説明

薬剤付き鍼灸針

【課題】 通常の鍼治療の効果に加え、薬剤の経皮的吸収効果を併せ持つ鍼灸針を提供する。
【解決手段】 鍼灸針(円皮針)は、片側が粘着面(粘着剤の層)をなす略円形の絆創膏(粘着テープ)1と、絆創膏1の粘着面側に剥離可能に貼り付けられる剥離紙2と、先端部が絆創膏1及び剥離紙2の孔を貫通して突出し、基端部が絆創膏1の非粘着面側に配置される針体3と、絆創膏1の非粘着面上に成形され針体3の基端部を覆って固定する樹脂材4と、を含んで構成される。ここにおいて、絆創膏1の粘着剤に薬剤を混合させる。薬剤としては、l−メントール、d−カンフル等の涼感を感じさせる程度のものから、消炎鎮痛剤、ビタミン、抗アレルギー剤など所望の薬剤との組み合わせが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼治療に用いる鍼灸針に関し、特に、鍼治療の効能に加えて、薬剤の効能を併せ持つ、薬剤付き鍼灸針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍼治療に用いる鍼灸針として、通常の鍼治療の効能効果に加えて、薬剤を体内に経皮的投与し得るものがある。
具体的には、特許文献1のように、針体の表面にその軸線と略平行な細溝を設けて、この細溝に薬剤を保持させたものや、特許文献2のように、針体にその軸線と交差する方向に貫通する細孔を設けて、この細孔に薬剤を保持させたものがある。
【0003】
このような薬剤付き鍼灸針を、治療部位(つぼ)に刺入することによって、通常の鍼治療の効能効果が得られると共に、体内に薬剤が経皮的投与されるのである。
【特許文献1】特開2003−116962号公報
【特許文献2】特開2006−296924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような薬剤付き鍼灸針では、そもそも細い針に、溝や孔を加工する必要があり、安価に製造することが難しいばかりか、針の強度を確保することも難しい。また、薬剤保持用の溝や孔は極めて小さなものとならざるを得ないため、十分な量の薬剤を保持させることができず、投与される薬剤も少量となって、薬効が制限される。
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、針体を加工をすることなく、簡単に製造でき、通常の鍼治療の効能効果に加えて、所望の量の薬剤の経皮的投与(吸収)が可能な薬剤付き鍼灸針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明では、片側が粘着剤の層により形成される絆創膏と、絆創膏の中央部に固定され、針先が絆創膏の粘着剤の層より突出する針体と、を含んで構成される鍼灸針を用い、前記粘着剤に薬剤を混合させる構成とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、皮膚に針を刺し入れたときに、針を留置するために皮膚に貼り付ける絆創膏の粘着剤に薬剤を混合させることにより、鍼治療の効果に加え、薬剤の経皮的吸収効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る薬剤付き鍼灸針の一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。図2は図1(b)中のA部の拡大断面図である。
この鍼灸針(円皮針)は、絆創膏(粘着テープ)1と、剥離紙2と、針体3と、樹脂材4とから構成される。
【0008】
絆創膏(粘着テープ)1は、円形状で、片面に粘着性を有し、中央部には孔1aが設けられている。
剥離紙2は、円形状で、その径は絆創膏1の径と比してやや大きく、中央部に孔2aを有し、絆創膏1の粘着面側に剥離可能に貼り付けられている。また、剥離紙2は、孔2aを通る分割線2bで分割されていて、施術時の剥離等を容易にしている。
【0009】
針体3は、金属製(ステンレス製)で、L字状に屈曲されている。針体3の先端部(針先)3aは、絆創膏1及び剥離紙2の孔1a及び2aを貫通して突出しており、この突出した部分により皮下に刺入する。一方、基端部3bは、偏平に加工されて、絆創膏1の非粘着面側にこれと略平行に配置されている。
樹脂材4は、絆創膏1の非粘着面上に、針体3の基端部3bを覆うように射出成形又はポッティング(樹脂盛り加工)されて、針体3を固定している。
【0010】
以上述べたように、本実施形態での鍼灸針(円皮針)は、片面が粘着面をなし、中央部に孔を有する略円形の絆創膏(粘着テープ)1と、絆創膏1の粘着面側に剥離可能に貼り付けられ、中央部に孔を有する剥離紙2と、先端部が絆創膏1及び剥離紙2の孔を貫通して突出し、基端部が絆創膏1の非粘着面側に配置される針体3と、絆創膏1の非粘着面上に成形され、針体3の基端部を覆って固定する樹脂材4と、を含んで構成される。
【0011】
ここにおいて、前記絆創膏(粘着テープ)1は、図3に示すように、紙、布、不織布、或いはプラスチックのテープからできている基材11と、この基材11の片側に設けられる粘着剤の層12との、2層構造とするが、粘着剤に薬剤を混合させて、基材11と、薬剤を混合させた粘着剤の層12との、2層構造としてある。
薬剤としては、l−メントール、d−カンフル等の涼感を感じさせる程度のものから、消炎鎮痛剤、ビタミン、抗アレルギー剤など、所望の薬効を有するもの、或いは、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0012】
図4は本鍼灸針を収納容器に収納した状態(包装形態)を示している。
収納容器は、鍼(円皮針)を針先を下にして収納可能な凹部を有する樹脂製の容器本体5と、容器本体5内に鍼(円皮針)を収納した状態で、容器本体5の上面の外枠部分に剥離可能に貼り付けられて凹部の開口部を密閉する滅菌ガス透過性のシート材6とから構成される。そして、収納・密閉後に、滅菌処理(ガス滅菌)を施して、完成する。
【0013】
以上のようにして完成した鍼灸針(円皮針)の使用に際しては、鍼灸針(円皮針)を収納容器から取り出した後、絆創膏1から剥離紙2の一部を剥がして、針体3をつぼにあてがい、刺通しつつ、粘着面の露出した部分を皮膚に貼付し、固定する。さらに、剥離紙2の残りの部分を剥がし、この部分の粘着面も皮膚に貼付する。
本実施形態によれば、鍼灸針を皮膚に留置するための絆創膏1の粘着剤の層12に薬剤を混合させることにより、通常の鍼治療の効果に加え、薬剤の経皮的吸収効果を奏することができる。
【0014】
また、粘着剤に薬剤を混合させるのは容易であり、大量生産が可能で、安価に薬剤付き鍼灸針を提供できる。
使用方法について見ても、絆創膏1から剥離紙2を剥がして、所定の位置に貼付するだけであり、非常に簡便である。
更に、通常の貼付薬(テープ製剤)に比べると、次のような効果を有する。皮膚の角層はバリヤー性が高く、テープ製剤からの薬剤の浸透はゆっくりとならざるを得ない。これに対し、本発明のように鍼灸針に適用することで、角質層〜真皮層まで針を刺入しているので、薬剤の浸透速度が早くなる。また、鍼治療の効果として、組織の血流量が増加することで、薬効の発現を速やかにすることができる。
【0015】
特に、図示の円皮針形状は、針先の周囲の絆創膏を皮膚に密着させることができ、効果的に薬剤を浸透させることができる。
尚、本発明の実施形態について説明したが、これに限定することを意図するものではなく、本発明の実施に際しては、特許請求の範囲に記載の趣旨及び範囲内で、様々な変更を行うことができる。
【0016】
例えば、針の本数は1本に限るものではなく、本数を増やすことで、薬効の程度、速度をコントロールすることができる。
また、薬剤の選択により、鍼+冷感作用、鍼+温熱作用を作り出すことができ、鍼治療効果をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示す鍼灸針の平面図(a)、正面図(b)、及び、底面図(c)
【図2】図1のA部の拡大断面図
【図3】絆創膏の層構成を示す拡大断面図
【図4】鍼灸針の容器収納状態を示す図
【符号の説明】
【0018】
1 絆創膏(粘着テープ)
1a 孔
2 剥離紙
2a 孔
2b 分割線
3 針体
3a 先端部(針先)
3b 基端部
4 樹脂材
5 収納容器本体
6 シート材
11 絆創膏の基材
12 薬剤を混合させた粘着剤の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片側が粘着剤の層により形成される絆創膏と、
絆創膏の中央部に固定され、針先が絆創膏の粘着剤の層より突出する針体と、
を含んで構成され、
前記粘着剤に薬剤を混合させたことを特徴とする薬剤付き鍼灸針。
【請求項2】
前記絆創膏は、基材と、薬剤を混合させた粘着剤の層との、2層構造とすることを特徴とする請求項1記載の薬剤付き鍼灸針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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