説明

薬剤代謝に影響を及ぼすCYP3A4遺伝子における多型およびその使用

CYP3A4関連障害に関する被験体のリスク要因を予測するための方法には、被験体の核酸試料中のSNPの対立遺伝子状態を検出する工程が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、その開示全体が本明細書に援用される、2009年3月26日出願の米国仮特許出願61/163,555の優先権を請求する。
【0002】
政府支援
[0002]本発明は、米国衛生研究所によって授与される助成金番号NIH NIAID(1R21AI074399)の元で政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
配列表
[0003]本出願は、EFSウェブを通じて提出されており、そしてその全体が本明細書に援用される配列表を含有する。2010年3月23日に作製されたASCIIコピーは、604 50806 SEQLIST OSURF−09032.txtと名付けられており、そしてサイズは34,669バイトである。
【背景技術】
【0004】
[0004]チトクロムP450(CYP)酵素は、内因性および生体異物化合物を代謝する。CYP3A4はCYP3Aサブファミリーに属し、そして最も豊富なCYP酵素である。CYP3A4は、現在使用されている薬剤すべての45〜60%を代謝するのに関与し(1)、こうした薬剤には、コレステロールを低下させるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤であるいくつかのスタチンが含まれる。しかし、CYP3A4活性は、広い個体間変動を示し、薬剤反応および毒性に影響を及ぼす。遺伝的要因が、CYP3A4活性の個体間相違の主な寄与因子であると考えられる(2)が、現在知られるCYP3A4多型は、観察される変動性を説明しえない。
【0005】
[0005]CYP3A4においてアミノ酸配列を変化させる遺伝子変異体は稀である(<1%)(www.cypalleles.ki.se/cyp3a4.htm)。5’隣接領域中のより一般的な変異体、CYP3A41Bが、薬剤反応および疾患と関連付けられてきている(3、4)が、結果は一貫しておらず(5〜7)、そしてその機能には議論の余地があるままである。(3、8〜10)。さらに、CYP3A41Bは隣接するCYP3A5と連鎖不平衡(LD)にあり(11)、CYP3A5は、関連する臨床表現型のいずれかを説明した可能性もある、類似であるが、通常はより豊富でないCYP酵素をコードする(12)。
【0006】
[0006]さらに疑われるCYP3A4多型には、TGT挿入(13)、エンハンサー領域SNP(rs2737418)(14)、およびイントロン7 SNP(rs4646437)(15)が含まれる。レポーター遺伝子アッセイによって、TGT挿入およびrs2737418の影響が示唆されるが、TGTのin vivo重要性は解決されないままであり(13)、一方、CYP3A4 mRNAおよび酵素活性に関する結果は、rs2737418に関して矛盾した(14)。イントロン7 SNP rs4646437は、CYP3A4タンパク質/酵素活性と関連していることが見出されたが、男性由来の肝臓においてのみであった(15)。したがって、CYP3A4における機能的多型の役割は不確かなままである。
【0007】
[0007]一塩基多型(SNP)は、疾患感受性または進行を予測するためのバイオマーカーとして、または薬剤療法を含む個別化された療法の指針として、有用である。
【0008】
[0008]欠けているのは、特定の患者が特定の療法剤に反応性である可能性を予測するための、そして特にCYP3A4剤が感受性であるかまたは抵抗性であろう多型を同定するためのツールである。やはり欠けているのは、こうした療法剤に対する患者の感受性および抵抗性に影響を及ぼす遺伝的要因をプロファイリングするためのツールである。こうしたツール、および生じる遺伝子発現プロファイルは、特定の薬剤に対する患者の治療反応を予測し、そして有効性、不都合な薬剤反応、こうした患者の化学的感受性または化学的抵抗性に関する予測可能性を増加させて、患者にとって最適な治療措置の設計を可能にするか、または早期臨床試験において薬剤開発を可能にして、劣った代謝者における予期されない毒性を回避するであろう。
【0009】
[0009]本発明のさらなる利点、目的、および特徴が、続く説明に一部示され、そして一部は、以下を調べることによって一般の当業者には明らかとなるであろうし、または本発明の実施から学ぶことも可能である。本発明の目的および利点は、付随する請求項に特に指摘されるように、理解されそして達成されることも可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]第一の側面において、例えば有効性および/または不都合な薬剤反応を含む、CYP3A4が代謝する化合物に対する被験体の反応を予測するための方法を本明細書に提供する。該方法には、被験体の核酸試料において、1またはそれより多くの多型の対立遺伝子状態を検出する工程を含み、多型が:i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);またはii)それと連鎖不平衡にあるSNP;の1またはそれより多くの多型である、ここで被験体における多型の対立遺伝子状態が、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発症するリスクを予測するものである、前記方法を提供する。
【0011】
[0011]別の側面において、CYP3A4関連障害の予後バイオマーカーに関して、被験体をスクリーニングする方法であって、被験体の核酸試料において、1またはそれより多くの多型の対立遺伝子状態を検出する工程を含み、多型が:i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);またはii)それと連鎖不平衡にあるSNP;の1またはそれより多くの多型である、ここで被験体における多型の対立遺伝子状態が、CYP3A4関連障害の予後転帰を予測するものである、前記方法を本明細書に提供する。
【0012】
[0012]特定の態様において、方法は、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発展させるリスクを予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む。
【0013】
[0013]特定の態様において、方法は、被験体がCYP3A4関連障害のより重度かまたはより重度でない表現型を有するかどうか予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む。
【0014】
[0014]特定の態様において、方法は、被験体における障害の予後転帰を予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む。
【0015】
[0015]特定の態様において、方法は、治療に対する被験体の反応、投薬量および/または毒性を予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む。
【0016】
[0016]特定の態様において、CYP3A4関連障害は代謝関連障害を含む。
【0017】
[0017]特定の態様において、CYP3A4が代謝する化合物は、スタチン薬剤を含む、肝臓で代謝される1以上の薬剤を含む。
【0018】
[0018]特定の態様において、CYP3A4が代謝する化合物は:CYP3A4阻害剤またはCYP3A4増進剤(enhancer)の1以上を含む。
【0019】
[0019]特定の態様において、多型は、イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む。
【0020】
[0020]特定の態様において、多型は、rs35599367[配列番号152]を含み、ここで被験体における該多型の存在は、CYP3A4関連障害のリスク増加を予測するものである。
【0021】
[0021]特定の態様において、多型のマイナー対立遺伝子の存在は、ターゲット組織におけるCYP3A4のより低いレベルを予測するものであり、そしてCYP3A4 mRNA発現減少と関連する。
【0022】
[0022]別の側面において、被験体の核酸試料における1またはそれより多くの多型の対立遺伝子状態を検出するためのアッセイを含むキットであって、多型が:i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);またはii)それと連鎖不平衡にあるSNP;の1またはそれより多くの多型である、前記キットを、本明細書に提供する。
【0023】
[0023]特定の態様において、キットは、アッセイ結果と、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発展させるリスクを相関させるための指示をさらに含む。
【0024】
[0024]特定の態様において、キットは、アッセイ結果と、障害に関する被験体の予後転帰を相関させるための指示をさらに含む。
【0025】
[0025]特定の態様において、キットは、アッセイ結果と、被験体における特定の薬剤治療の成功または失敗の可能性を相関させるための指示をさらに含む。
【0026】
[0026]別の側面において、CYP3A4関連障害に関与するターゲット遺伝子における機能的多型を発見するための方法であって:i)ターゲット遺伝子を発現しているターゲット組織の試料を提供し;ii)a)ターゲット遺伝子の転写領域中の2つの対立遺伝子各々から生じるmRNAの相対量を定量的に測定し、そしてb)他方の対立遺伝子に対して一方の対立遺伝子のmRNA発現を比較して、対立遺伝子mRNA発現不均衡(AEI)比を得ることによって、ターゲット遺伝子のAEIを測定し;そしてiii)AEI比を、多型を含有する領域に関してターゲット遺伝子をスキャンするための表現型として用いる、ここで、AEI比および多型の間に有意な関連がある場合、多型がCYP3A4関連障害に関するバイオマーカーとして働きうる機能的多型であることを示す工程を含む、前記方法を、本明細書に提供する。
【0027】
[0027]特定の態様において、多型はエクソン領域にある。
【0028】
[0028]特定の態様において、多型はSNPである。
【0029】
[0029]特定の態様において、バイオマーカーは、遺伝子転写、mRNAプロセシング、mRNAスプライシング、またはその組み合わせに影響を及ぼす。
【0030】
[0030]特定の態様において、ターゲット遺伝子は、CYP3A4遺伝子座である。
【0031】
[0031]別の側面において、イントロン6 SNPに関するスクリーニングを含む、スタチン薬剤の代謝を決定するための方法を、本明細書に提供する。
【0032】
[0032]別の側面において、イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)に関するスクリーニングを含む、スタチン薬剤の代謝を決定するための方法を、本明細書に提供する。
【0033】
[0033]別の側面において、イントロン6 SNPを含む、CYP3A4における変動性を検出するためのバイオマーカーを、本明細書に提供する。
【0034】
[0034]別の側面において、イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4における変動性を検出するためのバイオマーカーを、本明細書に提供する。
【0035】
[0035]別の側面において、イントロン6に位置するSNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4代謝性療法剤の投薬必要量を決定するためのバイオマーカーを、本明細書に提供する。
【0036】
[0036]別の側面において、イントロン6に位置するSNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4代謝性療法剤の反応を決定するためのバイオマーカーを、本明細書に提供する。
【0037】
[0037]別の側面において、イントロン6に位置するSNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4代謝性療法剤の毒性を決定するためのバイオマーカーを、本明細書に提供する。特定の態様において、療法剤はスタチン薬剤である。特定の態様において、療法剤は抗癌薬剤である。特定の態様において、療法剤は、狭く定義された投薬措置を有する薬剤である。
【0038】
[0038]別の側面において、臨床的薬理ゲノミクススクリーニングの方法であって:a)本明細書記載の少なくとも1以上のバイオマーカーの存在に関して試料をスクリーニングし、ここで、1以上のバイオマーカーの存在が、患者が改変された代謝を有する指標となり;そしてb)スクリーニングにおいて、ランダムな方式またはあらかじめ決定された方式で、参照対照を含む、ここで、参照対照は、改変された代謝を伴う患者の指標となるバイオマーカーを含むDNAを含む工程を含み、参照対照中、1またはそれより多くの薬剤代謝遺伝子における1またはそれより多くのバイオマーカーの存在が検出されると、試料中の1またはそれより多くの薬剤代謝遺伝子において、同じ1またはそれより多くのバイオマーカーを検出するのにスクリーニングが有効であることが検証される、前記方法を、本明細書に提供する。
【0039】
[0039]別の側面において、個別化医学的療法であって:i)ターゲット患者集団由来の試料に対して、本明細書記載のスクリーニング法を行って、CYP3A4または薬剤代謝に関連する他の遺伝子における1またはそれより多くの突然変異を含む遺伝子プロファイルを持つ患者を同定し;そしてii)工程i)において、特定の遺伝子プロファイルを所持すると同定された患者を、同定された遺伝子プロファイルに特有の関心対象の療法で治療する工程を含む、前記方法を、本明細書に提供する。
【0040】
[0040]特定の態様において、遺伝子プロファイルは、改変された代謝を持つ患者の指標である。
【0041】
[0041]特定の態様において、改変された代謝は:劣った代謝者、中間代謝者、高代謝者、および超迅速代謝者からなる群より選択される。
【0042】
[0042]特定の態様において、遺伝子プロファイルは、患者における関心対象の療法の有効性の指標となる。
【0043】
[0043]特定の態様において、遺伝子プロファイルは、遺伝的障害を持つ患者の指標となる。
【0044】
[0044]特定の態様において、遺伝子プロファイルは、特定の療法で治療してはならない患者の指標となる。
【0045】
[0045]特定の態様において、関心対象の療法が:癌、心臓疾患、神経学的障害、精神障害、自己免疫障害、および代謝障害からなる群より選択される、疾患または障害を治療するために用いられる。
【0046】
[0046]特定の態様において、1以上の突然変異はCYP3A4における突然変異を含み、そして関心対象の療法は、患者への少なくとも1つのスタチンの投与を含む。
【0047】
[0047]別の側面において、参照対照として使用するのに適した単離ゲノムDNAを生成するのに使用可能な細胞を同定するための方法であって:a)特定の療法に対する患者の反応の予測される度合いを決定する遺伝子素因に関連する、志願者核酸試料中の1以上の多型を含む、ヒトゲノムDNA配列の存在に関してヒト志願者を前向きに(prospectively)スクリーニングし;ここで多型は:i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);またはii)それと連鎖不平衡にあるSNP;の1またはそれより多くの多型であり、ここで被験体における多型の対立遺伝子状態が、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発症するリスクを予測するものである;b)関心対象の1以上の突然変異を所持する志願者由来の細胞を単離し;そしてc)複数の有効なゲノムスクリーニングアッセイに細胞由来のDNAを供する工程を含む、前記方法を、本明細書に提供する。
【0048】
図面の簡単な説明
[0048]特許または出願ファイルは、カラーで作成される少なくとも1つの図を含有してもよい。カラーの図(単数または複数)を含む本特許または特許出願刊行物のコピーは、要望があり、そして必要な料金の支払いがあれば、特許局によって提供されるであろう。
【0049】
[0049]本発明は、本出願の一部を形成する、以下の詳細な説明、図面および配列説明からより完全に理解可能である。本明細書に添付される配列説明および配列表は、37CFR§§1.821〜1.825に示されるような特許出願におけるヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列開示に適用される規則にしたがう。配列説明は本明細書に援用される37CFR§§1.821〜1.825に定義されるようなアミノ酸の3文字コードを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】[0050]多重マーカーSNP(図3)(図1A)またはイントロン6 SNP rs35599367[配列番号152]のみ(図1B)を用いたプライマー伸張アッセイ(SNaPshot)を用いて測定した、ヒト肝臓におけるCYP3A4の対立遺伝子mRNA/hnRNA発現比。対立遺伝子RNA比を、1に設定したgDNA比に対して標準化した。データは、単一または多重マーカーSNPを用いた2〜3回の測定の平均に相当する。矢印は、AEI比が1とは有意に異なる(P<0.05)試料を示す。パネルB中のすべての対立遺伝子RNA比は、1とは有意に異なる(Dunnet事後検定を伴うANOVA、P<0.05)。
【図2】[0051]図2A〜2B:ヒト肝臓試料におけるCYP3A4 mRNAレベル(図2A)および酵素活性(図2B)のボックスプロット、イントロン6 SNP遺伝子型によってグループ化。
【図3】[0052]AEI測定に用いたマーカーSNPの位置およびrs番号。イントロン6 SNP rs35599367[配列番号152]を赤で示す。
【図4】[0053]遺伝子型および対立遺伝子RNA発現不均衡(AEI)間の関連。調整P<0.05で、イントロン6 SNP rs35599367[配列番号152]のみが、そしてはるかにより弱い強度でSNP rs2246709がAEIと関連した。
【図5】[0054]CYP3A4における13の多型に関するLDプロット。詳細なSNP情報を表1に提供する。SNP6は、イントロン6 SNP rs35599367[配列番号152]であり、SNP 7 rs2246709とは部分的にしかLDでない。
【図6】[0055]図6A〜6D:ヒト肝臓における4つの転写因子およびCYP3A4のmRNA発現間の相関。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[0056]本発明は、ここで、本発明の特定の態様に時に言及しながら記載されるであろう。しかし、本発明は、異なる型で具体化可能であり、そして本明細書に示す態様に限定されると見なされてはならない。これらの態様はむしろ、本開示が徹底的でそして完全であり、そして本発明の範囲を当業者に完全に伝えるであろうように提供される。
【0052】
[0057]本明細書に言及するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が本明細書に援用される。すべての特許、特許出願(およびそこから生じるいかなる特許、ならびに対応するいかなる刊行外国特許出願も)、GenBankおよび他の寄託番号および関連データ、ならびに本説明全体で言及される刊行物は、本明細書に援用される。しかし、本明細書に援用されるいかなる文書も、本発明を解説するかまたは開示するとは、明らかに認められない。
【0053】
[0058]本発明は、本発明の態様の以下の詳細な説明および本明細書に含まれる実施例を参照することによってより容易に理解されうる。しかし、本方法、化合物および組成物を開示し、そして説明する前に、本発明が特定の方法、特定の細胞タイプ、特定の宿主細胞または特定の状態などに限定されず、これは、こうしたものが、もちろん、多様であることが可能であるためであり、そして多くの修飾および変動が当業者には明らかとなるであろうことが理解されるものとする。本明細書に用いる専門用語は、特定の態様を記載する目的のみのためのものであり、そして限定すると意図されないこともまた理解されるものとする。
【0054】
[0059]広い側面において、本発明者らは、ここで、ヒト剖検肝臓において、対立遺伝子hnRNA/mRNA発現を測定することによって、CYP3A4における一般的な多型を発見した。検出可能な対立遺伝子RNA発現不均衡(AEI)は、RNA発現、プロセシング、または代謝回転に影響を及ぼす、CYP3A4中のシス作用性制御因子の直接の測定値である。
【0055】
[0060]本明細書に記載する結果は、CYP3A4のイントロン6 SNPが、観察される対立遺伝子mRNA発現パターンを説明し、そしてヒト肝臓におけるCYP3A4酵素活性と相関する一方、以前示唆されていた多型がまったく影響を持たないことを示す。
【0056】
[0061]さらに、イントロン6 SNPは、CAD患者のコホートにおいて、コレステロール管理のために服用される安定スタチン投薬と、そして療法LDL目標の達成と、有意に関連した。
【実施例】
【0057】
[0062]実施例I
[0063]方法:
[0064]組織試料。133の肝臓剖検/生検試料を、オハイオ州立大学施設審査委員会(OSU IRB)によって認可されたプロトコルの元で、The Cooperative Human Tissue Network Midwestern and Western Divisionから得た。
【0058】
[0065]患者。被験体は、オハイオ州立大学冠動脈疾患研究の参加者であり、患者はPCIコールを必要とする症候性心臓血管疾患でOSU心臓センターを受診している。脂質管理のため、安定用量のスタチンを服用していると立証される275人の患者を選択した。登録および試験条件は、OSU IRBによって認可されており、各患者からは書面のインフォームドコンセントが得られている。研究集団は、オハイオ州のコロンバス地域および周辺の田舎地方の人口動態を反映する。
【0059】
[0066]DNAおよびRNA調製。組織または血液試料からのゲノムDNA、RNAおよびcDNAの調製を記載されるように行った(16〜18)。
【0060】
[0067]SNaPshotを用いた、ゲノムDNAおよびRNAにおける対立遺伝子比の定量的分析。詳細な方法が公表されている(16、17)。簡潔には、マーカーSNP周囲のDNAまたはRNA(cDNAに変換した後)の断片をPCR増幅した後、多型部位をターゲットとするプライマー伸張アッセイ(SNaPshot)を行った。3’UTR領域またはイントロン領域のいずれかに位置する7つのマーカーSNPを用いて、少なくとも1つのマーカーSNPに関してヘテロ接合性である、133の肝臓のうち73において、成熟mRNA(3’UTRマーカー)またはhnRNA(イントロンマーカー)の対立遺伝子比を測定した。1に標準化されたゲノムDNA(gDNA)対立遺伝子比が内部対照として働き;いずれの被験体も、まとまりからの有意な偏差によって検出可能な、gDNAコピー数変動を示さなかった。1からの対立遺伝子RNA比の偏差(DNA比に対する標準化後)、すなわち対立遺伝子発現不均衡(AEI)は、mRNA発現レベルに影響を及ぼす、CYP3A4におけるシス作用性多型の存在を示す。
【0061】
[0068]遺伝子型決定:表1に示すように、多重SNaPshotアッセイ(19)または対立遺伝子特異的リアルタイムPCR(20)を用い、肝臓試料由来のgDNAにおいて、CYP3A4中の13のSNP(7つのマーカーSNPを含む)を遺伝子型決定した。
【0062】
【表1】

【0063】
[0069]表2に示すように、275人の患者から、gDNAにおいて、CYP3A4/3A5中の7つのSNPを遺伝子型決定した。
【0064】
【表2】

【0065】
[0070]PCR条件およびプライマー配列を表3、表4、表5に示す。
【0066】
[0071]ヒト肝臓におけるCYP3A4ならびに転写因子PXR、RXRa、CAR、およびHNF4aの定量的mRNA分析: GADPH mRNAを内部対照として用い、遺伝子特異的プライマー(22)(表3、表4、表5)およびSYBRグリーン(Applied Biosystems)を用いたリアルタイムPCR(16、21)を用いて、mRNAレベルを測定した。
【0067】
[0072]表3:遺伝子型決定またはAEIアッセイ。「PCRプライマー配列およびアッセイ条件」と示す列は、提示順に、それぞれ、配列番号1〜42を開示し、そして「プライマー伸張プライマーおよび条件」と示す列は、提示順に、それぞれ、配列番号43〜56を開示する。
【0068】
【表3−1】

【0069】
【表3−2】

【0070】
【表3−3】

【0071】
[0073]表4: CYP3A4およびCYP4A5 SNP遺伝子型決定に関する多重PCRおよびSnapshotアッセイ。「PCRプライマー配列」と示す列は、提示順に、それぞれ、配列番号57〜68を開示し、そして「プライマー伸張プライマー」と示す列は、提示順に、それぞれ、配列番号69〜75を開示する。
【0072】
【表4】

【0073】
[0074]表5:プライマーおよび配列決定プライマー。PCRプライマーは、提示順に、それぞれ、配列番号76〜95として開示され、そして配列決定プライマーは、提示順に、それぞれ、配列番号96〜151として開示される。
【0074】
【表5−1】

【0075】
【表5−2】

【0076】
【表5−3】

【0077】
【表5−4】

【0078】
[0075]CYP3Aの配列決定:転写開始部位の〜10,000bp上流から最後のエクソンまでの領域(AF280107の50013〜89410、全長39,397bp)を、対立遺伝子特異的RNA発現を示す2つの肝臓試料において配列決定した。PCRおよび配列決定プライマーを図16−表10に示す。
【0079】
[0076]CYP3A4酵素活性アッセイ:記載されるように(23)、プローブとしてテストステロンを用いて、肝臓ミクロソーム由来のCYP3A4活性を定量化した。
【0080】
[0077]データ分析:別個の変数および遺伝子型の間の関連を、Helix−Treeソフトウェア(Golden Helix、モンタナ州ボーズマン)を用いて分析した。Haploviewを用いて、LDプロットを生成した。SPSSまたはMinitabソフトウェアを用いて、RNA発現、酵素活性、およびスタチン用量必要性に対する遺伝子型の影響を試験するために、重回帰分析を用いた。
【0081】
[0078]結果:
[0079]mRNAレベルに影響を及ぼすシス作用性CYP3A4多型に関するスキャニング:
[0080]3つの頻繁な3’UTRマーカーSNPを用いて、ヒト肝臓において、CYP3A4の対立遺伝子mRNA発現を測定した(図3)。CYP3A4が高発現であるため、4つのイントロンSNPもまた、CYP3A4 hnRNAの対立遺伝子発現を測定するのに利用した(24)。スクリーニングした133の肝臓試料のうち、73が7つのマーカーSNPの少なくとも1つに関してヘテロ接合性であり、そしてしたがって、AEI測定に適していた。73の試料のうち、7つが、強い対立遺伝子発現不均衡(AEI)を示すと同定され、メインの対立遺伝子がマイナーな対立遺伝子より少なく発現され(0.2〜0.5倍)、これはイントロンおよびエクソンマーカーSNPの両方で観察された(図1A)。したがって、CYP3A4中のシス作用性多型(単数または複数)は、mRNAおよびhnRNAレベル両方に等しく影響を及ぼす。
【0082】
[0081]関与する多型(単数または複数)を検索するため、13のCYP3A4多型(表1)を遺伝子型決定し、そして対立遺伝子RNA比および遺伝子型間の関連を試験した。
【0083】
[0082]イントロン6に位置する単一SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)は、AEIと非常に有意な関連を示し(調整p値9.12x10−10)(図4)、一方、別のSNP rs2246709もまた、中程度の有意性(P=0.034)をスコアリングし、これはおそらくイントロン6 SNPと部分的な連鎖不平衡(LD)にある結果であった(図5)。
【0084】
[0083]先に同定されたプロモーターSNP rs2740574、TGT挿入、rs2737418、およびrs4646437を含む他のSNPは、有意な関連を示さなかった(P>0.05)。これらの結果は、イントロン6 SNPが機能性であるか、または機能性SNPと非常にLDであることを示した。これをさらに試験するため、イントロン6 SNPをマーカーとして用いて、そしてイントロン6 SNPに関してのみヘテロ接合性である3つを含めて、10のヘテロ接合性試料において、AEIを測定した。10の試料はすべて、AEIを示し、対立遺伝子比(マイナーT対立遺伝子/メジャーC対立遺伝子)は0.16〜0.62の範囲であり(図1B)、男性および女性の間で相違はなかった(P=0.314)。したがって、イントロン6 SNPのマイナーT対立遺伝子は、mRNA/hnRNAレベル減少と関連している(メジャーC/マイナーTの逆対立遺伝子mRNA比は1.6〜6.25)。マイナーT対立遺伝子は、rs2246709との低いLDを除いて、もっぱら、メインのCYP3A4ハプロタイプに連鎖している(図12−表6;LDプロット図5)。
【0085】
[0084]表6:ハプロタイプ構造、および肝臓において試験された13のSNPの概算頻度。詳細なSNP情報を表1に提供する。ハプロタイプ5において、イントロン6 SNP(左から6番目)のマイナーT対立遺伝子は、メジャー・ハプロタイプ1(太字)にもっぱら連鎖しており、一方、他のSNPいずれとも検出可能なLDを持たない。
【0086】
【表6】

【0087】
[0085]2つのAEI陽性試料中の全CYP3A4遺伝子座の配列決定は、どちらの試料においてもヘテロ接合性でなければならない他の多型いずれかが関係しているとは見なされず、イントロン6 SNPが機能性であることが示された。
【0088】
[0086]イントロン6 SNPは、ヒト肝臓において、CYP3A4 mRNAレベルおよび酵素活性の減少と関連する:
[0087]93の肝臓試料において、総CYP3A4 mRNAレベルを測定した。mRNAレベルは、コーカソイドおよびアフリカ系アメリカ人の間で異ならなかったが、報告されるように(25)、女性は男性よりも1.3倍より高いレベルを有した(95%CL 1.00〜1.68、両側P=0.042)。イントロン6 SNPのメインのCC遺伝子型を持つ肝臓は、CT/TTキャリアーよりも1.71倍(95%信頼区間(CI)1.06〜2.76)高いレベルを有し(t検定、両側P=0.028)、遺伝子型および性別の間に関係はなかった。CYP3A4転写因子(26〜29)の影響を試験するため、プレグナンX受容体(PXR、NR112)、恒常的アンドロスタン受容体(CAR、NR113)、レチノイド受容体(RXRa)、および肝細胞核因子(HNF4α1A)に関してもまた、mRNAレベルを測定した。CYP3A4 mRNA発現は、報告されるように(26〜29)、すべての4つの転写因子と正に相関した(図6A〜6D)。
【0089】
[0088]年齢および転写因子に関して調整した後、イントロン6 SNPは、CYP3A4発現と有意に関連したままであり(CT/TTよりもCCが1.67倍(95%CI 1.11〜2.46、p=0.014)(図2A))、遺伝子型の影響が転写因子とは独立であることが示された。
【0090】
[0089]年齢(<15歳は小児、>15歳は成人)、性別、および誘導剤(フェノバルビタール、カルバマゼピン、ニフェジピンおよびデキサメタゾン)の使用に関して調整した後、23の肝臓におけるCYP3A4酵素活性(テストステロン6βヒドロキシル化)は、CTキャリアーよりもイントロン6 SNP CCに関して、2.46倍高かった(両側p=0.037、95%CI 1.07〜5.62)(図2B)。
【0091】
[0090]対立遺伝子mRNA発現と一致して、これらの結果は、イントロン6 SNPがin vivoでCYP3A4 mRNAおよびタンパク質レベルを減少させることを示す。対照的に、CYP3A41B、TGT挿入、rs2737418、およびrs4646437は、総CYP3A4 mRNAレベルまたは酵素活性にまったく影響を及ぼさなかった(P>0.05)。
【0092】
[0091]イントロン6 SNP(C>T)は、スタチン用量必要性および脂質管理転帰と関連する:
[0092]あらかじめ決定されたLDL目標に到達するのに必要なCYP3A4が代謝するスタチンの投薬量として、イントロン6 SNPのin vivo効果を評価した。安定用量のアトルバスタチン、ロバスタチン、およびシンバスタチン、または非CYP3A4基質ロスバスタチンおよびプラバスタチンを投与されている275人の患者において、イントロン6 SNPを遺伝子型決定した。CYP3A4(1B rs2740574、TGT挿入、17 rs4987161、および18 rs28371759)およびCYP3A5(3 rs776746および5 rs41303343)(図11−表5)中のさらなるSNPもまた遺伝子型決定した。3つのSNPがHardy−Weinberg平衡(HWE)から逸脱し、これは、コーカソイドおよびアフリカ系アメリカ人集団において、異なる対立遺伝子頻度があるためであり、集団中で別個に分析すると、すべてのSNPがHWEにしたがう(表7)。
【0093】
【表7】

【0094】
[0093]イントロン6 SNPの対立遺伝子頻度は〜5%であり、NCBIデータベースで報告されるものと一致する。CYP3A4 SNP17および18の不在は、報告される対立遺伝子低頻度と一致する。
【0095】
[0094]237人の患者のサブセットは、5mg〜80mgの範囲の用量のCYP3A4が代謝するスタチン(アトルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン)を投与されていた。スタチンを一緒に、または別個に評価して、有効性相違を説明した。すべてのスタチンを投与されている患者を、低用量(20mg以下、平均16±5mg)および高用量(40mg以上、平均53±19mg)(P<0.001)群に分けた。ベースライン特性および脂質レベルは、最大トリグリセリドおよび安定HDLレベル(P<0.05)を除いて、低用量および高用量群間で異ならなかった(表8)。表8は、CYP3A4が代謝するスタチン(アトルバスタチン、ロバスタチンおよびシンバスタチン)を投与されている患者のベースライン特性を示す。
【0096】
【表8】

【0097】
[0095]マイナーイントロン6 SNP T対立遺伝子は、より低い安定スタチン用量と有意に関連した(オッズ比=3.80、P=0.005)。他のSNPはいずれも有意ではなかった。表9は、スタチン用量必要性およびコレステロール管理転帰とCYP3A4/3A5 SNP遺伝子型の関連を示す。P<0.05、**P<0.01。
【0098】
【表9】

【0099】
[0096]重回帰分析は、イントロン6 T対立遺伝子キャリアーに関する安定スタチン用量が、最大脂質レベルに関する調整後、非Tキャリアーに関するものに対してわずか0.27であった(P=0.019)ことを示す(表10)。患者をアトルバスタチンおよびシンバスタチンに対して別個に分析した際、類似の結果が得られた(表10)。したがって、イントロン6 SNPは、スタチン用量必要性の減少と関連する。
【0100】
【表10】

【0101】
[0097]コレステロール管理転帰とイントロン6 SNPの関連を試験するため、入手可能なLDLデータを伴う198人の患者を、成人治療パネルIII指針(30)にしたがって、コレステロール目標に到達したもの(LDLコレステロール<70mg/dl;または71〜99mg/dlであって、低リスク/中程度のリスク;または100〜129mg/dlであって、低リスク)および到達しなかったもの(>130mg/dl;または100〜129mg/dlであって、中程度/高リスク;または71〜99mg/dlであって、高リスク)に分けた。イントロン6 SNPのT対立遺伝子を所持する個体は、非Tキャリアーよりも、目標のコレステロール管理に到達する可能性が3.5倍高かった(P=0.039)(表2)。対照的に、他のSNPは、こうした関連を示さなかった。
【0102】
[0098]実施例Iの考察:
[0099]実施例Iは、イントロン6 SNP rs35599367[配列番号152]が、ヒト肝臓において、CYP3A4 mRNA発現および酵素活性減少に有意に関連しており、そしてさらに、完全に対立遺伝子mRNA発現における相違を説明することを示す。
【0103】
[00100]イントロン6 SNPは、CYP3A4のメイン・ハプロタイプ中に包埋されており、いかなる他のSNPとも実質的なLDを欠くため、ハプロタイプタグSNPを用いた関連研究(14、15)による検出を逃れてきた。プロモーター1B、エンハンサーTGT挿入、エンハンサーrs2737418、およびイントロン7 SNP rs4646437を含む、以前報告されたCYP3A4 SNPはいずれも、対立遺伝子mRNA発現、mRNA、および酵素活性に検出可能な影響を持たず、CYP3A4変動性に対するこれらのSNPの寄与に反論する。
【0104】
[00101]調べたコホート中のイントロン6 SNPの対立遺伝子頻度は〜5%であり、〜10%のヘテロ接合性を生じた。先に報告された対立遺伝子頻度(35)は、アフリカ系アメリカ人、中国人、およびコーカソイドに関して、それぞれ、0.043、0.043、および0.083であり、イントロン6 SNP対立遺伝子頻度が、多様な民族群において、4〜8%の範囲であることが示される。
【0105】
[00102]イントロンSNPがmRNAレベルを改変する一般的な分子機構は、RNA発現、伸長、スプライシング、または成熟に影響を及ぼすことである。対立遺伝子比は、エクソンおよびイントロンマーカーSNPの両方に関してヘテロ接合体である肝臓において、mRNAおよびhnRNAで類似であったため、スプライシングおよびmRNA代謝回転は、主な機構からは排除されうる。さらに、CYP3A4 mRNAおよびhnRNAレベルは、ヒト肝臓において、並行して、多様であることが示され(36)、発現およびプロセシングの初期の事象であることを支持する。例えば、イントロン6 SNPは、発生期RNAのフォールディング、そしてしたがって伸長に影響を及ぼしうる。
【0106】
[00103]インシリコRNAフォールディング分析によって、イントロン6 SNPは、ループからステムへの構造変化を促進することが示されており(未提示)、これはおそらく、制御タンパク質の結合を妨害する。
【0107】
[00104]マイナー対立遺伝子の発現減少と一致して、イントロン6 SNPは、CYP3A4によって主に代謝されるスタチン薬剤(アトルバスタチン、ロバスタチンおよびシンバスタチン)の安定用量必要性の減少と有意に関連した。スタチン用量は、望ましいLDLに到達するよう用量設定されているため、代謝減少を伝達するイントロン6 SNP T対立遺伝子のキャリアーでは、より低い用量が達成可能である。本発明者らの考えを支持して、薬物動態研究によって、CYP3A4活性阻害は、シンバスタチンおよびロバスタチンの血漿濃度を劇的に増加させることが示され(31、32)、CYP3A4活性がCYP3A4が代謝するスタチンの血清濃度の主な決定要因であることが示唆される。
【0108】
[00105]イントロン6 T対立遺伝子を所持する患者はまた、LDL目標に到達する可能性がより高いという発見を、正常CYP3A4代謝を持つ被験体における不十分な投薬量の用量設定に、またはT対立遺伝子キャリアーにおける用量間のスタチンレベルにおける変動がより少ないことに、関連づけることも可能である。先に同定されたCYP3A4プロモーターSNP(1B、−392A>G)は、シンバスタチン治療の脂質低下有効性および安全性に関連せず(33)、このプロモーターSNPが肝臓mRNA発現に影響を及ぼさないことを示す本明細書の結果と一致する。さらに、現在の結果は、CYP3A5におけるSNPが、スタチン用量または治療転帰に影響を及ぼさず、CYP3A5がスタチン代謝に大きな役割を果たさないという報告と一致する(34)。したがって、イントロン6 SNPは、スタチン療法に影響を及ぼすことが示された唯一のCYP3A多型である。
【0109】
[00106]CYP3A4活性は、かなりの個体間変動を示すが、新規薬剤は、しばしば、CYP3A4による代謝に関してターゲティングされ、CYP2D6などの他の薬剤代謝性CYP酵素のヌル突然変異から生じる問題を回避する。
【0110】
[00107]本明細書に示す結果は、CYP3A4の変動性の一部が、イントロン6 SNPによって説明可能であることを示す。この発見の臨床的関連性は、その排出に関してCYP3A4に依存する2つのスタチン薬剤の設定用量に対するイントロン6 SNPの影響によって立証される。CYP3A4は、すべての臨床的に用いられる薬剤のおよそ半分の代謝に関与するため、現在、本発明者らは本明細書において、イントロン6 SNPは、狭く定義された投薬措置を持つ抗癌剤を含めて、多数の薬剤の投薬必要性、反応、および毒性に影響を及ぼすと考えている。
【0111】
[00108]したがって、CYP3A4イントロン6 SNPは、臨床実施において、そして薬剤発見および発展において、価値あるバイオマーカーである。
【0112】
[00109]実施例II
[00110]細胞から単離されたDNAを、特にヒトCYP3A4遺伝子に関して、陽性ヒトゲノム参照対照(すなわち突然変異が存在する)または陰性対照(すなわち正常または野生型に相当する)として用いてもよい。これは、これらの遺伝子に関して、正確でそして信頼可能な臨床診断試験を確実にしうる。
【0113】
[00111]例えば、臨床試験中に行われる遺伝子型決定アッセイにおいて、参照対照を用いてもよい。参照対照に、療法に反応しない患者に典型的な遺伝子変異が含まれる場合、参照対照を使用すると、非反応者が適切に同定され、そして非反応者に対する研究療法が無効であることに関するデータが適切に同定されるように、用いる遺伝子型決定アッセイが信頼性を持って行われるのが確実になるよう補助される。同様に、参照対照に、正常患者とは異なる速度で薬剤を代謝する患者(すなわち突然変異体チトクロムP450遺伝子を持つ患者)に典型的な遺伝子変異が含まれる場合、参照対照を使用すると、これらの患者が適切に同定され、そして適切に投薬され、そして不都合な薬剤反応または無効な療法が回避されるように、遺伝子変異の有効性が確実になるよう補助される。
【0114】
[00112]参照対照はまた、患者治療においても使用可能である。臨床試験におけるその使用と同様に、適切な療法が開始される前に、患者の状態が悪化しないように、有効な療法が時間に制約がある方式で同定されることが必須である。適切な投薬措置を選択する事もまた必須である。
【0115】
[00113]したがって、本発明の1つの側面は、特定の療法に反応する遺伝的素因に関して、複数の患者を試験する方法に関する。この側面において、1以上の参照対照を、既知の予期される結果を持つ「試料」として試験する。これらの対照には、療法に反応しない素因を示す患者(陽性対照)に関連する遺伝子変異体が含まれてもよいし、または療法に反応する素因を示す患者に関連する正常/野生型変異体(陰性対照)が含まれてもよい。
【0116】
[00114]したがって、診断アッセイが正確に実施されていることを確実にし、そして薬剤療法に対する耐性または減少した代謝状態を伝達する遺伝子変異を同定するため、試験実験室は参照対照を用いてもよい。非反応者が適切に同定されるのを確実にするため、試験実験室には、アッセイ、そしてしたがって患者の結果の有効性を決定するため、各アッセイ中に参照対照が含まれてもよい。参照対照をランダムにまたはあらかじめ決定された間隔で用いてもよい。同じ観点で、試験実験室は、実験室スタッフの正確さを評価するためのパネルとして参照対照を用いてもよい。
【0117】
[00115]したがって、本発明の別の側面は、適切な投薬措置を設定可能であるように、迅速なまたは緩慢になった代謝を示す遺伝子素因に関して、複数の患者を試験する方法に関する。この側面において、試験する1以上の試料は、「迅速な」または「緩慢な」代謝者である素因を有する患者と関連する遺伝子変異を含む、参照対照である。
【0118】
[00116]これらの多型は、例えば、「劣った」代謝者、「中間の」代謝者、「高」代謝者、および「超迅速」代謝者などの集団において、多数の表現型で発現される。特定の状況において、「高」代謝者は、少なくとも1つ、そして2より多くない正常な機能性対立遺伝子を有してもよく;「中間の」代謝者は、活性が低下した1つの対立遺伝子および1つのヌル対立遺伝子を所持してもよく;そして「劣った」代謝者は、酵素活性の完全な喪失を生じる、2つの突然変異体対立遺伝子を所持してもよい。特定の状況において、超迅速代謝者は、多数コピーの機能性対立遺伝子を所持し、そしてしたがって過剰な酵素活性を生じてもよい。したがって、特定の薬剤を投与する場合、「劣った」代謝者は、薬剤から有意な利益を得ずに、むしろ、標準用量を投与された際に、過剰な薬剤反応および副作用を経験する可能性もある。すなわち、代謝産物が活性療法部分である場合、「劣った」代謝者は療法的反応を示さない可能性もある。他方、「超迅速」代謝者は、標準的用量に反応するのに失敗しうる。
【0119】
[00117]試料をプレスクリーニングするための多様な方法を用いてもよい。例えば、生物学的試料をプレスクリーニングして、試料が関心対象の突然変異を有することを確実にしてもよい。患者集団を多様な要因に基づいてプレスクリーニングして、試料サイズを、突然変異体を含む個体の同定に必要な最小限にしてもよい。関心対象の突然変異を含む1以上の試料を同定する、試料に対する最初のゲノムスクリーニングを実行した後、これらの突然変異を持つ患者は、さらなる生物学的材料を得るため、場合によって召還されうる。場合によって、この材料を完全に配列決定して、関心対象の突然変異の存在を確認してもよい。生物学的材料は不死化されていてもよく、したがって、該材料は、参照対照の安定で、要望に応じた供給源を提供してもよく、あるいは、細胞はそれ自体、参照対照であってもよい。当該技術分野によく確立されたプロトコルを用いて、限定されるわけではないが、組織、体液(例えば血液、血清、血漿、唾液、尿、涙、精液、膣分泌物、リンパ液、脳脊髄液または粘膜分泌物)の核酸を含有する試料いずれかの中に存在する、ヒトゲノムDNA、個々の細胞または供給源の核酸を含有するこうした供給源の抽出物、ならびに細胞内構造、例えばミトコンドリアまたは葉緑体などを用いてもよい。
【0120】
[00118]特定の態様において、医学的状態または疾患に関して診断可能であるか、または被験体を医学的状態または疾患に罹患しやすくしうる、1またはそれより多くの遺伝子配列の存在に関して、プレスクリーニングしようとするヒトから、核酸が得られている。患者集団のプレスクリーニングの代替法として、関心対象の遺伝子配列に関して、一般的に利用可能な細胞培養をスクリーニングして、そして次いで、将来、連続して供給するために、細胞クローンを拡大し、そして保存してもよい。
【0121】
[00119]いくつかの既知のゲノムアッセイ法があり、該アッセイ法のため、試験において参照対照を用いてもよく、ここで大部分は、関心対象のSNPを含んでもまたは含まなくてもよいDNA試料とプライマーをハイブリダイズさせることを伴う。診断プライマーおよび/またはプローブにタグを付けて、迅速な同定を可能にしてもよい。ハイブリダイゼーションが起こったら、DNAを増幅してもよく、そしてタグ付けされたプライマーおよび/またはプローブを検出する。検証されたプライマーを用いて、参照対照の有効性を確認してもよい。参照対照が有効とされたら、これらを参照対照として商業的に入手可能なアッセイで用いてもよく、そして特定の突然変異の存在または非存在を決定する、これらのまたは他のアッセイで使用するために設計されるプライマーを確認するのに用いてもよい。したがって、本明細書に例示的なアッセイ法を記載する一方、本発明はこうしたものに限定されない。
【0122】
[00120]本発明は、多様なそして好ましい態様に言及して記載されてきているが、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多様な変化を行ってもよく、そしてその要素を同等物で置換してもよいことが、当業者には理解されなければならない。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の解説に対して、特定の状況または材料を適応させるよう、多くの修飾を行ってもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために意図される、本明細書に開示する特定の態様に限定されず、本発明には、請求項の範囲内に属するすべての態様が含まれると意図される。
【0123】
[00121]本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、こうした参考文献が本発明に対して先行技術として利用可能であることの承認ではない。本明細書に言及するいかなる刊行物も本明細書に援用される。本明細書に含まれている文書、条例、材料、デバイス、物品等のいかなる議論も、単に、本発明の背景を提供する目的のためである。あらゆるこれらの事項が本出願の各請求項の優先日以前に存在していたために、先行技術の基礎の一部を形成するか、または本発明が関連する分野において、共通の一般的な知識であったことの承認であるとは解釈されないものとする。
【0124】
参考文献
【0125】
【化1−1】

【0126】
【化1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CYP3A4が代謝する少なくとも1つの化合物に対する被験体の反応を予測するための方法であって、被験体の核酸試料において、1またはそれより多くの多型の対立遺伝子状態を検出する工程を含み、多型が:
i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);または
ii)それと連鎖不平衡にあるSNP;
の1またはそれより多くの多型である、ここで被験体における多型の対立遺伝子状態は、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発症するリスクを予測するものである、前記方法。
【請求項2】
CYP3A4関連障害の予後バイオマーカーに関して、被験体をスクリーニングする方法であって、被験体の核酸試料において、1またはそれより多くの多型の対立遺伝子状態を検出する工程を含み、多型が:
i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);または
ii)それと連鎖不平衡にあるSNP;
の1またはそれより多くの多型である、ここで被験体における多型の対立遺伝子状態は、CYP3A4関連障害の予後転帰を予測するものである、前記方法。
【請求項3】
被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発症するリスクを予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む、請求項1または2の方法。
【請求項4】
被験体がCYP3A4関連障害のより重度かまたはより重度でない表現型を有するかどうか予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む、請求項1または2の方法。
【請求項5】
被験体における障害の予後転帰を予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む、請求項1または2の方法。
【請求項6】
治療に対する被験体の反応を予測するために、被験体における多型の対立遺伝子状態を、参照集団における多型の対立遺伝子状態と相関させる工程をさらに含む、請求項1または2の方法。
【請求項7】
CYP3A4関連障害が代謝関連障害を含む、請求項1または2の方法。
【請求項8】
CYP3A4が代謝する化合物が、肝臓で代謝される1以上の薬剤を含む、請求項1または2の方法。
【請求項9】
CYP3A4が代謝する化合物が1以上のスタチン薬剤を含む、請求項1または2の方法。
【請求項10】
CYP3A4が代謝する化合物がアトルバスタチン、ロバスタチンおよびシンバスタチンの1以上を含む、請求項1または2の方法。
【請求項11】
CYP3A4が代謝する化合物が:CYP3A4阻害剤またはCYP3A4増進剤(enhancer)の1またはそれより多くを含む、請求項1または2の方法。
【請求項12】
多型が、イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、請求項1または2のいずれかの方法。
【請求項13】
多型が、rs35599367[配列番号152]を含み、ここで被験体における該多型の存在が、CYP3A4関連障害の増加したリスクを予測するものである、請求項1または2の方法。
【請求項14】
多型のマイナー対立遺伝子の存在が、ターゲット組織におけるCYP3A4のより低いレベルを予測するものであり、そしてCYP3A4 mRNA発現減少と関連する、請求項1または2の方法。
【請求項15】
生物学的試料における酵素特異的代謝産物の存在を検出するためのアッセイ系であって、試料が、少なくとも1つのCYP3A4代謝可能化合物に関する少なくとも1つのプローブ基質の既知の量で処置された個体から得られ、該プローブ基質が代謝産物の代謝経路に特異的であり、アッセイが:
i)含有される複数のアフィニティ複合体形成剤を含む、生物学的試料を受け取るための手段;
ii)アフィニティ複合体形成剤に結合した酵素特異的代謝産物の存在を検出するための手段;および
iii)代謝産物の比を定量化して、対応する表現型決定因子を提供するための手段であって;表現型決定因子が個体の代謝表現型プロファイルを提供する、前記手段;
を含む、前記アッセイ系。
【請求項16】
工程ii)または工程iii)が:
a)CYP3A4が代謝する薬剤に関する代謝経路(単数または複数)に特異的なプローブ基質を個体に投与し;
b)プローブ基質に反応した個体由来の生物学的試料において、代謝経路(単数または複数)の代謝産物を検出し;そして
c)検出された代謝産物に基づいて、複数決定因子代謝表現型のそれぞれの表現型決定因子を性質決定する;ここで、プローブ基質は、代謝経路によって代謝されることが知られる少なくとも1つの基質であり、そしてプローブ基質は代謝経路の誘導剤または阻害剤以外のものである
工程を含む方法にしたがって達成される、請求項15のアッセイ系。
【請求項17】
アッセイがリガンド結合アッセイである、請求項16のアッセイ系。
【請求項18】
リガンド結合アッセイが、イムノアッセイ、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、マイクロアレイ形式イムノアッセイおよびマイクロアレイ形式ELISAからなる群より選択される、請求項17のアッセイ系。
【請求項19】
生物学的試料を受け取るための手段が、各ウェル中の複数のアフィニティ複合体形成剤を含む、マルチウェルマイクロプレートである、請求項15のアッセイ系。
【請求項20】
複数のアフィニティ複合体形成剤がアレイに基づく形式で各ウェルに結合している、請求項19のアッセイ系。
【請求項21】
結合剤に結合した代謝産物の存在を検出するための手段が電荷結合素子(CCD)画像化装置である、請求項15のアッセイ系。
【請求項22】
代謝産物の比を定量化するための手段が濃度計(densitometer)である、請求項15のアッセイ系。
【請求項23】
被験体の核酸試料における1またはそれより多くの多型の対立遺伝子状態を検出するためのアッセイを含むキットであって、多型が:
i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);または
ii)それと連鎖不平衡にあるSNP
の1またはそれより多くの多型である、前記キット。
【請求項24】
アッセイ結果と、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発症するリスクを相関させるための指示をさらに含む、請求項23のキット。
【請求項25】
アッセイ結果と、障害に関する被験体の予後転帰を相関させるための指示をさらに含む、請求項23のキット。
【請求項26】
アッセイ結果と、被験体における特定の薬剤治療の成功または失敗の可能性を相関させるための指示をさらに含む、請求項23のキット。
【請求項27】
CYP3A4関連障害に関与するターゲット遺伝子における機能的多型を発見するための方法であって:
i)ターゲット遺伝子を発現しているターゲット組織の試料を提供し;
ii)
a)ターゲット遺伝子の転写領域中の2つの対立遺伝子各々から生じるmRNAの相対量を定量的に測定し、そして
b)他方の対立遺伝子に対して一方の対立遺伝子のmRNA発現を比較して、対立遺伝子mRNA発現不均衡(AEI)比を得る
ことによって、ターゲット遺伝子のAEIを測定し;そして
iii)AEI比を、多型を含有する領域に関してターゲット遺伝子をスキャンするための表現型として用いる、
ここで、AEI比および多型の間に有意な関連がある場合、多型がCYP3A4関連障害に関するバイオマーカーとして働きうる機能性多型であることを示す
工程を含む、前記方法。
【請求項28】
多型がエクソン領域にある、請求項27の方法。
【請求項29】
多型がSNPである、請求項27の方法。
【請求項30】
バイオマーカーが、遺伝子転写、mRNAプロセシング、mRNAスプライシング、またはその組み合わせに影響を及ぼす、請求項27の方法。
【請求項31】
バイオマーカーが、タンパク質へのmRNA翻訳に影響を及ぼす、請求項27の方法。
【請求項32】
ターゲット遺伝子が、CYP3A4遺伝子座である、請求項27の方法。
【請求項33】
イントロン6 SNPに関するスクリーニングを含む、スタチン薬剤の代謝を決定するための方法。
【請求項34】
イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)に関するスクリーニングを含む、スタチン薬剤の代謝を決定するための方法。
【請求項35】
イントロン6 SNPを含む、CYP3A4における変動性を検出するためのバイオマーカー。
【請求項36】
イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4における変動性を検出するためのバイオマーカー。
【請求項37】
イントロン6に位置するSNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4代謝性療法剤の投薬必要量を決定するためのバイオマーカー。
【請求項38】
イントロン6に位置するSNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4代謝性療法剤の反応を決定するためのバイオマーカー。
【請求項39】
イントロン6に位置するSNP(rs35599367[配列番号152])(C>T)を含む、CYP3A4代謝性療法剤の毒性を決定するためのバイオマーカー。
【請求項40】
療法剤がスタチン薬剤である、請求項35〜39の一項のバイオマーカー。
【請求項41】
療法剤が抗癌薬剤である、請求項35〜39の一項のバイオマーカー。
【請求項42】
療法剤が、狭く定義された投薬措置を有する薬剤である、請求項35〜39のいずれか一項のバイオマーカー。
【請求項43】
臨床的薬理ゲノミクススクリーニングの方法であって:
a)請求項35〜39の少なくとも1以上のバイオマーカーの存在に関して試料をスクリーニングし、ここで、1以上のバイオマーカーの存在が、患者が改変された代謝を有する指標となり;そして
b)スクリーニングにおいて、ランダムな方式またはあらかじめ決定された方式で、参照対照を含む、ここで、参照対照は、改変された代謝を有する患者の指標となるバイオマーカーを含むDNAを含む
工程を含み、
参照対照中、1またはそれより多くの薬剤代謝遺伝子における1またはそれより多くのバイオマーカーの存在が検出されると、試料中の1またはそれより多くの薬剤代謝遺伝子において、同じ1またはそれより多くのバイオマーカーを検出するのにスクリーニングが有効であることが検証される
前記方法。
【請求項44】
個別化医学的療法であって:
i)ターゲット患者集団由来の試料に対して、請求項43のスクリーニング法を行って、CYP3A4または薬剤代謝に関連する他の遺伝子における1またはそれより多くの突然変異体を含む遺伝子プロファイルを持つ患者を同定し;そして
ii)工程i)において、特定の遺伝子プロファイルを所持すると同定された患者を、同定された遺伝子プロファイルに特有の関心対象の療法で治療する;
工程を含む、前記方法。
【請求項45】
遺伝子プロファイルが、改変された代謝を持つ患者の指標である、請求項44の方法。
【請求項46】
改変された代謝が:劣った代謝者、中間代謝者、高代謝者、および超迅速代謝者からなる群より選択される、請求項44の方法。
【請求項47】
遺伝子プロファイルが、患者における関心対象の療法の有効性の指標となる、請求項44の方法。
【請求項48】
遺伝子プロファイルが、遺伝的障害を持つ患者の指標となる、請求項44の方法。
【請求項49】
遺伝子プロファイルが、特定の療法で治療してはならない患者の指標となる、請求項44の方法。
【請求項50】
関心対象の療法が:癌、心臓疾患、神経学的障害、精神障害、自己免疫障害、および代謝障害からなる群より選択される、疾患または障害を治療するために用いられる、請求項44の方法。
【請求項51】
1以上の突然変異がCYP3A4における突然変異を含み、そして関心対象の療法が、患者への少なくとも1つのスタチンの投与を含む、請求項44の方法。
【請求項52】
参照対照として使用するのに適した単離ゲノムDNAを生成するのに使用可能な細胞を同定するための方法であって:
a)特定の療法に対する患者の反応の予測される度合いを決定する遺伝子素因に関連する、志願者核酸試料中の1以上の多型を含む、ヒトゲノムDNA配列の存在に関してヒト志願者を前向きに(prospectively)スクリーニングし;ここで多型は:
i)イントロン6に位置するCYP3A4関連SNP(rs35599367[配列番号152])(C>T);または
ii)それと連鎖不平衡にあるSNP;
の1またはそれより多くの多型であり、ここで被験体における多型の対立遺伝子状態が、被験体がCYP3A4関連障害を有するかまたは発症するリスクを予測するものである;
b)関心対象の1以上の突然変異を所持する志願者由来の細胞を単離し;そして
c)複数の有効なゲノムスクリーニングアッセイに細胞由来のDNAを供する;
工程を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521767(P2012−521767A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502287(P2012−502287)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028842
【国際公開番号】WO2010/111600
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】