化学的結合が側鎖で起こりやすいというさらなる利点を有する。その結果、ポリリシンは動物における有用な薬物送達システムとして試験に頻繁に使用されている。
【0008】
例えばクリニック(Krinick)ら,Makromol.Chem.191:839−856(1990)に記載されるような合成コポリマーは線状であり、正味の電荷が中性であるため拡散が促進される。合成コポリマーは大量に合成可能であるというさらなる利点を有する。しかし、それらの合成には複数の段階が必要であり、複雑ではないとしても時間がかかり、高価であり、そのため非効率的である。さらに、合成コポリマーではヒトへの使用が制限される。
【0009】
星形デンドリマー(トマリア(Tomalia)ら(1985)Polymer J.17:117−132参照)は、分子量の不均一性が低く、そのため再現性が得られ予測が可能となるという利点を有する。しかし(1)主鎖当りの結合部位の数が少なく不十分であり、(2)ヒトへの使用が制限されるという欠点を有する。ヒト血清アルブミンの使用に関しても同様の欠点が特徴となる。
【0010】
これまで述べたことから、高密度の分子結合能力を有する安価で非毒性の分子主鎖送達媒体が非常に望まれている。
【0011】
(発明の要約)
本発明の目的は、この分野における前述の問題の1つ以上を改善または改良し、有用な代替物を提供することである。
【0012】
特に本発明の目的は、あらゆる種類の診断薬、治療薬、またはその他の薬剤の新規または改良された高分子送達システムを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、当技術分野で従来開示されているものと比較して結合部位密度の高い比較的非毒性の高分子を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、送達媒体として高分子主鎖を使用する方法によって送達性を改良し投与体積を減少させることである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、比較的入手しやすく、比較的安価であり、科学的研究および医学で実証可能な価値を有する高分子を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、好適な自由度を有する新規な化学結合リーシュ(leash)の化学合成およびその生成物を説明することである。
【0017】
これらの目的の1つ以上に基づき、本発明の第1の態様は、主鎖を含み、その主鎖には−O(CHS(CHNHの構造を有する複数のリーシュ基が結合した担体分子を特徴とする。
【0018】
好ましい実施形態では、主鎖は多糖類、好ましくはデキストランから誘導され、リーシュ構造はアリル基とアミノエタンチオールの反応によって得られる。デキストランが使用される場合、分子、そのリーシュ、および複合体の最終用途に適した任意の分子量のデキストランを選択することができる。異なる診断および治療用途では、異なるMWのデキストランが必要であり、このことは当業者であれば認識しているであろう。
【0019】
最も好都合な実施形態では、リーシュのアミノ基を介して主鎖と少なくとも1つの化学基とが結合することが好ましい。これらの化学基は、治療または診断用途で有用な任意の種類の化合物から選択することができ、限定するものではないが例えば、キレート化剤、受容体リガンド、レクチン、酵素基質、核酸、ペプチド、多糖類、単糖類、放射線増感剤、放射線防護剤、および色素が挙げられる。これらの基は直接利用される必要はなく、主鎖と結合した別の官能性部分が所望の正または負の機能を果たすことができるように所与の種類の細胞または組織を標的とすることによって間接的に利用することができる。
【0020】
非毒性主鎖あたりのリーシュの搭載量および密度が高いことは、結合および送達で得られる重要な動力学的利点であるため本発明の重要な態様である。比較的より多くの治療または診断用分子をそれぞれの目的で送達することができる。投与した時または接触させた時にリガンドがある種の受容体をより効率的に阻害することができるように高密度のリガンドを主鎖分子に簡単に結合させることができるという非常に単純な場合も含むことができる。受容体によって細胞の生化学的機能が得られる。その機能の阻害では、所与の徴候および状況に応じて治療的に有用な量が存在する。したがって、正常または異常な生物学的物質の競合的または非競合的阻害が可能なアンタゴニストも考慮される。
【0021】
主鎖部分および結合する薬剤のエンドサイトーシスの信号を出すか刺激するかが可能であるか、あるいは細胞内カスケードの信号を出すことが可能であるという点で、所望の作用を得るためにアゴニストを使用することもできる。当業者であれば、本発明の多くの実施形態に関して広範囲の用途および意味があることが理解できるであろう。
【0022】
特に好ましい実施形態では、主鎖は、所与の種類の組織または細胞と特異的な親和性を有するリガンドと、キレート化剤分子との両方を有することができる。
通常キレート化剤は、正に帯電した金属原子およびイオンと強く結合する自由電子を有する窒素基を有する。本発明での使用に好ましいキレート化剤としてはDOTA、MAG3、およびDTPAが挙げられる。ガドリニウム原子を好都合かつ強力に結合させる構造を有するためDOTAが特に好ましく、コンピュータ断層撮影法(CT)と磁気共鳴映像法(MRI)の両方に使用することができる。MAG3キレート化剤は、比較的短い半減期6時間を有する放射性元素テクネチウム−99m(Tc−99m)との錯体形成に好ましい。この半減期は生物学的方法および臨床プロトコルと適合しており、センチネルリンパ節検出の場合に、外科医が腫瘍増殖または転移などの正確な位置と範囲を調べてそれを除去するための十分な期間が得られる。したがってこの特有の組み合わせは核医学において非常に有用である。
【0023】
他の例としては、互いに排他的な実施形態である必要はないが、コンピュータ断層撮影法および核磁気または磁気共鳴映像法の手順において、非放射性同位体または非放射性同位元素、例えばそれぞれ特殊な用途を有する吸収性元素(高密度)、または常磁性原子とキレート化剤を組み合わせることができる。これらは、導入される高密度原子または常磁性原子の特性を使用して種々の生理学的または解剖学的構造の画像化が可能となる診断法である。このような診断法は、治療法の前に使用してもよいししなくてもよい。
【0024】
さらに、ある主鎖リーシュを診断薬と結合させ別の主鎖リーシュを治療薬と結合させる場合など、本発明の実施形態を使用して診断手順および治療手順の両方を同時に行うことも可能である。
【0025】
センチネルリンパ節検出に関して、この特殊な診断手順は、安定性が高く、非毒性であり、高充填量および高親和性が得られるという利点が本発明によって得られ、鑑別、単離、および切除が改良される。通常この手順は、本発明のリーシュに結合させたキレート化剤を使用し、これにさらにテクネチウム−99mなどの放射性原子を結合させることができる。本発明の他の可能性としては、ガドリニウム、ジスプロシウム、イッテルビウム、インジウム、および有用な性質を有する他の元素の使用が挙げられる。
【0026】
上記要求を満たすために、マンノース、ガラクトース、ペプチドなどの受容体基質もさらに使用される。基質という用語の使用は、酵素によって作用することを必ずしも意味するのではなく、単純なリガンド−受容体結合を意味することができそれが好ましい。したがって、用語「リガンド」は、多くの形態および構成が可能であり、本明細書で使用される「受容体基質」と同義で使用することができる。所与の受容体を標的とする所望のリガンドまたは受容体基質の選択は当業者には公知である。事実上、所要の用途で使用可能な数千の相互作用が公知である。さらに、標的となる受容体は、ウイルス、細菌、原生動物、真菌、植物、昆虫であってもよく、動物または哺乳動物由来である必要なない。
【0027】
アリル化、リーシュ結合、および結合の程度は1から100%の任意であってよいが、100%が好ましい。しかしすべてのリーシュが最終的に結合する必要がない場合、他の実施形態では非帯電「ブロック」分子、例えばメチル基、アルキル基、またはアリール基を遊離アミノ末端に付加させて分子全体の電荷を少なくすることも考慮することができる。当業者には認識されているが、多くの用途では電荷が少ないほどより好ましい。
【0028】
第2の態様では、第1の態様の生成物および用途以外に、本発明は、複数のアミノ末端リーシュを有する実質的に架橋がない担体分子を生成する方法を特徴とする。「実質的に架橋がない」は、同じ種類の分子の間に人為的に導入された架橋を意味し、例えば同じデキストラン分子中のグルコース単位の架橋を意味する。この用語は、本明細書に記載されるヘテロ分子が主鎖のリーシュと特異的で意図された結合を含むことを意味するものではない。さらに、主鎖(例えば多糖類)は、最初に自然発生的な架橋が存在してもよく、用語「実質的に架橋がない」がこのような現象は特に排除していことを理解されたい。
【0029】
用語「実質的に」は、汚染物質の存在または次善の結合条件の使用などによってある種の最小限の人為的な架橋が起こりうるが、このような限定された架橋は許容できることを認めるために使用される。この点に関してこの用語は、本発明の大きな目的(従来のリーシュの主鎖への導入に関する人為的な架橋現象を防止、制御、または最小限にすること)を実質的に妥協しているわけではないことを示すために使用される。前述のように、従来手順はこの点に関して欠陥があったが、本発明ではアミノエタンチオールが使用される好ましい実施形態などのように2官能性基などを使用することによってこの欠陥を有意に修正している。本発明以前では、これらの意図しない「副反応」の制御が不可能でない場合でも、許容され有用となる制限よりも分子量が増大しさらに溶解性も低下したため欠点の修正は困難であった。
【0030】
好ましい方法の実施形態は好ましくは、複数のヒドロキシル基を有する主鎖分子を提供し、前記主鎖分子上の前記ヒドロキシル基の少なくとも一部をアリル化して前記主鎖のアリル誘導体を生成し、アミノ末端と第2の末端とを含み前記第2の末端が前記アリル誘導体の前記アリル基と特異的に反応性である化合物と前記アリル誘導体の前記アリル基を反応させ、前記アリル誘導体を前記化合物と反応させて複数のアミノ末端リーシュを有し実質的に架橋がない担体分子を生成することを含む。
【0031】
好ましい実施形態では、この場合も主鎖は多糖類であり、好ましくはデキストランである。必ずしも必要ではないが、好ましくは、アリル誘導体主鎖分子にリーシュを形成して結合させるために使用される化合物はアミノエタンチオールである。
【0032】
さらなる方法の実施形態では、第1の態様で説明したように結合は、例えばキレート化剤、受容体リガンド、酵素基質、核酸、ペプチド、多糖類、単糖類、放射線増感剤、放射線防護剤、および色素からなる群より選択される少なくとも1つの要素を使用することを考慮している。色素は蛍光性であってもよいし、可視的手段および/または当技術分野で一般的な補助手段を使用して識別可能なその他の物質であってよい。
【0033】
これらを探知するその他の方法の実施形態は第1の態様で既に述べた。
【0034】
本発明のさらに別の態様は、より特殊な生成物であり、方法ごとに異なる生成物である。例えば、第1の態様の分子から合成されたMRI剤は本発明の範囲内であり、第2の態様の方法により合成されたMRI剤も同様である。同様に、最初の2つの態様のいずれかによって合成されたCT剤についても本発明の範囲内である。最後に、第1または第2の態様、ならびにこれらの態様の具体的な実施形態の任意の実現可能な組み合わせを特徴としこれらを使用するセンチネルリンパ節造影剤に関しても本発明の範囲内である。
【0035】
以下の本発明の代表的な実施形態の詳細な説明によって本発明をより深く理解できるでろう。
【0036】
(詳細な説明)
本発明は、高分子送達媒体を使用して薬剤および診断薬が特定の組織に送達することに関する。これまでは、薬剤および標的基質を結合させることができる安価で非毒性の分子主鎖がなかったため、このような媒体の臨床的成功は限定されていた。本発明は、不必要な架橋を軽減しながら非毒性を維持し、リーシュおよび主鎖サイズ当りの搭載量を最適化する新規方法によって生成された新規高分子を提供することによってこの問題を解消する。
【0037】
治療薬と組み合わせるあるいは結合させる場合も有用であるが、本発明は心臓血管および/または腫瘍の画像化に特に有用である。磁気共鳴映像法(MRI)またはコンピュータ断層撮影法(CT)に有用な心臓血管造影剤および腫瘍造影剤は、多数の造影物質を結合させることができる安価で非毒性の分子主鎖を有するべきである。本発明以前にはこのようなことができなかった。
【0038】
本発明の実施形態の1つは、「リーシュ」と呼ばれる多数の結合部位を有する安価な高分子を生成する化学的機構を特徴とする。主鎖分子当りのリーシュ数が多い(数百)ため、基質、薬剤、および/またはその他の分子全体を高密度で取付けることができる。
【0039】
さらに別の有用な特徴は、高分子の主鎖がデキストランである好ましい実施形態に見ることができる。デキストランは心臓血管の体積増加剤としての優れた安全性が確認されている。デキストランは広範にヒトに使用されているので、送達される薬剤または診断薬も非毒性となる確率が増加する。
【0040】
本発明には、医薬(すなわち治療薬)および診断薬(すなわちプローブ)など多くの潜在的な用途がある。理論上はほとんどすべての薬剤を本発明と合わせて使用することができるが、以下の用途が特に有望である:WR2721(ラセイ(Rasey)JSら、個別の正常組織の特異的防護(Specific protection of different normal tissues),Pharmac Ther 39:33−43,1988)などの放射線防護剤、アミホスチン(Amifostine)(エチオール(ethyol))(カピージ(Capizzi)RL.アミホスチン(エチオール)による化学療法の細胞毒性作用からの正常組織の防護:臨床経験(Protection of normal tissues from the cytotoxic effects of chemotherapy by amifostine (ethyol):clincial experiences),Semin Oncol 21(S11):8−15(1994))などの化学防護剤、およびミソニダゾール(Misonidazole)(フィリップス(Phillips)TL.臨床腫瘍学における増感剤および防護剤(Sensitizers and protectors in clinical oncology),Semin Oncol 8:67−82,1881)などの放射線増感分子、ならびに組織特異的防または増感に妥当な受容体基質の結合;抗ウイルス薬および組織特異的抗ウイルス治療(肝炎の治療など)に適切な受容体基質の結合;免疫調節薬、ならびに組織特異的免疫療法に適切な受容体基質またはリガンドの結合;DNA、および組織特異的遺伝子治療(p52または自殺遺伝子を癌細胞に導入しアポトーシスを誘導、免疫標的など)に適切な受容体基質の結合;ならびに特異的受容体を標的とするためのペプチド、単糖類、および多糖類の結合。例えば、グレゴリアディス(Gregoriadis)G編著「生物学よび医学における薬剤担体」(Drug Carriers in Biology and Medicine)、サンディエゴ・アカデミックプレス( San Diego, Academic Press)107−125のモルテニ(Molteni)L(1979)による「薬剤担体として
のデキストラン」(Dextrans as drug carriers)を参照されたい。
【0041】
診断薬に関しては、以下の用途を特に意図している:心臓血管および/または腫瘍の磁気共鳴映像(MRI)用のガドリニウム錯体の結合;心臓血管および/または腫瘍のコンピュータ断層撮影(CT)用ヨウ素化分子の結合;心臓血管および/または腫瘍のコンピュータ断層撮影(CT)用イッテルビウム、ジスプロシウム、またはその他の重金属錯体の結合;心臓血管および/または腫瘍のシンチグラフィー用テクネチウム−99m錯体の結合;ガドリニウム錯体と、肝臓、リンパ節、骨髄、および/またはその他の組織の組織特異的造影に適切な受容体基質の結合;ヨウ素化分子と、組織特異的CT撮影に適切な受容体基質の結合;イッテルビウム、ジスプロシウム、または重金属錯体と、組織特異的CT撮影に適切な受容体基質の結合;テクネチウム−99m錯体と、組織特異的シンチグラフィー用に適切な受容体基質の結合;光学撮影用色素または蛍光剤の結合。
【0042】
この場合も、上記用途は本発明で使用可能な多くの可能な用途の単なる例である。これらの用途の一部の具体的な実施例を以下に示す。他の用途は、本出願を呼んだ当業者であれば容易に明らかとなり、実施可能となるであろう。
【0043】
(実施例1:リーシュの分子主鎖への結合)
本発明の分子主鎖の好ましい実施形態であるデキストランは多くの多糖類および分岐多糖類と同様に、化学結合させることができる複数の反応性ヒドロキシル基を有する。デキストランはバクテリア由来の天然生成物である。これは高分子量形態で単離され、制御しながら加水分解および精製することによって例えば分子量(「MW」)が1、000、10、000、40、000、70、000、110、000、150、000、および500、000などの種々のより小さい分子量の製品にすることができる(アメリカン・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)、米国)。上記MW種のそれぞれを本発明で使用することができ、それぞれは所与の用途で好適な作用が大きくなったり小さくなったりすることもある。例えば、腫瘍撮像の場合は、リーシュとレポーター基を結合させた後の最終分子量で50から70キロダルトン(kD)の範囲内となる大きさのデキストランが選択される。これによって正常組織よりも透過性が高い腫瘍に選択的に拡散する(シーモア(Seymour)LW,「可溶性高分子と薬剤の結合体の受動的腫瘍ターゲティング(Passive tumor targeting of soluble macromolecules and drug conjugates)」,Critical Reviews of Therapeutic Drug Carrier Systems 9:135−187(1992)を参照されたい)。心臓血管構造の撮像には、70から100kDの範囲の分子量を有する結合体が必要となる。この下限値は腎臓ろ過が最小限になることを希望する場合に設定される。上限値は、高分子量高分子の粘度が増大すると投与の問題が発生するために設定される。
【0044】
前述したように、血漿増量剤としての広範な使用に基づく多くの薬理学的データがデキストランに関して使用でき、これらのデータでは患者に注入後数週間持続し、段階的により小さい形態に酸化され腎臓から排出されることが示されている。グッドマン・ギルマン治療薬の薬理学的基礎第8版(Goodman and Gilman’s The Pharmalogical Basis of Therapeutics, Eighth Edition)、690から91ページ、ペルガモン・プレス(Pergamon Press),ニューヨーク(New York),(1990)、を参照されたい。
【0045】
リーシュの結合は、図1に示されるように2段階工程であった。第1の段階は、デキストランヒドロキシル単位の臭化アリルによる活性化である(ホームバーグ(Holmberg),1993;ゲッダ(Gedda),1996)。この反応は、10gのPM10と75mlの脱イオン水を使用し、水酸化ナトリウム(2.5g)および水素化ホウ素ナトリウム(0.2g)の存在下50℃およびpH11(2.5NaOHを滴下して維持)で行われる。3時間後、酢酸(2.5M)で溶液を中和し、5℃の冷蔵庫に2時間入れ、上部の有機層をデカンテーションする。100mlの脱イオン水を加えた後、得られた溶液をろ過(5mm)して限外濾過セル(MWCO=3、000)に回収し、10倍の交換体積の脱イオン水で透析する。生成物のアリル−デキストランを濃縮し、凍結乾燥し、−80℃で保存する。レーザー光散乱(ハネーウェル・ミクロトラック(Honeywell MicroTrac)UPA150)で平均分子径を測定する。
【0046】
デキストラン1分子当りの平均アリル基数を以下の方法で測定する。凍結乾燥したアリル−デキストランを食塩水に溶解し、凍結乾燥デキストランを標準物質として使用してその試料のグルコース濃度を硫酸法(ドゥビオス(Dubios),1956)で測定する。試料全重量から試料中のグルコース量を引くことによってアリル密度が求められる。この結果を試料中のアリル炭化水素量であると仮定する。次にアリル濃度をグルコース濃度で割り、デキストラン1分子当りの平均グルコース単位数を掛ける。
【0047】
第2の段階では、7.5gのアミノエタンチオール(システアミン)をDMSO(30ml)に溶解した溶液とアリル基を反応させてアミノ末端リーシュを生成した。この反応は、過硫酸アンモニウム(99.99%、1.0g)を加えて開始し、窒素雰囲気下で行われる。3時間後に脱イオン水を加えて反応体積を2倍にし、水酸化ナトリウム(2.5N)で溶液をpH4に調整する。140mlの酢酸ナトリウム緩衝液(0.02M、pH4)を加えた後、生成物をろ過(5mm)して限外濾過セルに回収し、5倍の交換体積の酢酸塩緩衝液(0.02M、pH4)で透析し、続いて5倍の交換体積の脱イオン水で透析する。濃縮した後、アミノ末端デキストランを凍結乾燥する。デキストラン1分子当りの平均アミノ基数を分析し、これをアミノ濃度と定義する。この凍結乾燥生成物を−80℃で保存する。レーザー光散乱によって平均分子径を測定する。
【0048】
これらの方法を使用して、α−1,6およびα−1,4グルコシド結合によって結合した平均388グルコースを含む残基アミノ−デキストランT70の場合、1分子当り516個のアミノ基が置換されたことが分かった。こうして調製したアミノ−デキストラン−T70の0.9%食塩水溶液の平均径は10.8nmであり、デキストランT70食塩水溶液の平均径は10.6nmであった。平均2881グルコース単位を含むT500では、平均2900個のアミノリーシュが置換されたことが分かった。
【0049】
デキストラン1分子当りの平均アミノ基数は、以下の方法で計算される。凍結乾燥したデキストラン結合体を食塩水に溶解し、標準物質としてヘキシルアミンを使用してTNBS分析(フィールズ、1972)でアミン濃度を測定する。また同じ試料のグルコース濃度を硫酸法(ドゥビオス,1956)で測定する。アミン濃度をグルコース濃度で割り、さらにデキストラン1分子当りの平均グルコース単位数を掛けることによってアミノ密度が計算される。以下は、上記のようにして得たアミノ−デキストランを他の化合物と結合させて種々の診断薬を合成する方法の実施例である。
【0050】
(実施例2:磁気共鳴またはコンピュータ断層撮影法による血液プール撮影用のキレート化剤(DTPA)の結合形成)
ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)をアミノ−デキストランに結合させることによってDTPA−アミノ−デキストランが生成し、これをガドリニウムまたはジスプロシウムで標識して(図2A参照)、磁気共鳴映像法またはコンピュータ断層撮影法用の血液プール造影剤を生成することができる。クレイジャレック(Krejcarek)ら(1977),Biochem.Biophys.Res.Commun.77:581−583の混合無水物法を使用する。これは最初のリーシュ形成で使用した新規化学反応とは異なる。この方法は、過剰のDTPA(活性化試薬のIBCFと比較して)が使用される場合はデキストランの架橋を促進しない。
【0051】
混合無水物法(クレイジャレック、1977)は、DTPAをデキストラン主鎖と結合させるために使用した。この合成はDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)(20g)をクロロギ酸イソブチル(IBCF)(3.1ml)で活性化させることで開始する。これはアセトニトリル(83ml)中−30℃で行われる。活性化されたDTPAを4℃のアミノ末端デキストラン(2g)を含む重炭酸塩緩衝液(0.1M、pH9)にゆっくりと加える(図3参照)。この溶液を室温で終夜撹拌する。5倍の交換体積の重炭酸塩緩衝液(0.1M、pH9)、次に5倍の交換体積の脱イオン水で生成物の広域ダイアフィルトレーションを行った後、透析物を濃縮し、凍結乾燥する。試料のDTPA濃度およびアミノ濃度を分析する。この凍結乾燥生成物を−80℃で保存する。レーザー光散乱で平均分子径を測定する。
【0052】
デキストラン1分子当りの平均DTPA単位数は以下の方法で計算される。凍結乾燥したDTPA−デキストランを0.1mmol/lのトリエタノールアミンHCl(pH=6.0)に溶解する。1.5倍(DTPAに対してmol/molで)過剰のガドリニウムを66mM含む0.1NHCl溶液(ろ過、0.2μm)を加え、2.5NのNaOHでpHを6に調整した。37℃で24時間撹拌した後、溶液をAMICON限外濾過装置に移し、分子量カットオフ3、000Daでダイアフィルトレーションを行う。10倍の交換体積量の脱イオン水で透析の後、さらに10倍の交換体積の酢酸塩緩衝液(0.2M、pH4)で透析し、透析物を濃縮し、ICP分光測定(ベラ、1995)でガドリニウム濃度を分析する。同じ試料のグルコース濃度も硫酸法(ドゥビオス、1956)で測定する。DTPA密度は、ガドリニウム濃度をグルコース濃度で割り、さらにデキストラン1分子あたりの平均グルコース単位数を掛けることで計算される。
【0053】
DOTAおよびMAG3を含む他のキレート化剤の結合部位へのカップリング手順をそれぞれ図4および5に示す。
【0054】
(実施例3:リンパ節および肝臓撮影用のマンノースの結合形成)
デキストラン主鎖に結合したマンノースが存在すると、投与方法に依存するが、肝臓、脾臓、肺、骨髄、およびリンパ節に存在する受容体(マンノース結合性タンパク質)に化合物を送達できる。肝臓学・肝臓疾患テキスト第2版(Hepatology.A Textbook of liver Disease.(2nd Ed.))、ザキム(Zakim)D、ボワイエ(Boyer)TD編著、W.B.サンダース(W.B. Saunders),フィラデルフィア(Philadelphia)中のスティアー(Steer)CJ、アシュウェル(Ashwell)G(1990)「受容体媒介エンドサイトーシス:機構、生物学的機能、および分子特性(Receptor−mediated endocytosis:Mechanisms,biologic function,and molecular properties)」。化合物が皮下投与される場合はマンノース末端デキストランはリンパ系に入ってリンパ節内の受容体と結合し、静脈内投与される場合は肝臓、脾臓、肺、および骨髄で結合が起こる。さらに、マンノース結合性タンパク質は、クラスターグリコシド、例えばマンノースおよびマンノースから誘導される化合物への親和性が高いことが知られている。
【0055】
DTPAやDOTAなどのキレート化剤(シービング(Sieving)ら(1990),Bioconj.Chem.1:65−71)と結合させたデキストラン主鎖が得られる場合は、この複合体をガドリニウム、テクネチウム−99m、またはイッテルビウムでさらに標識することができる。ガドリニウム(例えば図6参照)は、磁気共鳴映像法によって肝臓またはリンパ節の腫瘍の検出に使用できる。放射標識したテクネチウム−99m(例えば図7)は、シンチグラム造影法による肝臓またはリンパ節の造影に使用できる。イッテルビウムはガドリニウムおよびジスプロシウムと同様に、コンピュータ断層撮影法の造影に使用できる。
【0056】
マンノースとアミノ−デキストランの化学結合は、例えばヒト血清アルブミンの結合(ベラら(1985)J.Nucl.Med.26:1157−1167)およびポリリシンの結合(ベラら(1995)Acad.Radiol,2:497−596)に関して記載される多数の方法によって形成することができる。例えば図8を参照することができる。この結合形成はガラクトースに関して前述したように実施することができる。
【0057】
DTPA−デキストランとマンノースの結合形成は還元的アルキル化(ベラ、1997)によって行われる。マンノシルカップリング剤のシアノメチル2、3、4、6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−マンノシド(CNM−チオマンノース)を以下の経路で合成する。臭化テトラ−O−アセチル−α−D−マンノピラノシル(この炭水化物は市販されていない)をクロロホルム中の2段階反応で生成する(リー(Lee),1994)。ロータリーエバポレーターでシロップ状になるまで溶媒を蒸発させた後、生成物をすぐにチオ尿素と反応させて2−S−(2、3、4、6−テトラ−O−アセチル−β−D−マンノピラノシル)−2−プソイドチオ尿素−臭化水素酸塩を生成し(チポースキー(Chipowsky),1973)、これをアセトン中で再結晶させる。マンノシル結合の直前に、CNM−チオマンノース濃度0.04g/mlメタノールで、この生成物を乾燥させ新しく蒸留したメタノール(250ml)中のナトリウムメトキシド(0.05mg/ml)で脱アセチル化する。ロータリーエバポレーターでメタノールを除去した後に、適切な量のDTPA−デキストラン(0.5g)を含有する20mg/mlの重炭酸塩緩衝液(0.2M、pH9.0)を加えてカップリング反応を進行させる。反応は室温で2時間行われる(図8)。5倍の交換体積の重炭酸塩緩衝液(0.1M、pH9)、続いて5倍の交換体積の脱イオン水で生成物のダイアフィルトレーションを行った後、その透析物を濃縮し、凍結乾燥する。試料のマンノース濃度、DTPA濃度、およびアミン濃度の分析を行う。この凍結乾燥生成物は−80℃で保存する。レーザー光散乱で測定した平均分子径は7.6nmである。
【0058】
デキストラン1分子当りの平均マンノース基数は以下の方法で計算される。凍結乾燥したデキストラン結合体をトリエタノールアミンに溶解し、前述のようにガドリニウムで標識する。ダイアフィルトレーションとDTPA濃度測定の後、さらに同じ試料のマンノース濃度も硫酸法(ドゥビオス、1956)で測定する。マンノース濃度を、DTPA−デキストラン結合体の既知のDTPA濃度に基づいて計算されるデキストラン濃度で割ることによってマンノース密度が計算される。
【0059】
医薬用デキストランPM10を使用してセンチネルリンパ節造影剤のDTPA−マンノシル−デキストランを合成した。例えば図7を参照されたい。この生成物は平均径7.6nm、マンノース密度44単位/デキストラン、アミン密度23単位/デキストラン、およびDTPA密度8単位/デキストランであった。分子量は36,288g/molであった。
【0060】
(実施例4:肝臓造影用のガラクトースの結合形成)
基質のガラクトースが存在すると、肝臓に限定して存在する受容体にデキストランを送達することができる。デキストランにDTPAも結合している場合は、これをガドリニウムまたはテクネチウム−99mで標識することができる。ガドリニウムを使用することによって、磁気共鳴映像法による肝臓癌検出が可能となる。放射標識テクネチウム−99mによって、シンチグラフィーによる肝臓の撮影が可能となる。
【0061】
ガラクトースのアミノ−デキストランへの化学結合の形成は、例えばヒト血清アルブミン(ベラら(1985)J.Nucl.Med.26:1157−1167)およびポリリシン(ベラら(1995)Acad.Radiol.2:497−596)の結合について記載される多数の方法によって実現可能である。
ガラクトースのアミノ末端デキストランへの結合形成のためのカップリング反応はマンノースの結合形成(後述)と同様である。図13Aおよび13BはMR肝臓造影剤および核医学造影剤の例であり、どちらも本発明の実施形態を使用している。
【0062】
(実施例5:放射性映像用のMAG3キレート化剤の結合形成) アミノ末端デキストラン野結合は、メルカプトアセチルグリシルグリシル−グリシン(MAG3)(フリッツバーグ(Fritzberg)、1986)のテトラフルオロフェノール(TFP)による活性化によって開始する。これは、当量の1、3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温で加えることによって行われる。この溶液の溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、クロロホルムに溶解し、ろ過する。
こうして得られた溶液の溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、溶液の生成物のTFP−MAG3は冷凍庫で保存する。最後に、アミノ末端デキストランのDMSO/水溶液(1:10)を、同じ溶媒中のTFP−MAG3の溶液と混合する。この溶液を室温で終夜撹拌する。水による広範囲ダイアフィルトレーションの後、生成物を濃縮し、凍結乾燥する。
【0063】
(センチネルリンパ節造影:癌、すなわち乳癌、メラノーマ、および結腸直腸癌の改良された診断および治療の展望)
リンパ節転移の罹患率を低下させその検出費用を軽減するために、癌外科医はセンチネルリンパ節(最初にリンパ液が流れ込むリンパ節)を手術中に同定し除去する方法を開発した(モートン(Morton)ら(1992)Arch.Surg.127:292−299)。センチネルリンパ節生検と呼ばれるこの方法は、メラノーマおよび乳癌の転移に対して非常に高い陰性予測値を有し(ジュリアノ(Giuliano)ら(1994)Arch.Surg.220:391−401)、どちらの癌も偽陰性率が0から9%である。センチネルリンパ節生検が結腸直腸癌の管理に有意な影響を与える増殖の証拠も見られる(サハ(Saha)ら(1998)J.Surg.Oncol.69:183)。
【0064】
前述したように、センチネルリンパ節造影は、原発腫瘍部位からリンパ液の流れを受け取る最初のリンパ節として外科医が同定する核医学検査法である。このリンパ節は取り出され、悪性細胞の検出のために凍結切片分析に送られる。手術前にセンチネルリンパ節を同定するために、小規模な切開を行ってリンパ節を取り出すことができ、より小さな切開を行うこともできる。この方法の非常に高い陰性予測値から正確な病期を調べることができ、センチネルリンパ節の病的状態が陰性である患者の完全にリンパ節を切開せずにすむ場合もある。結果として、センチネルリンパ節造影により癌の病期判断は、手術後の病的状態とは無関係に腋窩リンパ節の切開法と同等となりうる。
【0065】
センチネルリンパ節生検を行う場合、造影剤は腫瘍部位周囲に注入され、手持ち式ガンマプローブを使用してセンチネルリンパ節の検出および除去が行われる。しかし多くの場合、放射活性がリンパ液に広がってリンパ節と腫瘍の間の区別が困難となるか、あるいは除去が必要なリンパ節の数より多くのリンパ節に放射活性が広がる。
【0066】
理想的なセンチネルリンパ節造影剤では、注入部位からのクリアランスが急速で、リンパ管内での保持率が高く、センチネルリンパ節によって急速、完全、かつ持続して取込まれ、残りのリンパ節からの取込みは少ない。乳癌の場合、腫瘍がセンチネルリンパ節と接近しすぎていて2つの部位の間の放射活性の区別が困難であるためにセンチネルリンパ節が発見されない場合がある。標準的な特徴は、低い放射活性吸収、高い生物学的安全性、簡便性、迅速性、および安定なテクネチウム−99m標識が挙げられ、生化学的純度も適用される。
【0067】
ろ過コロイドは、注入部位からのクリアランスが低い。ろ過Tc−アルブミンコロイドとTc−硫黄コロイドの半減期はそれぞれ5.5時間と10.5時間である(グラス(Glass),1995)。これを注入3時間後に換算すると注入部位で投与量の約65%および85%となり、手術中のセンチネルリンパ節の検査に最適な時間である(ウレン(Uren),1995)。逆に、Tc−デキストランやTC−HSA(T1/2=2.8時間)などの標識高分子はクリアランスが最も速い(ヘンツェ(Henze),1982;グラス、1995)。
【0068】
本発明に記載される手順によってテクネチウム−99m標識MAG3−マンノシル−デキストランの組み合わせを改良される。次善の従来技術の架橋が起こりやすい手順を使用して調製した場合でもこの物質は有効であることが既に示されている。前述のテクネチウム−99m標識MAG3−マンノシル−デキストランは、複数の単位のマンノースとMAG3が結合した10キロダルトンのデキストラン分子である。この分子の平均径は5.5ナノメートル(nm)であり、従来標準的であったTc−99m三硫化アンチモン(10nm)、ろ過Tc−99m硫黄コロイド(50nm)、および未ろ過Tc−99m硫黄コロイド(650nm)よりも実質的に小さい。マンノースを使用することでマンノース結合性タンパク質受容体の基質として作用し、MAG3はテクネチウム−99m(図9)による標識のキレート化剤となる。得られる放射標識結合体は、注入部位におけるクリアランスが急速であり、センチネルリンパ節と結合する。従来の研究は以下のように再現され、本明細書に記載される改良された化合物の使用によって既に実現されている有用性がさらに向上する。
【0069】
(実施例6:ウサギにおけるセンチネルリンパ節造影の実例)
ケタミンとキシラジンの筋肉注射で麻酔をかけた後、0.5mlのTcMAG3−マンノシル−デキストラン(19、000g/mol)を右前足蹠(0.42mCi)および右後足蹠(0.43mCi)に注入し、0.5mlのろ過Tc−硫黄コロイドを左前足蹠(0.41mCi)および左後足蹠(0.42mCi)に注入した。このウサギの頚部にに60分ごとに10ccの食塩水を注入した。各放射性医薬品の注入後、足蹠のマッサージを5分間行った。広視野ガンマカメラ(高解像度、低エネルギーコリメーター)を使用して定期的な静止画像(1,000kct、256×256×16)を、15分、45分、100分、および135分に前肢と腋窩リンパ節が見えるように撮影し、21分、53分、109分、および154分に後肢と膝窩リンパ節が見えるように撮影した。各撮影前に15分間肢を運動させた。TcMAG3−マンノシル−デキストランとTcSCの両方の造影標準物質(10倍希釈)を視野に入るように配置した。注入から約150分後にウサギを安楽死させた。各センチネルリンパ節を切り取り、TcMAG3−マンノシル−デキストランおよびTCSC投与量の希釈(2倍)試料で放射活性を分析した。これらの値を各造影標準物質で規格化してセンチネルリンパ節%IDを求め、これを時間の関数としてプロットした(図10)。連続する各画像で、関心領域(ROI)は注入部位周辺、センチネルリンパ節、および造影標準物質であった。各ROI内の全カウントを標準的な核医学ソフトウェアを使用して計算した。注入部位のROIの絶対カウント数を標準物質のカウント数で割り、注入した投与量に対する比率を計算した。これらの値を対数スケールでプロットして図11に示した。
【0070】
得られたデータから、Tc99m−MAG3−マンノシル−デキストランの造影特性はろ過Tc99m硫黄コロイドよりも優れていることが示された。図10にプロット下注入投与量パーセントから、腋150分にわたって窩および膝窩センチネルリンパ節の両方でリンパ節によるTcMAG3−マンノシル−デキストランの取込みが多いことが分かった。さらに、図11のより低い位置の曲線で示されるように、低いTcMAG3−マンノシル−デキストランは注入部位からのクリアランスが有意に速いことが示された。
【0071】
TcMAG3−マンノシル−デキストランおよびTcSCの投与から15分後に撮影した腋窩リンパ節を図12に示す。注入部位は画像上部である(左側がTcMAG3−マンノシル−デキストランであり、右側がろ過TcSCである)。
ウサギの両側には1組の標準物質が配置されている。両側のセンチネルリンパ節以外に、左センチネルリンパ節の内側の活性の集中が見られるが、これは遠位リンパ節のTcSC活性を示していると思われ、後の時間の画像で遠位リンパ節によく観察されるTcSCの挙動に対応していると思われる。しかし、この活性は腋窩リンパ管の両側で共有される縦隔リンパ節を表している可能性もあり、その場合にはこの発見はあまり重要ではない。
【0072】
TcMAG3−マンノシル−デキストランの注入部位におけるクリアランスが速いことは、粒子径が小さい(5.5nm)ために毛細血管中にも拡散できるためと説明できる。
【0073】
3匹のウサギの研究によるリンパ節によるTcMAG3−マンノシル−デキストランの取込みは注入投与量の1.2から2.5%の範囲であった。ろ過Tc硫黄コロイドでは1.5から4.9%の範囲であった。
【0074】
(実施例7:ウサギの血液プール磁気共鳴映像法の実例)
GdDTPA−デキストランを使用した磁気共鳴映像法を、体重がそれぞれ3.0kgと2.7kgである1匹の健康なウサギと1匹の癌を有するウサギについて実施した。50mg/kgのケタミンと8.8mg/kgのキシラジンの混合物で各ウサギを麻酔した。麻酔投与後、各ウサギに3mmの気管チューブを挿管し、操作範囲内に配置した。各ウサギは1回排出量25ccとして60bpmで呼吸させ、呼吸を制御できるようにした。どちらのウサギにも0.17mmolガドリニウム/kg投与量(0.13gのGdDTPA−Dx/kg)含有GdDTPA−デキストラン(MW=398,000g/mol、515Gd/デキストラン)を与えた。GEシグナ(GE Signa)(登録商標)1.5T磁気共鳴映像装置(バージョン4.83ソフトウェア)(GEメディカル・システムズ(GE Medical Systems)、ウィスコンシン州ミルウォーキー)を使用し各ウサギを膝コイルで固定して撮影を行った。本発明者らは多数の撮影パラメーターを調べたが、最も有用であったのは3D飛行時間(TOF)高速スポイルドグラジエントエコー(FSPGR)シークエンス:TR=15.1msec、TE=4.2msec、フリップ角=30°、256×192マトリックス、16cmFOV、厚さ1.5mmで80スライスであった。健康なウサギ(3kg)の画像は、注入(2.0ml)前と、注入後15分、28分、33分、46分、および3時間に撮影した。前頭面を撮影した28分の撮影を除いて、すべての撮影は軸方向に行った。右腎臓の高さの大動脈内の未補正信号強度は注入前で193、28分後で552、33分後で516、および46分後で472であった。図19aは、注入から15分後の健康なウサギの最大強度投影像である。図19bは、同じウサギの投与から3時間後の同様の画像である。
【0075】
図16aおよび16bは、腫瘍を有するウサギ(2.7kg)の磁気共鳴映像である。腫瘍は右後肢のVX2癌である。腫瘍血管はGdDTPA−デキストラン注入(1.8ml、0.17mmolGd/kg)の前に撮影した図16aでは見ることができない。GdDTPA−デキストラン投与から1時間後、腫瘍血管は容易に見ることができる(図16b)。軸方向3DFSPGR映像(TR=15.1msec、TE=4.2msec)を元に、本発明者らは腫瘍関心領域(ROI)内の平均信号強度を測定し、筋肉の平均信号強度を引き、さらにその結果を体外の領域から得たROIの標準偏差で割ることによってコントラストノイズ比CNRを計算した。腫瘍の中心部分の領域のCNRは注入前には0.63であり、GdDTPA−デキストラン投与から54分後には9.6であった。腫瘍内の血管のCNRは注入前は−21.4であり、投与後は120であった。負の値が得られるのは、増強されない腫瘍血管よりも筋肉の方が信号が強かったためである。
【0076】
54分後のCNR値120は、アルブミン標的試薬のMS−325を使用したヒト大動脈の同じ投与後時間の標準的な報告値(CNR=42)(グリスト(Grist)TMら、Radiology 207:539−544)の約3倍高い値である。
【0077】
(実施例8:ウサギの血液プールコンピュータ断層撮影法の実例)
G.E.9800クイック(Quick)(登録商標)CTスキャナーで2匹のウサギをスキャンした。大きなVX2腫瘍を有する1匹のウサギ(2.6kg)は、DyDTPA−T40(MW=101,537g/mol、95Dy/T40)を使用して撮影し、2匹めの健康なウサギ(3kg)はオピトレイ(Optiray)−320(MW=807g/mol)を使用して撮影した。各ウサギは50mg/kgのケタミンと8.8mg/kgのキシラジンの混合物で麻酔した。麻酔投与後、各ウサギの3mmの気管チューブを挿管し、操作範囲内に配置した。各ウサギは1回排出量25ccとして60bpmで呼吸させ、各撮影時は呼吸を止められるようにした。次に、心臓、腫瘍、肝臓右葉、腎臓、および脾臓の位置を識別するために位置決め画像を撮影した。これより後のすべての画像では、120KV、200mA、スライス厚さ3mm、走査時間2sec、512マトリックス、およびFOV16cmを使用した。心臓中央部から左腎臓の中央部まで3mm間隔の連続画像を撮影した。この一連の画像から、心臓、肝臓、腫瘍、腎臓、および脾臓の軸位置を選択した。各位置で3回撮影した後、[Dy]DTPA−T40(5ml、190mgDy/kg、37mmolDy/kg)を120秒間かけて注入し、注入から2分後、5分後、7分後、15分後、30分後、および37分後に撮影を行った。腫瘍を有するウサギの注入前と、注入から2分後、5分後、30分後、および37分後に撮影した画像をそれぞれ図17aからeに示す。オピトレイ−320(640mgI/kg、5.0mmolI/kg)は60秒間かけて注入し、注入後1分間隔で2から10分まで撮影し、さらに20分後も撮影した。
【0078】
図18a、18b、18c、および18dは、健康なウサギにオピトレイ−320を注入する前、ならびに注入から2分後、5分後、および10分後の肝臓断面を時系列順に並べたものである。5分後の画像のみ大動脈が見られる。IVCおよび門脈では肝臓よりも強度が高い。DyDTPA−T40時系列の2分後および5分後の画像(それぞれ図18bおよび18c)はこれらの血管が見え、同様に肝臓内血管も周囲の肝臓よりも高強度である。両薬剤に関するIVCおよび肝臓のベースライン補正曲線(図14aからd)はこれらの画像と一貫性がある。最も重要なことは、DyDPTA−T40のIVC曲線は少なくとも10分間持続し、一方オピトレイ−320のIVC曲線は約2分間の半減期で急速に減衰していることである。図14aからdの曲線のy軸は、肝臓のCT#からIVCのROIのCT#を引くことで計算した。本発明者らの目的は、ベースラインを除去し、血管と肝臓の間の信号の差を維持することであった。図14bに示されるように脾臓と腎皮質によるDyDTPA−Dx取込みの不足も重要である。腎髄質の強度は、無傷の高分子、キレートから解離したDy、またはDy代謝生成物のいずれかのろ過を示している。
【0079】
本発明者らのリーシュ結合形成反応で得られるデキストラン架橋の徴候を調べるために、セファクリル(Sephacryl)S−300HR(27×1cm)および移動相として0.9%食塩水(30ml/時)を使用して、アミノ末端−T10結合体(NT10)のクロマトグラフィー分析を行った。溶離物を226nmで検出した。ファルマシア(Pharmacia)は、デキストランの有用な分画範囲として2×10から1×10Daを挙げている。図15aはヒト血清アルブミンのクロマトグラムであり、空隙体積はVoで示され、全体積はVtで示される。図15bはアミノ末端−T10結合体のクロマトグラムでありこの結合体は105個のリーシュを有し、これはリーシュ密度が1.8アミノ基/グルコース単位である。架橋の徴候は空隙体積に発生し、この位置で高分子量デキストランの存在に応答して吸収特性が急激に上昇する。この結合体の平均径を動的レーザー光散乱(ハネーウェル・ミクロトラック(登録商標)UPA150)で測定すると0.043μmであり、標準偏差は0.0010μmであった。アルブミンの測定値は0.0092±0.0011μmであり、これは公表されている直径0.0072μmよりわずかに大きい。
【0080】
(考察)
本明細書に記載される2段階のリーシュ結合反応の利点および有用な点は、結合形成量が多い、架橋が少ない、および結合部位の電荷がないことである。さらにデキストラン主鎖は低価格であり、ヒトにおける使用経験が広範囲にわたる。
デキストラン1分子当り多数のリーシュ(すなわちアミノ基)が存在することで、高密度の基材および/または薬剤を各デキストラン主鎖に結合させることもできる。
【0081】
本発明以前の方法では分子主鎖に不要な架橋が起こった。例えばレビザク(Rebizak)ら(1997),Bioconj.Chem.8:605−610;レビザクら(1998),Bioconj.Chem.9:94−99(2−エトキシ−1−(エトキシカルボニル)−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)の存在下におけるエチレンジアミンとデキストランカルボン酸の反応が記載されている)を参照されたい。主鎖の分子量が増大し、そのため生成物の溶解性が減少するため、架橋は重大な問題である。さらに、そのような高分子構造内で毒性の高い放射性トレーサー(例えばGd3+)とキレート化基の間の錯体形成定数が不安定化するために毒性が生じる場合がある。結果として、これらの従来の反応機構はデキストラン1分子当りで低密度のリーシュを結合させる場合のみに使用可能であり、したがって従来手順ではデキストラン分子はわずかな数の基質および/または薬剤しか結合させることができず、そのため所望の診断作用または薬剤作用を実現するためにはより多い投与量のデキストランが必要となる。このためコストが増大し安全性が低くなり、さらに溶解性の問題も生じる(架橋の増大による溶解性の低下)。組織受容体の量によっても、受容体と結合して細胞に入り込むことができるデキストラン分子の数が制限される。その結果薬剤または診断薬が低密度となり、所望の効果を得るために十分な量を送達できなくなる。
【0082】
本発明は、結合部位「リーシュ」が十分高密度である担体分子を提供することによってこれらの問題を解決する。
【0083】
さらに、例えば非アミノ末端リーシュ系が記載されるゲッダ(Gedda)ら(1996),Bioconj.Chem.7:584−591、およびホームバーグ(Holmberg)ら(1993),Bioconj.Chem.4:570−573などの他の機構で発生する結合形成の自由度が低いという欠点も本発明は克服する。従来技術の自由度の不足は可能な用途の範囲を制限している。本発明はこのような制限を回避しており、そのためより広い範囲の用途が得られる。
【0084】
参照
【表1】




【0085】
前記参照のすべてが参照によって本明細書に含まれる。
【0086】
本発明の好適な実施例を例として上記に記載したが、当業者であれば付属の請求項によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく開示された実施例の修飾を行いうることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は結合部位の高分子主鎖への共有結合性カップリングが起こる一連の反応の実施形態を示している。
【図2】図2は主鎖(デキストラン)、キレート化剤(DPTA)、および常磁性原子(ジスプロシウム)を含む血液プールCT剤である本発明の実施形態を示している。
【図3】図3はDTPAの結合部位へのカップリングの一連の反応の実施形態を示している。
【図4】図4はDOTAの結合部位へのカップリングの一連の反応の実施形態を示している。
【図5】図5はMAG3の結合部位へのカップリングの一連の反応の実施形態を示している。
【図6】図6は受容体基質(マンノース)、主鎖(デキストラン)、キレート化剤(DOTA)、およびMRIレポーター(ガドリニウム)を含むリンパ節MRI剤の実施形態を示している。
【図7】図7は受容体基質(マンノース)、主鎖(デキストラン)、キレート化剤(DTPA)、および放射性原子(Tc−99)を含むセンチネルリンパ節検出剤の実施形態の式を示している。
【図8】図8はマンノースの結合部位へのカップリング手順の実施形態を示している。
【図9】図9は受容体基質(マンノース)、主鎖(デキストラン)、キレート化剤(MAG3)、および放射性原子(Tc−99m)を含むセンチネルリンパ節検出剤の実施形態の式を示している。
【図10】図10はTcMAG3−マンノシル−デキストラン(黒印)およびTc−硫黄コロイド硫黄コロイド(黒印)のセンチネルリンパ節の取り込みを示す注入投与量パーセント対時間のプロットである。
【図11】図11はTcMAG3−マンノシル−デキストラン(黒印)およびTc−硫黄コロイド(白印)の注入部位クリアランスを示す対数注入投与量パーセント対時間のプロットである。
【図12】図12はTcMAG3−マンノシル−デキストラン(右足蹠)およびTcSC(左足蹠)の皮下投与の15分後に撮像したウサギ腋窩リンパ節(矢印で示される)を示している。注入部位は画像上部である。ウサギのいずれかの側部に1組の標準物質が存在する。両側センチネルリンパ節以外で、左センチネルリンパ節内側近傍にある活性中心は遠位リンパ節のTsSC活性を示してと思われる。
【図13a】図13aは受容体基質(ガラクトース)、主鎖(デキストラン)、キレート化剤(DOTA)、および常磁性原子(Gd)を含む肝細胞標的MR造影剤の実施形態の式を表している。
【図13b】図13bは受容体基質(ガラクトース)、主鎖(デキストラン)、キレート化剤(MAG3)、および放射性原子(Tc−99m)を含む肝細胞標的核造影剤の実施形態の式を示している。
【図14a】図14aは本発明のDyDTPA−デキストランの実施形態を使用するCT血液プール造影剤の注入後の下大静脈、肝臓、および腫瘍における増強の時間経過を示している。
【図14b】図14bは本発明のDyDTPA−デキストランの実施形態を使用するCT血液プール造影剤の注入後の腎皮質、腎髄質、および脾臓における増強の時間経過を示している。
【図14c】図14cは市販のCT造影剤オピトレイ−320の注入後の下大静脈および肝臓における増強の時間経過を示している。
【図14d】図14dは市販のCT造影剤オピトレイ−320の注入後の腎皮質および腎髄質における増強の時間経過を示している。
【図15a】図15aはFPLCで測定したヒト血清アルブミンの粒径分布を示している。カラムの空隙体積(Vo)および全体積(Vt)を記載している。
【図15b】図15bはFPLCで測定した本発明のDy−DTPA−デキストランの実施形態の粒径分布を示している。カラムの空隙体積(Vo)および全体積(Vt)を記載している。
【図16a】図16aはGdDTPA−デキストラン注入前の腫瘍を有するウサギの画像を示すMR血液プール像の例である。
【図16b】図16bはGdDTPA−デキストラン注入1時間後の腫瘍を有するウサギの画像を示すMR血液プール像の例である。
【図17a】図17aは[Dy]DTPA−T40注入前に撮影した腫瘍を有するウサギのCT血液プール像の例である。
【図17b】図17bは[Dy]DTPA−T40注入2分後に撮影した腫瘍を有するウサギのCT血液プール像の例である。
【図17c】図17cは[Dy]DTPA−T40注入5分後に撮影した腫瘍を有するウサギのCT血液プール像の例である。
【図17d】図17dは[Dy]DTPA−T40注入30分後に撮影した腫瘍を有するウサギのCT血液プール像の例である。
【図17e】図17eは[Dy]DTPA−T40注入37分後に撮影した腫瘍を有するウサギのCT血液プール像の例である。
【図18a】図18aは健康なウサギにオピトレイ−320を注入する前の肝断面を示すCT血液プール像である。
【図18b】図18bは健康なウサギにオピトレイ−320を注入して2分後の肝断面を示すCT血液プール像である。
【図18c】図18cは健康なウサギにオピトレイ−320を注入して5分後の肝断面を示すCT血液プール像である。
【図18d】図18dは健康なウサギにオピトレイ−320を注入して10分後の肝断面を示すCT血液プール像である。
【図19a】図19aは本発明の実施形態を使用したMR血液プール像の例であり、GdDTPA−デキストラン(MW=398、000g/mol、515Gd/1デキストラン)注入の15分後に得た健康なウサギの最大強度投影画像である。
【図19b】図19bは注射後3時間における図19aと同じ動物の同様の画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖を含み、前記主鎖には構造−O(CHS(CHNHを有する複数の基が結合した担体分子。
【請求項2】
前記主鎖が多糖類から誘導される請求項1に記載の分子。
【請求項3】
前記多糖類がデキストランである請求項2に記載の分子。
【請求項4】
アリル基とアミノエタンチオールの反応によって生成する請求項1から3のいずれか1項に記載の分子。
【請求項5】
構造−O(CHS(CHNHを有する前記基の少なくとも1つのアミノ基と結合した少なくとも1つの別の化学基をさらに含む請求項1から3のいずれか1項に記載の分子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの別の化学基がキレート化剤、受容体リガンド、酵素基質、核酸、ペプチド、多糖類、放射線増感剤、放射線防護剤、および色素からなる群より選択される請求項5に記載の分子。
【請求項7】
前記少なくとも1つの別の基がDOTA、MAG3、およびDTPAからなる群より選択されるキレート化剤である請求項6に記載の分子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの別の基が、放射性原子、吸収性元素、および常磁性原子からなる群より選択される原子と結合可能なキレート化剤である請求項6に記載の分子。
【請求項9】
前記分子がセンチネルリンパ節造影に有用である請求項8に記載の分子。
【請求項10】
前記キレート化剤がガドリニウムと結合する請求項8に記載の分子。
【請求項11】
前記キレート化剤がイッテルビウムと結合する請求項8に記載の分子。
【請求項12】
前記キレート化剤がTc−99mと結合する請求項8に記載の分子。
【請求項13】
前記キレート化剤がインジウムと結合する請求項8に記載の分子。
【請求項14】
前記少なくとも1つの別の基が、マンノース、ガラクトース、単糖類、およびペプチドからなる群より選択される受容体基質である請求項6に記載の分子。
【請求項15】
請求項1に記載の分子から合成されたMRI剤。
【請求項16】
請求項1に記載の分子から合成されたCT剤。
【請求項17】
複数のアミノ末端リーシュを有する実質的に架橋がない担体分子を生成する方法であって、
複数のヒドロキシル基を有する主鎖分子を提供し、
前記主鎖分子の少なくとも一部の前記ヒドロキシル基をアリル化して前記主鎖のアリル誘導体を生成し、
前記アリル誘導体の前記アリル基を、アミノ末端と第2の末端とを含み前記第2の末端が前記アリル誘導体の前記アリル基と反応性である化合物と反応させ、 前記アリル誘導体を前記化合物と反応させて、複数のアミノ末端リーシュを有し実質的に架橋がない担体分子を生成する、
ことを含む方法。
【請求項18】
前記主鎖が多糖類である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記多糖類がデキストランである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物がアミノエタンチオールである請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記アミノ末端リーシュを、キレート化剤、受容体リガンド、酵素基質、核酸、ペプチド、多糖類、単糖類、放射線増感剤、放射線防護剤、および色素からなる群より選択される少なくとも1つの要素と結合させることをさらに含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの要素がDOTA、MAG3、およびDTPAからなる群より選択されるキレート化剤であり、前記受容体リガンドがマンノース、ガラクトース、およびペプチドからなる群より選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
キレート化剤に対する親和性を有する原子を加えることをさらに含み、前記原子が放射性原子、吸収性元素、および常磁性原子からなる群より選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記実質的に架橋がない複合担体分子を診断手順に使用することをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記診断手順がセンチネルリンパ節造影である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記実質的に架橋がない複合担体分子を治療用途に使用することをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記主鎖または主鎖分子がデキストランである任意の請求項26に記載の方法を使用して合成された剤。
【請求項28】
請求項13に記載の方法を使用して合成されたMRI剤。
【請求項29】
請求項13に記載の方法を使用して合成されたCT剤。
【請求項30】
請求項13に記載の方法に従って合成され、受容体基質、キレート化剤、および放射性原子をさらに含むセンチネルリンパ節検出剤。
【請求項31】
前記キレート化剤がMAG3である請求項30に記載のセンチネルリンパ節検出剤。
【請求項32】
前記受容体基質がマンノースである請求項30に記載のセンチネルリンパ節検出剤。
【請求項33】
前記放射性原子がTc−99mであり、前記キレート化剤がDOTAである請求項32に記載のセンチネルリンパ節検出剤。
【請求項34】
前記主鎖が多糖類である請求項30に記載のセンチネルリンパ節検出剤。
【請求項35】
前記多糖類がデキストランである請求項34に記載のセンチネルリンパ節検出剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13a】
image rotate

【図13b】
image rotate

【図14a】
image rotate

【図14b】
image rotate

【図14c】
image rotate

【図14d】
image rotate

【図15a】
image rotate

【図15b】
image rotate

【図16a】
image rotate

【図16b】
image rotate

【図17a】
image rotate

【図17b】
image rotate

【図17c】
image rotate

【図17d】
image rotate

【図17e】
image rotate

【図18a】
image rotate

【図18b】
image rotate

【図18c】
image rotate

【図18d】
image rotate

【図19a】
image rotate

【図19b】
image rotate


【公開番号】特開2007−332380(P2007−332380A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−175770(P2007−175770)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【分割の表示】特願2000−617933(P2000−617933)の分割
【原出願日】平成12年5月12日(2000.5.12)
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【Fターム(参考)】