説明

薬剤投与装置

【課題】生体内に薬剤等の流体を吐出させるまでの生体内へのカテーテルの設置作業性を高めることができる薬剤投与装置を提供すること。
【解決手段】内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしており、前記内部チャネルに流体を取り入れる第1の流体取入口3と、前記内部チャネルに流体を取り入れる第2の流体取入口4と、前記管状の躯体の側面において、第1の流体取入口3と第2の流体取入口4との間に位置する、前記内部チャネルと外部とを連通する少なくとも1つの貫通穴7と、を有するカテーテル2と、第1の流体取入口3に連通するポンプAと、第2の流体取入口4に連通するポンプBと、ポンプA,Bの駆動を制御する制御部5と、制御部5は、カテーテル2の内部チャネル内を通って、ポンプAからポンプBまで生理食塩水を送出する第1の動作モードを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体内に挿入され、側面に配設された複数の貫通穴から薬剤を吐出するカテーテルを用いた薬剤投与装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間や人間以外の哺乳動物等に挿入されるカテーテルは、内部チャネルを有する細長い管状をしている。この管状の躯体のうち体内に挿入される部分には、薬剤等の吐出等を目的として内部チャネルと外部とを連通する貫通穴が設けられている。ここで、従来のカテーテルは、カテーテルの一方の側から薬剤等を前記貫通穴に送達していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平04−041621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のカテーテルを生体内に設置する場合に、内部チャネル内が空気で満たされていると、薬剤等の送達を開始してしばらくは前記貫通穴からは空気が吐出され、その後に薬剤が吐出される。ここで、薬剤の投与ターゲット内に空気が吐出されるのを回避するためには、カテーテルの内部チャネルから空気を追い出すために、内部チャネルを液体(例えば、生理食塩水や薬剤)で満たしてからカテーテルを設置する必要があった。
【0005】
しかしながら、内部チャネルに液体を満たした状態でカテーテルを設置する手技を行う場合、液体が満たされた内部チャネルの開口部を全て塞いだ状態で設置をし、設置が完了した段階で前記開口部を開放する必要があり、作業工数が多く必要であった。また、内部チャネルに満たされた流体の影響でカテーテルの柔軟性が損なわれ、カテーテルを設置する手技の作業性が下がっていた。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生体内に薬剤等の流体を吐出させるまでの生体内へのカテーテルの設置作業性を高めることができる薬剤投与装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる薬剤投与装置は、内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしており、前記内部チャネルに流体を取り入れる第1の流体取入口と、前記内部チャネルに流体を取り入れる第2の流体取入口と、前記管状の躯体の側面において、前記第1の流体取入口と前記第2の流体取入口との間に位置する、前記内部チャネルと外部とを連通する少なくとも1つの貫通穴と、を有するカテーテルと、前記カテーテルの第1の流体取入口に直接又は間接に連通する第1の流体送出源と、前記カテーテルの第2の流体取入口に直接又は間接に連通する第2の流体送出源と、前記第1の流体送出源と前記第2の流体送出源との駆動を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記カテーテルの内部チャネル内を通って、前記第1の流体送出源から前記第2の流体送出源まで第1の流体を送出する第1の動作モードを有することを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記カテーテルの内部チャネル内を通って、前記第2の流体送出源から前記第1の流体送出源まで第2の流体を送出する第2の動作モードを更に有することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記第2の流体送出源は、大気開放機構を備えており、前記制御部は、前記第1の動作モードにおいて、前記第2の流体送出源が大気開放された状態で、前記第1の流体送出源から前記第1の流体を第2の流体送出源に向けて送出し、前記第1の流体が前記第2の流体送出源に到達した後、前記第2の流体送出源の大気開放機構を駆動して前記第2の流体送出源を大気非開放とするように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記第1の流体送出源は、大気開放機構を備えており、前記制御部は、前記第2の動作モードにおいて、前記第1の流体送出源が大気開放された状態で、前記第2の流体送出源から前記第2の流体を第1の流体送出源に向けて送出し、前記第2の流体が前記第1の流体送出源に到達した後、前記第1の流体送出源の大気開放機構を駆動して前記第1の流体送出源を大気非開放とするように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記第2の流体送出源は、前記カテーテルの内部チャネルに連通した吸引機構を備えており、前記制御部は、前記第1の動作モードにおいて、前記第2の流体送出源の吸引機構を駆動し、前記第1の流体送出源から前記第1の流体を前記第2の流体送出源に向けて送出し、前記第1の流体が前記第2の流体送出源に到達した後、前記第2の流体送出源の吸引機構を停止するように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記第1の流体送出源は、前記カテーテルの内部チャネルに連通した吸引機構を備えており、前記制御部は、前記第2の動作モードにおいて、前記第1の流体送出源の吸引機構を駆動し、前記第2の流体送出源から前記第2の流体を前記第1の流体送出源に向けて送出し、前記第2の流体が前記第1の流体送出源に到達した後、前記第1の流体送出源の吸引機構を停止するように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記カテーテルの細長い管状の躯体の途中に、U字型に折り曲がった屈曲部を有することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記カテーテルは、前記第1の流体取入口と前記第2の流体取入口との間から、流体の排出用のダクトが分岐することを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記貫通穴の開閉を操作する開閉操作機構をさらに有することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記第2の薬剤送出源には、前記第1の流体の到達を検出するセンサーが備えられていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記第1の薬剤送出源には、前記第2の流体の到達を検出するセンサーが備えられていることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしており、前記管状の躯体の側面に前記内部チャネルと外部とを連通する少なくとも1つの貫通穴とを有し、前記貫通穴が生体内に位置し前記内部チャネルが前記管状の躯体の一端で生体外と連通する状態で生体に設置されるカテーテルと、前記管状の躯体の他端で、前記カテーテルの内部チャネルに直接又は間接に連通する流体送出源と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記管状の躯体の一端における内部チャネルと生体外との連通を閉状態に移行可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、上記の発明において、前記管状の躯体の一端における内部チャネルと生体外との連通を閉じる部材をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、制御部が、カテーテルの内部チャネル内を通って、第1の流体送出源から第2の流体送出源まで第1の流体を送出するようにしているので、液体が満たされた内部チャネルの開口部を全て塞いだ状態で設置しなくてもよいので、生体内に薬剤等の流体を吐出させるまでの生体内へのカテーテルの設置作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1にかかる薬剤投与装置が生体に設置された状態を示す概略模式図である。
【図2】図2は、この発明の実施の形態1にかかる薬剤投与装置の構成を模式的に示したブロック図である。
【図3】図3は、この発明の実施の形態1にかかる薬剤投与装置の制御部による制御処理手順を示す全体フローチャートである。
【図4−1】図4−1は、図3に示した生理食塩水の置換処理手順を示す詳細フローチャートである。
【図4−2】図4−2は、図3に示した薬剤の置換処理手順を示す詳細フローチャートである。
【図5】図5は、この発明の実施の形態2にかかる薬剤投与装置の概要構成を模式的に示したブロック図である。
【図6−1】図6−1は、図5に示した薬剤投与装置による生理食塩水の置換処理手順を示す詳細フローチャートである。
【図6−2】図6−2は、図5に示した薬剤投与装置による薬剤の置換処理手順を示す詳細フローチャートである。
【図7】図7は、この発明の実施の形態3にかかる薬剤投与装置の概要構成を模式的に示したブロック図である。
【図8】図8は、この発明の実施の形態4にかかる薬剤投与装置の概要構成を模式的に示したブロック図である。
【図9−1】図9−1は、カテーテルの貫通穴の近傍であって内部チャネル内に設けた閉塞機構の構成を示す図である。
【図9−2】図9−2は、図9−1のA−A線断面図およびB−B線断面図である。
【図10】図10は、この発明の実施の形態6にかかる薬剤投与装置の概要構成を示す模式図である。
【図11】図11は、この発明の実施の形態7にかかる薬剤投与装置が生体に設置された状態を示す概略模式図である。
【図12】図12は、この発明の実施の形態7にかかる薬剤投与装置の概要構成を模式的に示したブロック図である。
【図13】図13は、この発明の実施の形態7にかかる薬剤投与装置の制御部による制御処理手順を示す全体フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態である薬剤投与装置について説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる薬剤投与装置1が生体に設置された状態を示す概略模式図である。図1において、内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしたカテーテル2は、この内部チャネルに流体を取り入れる第1の流体取入口3と、この第1の流体取入口3とは別に当該内部チャネルに流体を取り入れる第2の流体取入口4とを有する。また、カテーテル2は、管状の躯体の側面において、第1の流体取入口3と第2の流体取入口4との間に位置し、当該内部チャネルとカテーテル2外部とを連通する少なくとも1つの貫通穴7を有している。カテーテル2は、貫通穴7が薬剤投与目標(例えば腫瘍)9内に位置するように設置されており、貫通穴7から薬剤が薬剤投与目標9内に吐出される。
【0025】
生体の表面8には、カテーテル2の第1の流体取入口3に連通した第1の流体送出源であるポンプAと、第2の流体取入口4に連通した第2の流体送出源であるポンプBが取り付けられている。この実施の形態1では、ポンプAと第1の流体取入口3との連通、およびポンプBと第2の流体取入口4との連通は、直接に連通する形態となっている。なお、例えば他のパイプ等を介して間接に連通する構成も可能である。また、ポンプAおよびポンプBは、生体の表面8に設置することに代えて、生体内や、生体外部の離間した位置に設置する構成も可能である。
【0026】
ポンプAおよびポンプBには、制御部5が通信路(有線又は無線)6を介して接続されている。制御部5は、ポンプAとポンプBとの駆動を制御する。
【0027】
図2は、この発明の実施の形態1にかかる薬剤投与装置1の構成を模式的に示したブロック図である。図2において、ポンプA側は、第1の流体(例えば、生理食塩水など)を収容する容器10と、カテーテル2を経由してポンプA側に到達した流体を収容する排気/廃液タンク12とを備える。この流体としては、例えば、カテーテル2の内部チャネル内に存在していた空気や、ポンプB側から送られてきた第2の流体である薬剤等がある。
【0028】
また、ポンプA側には、カテーテル2と接続状態にあるポンプ内部を大気と連通させて、ポンプAの内圧を大気圧とする大気開放機構14が備わっている。大気開放機構14は例えば、ポンプ内部と外部とを連通させる開閉弁などで構成できる。さらに、ポンプA側には、カテーテル2を経由してポンプAに流体が到達したことを検出するセンサー16が備わっている。センサー16は例えば、導電センサーが採用できる。
【0029】
ポンプB側には、第2の流体(例えば、薬剤など)を収容する容器11と、カテーテル2を経由してポンプB側に到達した流体を収容する排気/廃液タンク13とを備える。この流体としては、例えば、カテーテル2の内部チャネル内に存在していた空気や、ポンプA側から送られてきた第2の流体である生理食塩水等がある。また、ポンプB側にはポンプA側と同様に、大気開放機構15とセンサー17とが備わっている。
【0030】
制御部5内部にはCPU18とCPU18上で動作するプログラムを記録したHDD等の記録媒体19とが備わる。プログラムは第1の流体送出源であるポンプAと、第2の流体送出源であるポンプBとの駆動を制御する制御プログラムであり、記録媒体19に格納されている前記プログラムは、CPU18内の内部メモリにローディングされ実行される。
【0031】
ここで、図3に示す全体フローチャートを参照して、制御部5による薬剤投与制御について説明する。まず、生体にカテーテル2を設置する作業が完了すると、制御部5は第1の動作モードに入り、カテーテル2内の内部チャネルを通って、第1の流体送出源であるポンプAから第2の流体送出源であるポンプBまで、第1の流体である生理食塩水を送出する。つまり、生理食塩水をポンプAからポンプBに向けて送出し、カテーテル2内の空気を生理食塩水で置き換える(ステップS1)。これによって、カテーテル2内の内部チャネルが空気に代わって生理食塩水で満たされることになる。
【0032】
次に、制御部5は第2の動作モードに入り、カテーテル2内の内部チャネルを通って、第2の流体送出源であるポンプBから第1の流体送出源であるポンプAまで、第2の流体である薬剤を送出する。つまり、薬剤をポンプBからポンプAに向けて送出し、カテーテル内の生理食塩水を薬剤で置き換える(ステップS2)。これによって、カテーテル内の内部チャネルが生理食塩水に代わって薬剤で満たされることになる。
【0033】
さらに、第1の動作モードで実現されるステップS1、第2の動作モードで実現されるステップS2に続いて、ポンプBから薬剤投与目標9への薬剤投与処理を行う(ステップS3)。
【0034】
ここで、図4−1は、第1の動作モードで実現されるステップS1の詳細フローチャートである。図4−1において、まず、制御部5は、第1の動作モードにおいて、第2の流体送出源であるポンプBの大気開放機構15が大気開放されていなければ、ポンプBの大気開放機構15を駆動してポンプBを大気開放する(ステップS11)。その後、制御部5は、第1の流体送出源であるポンプAから第1の流体である生理食塩水をポンプBに向けて送出させる(ステップS12)。ここで、カテーテル2内の内部チャネル内を生理食塩水がポンプAからポンプBに向けて移動し、この生理食塩水に押されて内部チャネル内に存在した空気がポンプB側に移動し、排気/廃液タンク13に収容される。
【0035】
このとき、内部チャネルの途中には貫通穴7が開いているが、貫通穴7から空気が吐出するのに必要な圧力(第1の圧力)は、大気開放されたポンプB側で空気が吐出するのに必要な圧力(第2の圧力)よりも十分に高くなるよう、貫通穴7の直径は内部チャネルの内径に比較して十分小さく形成されている。このため、空気はポンプB側の排気/廃液タンク13に収容される。
【0036】
ついで、制御部5は生理食塩水がポンプBに到達したことをセンサー17で検出し、その後、ポンプBに大気開放機構15を駆動して、ポンプBを大気非開放にする(ステップS13)。これにより、貫通穴7が唯一の出口となるので、生理食塩水は貫通穴7から吐出する。その後、ポンプAを停止する(ステップS14)。これにより、生理食塩水の貫通穴7からの吐出が停止する。
【0037】
さらに、図4−2に示した詳細フローチャートを参照して、第2の動作モードで実現されるステップS2の詳細処理手順について説明する。図4−2において、制御部5は、第2の動作モードにおいて、第1の流体送出源であるポンプAの大気開放機構14が大気開放されていなければ、ポンプAの大気開放機構15を駆動してポンプAを大気開放する。通常はステップS13においてポンプAは大気非開放となっているので、大気開放状態にする(ステップS21)。その後、制御部5は、第2の流体送出源であるポンプBから第2の流体である薬剤をポンプAに向けて送出させる(ステップS22)。ここで、カテーテル2内の内部チャネル内を薬剤がポンプBからポンプAに向けて移動し、この薬剤に押されて内部チャネル内に存在した生理食塩水がポンプA側に移動し、排気/廃液タンク12に収容される。
【0038】
このとき、内部チャネルの途中には貫通穴7が開いているが、貫通穴7から流体(生理食塩水や薬剤)が吐出するのに必要な圧力(第3の圧力)は、大気開放されたポンプA側で流体が吐出するのに必要な圧力(第4の圧力)よりも十分に高くなるよう、貫通穴7の直径は内部チャネルの内径に比較して十分小さく形成されている。このため、生理食塩水や薬剤はポンプA側の排気/廃液タンク12に収容される。
【0039】
ついで、制御部5は薬剤がポンプAに到達したことをセンサー16で検出し、その後、ポンプAの大気開放機構14を駆動して、ポンプAを大気非開放にする(ステップS23)。これにより、貫通穴7が唯一の出口となるので、薬剤は貫通穴7から吐出する。このままの状態を維持することによって、ステップS3による薬剤投与処理が続行される。
【0040】
これにより、内部チャネルに空気が入った状態でカテーテル2を生体に設置しても、設置後に内部の空気を容易に排出できる。従って、カテーテル2を生体に設置する前に内部チャネルを流体(生理食塩水や薬剤)で満たしておく必要がない。したがって、カテーテルの設置作業性を格段に向上させることができる。
【0041】
なお、この実施の形態1では、カテーテル2の内部チャネルに入った空気を一旦、生理食塩水で置き換え、その後に生理食塩水を薬剤に置き換えた。しかし、生理食塩水を使わずに空気を初めから薬剤で置き換えることも可能である。つまり、第1の流体として薬剤を採用し、第1の動作モードしか実行しないように構成してもよい。
【0042】
また、生理食塩水に代えて、生体親和性のある他の流体、例えばPBS(りん酸緩和生理塩水)などを使用してもよい。
【0043】
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。この実施の形態2では、各ポンプA,Bが送出のみならず、送出と吸引とを同期して、生理食塩水および薬剤の置換処理を行うようにしている。
【0044】
図5は、この発明の実施の形態2にかかる薬剤投与装置の概要構成を模式的に示したブロック図である。図5に示すように、この薬剤投与装置は、各ポンプA,Bが送出機構のみならず、吸引機構を有し、カテーテル2の内部チャネルに対して第1の流体としての生理食塩水の置換処理を行う場合、ポンプAが生理食塩水を送出するとともに、これに同期してポンプBが吸引を行う。また、カテーテル2の内部チャネルに対して第2の流体としての薬剤の置換処理を行う場合、ポンプBが薬剤を送出するとともに、これに同期してポンプAが吸引を行うようにしている。なお、制御部5に対応する制御部105は、CPU18および記憶媒体19にそれぞれ対応したCPU118および記憶媒体119を有する。この記憶媒体119に記憶されたプログラムが記憶媒体19に記憶されたプログラムと異なる。
【0045】
ここで、図6−1に示したフローチャートを参照して、制御部105による生理食塩水の置換処理手順について説明する。まず、制御部105は、第1の動作モードにおいて、第2の流体送出源であるポンプBを吸引状態にする(ステップS111)。その後、制御部105は、ポンプAを駆動して、生理食塩水をカテーテル2内に送出する(ステップS112)。ここで、カテーテル2内の内部チャネル内を生理食塩水がポンプAからポンプBに向けて移動し、この生理食塩水に押されて内部チャネル内に存在した空気がポンプB側に移動し、排気/廃液タンク13に収容される。
【0046】
このとき、内部チャネルの途中には貫通穴7が開いているが、内部チャネル内の負圧によって、空気や薬剤は貫通穴7よりは吐出しない。空気はポンプB側の排気/廃液タンク13に収容される。
【0047】
ついで、制御部105は生理食塩水がポンプBに到達したことをセンサー17で検出し、その後、ポンプBの吸引を停止する(ステップS113)。このタイミングで生理食塩水の貫通穴7からの吐出が開始する。その後、制御部105は、ポンプAによる送出を停止する(ステップS114)。これにより、生理食塩水の貫通穴7からの吐出が停止する。
【0048】
さらに、図6−2に示した詳細フローチャートを参照して、制御部105による薬剤の置換処理手順について説明する。まず、制御部105は、第2の動作モードにおいて、第1の流体送出源であるポンプAを吸引状態にする(ステップS121)。その後、制御部105は、第2の流体送出源であるポンプBを駆動して、薬剤を送出させる(ステップS122)。ここで、カテーテル2内の内部チャネル内を薬剤がポンプBからポンプAに向けて移動し、この薬剤に押されて内部チャネル内に存在した生理食塩水がポンプA側に移動し、排気/廃液タンク12に収容される。
【0049】
このとき、内部チャネルの途中には貫通穴7が開いているが、内部チャネル内の負圧によって、薬剤や生理食塩水は貫通穴7から吐出しない。生理食塩水はポンプB側の排気/廃液タンク12に収容される。
【0050】
ついで、制御部105は薬剤がポンプAに到達したことをセンサー16で検出し、その後、ポンプAの吸引を停止する(ステップS123)。これにより、貫通穴7が唯一の出口となるので、薬剤は貫通穴7から吐出する。このままの状態を維持することによって、ステップS3による薬剤投与処理が続行される。
【0051】
この実施の形態2では、各ポンプA,Bが送出と吸引とを同期して行うため、大気開放機構などを設ける必要がなく、装置および制御が簡易になる。
【0052】
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。この実施の形態3では、図7に示すように、カテーテル2に対応するカテーテル202に、U字型の屈曲部203を設け、薬剤投与目標9に対して貫通でなく挿入で設置できるようにしている。なお、図7では、屈曲部203がカテーテル202全体となっているが、貫通穴7が設けられる先端側から所定の長さのみの短い屈曲部としてもよい。すなわち、貫通穴7が設けられる先端側からカテーテル202が薬剤投与目標9に対して挿入できる構成であればよい。
【0053】
なお、制御部205、CPU218,記憶媒体219は、それぞれ制御部105,CPU118、記憶媒体119に対応し、制御内容も同じである。
【0054】
ここで、ポンプA,Bは、近接配置が可能となり、ポンプA,Bを1つのポンプで実現できるとともに、排気/廃液タンク12も1つで済む。
【0055】
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。この実施の形態4では、図8に示すように、実施の形態3と同様に、カテーテル302にU字型の屈曲部を設けるとともに、第1の流体取入口と第2の流体取入口との間にある貫通穴7の近傍から、流体の排出用ダクト303が分岐している。この場合、流体の排出専用の排出用ダクト303が設けられているため、排出用ダクト303の出口を排気/廃液タンク12に接続することによって、排気/廃液タンク12が1つで済む。
【0056】
なお、制御部305は、カテーテル302の内部チャネル内の空気を抜く第1の動作モードの制御を行う場合、ポンプAから容器10内の生理食塩水を、カテーテル302の内部チャネル内に送出し、カテーテル302のポンプA側から、ポンプB側までと排出用ダクト303の出口側までとの間の内部チャネル内全体を生理食塩水で満たす処理(生理食塩水の置換処理)を行う。この場合、まず、大気開放機構15を開放状態にするとともに、大気開放機構14,20を非開放状態にして、生理食塩水をポンプAから送出する。その後、センサー17が生理食塩水の到達を検出した場合に、大気開放機構15を非開放状態にするとともに、大気開放機構20を開放状態にする。その後、センサー21が生理食塩水の到達を検出した場合に、大気開放機構20を非開放状態にするとともに、ポンプAによる生理食塩水の送出を停止する。これによって、上述した生理食塩水の置換処理が完了する。なお、排出用ダクト303の内径は、カテーテル302の内径に比して小さくし、貫通穴7の内径に比して大きくすることが好ましい。
【0057】
その後、制御部305は、ポンプBから容器11内の薬剤を、カテーテル302の内部チャネル内に送出し、カテーテル302のポンプB側から、ポンプA側までと排出用ダクト303の出口側までとの間の内部チャネル内全体を薬剤で満たす処理(薬剤の置換処理)を行う。この場合、まず、大気開放機構14を開放状態にするとともに、大気開放機構15,20を非開放状態にして、薬剤をポンプBから送出する。その後、センサー16が薬剤の到達を検出した場合に、大気開放機構14を非開放状態にするとともに、大気開放機構20を開放状態にする。その後、センサー21が薬剤の到達を検出した場合に、大気開放機構20を非開放状態にする。これによって、薬剤の置換処理が完了するとともに、この時点から、貫通穴7からポンプBによる薬剤の吐出が可能となり、ポンプBの駆動を継続させた場合、貫通穴7から薬剤が体内に吐出される。
【0058】
(実施の形態5)
つぎに、この発明の実施の形態5について説明する。この実施の形態5では、貫通穴7を塞ぐ機構を設けて、空気や生理食塩水が貫通穴7より吐出されることを、より確実に防止できるようにしている。
【0059】
図9−1は、カテーテル2の貫通穴7の近傍であって内部チャネル内に設けた閉塞機構の構成を示す図である。また、図9−2は、図9−1のA−A線断面図およびB−B線断面図である。図9−1および図9−2に示すように、この閉塞機構は、カテーテル2の貫通穴7の近傍であって内部チャネル内に、内部チャネルに摺接する円筒402が設けられるとともに、この円筒402に接続されるワイヤ401を有する。このワイヤ401は、内部チャネル内に挿通され、カテーテル2の外部から操作が可能となっている。
【0060】
貫通穴7を開放状態にする場合、ワイヤ401を操作して、貫通穴7が円筒402に覆われない位置に配置する。一方、貫通穴7を閉塞状態にする場合、ワイヤ401を操作、すなわち図9−1では、ワイヤ401を引くことによって、円筒402を移動させ、貫通穴7が円筒402によって覆われるようにする。ここで例えば、閉塞状態に移行する操作を、生理食塩水の置換処理時に行うことによって、空気や生理食塩水が貫通孔7を介して体内に吐出されることを確実に防止することができる。
【0061】
(実施の形態6)
つぎに、この発明の実施の形態6について説明する。この実施の形態6では、図10に示すように、カテーテル2の基端近傍に分岐部501を設けるとともに、この分岐部501の基端に開口502を形成し、この開口502から、先端に超音波センサー504を有する超音波プローブ503を挿入できるようにしている。これによって、薬剤を投与中に、腫瘍径の測定などの超音波プローブ検査ができる。超音波検査時に気泡があっても、ポンプ510の協働で気泡抜きを行うことができる。たとえば、ポンプ510の駆動によって、実施の形態1に示した生理食塩水の置換処理(ステップS1)と同様な処理を行うことによって、カテーテル2の内部チャネル内の気泡を確実に除去することができる。これによって、気泡の影響を受けない超音波画像を取得することができる。
【0062】
(実施の形態7)
つぎに、この発明の実施の形態7について説明する。図11は、この発明の実施の形態7にかかる薬剤投与装置が生体に設置された状態を示す概略模式図である。また、図12は、この発明の実施の形態7にかかる薬剤投与装置の概要構成を模式的に示したブロック図である。図11に示すように、薬剤投与装置600は、内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしたカテーテル602と、流体送出源であるポンプCとを有する。
【0063】
カテーテル602は、内部チャネルの第1の開口601と、第2の開口606を有する。第1の開口601は、ポンプCと直接又は間接に連通しており、第1の開口601を経由して生理食塩水や薬剤などの流体がポンプCからカテーテル602内の内部チャネルに流入する。
【0064】
第2の開口606は、体外に連通しており、第2の開口606を経由してカテーテル602の内部チャネル内に存在した空気や生理食塩水などの流体が排出されるアウトレットとなっている。また、第2の開口606には、第2の開口606を開閉する開閉部材(例えば、一方向弁)603が設けられている。
【0065】
また、カテーテル602は、管状の躯体の側面において、第1の開口601と第2の開口606の間に位置する、内部チャネルとカテーテル602外部を連通する少なくとも1つの貫通穴607を有している。カテーテル602は、貫通穴607が薬剤投与目標(例えば腫瘍)9内に位置するように設置されており、貫通穴607から薬剤が薬剤投与目標9内に吐出される。
【0066】
ポンプCは、生体の表面8に設置することに代えて、生体内や、生体外部の離間した位置に設置する構成も可能である。
【0067】
図12に示すように、ポンプCは第1の流体である生理食塩水等が収容された容器604と、第2の流体である薬剤等が収容された容器605を有する。
【0068】
ここで、図13に示したフローチャートを参照して、制御部620による制御処理手順について説明する。図13において、まず、制御部620は、開閉部材603が開の状態で、第1の流体として例えば生理食塩水をポンプCから第2の開口606(アウトレット)に向けて送出する。この生理食塩水によりカテーテル602の内部チャネル内に存在した空気は押し出されてアウトレットから排出する。これにより、カテーテル602の内部チャネル内の空気は第1の流体で置き換わる(S201)。
【0069】
次に、第2の流体として例えば薬剤をポンプCから第2の開口606(アウトレット)に向けて送出する。この薬剤によりカテーテル602の内部チャネル内に存在した生理食塩水は押し出されてアウトレットから排出する。これにより、カテーテル602の内部チャネル内の生理食塩水は第2の流体で置き換わる(S202)。
【0070】
そして、この状態で、開閉部材603を閉にすると薬剤の貫通穴607からの吐出が開始する(S203)。もっとも、開閉部材603を設けずに、開口状態にあるアウトレットを作業者が溶着等で閉じるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,600 薬剤投与装置
2,202,302,602 カテーテル
3 第1の流体取入口
4 第1の流体取入口
5,105,205,305,620 制御部
6 通信路
7,607 貫通穴
8 表面
9 薬剤投与目標
10,11,604,605 容器
12,13 排気/廃液タンク
14,15,20 大気開放機構
16,17,21 センサー
18,118,218,318 CPU
19,119,219,319 記憶媒体
203 屈曲部
303 排出用ダクト
401 ワイヤ
402 円筒
501 分岐部
502,601,606 開口
503 超音波プローブ
504 超音波センサー
603 開閉部材
A,B,C,510 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしており、前記内部チャネルに流体を取り入れる第1の流体取入口と、前記内部チャネルに流体を取り入れる第2の流体取入口と、前記管状の躯体の側面において、前記第1の流体取入口と前記第2の流体取入口との間に位置する、前記内部チャネルと外部とを連通する少なくとも1つの貫通穴と、を有するカテーテルと、
前記カテーテルの第1の流体取入口に直接又は間接に連通する第1の流体送出源と、
前記カテーテルの第2の流体取入口に直接又は間接に連通する第2の流体送出源と、
前記第1の流体送出源と前記第2の流体送出源との駆動を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記カテーテルの内部チャネル内を通って、前記第1の流体送出源から前記第2の流体送出源まで第1の流体を送出する第1の動作モードを有することを特徴とする薬剤投与装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記カテーテルの内部チャネル内を通って、前記第2の流体送出源から前記第1の流体送出源まで第2の流体を送出する第2の動作モードを更に有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項3】
前記第2の流体送出源は、大気開放機構を備えており、
前記制御部は、前記第1の動作モードにおいて、前記第2の流体送出源が大気開放された状態で、前記第1の流体送出源から前記第1の流体を第2の流体送出源に向けて送出し、前記第1の流体が前記第2の流体送出源に到達した後、前記第2の流体送出源の大気開放機構を駆動して前記第2の流体送出源を大気非開放とするように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項4】
前記第1の流体送出源は、大気開放機構を備えており、
前記制御部は、前記第2の動作モードにおいて、前記第1の流体送出源が大気開放された状態で、前記第2の流体送出源から前記第2の流体を第1の流体送出源に向けて送出し、前記第2の流体が前記第1の流体送出源に到達した後、前記第1の流体送出源の大気開放機構を駆動して前記第1の流体送出源を大気非開放とするように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする請求項2に記載の薬剤投与装置。
【請求項5】
前記第2の流体送出源は、前記カテーテルの内部チャネルに連通した吸引機構を備えており、
前記制御部は、前記第1の動作モードにおいて、前記第2の流体送出源の吸引機構を駆動し、前記第1の流体送出源から前記第1の流体を前記第2の流体送出源に向けて送出し、前記第1の流体が前記第2の流体送出源に到達した後、前記第2の流体送出源の吸引機構を停止するように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項6】
前記第1の流体送出源は、前記カテーテルの内部チャネルに連通した吸引機構を備えており、
前記制御部は、前記第2の動作モードにおいて、前記第1の流体送出源の吸引機構を駆動し、前記第2の流体送出源から前記第2の流体を前記第1の流体送出源に向けて送出し、前記第2の流体が前記第1の流体送出源に到達した後、前記第1の流体送出源の吸引機構を停止するように前記第1の流体送出源および前記第2の流体送出源を制御することを特徴とする請求項2に記載の薬剤投与装置。
【請求項7】
前記カテーテルの細長い管状の躯体の途中に、U字型に折り曲がった屈曲部を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項8】
前記カテーテルは、前記第1の流体取入口と前記第2の流体取入口との間から、流体の排出用のダクトが分岐することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項9】
前記貫通穴の開閉を操作する開閉操作機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項10】
前記第2の薬剤送出源には、前記第1の流体の到達を検出するセンサーが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与装置。
【請求項11】
前記第1の薬剤送出源には、前記第2の流体の到達を検出するセンサーが備えられていることを特徴とする請求項2に記載の薬剤投与装置。
【請求項12】
内部チャネルを有する細長い管状の躯体をしており、前記管状の躯体の側面に前記内部チャネルと外部とを連通する少なくとも1つの貫通穴とを有し、前記貫通穴が生体内に位置し前記内部チャネルが前記管状の躯体の一端で生体外と連通する状態で生体に設置されるカテーテルと、
前記管状の躯体の他端で、前記カテーテルの内部チャネルに直接又は間接に連通する流体送出源と、
を有することを特徴とする薬剤投与装置。
【請求項13】
前記管状の躯体の一端における内部チャネルと生体外との連通を閉状態に移行可能に構成されていることを特徴とする請求項12に記載の薬剤投与装置。
【請求項14】
前記管状の躯体の一端における内部チャネルと生体外との連通を閉じる部材をさらに有することを特徴とする請求項12に記載の薬剤投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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