説明

薬剤揮散器

【課題】薬剤の詰め替えや芯材の取り替え作業時に、芯材保持枠を容器から容易に引き抜くことができる薬剤揮散器を提供する。
【解決手段】薬剤揮散器1は、首部20を備える容器2と、容器2内に収納される芯材3と、芯材3を保持する芯材保持枠4とを備える。容器2の首部20には、芯材保持枠4を引き上げた時に、芯材保持枠4を起立状態で保持するとともに、芯材保持枠4を起立状態より傾倒させることが可能な突出部25が設けられている。芯材保持枠4の下部には、芯材保持枠4を引き上げた時に、容器2内の突出部25に係合して芯材保持枠4を抜止め状態とする一対の係合突起48が設けられている。各係合突起48は、芯材保持枠4の傾倒により、傾けた側の一方の係合突起48と突出部25との係合が外れるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤、消臭剤などの種々の揮散性を有する液状の薬剤を容器内部に収容するとともに、薬剤中に薬剤の吸上・揮散可能な芯材を浸漬した薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や自動車などの空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、芳香剤を自然に揮散させる薬剤揮散器が広く使用されている。この薬剤揮散器には、ゲル状、固形状、液状など、種々の薬剤が用いられており、その中で液状の薬剤を用いる薬剤揮散器は、一般に薬剤を収容する容器と、容器内に収容された薬剤を吸上・揮散可能な芯材とにより構成されている。芯材は、一部(吸上部)が薬剤中に浸漬されるとともに、他部(揮散部)が容器上部の開口部から外部に露出可能になっており、毛細管現象により、吸上部で吸い上げた薬剤を揮散部にて空気中に揮散させている。
【0003】
上記した液状の薬剤を用いる薬剤揮散器としては、特許文献1にその一例が開示されている。特許文献1に記載の薬剤揮散器は、図8および図9に示すように、液状の薬剤を収容する容器100と、容器100内に収納される帯状の芯材102と、芯材102を保持する芯材保持枠101とによって構成されている。芯材102は、芯材保持枠101を構成する一対の側枠部材103,103に設けられた一対の垂直板104,104と、各側枠部材103の下端部に各側枠部材103を連結するように設けられた横桟105との間に巻き付けられており、芯材102の一端部を、横桟105と各側枠部材103の下端部に設けられた一対の受棒106,106との間に通して下方に垂らすことで、容器100の底部まで到達している。芯材保持枠101は、容器100の開口部100Aを閉塞可能なキャップ108に連結されている。そして、キャップ108を容器100から外し、キャップ108を介して芯材保持枠101を引き上げることにより、芯材上部の揮散部102Aが容器100の外部に露出する。従って、揮散部102Aの露出の程度によって、芯材下部の吸上部102Bによって吸い上げた薬剤の揮散状態を調整可能になっている。また、各側枠部材103の下端部には、外側に向けて突き出る突起107が設けられており、芯材保持枠101を引き上げる際、各突起107が容器100の肩部100Bに引っ掛かって係合することで、芯材保持枠101が容器100から抜け出るのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3020459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この液状の薬剤を用いた薬剤揮散器は、薬剤の揮散に伴い、容器100内の薬剤が少量になった場合には薬剤を詰め替えたり、また、芯材102に界面活性剤などの不揮発成分が目詰まりすることで薬剤の揮散性能が低下した場合には芯材102を取り替えたりすることにより、再利用が可能である。ただし、薬剤の詰め替えや芯材102の取り替え作業を行う場合には、芯材保持枠101を容器100の開口部100Aから引き抜いて、一旦、容器100から取り外す必要がある。
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の薬剤揮散器では、芯材保持枠101の各突起107が容器100の肩部100Bとの係合が外れないよう強固に肩部100Bに引っ掛かる構造になっているので、芯材保持枠101の容器100からの抜けが確実に防止されている反面、芯材保持枠101を容器100から取り外す際には、各突起107と容器100の肩部106との係合が容易に外れないため、芯材保持枠101を容器100から簡単に引き抜くことができない。よって、薬剤の詰め替えや芯材102の取り替え作業を簡単に行うことができないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたもので、薬剤の詰め替えや芯材の取り替え作業時に、芯材保持枠を容器から簡単に引き抜くことができる薬剤揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、上面に開口を有する首部を備えた薬剤を収容可能な容器と、少なくとも一部が薬剤に浸漬するように前記容器内に収納される芯材と、前記芯材を保持する芯材保持枠とを備え、前記芯材保持枠により前記芯材を前記容器外に引き上げることで、前記芯材の一部で吸い上げた薬剤が前記容器外に揮散するように構成された薬剤揮散器において、前記首部の内周面には、内方に突き出る一対の突出部が設けられており、前記芯材保持枠が引き上げられた時、前記芯材保持枠が前記各突出部に挟持されることにより、前記芯材保持枠は起立状態で保持されるとともに、起立状態より前記突出部の方向に向けて傾倒可能であり、前記芯材保持枠の下部には、前記芯材保持枠が引き上げられた時に、前記突出部に係合して前記芯材保持枠を抜止め状態とする一対の外向きの係合突起が設けられており、前記各係合突起は、前記芯材保持枠の傾倒により、一方の前記係合突起と前記突出部との係合が外れるように構成されている薬剤揮散器により達成される。
【0009】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記芯材保持枠は一対の側枠部材を備え、前記各側枠部材により前記芯材が挟持されており、前記各側枠部材は上端部を支点に開閉可能であることを特徴としている。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記芯材保持枠は、可撓性を有する材料により形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記突出部の下面は、内側に向けて高く傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴といている。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記芯材保持枠には、前記突出部の上面と係合可能な突部が縦方向に複数設けられていることを特徴としている。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各係合突起の下縁を、外側から内側へ低く傾斜させて挿入ガイド部を形成したことを特徴としている。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記容器の開口を開閉可能に閉塞するキャップに、前記芯材保持枠の上端部が回転可能に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薬剤揮散器によると、薬剤の詰め替えや芯材の取り替え作業時に、芯材保持枠を傾倒させるなどの簡易な操作で、容器から芯材保持枠を簡単に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散器の使用時の状態を示す側面図であり、容器およびキャップを断面にして示している。
【図2】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散器の使用前の状態を示す側面図であり、容器およびキャップを断面にして示している。
【図3】図2の薬剤揮散器の正面から見た断面図である。
【図4】芯材保持枠の側面図である。
【図5】芯材保持枠の正面図である。
【図6】芯材保持枠の断面図である。
【図7】(a)は芯材の側面図であり、(b)は芯材の正面図である。
【図8】従来例の薬剤揮散器の正面図であり、芯材は省略して容器およびキャップを断面にして示している。
【図9】図8の薬剤揮散器の側面図であり、容器およびキャップは省略して芯材および芯材保持枠を断面にして示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1〜図3は、本発明に係る薬剤揮散器の一実施形態の構成をそれぞれ示している。
【0018】
本実施形態の薬剤揮散器1は、上部に開口を有するとともに内部に液状の薬剤を収容可能な容器2と、容器2内に収納されて液状の薬剤を吸い上げて揮散させることが可能な芯材3と、芯材3を保持可能な芯材保持枠4とを備えている。容器2の上部開口は、キャップ5により開閉可能に塞がれている。キャップ5には、芯材保持枠4が回転可能に連結されており、使用者はキャップ5を持つことで芯材保持枠4を容器2から引き上げることができる。芯材保持枠4の引き上げに伴い、芯材3の揮散部31が、入口21から容器2の外部に引き上げられて露出する。このとき、芯材3の吸上部30が薬剤中に浸漬されているため、芯材3の吸上部30で吸い上げた薬剤が芯材3の揮散部31を介して容器2の外部に揮散する。
【0019】
容器2は、図1〜図3に示すように、上面に前記開口を有する円筒状の首部20と、首部20に連続する中空の胴部22とにより構成されている。胴部22は、首部20よりも大径に形成された肩部23を備えている。この容器2としては、例えば、透明のプラスチック製ブロー成形品が挙げられるが、ガラス製品の他、インジェクション成型品などであっても構わない。
【0020】
首部20の上部外周面には、雄ネジ部24が設けられている。雄ネジ部24がキャップ5の内周面に設けられた雌ネジ部50と螺合することにより、キャップ5が容器2の首部20に固定される。
【0021】
首部20の下部内周面には、内方に向けて突き出る一対の突出部25,25が一体に設けられている。各突出部25は対向する位置に設けられ、それぞれが芯材3の厚み方向に突き出て芯材3の揮散部31の最も面積の大きな前面および後面と対向するようになっている。これにより、2つの突出部25により、首部20内に芯材3の揮散部31の外形に沿う平面視が略長方形状の開口が形成されている。該開口は、芯材3を保持した芯材保持枠4を引き上げる時、あるいは、容器2内に挿入する時の入口21となっている。
【0022】
各突出部25は、芯材保持枠4を引き上げた時に、芯材保持枠4を起立状態で保持する。つまり、芯材保持枠4を引き上げた時、各突出部25の先端面が、芯材3を保持した芯材保持枠4(後述する各側枠部材40の外側面)に接触して芯材保持枠4の一部を挟持することにより、芯材保持枠4が起立状態で保持される。また、首部20の内周面より突き出る各突出部25により芯材保持枠4が挟持されていることで、芯材保持枠4と首部20の内周面との間に空間が生じる。そのため、芯材保持枠4は、各突出部25を支点に少なくとも前後方向(各突出部25の方向)に傾倒することが可能になっている。
【0023】
各突出部25の下面は、内側に向けて高く傾斜する傾斜面になっている。また、各突出部25の上面は、内側に向けて低く傾斜する傾斜面になっており、各突出部25は、全体として先細り状の形状を有している。各突出部25の上面および下面の先端面と連続する部分は、それぞれ滑らかな曲面になっている。
【0024】
なお、本実施形態では、各突出部25は、容器2の首部20に一体に設けられているが、必ずしもこの構成に限られるものではない。例えば、各突出部25を容器2の首部20の内周面に対して中栓のような形で取り外し可能に設けるようにしてもよい。
【0025】
キャップ5の内底面には、円筒状のボス51が内底面から突き出るように設けられている。ボス51の先端部は均等に分割されて、複数(例えば、3つ)の係合爪52が設けられており、各係合爪52の外面には段部53が設けられている。このボス51は、後述する芯材保持枠4の連結部42に設けられた嵌合孔43に嵌合可能であり、各係合爪52を内側に弾性変形させてボス51を嵌合孔43に嵌合させた後、各係合爪52の段部53を連結部42の下面に引っ掛けることで、芯材保持枠4が軸方向に抜けることなくキャップ5に対して回転可能に連結される。
【0026】
芯材保持枠4は、図4〜図6に示すように、例えば、プラスチックなどの可撓性を有する材料により成形されており、下方に向けて延びる左右一対の板状の側枠部材40,40と、各側枠部材40の上端部同士を連結する水平な板状の上枠部材41とを備えている。上枠部材41の中央部には、連結部42が一体に設けられており、連結部42の上面の中央部に嵌合孔43が設けられている。各側枠部材40の上端部は、それぞれ幅広に形成されており、各側枠部材40の上端部には、各側枠部材40を開閉させるためのL字状の開閉部材44,44が一体に設けられている。
【0027】
各側枠部材40が下方に垂下した状態では、各側枠部材40の間の距離は、芯材3の揮散部31の厚みよりわずかに小さく設定されている。これにより、揮散部31が各側枠部材40により挟持され、吸上部30が各側枠部材40から吊り下げられるようにして、芯材3は芯材保持枠4に保持される。各側枠部材40は、上端部40Aを支点として弾性的に揺動して開閉可能となっており、例えば、キャップ5(図1に示す)の上面に親指を当てるとともに、L字状の各開閉部材44の底面44Aにそれぞれ人差し指と中指とを当て、各開閉部材44をキャップ5の方向(図4に示す矢印Pの方向)に向けて押圧することで、各側枠部材40の下端部40Bが互いに離間(開動作)する。これにより、各側枠部材40の間に、芯材3の揮散部31を挿入することが可能になる。そして、各開閉部材44に対する押圧を解除すると、各側枠部材40は、弾性変形による復元力によって、元の下方に垂下する状態に復帰(閉動作)して、芯材3の揮散部31を挟持する。また、芯材3の使用済み後は、同様に、各開閉部材44をキャップ5の方向(図4に示す矢印Pの方向)に向けて押圧して、各側枠部材40を開動作させることで、芯材3に対する各側枠部材40による挟持が解除される。その結果、使用済みの芯材3を芯材保持枠4から容易に取り外すことができる。
【0028】
なお、本実施形態においては、芯材3の揮散部31は、その全体が芯材保持枠4により保持されている。芯材保持枠4が容器2内に挿入されている時には、各側枠部材40は容器2の各突出部25の間に挟まれているので、各開閉部材44による各側枠部材40の開閉動作が規制されている。そのため、芯材3は、芯材保持枠4を容器2の入口21から引き抜かない限り、芯材保持枠4から取り外すことができないようになっている。
【0029】
各側枠部材40の下端部40Bは、それぞれ幅広に形成されており、幅方向における一方の側縁部が内側に向けて折り曲げられて、第1の屈曲部45が設けられている。第1の屈曲部45の下端部から所定の領域は、芯材3の揮散部31の下面の形状に沿うように「く」の字状に折り曲げられており、揮散部31の下面の一部分を支える支持面46を構成している。この第1の屈曲部45により、各側枠部材40により挟持された芯材3の一方の側面が支持されているとともに、支持面46により、芯材3が下方にずれ落ちるのが規制されている。また、各側枠部材40の上部は、その一部分が、それぞれ幅広に形成されており、幅方向における一方の側縁部が内側に向けて折り曲げられて、第2の屈曲部47が設けられている。この第2の屈曲部47により、各側枠部材40により挟持された芯材3の他方の側面が支持されている。
【0030】
各側枠部材40の下端部40Bには、その外側面の中央部に、それぞれ板面より突き出る外向きの係合突起48,48が一体に設けられている。各係合突起48は、容器2内部の突出部25の方向に突き出るように設けられている。そのため、薬剤揮散器1の使用時に、芯材保持枠4を引き上げた際、各係合突起48が容器2の各突出部25の下面に引っ掛かって係合する。これにより、芯材保持枠4は抜け止め状態となり、容器2の入口21から芯材保持枠4が抜け出るのが防止されている。
【0031】
各係合突起48の下縁には、外側から内側へ向けて低く傾斜するように挿入ガイド部48Aが設けられている。薬剤の詰め替えや芯材3の取り替えのために芯材保持枠4を容器2の入口21から一旦引き抜いた後、再び、芯材保持枠4を入口21から容器2内に挿入する際に、挿入ガイド部48Aの存在により各係合突起48が内側にスムーズに撓むことで、各係合突起48は容易に各突出部25を乗り越える。その結果、芯材保持枠4を容器2内に容易に挿入することができる。
【0032】
各側枠部材40の外側面には、縦方向に等間隔で複数(図示例では、3つ)の突部49が一体に設けられている。この各突部49が、芯材保持枠4を引き上げた時に、容器2の首部20の内周面に設けられた各突出部25の上面と係合することで、芯材保持枠4が容器20内に不用意に落ち込まないようになっている。これにより、芯材保持枠4を所定の高さ位置にて保持することができる。
【0033】
芯材3は、図7(a),(b)に示すように、ともに略長方体状の吸上部30と揮散部31とを備え、吸上部30および揮散部31が連続して一体化された形態を有している。この芯材3は、主に液状の薬剤の吸上・揮散効果に優れた繊維層(図示せず)で全体が構成されている。前記繊維層としては、植物繊維やパルプなどの天然繊維、レーヨン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの合成繊維、またはそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。特に、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、スパンレース法などによって製造される不織布が好適であるが、その他、織物、編物などの層であってもよい。なお、前記繊維層の表面に、例えば、薄いレーヨンで構成された被覆層を設けるように構成してもよい。
【0034】
本実施形態では、吸上部30は、揮散部31よりもその幅が狭くなるように形成されている。これにより、芯材保持枠4が容器2内に収納されている時には、吸上部30を折りたたまれた状態に、一方で、芯材保持枠4が引き上げられた時には、吸上部30を伸びた状態に、それぞれ容易に変形させることができる(図1および図2参照)。吸上部30は、芯材保持枠4が引き上げられた時に、容器2の内底面に達することができる長さに設定されており、薬剤を最後まで吸い上げさせることができるようになっている。また、芯材保持枠4が引き上げられた時に、薬剤が空気中に揮散しやすくするために、揮散部31は幅広に形成されている。なお、本実施形態では、吸上部30の幅を揮散部31の幅よりも狭くしているが、吸上部30と揮散部31との幅が同じ大きさであってもよい。
【0035】
次に、上記した構成の薬剤揮散器1の使用方法について説明する。
【0036】
上記した構成の薬剤揮散器1においては、容器2の首部20にキャップ5が固定された状態では、図2に示すように、芯材3は吸上部30および揮散部31が液状の薬剤中に浸漬している。一方、図1に示すように、キャップ5と容器2の首部20との固定を外してキャップ5を容器2から引き上げると、これに伴い、芯材保持枠4が容器2の入口21から引き上げられて、芯材3の揮散部31が容器2の外部に露出する状態となる。これにより、揮散部31を介して吸上部30により吸い上げられた薬剤が空気中に揮散される。このとき、芯材保持枠4の各側枠部材40の外側面には、複数の突部49が設けられており、この各突部49が、芯材保持枠4を引き上げた際に、容器2の首部20の内周面に設けられた各突出部25の上面と係合する。これにより、芯材保持枠4が不用意に容器2内に落ち込まず、芯材保持枠4を所望の引き上げ高さに保持することができる。従って、使用者は、外部に露出させる揮散部31の表面積を変えることができ、薬剤の揮散量を調節することが可能となる。
【0037】
また、芯材保持枠4を引き上げた時には、各突出部25の先端面が芯材保持枠4の各側枠部材40と接触するので、芯材保持枠4は起立状態に保持される。また、各側枠部材40の係合突起48が容器2の突出部25の下面に確実に引っ掛かって係合するため、使用者が誤って芯材保持枠4を強く引き上げ過ぎた場合でも、芯材保持枠4が容器2の入口21から不用意に引き抜かれるのが防止されている。
【0038】
一方、薬剤の揮散に伴い、容器2内の薬剤が少量になったり、芯材3に界面活性剤などの不揮発成分が目詰まりすることで薬剤の揮散性能が低下したりした場合には、芯材保持枠4を各係合突起48が各突出部25と係合するまで引き上げた後、起立状態から前方または後方(図1において矢印X1または矢印X2で示す各突出部25の方向)に傾倒させることで、芯材保持枠4を容器2の入口21から容易に引き抜くことができる。
【0039】
つまり、本実施形態の薬剤揮散器1では、芯材保持枠4の各係合突起48が、芯材保持枠4を傾倒させることが可能な各突出部25の方向に突き出るように設けられているため、芯材保持枠4を傾けた際に、傾けた側の係合突起48は内側下方に変位して突出部25との係合が外れる。ここで、この芯材保持枠4を傾倒させた状態(つまり、一方の係合突起48と突出部25との係合が外れた状態)で芯材保持枠4をさらに引き上げると、傾けた側と反対側の容器2の突出部25と係合する係合突起48だけが、突出部25からの反作用の力による内向きの押圧力を受ける。これにより、側枠部材40が弾性変形によって撓むので、傾けた側と反対側の係合突起48(側枠部材40の下端部40B)は内側に変位し、突出部25との係合が外れて突出部25を容易に乗り越える。その後、傾けた側のもう一方の係合突起48についても、芯材保持枠4の引き上げにより、突出部25を乗り越えさせることで、芯材保持枠4を容器2の入口21から容易に引き抜くことが可能になっている。
【0040】
なお、本実施形態では、各突出部25の下面が内側に向けて高く傾斜する傾斜面になっているので、芯材保持枠4を容器2の入口21から引き抜く際に、各係合突起48が、突出部25の下面に沿って内側に容易に変位する。そのため、各係合突起48が容器2の各突出部25を乗り越え易くなっている。また、各突出部25の上面が内側に向けて低く傾斜する傾斜面になっているので、芯材保持枠4を容器2の入口21から一旦引き抜いた後、再び、芯材保持枠4を入口21から容器2内に挿入する際においても、各係合突起48が突出部25の上面に沿って内側に容易に変位して、各突出部25を乗り越え易くなっているので、芯材保持枠4の挿入作業が容易になる。
【0041】
このように、本実施形態の薬剤揮散器1では、芯材保持枠4を前後方向のいずれかに傾倒させながら芯材保持枠4を引き上げるという簡易な操作で、芯材保持枠4を容器2の入口21から容易に引き抜くことができるので、薬剤の詰め替えや芯材3の取り替え作業を手軽に簡単に行うことができる。また、容器2内に新たな薬剤を補充したり、芯材保持枠4の芯材3を新たな芯材に取り替えたりすることにより、容器2および芯材保持枠4を再利用することが可能である。
【0042】
また、芯材保持枠4の芯材3を新たな芯材に取り替えたい場合には、芯材保持枠4を容器2から引き抜いた後、各開閉部材44を、例えば人差し指と中指とを使ってキャップ5の方向に押圧する。これにより、各側枠部材40が開動作して、芯材3を挟持する状態が解除される。その結果、使用者は、使用済みの芯材3を、薬剤に触れることなく、芯材保持枠4から容易に取り外すことができ、芯材保持枠4に対する芯材3の取り替え作業も簡単に行うことができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態では、係合突起48は、芯材保持枠4の各側枠部材40の下端部に、それぞれ1つずつ設けられているが、2つ以上の複数設けられていてもよく、また、各側枠部材40で設けられる係合突起48の数が異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 薬剤揮散器
2 容器
3 芯材
4 芯材保持枠
5 キャップ
20 首部
21 入口
22 胴部
23 肩部
25 突出部
30 吸上部
31 揮散部
40 側枠部材
48 係合突起
48A 挿入ガイド部
49 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口を有する首部を備えた薬剤を収容可能な容器と、
少なくとも一部が薬剤に浸漬するように前記容器内に収納される芯材と、
前記芯材を保持する芯材保持枠とを備え、
前記芯材保持枠により前記芯材を前記容器外に引き上げることで、前記芯材の一部で吸い上げた薬剤が前記容器外に揮散するように構成された薬剤揮散器において、
前記首部の内周面には、内方に突き出る一対の突出部が設けられており、前記芯材保持枠が引き上げられた時、前記芯材保持枠が前記各突出部に挟持されることにより、前記芯材保持枠は起立状態で保持されるとともに、起立状態より前記突出部の方向に向けて傾倒可能であり、
前記芯材保持枠の下部には、前記芯材保持枠が引き上げられた時に、前記突出部に係合して前記芯材保持枠を抜止め状態とする一対の外向きの係合突起が設けられており、前記各係合突起は、前記芯材保持枠の傾倒により、一方の前記係合突起と前記突出部との係合が外れるように構成されている薬剤揮散器。
【請求項2】
前記芯材保持枠は一対の側枠部材を備え、前記各側枠部材により前記芯材が挟持されており、前記各側枠部材は上端部を支点に下端部が変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散器。
【請求項3】
前記芯材保持枠は、可撓性を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤揮散器。
【請求項4】
前記突出部の下面は、内側に向けて高く傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
前記芯材保持枠には、前記突出部の上面と係合可能な突部が縦方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項6】
前記各係合突起の下縁を、外側から内側へ低く傾斜させて挿入ガイド部を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項7】
前記容器の開口を開閉可能に閉塞するキャップに、前記芯材保持枠の上端部が回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薬剤揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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