説明

薬剤揮散体

【課題】常温揮散性薬剤を含有する樹脂担体を薬剤容器に収納した薬剤揮散体であって、コンパクトな製剤であることはもちろん、使用初期から使用終期まで安定して効率的に防除効果を維持しえる薬剤揮散体の提供。
【課題の解決手段】(a)メトフルトリンと、(b)プロフルトリンとを、(a):(b)の質量比として5:1〜1:1の割合で含有する常温揮散性薬剤組成物を樹脂担体に0.5〜15質量%担持させ、この薬剤担持体を開口部を有する薬剤容器に収納もしくは保持してなる薬剤揮散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温揮散性薬剤を樹脂担体に担持させてなる薬剤担持体を薬剤容器に収納もしくは保持してなる薬剤揮散体の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、揮散性薬剤を揮散するための揮散方法が種々知られている。これらの例としては、(1)有効成分を溶剤等に溶解した薬液を吸液芯に吸液させ、この芯を加熱して有効成分を蒸散させる方法や、(2)薬剤を含浸させた担体をファンとともにモーターで回転させ、その遠心力を利用して薬剤を揮散させる方法、更には、(3)薬剤を含浸させた紙や樹脂等から自然下に有効成分を揮散させる方法等が開示されている。
【0003】
しかしながら、(1)や(2)の方法では薬剤を揮散させるための手段として電力や電池を使用するため、使用場所に制限があったり、電池によるコストアップが大きいという問題があった。また、(3)の紙や樹脂等から薬剤を揮散させる方法では、揮散エネルギーとして自然風しか期待できないため、十分な効力を得ようとすると薬剤担持体の表面積を大きくする必要があるが、使用する側からみればコンパクトに使用したいといった要望も無視できない。そこで、特許文献1や特許文献2のように、ネット状揮散体や網状樹脂体等の形状が提案され一定の評価を得ているが、(1)や(2)の方法と比較すると、害虫の防除効果の点で十分と言えないのが現状である。
一方、(3)の方法に用いる常温揮散性薬剤としては、ピレスロイド系殺虫成分のメトフルトリンが、飛翔昆虫、特に蚊類に対する基礎殺虫効力が高いことから一般的に汎用されている[特許文献1や特許文献2の実施例(自然蒸散材)参照]。しかしながら、メトフルトリンは常温揮散性薬剤のなかでは蒸気圧が低く、使用初期において防除効力を発現するまでに幾分時間がかかり、この点の改良が求められていた。
【特許文献1】特開2006−348014号公報
【特許文献2】特開2006−325585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、常温揮散性薬剤を含有する樹脂担体を薬剤容器に収納した薬剤揮散体であって、コンパクトな製剤であることはもちろん、使用初期から使用終期まで安定して効率的に防除効果を維持しえる薬剤揮散体を提供する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような構成を採用する。
(1)(a)メトフルトリンと、(b)プロフルトリンとを、(a):(b)の質量比として5:1〜1:1の割合で含有する常温揮散性薬剤組成物を樹脂担体に0.5〜15質量%担持させ、この薬剤担持体を開口部を有する薬剤容器に収納もしくは保持してなる薬剤揮散体。
(2)(a)メトフルトリンと、(b)プロフルトリンとを、(a):(b)の質量比として3:1〜1.5:1の割合で含有する常温揮散性薬剤組成物を樹脂担体に0.5〜15質量%担持させ、この薬剤担持体を開口部を有する薬剤容器に収納もしくは保持してなる(1)記載の薬剤揮散体。
(3)前記薬剤担持体が、ポリオレフィン系樹脂にカルボン酸エステル単量体単位を含有させた樹脂担体に、前記常温揮散性薬剤組成物を混錬させたものである(1)又は(2)記載の薬剤揮散体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の薬剤揮散体は、メトフルトリンとプロフルトリンとを特定の比率で含有する薬剤組成物を樹脂担体に担持させた薬剤担持体を用いることによって、使用初期から使用終期まで安定して効率的に防除効果が維持し、しかも、メトフルトリンとプロフルトリンとが相乗的に防除効果を高め得るのでその実用性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、常温揮散性薬剤として、ピレスロイド系殺虫成分である(a)メトフルトリンと(b)プロフルトリンとを、(a):(b)の質量比として5:1〜1:1の割合で含有する混合組成物を用いる。すなわち、メトフルトリンは、プロフルトリンよりも飛翔昆虫、特に蚊類に対して優れた基礎殺虫効力を示すものの、プロフルトリンに比べると蒸気圧が低く、使用初期において防除効力を発現するまでに幾分時間がかかるという課題があったが、前記比率の混合組成物を用いることによって、使用初期から使用終期まで安定して効率的に防除効果が維持し、しかも、メトフルトリンとプロフルトリンとが相乗的に防除効果を高め得ることを見出したものである。
このような作用・効果は、樹脂担体との組み合わせにおいて特徴的であって、例えば紙製担体では得られないし、更に樹脂担体中の両者の混合比率が前記範囲を外れても奏し得ないことが認められた。例えば、メトフルトリンのプロフルトリンに対する比率が5:1以上であると、プロフルトリンの揮散が著しく抑えられ、一方、1:1より小さいと、使用期間全体にわたって殺虫効力が不足するため、両成分を混合するメリットを見い出せなかった。
なお、メトフルトリン及びプロフルトリンの酸成分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も本発明に包含されることはもちろんである。
【0008】
樹脂担体に担持される常温揮散性薬剤の薬剤量は、使用される条件の温度変化や、使用場所での風等の使用条件によって変動しうるのであるが、使用期間を10日〜60日間に設定した場合、メトフルトリンとプロフルトリンの合計で、通常、30mg〜500mg程度が適当である。
【0009】
本発明では、メトフルトリンとプロフルトリンの揮散に支障を来たさない限りにおいて、揮散性に優れた他の殺虫、防虫成分、忌避成分、抗菌成分、防黴成分、消臭成分、芳香成分等を配合することができる。例えば、エムペントリン、トランスフルトリン、テラレスリン、フラメトリン、テフルトリン等のピレスロイド系殺虫成分、ディート、ジメチルフタレート、p−メンタン−3,8−ジオール等の忌避成分、ヒノキチオール、テトラヒドロリナロール、オイゲノール、シトロネラール、アリルイソチオシアネート等の抗菌成分、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール等の防黴成分、シトロネラ油、オレンジ油、レモン油、ライム油、ユズ油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、リモネン、α−ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアセテート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分などがあげられるがこれらに限定されない。
【0010】
本発明で用いるメトフルトリンやプロフルトリンはいずれも十分な安定性を有しているが、さらに安定性を高めるため、酸化防止剤等の安定剤を添加してもよい。このような酸化防止剤としては、BHT、BHA、2,2´−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4´−メチレンビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、メルカブトベンズイミダゾール等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、パラアミノ安息香酸類、桂皮酸類、サリチル酸類、ベンゾフェノン類及びベンゾトリアゾール類などの紫外線吸収剤を用いることにより、保管時、あるいは使用時の耐光性を一段と向上させることができ、更に、着色剤、帯電防止剤などを適宜配合してもよい。色彩を付加したり、タイムインジケーターを装着して使用終了時点を視認できるようにすれば、商品価値を高めることができるので好ましい形態である。
【0011】
本発明は、常温揮散性薬剤の担持体として樹脂担体を用いる。常温揮散性薬剤を混錬する形態に適した樹脂担体としては、例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、あるいはこれらにカルボン酸エステル等の単量体単位を含有させたものがあげられる。ここでカルボン酸エステル等の単量体は常温揮散性薬剤のブリードをコントロールするのに効果的で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル等を例示できる。ポリオレフィン系樹脂に対するこれらのカルボン酸エステル単量体含有比率は、一般に、カルボン酸エステル単量体含有比率が高くなるほど常温揮散性薬剤のブリード速度を遅らせる傾向があるが、使用する常温揮散性薬剤の種類や薬剤量、あるいは使用目的等に応じて、1〜20質量%の範囲で適宜調整すればよい。なお、前記樹脂担体は、あらかじめカルボン酸エステル単量体を多く含有するポリオレフィン系共重合体とオレフィンの単独重合体を混合してその含有比率を調整したポリマーブレンドを用いることもできるし、更には必要に応じて、スチレン系熱エラストマー等の他の高分子化合物を含有させてもよい。
また、本発明では、常温揮散性薬剤を樹脂担体の表面に担持させる形態も採用可能である。しかしながら、鋭意検討の結果、例えば、二次元のネット状樹脂担体に表面塗布させただけでは薬剤の揮散が速すぎるので、薬剤保持機能を備えた三次元の通気性繊維構造体を適用する必要があることが明らかとなった。そして、この形態の場合、常温揮散性薬剤を吸着しない材質、例えば、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド等の繊維構造体からなるシートが好適に用いられる。
両タイプの樹脂担体を比較すると、前者の練り込みタイプの場合、樹脂担体内部の常温揮散性薬剤が徐々に表面にブリードし、順次揮散することになるので、メトフルトリンとプロフルトリンの比率は使用終期まで保持される。従って、本発明の趣旨に照らせば、前者の練り込みタイプの方が後者の表面担持タイプより機能的に優れているといえる。
【0012】
本発明では、樹脂担体に対する常温揮散性薬剤の担持量を0.5〜15質量%に設定する。担持量が0.5質量%未満の場合、防除効力の持続性に不足を生じる場合があり、一方、担持量が15質量%を超えると、製造面で支障が生じる可能性があるので好ましくない。
【0013】
前記練り込みタイプの樹脂担体の形状は、使用目的に応じて適宜決定することができるが、表面積を増し通気性を良くするために、網状、ネット状に形成するのが適当である。網やネットを構成するフィラメントの直径は、通常0.4mm〜2.0mm程度で、樹脂担体の組成が同じであれば、直径が大きくなるほど常温揮散性薬剤の揮散が低減する傾向があり、薬剤揮散体の持続期間を長く設定することができる。また、網やネットは、角形、ひし形、六角形等の任意の孔(1mm2〜70mm2程度)を有することができ、その開孔率は、該開孔部の合計で好ましくは40〜85%、より好ましくは50〜75%である。開孔率は、表面積と通気性に関連して薬剤の揮散性に影響するので、前記フィラメントの直径とともに、薬剤揮散体の仕様を決定するうえで重要なファクターである。
【0014】
本発明の薬剤揮散体は、前記薬剤担持体を薬剤容器に収納もしくは保持して構成される。かかる薬剤容器は、通常、略直方体状を呈し、樹脂担体に含まれる常温揮散性薬剤を揮散させるための開口部を有している。この開口部について説明すると、略直方体状の正面部及び背面部における開口部の面積は、それぞれ正面全体及び背面全体に対して10〜50%に設定され、この範囲であれば、通気性が十分となり、薬剤揮散体として良好な効果を得ることができる。また、略直方体状の側面部分についても開口部を設けることが好ましく、各側面の開口部面積は各々の側面全体に対する開口率して5〜30%が好適である。なお、薬剤担持体が円筒状であれば、これに対応させて薬剤容器も円筒状に形成しても勿論構わないし、例えば、空気清浄機取付け用に適用するような場合には、薬剤容器を適宜簡略化し薬剤担持体を保持するのみの目的で用いることもできる。
【0015】
略直方体状の薬剤容器の一例としては、平面シート状プラスチック部材を折り曲げたものがあげられ、この場合、一側面及び上面と下面で折り曲げ面が重なり合うように組み立てられる。ここでいう平面シート状プラスチック部材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等種々のプラスチック材料が使用可能であるが、強度やその他の物性を考慮して、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好適である。前記プラスチック部材の厚みとしては、0.05mm〜2mmのものが使い易く、更に、上面の折り曲げ面の端部に設けた舌片部には切り目を入れて折返し立上げ可能にフック部が延設される。なお、背面上方には前記フック部が折り込まれるための収納窓が設けられていてもよい。
前記フック部の先端部分を薬剤容器の一部、例えば上面部分に係止させるようにすると、屋外で使用の場合には、薬剤容器が風などで飛ばされたりする心配がなく、屋内で吊るした場合にも使用時誤って落とすことがないので便利である。
【0016】
また、本発明で用いる薬剤容器として、一体プラスチック成型品を使用してもよい。前記シート部材の場合と同様、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等種々のプラスチック材料を使用可能であるが、強度やその他の物性を考慮して、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好適で、0.05mm〜2mm程度の厚みのものが使い易い。
ここでいう一体プラスチック成型品は、通常、射出成型又は真空成型により成型され、例えば、上面と下面、正面と背面をヒンジや嵌合手段を用いて一体化すれば、製造工程を簡略化できるというメリットを有する。
更に、薬剤容器の上面部分にフック部を立上げ可能に設けるとより効果的である。例えば、フック部の先端部分を、使用時に前記の薬剤容器の一部、例えば上面に設けた開口部や凹部に、好ましくは同一面上に係止できるようにすると、前記シート部材の場合と同様、風に飛ばされたり、落としたりする心配がなく実用的である。
【0017】
本発明の薬剤揮散体は、通常、薬剤非透過性フィルム袋に収容されて市販され、使用時に開袋して用いられるのが一般的である。薬剤非透過性フィルム袋の材質としては、ポリエステル(PET、PBTなど)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリルニトリルなどがあげられ、その肉厚は可撓性を損なわない範囲で決定される。なお、ヒートシール性を付与するために、内面をポリエチレンやポリプロピレンフィルム等でラミネートしてもよいことはもちろんである。
【0018】
本発明の薬剤揮散体は、その設計仕様に応じて約10〜60日間にわたり、リビングや和室、玄関などの室内、倉庫、飲食店、工場や作業場内部やその出入り口、鶏舎、豚舎等の畜舎、犬小屋、ウサギ小屋等のペット小屋やその周辺、浄化槽やマンホールの内部、キャンプなどにおけるテント内部やその出入り口、バーベキュー、釣り、ガーデニング等の野外活動場所やその周辺などで、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ブユ、ユスリカ類、ハエ類、チョウバエ類、イガ類等に対して優れた殺虫効果及び忌避効果を奏する。また、室内と室外を隔てる窓やベランダ等の場所で、例えばそのフック部をカーテンレール等に引っ掛けたり、物干し竿に吊るして使用すれば、屋外から屋内へのこれら害虫の侵入を効果的に防ぐこともでき、極めて実用的である。
更に、薬剤揮散体を円筒状に形成してペット犬のリード装着用としたり、適宜薬剤容器を簡略化して空気清浄機等の取付け用として用いることもできる。
【0019】
次に、具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の薬剤揮散体を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
エチレン−メタクリル酸メチル共重合体[共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:8重量%]95重量部、メトフルトリン4重量部、及びプロフルトリン1重量部を溶融混練し、得られたペレット状混練物をネット成形用ダイスを介して押出すことにより、一辺が約5mmの略六角形のネット(網を形成するフィラメントの直径:約1.2mm、開孔率:63%)で、幅約8cm、奥行約1cm、高さ約15cmの中空略直法形状の薬剤担持体(重量5g、有効成分の総量:250mg)を得た。
これを、開口部とフック部を備えたポリエステル製の一体成形薬剤容器(幅約9.5cm、奥行約2cm、高さ約17cm)に収納し、60日用の本発明薬剤揮散体を構成した。
【0021】
この薬剤揮散体をベランダの出入り口の直上に置いて使用したところ、設置直後から効果が発現し、その後60日間にわたり、ベランダで蚊や他の害虫に悩まされることがなかった。また、該害虫がベランダの出入り口から屋内へ侵入するのも防止でき、簡便な害虫防除手段として極めて実用的であった。
【実施例2】
【0022】
実施例1に準じ、表1に示す各種の薬剤担持体を調製後、開口部を有する薬剤容器に収納して本発明の薬剤揮散体を作製した。密閉した25m3の部屋(室温:25℃)で供試薬剤揮散体を吊るし、扇風機を用いて風速5m/秒の風をあてて薬剤を揮散させた。所定期間後、アカイエカ雌成虫50匹を放ち、時間の経過に伴う仰転数を数え、KT50値を求めた。
【0023】
【表1】






【0024】
試験の結果、メトフルトリン単剤の薬剤揮散体(比較例1)は初期の殺虫効力が幾分低いのに対し、メトフルトリンとプロフルトリンを5:1〜1:1の特定の比率で混合したものを担持させた本発明の薬剤揮散体1〜4は、初期の殺虫効力が著しく改善された。特に、混合比率が3:1〜1.5:1の範囲では、予想を超えた相乗効果が認められた。なお、本発明5〜6のように、樹脂担体として、練り込み樹脂ではなく三次元通気性繊維構造体を用いた場合でも有効であった。
これに対し、プロフルトリン単剤の薬剤揮散体(比較例2)は使用初期に殆どが揮散し、また、メトフルトリンとプロフルトリンの配合比率が5:1〜1:1の範囲を外れた比較例3〜4も初期の殺虫効力が改善されないか、もしくは使用終期まで十分な殺虫効力を維持できず、本発明の目的に合致しなかった。
更に、樹脂ネットに有効成分を表面塗布させた薬剤揮散体(比較例5〜6)は、メトフルトリン単剤であっても揮散が速いため殺虫効力が速やかに失われ、樹脂担体として不適当であった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、薬剤揮散体を用いた害虫防除分野において、須らく利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)メトフルトリンと、(b)プロフルトリンとを、(a):(b)の質量比として5:1〜1:1の割合で含有する常温揮散性薬剤組成物を樹脂担体に0.5〜15質量%担持させ、この薬剤担持体を開口部を有する薬剤容器に収納もしくは保持してなることを特徴とする薬剤揮散体。
【請求項2】
(a)メトフルトリンと、(b)プロフルトリンとを、(a):(b)の質量比として3:1〜1.5:1の割合で含有する常温揮散性薬剤組成物を樹脂担体に0.5〜15質量%担持させ、この薬剤担持体を開口部を有する薬剤容器に収納もしくは保持してなることを特徴とする請求項1記載の薬剤揮散体。
【請求項3】
前記薬剤担持体が、ポリオレフィン系樹脂にカルボン酸エステル単量体単位を含有させた樹脂担体に、前記常温揮散性薬剤組成物を混錬させたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の薬剤揮散体。

【公開番号】特開2010−90048(P2010−90048A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260235(P2008−260235)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】