説明

薬剤溶出医療デバイス

本発明は、薬剤溶出医療デバイス、特に、血管形成術の対象となる血管の再狭窄を予防するために薬剤を溶出する、血管形成用カテーテルのためのバルーンに関する。より具体的には、本発明は、水和結晶質形態又は水和溶媒和結晶質形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンに関する。バルーンは、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、又はポリエステルアミド、又はポリアミド−12から作製され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤溶出医療デバイス、特に、血管形成術の対象となる血管の再狭窄を予防するために薬剤を溶出する、血管形成用カテーテルのためのバルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
血管のじゅく状動脈硬化病変の治療は、一般的な療法である。かかる病変は、ほとんどの場合、血管の所定の部分に局在的であり、その血管部分の狭窄あるいはまた閉塞を引き起こす。血管のじゅく状動脈硬化病変は、典型的には、バルーンを備えたカテーテルを用いて、血管形成手技で治療される。
遠位端にバルーンを備えたカテーテルは、ガイドワイヤに従って、狭窄した動脈の小孔へと前進させられる。バルーンは、一旦動脈狭窄部に配置されると、反復して膨張及び収縮させられる。動脈内でのバルーンの吹送及びそれに続く収縮は、動脈内腔狭窄の程度を低減し、狭窄症を患う心臓領域において適切な血流を回復させる。場合によっては、カテーテル及びバルーンを引き抜いた後にも、動脈開存の維持を提供する、いわゆるステントを配置することが必要である。
【0003】
どちらの場合も、介入の成功は完全ではない。実際、数ヵ月後、一部の患者は、介入点において血管壁の新たな狭窄を発症する。再狭窄の名称で知られるかかる狭窄は、新たなアテローム斑の形成には起因しないが、恐らく、異物であるステント又はバルーンによって生じる拡張作用に起因した、特に血管平滑筋細胞の、細胞過剰増殖プロセスに起因する。
再狭窄は、ステントを、抗増殖作用を有する薬剤でコーティングすることによって、治療され得ることが観察されている。かかる目的に使用される薬剤の中でも、パクリタキセル(タキソール)は、特に効果的であることが判明している。この薬剤は、血管中に埋め込まれたステントが常に存在することによって引き起こされる、細胞過剰増殖プロセスを阻害するために、十分に長期間にわたって放出されなければならない。しかしながら、該薬剤はまた、血栓の形成を回避するために極めて重要な、ステントの内皮細胞化プロセスの阻害も誘発する。この理由のために、薬剤溶出を備えるステント(「薬剤溶出ステント」)の使用は、幾つかの欠点を有する。
【0004】
ごく最近では、抗増殖薬剤コーティング済みカテーテルバルーンが提案されている。しかしながら、ほとんど全ての場合、該薬剤がバルーンから血管壁に移された後の、介入部位における該薬剤の徐放の形態が記載されている。
しかしながら、再狭窄現象を阻害するための長期間にわたる薬剤溶出は、必要でも望ましくもなく、薬剤と血管表面との間の時間が限定された接触、例えば、数秒〜1分の接触は、十分で、むしろより簡便であることが指摘されている。これらは、典型的には、前述したカテーテルバルーンの接触時間である。
特許公開第WO 02/076509号は、バルーンの血管壁との短い接触時間の間に、即時に生物学的に利用可能な形態にある薬剤を放出する、該薬剤でコーティングしたカテーテルバルーンを開示する。
【0005】
本明細書に上述されるようなアプローチが、従来対処されていた問題と比較して、完全に異なる課題を提起することは理解されるであろう。実際、種々の解決手法、例えば、ポリマーマトリックス又はマイクロカプセルへの薬剤の取り込みによって長期の薬剤溶出が得られる一方で、即時の放出は複数の要因に依存し、このうち主な要因は、
− 該薬剤の性質、特にその親水性又は疎水性、
− 該薬剤が投与される形態、特に、その結晶形態又は非晶質形態、
− 使用可能な賦形剤又は「促進剤」の存在、
− 任意に、該薬剤が堆積されるバルーン表面の性質、
である。
実際、該薬剤は、第一に、血管形成手技の間に利用可能な非常に短い接触時間で、バルーンから血管壁へと放出されなければならないことを理解するべきである。一旦該薬剤が放出されると、該薬剤は、血流がそれを洗い流す前に、細胞壁によって吸収されなければならない。したがって、理想的には、該薬剤の吸収は、そのバルーンからの放出に付随して生じることが望ましい。
しかしながら、製造ステップの間、並びに血管形成手技の準備及び実行の間の両方で、いずれの場合も、バルーンが介入の部位に到達する前に、該薬剤が受ける全ての取扱作業に抵抗するために十分な方法で、該薬剤が該バルーン表面によって保持されることも同程度に必要である。これは、かかる特性の完全なバランスを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、介入の部位で、薬剤の即時の放出及び生物学的利用能を可能にする、該薬剤でコーティングされたカテーテルバルーンを提供することが、本発明の目的である。
本発明のさらなる目的は、バルーン表面上での薬剤の良好な接着、及び同時に、該バルーン表面の血管壁との接触後の、該薬剤の迅速な放出を達成するために、該カテーテルバルーンを該薬剤でコーティングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、結晶水和形態のパクリタキセルでコーティングされ、介入の部位で、該薬剤の即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンに関する。
本発明のさらなる目的は、結晶水和溶媒和形態のパクリタキセルでコーティングされ、介入の部位で、該薬剤の即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンである。
本発明の別の態様に従って、前に規定した、結晶水和形態又は溶媒和水和形態のパクリタキセルでコーティングされたカテーテルバルーンは、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、又は該コポリマーとポリアミドとの「コンパウンド」から作製される。
さらなる態様に従って、前に規定した、結晶水和形態又は溶媒和水和形態のパクリタキセルでコーティングされたカテーテルバルーンは、ポリエステルアミドから作製される。
【0008】
さらなる態様に従って、前に規定した、結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態のパクリタキセルでコーティングされたカテーテルバルーンは、ポリアミド−12から作製される。
さらなる態様に従って、カテーテルバルーン表面は、親水性であるか又は親水化剤での処理によって親水性にされる。
本発明のさらなる態様に従って、前に規定した、結晶水和形態又は溶媒和水和形態のパクリタキセルは、尿素含有溶液から堆積される。
本発明の一つの態様に従って、バルーンは、パクリタキセル溶液でのコーティング前に膨張させられ、次いでそれは、湿潤であるうちに折り畳まれる。本発明のさらなる態様に従って、バルーンは、折り畳まれ、次いでそれはパクリタキセル溶液でのコーティング前に膨張させられ、最後にそれは、湿潤であるうちに再度折り畳まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一つの態様に従って、コーティングをする間にカテーテルバルーンを回転させるためのデバイスの概略的側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、特に、水和結晶質形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンに関する。
「即時の放出及び生物学的利用能」という用語は、1秒〜1.5分、好ましくは20秒〜1分の範囲の期間でのバルーン表面からの放出、及び1秒〜25分、好ましくは20秒〜25分の範囲の期間での血管組織による吸収を意味する。
「治療的有効量」という用語は、患者において治療された血管組織の再狭窄に対する、治療又は予防効果を誘導することのできる薬剤量を意味する。
「介入の部位」という用語は、本発明のカテーテルバルーンで直接治療される血管の区分、及び術後にパクリタキセルの存在が検出され得る組織の隣接部分を意味する。概して、かかる区分は、バルーンとの接触区分から2〜10mm下流及び上流に延びるであろう。
「水和結晶質形態のパクリタキセル」とは、2、3、又は4個の結晶水の分子を備えるパクリタキセルを意味する。
【0011】
パクリタキセルのこの結晶質形態は、パクリタキセルを水性溶媒に溶解することによって、バルーン表面をかかる溶液で完全に又は部分的に湿潤させることによって、及び白色で、均質の又は部分的に不均質の外見を有する結晶層が形成されるまで、溶媒を蒸発させることによって、得ることができる。
水性溶媒として、アセトン/エタノール/水、テトラヒドロフラン/水、メタノール/水、アセトン/水、エタノール/水、アセトニトリル/水、DMF/水から選択される溶媒の混合物が、好ましくは使用される。より好ましくは、溶媒は、9:1テトラヒドロフラン/水混合物、又は9.5:0.5〜65:35の範囲の比率でのテトラヒドロフラン/水混合物、又は有機溶媒が、水に対して50容量%以上の量で存在するアセトン/エタノール/水混合物である。
溶液中のパクリタキセルの濃度は、4〜6mg/mlの範囲に及んでもよく、好ましくは約5mg/mlである。
バルーンを湿潤させるステップは、当業者に既知の複数の方法で行うことができ、例えば、バルーンをパクリタキセル溶液に浸す方法、パクリタキセル溶液をバルーンに噴霧する方法、又はシリンジ、微量ピペット、若しくは他の類似した分注デバイスを用いて、パクリタキセル溶液をバルーン上に堆積させる方法で行うことができる。
【0012】
バルーンは、展開及び膨張した状態で、又は折り畳まれた状態で、パクリタキセル溶液で湿潤させられ得る。この第2のケースではまた、パクリタキセル溶液は、折り目下で毛管現象によって浸透して、薬剤の貯留を形成し、該貯留が、折り畳まれたバルーンの血管へのカテーテルによる導入ステップの間、介入及びその膨張の部位に到達するまで保護され続けることが観察されている。
また、バルーン折り目下の領域を選択的にコーティングし、外面を実質的に該薬剤のない状態に保つ方法が知られている。かかる方法は、例えば、一連のマイクロノズルを有するカニューレをバルーンの折り目へ導入することを含むことができ、パクリタキセル溶液は、そのマイクロノズルを通じて折り目の内面上に堆積される。かかる方法は、例えば、2007年11月21日に出願された国際出願第PCT/IT2007/000816号に記載され、該出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
折り畳まれたバルーンは、好ましくは3〜6つの折り目を有するであろう。
バルーンのための好ましい湿潤方法は、シリンジ、微量ピペット、又は他の類似した分注手段を用いた、パクリタキセル溶液の、折り畳まれたバルーン表面上への堆積である。典型的には、該分注手段は、ジグザグの経路を確立するために、バルーンを、その長手方向の軸を中心に回転させながら、表面上で1つの端部からもう1つの端部まで、及びその逆に摺動させられるであろう。別の方法では、該分注手段は、実質的にジグザグの経路を確立するために、その長手方向範囲に対して実質的に中央の位置から出発してバルーン表面上で摺動させられ、それはその第1の端部に向かって摺動させられ、その後、その第2の端部に向かって摺動させられる。
【0013】
さらなる方法に従って、次のステップが行われる:
(a) バルーンを用意すること、
(b) 該バルーンを、所定の圧力になるまで膨張させること、
(c) ステップ(b)の該膨張したバルーンを、パクリタキセル溶液でコーティングすること、
(d) ステップ(c)のコーティングされたバルーンを収縮させること、
(e) ステップ(d)の収縮したバルーンを、湿潤であるうちに折り畳むこと、
(f) 任意に、該折り畳まれたバルーンに保護カバーを適用すること。
この方法に従って、コーティングするステップは、バルーンカテーテルの製造プロセスの間に直接行われ、コーティングするステップは、実際にバルーンカテーテル製造プロセスの一部である。したがって、この方法に従ったコーティングされたバルーンカテーテルの製造は、より迅速であって有利である。
さらなる好ましい方法に従って、次のステップが行われる:
(g) 折り畳まれたバルーン、例えば、3〜6つの折り目を有するバルーンを用意すること、
(h) 該折り畳まれたバルーンを、所定の圧力になるまで膨張させること、
(i) ステップ(h)の該膨張したバルーンを、パクリタキセル溶液でコーティングすること、
(j) ステップ(i)のコーティングされたバルーンを収縮させること、
(k) ステップ(j)の収縮したバルーンを、湿潤であるうちに再度折り畳むこと、
(l) 任意に、該再度折り畳まれたバルーンに保護カバーを適用すること。
【0014】
ステップ(g)に従った、すでに折り畳まれたバルーンの使用は、ステップ(h)の膨張後であっても、材料が折り目の幾らかの記憶を維持する結果、後続のステップ(k)の再折り畳みが、コーティングされたバルーンを過度に操作することなく、容易に及び短時間で行なわれ得るため、有利である。
ステップ(b)又は(h)における該所定の圧力は、バルーンの公称圧力(RBP圧)未満の圧力である。例えば、4〜7mmのバルーン直径及び40〜80mmのバルーン長について、該所定の圧力は、5〜9バールである。
ステップ(b)又は(h)の膨張したバルーンは、好ましくはコーティング前に、加圧空気源から分断される。かかる方法では、バルーンは膨張したままであるが、張力はかかっておらず、コーティングするステップは、この状態条件から有利に恩恵を受ける。長いバルーンの場合は、膨張ステップ(b)又は(h)は、1分未満延長される。
ステップ(c)又は(i)のコーティングは、好ましくは該薬剤溶液を、膨張したバルーン表面上に送達することによって行われる。典型的には、該折り畳まれたバルーンのコーティングについての上述の通り、微量ピペットが使用され得る。同様の手順に従うことができ、すなわち、バルーンが回転させられる間、該溶液の送達をバルーン長の中央から開始し、バルーンの一端部に移動し、次いで反対端部に移動する。実質的にバルーン表面全体が湿潤させられることが重要である。
【0015】
好ましくは、バルーンの回転は、過度に高速でない。典型的には、コーティングの間、約5rpm〜約30、好ましくは約10rpm〜約20rpmのバルーンの回転速度が使用されるが、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる数値が設定されてもよい。好ましくは、該薬剤溶液の送達時間は、約10秒〜約500秒の範囲に及んでもよい。
バルーンの回転は、好ましくは図1に示されるデバイス及び下記のデバイスを用いて遂行されてもよい。
コーティングされたバルーンの収縮ステップ(d)又は(j)は、カテーテルバルーン開口部に真空を適用することによって及び/又はバルーンを外側から圧迫することによって遂行される。真空の適用が、特に長いバルーンのために好ましい。
折り畳むステップ(e)又は再度折り畳むステップ又は(k)は、バルーンを折り畳むための従来のデバイスを用いて行われる。
上述のプロセスに従って、折り畳み(e)及び再度の折り畳み(k)は、バルーン表面が湿潤であるうちに行われる。これは、薬剤の、バルーン表面へのより良い接着を得ることを可能にする。
典型的には、該折り畳み(e)又は再度の折り畳み(k)は、それぞれコーティングするステップ(c)又は(i)の終了から20分以内、好ましくは1分〜10分以内、より好ましくは1分〜5分以内に行われる。
【0016】
ステップ(f)又はステップ(l)が行われる場合は、折り畳まれた又は再度折り畳まれたバルーンを覆って、保護カバー、典型的には、該薬剤でコーティングされているバルーン表面を包むスリーブを挿入することによって遂行される。かかるスリーブは、好ましくは低摩擦材料から作製される。低摩擦材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が簡便に使用されてもよい。低摩擦材料の使用は、バルーン表面に接着した該薬剤の除去を最小限にすることを可能にする。低摩擦材料は、バルーンが作製される材料の摩擦係数より小さい摩擦係数を有するべきである。
概して、使用される方法から独立して、堆積されることが意図される該薬剤の量の関係で、バルーンをパクリタキセル溶液で湿潤させるステップを数回反復することが可能である。
図1に示されるように、カテーテルバルーン2を回転させるのに好適なデバイスは数字1で示される。カテーテルバルーン2は、カテーテル区分3及びバルーン区分4を備え、それは膨張した状態で示される。
デバイス1は、基底部4、第1のモータユニット5、及び第2のモータユニット6を備える。各モータユニット5、6は、カテーテルバルーン2の2つの端部を締め付けるための締め付け手段8、8’を備える。
好ましくは、遠位締め付け手段8は、カテーテルバルーンが装填されるガイドワイヤ(示されず)に作用する。好ましくは、近位締め付け手段8’は、カテーテルバルーンに備えられたコネクタ(ルアー)(示されず)に作用する。
モータユニット5、6は、好ましくはブラシレスモータである。モータユニット5、6は、同期的に動作する。命令及び制御ユニット7は、2つのモータユニット5、6の同期動作を提供する。これは、カテーテルバルーン2のねじれを回避するために重要である。
バルーン長に依存して、カテーテルバルーン2を水平位置に維持するために、1つ以上の支持手段9もまた提供される。
【0017】
別の態様に従って、本発明は、結晶水和溶媒和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンに関する。
「結晶水和溶媒和形態のパクリタキセル」とは、2〜3個の結晶水の分子及び1〜3個の溶媒の分子を備えるパクリタキセルを意味する。
前に規定した、水和結晶質形態及び水和溶媒和結晶質形態の両方の場合において、パクリタキセルは、水及び/又は溶媒を結晶構造に取り込むダイマーを形成する傾向があることに留意されたい。したがって、パクリタキセルの1分子当たりの、溶媒和物へ取り込まれる結晶水又は溶媒の分子の数は、整数によって定義されないが、小数によって定義される可能性がある。例えば、水和溶媒和物が、ジオキサン/水等の溶媒からの結晶化によって形成される場合、5個の水分子及び3個のジオキサン分子を取り込むダイマーを得ることができ、したがってこの場合、パクリタキセルの1分子当たり2.5個の結晶水の分子及び1.5個のジオキサンの分子が存在するであろう。
パクリタキセルの結晶水和溶媒和形態は、好適な条件下、例えばBristol−Myers Squibb Co.の名義による特許公開第WO03/0475078号に記載される条件下で操作することによって、好ましくはジオキサン/水、DMF/水、DMSO/水、N−メチルピロリドン/水、アセトニトリル/水、N,N−ジメチルアセトアミド/水、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジノン/水、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン/水混合物、又はそれらの混合物から選択される水性溶媒から得ることができ、該出願の内容は、かかる調製方法に関連して参照により本明細書に組み込まれる。
結晶水和溶媒和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされたバルーンの調製様式は、水和結晶質形態についての上述の様式に完全に類似しており、したがって、それらはさらに説明されない。
【0018】
本発明のさらなる態様に従って、結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンは、前に規定した通り、尿素の存在下にパクリタキセルを水性溶媒に溶解すること、バルーン表面をかかる溶液で完全に又は部分的に湿潤させること、及び白色で、均質の又は部分的に不均質の外見を有する結晶層が形成されるまで、溶媒を蒸発させることによって、得ることができる。
バルーン表面上のパクリタキセルのコーティング層における尿素の存在が、かかる表面からの該薬剤の放出を促進することが指摘されている。尿素は、1mLの溶媒当たり1〜100mg、好ましくは1mLの溶媒当たり4〜10mgの範囲の量、より好ましくは1mLの溶媒当たり約7mgの量で使用され得る。
本発明のさらなる目的は、結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンであって、ここで該バルーンは、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー又は該コポリマーとポリアミドとの「コンパウンド」から作製される。
【0019】
本発明に従うポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマーは、ポリアミドブロックを形成するモノマーを含むエラストマーであり、材料の硬質部分を表し、軟質部分を表す基で修飾される。
このエラストマーは、式(1)に従うアミノカルボン酸及び式(2)に従うラクタム:
2N−R1−COOH (1)
【化1】

からなる群から選択されるポリアミドブロックを形成する化合物を、式(3)のトリブロックポリエーテルジアミン化合物:
【化2】

及び式(4)に従うジカルボン酸:
HOOC−(R3)m−COOH (4)
と重合させることによって得られる。
【0020】
上述の式において、R1、R2、及びR3基の各々は、その中に炭化水素鎖を含み、任意に1つ以上のアミド基によって分断される結合基を表す。
好ましくは、R1及びR2は、独立して、2〜20個の炭素原子及びアミド結合を有するアルキレン基を含み、R3は、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン基を含み、
xは、1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16の間で変化することができ、yは、4〜50、好ましくは5〜45、より好ましくは8〜30の間で変化することができ、zは、1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12の間で変化することができ、
mは、0又は1である。
【0021】
概して、重合は、式(1)及び/又は(2)の化合物の15〜70質量%、並びに全体の質量百分率で30〜85%の式(3)及び(4)の化合物の混合物を用いることによって行われる。この重合は、150〜300℃、好ましくは160〜280℃、さらに好ましくは180〜250℃の範囲の温度の反応器中で行われる。
かかるコポリマーとポリアミドとのコンパウンドは、既知の技術に従って、10〜90質量%、好ましくは75〜25質量%、より好ましくは60〜40質量%の量のコポリマーを、全体として100%になる量のポリアミドと混合することによって得られる。
好ましくは、ポリアミドは、ポリアミド−12である。
かかるコポリマー及び該コポリマーとポリアミドとの「コンパウンド」は、既知であり、特許公開第WO2007/132485A1号に詳述されており、該出願の内容は、かかる材料の構造及びその入手に関連して、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明のカテーテルバルーンの構築におけるかかる材料の使用は、パクリタキセル放出の最適な特徴を提供し、一方で、処理における、また、介入の部位から遠く離れた使用ステップにおける該薬剤の保持に必要な能力と、介入の部位で血管細胞壁と膨張したバルーン表面との間の短い接触時間でパクリタキセル層を血管細胞壁へ放出する容易さとがバランスしていることが観察された。
【0022】
本発明のさらなる目的は、結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンであって、該バルーンがポリアミド−12から作製される、カテーテルバルーンである。
本発明のさらなる目的は、結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンであって、該バルーンがポリエステルアミドから作製される、カテーテルバルーンである。
本発明で使用されるポリエステルアミドは、次の一般式によって記載することができ:
H−(O−PF−OOC−PA−COO−PF−OOC−PA−CO)n−OH
ここでPAは、ポリアミドセグメント、PFは、OH−末端ダイマージオールセグメントを含むジオールセグメントであり、nは、5〜20の範囲の数である。
ポリエステル−アミドコポリマー内のジオール構成成分の含有量は、5〜50質量%である。好ましくは、ジオール構成成分の濃度は、全製剤の10〜30質量%、さらにより好ましくは10〜20質量%である。
これらのポリマーは既知であり、特許公開第WO2005/037337A1号に詳述されており、該出願の内容は、かかる材料の化学構造及び調製方法に関連して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本発明のさらなる目的は、結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーンであって、該バルーンが親水性表面又は好適な親水化処理によって親水化された表面を有する。
例えば、本発明に従うカテーテルバルーン表面は、プラズマ活性化酸素での処理によって親水性にすることができる。
上述の全ての実施形態では、パクリタキセルは、カテーテルバルーンコーティング層中に、1〜20μg/mm2、好ましくは2〜7μg/mm2、より好ましくは3〜5μg/mm2の範囲の量で存在する。
これから、本発明は、次の実施例を用いて詳述されるが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0024】
実施例1A―結晶水和又は結晶水和溶媒和パクリタキセルでのカテーテルバルーンのコーティング
パクリタキセル溶液を、次の溶媒中、50mg/mLの濃度で調製した。
(1) 9:1 THF/水
(2) 9:1 THF/水に、15mg/mLの尿素を添加
(3) 6.5:3.5 THF/水
(4) アセトン/エタノール/水
(5) 酢酸(比較溶液)
(6) ジクロロメタン(比較溶液)
本発明に従う結晶水和形態又は溶媒和水和形態のパクリタキセルは、酢酸からの結晶化によっては得られないことに留意すべきである。代わりに、ジクロロメタンからの沈殿によって、非晶質パクリタキセルが得られる。
ポリアミド−12+ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマーコンパウンド(70%UBESTA(登録商標)XPA9063+30%UBESTA(登録商標)3030XA)から作製され、折り畳まれた状態にある幾つかのバルーンを、前述の様式に従って、Hamiltonシリンジを用いてその表面を等量の溶液(1)〜(6)で湿潤させることによって、パクリタキセルでコーティングした。各溶液用に、数個のバルーンを使用した。
次いで、バルーンを真空下で乾燥させた。
コーティングの外見は、白色であり、必ずしも均質でなかった。
【0025】
実施例1B―結晶水和又は結晶水和溶媒和パクリタキセルでのカテーテルバルーンのコーティング(折り畳まれていない状態でのコーティング)
コーティング溶液(2)を用いて、最初に折り畳まれたバルーンを7バールで膨張させ、次いで加圧空気源を除去し、Hamiltonシリンジを用いて膨張したバルーンをコーティングすることによって、実施例1Aの手順を反復した。次いでコーティングステップの約1分後、その表面が湿潤であるうちに、コーティングされたバルーンを再度折り畳んだ。
コーティングの外見は、白色であり、実質的に均質であった。
【0026】
実施例2―カテーテルバルーンの表面へのパクリタキセル接着の評価
種々の条件下での該薬剤の接着性を測定するために、実施例1に従って調製したバルーンの評価を行った。
試験A
最初に、乾燥時の接着性を測定したが、該接着性は、バルーンの製造又は取扱ステップで生じ得るパクリタキセルの損失を測定するのに有用である。バルーンを乾燥時に膨張させ、管内で膨張したバルーンを振とうすることによって、かかる測定を行った。
管中のパクリタキセル含量を、HPLC/UVによって測定した。該薬剤をエタノールで取り、管を閉じ、30秒間激しくボルテックスで振とうし、続いて超音波浴で30分間処理した。パクリタキセル標準溶液と共に、少なくとも70μLの抽出物をHPLCに注入した(約20μg/mLの濃度)。結果を表Iに報告する。
【0027】
試験B
介入の部位におけるパクリタキセルの放出を、体重約30kgの約3月齢の去勢雄ブタへの実験で評価した。ケタミン及びキシラジンの筋肉内注射によって、該ブタを鎮静した。プロポフォールの静脈内注射、続いて経口的気管内挿管によって麻酔を開始し、1〜2容量%のイソフルラン、70容量%のN22、及び30容量%の酸素に維持した。全ての動物は、冠動脈内経路を介して、5.000IUのヘパリン、250mgのアスピリン、及び200mgのニトログリセリンを受容した。左頸動脈を通じる標準的な血管造影技術を用いて、冠動脈をモニターした。
該動物を、カテーテル上に取り付けたパクリタキセルコーティング済みバルーン(溶液(1)〜(6))で処置した。
一旦介入の部位に到達すると、幾つかのバルーンを、膨張させることなく血流中に1分間浮動させ、次いでそれらを後退させ、好適な管に導入し、膨張させ、カテーテルから分離した。その後、試験Aで記載した通り、それらをエタノールで抽出し、最後に該管を10分間遠心分離した。血流中に分散したパクリタキセルの量を測定するために、抽出物を、前述の通り、HPLC/UVによって分析した。結果を表Iに報告する。
【0028】
ステントが取り付けられた他のバルーンを代わりに導入し、膨張させ、次いで収縮及び後退させ、次いで膨張させない場合の抽出処理と同一の抽出処理を経た。この場合、血管壁と接触した後、バルーン上に残った残留パクリタキセルの量を測定した。
15〜25分の範囲の期間後、該動物を、深麻酔下で20%KClの投与によって屠殺した。心臓を迅速に除去し、ステントが配置された動脈セグメント、加えてステントから5mm下流及び上流部分を区分し、その質量を測定するために、事前秤量された管中に配置し、所定量のエタノールでの抽出に供し、50%超の濃度を得た。超音波で30分間及び遠心分離で10分間の、室温での抽出後、血管組織によって吸収されたパクリタキセルの量を測定するために、抽出物を、前述の通り、HPLC/UVによって分析した。結果を表Iに報告する。
表I―薬剤の接着性、放出、及び血管組織による取り込みの結果

【0029】
表Iに報告するデータは、該薬剤が結晶水和形態又は溶媒和水和形態で存在するとき((1)の行から(4)の行)、非水和形態((5)の行)と比較して、パクリタキセル放出が顕著に高いことを示す。実際、後者の場合、ほとんどのパクリタキセル(64%±5%)が、バルーン表面に接着したままであり、血管組織によって吸収された該薬剤の量は、わずか5.2%±3.2%である。
非晶質形態((6)の行)のパクリタキセルに関しては、データは、バルーンによって放出され、組織へ吸収された薬剤の高い量を示しているが、再狭窄阻害評価についてのさらなる実験は、かかる形態の非活性を示した。かかるさらなる実験では、結晶水和形態又は溶媒和水和形態のパクリタキセル((1)の行から(4)の行)は、代わりに、動物における再狭窄阻害作用を示した。
データはまた、堆積溶液中の尿素の存在((2)の行)が、尿素の存在しない同一の溶液((1)の行)と比較して、パクリタキセルのより高い放出、及び血管組織中に吸収される薬剤のより高い量をもたらすことを示す。
膨張した状態でのコーティング、続いて湿潤であるうちの再度の折り畳みは、該薬剤のバルーン表面へのより良い接着を可能にする。
さらなる調査は、バルーンが作製される材料がまた、パクリタキセル放出特性への著しい影響をも有することを示し、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、又は該コポリマーとポリアミドとのコンパウンドが、薬剤溶出について最も良い結果をもたらした。
【0030】
実施例3―パクリタキセルの結晶質形態の測定
文献に報告される条件下で、結晶水和形態でのパクリタキセルをIR分析によって特定し、このようにしてJeong Hoon Lee et al.,Bull.Korean Chem.Soc.2001,vol.22,No.8,925−928に記載されているスペクトルと同等のスペクトルを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶水和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーン。
【請求項2】
結晶水和溶媒和形態のパクリタキセルで完全に又は部分的にコーティングされ、介入の部位で、治療的有効量のパクリタキセルの即時の放出及び生物学的利用能を有する、カテーテルバルーン。
【請求項3】
前記結晶水和形態は、パクリタキセルの1分子当たり2〜4の範囲の整数又は小数によって表されるモル比の結晶水を含む、請求項1に記載のカテーテルバルーン。
【請求項4】
前記結晶水和溶媒和形態は、パクリタキセルの1分子当たり、2〜3の整数又は小数によって表されるモル比の結晶水、及び1〜3の整数又は小数によって表されるモル比の溶媒和する溶媒を含む、請求項2に記載のカテーテルバルーン。
【請求項5】
治療的有効量のパクリタキセルの前記放出が、1秒〜1.5分、好ましくは20秒〜1分の範囲の期間に生じる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項6】
治療的有効量のパクリタキセルの前記生物学的利用能が、1秒〜25分、好ましくは20秒〜25分の範囲の期間に生じる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項7】
結晶水和形態又は結晶溶媒和水和形態の前記パクリタキセルが、
i) パクリタキセルを水性溶媒に溶解してパクリタキセル溶液を形成すること、
ii) かかる溶液で完全に又は部分的に前記バルーン表面を湿潤させること、及び
iii) 前記溶媒を蒸発させること、
を含む方法を用いて得られる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項8】
前記水性溶媒が、結晶水和パクリタキセルのために、アセトン/エタノール/水、テトラヒドロフラン/水、メタノール/水、アセトン/水、エタノール/水、アセトニトリル/水、DMF/水混合物から、及び結晶水和溶媒和パクリタキセルのために、ジオキサン/水、DMF/水、DMSO/水、N−メチルピロリドン/水、アセトニトリル/水、N,N−ジメチルアセトアミド/水、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2−(1H)−ピリミジノン/水、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン/水混合物、又はそれらの混合物から選択される、請求項7に記載のカテーテルバルーン。
【請求項9】
結晶水和形態のパクリタキセル形成のための前記水性溶媒が、9:1テトラヒドロフラン/水混合物、又は9.5:0.5〜65:35の範囲の比率でのテトラヒドロフラン/水混合物、又はアセトン/エタノール/水混合物であって、前記有機溶媒が、水に対して50容量%以上の量で存在するアセトン/エタノール/水混合物から選択される、請求項8に記載のカテーテルバルーン。
【請求項10】
前記バルーンが、シリンジ、微量ピペット、又は他の類似した分注手段を用いて、折り畳まれたバルーン表面上又は膨張した状態の前記バルーンの表面上に前記パクリタキセル溶液を堆積させることにより、かつジグザグの経路を確立するために、前記バルーンを、その長手方向の軸を中心に回転させながら、前記分注手段を、前記表面上で1つの端部からもう1つの端部まで、及びその逆に摺動させることによって、得られる、請求項7〜9のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項11】
前記ステップi)の前記パクリタキセル溶液が、尿素を、好ましくは1〜100mg/mL、又は1mLの溶媒当たり4〜10mg、又は1mLの溶媒当たり約7mgの量で含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項12】
前記パクリタキセルが、前記パクリタキセル溶液中、4〜6mg/mlの濃度を有する、請求項7〜11のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項13】
前記バルーンが、ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマー、又は該コポリマーとポリアミドとのコンパウンドから作製される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項14】
前記ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマーが、式(1)に記載のアミノカルボン酸、及び式(2)に記載のラクタム:
2N−R1−COOH(1)
【化1】

からなる群から選択されるポリアミドブロック形成化合物を、式(3)のトリブロックポリエーテルジアミン化合物:
【化2】

及び式(4)に記載のジカルボン酸:
HOOC−(R3)m−COOH(4)
と重合させることによって得られ、式中、R1、R2、及びR3基の各々は、その中に炭化水素鎖を含み、任意に1つ以上のアミド基によって分断される結合基を表す、請求項13に記載のカテーテルバルーン。
【請求項15】
R1及びR2は、独立して、2〜20個の炭素原子及びアミド結合を有するアルキレン基を含み、R3は、1〜20個の炭素原子を有するアルキレン基を含み、xは、1〜20、又は1〜18、又は1〜16の間で変化することができ、yは、4〜50、又は5〜45、又は8〜30の間で変化することができ、zは、1〜20、又は1〜18、又は1〜12の間で変化することができ、mは、0又は1である、請求項14に記載のカテーテルバルーン。
【請求項16】
前記重合が、150〜300℃、又は160〜280℃、又は180〜250℃の範囲の温度で、式(1)及び/又は(2)の化合物の15〜70質量%、並びに全体の質量百分率で30〜85%の式(3)及び(4)の化合物の混合物を用いることによって行われる、請求項14又は15に記載のカテーテルバルーン。
【請求項17】
前記ポリエーテル−ポリアミドブロックコポリマーとポリアミドとの前記コンパウンドが、10〜90質量%、又は75〜25質量%、又は60〜40質量%の量の前記コポリマーを、全体として100%になる量のポリアミドと混合することによって得られる、請求項13〜16のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項18】
前記ポリアミドが、ポリアミド−12である、請求項17に記載のカテーテルバルーン。
【請求項19】
前記バルーンが、ポリアミド−12から作製される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項20】
前記バルーンが、ポリエステルアミドから作製される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項21】
前記ポリエステルアミドが、次の一般式:
H−(O−PF−OOC−PA−COO−PF−OOC−PA−CO)n−OH
によって記述することができ、式中、PAは、ポリアミドセグメントであり、PFは、OH−末端ダイマージオールセグメントを含むジオールセグメントであり、かつnは、5〜20の範囲の数である、請求項20に記載のカテーテルバルーン。
【請求項22】
前記ポリエステル−アミドコポリマー内の前記ジオール構成成分の含有量が、全製剤の5〜50質量%、又は10〜30質量%、又は10〜20質量%である、請求項21に記載のカテーテルバルーン。
【請求項23】
前記バルーンが、親水性表面又は好適な親水化処理によって親水化された表面を有する、請求項1〜22のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項24】
パクリタキセルが、前記カテーテルバルーンコーティング層に、1〜20μg/mm2、又は2〜7μg/mm2、又は3〜5μg/mm2の範囲の量で存在する、請求項1〜23のいずれか1項に記載のカテーテルバルーン。
【請求項25】
カテーテルバルーンを薬剤でコーティングする方法であって、前記方法が、
(a) バルーンを用意するステップ、
(b) 前記バルーンを、所定の圧力になるまで膨張させるステップ、
(c) ステップ(b)の前記膨張したバルーンを、パクリタキセル溶液でコーティングするステップ、
(d) ステップ(c)の前記コーティングされたバルーンを収縮させるステップ、
(e) ステップ(d)の前記収縮したバルーンを、湿潤であるうちに折り畳むステップ、
(f) 任意に、前記折り畳まれたバルーンに保護カバーを適用するステップ、
を含む、方法。
【請求項26】
カテーテルバルーンを薬剤でコーティングする方法であって、前記方法が、
(g) 折り畳まれたバルーン、例えば、3〜6つの折り目を有するバルーンを用意するステップ、
(h) 前記折り畳まれたバルーンを、所定の圧力になるまで膨張させるステップ、
(i) ステップ(h)の前記膨張したバルーンを、パクリタキセル溶液でコーティングするステップ、
(j) ステップ(i)の前記コーティングされたバルーンを収縮させるステップ、
(k) ステップ(j)の前記収縮したバルーンを、湿潤であるうちに再度折り畳むステップ、
(l) 任意に、前記再度折り畳まれたバルーンに保護カバーを適用するステップ、
を含む、方法。
【請求項27】
ステップ(b)又は(h)における前記所定の圧力が、前記カテーテルバルーンのRBP圧未満の圧力である、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記所定の圧力が、5〜9バールである、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項29】
前記カテーテルバルーンが、コーティング前に、加圧空気源から分断される、請求項25〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記膨張させるステップ(b)又は(h)が、20〜40秒間延長される、請求項25〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
コーティングするステップ(c)又は(i)が、前記バルーンが回転させられる間、前記薬剤溶液を前記膨張したバルーン表面上へ送達することによって行われ、該溶液の送達は前記バルーン長の中央から始まり、前記バルーンの一端部に移動し、次いで反対端部に移動して行われる、請求項25〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記バルーンカテーテルが、約5rpm〜約30rpm、好ましくは約10rpm〜約20rpmの速度で回転させられ、前記薬剤溶液の送達時間が、約10秒〜約500秒の範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記コーティングされたバルーンの収縮ステップ(d)又は(j)が、前記カテーテルバルーン開口部に真空を適用することによって及び/又は前記バルーンを外側から圧迫することによって遂行される、請求項25〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
折り畳むステップ(e)又は再度折り畳むステップ(k)が、前記コーティングするステップ(c)の終了から20分以内、又は1分〜10分以内、又は1分〜5分以内に行われる、請求項25〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(f)又は(l)は、前記再度折り畳まれたバルーンを覆って、保護カバーであって、典型的には、前記薬剤でコーティングされた前記バルーン表面を包むスリーブを挿入することによって遂行される、請求項25〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記スリーブが、前記バルーンが作製される材料の摩擦係数より小さい摩擦係数を有する低摩擦材料から作製される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記低摩擦材料が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
薬剤で前記コーティングするステップの間に、カテーテルバルーン(2)を回転させるためのデバイス(1)であって、前記デバイス(1)が、同期して回転する第1のモータユニット(5)及び第2のモータユニット(6)を備え、前記第1及び第2のモータユニット(5、6)が、カテーテルバルーン(2)の向かい合った端部を締め付けるためのそれぞれの締め付け手段(8、8’)を備える、デバイス。
【請求項39】
前記第1及び第2のモータユニット(5、6)を同期的に動作させる命令及び制御ユニット(7)を備える、請求項38に記載のデバイス。
【請求項40】
前記第1及び第2のモータユニット(5、6)が、ブラシレスモータである、請求項38又は39に記載のデバイス。
【請求項41】
前記カテーテルバルーン(2)のための1つ以上の支持手段(9)を備える、請求項38〜40のいずれか1項に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2012−514510(P2012−514510A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544873(P2011−544873)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050162
【国際公開番号】WO2010/079218
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511158797)インバテック テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】