説明

薬剤の経皮的送達のためのマイクロチャネル形成とイオントフォレーシスの組合せ

本発明は薬剤を経皮的に送達する方法に関する。特に、本発明は対象の皮膚にマイクロチャネルを形成するステップと、マイクロチャネルを通して薬剤をイオントフォレーシスにより送達するステップとを含む、経皮的送達方法に関する。この方法は薬剤の相乗的な経皮的送達を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤の経皮的送達方法に関する。具体的には、本発明は、対象の皮膚にマイクロチャネルを形成し、形成されたマイクロチャネルを通じて薬剤をイオントフォレーシスにより送達することを含む、薬剤の経皮的送達方法に関する。マイクロチャネルの形成とイオントフォレーシスの組合せにより、薬剤の相乗的な経皮的送達がもたらされる。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、体内への異物の進入に対する障壁として機能する複雑な構造体である。外界から無傷の皮膚の中へ入り通過しようとする分子は、これらの分子の皮膚内への侵入に対して高抵抗の脂質障壁として作用する角質を、最初に貫通しなければならない。局所的に機能する薬剤を皮膚内へと送達するために、角質の障壁を克服することを試みて多くの努力がなされてきた。
【0003】
イオントフォレーシスは薬物の投与において広く使用されている。これは電位が存在するときに皮膚を通じて薬物をイオンの形で効果的に送達するものである。イオントフォレーシスは経口又は非経口投与された薬剤に伴うことのある消化器系の副作用を回避し、かつ非侵襲性であることで、イオントフォレーシスは経口投与、或いは皮下、筋肉内又は静脈内注射に対し好ましい。
【0004】
一般に、イオントフォレーシスは、イオン性の薬液を収容する電極を、薬剤を輸送しようとする位置で皮膚に接触させて置くことによって実施される。第2の電極が第1の電極の付近で皮膚に置かれ、電圧が印加されて電流が皮膚を通過するようになり、それにより電極間の電気回路が完成する。電流が流れると、イオン性の薬物分子が、第2の電極の影響を受けて皮膚を通って移動する。
【0005】
1つの一般的な種類の電極の設計では、薬液が導入されるコンパートメント又はポーチと関連付けられた導電性素子の使用を伴う。ポーチの1つの壁は、一般に、溶液を含有する働きを有するが薬物イオンを透過させることもできる、透過可能な障壁を含む。このような電極の例は、とりわけ、米国特許第4,250,878号、第4,419,092号、及び第4,477,971号に見ることができる。
【0006】
第2の種類の電極の設計では、ポーチを使用せずにイオン化した薬物を収容するためのゲル材料と関連付けられた導電性素子の使用を伴う。このような生体電極の例は、米国特許第4,383,529号、第4,474,570号及び第4,747,819号に見られる。一般に、これらのゲルタイプの電極は、製造時にイオン化した薬物をゲル内部に組み込んでいる。
【0007】
第3のタイプの電極の設計では、一般に水和可能な要素に関連付けられた導電素子を使用する。水和可能(hydratable)な要素は、一般に架橋ポリエチレンオキシド(PEO)などの乾燥させた架橋ヒドロゲルのシートの積層体から形成される。
【0008】
Alzaに譲渡された米国特許第6,169,920号及び第6,317,629号は、イオントフォレーシスによる薬物送達デバイスを開示している。Iomedに譲渡された米国特許第5,087,242号、第5,374,241号、第5,730,716号、第6,731,977号は、イオントフォレーシスにより薬剤を送達するための電極及びデバイスを開示している。Samsung Electro−Mechanics Co.に譲渡された米国特許第5,681,580号は、イオントフォレーシスによるインスリンの経皮的投与のためのパッチタイプのデバイスを開示する。
【0009】
異なるタイプの経皮的送達デバイスが、Avrahamiの米国特許第6,148,232号に開示されている。このデバイスは、対象の皮膚の各位置に適用される複数の電極と、2つ以上の電極間に電気エネルギーを印加して主に各電極の下で角質にアブレーションを生じさせマイクロチャネルを形成する電源とを備える。電極同士の離間及び隣接する電極間での皮膚の電気抵抗の監視を含む、角質へのアブレーションを制限するための様々な方法が記載されている。Sintovら(J.Controlled Release 89:311−320,2003)並びにAvrahamiの米国特許第6,597,946号、第6,611,706号、第6,708,060号及び第6,711,435号では、物質が経皮的に皮膚を通過しやすくなるように、角質をアブレーションしマイクロチャネルを形成するための改善及び追加のデバイスを開示している。デバイスはマイクロチャネルを形成する間に角質の下にある皮膚への感覚(sensation)を低減し損傷を最小限にすることを目的とする。
【0010】
国際公開第2004/039426号、第2004/039427号、第2004/039428号、第2004/112689号、第2005/056075号及び第2005/069736号パンフレットはすべて本発明の出願人に譲渡されており、薬剤及び化粧剤の経皮的送達のためのシステム及び方法を開示する。具体的には、親水性制吐剤、乾燥又は凍結乾燥したポリペプチド組成物、水不溶性薬物及びポリヌクレオチドの経皮的送達のためのシステム及び方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既知の方法を上回る改善された送達及び生物学的利用性をもたらす方法である、一般的に薬剤、特にポリペプチドを経皮的に送達するための効率的な方法の必要性が今も認識されており、それを有することが非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、薬剤を経皮的に送達するための効果的な方法であって、対象の皮膚のある領域にマイクロチャネルを形成し、マイクロチャネルが存在する皮膚の領域でイオントフォレーシスによって薬剤を送達することを含む、方法を提供する。
【0013】
予想外なことに、(i)対象の皮膚のある領域にマイクロチャネルを形成するステップと、(ii)マイクロチャネルを通じて薬剤をイオントフォレーシスによって送達するステップの両方を含む方法により、マイクロチャネルが形成された皮膚のある領域にイオントフォレーシスを用いずに薬剤を投与することによって、又はイオントフォレーシスを無傷の皮膚に適用することによって得られるよりも、高い薬剤の生物学的利用能が達成されることを今回開示する。
【0014】
さらに、(i)対象の皮膚のある領域にマイクロチャネルを形成するステップと、(ii)マイクロチャネルを通じて薬剤をイオントフォレーシスによって送達するステップの両方を含む方法が、皮下注射によって得られるものと同等の、高い薬剤の血中濃度を達成することを開示する。
【0015】
さらに、本発明の方法は皮膚炎症が最小限であることを開示する。したがって、本発明の方法は相対的に穏和で無痛であるという性質から、皮下注射に対して非常に有利である。本発明の方法はまた、イオントフォレーシス及びマイクロチャネル形成のみの各方法に比較して送達される薬剤のより高い浸透度及び生物学的利用能を達成するので、それぞれの方法単独より好ましい。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は対象に薬剤物質を経皮的に送達するための方法において、
(a)対象の皮膚の第1の領域に複数のマイクロチャネルを形成するステップと、
(b)第1の電極アセンブリを複数のマイクロチャネルが存在する対象の皮膚の第1の領域に置くステップであって、第1の電極アセンブリが第1の電極と薬剤を含有する薬剤リザーバとを含み、薬剤リザーバが第1の電極と電気的に接続されているステップと、
(c)第2の電極アセンブリを対象の皮膚の第2の領域に置くステップであって、第2の電極アセンブリが第2の電極と電解質リザーバとを含むステップと、
(d)電源と(b)の第1の電極及び(c)の第2の電極との間に電気エネルギーを印加するステップであって、第1及び第2の電極が電源に電気的に接続されており、それにより複数のマイクロチャネルを通じて対象の皮膚内へと薬剤をイオントフォレーシスにより送達するステップとを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明の文脈において使用される「マイクロチャネル」という用語は、一般に皮膚表面から角質の全部又は大部分を通って延び、分子がそこを通って拡散することのできる通路のことをいう。
【0018】
皮膚の第2の領域は、皮膚の第1の領域の上にあり、付近にあり、重なり合い、近接し、又は別個とすることができることを理解されたい。電極アセンブリも同様に、互いに付着し、重なり合い、近接し、又は別個とすることができる。2つの電極アセンブリが単一のユニット内で組み合わされている場合、ステップ(b)及び(c)は随伴的に実行されることを理解されたい。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法のステップ(b)〜(d)は、前記薬剤の治療効果のある血中濃度を達成し対象の臨床的症状を改善するために必要な回数だけ実行することができる。
【0020】
2つの操作、すなわちマイクロチャネルの形成及びイオントフォレーシスが、連続して実施されることが強調される必要があるが、必ずしも即時に連続しなくても、すなわちマイクロチャネルが開通している間であればよい。いくつかの実施形態によれば、ステップ(b)〜(d)はマイクロチャネルが形成された時から約24時間以内に実施され、好ましくはステップ(b)〜(d)はマイクロチャネルが形成された時から約10時間以内に実施され、より好ましくはステップ(b)〜(d)はマイクロチャネルが形成された時から約6時間以内に実施される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、複数のマイクロチャネルを対象の皮膚に形成するステップは、マイクロチャネル形成装置によって実施され、マイクロチャネル形成装置は、
(i)複数の電極を含む電極カートリッジと、
(ii)複数の電極が皮膚の第1の領域の近傍にあるとき、(i)の複数の電極間に電気エネルギーを印加するように適合され、複数の電極の下にある皮膚の第1の領域で角質のアブレーションを可能にし、それにより複数のマイクロチャネルを形成する制御ユニットを含む本体とを備える。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、電極は約30から約150マイクロメートルの直径を有する。別の実施形態によれば、電極は約40から約100マイクロメートルの直径を有する。例示的な実施形態によれば、電極は約80マイクロメートルの直径を有する。他の実施形態によれば、電極は約30から約500マイクロメートルの長さを有する。いくつかの実施形態によれば、電極は約40から約150マイクロメートルの長さを有する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、マイクロチャネル形成装置の制御ユニットは、電流或いは1つ又は複数のスパークを生成する。別の実施形態によれば、マイクロチャネル形成装置の制御ユニットは、電流又はスパーク生成を制御し、それで複数のマイクロチャネルの幅、深さ及び形状を制御するように、電極に送達される電気エネルギーの大きさ、周波数及び/又は期間を制御する回路を含む。好ましくは、マイクロチャネル形成装置の制御ユニットによって印加される電気エネルギーは無線周波数のものである。
【0024】
現在の好ましい実施形態によれば、マイクロチャネル形成装置の電極カートリッジは、均一の形状及び直径を有する複数のマイクロチャネルを形成する。好ましくは電極カートリッジは取り外し可能である。より好ましくは、電極カートリッジは1回使用後に廃棄され、そのため本体への取り付け及びその後の本体からの取り外しが簡単であるように設計されている。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、形成されたマイクロチャネルは、約75マイクロチャネル/cmから約450マイクロチャネル/cmの密度を有する。いくつかの実施形態によれば、形成されたマイクロチャネルは、約75マイクロチャネル/cmから約300マイクロチャネル/cmの密度を有する。ある例示的な実施形態によれば、形成されたマイクロチャネルの密度は約150マイクロチャネル/cmである。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、薬剤をイオントフォレーシスにより送達するために、当技術分野で既知のイオントフォレーシス送達デバイスを使用することができる。イオントフォレーシスによる送達のために加えられる電気エネルギーは、低電圧の直流電流であり、イオントフォレーシスデバイスの電極アセンブリの大きな表面積に放散されるので、電流密度は低いことを理解されたい。対照的に、マイクロチャネル形成装置の電極に印加される電気エネルギーは高電圧で無線周波数であり、電極の小さな表面積に放散されるので、電流密度は高い。したがって、マイクロチャネル形成装置の電極に印加される電気エネルギーは対象の皮膚にマイクロチャネルを形成することができる一方、イオントフォレーシスによる送達のために印加される電流はそのようなマイクロチャネルを形成することができないが、薬剤の移動を促進することができる。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法によって送達される薬剤物質は、抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染剤、鎮痛剤及び鎮痛剤の組合せ、麻酔剤、抗関節炎剤、抗喘息剤、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、抗下痢剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗偏頭痛製剤、抗運動疾患製剤、制吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン薬、抗掻痒薬、抗精神病薬、解熱剤、消化器及び泌尿器を含む鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経作用薬、キサンチン誘導体、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、抗不整脈剤、血圧降下剤、利尿薬、全身、冠動脈、末梢及び大脳を含む血管拡張剤を含む心血管製剤、中枢神経系刺激剤、咳及び風邪抑制剤、充血除去剤、診断薬、ホルモン、睡眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、精神刺激薬、鎮静剤及び精神安定剤からなる群から選択される。
【0028】
他の実施形態によれば、薬剤は、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、トランスフォーミング成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、骨形態形成タンパク質、赤血球生成促進因子、造血成長因子、黄体形成ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子及びフォンヴィレブランド因子などの凝固因子、タンパク質C、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、ウロキナーゼなどのプラスミノーゲン活性化因子、及び組織型プラスミノーゲン活性化因子などの抗凝固因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、コラーゲン、コラーゲンドメイン、ミュラー型阻害剤、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモン又は成長因子のレセプター、インテグリン、タンパク質A、タンパク質D、リウマチ因子、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5及び−6(NT−3、NT−4、NT−5及びNT−6)などの神経栄養因子、CD−3、CD−4、CD−8及びCD−19などのCDタンパク質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン−α、−β及び−γなどのインターフェロン、M−CSF、GM−CSF及びG−CSFなどのコロニー刺激因子(CSFs)、IL−IからIL−IOなどのインターロイキン(IL)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、分解促進因子、AIDSエンベロープの一部などのウイルス抗原、輸送タンパク質、アドレシン、調節タンパク質、抗体、それらの類似体、断片及び薬剤として許容される塩からなる群から選択されるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である。
【0029】
例示的な実施形態によれば、薬剤はヒトインスリン及びヒト成長ホルモン(hGH)からなる群から選択されるポリペプチドである。
【0030】
他の実施形態によれば、薬剤リザーバはさらに、ポリマー材料、電解質、防腐剤、溶解剤、吸収促進剤及び酵素阻害剤からなる群から選択される成分の少なくとも1つを含む。
【0031】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の図面、説明、例及び特許請求の範囲と関連させて、より詳しく理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、対象の皮膚を通じて薬剤を効果的に経皮的に送達するための方法を提供する。
【0033】
第1の態様によれば、本発明は、対象に薬剤を経皮的に送達するための方法において、
(a)対象の皮膚の第1の領域に複数のマイクロチャネルを形成するステップと、
(b)第1の電極アセンブリを、複数のマイクロチャネルが存在する対象の皮膚の第1の領域に置くステップであって、第1の電極アセンブリが第1の電極及び薬剤を含有する薬剤リザーバを含み、薬剤リザーバが第1の電極と電気的に接続されているステップと、
(c)第2の電極アセンブリを対象の皮膚の第2の領域に置くステップであって、第2の電極アセンブリが第2の電極及び電解質リザーバを含むステップと、
(d)電源と(b)の第1の電極及び(c)の第2の電極との間に電気エネルギーを印加するステップであって、第1及び第2の電極が電源に電気的に接続されており、それにより前記複数のマイクロチャネルを通じて対象の皮膚内へと薬剤をイオントフォレーシスにより送達するステップとを含む、方法を提供する。
【0034】
本明細書で使用される「経皮的」送達という用語は、薬剤の送達部位を意味する。一般に、送達は血液循環を意図する。ただし、送達は表皮内又は真皮内送達、すなわち、例えば真皮メラニン細胞又は真皮皮脂腺など、角質の下にある表皮又は真皮層への送達をそれぞれ含むことができる。
【0035】
本出願の文脈において使用される「マイクロチャネル」という用語は、一般に皮膚表面から角質の全部又は大部分を通って延び、分子がそこを通って拡散することのできる通路のことをいう。
【0036】
予想外なことに、皮膚にマイクロチャネルを形成し、次いでマイクロチャネルを形成した同じ領域にイオントフォレーシスを適用したほうが、皮膚にこれらの経皮的送達法のうち1つだけを実施するより、薬剤の高い送達性及び生物学的利用能が達成されたことをここで開示する。本発明の原理を具体的に、ヒトインスリン及びヒト成長ホルモン(hGH)などの高分子を使用して、以下に例示する。ただし、本発明の方法は以下に挙げる高分子と同様に低分子にも適用可能であることが理解されよう。
【0037】
角質を通じて表皮内へとマイクロチャネルを形成することによって、分子は、生組織に到達するために角質内部又は角質を通過する蛇行する細胞間経路を通る必要がなくなる。これは次のことを示している:
−分子の送達が主にマイクロチャネルを通じて行われる。
−製剤に浸透促進剤を含める必要がない。浸透促進剤は角質の構造を破壊し、角質を通過する分子の可溶性を増加させる。しかし、その場合、それは紅斑、浮腫又は掻痒などの望ましくない副作用の一因となる。マイクロチャネル形成中に浸透促進剤を排除することによって、皮膚の安全性が向上し、所望の治療効果が達成される。
−分子の送達は、角質の下にある生組織の親水性環境に分子が到達すると効率的である。
【0038】
本発明は、電流を印加することで角質のアブレーションを誘発することにより、マイクロチャネルを形成するためのデバイス及び方法を組み込み、これは米国特許第6,148,232号、第6,597,946号、第6,611,706号、第6,711,435号、第6,708,060号及び第6,615,079号並びにSintov、A.C.らのJ.Controlled Release 89 311−320,2003に開示されており、参照によってその内容が本明細書に完全に記載されているものとして援用する。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、複数のマイクロチャネルを形成するステップは、マイクロチャネル形成装置によって実施され、マイクロチャネル形成装置は、
(i)複数の電極を含む電極カートリッジと、
(ii)複数の電極が皮膚の第1の領域の近傍にあるとき、(i)の複数の電極間に電気エネルギーを印加するように適合され、一般に電流或いは1つ又は複数のスパークを生成して、複数の電極の下にある第1の領域で角質のアブレーションを可能にし、それにより複数のマイクロチャネルを形成する制御ユニットを含む本体とを備える。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、電極の直径は30から150マイクロメートルの範囲である。別の実施形態によれば、電極の直径は40から100マイクロメートルの範囲である。ある例示的な実施形態によれば、電極アレイ内の電極の直径は80マイクロメートルの範囲である。他の実施形態によれば、電極の長さは30から500マイクロメートルの範囲である。いくつかの実施形態によれば、電極の長さは40から150マイクロメートルの範囲である。
【0041】
別の実施形態によれば、装置の制御ユニットは、電流又はスパーク生成を制御し、それで形成された複数のマイクロチャネルの幅、深さ及び形状を制御するように、電極に送達される電気エネルギーの大きさ、周波数(frequency)及び/又は期間を制御する回路を含む。好ましくは、制御ユニットによって加えられる電気エネルギーは無線周波数(radio frequency)のものである。
【0042】
マイクロチャネル形成装置で形成されたマイクロチャネルは親水性である。いくつかの実施形態によれば、マイクロチャネルの直径は約10から約100マイクロメートルであり、深さは約20から約300マイクロメートルである。したがって、マイクロチャネルによって、皮膚を通してのペプチド、ポリペプチド又はタンパク質など低分子及び高分子の拡散が容易になる。
【0043】
本発明の原理によれば、電極カートリッジは電極アレイを形成する複数の電極を含む。電極アレイは、電気エネルギーを印加すると対象の皮膚の角質内に複数のマイクロチャネルを形成する。しかし、角質に形成されるマイクロチャネルの全体面積は、一般に電極アレイによって覆われる全体面積よりも小さい。本明細書で使用される「複数の」電極又はマイクロチャネルとは、それぞれ2つ以上の電極又はマイクロチャネルをいう。
【0044】
他の実施形態によれば、マイクロチャネル形成装置を対象の皮膚に置いている間に得られる圧力によって、電極に送られる電気エネルギーが起動する。このような動作モードは、皮膚に密着しているときだけ電極の起動が起こることを確実にし、所望のマイクロチャネルの形成を可能にする。
【0045】
マイクロチャネルの数及び直径は、皮膚への送達に所望される薬剤の量に合わせて調整することができる。
【0046】
電極カートリッジは好ましくは取り外し可能である。ある実施形態によれば、電極カートリッジは1回使用後に廃棄され、そのため本体への取り付け及びその後の本体からの取り外しが簡単であるように設計されている。
【0047】
本発明によれば、マイクロチャネルは、細胞を加熱することによって角質をアブレーションするために皮膚に電流を加えることによって形成することができる。スパーク生成、スパーク生成の停止、又は特定の電流レベルは、所望の深さが達成され電流の適用を中止するべきであることを示すフィードバックの形態として使用することができる。これらの適用では、電極は好ましくは、伝導性を有するカートリッジに形成され、及び/又はカートリッジ内に支持されて、マイクロチャネルを角質内で所望の深さに、ただしその深さを超えないで形成し易くする。或いは、電流はスパークを生成せずに角質内にマイクロチャネルを形成するように構成することができる。生成されるマイクロチャネルは均一の形状及びサイズとなる。
【0048】
したがって、本発明によれば、電極を皮膚に接触させ、又は皮膚の近傍で、そこから最大約500マイクロメートルの距離に、維持することができる。他の実施形態によると、マイクロチャネルの形成は、約10kHzから4000kHz、好ましくは約10kHzから約500kHz、より好ましくは約100kHzの電流を印加することによって実施される。
【0049】
別の実施形態によれば、マイクロチャネル形成装置によるマイクロチャネルの形成は、約50マイクロチャネル/cmから約400マイクロチャネル/cmのマイクロチャネル密度を達成するように実施される。いくつかの実施形態によれば、マイクロチャネルの密度は約75マイクロチャネル/cmから約200マイクロチャネル/cmである。例示的な実施形態によれば、マイクロチャネル密度は約150マイクロチャネル/cmである。
【0050】
例示的な実施形態によると、以下でViaDermと称するマイクロチャネル形成装置は、次の構成要素を含む:
1.本体の遠位端に取り付けられた微小電極のアレイを含む、使い捨て式電極カートリッジ、
2.RF電流を生成する制御ユニットを含む再利用式本体。
【0051】
本発明の方法は、薬剤をイオントフォレーシスによって送達するステップを含む。薬剤を本発明に従って送達するために、既知のイオントフォレーシス送達デバイスを使用することができ、例えば米国特許第4,250,878号、第4,383,529号、第4,419,092号、第4,477,971号、第4,474,570号、第4,744,787号、第4,747,819号、第5,087,242号、第5,135,477号、第5,374,241号、第5,415,628号、第5,558,632号、第5,681,580号、第5,730,716号、第5,846,217号、第6,169,920号、第6,317,629号、第6,629,968号、第6,643,544号、第6,731,977号及び第6,775,569号を参照によって全体が本明細書に記載されているものとして援用する。
【0052】
一般に、イオントフォレーシス送達デバイスは、第1の電極アセンブリ又はイオントフォレーシスパッチを含み、第1の電極アセンブリ又はイオントフォレーシスパッチは、活性又はドナー電極、及びイオントフォレーシスにより送達する薬剤を収容する薬剤リザーバを含む。第1の電極アセンブリ又はパッチ、特に薬剤リザーバは、対象の皮膚に薬剤を移動するように配置されるよう適合されている。「電極アセンブリ」及び「イオントフォレーシスパッチ」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲を通して互換的に使用され、活性又はドナー電極及び薬剤リザーバを意味する。デバイスはまた、イオントフォレーシスパッチに近接するか、その付近にあるか、又はそこから離間した位置で、電気的に皮膚と接触するように配置されるよう適合された、電解質リザーバを含む第2の又は対電極アセンブリを備える。さらに、デバイスは電力源を含む。電極及び電源は電気的に連結しており、対象の皮膚に電流を伝導するように電極アセンブリが配置されるとき閉回路を形成する。
【0053】
第1及び第2の電極アセンブリは互いに近接し、又は付着することができ、したがって第2の電極アセンブリは第1の電極アセンブリから離間されるというよりは近接して配置されることが理解されよう。
【0054】
ドナー又は活性電極は、薬剤の送達のために薬剤リザーバ内へと電流を運ぶ。薬剤はイオン化することができ、又はイオン化可能な薬剤とすることができ、又は電荷を持たない薬剤とすることができる。ドナー電極は、不活性材料、及び犠牲的又は電気化学的な材料の両方を含む多様な導電材料から作製される。
【0055】
不活性な導電材料とは、本発明のイオントフォレーシスデバイスに使用されるとき、それ自体が電気化学的反応を起こさず又は生じない導電材料である。したがって不活性材料は、電流を流すことによって腐食又は劣化せずに電流を流し、水の還元又は酸化のいずれかによりイオンを生成することによって電流を伝導する。不活性導電材料は一般に、例えばステンレス鋼、プラチナ、金、及び炭素又はグラファイトを含む。
【0056】
或いは、ドナー電極は犠牲的導電材料から作製することができる。材料は、イオントフォレーシスデバイスで電極として使用されるとき、酸化又は還元により材料が侵食又は劣化する場合、犠牲的であるとみなすことができる。そのような侵食又は劣化は、例えば銀電極が塩化物イオンを含む製剤と共に使用されるときなど、イオントフォレーシスデバイスで使用される材料及び製剤が特定の電気化学的反応を可能にするときに起きる。この場合、電極は水の電気分解を起こさないが、それ自体が酸化又は還元される。
【0057】
一般に、陽極では、犠牲材料は銀、亜鉛、銅等の酸化可能金属を含む。不活性材料により電気化学的に生成されたヒドロキシ及びヒドロニウムイオンと対照的に、犠牲材料により電気化学的に生成されたイオンは、材料の酸化によって生じた金属陽イオンを含む。金属/金属塩の陽極を使用することもできる。そのような場合、金属は酸化されて金属イオンを生じ、次いで不溶性の塩として沈殿する。
【0058】
陰極では、電極を、適切な電解質組成を提供する任意の導電材料から作製することができる。例えば、陰極電極は金属/金属塩材料から作製することができる。好ましい陰極材料は銀/ハロゲン化銀材料である。このような実施形態では、ハロゲン化金属塩は好ましくは電解質として使用される。他の実施形態では、陰極材料は層間材料であるアマルガム、又は水の還元電位より低い電位で溶液からナトリウムなど電解質の陽イオンを生成することができる他の材料とすることができる。したがって、硝酸銀又は硫酸亜鉛などの適切な金属塩が電解質リザーバ内の溶液にあるとき、銀、銅、亜鉛、及びニッケル、並びに炭素などの他の材料を使用することができる。
【0059】
一般に、薬剤リザーバは送達する薬剤物質を収容し、対リザーバは適切な電解質を収容する。或いは、イオントフォレーシスデバイスは各リザーバに薬剤を収容することができ、そのような方法では両方の電極アセンブリがドナー電極アセンブリとして機能する。例えば、薬剤の陽イオンを陽極電極アセンブリから皮膚を通して送達することができ、薬剤の陰イオンを陰極電極アセンブリから導入することができる。
【0060】
一般に、イオントフォレーシスデバイスでは、電解質リザーバはドナー又は活性電極と電気的に連結して配置される。電気接触は、電流を印加した際ドナー又は活性電極からの電子が電解質リザーバのイオンと交換されることを必要とする。
【0061】
電解質リザーバは、少なくとも1つの電解質、すなわちドナー又は活性電極に向かって又はそこから離れるように電流を伝導するように作用することのできる、イオン又はイオン化可能な成分を含む。一般に、電解質は1つ又は複数の可動イオンを含み、その選択は所望の用途に依存する。適切な電解質の例にはNaClなどの塩の水溶液がある。他の電解質には、限定はされないがカリウム(K)、塩化物(Cl)及びリン酸(PO)などの生理的なイオンの塩が挙げられる。塩及びその濃度は、特定の用途に所望されるように選択することができる。限定はされないがキレート剤、(例えば、非イオン、陽イオン又は陰イオンの)界面活性剤、緩衝剤、イオン性賦形剤、浸透圧調整剤、防腐剤、酵素阻害剤等を含む他の成分を、電解質リザーバに追加することができる。
【0062】
或いは、電解質リザーバは、電気化学的に生成されるイオンとともに可溶性の塩を形成する対イオン(cunter ions)を収容することができる。例えば、銀陽極を使用するデバイスでは、適切な対イオンは酢酸又は硝酸とすることができる。このような対イオンは、電気化学的に生成されたイオンを隔離するために他の手段が設けられるときに有用である。
【0063】
したがって、電解質リザーバは、電流を伝導させることを可能とするため、電気化学的に生成されたイオンと同じ電荷の少なくとも1つのイオンと、少なくとも1つの反対電荷イオンとを提供することができる。
【0064】
薬剤を含む薬剤リザーバは、皮膚とイオンにより連通し、ドナー又は活性電極と電気的に接触しなければならない。薬剤リザーバの構造は、所望の用途によって様々とすることができる。薬剤リザーバは液体、半液体、半固体又は固体材料を含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、薬剤リザーバはゲル又は他のポリマー材料などの固体又は半固体材料を含む。イオントフォレーシスゲルは、カラヤガム、他の多糖ゲル、又はイオンを輸送することが可能な類似の親水性の水性ゲルとすることができる。そのようなゲルの特定の例には、ポリビニルアルコール、ポリメチルピロリジンメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリヘミア、ポリヘミア誘導体等を含む。選択されるマトリクスは、対象の皮膚に炎症を起こさない非炎症性、皮膚との良好な電気的接触が得られる適切な導電性、及び薬剤の担体媒体として作用する能力を有するものとする。薬剤リザーバは、イオントフォレーシスにより送達する薬剤が中に分散されているポリマーフィルムを含むことができる。送達する薬剤の可動性は、電流を印加することによって実質的に増加し、標的の皮膚を通る効果的な送達を可能にする。薬剤の緩衝剤との溶液を準備することが望ましいといえる。薬剤のイオンと同様の電荷の緩衝剤のイオンは、イオンの可動性が低い。
【0066】
薬剤は、陽極、陰極の一方から、又は両方から同時に送達することができる。例えば、体内へ送り込まれる薬剤が正の電荷である場合、正極又は陽極は活性電極となり、負極又は陰極は電気化学的回路を完成するように機能する。或いは、送達される薬剤が負の電荷である場合、負極は活性電極となり、正極は対電極又は中性電極となる。
【0067】
イオントフォレーシスでは、電気エネルギーが電源からイオントフォレーシス電極対(活性電極又はドナー電極及び対電極)に加えられる。加えられる電気エネルギーの期間は約30分から約20時間の間で変更することができる。ただし電気エネルギーは、薬剤の治療的に有効な濃度を得るのに十分な送達を達成するように、より短い時間又はより長い時間加えることができる。薬剤の治療的に有効な用量を投与するための適切な電流密度は、約0.01から約0.5mA/cmの範囲とすることができるが、より低い又はより高い電流密度もまた、本発明に包含されている。
【0068】
電荷を持たない不溶性又は溶解度の低い薬剤は、電気浸透プロセスによって移動させることができる。電気浸透は、電荷を持たない及び/又は高分子重量の分子を、イオントフォレーシスプロセスでの電極の反応を介して皮膚内部にイオンフラックスにより輸送する主要なメカニズムである。
【0069】
薬剤リザーバはまた、薬剤リザーバの上部に配置された適切な裏打ちフィルム(backing film)を含む。裏打ちフィルムは、リザーバを汚染又は損傷から保護する。
【0070】
薬剤リザーバは、薬剤リザーバの下側に接着剤で固定することのできる剥離ライナー(release liner)を任意に含む。剥離ライナーは、デバイスが使用されていないとき、皮膚と接触する薬剤リザーバの表面を汚染及び損傷から保護する。デバイスの使用準備ができる時、デバイスを対象に装着するために薬剤リザーバの皮膚接触面を露出するように剥離ライナーを剥離すればよい。
【0071】
イオントフォレーシスデバイスは、薬剤を対象の皮膚内へと送り込むための電位をもたらすために、少なくとも2つの電極を必要とする。両方の電極は皮膚と密接に電気接触するように配設されており、それにより、イオントフォレーシスデバイスの陽極及び陰極によって形成される電気化学的回路が完成する。陽極及び陰極はさらに、薬剤を体内に送達する活性電極として定義することもできる。中性又は対電極は、電気化学的回路を完成するように機能する。例えば、カラヤゲル電極、上述の電極、又は当技術分野で既知の電極など、様々なタイプの対電極を使用することができる。
【0072】
一般に、電極アセンブリの結合された皮膚接触面は、約1cmから約200cmとすることができるが、一般的には約1から50cmである。
【0073】
本発明に従って経皮的に送達される薬剤は、所望の、通常は有益な効果をもたらすように対象に送達される、何らかの薬剤とすることができる。本発明の方法によって送達することのできる薬剤は、限定はされないが、抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染剤、鎮痛剤及び鎮痛剤の組合せ、麻酔剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗下痢薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗偏頭痛製剤、抗運動疾患製剤、制吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン薬、抗掻痒薬、抗精神病薬、解熱剤、消化器及び泌尿器を含む鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経作用薬、キサンチン誘導体、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、抗不整脈剤、血圧降下剤、利尿薬、全身、冠動脈、末梢及び大脳を含む血管拡張剤を含む心血管製剤、中枢神経系刺激剤、咳及び風邪抑制剤、充血除去剤、診断薬、ホルモン、睡眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、精神刺激薬、鎮静剤及び精神安定剤を含む。アンチセンスDNA及びポリヌクレオチドを本発明の原理に従って送達することもできる。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、限定はされないが、アンギオテンシンII拮抗剤、ブラジキニン、及び組織プラスミノーゲン活性剤などの心血管活性ペプチド及びタンパク質;コレシストキニン(CCK−8又はCCK−32)、デルタ睡眠誘導ペプチド(DSIP)、β−エンドルフィン、メラニン細胞抑制因子−I、メラニン細胞刺激ホルモン、ニューロペプチドY及び神経成長因子などのCNS活性ペプチド及びタンパク質;ガストリン拮抗剤、ニューロテンシン、膵臓酵素、ソマトスタチン並びにオクトレオチドなどのその類似体などのGI−活性ペプチド及びタンパク質;コロニー刺激因子、シクロスポリン、エンケファリン、インターフェロン、ムラミルジペプチド、サイモポイエチン及び腫瘍壊死因子などの免疫調節ペプチド及びタンパク質;成長ホルモン、ゴナドトロピン、インスリン、カルシトニン並びにエルカトニンなどのその類似体、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、オキシトシン、甲状腺刺激放出ホルモン(TRH)、カルシトニン遺伝子関連因子及びバソプレシンなどの代謝調節ペプチド及びタンパク質;表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子I及びII(IGF−I及びII)、インターロイキン−2(IL−2)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、軟骨由来成長因子、コロニー刺激因子(CSFs)、内皮細胞成長因子(ECGFs)、赤血球生成促進因子、線維芽細胞由来成長因子(FDGF)、線維芽細胞成長因子(FGFs)、グリア成長因子(GGF)及び副甲状腺ホルモン(PTH)などのポリペプチド成長因子、その類似体、誘導体、フラグメント及び医薬的な塩を含むペプチド、ポリペプチド及びタンパク質の経皮的送達に有用である。
【0075】
「ペプチド」とは、モノマーがアミド結合によって互いに連結したアミノ酸であるポリマーをいう。「ペプチド」とは一般にポリペプチドより小さく、一般に全体で30〜50アミノ酸より少ないものをいう。
【0076】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸の単一ポリマーであり、一般に50アミノ酸を超えるものをいう。
【0077】
本明細書で使用される「タンパク質」とは、アミノ酸の2つ以上のポリマーであり、一般にそれぞれが50アミノ酸を超え、アミド結合によって互いに連結されているものをいう。自然発生したペプチド、ポリペプチド及びタンパク質のプロドラッグ型、その類似体、誘導体及びフラグメントも企図されている。
【0078】
本明細書で使用される「フラグメント」という用語は、自然発生タンパク質の全長の一部のみを含むペプチド又はポリペプチドをいう。
【0079】
本明細書で使用される「類似体」という用語は、アミノ酸の置換、追加、削除又は化学的修飾によって変化した配列を含むペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をいう。
【0080】
ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質が自然発生分子の生物学的活性を維持している限り、「アミノ酸置換」を使用することにより、当技術分野で知られている保存アミノ酸置換及び/又は非保存アミノ酸置換がペプチド、ポリペプチド又はタンパク質内でなされることを意味する。例えば、自然発生したペプチド、ポリペプチド又はタンパク質内の1つ又は複数のアミノ酸残基を、機能的等価物として作用する、同じ極性の別のアミノ酸で置換することができ、これによりサイレント変化がもたらされる。タンパク質内のアミノ酸置換は、アミノ酸が属するクラスの他の種類から選択することができる。例えば、無極性(疎水性)のアミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンがある。極性が中性のアミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンがある。正電荷(塩基性)のアミノ酸には、アルギニン、リシン及びヒスチジンがある。負電荷(酸性)のアミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸がある。
【0081】
アミノ酸残基の化学的修飾には、限定はされないがグリコシル化、酸化、永久的なリン酸化、還元、ミリスチル化、硫酸化、アシル化、アセチル化、ADP−リボシル化、アミド化、環化、ジスルフィド結合形成、ヒドロキシ化、ヨウ化、メチル化、保護/阻害基による誘導体化、又は当技術分野で既知の他の誘導体化法がある。
【0082】
本発明の範囲内には、アミノ又はカルボキシ末端又は側鎖の一方でペプチド結合によって別のタンパク質のアミノ酸配列に結合された自然発生ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、そのフラグメント又は類似体を含む、キメラ又は融合タンパク質が含まれる。
【0083】
本発明の薬剤は塩の形で調合することができる。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から誘導された遊離アミノ基で形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導された遊離カルボキシル基で形成されたものを含む。
【0084】
「薬学的に許容される」という用語は、連邦又は州政府の規制局によって承認され、或いは米国薬局方に、又は動物、より詳細にはヒトでの使用が一般に認識されている他の薬局方に記載されていることを意味する。
【0085】
本発明によれば、薬剤は、対象に投与するために、水、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤等の薬学的に許容される担体に溶解しなければならない。薬剤リザーバは、導電性、pH調整、緩衝及び/又は皮膚保護効果を与えるための電解質を含むことができる。薬剤リザーバに含むことのできる他の成分は、限定はされないが、当技術分野で知られている、界面活性剤、溶解剤、防腐剤、イオン交換樹脂、濃縮剤、乳化剤、吸収促進剤、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤及び酵素阻害剤を含む。薬剤物質が化学的に不安定であるとき、薬剤を薬剤リザーバ内で乾燥して保存し、使用前に薬学的に許容される担体によって活性化することができることを理解されたい。
【0086】
本発明によれば、薬剤の「治療的な」量が、例えば皮膚のマイクロチャネルが存在する領域の角質を通じて局所的に送達される。「治療的な」量という用語は、それを必要とする対象の疾患又は機能不全の緩和又は治療など、所望の効果をもたらすために効果的な量をいう。治療的処置に必要な量は、対象の性別、年齢、全身状態、治療する症状の重症度、調剤のタイプ及び当技術分野で知られている他の因子によって、対象ごとに様々である。
【0087】
本発明によれば、薬剤はマイクロチャネルの存在する領域にイオントフォレーシスにより送達される。ただし、薬剤を対象に投与するための方法は、薬剤を皮膚内へ局所的に導入する効率を高めることができる追加のステップを、任意でさらに含むことができる。このようなステップには、機械的又は物理的作用或いは本発明の薬剤の浸透を高める組成物を含むことができる。
【0088】
本発明によれば、薬剤のイオントフォレーシスによる送達は、皮膚のマイクロチャネルが合理的に密集して時間内に形成された領域で実施される。好ましくは、イオントフォレーシスによる送達はマイクロチャネルの形成後すぐに実施される。ただし、薬剤のイオントフォレーシスによる送達は、マイクロチャネルが開通している限り必要な回数を実行することができ、すなわち、薬剤のイオントフォレーシスによる送達はマイクロチャネルを形成してから約24時間以内、好ましくはマイクロチャネルを形成してから約10時間以内、より好ましくはマイクロチャネルを形成してから約6時間以内に実施することができる。
【0089】
以上、本発明を一般的に説明したが、例示を使用して示されるが本発明を制限するものではない以下の例を参照すると、これをより理解しやすくなるであろう。
【実施例】
【0090】
皮膚の外側層を通ってRF−マイクロチャネル(商標)を形成するために、ViaDerm(商標)法(Sintovら、J.Controlled Release 89:311−320,2003参照)で無線周波数(RF)の電流を使用した。精密な寸法を有するこれらのマイクロチャネルによって、分子が皮膚を通って、かつ皮膚内部へ、制御下で通過することが可能になった。
【0091】
機器及び材料
マイクロチャネルをブタの皮膚に形成するために、ViaDerm法を使用した(Sintovら、J.Controlled Release 89:311−320,2003参照)。
簡単にいうと、ViaDermは以下の構成要素を含む:
1.本体の端部に取り付けられた微小電極のアレイを含む、使い捨て式電極カートリッジ、
2.RF電流を生成する制御ユニットを含む再利用式本体。
【0092】
(実施例1)
ViaDerm及びイオントフォレーシスによるインスリンの経皮的送達
機器及び材料
本実験には75電極/cmの密度の電極を含むViaDermデバイスを使用した。マイクロチャネルの密度が150/cmになるように、デバイスを各位置に2回適用した。電極アレイの各電極の直径は80μmであった。印加電圧290V、周波数100kHz、1バースト、バースト長9ミリ秒、電極間の追加時間25ミリ秒、電流制限なし、スプリング1.6kgで皮膚を処置した。総面積11.2cmに適用するために8つの部位を使用した。
【0093】
イオントフォレーシスパッチ(すなわち、電極アセンブリ)は、Iomedから入手した(Trans Q1(登録商標)、Iomed、米国)。パッチに電気エネルギーを送るために電源を使用した。イオントフォレーシス適用のパラメータは次の通りであった:電流密度0.18mA/cmスポンジ(合計1.4mA)、電流上昇時間(0から最大)20秒、及び電流適用時間1.5時間。3つのパッチを各1.5時間、連続して適用した。4.5時間のイオントフォレーシス処置の終了時に、電源を切り、最後のパッチを皮膚部位に残した。
【0094】
ヒト組み換えインスリン類似体Humalog(登録商標)(Lispro−100IU/ml)をLilly(Lilly France S.A.、Fegershein、フランス)から購入した。
【0095】
生理食塩水輸液バッグ、50% w/vデキストロースアンプル(20ml)及び5% w/vデキストロース輸液バッグをTeva−Medical(Teva−Medical、イスラエル)から購入した。輸液ポンプ(Infutec 500(登録商標)、Infutec 2000 Medical systems、Lod、イスラエル)及び輸液投与ビオレット(20滴/ml、Plasti−Medical S.p.a、Villamaranza、イタリア)を使用した。Glucometer(登録商標)及び血糖値試験ストリップを使用した(Ascensia Elite、Bayer)。
【0096】
実験方法
大型の雄の白ブタ(各10〜15kg)に、実験前24時間の絶食を行った。Ketamine(10〜20mg/kg)及びXylazine 10%(2〜4mg/kg)で麻酔を実施し、ハロタンで維持した。あらかじめ挿入した2つの頚動脈カニューレから血液試料を抽出した:一方はデキストロース注入に使用し、他方は血糖値及びインスリン値の試験に使用した。
【0097】
血糖値はカニューレ挿入直後及び5〜15分ごとに測定した。血糖値は20%デキストロース溶液の注入によって約40〜50mg/dLに維持した。インスリン分析のための血液試料は、10〜16時間の間、1時間ごとに採取した。血漿インスリン値はELISAキット(Isoinsulin ELISA 10−1128−01、Mercodia、Uppsala、スウェーデン)を使用して分析した。台形法を使用して濃度曲線下面積(AUC)を計算した。以下の式に従って、SC値に対する用量効率を計算した。
(AUC群/用量群)/(AUCsc/Dosesc)>100=用量効率(%)
【0098】
以下の4つの実験群を調査した:
第1群−無処置の皮膚にイオントフォレーシス:イオントフォレーシスパッチを1.5ml(150IU)のHumalog(Insulin−Lispro、100IU/ml)に浸漬した。3つのパッチを連続して使用し、それぞれ90分間適用した。投与したインスリンLisproの総用量は450IUであった。
第2群−皮膚をViaDermで処置(受動的拡散):ViaDermを8つの隣接した部位に適用し、150IUのインスリンLisproを含むイオントフォレーシスパッチで覆った。3つのパッチを連続して使用し、それぞれ90分間適用した。投与したインスリンLisproの総用量は450IUであった。電源は入力しなかった。
第3群−皮膚にViaDerm処置及びイオントフォレーシス:ViaDermを8つの隣接した部位に適用し、150IUのインスリンLisproを含むイオントフォレーシスパッチで覆った。3つのパッチを連続して使用し、それぞれ90分間適用した。投与したLisproの総用量は450IUであった。電源を入力した。
第4群−インスリン10IUを皮下注射
第I、III及びIV群では3匹のブタを試験し、第II群では1匹のブタを試験した。
【0099】
結果
ブタへのインスリンの経皮的送達の結果を図1に示し、表1にまとめた。ViaDerm及びイオントフォレーシス法を適用したとき、相乗効果が得られた。ViaDerm及びイオントフォレーシスで処置したブタには高い血漿インスリン値が測定され(図1)、用量効率はSC注射と比べて18%であった(表1)。無処置の皮膚にイオントフォレーシスを適用すると、血中のインスリン値がごくわずかに上昇した(図1)。ViaDermで処置した皮膚を通したイオントフォレーシスパッチによるインスリンの受動的拡散は、ViaDerm及びイオントフォレーシスで得られたインスリン送達より約20倍低かった。
【表1】

【0100】
(実施例2)
麻酔下のラットにおけるViaDerm及びイオントフォレーシスによるhGHの経皮的送達
本実験は、Iogel(登録商標)(Iomed LTD)パッチを使用したイオントフォレーシスが、ViaDermで処置した皮膚への同じ電極からの受動的送達と比較して、hGHの経皮的浸透を増加することが可能かどうかを試験することを目的とした。2つの群のラットを試験した。注射用の水1.5ml中のhGH(Genotropin(登録商標)、Pharmacia及びUpjohn)1.5mgをそれぞれ充填したIogelパッチ(Demo S.A.、ギリシャ)を両方の群に適用した。一方の群は電源(家屋内に取り付けられた)に接続し、他方は接続しなかった。hGHを充填したパッチを電源の陰極に接続した。
【0101】
実験方法
ラット(雄、300〜325グラム、Sprague Dawley)を実験中、麻酔下に維持した。以下の実験群を調査した:
第1群−受動的送達:3匹のラットに2つの隣接する部位(総面積2.8cm)をViaDermで処置し、その部位の上にイオントフォレーシスパッチを置いた。動物の背部の剃毛した無処置の皮膚に基準電極アセンブリを置いた。電源は入力しなかった。
第2群−イオントフォレーシスによる送達:3匹のラットに2つの隣接する部位(総面積2.8cm)をViaDermで処置し、その部位の上にイオントフォレーシスパッチを置いた。動物の背部の剃毛した無処置の皮膚に基準電極アセンブリを置いた。電源を入力した。
【0102】
ViaDerm動作パラメータ:バースト長−700μ秒;電圧−330V;バースト数−2;同じ皮膚面積に2つの適用(150孔/cm);電流制限なし;電極アレイの直径80μm;使用した電流密度:0.18mA/cm
【0103】
血清中hGH値の検出−Elisaキット(DSL Inc.Webster、TX、米国)を使用した。
【0104】
結果
すべての前処置した経表皮水分損失(TEWL)の値は8.5g/h/mより低く、2つのViaDerm適用では△TEWLが20g/hmを超えていた。本実験で使用した電源は各動物に0.5mAを即座に送達するように設定された(0.18mA/cm)。その電流に達するために2時間5分を必要とした。実験の終わりに、イオントフォレーシスパッチを取り外した後、おそらく接触不十分により電極の接触面に火傷跡が見られる。
【表2】

【0105】
ViaDermのみ(受動的送達)に比べて、ViaDerm及びイオントフォレーシスではhGH浸透が増加するという結果が示された。ViaDerm及びイオントフォレーシスで処置した群ではAUC値は637ng×hr/mlであるのに対し、ViaDermのみの群では182ng×hr/mlであった(受動的送達;3.5倍高い)。
【0106】
表2に示すように、ViaDerm群(受動的送達)における血清hGHのプロフィールは4.5時間後に減少しはじめたが、ViaDerm及びイオントフォレーシス群におけるhGHのプロフィールは実験の全期間中、増加し続けた。本実験のラットは麻酔下にあったことを理解されたい。作用メカニズムに拘束されるものではないが、麻酔は、代謝速度が遅くなり体温の恒常性が変化することから、薬物送達プロフィールに影響を及ぼすことがある。麻酔下の動物は、より多くの熱を外環境へと失い、末梢血管の血管収縮を引き起こし、それによりhGH送達を低下させることがあることが知られている。
【0107】
図2に示すように、hGH送達は6時間を超えて継続した。このことは、この期間中にViaDermによって形成されたマイクロチャネルが開通したままでhGH送達を可能にしたことを示している。
【0108】
本実験の結果は、ViaDerm処置した皮膚でのhGH送達(受動的送達)と比較して、イオントフォレーシスとViaDermの組合せがイオントフォレーシスパッチからのhGHの浸透を有意に増加させたことを明確に示している。
【0109】
(実施例3)
ラットにおけるViaDerm及びイオントフォレーシスによるhGHの経皮的送達
本試験は、より濃度の高いhGH溶液がhGHの送達及び生物学的利用能を向上させることができるかを試験することを目的とした。3つの群:1)ViaDerm処置−受動的送達;2)無処置の皮膚にイオントフォレーシス;及び3)ViaDerm及びイオントフォレーシスが、Iogelパッチに15mgのhGH(1.5ml)を受け、1つの群はIogelパッチに1.5mgを受け(イオントフォレーシス)、別の群−SC群は150μgのhGHを受けた。本実験では、電源を向上させるために、電源(直列ではなく並列接続)を使用した。
【0110】
実験方法
本実験にはラット(雄、250〜300グラム、Sprague Dawley;各実験群に3匹)を使用した:
第1群−受動的送達:ラットの皮膚の2つの隣接する部位をViaDermで処置し、その後15mgのhGH(1.5ml)を含むイオントフォレーシスパッチで覆った。電源は入力しなかった。
第2群−ViaDerm処置を行わずにイオントフォレーシス:15mgのhGHをIogelパッチに充填し、無処置の皮膚に適用した。電源を入力した。
第3群−ViaDerm及びイオントフォレーシス−高用量送達:ラットの皮膚の2つの隣接する部位をViaDermで処置し、その後15mgのhGHを含むイオントフォレーシスパッチで覆った。電源を入力した。
第4群−ViaDer又は及びイオントフォレーシス−低用量送達:ラットの皮膚の2つの隣接する部位をViaDermで処置し、その後1.5mgのhGHを含むイオントフォレーシスパッチで覆った。電源を入力した。
第5群−150μgのhGHをSC注射
【0111】
ヒトGH溶液を12mgのGenotropinバイアル(Genotropin(登録商標)、Pharmacia及びUpjohn)から調合した。血清中hGH値をElisaキット(DSL Inc.Webster TX、米国)を使用して分析した。HPLCを使用してSC溶液を定量した。
【0112】
ViaDerm動作パラメータ:バースト長−700μ秒;電圧−330V;バースト数−2;同じ皮膚面積に2つの適用(150マイクロチャネル/cm);2つの適用部位(総面積2.8cm);電流制限なし;電極アレイの電極の直径80μm。
【0113】
イオントフォレーシス適用のパラメータ:電流密度0.64mA/cm(合計1.8mA)。電流上昇時間(0〜最大)20秒。電流適用時間8時間。
【0114】
臨床観察
ラットの腹部のパッチ適用部位に黒い火傷跡(3度の火傷)が観察された。ViaDermで処置した動物では、hGH濃度に関係なく、一部又は全部のViaDerm適用部位に火傷が見られた。無処置皮膚の動物では、火傷はIogelパッチの丸い金属コネクタの下の領域に限られた。群に関係なく、基準電極部位にも散発的な火傷跡が見られた。電源を入力しなかった動物には火傷跡は見られなかった。
【0115】
結果
すべての前処置したTEWLの値は8.5g/h/mより低く、2つのViaDerm適用では△TEWLが20g/hmを超えていた。
【表3】


【表4】

【0116】
図3並びに表3及び4に示された結果は、イオントフォレーシス単独ではhGH送達を生じないことを実証している。電源を入力しないViaDerm処置群(イオントフォレーシス オフ+ViaDerm;受動的送達)と、イオントフォレーシスを適用するViaDerm処置群(イオントフォレーシス オン+ViaDerm)のhGH送達の比較では、イオントフォレーシスを入力したときに送達されるホルモンの量が有意に高いことが示された。Iogelパッチからの送達プロフィールは時間経過に伴って一定の増加を示し、Iogelパッチ内でのhGHの安定性を示唆した。
【0117】
2つの濃度群間の比較は、高濃度のhGHの使用が有利であることを明確に示している。この利点は送達されるhGHの量では実証されたが、生物学的利用能では実証されず、1.5mg hGH群のほうが高かった。
【0118】
皮膚の火傷跡は、おそらく電流を長時間加えたために起きた。本実験で記載された電流密度では、電極はAgClが消耗するまで約1時間機能すると思われた。その時点の後も電解質は水の加水分解を継続し、おそらくそのプロセスによって火傷跡が生じた。
【0119】
(実施例4)
麻酔下のブタにおけるViaDerm及びイオントフォレーシスによるhGHの経皮的送達
本試験はViaDerm及びイオントフォレーシス法を使用して、ブタでのhGHの経皮的送達を調べることを目的とした。ViaDerm適用は、80μm電極及び2バーストを使用して、それぞれのブタの耳の辺縁で8つの隣接部位で実施した。hGHイオントフォレーシスパッチを連続して5回取り替えた。
【0120】
実験方法
2つの群のブタ(雄、10〜15kg、大型の白ブタ)を試験した:
第1群:SC(250μg)−ブタ3匹(3、9及び25番)
第2群:ViaDerm後、イオントフォレーシスを5回適用し、各イオントフォレーシスパッチに22.5mg(22.5×5;合計112.5mg)−ブタ3匹(19、20及び21番)
【0121】
結果
【表5−1】


【表5−2】


【表6】


図4及び表6に示すように、SC群は平均AUC値90.3ng×hr/mlであった。
【0122】
ViaDerm及びイオントフォレーシス群は、5つのパッチを連続して使用した(AUC210.3ng*hr/ml、Tmaxは5〜7時間、Cmaxは32.8ng/ml)。ViaDermとイオントフォレーシス法の組合せによって送達されたhGHの量は、SC注射によって送達された量より有意に高く、システムの利点を実証した。
【0123】
本試験で使用した市販のパッチは多い充填量(1.5ml)を必要とし、そのため高いhGH濃度(電極あたり22.5mg hGH)を使用したことを理解されたい。さらに、市販のパッチは皮膚との接触を増加するゲルを含んでいた。ただし、ゲルはおそらくタンパク質の送達を減少させたと思われる。
【0124】
また、最後の2つのイオントフォレーシスパッチの適用はhGHの送達を有意に向上させることはなく、そのため、この結果は3つのイオントフォレーシスパッチの適用だけでも同様のhGH送達が得られ、結果的に全体の効率が高くなることを示唆している。
【0125】
処置群では薬剤電極でも基準電極でも炎症は観察されなかったことにも留意されたい。イオントフォレーシスパッチでのpH値は安定しており、実験を通して6〜6.5の間であった。
【0126】
実験中、電圧値を一定に保つために基準電極を生理食塩水で常に湿らせる必要があった。これは、おそらくブタではヒトよりも皮膚が乾燥しており汗が少ないためであろう。基準電極はヒトでの使用が承認されているので、ヒトでは湿り気の問題は起きないと考えられる。
【0127】
(実施例5)
ヒトの被験者におけるViaDerm及びイオントフォレーシスによるインスリンの経皮的送達
本試験は、ViaDerm(商標)デバイスでの皮膚処置と組合せたイオントフォレーシスによる薬剤送達デバイスから経皮的に送達されるインスリンの薬物動態及び薬物力学プロフィールを調べ、インスリンの薬物動態及び薬物力学プロフィールを、ヒトの被験者でユーグリセミッククランプ法を使用して、イオントフォレーシスシステムのみ、又はViaDerm処置のみによって得られたものと比較することを目的とした。
【0128】
インスリン(150IUのHumalog Lispro−100)をイオントフォレーシスパッチに充填した(パッチあたり7.5cm)。
【0129】
ViaDerm動作パラメータ:9ミリ秒で290V。アレイは1.4cmのマトリックスに配置。電極アレイの各電極は直径80マイクロメートル、長さ95マイクロメートルの円筒形。電極の密度は75電極/cm。デバイスを各位置に2回適用し、したがって形成されたマイクロチャネルの密度は150/cmとなった。
【0130】
様々な時点で血液試料を抽出し、血糖値(Accutrend Sensor、Roche Diagnostics)及びインスリン値(Insulin kit Insulin radioimmunoassay、INSIK−5、DiaSorin;C−Peptide:double antibody、DPC)を分析した。血糖値は血液抽出の直後にその場で測定した。測定した血糖値に基づいて、グルコースの注入速度を一定に設定しなおし、血糖値を目標グルコースクランプ値である90±10mg/dlに維持した(ユーグリセミッククランプ法)。
【0131】
経皮的送達処置の皮膚安全性は、処置の直後、パッチを取り外した直後及びパッチを取り外してから24時間後に、Primary Irritation Indexスコア(Draizeスコア)を計算して、処置部位の紅斑及び浮腫を測定することによって評価した。
【0132】
試験は、5名の健常な男性被験者の群に3つの異なる経皮的処置及び皮下(SC)処置を行い、処置の間に5日以上のウォッシュアウト期間を置いて、4方向のクロスオーバー試験として実施した:
第1群−ViaDerm及びイオントフォレーシス:ヒトの被験者をViaDerm(商標)デバイスで処置した後、150IUのインスリン類似体(Humalog Lispro−100)を含むイオントフォレーシスパッチを7.5cmの皮膚面積に適用した。1.4mAの電流を270分間加えた。270分後、パッチをさらに450分間その位置に置いたままとした。
第2群−イオントフォレーシス:150IUのインスリン類似体(Humalog Lispro−100)を含むイオントフォレーシスパッチを7.5cmの皮膚面積に適用した。1.4mAの電流を270分間加えた。270分後、パッチをさらに450分間その位置に置いたままとした。
第3群−ViaDerm(受動的送達):ヒトの被験者をViaDerm(商標)デバイスで処置した後、150IUのインスリン類似体(Humalog Lispro−100)を含むイオントフォレーシスパッチを7.5cmの皮膚面積に適用した。パッチを720分間その位置に置いたままとした。電源は入力しなかった。
第4群−SC注射:10Uのインスリン類似体を皮下注射した。
【0133】
結果
血漿インスリン濃度プロフィールは、電流を印加して適用したイオントフォレーシスパッチによる典型的な薬剤送達プロフィールと類似していた。ViaDerm及びイオントフォレーシスの群でのインスリン送達は電流を加えると増加し、電流を切ると減少した。送達された平均総インスリン(Humalog Lispro−100)値は11322μIU×分/ml(AUC;ベースラインのインスリンを引いた後)であった。211分(Tmax)で平均ピーク血漿濃度(Cmax)36.9μIU/mlに到達した。送達されたインスリン量は11単位であった(表7及び図5)。
【0134】
イオントフォレーシスのみで処置したヒトの被験者における血漿インスリン濃度プロフィールは低く、送達されたインスリン値(Humalog Lispro−100)はごくわずかであった(ベースラインのインスリンを引いた後)。この群で送達された平均総インスリン値は213μIU×分/ml(AUC)であった。85分(Tmax)で平均ピーク血漿濃度(Cmax)2.5μIU/mlに到達した。送達されたインスリン量は0.2単位であった(表7及び図5)。
【0135】
ViaDerm処置後に電流を加えずにイオントフォレーシスパッチを適用(受動的送達)すると、血漿インスリン濃度プロフィールは、受動的経皮的パッチによる典型的な薬剤送達プロフィールと同様であることを示した。パッチから経皮的に送達されたインスリンの平均は4436μIU×分/ml(AUC;ベースラインのインスリンを引いた後)であった。211分(Tmax)で平均ピーク血漿濃度(Cmax)12μIU/mlに到達した。送達されたインスリン量が計算され4.3単位であった(表7及び図5)。
【表7】

【0136】
SC群での血漿インスリン濃度プロフィールは、皮下投与における典型的な薬剤送達プロフィールと類似していた。平均インスリン生物学的利用率は10181μIU×分/ml(AUC;ベースラインのインスリンを引いた後)であった。平均時間(Tmax)73分で平均ピーク血漿濃度(Cmax)65.3μIU/mlに到達した。グルコース注入速度を測定することによってこれらの処置の生物作用能(biopotency)を評価した(図6)。
【0137】
皮膚安全性
電流を加えViaDerm処置を行ったイオントフォレーシスパッチ処置群におけるインスリン送達で観察された紅斑及び浮腫のDraizeスコアの分析は、パッチを取り外した24時間後に炎症作用の「わずかな」(8スコア中0.5〜1.9)可能性があることを示した。
【0138】
電流を加えViaDerm処置を行わなかったイオントフォレーシスパッチ処置群におけるインスリン送達で観察された紅斑及び浮腫のDraizeスコアの分析は、パッチを取り外した24時間後に炎症作用の「ごくわずかな」(8スコア中0〜0.4)可能性があることを示した。
【0139】
電流を加えずViaDerm処置を行ったイオントフォレーシスパッチ処置群におけるインスリン送達で観察された紅斑及び浮腫のDraizeスコアの分析は、パッチを取り外した24時間後に炎症作用の「わずかな」(8スコア中0.5〜1.9)可能性があることを示した。
【0140】
結論
イオントフォレーシスパッチを使用したViaDerm前処置と組合せたイオントフォレーシス法の適用は、ViaDerm単独と比較してインスリン送達を2.5ファクター増加した。
【0141】
イオントフォレーシス法を単独で使用した送達は観察されなかった。
【0142】
イオントフォレーシス電流を加えて、及び加えずにViaDermシステムを使用することにより、わずかな紅斑及び浮腫のみが検出された。
【0143】
(実施例6)
ヒトの対象におけるViaDerm及びイオントフォレーシスによるインスリンの経皮的送達
本試験は、ViaDerm(商標)デバイスでの皮膚処置と組合わせイオントフォレーシスによる薬剤送達デバイスから経皮的に送達されるインスリンの薬物動態及び薬物力学プロフィールを調べ、インスリンの薬物動態及び薬物力学プロフィールを、ヒトの対象でユーグリセミッククランプ法を使用して、ViaDerm処置によって得られたものと比較することを目的とした。
【0144】
インスリン(750IUのHumulin−500)をイオントフォレーシスゲルパッチに充填した(TransQ1、Iomed 米国;パッチあたり7.5cm)。
【0145】
ViaDerm動作パラメータ:9ミリ秒で290V。アレイは1.4cmのマトリックスに配置。電極アレイの各電極は直径80マイクロメートル、長さ95マイクロメートルの円筒形。電極の密度は75電極/cm。デバイスを各位置に2回適用し、したがって形成されたマイクロチャネルの密度は150/cmとなった。
【0146】
血液試料を様々な時点で抽出し、血糖値及びインスリン値を分析した。血糖値は血液抽出の直後にその場で測定した。測定した血糖値に基づいて、グルコースの注入速度を一定に設定しなおし、血糖値を目標グルコースクランプ値である90±10mg/dlに維持した(ユーグリセミッククランプ法)。
【0147】
経皮的送達処置の皮膚安全性は、処置の直後、パッチを取り外した直後及びパッチを取り外してから24時間後に、Primary Irritation Indexスコア(Draizeスコア)を計算して、処置部位の紅斑及び浮腫を測定することによって評価した。
【0148】
試験は、5名の健常な男性被験者の群に2つの異なる経皮的処置及び皮下(SC)処置を行い、処置の間に5日以上のウォッシュアウト期間を置いて、3方向のクロスオーバー試験として実施した:
第1群−ViaDerm及びイオントフォレーシス:ヒトの被験者をViaDerm(商標)デバイスで処置した後、750IUのインスリン類似体(Humulin R 500IU)を含むイオントフォレーシスパッチを7.5cmの皮膚面積に適用した。1.4mAの電流を270分間加えた。270分後、パッチをさらに450分間その位置に置いたままとした。
第2群−ViaDerm(受動的送達):ヒトの被験者をViaDerm(商標)デバイスで処置した後、750IUのインスリン類似体(Humulin R 500IU)を含むイオントフォレーシスパッチを7.5cmの皮膚面積に適用した。パッチを720分間その位置に置いたままとした。電源は入力しなかった。
第3群−SC注射:10UのHumulin R(U−100)を皮下注射した。
【0149】
結果
イオントフォレーシス及びViaDermで処置した群のインスリン濃度プロフィールは、電流を加えて適用したイオントフォレーシスパッチによる典型的な薬剤送達プロフィールと類似していた。薬剤送達の開始と電流の適用の間の相関関係及び薬剤送達の減少と電流の停止の間の相関関係は、インスリン送達の迅速なオン/オフがイオントフォレーシス電流の制御を伴うことを明確に示している。この群で送達された外部からの総インスリン値の平均は、24567μIU×分/ml(AUC;ベースラインのインスリンを引いた後)であった。199分(Tmax)で平均ピーク血漿濃度(Cmax)83.0μIU/mlに到達した。送達されたインスリン量は48単位であった(表8及び図7)。
【0150】
ViaDermで処置し電流を加えずにイオントフォレーシスを適用(受動的送達)した群における血漿インスリン濃度プロフィールは、受動的経皮的パッチによる典型的な薬剤送達プロフィールと類似していた。この群で経皮的に送達された外部からの総インスリン値の平均は、8493μIU×分/ml(AUC;ベースラインのインスリンを引いた後)であった。217分(Tmax)で平均ピーク血漿濃度(Cmax)27.0μIU/mlに到達した。送達されたインスリン量が計算され17単位であった(表8及び図7)。
【0151】
10UのHumulin R(U−100)をSC注射した群における血漿インスリン濃度プロフィールは、皮下投与後の典型的な薬剤送達プロフィールに類似していた。この群の外部からの総インスリン生物学的利用率の平均は、5110μIU×分/ml(AUC;ベースラインのインスリンを引いた後)であった。平均時間(Tmax)214分で平均ピーク血漿濃度(Cmax)17.8μIU/mlに到達した(表8及び図7)。
【0152】
グルコース注入速度を測定することによってこれらの処置のバイオポテンシーを評価した(図8)。
【表8】

【0153】
皮膚安全性
パッチを取り外してから最大24時間ViaDerm及びイオントフォレーシス処置を行った群におけるインスリン(Humulin−500)送達の平均Primary Irritation Indexスコアは、パッチを取り外した直後に炎症作用の「わずかな」可能性(0.4<PII<1.9)、パッチを取り外した24時間後に炎症作用の「ごくわずかな」可能性(0<PII<1.9)があることを示し、時間の経過とともに減少する一過性の炎症作用を示唆した。
【0154】
ViaDerm処置後に電流を加えずにイオントフォレーシスパッチを適用した群におけるインスリン(Humulin−500)送達の平均Primary Irritation Indexスコアは、パッチを取り外した直後に炎症作用の「わずかな」可能性(0.5<PII<1.9)、パッチを取り外した24時間後に炎症作用の「ごくわずかな」可能性(0<PII<0.4)があることを示し、時間の経過とともに減少する一過性の炎症作用を示唆した。
【0155】
結論
イオントフォレーシスゲルパッチを使用した、ViaDerm前処置と組合わせたイオントフォレーシス法の適用では、ViaDerm単独と比較して薬剤送達が3ファクター増加した。
【0156】
イオントフォレーシスパッチゲルからViaDermシステムで処置された皮膚の内部へと送達される(受動的送達)インスリンの量は、インスリンの濃度に依存する。インスリンLispro 100IU/mlの受動的送達量は4.3単位であったのに対し(上記の実施例5)、インスリン R 500IU/mlの受動的送達量は16.6単位であった(実施例6)。
【0157】
また、イオントフォレーシスパッチからViaDermで処置された皮膚の内部へと送達されるインスリンの量は、インスリンの濃度に依存する。ViaDerm+イオントフォレーシス群におけるインスリンLispro 100IU/mlの送達量は11単位であったのに対し(上記の実施例5)、ViaDerm+イオントフォレーシス群におけるインスリン R 500IU/mlの送達量は48単位であった。
【0158】
イオントフォレーシス法を単独で使用した送達は観察されなかった。イオントフォレーシス電流を加えて、及び加えずにViaDermシステムを使用することにより、わずかな紅斑及び浮腫のみが検出された。
【0159】
本発明は上記で特に示し説明したものに制限されないことが、当業者には理解されよう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】ブタへのインスリンの経皮的送達を示す。インスリンを、ViaDerm処置でマイクロチャネルを形成した後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(丸)、無処置の皮膚にインスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(三角)、又はViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(四角)のいずれかによって、ブタの皮膚を通して送達した。血漿インスリン濃度を測定した。
【図2】ラットでのヒト成長ホルモン(hGH)の経皮的送達を示す。hGHを、ViaDerm処置の後、hGHを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(四角)、又はViaDerm処置の後、hGHを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(三角)のいずれかによって、ラットの皮膚を通して送達した。血清hGH濃度を測定した。
【図3】ラットでのhGHの経皮的送達をイオントフォレーシスパッチでのhGH濃度の関数として示す。hGHを、ViaDerm処置の後、hGHを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(丸)、無処置の皮膚にhGHを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(灰色の四角)、ViaDerm処置の後、低用量又は高用量のhGHを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(それぞれ三角及び塗り潰された四角)、又は皮下注射(菱形)のいずれかによって、ラットの皮膚を通して送達した。血清hGHの値を測定した。
【図4】ブタでのhGHの経皮的送達を示す。hGHを、ViaDerm処置の後、hGHを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(三角)、又は皮下注射(四角)のいずれかによって、ブタの皮膚を通して送達した。血漿hGHの値を測定した。
【図5】ヒトの対象へのインスリンの経皮的送達を示す。インスリン(Lispro)を、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(菱形)、無処置の皮膚にインスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(三角)、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(丸)、又は皮下注射(SC)のいずれかによって、ヒトの対象の皮膚を通して送達した。血漿インスリン濃度を測定した。
【図6】ヒトの対象にインスリンを送達中のグルコース注入速度を示す。グルコースを、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(菱形)、無処置の皮膚にインスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(三角)、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(丸)、又は皮下注射(SC)のいずれかによって、インスリン(Lispro)を経皮的に送達するヒトの対象に注入した。グルコースの注入速度を測定した。
【図7】ヒトの対象へのインスリンの経皮的送達を示す。インスリン(Humulin R)を、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(菱形)、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(丸)、又は皮下注射(SC)のいずれかによって、ヒトの対象の皮膚を通して送達した。血漿インスリン濃度を測定した。
【図8】ヒトの対象にインスリンを送達中のグルコース注入速度を示す。グルコースを、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給せずに適用(菱形)、ViaDerm処置の後、インスリンを含むイオントフォレーシスパッチを電流を供給しながら適用(丸)、又は皮下注射(SC)のいずれかによって、インスリン(Humulin R)を経皮的に送達するヒトの対象に注入した。グルコースの注入速度を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に薬剤を経皮的に送達する方法において、
(a)対象の皮膚の第1の領域に複数のマイクロチャネルを形成するステップと、
(b)第1の電極アセンブリを前記複数のマイクロチャネルが存在する前記対象の皮膚の前記第1の領域に置くステップであって、前記第1の電極アセンブリが第1の電極と薬剤を有する薬剤リザーバとを含み、前記薬剤リザーバが前記第1の電極と電気的に接続されているステップと、
(c)第2の電極アセンブリを前記対象の皮膚の第2の領域に置くステップであって、前記第2の電極アセンブリが第2の電極と電解質リザーバとを含むステップと、
(d)電源と(b)の前記第1の電極及び(c)の前記第2の電極との間に電気エネルギーを印加するステップであって、前記第1及び前記第2の電極が前記電源に電気的に接続されており、それにより前記複数のマイクロチャネルを通じて対象の皮膚内へと薬剤をイオントフォレーシスにより送達するステップとを含む方法。
【請求項2】
対象の皮膚に複数のマイクロチャネルを形成するステップが、
(i)複数の電極を含む電極カートリッジと、
(ii)前記複数の電極が前記皮膚の第1の領域の近傍にあるとき、(i)の前記複数の電極間に電気エネルギーを印加するように適合され、前記複数の電極の下にある前記皮膚の前記第1の領域で角質のアブレーションを可能にし、それにより複数のマイクロチャネルを形成する制御ユニットを含む本体とを備えるマイクロチャネル形成装置によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極が、約30マイクロメートルから約150マイクロメートルの直径を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極が、約40マイクロメートルから約100マイクロメートルの直径を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電極が約80マイクロメートルの直径を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気エネルギーが無線周波数のものである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記制御ユニットが電流或いは1つ又は複数のスパークを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロチャネルが、約75から約450マイクロチャネル/cmの密度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロチャネルが、約75から約300マイクロチャネル/cmの密度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロチャネルが約150マイクロチャネル/cmの密度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤が、抗感染薬、鎮痛剤、麻酔剤、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、抗下痢薬、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗偏頭痛製剤、抗運動疾患製剤、抗新生物薬、抗パーキンソン薬、抗掻痒薬、抗精神病薬、解熱剤、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経作用薬、キサンチン誘導体、心血管製剤、カルシウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、抗不整脈剤、血圧降下剤、利尿薬、血管拡張剤、中枢神経系刺激剤、咳抑制剤、風邪抑制剤、充血除去剤、診断薬、ホルモン、睡眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経作用薬、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、精神刺激薬、鎮静剤及び精神安定剤からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が、インスリン、プロインスリン、卵胞刺激ホルモン、インスリン様成長因子−1、インスリン様成長因子−2、血小板由来成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、トランスフォーミング成長因子、腫瘍壊死因子、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、骨形態形成タンパク質、赤血球生成促進因子、造血成長因子、黄体形成ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、凝固因子、抗凝固因子、ボンベシン、トロンビン、エンケファリナーゼ、コラーゲン、コラーゲンドメイン、ミュラー型阻害剤、リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、プロリラキシン、インヒビン、アクチビン、血管内皮成長因子、ホルモンのレセプター、成長因子のレセプター、インテグリン、タンパク質A、タンパク質D、リウマチ因子、神経栄養因子、CDタンパク質、骨誘導因子、免疫毒素、インターフェロン、コロニー刺激因子、インターロイキン、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、分解促進因子、ウイルス抗原、輸送タンパク質、アドレシン、調節タンパク質、抗体、それらの類似体、断片及び薬剤として許容される塩からなる群から選択されるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤がヒトインスリン及びヒト成長ホルモンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤リザーバがさらに、ポリマー材料、電解質、防腐剤、溶解剤、吸収促進剤及び酵素阻害剤からなる群から選択される成分の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−520331(P2008−520331A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542504(P2007−542504)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001219
【国際公開番号】WO2006/054299
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】