説明

薬剤添加制御管理方法及び薬剤添加制御管理装置

【課題】抄紙白水系において増殖する微生物によるスライム生成を抑制するための、スライム・コントロール剤の過剰添加を抑制し、これによって薬剤補充の手間や経費を削減する。
【解決手段】抄紙白水系において、白水系水質溶存酸素センサ25cで溶存酸素濃度を検出し、該検出結果に基づいてスライム発生の可能性を予測し、該可能性の度合いに応じて、スライム生成を抑制するための、スライム・コントロール剤の、抄紙白水系への添加の量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種水系における微生物の増殖によるスライム生成を抑制するための、スライム・コントロール剤の過剰添加を抑制し、これによって薬剤補充の手間や経費を削減することができる薬剤添加制御管理方法、薬剤添加制御管理装置、及び薬剤添加制御管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2では、紙パルプ工業分野における用水や、冷却用循環用水、紙用塗工液、水性塗料、化粧品などに対する殺菌剤ないし防菌剤に関する技術が開示されている。
【0003】
更に、特許文献3では、紙パルプ製造工程水、用水、排水中に発生するスライムによる障害を防止するために、溶存酸素量測定によって微生物の発生状況を把握し、スライム・コントロール剤の投入を管理するという技術が開示されている。このスライム・コントロール剤には殺菌剤が用いられている。なお、以下において該スライム・コントロール剤については、単に薬剤とも称するものとする。
【0004】
特許文献4では、紙パルプ・プロセス白水系や冷却水系などの各種工業用水系において、水中の硬度成分などによるスケールや、水中の微生物や有機栄養分によるスライムの付着状況を、把握するための技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公平7−000523号公報
【特許文献2】特公平6−041457号公報
【特許文献3】特開平7−075787号公報
【特許文献4】特開平11−153559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スライム発生を所定範囲に抑制するように、常時、適正にスライム・コントロールするためには、経験が必要であり、すべての用水系の設備で経験者を配置することができるものではない。このため、スライム・コントロール剤が過剰添加されてしまうこともあり、これによって薬剤補充の手間や経費が増大している。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、例えば抄紙白水系等の用水系での微生物の増殖によるスライム生成を抑制するための、スライム・コントロール剤の過剰添加を抑制し、これによって薬剤補充の手間や経費を削減することができる薬剤添加制御管理方法、薬剤添加制御管理装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本願の第1発明は、微生物の増殖によるスライム生成を抑制するために、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加する際に、前記用水系での溶存酸素濃度の検出結果に基づいて、検出値が指数対数的減少の傾向にあればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測する薬剤添加制御管理方法により、前記課題を解決したものである。
【0009】
また、本願の薬剤添加制御管理方法は、前記用水系が複数であって、これら用水系は複数の異なる構内にあり、それぞれの用水系で個別に前記検出を行い、データ通信網を経由して該検出結果を、前記用水系から隔離された薬剤添加制御管理サーバ装置に伝送し、該薬剤添加制御管理サーバ装置において、前記スライム発生可能性予測及び前記添加量決定を行って、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加するようにしてもよい
【0010】
また、本願の薬剤添加制御管理方法は、前記用水系の用水を、スライム状態監視のため
の水質検出用タンクを含む流通路で循環させ、該スライム状態監視用タンクに導かれた用水に対して、前記検出を行うようにしてもよい
【0011】
本願の第2発明は、更に、増殖する微生物によるスライム生成を抑制するために、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加する薬剤添加制御管理装置であって、前記用水系での溶存酸素濃度の検出結果に基づいて、検出値が指数対数的減少の傾向にあればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測する制御演算装置を備えたことを特徴とする薬剤添加制御管理装置により、前記課題を解決したものである。
【0012】
次に、本願の第3発明はデータ通信網と、請求項4の薬剤添加制御管理装置を有する薬剤添加制御管理サーバ装置と、用水系の溶存酸素濃度を検出するセンサ、及び、前記データ通信網を経由して前記センサの検出結果を別構内にある前記薬剤添加制御管理サーバ装置に伝送するデータ送信手段を有する、用水系があるそれぞれの構内に配置される遠隔監視制御装置と、を備え、前記薬剤添加制御管理装置の前記検出結果入力手段が、上記伝送された検出結果を受信することで、該検出結果を入力する手段により、前記課題を解決したものである。
【0013】
以下、本発明の作用について、簡単に説明する。
【0014】
本発明は、増殖する微生物によるスライム生成を抑制するために、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加する際に、用水系の溶存酸素濃度を検出する。
【0015】
又、薬剤の添加の量を決定する際には、まず、上記検出結果に基づいてスライム発生の可能性を予測する。そうしてから、該可能性の度合いに応じて前記添加の量を決定する。このように本発明では、スライム発生の可能性に着目し、一旦、スライム発生の可能性を予測するようにしているので、薬剤の添加の量をより正確に決定することができる。
【0016】
従って、本発明によれば、増殖する微生物によるスライム生成を抑制するための、スライム・コントロール剤の過剰添加を抑制し、これによって薬剤補充の手間や経費を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を用いて本発明の実施の形態の例を詳細に説明する。
【0018】
なお、この例は、抄紙白水系のものであるが、他の用水系、例えば各種冷却水系、排水系、水洗工程系などであってもよい。
【0019】
図1は、本発明が適用された薬剤添加制御管理システムの実施形態の全体的な構成を示すブロック図である。
【0020】
この図において、本実施形態の中心になるのは、薬剤添加制御管理サーバ装置10であり、又関連して、販売管理サーバ装置11が設けられている。なお、薬剤添加制御管理サーバ装置10及び販売管理サーバ装置11を、単一のハードウェアによるサーバ装置において、一体構成してもよい。又、これら薬剤添加制御管理サーバ装置10や販売管理サーバ装置11は、一般的なサーバ装置としてのハードウェアやOS(Operating System)を用いて構築されている。
【0021】
これら薬剤添加制御管理サーバ装置10、及び販売管理サーバ装置11は、データ通信網1や携帯電話基地局17を経由して、遠隔監視制御装置5によって利用することができる。
【0022】
なお、データ通信網1は特に限定されるものではない。例えば、NTTその他の第一種通信事業者が提供する有線の公衆データ通信回線を利用するものでもよい。あるいは、データ通信の専用回線や、IP(Internet Protocol)網やインターネット網を利用してもよい。MODEM(modulator-demodulator)を用いて音声の電話回線を利用してもよい。ADSL(asymmetric digital subscriber line)などのXDSL(x digital subscriber line)や光ファイバ回線を利用したり、遠隔監視制御装置5として携帯電話機やPHS(簡易携帯電話:Personal Handy Phone)やPDAを利用したり、公衆電話回線として国際電話回線を利用したりするものでもよい。
【0023】
又、遠隔監視制御装置5は、携帯電話機による通信を介さずに、このようなデータ通信網1に直接接続するようにしてもよい。携帯電話基地局17は、携帯電話の通信を有線の通信網に接続するものであるが、第二種通信事業者のいわゆるプロバイダとしての機能を併設してもよい。この場合データ通信網1はインターネットになる。例えば、NTT DoCoMo社の携帯電話機での「iモード」、「Dopa」やこれに類似するものでは、所定の経路でインターネットに接続されるので、これを利用してもよい。
【0024】
なお、遠隔監視制御装置5及び薬剤添加制御管理サーバ装置10の相互関係の構成は、種々の形態が考えられるが、本発明はこれを具体的に限定するものではない。例えば、図3及び図10を用いて後述する変形例のように、遠隔監視制御装置5及び薬剤添加制御管理サーバ装置10を同一構内に配置し、これら間で情報の受渡しが、データ通信網1を介さずに行われるように構成してもよい。あるいは、これら図3及び図10において、別の変形例として、これら遠隔監視制御装置5及び薬剤添加制御管理サーバ装置10を一体構成したものであっても、本発明を適用することができる。
【0025】
なお、以下においては、これら変形例を単に変形例として総称する。又、以下における変形例は、遠隔制御ではなく基本的に現場に接近して配置されるものであり、上述の遠隔監視制御装置5及び薬剤添加制御管理サーバ装置10は、同様の機能を有する、それぞれデータ収集装置5A、薬剤添加制御管理装置10Aと称している。
【0026】
図2は、本実施形態で用いる遠隔監視制御装置5の構成を示すブロック図である。
【0027】
まず、遠隔監視制御装置5は、白水系水質温度センサ25aと、白水系水質pHセンサ25bと、白水系水質溶存酸素センサ25cと、白水系水質差圧センサ25dと、白水系水質流量・汚濁検出装置25eとを有している。なお、これら符号25a〜25eのものは、白水系水質センサ25と総称する。なお、白水系水質流量・汚濁検出装置25eは、その動作において循環ポンプ制御装置26から入力する信号を用いている。
【0028】
更に、該遠隔監視制御装置5は、添加薬剤流量センサ22と、薬剤流量・汚濁検出装置23と、薬剤残量センサ24と、循環ポンプ制御装置26と、センサ・インタフェイス装置27と、薬剤監視制御装置30とを有している。又、該遠隔監視制御装置5は、メモリ・ボックス装置32と、携帯電話ボックス装置34と、遠隔制御対応処理装置35と、ファクシミリ装置36と、薬剤添加ポンプ47とを有している。
【0029】
そして、メモリ・ボックス装置32は、収集データ蓄積装置40と、図示されないデータ転送処理装置とを備えている。携帯電話ボックス装置34は、携帯電話インタフェイス装置38及び携帯電話機39を備えている。
【0030】
上述の薬剤監視制御装置30は、データ入力収集装置31と、薬剤添加制御装置42とを有している。更に、該薬剤添加制御装置42は、添加流量設定装置44と、オン時間タイマ装置45と、オフ時間タイマ装置46と、薬剤添加動作検出装置21とを有している。
【0031】
なお、以上に述べた各装置において、所定のハードウェアで動作するソフトウェア・プログラムによって実現されているものもある。
【0032】
なお、携帯電話機39は前述したように、遠隔監視制御装置5、特に薬剤監視制御装置30と薬剤添加制御管理サーバ装置10との間でデータ通信をする際に、携帯電話の通信網を経由する場合に用いるものである。又、携帯電話インタフェイス装置38は、薬剤監視制御装置30内の諸装置が、携帯電話機39を利用した通信をするためのインタフェイスである。
【0033】
ここで、本実施形態においては、このように携帯電話の通信網を用いずに、これに代えて他の通信網を用いることも可能である。このように他の通信網を用いる場合、携帯電話機39や携帯電話インタフェイス装置38は採用する通信網に対応させたものを用いればよい。例えば、採用する通信網に合わせて、携帯電話機39に代えて他のMODEMやTA(Terminal Adapter)などの機器を用いたり、又このような機器に適合させた携帯電話インタフェイス装置38に代わるインタフェイス装置を用いたりするようにすればよい。
【0034】
なお、図3は、前記実施形態の前述した変形例における上記遠隔監視制御装置5の構成及び薬剤添加制御管理装置10Aの関連接続部分の構成を示すブロック図である。
【0035】
該変形例では前述のように、遠隔監視制御装置5に相当するデータ収集装置5A、及び薬剤添加制御管理サーバ装置10に相当する薬剤添加制御管理装置10Aを、同一構内に配置するように構成するようにしたり、一体構成するようにしたりして、基本的に現場に接近して配置するようにしている。このため該変形例では、薬剤添加制御管理装置10Aにおいて、遠隔監視制御装置5に接続するための薬剤添加制御管理サーバ装置10における通信制御装置73が、該遠隔監視制御装置5に相当するデータ収集装置5Aに接続するための入出力制御装置73Aとなっている。又、データ収集装置5Aにおいて、遠隔監視制御装置5のファクシミリ装置36は、プリンタ装置36Aとされている。遠隔制御対応処理装置35は、内容は同一のものであり便宜上装置名称が異なる制御対応処理装置35Aとされている。
【0036】
図4は、本実施形態における白水系水質センサ25の配置図である。
【0037】
本実施形態において、スライム状態監視の対象になり、又該監視に基づいてスライム・コントロール剤を添加する対象になる白水は、後述する図7に示す白水ピット84にある。又、図4において、該白水ピット84は図中左方にある。
【0038】
図4においてスライム状態監視に際して、白水は、図中の大きい矢印で示されるように循環ポンプ91によって循環させられる。即ち、白水ピット84から、白水系水質センサ25が配置されている水質検出用タンク82に導入され、この後、該水質検出用タンク82から白水ピット84に戻されるというように、水質検出用タンク82を含む流通路で白水は循環させられる。
【0039】
上述の循環に係り、該流通路の配管93には、管外の水質検出用タンク82に対して白水が出入りできるような、フィルタ様部分93aが設けられている。即ち、配管93内の白水は、該フィルタ様部分93aから水質検出用タンク82内へと浸透し、あるいは、水質検出用タンク82の白水は該フィルタ様部分93aから配管93へと浸透する。
【0040】
又、図4において、水質検出用タンク82の上方には、循環ポンプ91及び92を制御する循環ポンプ制御装置26と、白水系水質流量・汚濁検出装置25eと、センサ・インタフェイス装置27が設けられている。水質検出用タンク82には、白水系水質温度センサ25a、白水系水質pHセンサ25b、白水系水質溶存酸素センサ25cが設けられ、これらは該水質検出用タンク82の白水の水質を検出する。又これら白水系水質センサ25が出力する水質に応じた信号は、センサ・インタフェイス装置27に入力され、更に、該センサ・インタフェイス装置27からデータ入力収集装置31に、白水系の水質検出結果のデータが入力される。
【0041】
又、該水質検出用タンク82にある白水は、白水系水質差圧センサ25d、白水系水質流量・汚濁検出装置25eによる白水系水質検出のために、図4中で小さい矢印で示すように循環させられる。即ち、循環ポンプ92により水質検出用タンク82から汲みあげられる白水は、配管94、循環ポンプ92、白水系水質流量・汚濁検出装置25e内の白水流通路、配管95、配管96、スライム付着体構造部86、配管97、配管98、配管99の順の流通路で循環させられ、白水は配管99から再び水質検出用タンク82内に戻される。
【0042】
循環ポンプ92による該循環において、白水に発生するスライムは、スライム付着体構造部86内のフィルタ様のスライム付着体50に付着する。又、該付着によって、スライム付着体構造部86を通過する白水の流れが乱れなくなり、白水が流れるための抵抗(以下白水流動抵抗と呼ぶ)は低下する。本実施形態においては、該白水流動抵抗の度合いを2つの白水系水質差圧センサ25dによって検出している。
【0043】
一方の白水系水質差圧センサ25dは、スライム付着体構造部86の白水流入部分の水圧を検出するようにし配置され、他方の白水系水質差圧センサ25dは、スライム付着体構造部86の白水流出部分の水圧を検出するようにし配置されている。従って、2つの白水系水質差圧センサ25dで検出された圧力の差から、白水流動抵抗の度合いを検出できる。
【0044】
なお、白水が流れる際の白水流動抵抗と、流速(あるいは流量)、圧力には相互関係がある。従って、白水流動抵抗やその変化は、流速検出や流量検出や圧力検出で検出できる。又、該圧力検出についても、白水流動抵抗の上流圧力検出でも下流圧力検出でも、あるいはこれら圧力検出の差圧でもよい。本発明は、該白水流動抵抗やその変化の把握検出について具体的に限定するものではない。
【0045】
図5は、スライム付着体構造部86に設けられているフィルタ様のスライム付着体50の拡大図である。
【0046】
スライム付着体50は、図示されるように、多数の一方向の微細繊維51、及び該微細繊維51に直交する多数の微細繊維52によって、織られて形成されている。又、図中の符号54は、付着しているスライムである。
【0047】
図6は、スライム付着状況を示すスライム付着体50の断面図である。
【0048】
この図において、(A)はスライムが付着していない状態であり、(B)はスライムが付着している状態であり、(A)及び(B)はいずれも図5の横断面図である。未付着の(A)では、矢印57のように流れる白水の流動が乱れる。これに対して、スライムが付着した(B)は、符号55のようなスライム付着層が形成され、矢印57のような流れである白水の流動がスムーズになり、これにより白水流動抵抗が低下する。
【0049】
図7は、本実施形態における薬剤添加設備の構成を示すブロック図である。又、図8は、該薬剤添加設備の配置図である。
【0050】
まず、図8において、薬剤貯蔵タンク80の上方には、薬剤監視制御装置30、メモリ・ボックス装置32、携帯電話ボックス装置34が配置されている。符号39aは、携帯電話ボックス装置34内に設けられた携帯電話機39のアンテナである。更に、薬剤貯蔵タンク80の上方には、薬剤流量・汚濁検出装置23、薬剤残量センサ24、薬剤添加ポンプ47が配置されている。
【0051】
図7において、白水ピット84には符号L1の水位まで、抄紙用の白水が蓄えられている。この白水は、薬剤貯蔵タンク80に貯蔵されているスライム・コントロール剤を適宜添加して殺菌し、微生物の増殖を抑制し、スライム生成を抑制する必要がある。図7及び図8では、スライム・コントロール剤は、薬剤貯蔵タンク80において符号L2の水位まで貯蔵されている。該水位は、白水ピット84への薬剤添加に応じて漸次下降していき、再び薬剤を補充することで上昇する。該水位に応じた薬剤残量は、貯蔵されている薬剤中の残量センサ64により検出するようになっている。残量センサ64が出力する残量に応じた信号は、薬剤残量センサ24に入力されている。又、該薬剤残量センサ24からデータ入力収集装置31に、薬剤の残量検出結果のデータが入力される。
【0052】
又、貯蔵されている薬剤には、紫外線や温度条件その他により経時的に品質が低下して、殺菌性が低下ないしは喪失してスライム・コントロールできなくなるものがある。本実施形態では薬剤流量・汚濁検出装置23により、薬剤の品質を検出する。又、該薬剤流量・汚濁検出装置23からデータ入力収集装置31に、薬剤の品質検出結果のデータが入力される。
【0053】
薬剤貯蔵タンク80に貯蔵されている薬剤は、薬剤添加ポンプ47の添加動作によって白水ピット84中の白水に注がれ、添加される。該薬剤添加ポンプ47では流量設定機構60により、毎分の添加量で表される添加流量が設定できる。該流量設定機構60では、薬剤添加制御装置42の添加流量設定装置44にあるレジスタには、該添加流量の目標値が書き込まれる。該添加流量設定装置44は、薬剤添加ポンプ47の添加動作時の添加流量が該目標値になるように、流量設定機構60の機械機構を作動させ調整する。
【0054】
なお、実際の添加流量は、本実施形態においては流量計63によって実測している。該実測の添加流量を表す信号は、添加薬剤流量センサ22に入力されている。又、該添加薬剤流量センサ22からデータ入力収集装置31に、該実測添加流量のデータが入力される。
【0055】
又、薬剤添加ポンプ47が添加動作を開始した後の安定した添加動作中に、該実測添加流量の値がゼロであったり、正常範囲としての予め設定された格差以上に、該実測値が上述の目標値から外れたりしている場合は、薬剤添加ポンプ47など何らかの異常ありとデータ入力収集装置31において判断している。
【0056】
薬剤添加ポンプ47は、薬剤添加制御装置42にあるオン時間タイマ装置45中のレジスタに書き込まれたオン時間設定値だけ動作し、この後動作停止する。又、該動作停止後に、オフ時間タイマ装置46中のレジスタに書き込まれたオフ時間設定値だけ時間経過すると、オン時間タイマ装置45の動作がリセットされ、再び薬剤添加ポンプ47が動作する。このように薬剤添加ポンプ47は、上記のオン時間設定値だけ動作し、この後、オフ時間設定値だけ停止するという、オン及びオフの動作サイクルを繰り返す。本実施形態では該オンオフ動作サイクルにおいて、あるオン開始から次回のオン開始までの時間は、オフ時間タイマ装置46中のレジスタに書き込まれたオフ時間設定値となる。
【0057】
又、薬剤添加ポンプ47には、電流センサが用いられている添加検出器が取り付けられている。薬剤添加動作検出装置21は、該添加検出器によって検出される薬剤添加ポンプ47に流れる動力電流の大きさから、薬剤添加ポンプ47が添加動作をしているか否かを検出する。添加動作中であるか否かの情報は、該薬剤添加動作検出装置21からデータ入力収集装置31に入力される。本実施形態においては、薬剤添加ポンプ47の添加動作開始をこのように添加検出器の電流センサによって検出するようにしており、このような電流センサ利用の該薬剤添加ポンプ47は、既設で既に稼動実績がある薬剤添加ポンプ47に対して、後付け設置が比較的容易であるという特徴がある。
【0058】
これら図2〜図8において、上述したように、薬剤添加動作検出装置21、添加薬剤流量センサ22、薬剤流量・汚濁検出装置23、薬剤残量センサ24、白水系水質センサ25は、それぞれ該当の検出器による検出を行う。そして、これら検出結果や、一旦センサ・インタフェイス装置27に入力された白水系水質センサ25の検出結果は、データ入力収集装置31に入力される。該データ入力収集装置31は、薬剤添加動作検出装置21により薬剤添加ポンプ47の添加動作開始が検出された時に、これら検出結果に基づいたデータを収集データ蓄積装置40に書き込み、蓄積する。該データには、個々の検出値や、検出値が増加傾向にあるか減少にあるかを示す、検出値の微分値も含まれる。
【0059】
本実施形態においては、このように添加動作開始が検出された時にのみ、データの蓄積をするので、蓄積するデータの数が絞られ、収集データ蓄積装置40の記憶容量を有効に活用することができる。
【0060】
なお、通常、薬剤添加ポンプ47に取り付けられた添加検出器によって、該薬剤添加ポンプ47の動力電流により該薬剤添加ポンプ47の作動開始が検出された直後は、該薬剤添加ポンプ47などはまだ安定動作に至っていない場合もある。例えば、動力電流など種々の検出器による作動開始が検出された直後から、添加動作が安定動作になるまでに、所定時間を要する場合もある。このような場合は、検出器が添加動作開始を検出したから、該所定時間の経過後の時点を、本実施形態において上述のようにデータ蓄積その他をするタイミングとなる、添加動作開始時としてもよい。
【0061】
なお、収集データ蓄積装置40に蓄積などする、薬剤添加ポンプ47による添加量の数値としては、種々の数値を必要に応じて適宜採用できる。例えば、該添加量数値として、流量計63による流量を採用することもできる。あるいは、該添加量数値として、オン時間タイマ装置45により薬剤添加ポンプ47がオンとなっている時間における添加総量、即ち、〔(流量計63による流量)×(オン時間タイマ装置45のオン時間)〕を採用することもできる。あるいは、該添加量数値として、オフ時間タイマ装置46の設定時間間隔でオン時間タイマ装置45の設定時間だけ動作し、間欠動作する薬剤添加ポンプ47において、オン時及びオフ時を含めた単位時間当たり添加流量、即ち、〔{(流量計63による流量)×(オン時間タイマ装置45のオン時間)}/(オフ時間タイマ装置46のオフ時間)〕を採用することもできる。
【0062】
メモリ・ボックス装置32内のデータ転送処理装置は、薬剤添加制御管理サーバ装置10のデータ受取り処理装置72から該データ転送処理装置へのポーリング動作時に、収集データ蓄積装置40に蓄積されたデータの内、必要なものを該データ受取り処理装置72に伝達する。例えば、前回のポーリング動作以降に蓄積された、新しいデータのみを伝達するようにしてもよい。伝達されたものは、該データ受取り処理装置72により遠隔データ蓄積装置70に蓄積される。
【0063】
遠隔制御対応処理装置35は、薬剤添加制御管理サーバ装置10の抄紙関連設備制御演算装置74からの抄紙関連設備の遠隔操作時、該抄紙関連設備制御演算装置74から送られる、添加流量設定装置44、オン時間タイマ装置45、及びオフ時間タイマ装置46それぞれが有する前述のレジスタに書き込むための、添加流量データ、オン時間データ、休止時間データを受ける。そして、遠隔制御対応処理装置35は、これらデータを該当レジスタに書き込む。
【0064】
図9は、本実施形態の薬剤添加制御管理サーバ装置10の構成を示すブロック図である。
【0065】
図示されるように薬剤添加制御管理サーバ装置10は、遠隔データ蓄積装置70と、制御管理データベース装置71と、データ受取り処理装置72と、通信制御装置73と、抄紙関連設備制御演算装置74と、異常処理装置75と、薬剤管理メッセージ生成装置76と、薬剤管理レポート装置77とを有している。
【0066】
なお、以上に述べた各装置において、所定のハードウェアで動作するソフトウェア・プログラムによって実現されているものもある。
【0067】
まず、通信制御装置73は、薬剤添加制御管理サーバ装置10において、遠隔監視制御装置5中の薬剤監視制御装置30や、販売管理サーバ装置11などとのデータの受渡しに関する処理をする。
【0068】
次に、データ受取り処理装置72は、薬剤監視制御装置30からデータを受ける。又、これらデータは該データ受取り処理装置72により、遠隔データ蓄積装置70に書き込まれ、蓄積される。
【0069】
本実施形態においては、増殖する微生物によるスライム生成を抑制するために、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから抄紙白水系に添加する際に、所定の休止時間の間隔で動作する薬剤添加装置の作動開始を検出し、該作動開始検出時において前記薬剤の添加量、前記貯蔵タンクの残量、薬剤品質、及び前記白水系の水質を検出した結果のデータが、まず薬剤監視制御装置30内のデータ入力収集装置31により、メモリ・ボックス装置32内の収集データ蓄積装置40に蓄積保存される。この後は、薬剤添加制御管理サーバ装置10のデータ受取り処理装置72からメモリ・ボックス装置32内のデータ転送処理装置へのポーリング動作により、これらデータは該データ転送処理装置によって収集データ蓄積装置40から読み出され、遠隔地の遠隔監視制御装置5側のデータ転送処理装置からデータ受取り処理装置72に伝達され、遠隔データ蓄積装置70に蓄積される。
【0070】
次に、薬剤管理メッセージ生成装置76は、遠隔データ蓄積装置70に蓄積されたデータに基づいて、又制御管理データベース装置71に格納されているメッセージ生成ルールを必要に応じて用いて、該薬剤添加制御管理サーバ装置10において前記貯蔵タンクで有効品質の薬剤がなくなるまでの時間を予測し、薬剤補充に関するメッセージ生成を行う。例えば、該薬剤管理メッセージ生成装置76は、スライム・コントロール剤の補充に要する時間に基づいて決定し予め設定した補充猶予期間より、該予測時間が短くなった場合は、薬剤補充を促すなどのメッセージ生成を行う。あるいは、該薬剤管理メッセージ生成装置76は、遠隔データ蓄積装置70に蓄積されたデータに基づいて、又制御管理データベース装置71に格納されているメッセージ生成ルールを必要に応じて用いて、その他のメッセージ生成を行う。
【0071】
薬剤管理レポート装置77は、薬剤管理メッセージ生成装置76で生成されたメッセージに基づいて、スライム・コントロール剤の補充を催促するレポート文書など、抄紙設備管理者などに有用なレポート文書を作成する。そして作成したものを抄紙設備管理者側に通知する。通常は1日一回、該レポート文書作成及び通知を行う。
【0072】
なお、上述の補充猶予期間については、本発明は具体的に限定するものではない。スライム・コントロール剤が近くで用意されている場合は、該薬剤の補充には時間がかからないので、該補充猶予期間は比較的短くなる。一方、該補充に際して、スライム・コントロール剤を新たに発注する場合は、該薬剤の補充には時間がかかるので、該補充猶予期間は比較的長くなる。このように補充猶予期間は、スライム・コントロール剤の補充に要する時間に基づいて決定し予め設定されたものであればよい。
【0073】
該通知は、薬剤管理レポート装置77から遠隔監視制御装置5の携帯電話ボックス装置34内の携帯電話機39に電子メールを送付したり、ファクシミリ装置36にファクシミリを送付したりすることによって行う。あるいは該通知は、薬剤管理レポート装置77から、一旦図1に示す販売管理サーバ装置11にレポート文書を送付してから、該販売管理サーバ装置11が他の情報と併せて、携帯電話機39に電子メールを送付したり、ファクシミリ装置36にファクシミリを送付したり、郵送送付したりして、抄紙設備管理者側に通知するようにしてもよい。
【0074】
更に、遠隔監視制御装置5から送られ、データ受取り処理装置72に蓄えられているデータに基づいて、抄紙関連設備制御演算装置74は、制御管理データベース装置71に格納されている制御ルールを必要応じて用い、抄紙関連設備を適宜遠隔操作する。
【0075】
具体的には、まず、抄紙関連設備制御演算装置74は、スライム生成が抑制可能な前記添加量及び前記休止時間を求める。該抄紙関連設備制御演算装置74は、更に、該添加量になるような薬剤添加ポンプ47の添加流量、及び添加動作のオン時間を求める。そして、該抄紙関連設備制御演算装置74は、求めたこれらのデータを遠隔監視制御装置5の遠隔制御対応処理装置35や更には薬剤添加制御装置42に送る。又、該薬剤添加制御装置42における添加流量設定装置44、オン時間タイマ装置45、及びオフ時間タイマ装置46それぞれの前述したレジスタに、これら求めた添加流量、オン時間、休止時間のデータが書き込まれることにより、抄紙関連設備を遠隔操作する。
【0076】
又、本実施形態では、抄紙関連設備制御演算装置74において、以下のような制御ルールA1〜A4など、制御管理データベース装置71に格納されている制御ルールを必要に応じて用い、スライム・コントロール剤の添加量を求めている。
【0077】
A1.白水系水質温度センサ25aによる抄紙白水系の温度検出結果に基づいて、スライム発生の可能性を予測し、該予測に基づいて添加量を決定する。あるいは該予測に基づいて添加量を増減補正する。
【0078】
A2.白水系水質pHセンサ25bによる抄紙白水系のpH検出結果に基づいて、スライム発生の可能性を予測し、該予測に基づいて添加量を決定する。あるいは該予測に基づいて添加量を増減補正する。
【0079】
A3.白水系水質溶存酸素センサ25cによる抄紙白水系の溶存酸素濃度検出結果に基づいて、スライム発生の可能性を予測し、該予測に基づいて添加量を決定する。あるいは該予測に基づいて添加量を増減補正する。
【0080】
A4.白水系水質差圧センサ25dによる抄紙白水系の白水流動抵抗検出結果に基づいて、スライム発生の可能性を予測し、該予測に基づいて添加量を決定する。あるいは該予測に基づいて添加量を増減補正する。
【0081】
なお、このような白水系水質センサ25の検出結果に基づいたスライム・コントロール剤の添加量の決定に関する実施例については後述する。
【0082】
異常処理装置75は、データ受取り処理装置72による前述のポーリング動作時に得られた、遠隔監視制御装置5側の異常事態に対処する処理をする。
【0083】
これらの対処処理としては、例えば、その異常事態の発生事実について、薬剤管理レポート装置77によりレポートとして遠隔監視制御装置5に通知する。あるいは、該異常事態の発生事実について一時的に遠隔データ蓄積装置70に保存しておき、この後に他の情報、例えば薬剤の補充情報と共に、遠隔データ蓄積装置70によりレポート文書として作成する。そして作成したものを、電子メールやファクシミリその他の形態で遠隔監視制御装置5側に通知し、抄紙設備管理者側に通知する。
【0084】
なお、前述した変形例においては、以上に説明した薬剤添加制御管理サーバ装置10は、図10に示すような薬剤添加制御管理装置10Aになっている。
【0085】
該薬剤添加制御管理装置10Aは、遠隔データ蓄積装置70と内容は同一で便宜上装置名称が異なる収集データ蓄積装置70Aを有している。更に、該薬剤添加制御管理装置10Aは、薬剤添加制御管理サーバ装置10と同様に、制御管理データベース装置71と、データ受取り処理装置72と、抄紙関連設備制御演算装置74と、異常処理装置75と、薬剤管理メッセージ生成装置76と、薬剤管理レポート装置77とを有している。ただし該薬剤添加制御管理装置10Aは、薬剤添加制御管理サーバ装置10における通信制御装置73が、遠隔監視制御装置5と接続するための入出力制御装置73Aに置き換わっている。
【0086】
図11は、本実施形態における薬剤監視制御装置30の処理を示すフローチャートである。
【0087】
このフローチャートに示される処理は、遠隔監視制御装置5の薬剤監視制御装置30における処理を説明するためのものである。又、該処理は、この図のように1つのフローチャートで示されるような、必ずしも1つのプログラムによって実現されているものではない。
【0088】
この図において、まずステップ112ではデータ入力収集装置31が、薬剤添加動作検出装置21、添加薬剤流量センサ22、薬剤流量・汚濁検出装置23、薬剤残量センサ24、白水系水質センサ25から、種々のデータを入力する。更に該データ入力収集装置31は、これらのデータを収集データ蓄積装置40に書き込み、蓄積する。
【0089】
ステップ116では、薬剤添加ポンプ47に取り付けられた添加検出器の検出に基づいて、データ入力収集装置31が薬剤添加ポンプ47の添加動作開始を判定する。添加動作開始と判定された場合は、続くステップ117において、該データ入力収集装置31は、この時点で該データ入力収集装置31に入力されている諸データや、この時の時刻を収集データ蓄積装置40に書き込み、蓄積する。
【0090】
通常、薬剤添加ポンプ47はオフ時間タイマ装置46に設定されているオフ時間間隔で動作する。従って、該オフ時間間隔で上述の添加動作開始が判定され、このような諸データの書き込み及び蓄積が行われることになる。
【0091】
次にステップ120では、データ転送処理装置が薬剤添加制御管理サーバ装置10のポーリング動作による、携帯電話機39及び携帯電話インタフェイス装置38経由の呼び出しがあったか否か判定する。呼び出しありと判定された場合は、続くステップ121において、データ転送処理装置が収集データ蓄積装置40に蓄積されている情報で必要なものを、薬剤添加制御管理サーバ装置10側に送り出す。更に続いて、遠隔操作のために薬剤添加制御管理サーバ装置10側の抄紙関連設備制御演算装置74が薬剤添加制御装置42に対してデータ設定をする場合は、遠隔監視制御装置5側の遠隔制御対応処理装置35は、抄紙関連設備制御演算装置74に応じて薬剤添加制御装置42内の該当レジスタのデータを書き換える。
【0092】
前述のステップ120において呼び出しなしと判定された場合、あるいはステップ122の処理後、次にステップ112の前方に分岐し、該ステップ112以降の処理を再び実行する。
【0093】
上述の該ポーリング動作は、薬剤添加制御管理サーバ装置10のデータ受取り処理装置72が、すべての遠隔監視制御装置5に対して個別に一定周期で行ったり、遠隔操作のために薬剤添加制御装置42の該当レジスタに対してデータ設定をする際に行ったりする。該ポーリング動作では、データ受取り処理装置72は、まず、データ受取り処理装置72が個々の遠隔監視制御装置5の携帯電話ボックス装置34内の携帯電話機39を呼び出す。そして、遠隔監視制御装置5のデータ転送処理装置により、収集データ蓄積装置40に蓄積されている情報の内、前回のポーリング動作以降に蓄積された情報を、携帯電話インタフェイス装置38、携帯電話機39、携帯電話基地局17、データ通信網1、通信制御装置73などを経由して読み出すというものである。
【0094】
図12は、本実施形態における薬剤添加制御管理サーバ装置10の処理を示すフローチャートである。
【0095】
このフローチャートに示される処理は、薬剤添加制御管理サーバ装置10における処理を説明するためのものである。又、該処理は、この図のように1つのフローチャートで示されるような、必ずしも1つのプログラムによって実現されているものではない。
【0096】
この図において、まず、ステップ134では、データ受取り処理装置72がポーリング動作を行うべきか否か判定する。行うべきであると判定されるのは、すべての遠隔監視制御装置5に対して個別に一定周期で行うポーリング動作の時刻になった場合や、遠隔操作のために薬剤添加制御装置42の該当レジスタに対してデータ設定をする場合である。
【0097】
該ステップ134において、ポーリング動作を行うべきであると判定された場合、続くステップ135においてデータ受取り処理装置72は、通信制御装置73その他を経由してポーリング動作を行ない、該ポーリング動作によって遠隔監視制御装置5側から獲得したデータを遠隔データ蓄積装置70に書き込み蓄積する。
【0098】
次にステップ136では、抄紙関連設備制御演算装置74は、前述の制御ルールA1〜A4など、制御管理データベース装置71に格納されている制御ルールを必要に応じて用い、スライム・コントロール剤の添加量を求める。又、該抄紙関連設備制御演算装置74は、薬剤添加制御装置42の該当レジスタに書き込むデータを求める。
【0099】
又ステップ136では、薬剤管理メッセージ生成装置76は、今回獲得したデータに基づいて該当の抄紙設備の薬剤貯蔵タンク80における、貯蔵薬剤の持続時間を予測する。該予測は、該当抄紙設備の残量センサ64により検出される現時点の薬剤残量、薬剤添加制御装置42の該当レジスタにおいて設定されているオン時間及びオフ時間、流量計63により検出される実測添加流量と、次式に基づいている。又、求めた予測持続時間は、遠隔データ蓄積装置70に書き込み、蓄積する。
【0100】
(予測時間)=(薬剤残量)/(単位時間当たり添加流量)
=(薬剤残量)/〔{(オン時間)×(実測添加流量)}/(オフ時間)〕
【0101】
次にステップ137では、抄紙関連設備制御演算装置74は、ステップ136で求めた添加量への操作など、必要に応じ、遠隔監視制御装置5側の薬剤添加制御装置42に関する遠隔操作処理をする。
【0102】
次にステップ140では、薬剤管理レポート装置77は、レポート文書に関する処理を行う必要があるか否か判定する。
【0103】
必要ありと判定された場合、続くステップ141において、薬剤管理レポート装置77は、例えば図13に図示されるような、必要なレポート文書を作成する。そして、ステップ142において薬剤管理レポート装置77は、電子メールやファクシミリその他の形態で遠隔監視制御装置5側に通知し、抄紙設備管理者側に通知するべきレポート文書が存在する場合は、該通知を行う。
【0104】
図13は、本実施形態において作成し抄紙設備管理者側に送付するレポートの一例を示す線図である。
【0105】
この図のレポート文書では、抄紙関連設備制御演算装置74において求めて遠隔監視制御装置5において添加実施しているスライム・コントロール剤の添加量やこれに関する情報や、該当の抄紙設備からデータ受取り処理装置72が獲得したデータに基づいた情報や、これらデータに基づいて解析された結果の情報が含まれている。例えば該レポート文書では、「20cc/Min」なる添加量に削減されて経費が抑えられている旨や、上記解析結果による薬剤貯蔵タンク80の薬剤の予測持続時間に基づいた「本日のメッセージ」の項における「補充発注をお奨めします」なる旨のコメントが含まれている。
【0106】
前述のステップ140において処理不要と判定された場合、あるいはステップ142の処理後、次にステップ131の前方に分岐し、該ステップ131以降の処理を再び実行する。
【0107】
以上のように本実施形態によれば、抄紙設備のスライム・コントロール剤の白水系添加に関する様々な管理を遠隔地にて支援できるようにし、抄紙設備の不具合、管理者負担、及び諸経費を削減することが可能になる。
【0108】
次に、本実施形態における、前述の制御ルールA1〜A4の実施例について説明する。
【0109】
まず、第1実施例は、それぞれ前述の制御ルールA1〜A4に基づいた、以下のような制御ルールB1〜B4である。
【0110】
B1.白水系水質温度センサ25aによる抄紙白水系の温度検出結果に基づいて、30℃〜37℃の温度範囲内であればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外の温度範囲であればスライム発生可能性なしと予測する。
【0111】
B2.白水系水質pHセンサ25bによる抄紙白水系のpH検出結果に基づいて、pHが6〜8の範囲内であればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外のpH範囲であればスライム発生可能性なしと予測する。
【0112】
B3.白水系水質溶存酸素センサ25cによる抄紙白水系の溶存酸素濃度検出結果に基づいて、検出値が指数対数的減少の傾向にあればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測する。
【0113】
B4.白水系水質差圧センサ25dによる抄紙白水系の白水流動抵抗検出結果に基づいて、圧力変化があってこれが白水流動抵抗低下であればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測する。
【0114】
又、本実施例では、これら制御ルールB1〜B4において、スライム発生可能性ありであれば、大きい添加量を決定したり、添加量を増量補正したりする。あるいは、スライム発生可能性なしであれば、小さい添加量を決定したり、添加量を減量補正したりする。
【0115】
次に、第2実施例は、上述の第1実施例のそれぞれ制御ルールB1〜B4に基づいた、以下のような制御ルールC1〜C4である。
【0116】
C1.白水系水質温度センサ25aによる抄紙白水系の温度検出結果に基づいて、30℃〜37℃の温度範囲内であればスライム発生可能性ありと予測して「Xtmp=1」とし、これ以外の温度範囲であればスライム発生可能性なしと予測して「Xtmp=0」とする。
【0117】
C2.白水系水質pHセンサ25bによる抄紙白水系のpH検出結果に基づいて、pHが6〜8の範囲内であればスライム発生可能性ありと予測して「XpH=1」とし、これ以外のpH範囲であればスライム発生可能性なしと予測して「XpH=0」とする。
【0118】
C3.白水系水質溶存酸素センサ25cによる抄紙白水系の溶存酸素濃度検出結果に基づいて、検出値が指数対数的減少の傾向にあればスライム発生可能性ありと予測して「Xdo=1」とし、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測して「Xdo=0」とする。
【0119】
C4.白水系水質差圧センサ25dによる抄紙白水系の白水流動抵抗検出結果に基づいて、圧力変化があってこれが白水流動抵抗増大であればスライム発生可能性ありと予測して「Xsm=1」とし、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測して「Xsm=0」とする。
【0120】
そうして、本実施例では、下記の式によって、添加量に比例する制御量Wを求める。なお、Ktmp、KpH、Kdo、Ksmは制御係数である。
【0121】
W=Xtmp×Ktmp+XpH×KpH+Xdo×Kdo+Xsm×Ksm
【0122】
例えば、温度が34℃で、pHが4で、溶存酸素濃度が指数対数的減少の傾向にあり、白水系水質差圧センサ25dの圧力変化もなくて従って白水流動抵抗低下もない場合は、「Xtmp=1」、「XpH=0」、「Xdo=1」、「Xsm=0」になる。又、制御係数が、「Ktmp=20」、「KpH=40」、「Kdo=70」、「Ksm=125」であるとする。すると、上式に基づいて添加量の制御量Wは以下のようになる。
【0123】
W=1×20+0×40+1×70+0×125=90
【0124】
なお、これら実施例において、それぞれの制御ルールの閾値は他の値としてもよい。又第2実施例における制御係数は一例であって、他の値であってもよい。
【0125】
又、これら実施例の閾値や制御係数は、本実施形態において、それぞれの遠隔監視制御装置5のそれぞれの抄紙白水系で異なる値としてもよく、このような値は制御管理データベース装置71に個別に格納しておくようにしてもよい。又、このような値は、抄紙白水系の運用に応じて、自動的に学習するようにしてもよい。
【0126】
更に、本実施形態において、制御量Wが取り得る範囲を設定しており、このような範囲設定によれば誤って多量の添加量になることを防止することができる。具体的には、制御量Wは添加流量設定装置44に設定する流量であって、0で最小流量に、255で最大流量になるようにしている。又、添加量は、このような流量と、オン時間タイマ装置45に設定される添加時間との積になる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、増殖する微生物によるスライム生成を抑制するための、スライム・コントロール剤の過剰添加を抑制し、これによって薬剤補充の手間や経費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明が適用された薬剤添加制御管理システムの実施形態の全体的な構成を示すブロック図
【図2】上記実施形態で用いる遠隔監視制御装置の構成を示すブロック図
【図3】前記実施形態の変形例における上記遠隔監視制御装置の構成及び薬剤添加制御管理装置の関連接続部分の構成を示すブロック図
【図4】前記実施形態における白水系水質センサ25の配置図
【図5】前記実施形態におけるスライム付着体構造部86に設けられているフィルタ様のスライム付着体50の拡大図
【図6】前記実施形態におけるスライム付着状況を示すスライム付着体50の断面図
【図7】前記実施形態における薬剤添加設備の構成を示すブロック図
【図8】前記実施形態における薬剤添加設備の配置図
【図9】前記実施形態の薬剤添加制御管理サーバ装置10の構成を示すブロック図
【図10】前記変形例で用いる上記薬剤添加制御管理サーバ装置10に対応する薬剤添加制御管理装置10Aの構成を示すブロック図
【図11】前記実施形態における薬剤監視制御装置30の処理を示すフローチャート
【図12】前記実施形態における薬剤添加制御管理サーバ装置10の処理を示すフローチャート
【図13】前記実施形態において作成し抄紙設備管理者側に送付するレポート文書の一例を示す線図
【符号の説明】
【0129】
1…データ通信網
5…遠隔監視制御装置
10…薬剤添加制御管理サーバ装置
10A…薬剤添加制御管理装置
11…販売管理サーバ装置
17…携帯電話基地局
21…薬剤添加動作検出装置
22…添加薬剤流量センサ
23…薬剤流量・汚濁検出装置
24…薬剤残量センサ
25…白水系水質センサ
25a…白水系水質温度センサ
25b…白水系水質pHセンサ
25c…白水系水質溶存酸素センサ
25d…白水系水質差圧センサ
25e…白水系水質流量・汚濁検出装置
26…循環ポンプ制御装置
27…センサ・インタフェイス装置
30…薬剤監視制御装置
31…データ入力収集装置
32…メモリ・ボックス装置
34…携帯電話ボックス装置
35…遠隔制御対応処理装置
35A…制御対応処理装置
36…ファクシミリ装置
36A…プリンタ装置
38…携帯電話インタフェイス装置
39…携帯電話機
40…収集データ蓄積装置
42…薬剤添加制御装置
44…添加流量設定装置
45…オン時間タイマ装置
46…オフ時間タイマ装置
47…薬剤添加ポンプ
50…スライム付着体
60…流量設定機構
63…流量計
64…残量センサ
70…遠隔データ蓄積装置
70A…収集データ蓄積装置
72…データ受取り処理装置
73…通信制御装置
73A…入出力制御装置
74…抄紙関連設備制御演算装置
75…異常処理装置
76…薬剤管理メッセージ生成装置
77…薬剤管理レポート装置
80…薬剤貯蔵タンク
84…白水ピット
86…スライム付着体構造部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の増殖によるスライム生成を抑制するために、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加する際に、
前記用水系での溶存酸素濃度の検出結果に基づいて、検出値が指数対数的減少の傾向にあればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測することを特徴とする薬剤添加制御管理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記用水系が複数であって、
これら用水系は複数の異なる構内にあり、それぞれの用水系で個別に前記検出を行い、
データ通信網を経由して該検出結果を、前記用水系から隔離された薬剤添加制御管理サーバ装置に伝送し、
該薬剤添加制御管理サーバ装置において、前記スライム発生可能性予測及び前記添加量決定を行って、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加するようにしたことを特徴とする薬剤添加制御管理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記用水系の用水を、スライム状態監視のための水質検出用タンクを含む流通路で循環させ、
該スライム状態監視用タンクに導かれた用水に対して、前記検出を行うようにしたことを特徴とする薬剤添加制御管理方法。
【請求項4】
増殖する微生物によるスライム生成を抑制するために、スライム・コントロール剤を貯蔵タンクから用水系に添加する薬剤添加制御管理装置であって、
前記用水系での溶存酸素濃度の検出結果に基づいて、検出値が指数対数的減少の傾向にあればスライム発生可能性ありと予測し、これ以外であればスライム発生可能性なしと予測する制御演算装置を備えたことを特徴とする薬剤添加制御管理装置
【請求項5】
データ通信網と、
請求項4の薬剤添加制御管理装置を有する薬剤添加制御管理サーバ装置と、
用水系の溶存酸素濃度を検出するセンサ、及び、前記データ通信網を経由して前記センサの検出結果を別構内にある前記薬剤添加制御管理サーバ装置に伝送するデータ送信手段を有する、用水系があるそれぞれの構内に配置される遠隔監視制御装置と、を備え、
前記薬剤添加制御管理装置の前記検出結果入力手段が、上記伝送された検出結果を受信することで、該検出結果を入力する手段であることを特徴とする薬剤添加制御管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−85960(P2009−85960A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270167(P2008−270167)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【分割の表示】特願2002−179019(P2002−179019)の分割
【原出願日】平成14年6月19日(2002.6.19)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】