説明

薬剤塗布チューブ

【課題】 体腔内の器官に通じる管路径が小径であっても容易に挿入することができると共にその管路に通じる目的部位が比較的大径であっても、その内壁に直接接するようにして薬剤を確実且つ集中的に塗布することができる薬剤塗布チューブを提供する。
【解決手段】 チューブ本体1の先端外周部に弾性を有し且つ外周面に薬剤保有部4を設けている短筒形状の拡張部材3を装着してこの拡張部材3内にチューブ本体1内に設けている導通ルーメン2を通じて流体を供給可能にしていると共に、このチューブ本体1を外管5によって相対移動可能に被覆してなり、この薬剤塗布チューブを体腔内に挿入して目的部位において拡張部材3内に流体を供給することによりその流体圧で拡張部材3を拡張させて目的部位に接触させ、薬剤保有部4の薬剤を目的部位に直接、塗布するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内の所定箇所に試薬、治療薬、麻酔薬などの薬剤を投与したり塗布したりする薬剤塗布チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
診断や治療のための薬剤投与方法として、カテーテルやチューブを体腔内に挿入してその先端部から各種の器官や所定部位に直接投与することが広く行われている。このように、カテーテルやチューブを使用して薬剤の投与を行う方法によれば、経口や静脈注射などの手段で薬剤投与を行う場合に比べて、体腔内の所定の目的箇所に試薬や治療薬、麻酔薬等の薬剤を集中的に投与することができるので極めて効率がよい。このため、診断や治療をより高精度に行うことができるばかりでなく薬剤を効果的に用いた治療が可能となり、しかも、薬剤投与の必要のない箇所に薬剤が作用することによる副作用の発生リスクを低減させることができる。
【0003】
カテーテルやチューブによることなく、体腔内の目的箇所に薬剤を塗布する方法としては、従来から、薬剤等を含有、保持した部材、例えば、先端綿球に薬剤を塗布、含浸させた綿棒や、先端部に設けている植毛、或いは、球状のスポンジに薬剤を含浸、保有させた棒状体を使用して薬剤を塗布する方法が広く知られている。
【0004】
一方、カテーテルやチューブを用いて体腔内の目的箇所に薬剤を塗布する方法としては、対象とする箇所に向けて先端部から薬剤を放出したり、噴出させる方法や、先端開口部内に薬剤を保持させておき、先端部が目的箇所に達した時に薬剤を対象部位に向かって散布したり投与する方法が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には先端部に複数個の薬剤放出孔を設けているチューブを体腔内の目的箇所まで挿入したのち、外部に設置しているポンプの作動によりこのチューブ内に薬剤を送り込み、上記薬剤放出孔から対象部位に薬剤を注入する方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、先端開口部内に薬液等の散布剤を保持する散布剤収容部を設けたチューブを体腔内の目的箇所まで挿入にしたのち、チューブの手元側に設けている超音波振動子を作動させることにより、上記散布剤を微粒子化させて放出可能にした超音波散布チューブが記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、先端開口部内に磁性を持つ薬剤を保持した保持部を設けると共にこの保持部に向かって接離自在な磁石片を摺動自在に内装しているチューブを、上記磁石片によって薬剤を保持部に吸引、保持させた状態で体腔内の目的箇所まで挿入にし、目的箇所に達した時に磁石片を後退させて保持力を解くことにより、薬剤を投与可能にした薬剤の磁気輸送カテーテルが記載されている。
【特許文献1】特開平2−239875号公報
【特許文献2】特開2001−25467号公報
【特許文献3】特開2002−345968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記カテーテルやチューブによることなく、綿棒等のようにその先端部に薬剤を塗布、含浸させた綿球等を有する部材では、体腔の管路内に挿入すると、目的箇所に達するまでに綿球等の表面が管路の内壁に摺接して薬剤がその内壁に塗布されたり或いは脱落して対象部位に効果的に薬剤を塗布することができないといった問題点がある。このような問題点はチューブまたはカテーテルの先端外周部に薬剤を保有させた状態で体腔内に挿入した場合においても発生する。
【0009】
一方、上記特許文献1に記載されているようにチューブ内を通じて薬剤を対象部位に注入する方法や、特許文献2、3に記載されているようにチューブの先端部内に薬剤を保持させておく場合には、上述したような問題点は生じないが、特許文献1のように、チューブの先端から対象部位に薬剤を注入する方法では、薬液を噴出させると、その圧力によって器官などを損傷させる虞れがあり、噴出力を弱くすると対象部位に対する薬剤の塗布が困難になる場合が生じる。
【0010】
また、上記特許文献2、3に記載されたチューブやカテーテルによれば、その先端部内に薬剤を保持しておく手段や、その保持を解く手段等を必要として構造が複雑化し、コスト高になる。その上、いずれの手段においても、体腔内の対象部位に対して離れた位置から薬剤を噴射等によって塗布、投与するように構成しているので、対象部位以外の部分にも薬剤が塗布、投与されることになり、薬剤の使用量が必要以上に多くなるといった問題点がある。
【0011】
さらに、実際の体腔の管路にあってはその管路径が定まらない場合が多く、従って、管路内にチューブ等を挿入してこの管路を通じて目的とする部位に薬剤を塗布したり供与する際にチューブが比較的大径であると、管路内への挿入時や管路内での通過時に抵抗が生じて管路を傷つける虞れがある。そのため、通常は、大小径のチューブやカテーテルを準備しておき、小径のものから大径のものに順次、交換しながら挿入しているのが現状である。また、棒状体やチューブまたはカテーテルの先端部に薬剤を保有させておき、この薬剤を目的とする部位に直接塗布する方法では、これらの先端部が体腔の管路内を通過する際に、管路の内壁に摺接して内壁との摩擦力や変形等により薬剤が脱落する虞れがあり、そのため、複数本のチューブ等を準備しておく必要がある。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、径の定まらない体腔の管路径内を通じて体腔内の対象とする部位に薬剤を塗布する際に、複数のチューブを使用することなく、一本のチューブを一回、挿入するだけで、確実且つ容易に塗布することができるようにした薬剤塗布チューブを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の薬剤塗布チューブは、請求項1に記載したように、体腔内に挿入して目的部位に薬剤を塗布するための薬剤塗布チューブであって、内部に流体導通ルーメンを設けている可撓性を有するチューブ本体と、このチューブ本体の先端部に装着されて上記流体導通ルーメンを通じてその内部に供給される流体圧により拡張可能で、且つ、外周面に薬剤を塗布等により保有させるように形成している拡張部材と、この拡張部材を備えたチューブ本体を被覆した可撓性を有する外管とからなり、この外管とチューブ本体との相対移動により拡張部材を外管から突出させると共に拡張部材内に供給される流体圧により該拡張部材を拡張させて目的部位に上記薬剤を塗布するように構成している。
【0014】
このように構成した薬剤塗布チューブにおいて、請求項2に係る発明は、弾性を有する材料からなる短筒部材をチューブ本体の先端部外周面に被嵌してその両端部をチューブ本体の外周面に固着することにより拡張部材を形成してなる一方、チューブ本体の先端部に導通ルーメンから拡張部材の内周面とチューブ本体の外周面間に連通する流体導入孔を設けていることを特徴とし、請求項3に係る発明は、拡張部材の外周面に薬剤を保有するスポンジ又はガーゼ等の薬剤保有層を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、外周面に薬剤を塗布等によって保有させている拡張部材を先端部に装着したチューブ本体を外管によって被覆していると共に、上記拡張部材を外管とチューブ本体との長さ方向の相対移動によって外管の先端から突出させ、その内部に流体導通ルーメンを通じて流体を供給することにより拡張可能に構成しているので、体腔内の対象部位が大径であってもこの拡張部材の外径を外管の外径よりも大きく拡張させて対象部位に正確に接触させることができると共に、この拡張部材の外周面に保有させている薬剤を対象部位に直接的に簡単且つ確実に塗布することができる。
【0016】
従って、外管の外径を体腔管路における小径部分よりも小径に形成しておいても、拡張部材の拡張によって確実に体腔内の対象部位に薬剤を塗布することができるから、外管の挿入による患者の苦痛を極力抑制することができるばかりでなく、体腔の内壁等を傷つけることなく該体腔の管路内を円滑且つ確実に対象部位まで挿入することができると共に、挿入時には拡張部材は外管内に収納されているから、体腔内の狭い管路を通過する際においてもこの拡張部材の外周面に保有させている薬剤が管路の内壁に付着させたり、脱落したりする虞れはない。そのため、1本の薬剤塗布チューブによって容易に且つ能率よく対象部位に対する薬剤塗布処置を行うことができる。
【0017】
さらに、拡張部材を拡張させる手段は、可撓性を有するチューブ本体内に流体導通ルーメンを設けてこの流体導通ルーメン内を通じて拡張部材に気体や水等の流体を供給することにより、その流体圧で拡張するように構成しているので、構造が簡単で安価に提供できるばかりでなく、取扱いが容易で体腔内の対象部位に対する薬剤塗布作業が円滑に行うことができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、上記拡張部材は、弾性を有する材料からなる短筒部材をチューブ本体の先端部外周面に被嵌してその両端部をチューブ本体の外周面に固着してなるものであるから、チューブ本体の先端部外周面に拡張部材を簡単且つ確実に装着することができると共に、この拡張部材は弾性を有する短筒部材からなるので、その内部に供給される流体圧に応じて大小に連続的に拡縮させることができ、体腔における薬剤塗布対象部位の大きさに応じてその対象部位の内壁に拡張部材を接触させて薬剤の確実且つ円滑な塗布を可能にすることができる。
【0019】
さらに、チューブ本体の先端部に流体導通ルーメンから拡張部材の内周面とチューブ本体の外周面間に連通する流体導入孔を設けているので、拡張部材の内周面に流体圧を集中的に作用させて、体腔の対象部位にその外周面が接するまで素早く拡張させることができる。
【0020】
また、請求項3に係る発明によれば、拡張部材の外周面に薬剤を保有するスポンジ又はガーゼ等の薬剤保有層を設けているので、比較的多量の薬剤を保有させておくことができ、対象部位に所望量の薬剤を確実に塗布、供与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の薬剤塗布チューブの具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、薬剤塗布チューブAは、一定長さと一定径を有し且つ内部に圧力流体の導通ルーメン2を設けているチューブ本体1と、このチューブ本体1の先端部外周面に装着され且つその外周面に薬剤を塗布等によって保有する薬剤保有部4を設けている拡張部材3と、この拡張部材3を含めてチューブ本体1を全長に亘って被覆し、且つ、チューブ本体1との長さ方向の相対移動によってその先端開口部から上記拡張部材2を装着したチューブ本体1の先端部を突出可能にしている一定の内外径を有する外管5とからなり、チューブ本体1内の上記流体導通ルーメン2を通じて供給される流体圧により該拡張部材3を拡張可能に構成している。
【0022】
具体的には、上記チューブ本体1は、可撓性を有し且つ使用時における基端部での挿入等の操作力を先端側に円滑に伝達することができる適度な剛性を備えた一定長さと径を有する断面円形状の棒状体からなり、その内部に全長に亘って上記流体導通ルーメン2を設けていると共にこの流体導通ルーメン2の先端は閉止されてあり、さらに、チューブ本体1の先端部に、この流体導通ルーメン2の先端部内から上記拡張部材3の内周面とチューブ本体1の先端部外周面との間の隙間の極く小さい空隙部6内に連通する流体導入孔7を設けている。
【0023】
また、チューブ本体1の基端部は外管5の基端開口部から後方に突出させていると共にその突出端に上記流体導通ルーメン2に流体を供給するための接続コネクター8を連結、連通させている。なお、チューブ本体1内に上記流体導通ルーメン2以外のルーメンを設けておいてよい。
【0024】
チューブ本体1を構成する材料としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーンゴム、天然ゴム等の可撓性を有する高分子材料を挙げることができる。
【0025】
このような材料を使用してチューブ本体1を製造するには、押出成型や射出成型、ブロー成形、ディッピング成形などの成型手段によって行うことができるが、押出成型によって製造することが好ましい。
【0026】
このチューブ本体1の先端部外周面に装着する上記拡張部材3は、長さ方向及び径方向に伸縮自在な材料からなる短筒部材をチューブ本体1の先端部外周面に被嵌させてこの短筒部材の両端部をチューブ本体1の外周面に気密的に固着一体化させることより形成されてあり、チューブ本体1の先端部外周面に固着した両端部間の内周面をチューブ本体1の外周面に固着することなくこれらの対向面間に上記空隙部6を設けている。なお、このような空隙部6を設けることなく、拡張部材3の内周面をチューブ本体1の先端部外周面に弾性的に密接させておき、上記流体導通ルーメン2から流体導入孔7を通じて供給される流体圧によってその内周面をチューブ本体1から離間させながら拡張させるように構成しておいてもよい。
【0027】
拡張部材3を構成する短筒部材の材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイソプレンなどが挙げられ、これらの材料において、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムや各種エラストマーなどからなる拡張部材3を使用すると、体腔内で弾性的に大きく膨脹、収縮をさせることができるので好適である。
【0028】
このような材料を使用して拡張部材3を製造するには、上記チューブ本体1と同様に押出成型や射出成型、ブロー成形、ディッピング成形などの成型手段によって行うことができる。なお、この拡張部材3の両端部をチューブ本体1の先端部外周面に気密的に固着するには、熱融着による方法や接着剤を用いる方法、その両端部を糸条物で結着、固定する方法などを採用することができる。
【0029】
また、拡張部材3の外周面に設けている上記薬剤保有部4としては、拡張部材3の外周面に直接、液状の薬剤(薬液)を塗布することによって形成しているが、拡張部材3の外周面複数個所に凹部(図示せず)を設けてこの凹部内に薬剤9を収納して保有させておき、拡張部材3を拡張させた際に流体圧によりその凹部を該拡張部材3の外周面と面一状に連続するように膨脹させて薬剤9を対象部位に直接塗布、投与するように構成しておいてもよい。
【0030】
一方、チューブ本体1を被覆している上記外管5はその内径を上記拡張部材3の外径よりも僅かに大径に形成して、互いに長さ方向に相対移動できるように構成している。
【0031】
この外管5を構成する材料としては、特に限定されないが、上記チューブ本体1と同じ材料、即ち、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコーンゴム、天然ゴム等の可撓性を有する高分子材料を挙げることができる。さらに、このような材料を使用して外管5を製造するには、上記チューブ本体1の製造と同じく、押出成型や射出成型、ブロー成形、ディッピング成形などの成型手段によって行うことができるが、押出成型によって製造することが好ましい。
【0032】
また、外管5の先端外周端縁が角部に形成されていると、体腔内に挿入した際に該体腔の管路壁に引っ掛かって円滑な挿入が困難となる場合が生じると共にその管路壁を傷つける虞れがあるので、図に示すように先端面5aに円弧状の丸みを付けておく。このような丸みを付するには、外管5の先端面を熱加工によって二次的に溶融してその形状に形成する方法や、その先端部に円弧状の丸みを有する円環形状の形成部材を取付けてよい。同様に、上記チューブ本体1の先端外周端縁も丸み加工を施しておくことが好ましい。
【0033】
このように構成した薬剤塗布チューブAは、使用に際してチューブ本体1の先端外周部に装着している拡張部材3の薬剤保有部4に試薬、治療薬、麻酔薬などの薬剤9(薬液)を塗布することによって保有させたのち、チューブ本体1を外管5に挿入して拡張部材3をこの外管5の内周面に沿って該外管5の先端部内に配設した状態とする。この状態にしてチューブ本体1を内装した外管5を図3に示すように体腔B内に挿入し、目的箇所に達すると、図4に示すように、チューブ本体1を前方側に、外管5を後方側に相対移動させることによってチューブ本体1の先端外周部に装着している拡張部材3を外管5の先端開口部から前方に突出させる。
【0034】
しかるのち、体外側から接続コネクター8を通じて流体をチューブ本体1内に設けている流体導通ルーメン2に供給し、該チューブ本体1の先端部に設けている流体導入孔7を通じて拡張部材3内に注入すると、この拡張部材3が流体圧によって膨脹して図5に示すように、外管5の外径よりも大きく拡張し、その外周面をチューブ本体1よりも大径の対象部位の内壁に接触させると共に、薬剤保有部4に保有している薬剤9を体腔Bにおける対象部位の内壁に直接塗布する。従って、薬剤を対象部位のみに確実且つ集中的に塗布することができる。なお、上記流体としては、空気などの気体や、水、生理食塩水、ゲル状の液体等を使用することができる。
【0035】
以上の実施例においては、拡張部材3の外周面に設けている薬剤保有部4として、拡張部材3の外周面に直接設けているが、図6に示すように、拡張部材3の外周面に薄いスポンジやガーゼ等からなる薬剤保有層を設けておき、この薬剤保有層に薬液からなる薬剤を含浸、保有させるように構成しておいてもよい。この薬剤保有部4'によれば、拡張部材3を流体圧によって膨脹させて該薬剤保有部4'を体腔Bの対象部位の内壁に圧接させると、その圧接力によって薬剤保有部4'が圧縮して該薬剤保有部4'に含有させている薬剤が滲み出し、対象部位の確実煮塗布、投与することができる。その他の構造については上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。なお、チューブ本体1の先端面側の外管5の開口端部内に該開口端を密閉する蓋部材を装着しておき、チューブ本体1の前進移動によって該チューブ本体1の先端面で該蓋部材を外管5の開口部から離脱させるようにしておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明薬剤塗布チューブの簡略縦断側面図。
【図2】その拡大縦断正面図。
【図3】体腔の管路内に挿入している状態の一部縦断側面図。
【図4】外管から拡張部材を突出させた状態の一部縦断側面図。
【図5】拡張部材を拡張させた使用状態を示す先端部分の縦断側面図。
【図6】本発明の別な実施の形態を示す一部を断面した簡略側面図。
【符号の説明】
【0037】
A 薬剤塗布チューブ
1 チューブ本体
2 流体導通ルーメン
3 拡張部材
4 薬剤保有部
5 外管
7 流体導入孔
9 薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入して目的部位に薬剤を塗布するための薬剤塗布チューブであって、内部に流体導通ルーメンを設けている可撓性を有するチューブ本体と、このチューブ本体の先端部に装着されて上記流体導通ルーメンを通じてその内部に供給される流体圧により拡張可能で、且つ、外周面に薬剤を塗布等により保有させるように形成している拡張部材と、この拡張部材を備えたチューブ本体を被覆した可撓性を有する外管とからなり、この外管とチューブ本体との相対移動により拡張部材を外管から突出させると共に拡張部材内に供給される流体圧により該拡張部材を拡張させて目的部位に上記薬剤を塗布するように構成したことを特徴とする薬剤塗布チューブ。
【請求項2】
拡張部材は弾性を有する材料からなる短筒部材をチューブ本体の先端部外周面に被嵌してその両端部をチューブ本体の外周面に固着してなる一方、チューブ本体の先端部に導通ルーメンから拡張部材の内周面とチューブ本体の外周面間に連通する流体導入孔を設けていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤塗布チューブ。
【請求項3】
拡張部材の外周面に薬剤を保有するスポンジ又はガーゼ等の薬剤保有層を設けていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤塗布チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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