説明

薬品管理システム

【課題】配合する薬品が3種類以上となった場合でも、適切に配合の適否を判断する。
【解決手段】記憶手段2は、各薬品毎に関連付けた薬品コード、及び、該薬品コードに従って並び替えた薬品情報の組み合わせに対応する配合変化情報を記憶する。配合適否判断手段1は、ある患者の1又は2以上の処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段2に記憶した薬品コードに基づいて薬品情報を並び替え、得られた薬品情報の順序及び組み合わせに従って前記記憶手段2から呼び出した配合変化情報を参照して配合の適否を判断する。これにより、配合する薬品が3種類以上となった場合でも、適切に配合の適否を判断可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の薬品を配合する際の適否を判断することを可能とした薬品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者に複数種の薬品を投与する場合、予め配合の適否を判断できるように、配合時の酸アルカリの有効範囲から外れる可能性があるか否かの判定を行うようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、処方箋情報で指示された薬品のうち、2種類の組み合わせの全てについて配合不可ファイルに含まれているか否かの検索を行うようにしている。
【0003】
しかしながら、前記方法では、単純に2種類の薬品の組み合わせでのみ配合の適否を判断するようにしているだけである。このため、配合する薬品が3種類以上となると、その配合順序まで考慮すると、組み合わせの数が膨大なものとなり、実用性に乏しいものとなる。
【0004】
また、薬品を3種類以上配合した場合の配合変化に関する情報は、文献等にもあまり記載がなく、実際に現場で検証及び確認を行わなければならない場合が多い。しかも、その結果を記録しておいても、病院や薬局で共有して利用する際には、人が確認するしかなく、そのようなチェックを自動で行えるシステムは従来なかった。
【0005】
また、配合変化の例として、例えば、薬品A(エレメンピック)、薬品B(ピーエヌ・ツイン)、薬品C(ソルコーテフ)を配合する場合、これら2薬品のいずれの組合せでも配合変化は発生しないが、これら3薬品の組合せでは配合変化が発生する場合がある(薬品A,B,Cの順では配合変化はないが、薬品A,C,Bの順では配合変化が発生する。)。この場合、従来の2薬品の配合変化をチェックするシステムでは確認することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−113072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、配合する薬品が3種類以上となった場合でも、適切に配合の適否を判断することのできる薬品管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、薬品に関する薬品情報と、複数の薬品を配合する際の変化を示す配合変化情報とを記憶する記憶手段と、
ある患者の1又は2以上の処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段に記憶した配合変化情報に基づいて配合の適否を判断する配合適否判断手段とを備えた薬品管理システムにおいて、
前記記憶手段は、各薬品毎に関連付けた薬品コード、及び、該薬品コードに従って並び替えた薬品情報の組み合わせに対応する配合変化情報を記憶し、
前記配合適否判断手段は、処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段に記憶した薬品コードに基づいて薬品情報を並び替え、得られた薬品情報の順序及び組み合わせに従って前記記憶手段から呼び出した配合変化情報を参照して配合の適否を判断するようにしたものである。
【0009】
この構成により、薬品の配合順序の違い毎に配合変化を記憶させる必要がなくなり、記憶手段に必要とされる記憶容量を抑制することができる。また、配合する2種類以上の薬品では、薬品コードに従って並び替え、その順序で記憶手段に記憶させた薬品の組み合わせに従ってのみ、配合変化情報を検索すればよく、検索処理を高速で行わせることが可能となる。特に、配合する薬品が3種類以上に増えた場合に有効である。
【0010】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、薬品に関する薬品情報と、複数の薬品を配合する際の変化を示す配合変化情報とを記憶する記憶手段と、
処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段に記憶した配合変化情報に基づいて配合の適否を判断する配合適否判断手段とを備えた薬品管理システムにおいて、
前記記憶手段は、各薬品の薬品関連情報を記憶すると共に、2種類以上の薬品の組み合わせを薬品関連情報に基づいてハッシュ関数に従って演算し、得られたハッシュ値毎に配合変化情報を記憶し、
前記配合適否判断手段は、処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段に記憶した薬品関連情報に基づいてハッシュ値を演算し、得られたハッシュ値に基づいて前記記憶手段から対応する配合変化情報を呼び出し、配合の適否を判断するようにしたものである。
【0011】
この構成により、薬品毎に薬品コードを決めておけば、その薬品コードに基づいてハッシュ関数による演算を行い、ハッシュ値を求めるだけで、配合する薬品の組み合わせを特定し、配合変化情報を検索することができる。
【0012】
前記ハッシュ関数には、異なる薬品の組み合わせでは、ハッシュ値が相違し、組み合わせが同一であれば、順序が相違してもハッシュ値が同一となるものが使用できる。但し、薬品毎に関連付ける薬品コードを選択することにより、所望のハッシュ値が得られるようにしても構わない。
【0013】
前記記憶手段は、書き替え不能な配合変化情報が格納されるマスターファイルと、新規に配合変化情報を格納可能なケースカードファイルとを記憶するように構成したので、医療現場で得られる配合変化の実例等に基づいて、適宜、配合変化情報を追加することが可能となる点で好ましい。
【0014】
前記配合適否判断手段にて判断した配合適否を表示する表示手段を備え、該表示手段に表示される全薬品の組み合わせについての配合変化情報を表示可能とすると、配合変化を一目で把握することが可能となる点で好ましい。
【0015】
前記表示手段に表示した全薬品の組み合わせについての配合変化情報は変更可能であり、前記表示手段で変更された配合変化情報は、新たにケースカードファイルに格納可能とすると、配合変化情報の追加を簡単かつ漏れなく行うことが可能となる点で好ましい。
【0016】
前記表示手段に、配合する薬品を配合単位毎に複数登録可能とする薬品登録画面を表示した後、全配合単位間の組み合わせの全てについて配合薬確定画面に一覧表示させ、新規の配合変化情報を入力して前記ケースカードファイルに格納可能とすると、配合変化情報の新規登録を簡単かつ漏れなく行うことが可能となる点で好ましい。
【0017】
前記記憶手段は、記憶した薬品情報の組み合わせに配合順序の違いにより配合変化が発生する場合があれば、その旨を記憶し、該当する組合せが参照されれば、前記表示手段に、適切な配合順序に薬品情報を並び替えて表示するようにすると、より一層利用しやすくなる点で好ましい。
【0018】
前記配合適否判断手段は、処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、薬品コードに基づいて薬品情報を並び替える前に、前記記憶手段に記憶した手技コードに基づいて同時に投与される薬品を選択すると、単に、同一人に同時期に処方される薬品のみについて配合適否を判断する場合に比べて取り扱う件数を絞り込むことができ、より一層検索処理を高速で行わせることが可能となる点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る薬品管理システムを示すブロック図である。
【図2】配合変化チェックの手順を示すブロック図である。
【図3A】注射監査一覧画面である。
【図3B】処方入力画面である。
【図3C】図3Bで下方側にスクロールした状態を示す処方入力画面である。
【図3D】配合変化結果一覧画面である。
【図4】配合変化情報画面である。
【図5】成分情報画面である。
【図6】個別薬品情報画面である。
【図7】薬品登録画面である。
【図8】配合薬確定リスト画面である。
【図9】用量入力画面である。
【図10】配合順設定画面である。
【図11】可否設定画面である。
【図12】判定コメント設定画面である。
【図13】区分設定画面である。
【図14】基本注射薬品情報画面である。
【図15】薬品コード選択画面である。
【図16】成分情報画面である。
【図17】簡易処方入力画面である。
【図18】手技名称とコード番号の一覧表を示す図である。
【図19】薬品管理システムの制御内容を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る薬品管理システムを示す。このシステムでは、薬剤部等に設置したコンピュータで、中央処理装置1(CPU)が記憶装置2に記憶させた情報に基づいて、表示装置3に所定の表示を行いつつ、配合適否を判断できるようにしている。また、配合適否の判断結果等は、印刷装置4にて印刷可能となっている。
【0022】
記憶装置2には、ハードディスク等の種々の記憶媒体が使用でき、そこには配合変化マスタ、ケースカードマスタ、基本薬品情報マスタ等が記憶されている。
【0023】
配合変化マスタには、2種類以上の薬品を配合した際に、どのような変化が起こるかを示す(文献等で調査した)配合変化情報が予め格納されている(この配合変化情報は更新不能)。詳しくは、薬品毎に関連付けた薬品コードに従って薬品を並び替え、得られた薬品の組み合わせ毎に配合変化情報が格納されている。例えば、薬品A(001),B(003),C(002)(括弧内は薬品コード)を配合する場合、薬品A,C,Bに並び替えられ、この順序での組み合わせについて、配合変化情報(例えば、「問題なし」、「A,Cの配合直後に白濁」等)が記憶されている。並び替えた薬品コードの順序と、配合順序とは関係がなく、又、配合順序は組み合わせる薬剤の違いによって必ずしも同一ではない。ケースカードマスタに記憶されるケースカード情報には、前記配合変化マスタと同様な形式で、医療現場等で得られる配合変化の実例等に基づく配合変化情報が記憶されている。配合変化マスタは変更できないが、ケースカード情報は、現場での配合結果を元に自由に変更可能である。基本薬品情報マスタには、薬品コード、薬品名称、メーカー名、薬効分類、手技コード等が含まれる。ここで、手技コードとは、図18に示すように、注射薬を身体のどの部位に注射するのかを示す手技名称に対応したコード番号である。通常、同じ部位に注射する注射薬が複数ある場合、これらは1つに配合された後、注射される。
【0024】
表示装置3には、処方入力・監査画面、剤別配合変化チェック結果画面、剤別配合変化情報画面、基本薬品情報画面、成分情報画面、ケースカード用薬品選択画面、ケースカード詳細登録画面等が表示される。
【0025】
印刷装置4は、前記表示装置3に表示される剤別配合変化情報等を印刷する。
【0026】
中央処理装置1は、以下のようにして、処方箋情報に基づいて記憶装置2に記憶させた配合変化情報を参照し、配合適否の判断、表示、印刷等を行わせる。
【0027】
次に、前記薬品管理システムの動作について図19のフローチャートに従って説明する。
【0028】
まず、ホストコンピュータから処方箋情報を読み込む(ステップS1)。そして、読み込んだ処方箋情報に従って各患者毎に2種類以上の薬品が処方されているか否かを判断する(ステップS2)。2種類以上の薬品が処方されていれば、配合変化をチェックする(ステップS3)。この結果、後述する図3Dに示すように、配合チェックの結果が一覧表示される。
【0029】
配合変化のチェックでは、各患者毎に、各薬品に付された手技コードに従って同一時期に同一方法で同一部位に注射される薬品を選別する(ステップS4)。そして、選別された薬品を薬品コードに従って並び替える(ステップS5)。そして、並び替え後の順序で記憶された薬品の組み合わせ(順列)のみに従ってケースカードマスタを検索し(ステップS6)、その後、配合変化マスタを検索する(ステップS7)。両マスタに同様な情報が登録されている場合、ケースカードマスタの登録情報を優先する。そして、前記薬品の組み合わせ中に、配合変化が有ると判断されれば(ステップS8)、後述するようにして表示装置3に所定の表示を行う(ステップS9)。
【0030】
具体的には、図2に示すように、まず、配合をチェックする必要のある処方箋情報(Rp1,Rp2…)を順番にチェック対象剤として取り出す。そして、取り出したチェック対象剤を処方される患者に、その日に処方される他の薬剤(注射、点滴の対象となるもの)があるか否かを検索し、これらを併せてチェック対象薬品群とする。ここで、チェック対象薬品群から単独投与する薬品を区分し、混合投与するもののみについて、配合変化マスタ及びケースカードマスタで該当するものがあるか否かについて配合チェックを行う。混合投与するか否かは、基本薬品情報マスタの手技コードに基づいて、同じ部位に注射される注射薬であるのか否かで判断する。これにより、検索の対象となる薬品をさらに絞り込むことができる。
【0031】
なお、前記配合変化チェックは、ある患者に対して処方箋が複数発行される場合には、その処方箋が発行される毎に行うようにするのが好ましい。例えば、事故等で緊急入院する場合等には、患者の容態が時々刻々と変化するため、その都度、処方箋が発行される。この場合、各処方箋が発行される毎に、前述の配合変化チェックを行うようにする。また、最終的に患者に投与される際にも、その患者の全処方箋情報に基づいて配合変化チェックを行うようにする。これにより、二重三重の配合変化チェックを行うことが可能となる。
【0032】
前記配合チェック方法によれば、例えば、薬品CとAの2剤を混合する場合、C−Aの組み合わせのみを考慮すればよく、A−Cの配合順を異ならせた組み合わせについてまで考慮する必要はない。したがって、配合変化マスタ及びケースカードマスタでの検索数を抑制することができ、効率的な配合チェックが可能となる。具体的に、チェックの対象が5薬品の場合、従来の方法では200通りの検索が必要であったが、本発明では25通りで済ませることが可能となった。
【0033】
また、前記配合チェック方法によれば、1000処方の配合チェックを30分で行うことができる。実際に配合変化が生じる組み合わせは、20〜30処方であるが、ケースカードマスタを使用しない場合、配合変化有りの結果が得られるケースを100〜200処方までしか絞り込むことができなかった。これに対し、ケースカードマスタを使用する場合、実際の医療現場で得られた情報に基づくものであるため、情報の信頼性が高く、50〜60処方にまで絞り込むことができた。これにより、配合チェックの最終確認を短時間で行うことが可能となった。勿論、この絞り込みは、ケースカードマスタの情報が拡充されるに従ってさらに実際の値に近付けることができる。
【0034】
また、前記配合チェックは、夜間等の通常業務時間外に行い、バッチ処理することにより、エラー(配合変化)のあったもののみを一覧表として集計すれば、空き時間を有効使用することができる。集計結果は、プリントアウトしておくようにすればよい。但し、配合チェックを行う時間帯は、利用者のニーズに応じて昼間等、いずれに設定することも可能である。
【0035】
図3Aは、集計結果、すなわち、表示装置3に表示される注射監査一覧画面を示す。注射監査一覧画面には、配合チェックでエラーが出たものが一覧表示される。表示内容29は、処方番号(処方No.)、オーダー番号、処方箋区分、病棟、投薬日、患者ID、及び患者名である。但し、その内容はこれらに限定されるものではない。
【0036】
注射監査一覧画面で、読込ボタン10をクリックすると、画面が更新され、最新のデータが表示される。また、注射監査一覧画面で、いずれかの行を選択して監査ボタン11をクリックするか、その行をダブルクリックすることにより、図3B及び図3Cに示す処方入力画面で、ある患者への処方薬品が全て表示される。配合チェックの結果、配合変化がある場合(図3C中、矢印で示す。)には、「配合変化エラーあり」12のボタンが強調(赤色)表示される。ここで、「配合変化情報」ボタン13をクリックすると、配合変化マスタの検索結果が、図3Dに示す配合変化結果一覧画面として表示される。「次ページ」ボタン14(図3Dでは反転表示されているため、視認不能)をクリックすることにより、表示している薬品以降の配合変化結果が表示される。「前ページ」ボタン15(図3Dでは反転表示されているため、視認不能)をクリックすることにより、表示している薬品以前の配合変化結果が表示される。「全データ」ボタン16をクリックすることにより、該当処方の全ての配合変化チェック結果が表示される。「個別データ」ボタン17をクリックすることにより、薬品毎のデータに切り替えられる。
【0037】
また、「詳細」ボタン18をクリックすると、図4に示す配合変化情報画面が表示される。この画面では、薬品の「pH変動情報」ボタン19、「成分情報」ボタン20、又は、「個別薬品情報」ボタン21が画面上部に、「配合変化情報」欄22が下部にそれぞれカラーでグラフィック表示される。
【0038】
図4に示すPH変動情報画面では、各薬品毎にペーハー変動により変化が見られた領域が、変化内容に応じて色付け表示される(変化しない領域は、白色、表示色は変更可能である。但し、図面では色の違いは判別できない。)。酸側、アルカリ側で、10mlの溶液をすべて滴定しても、変化が見られない場合、「一部データ有り」23として薄い青色で表示される。また、試料ペーハーは、黒色縦棒で表示される。配合変化が生じる場合、グラフ右部分に変化内容が表示され、この部分を右クリックすることにより、表示しきれない文字を全て確認可能である。また、全ての薬品の内、酸側変化点で最も高い値に赤線、アルカリ側変化点で最も低い値に青線が表示される。この領域は、全ての薬品で変化が起こらないpH値である。なお、画面中、右側のチェックボタンを外すと(標準では、全てON)、グラフは薄色に変化し、上記赤青線の対象外とすることができる。また、グラフ表示部分のpH値を確認する場合、確認したい部分を右クリックすることにより、マウスの上部にペーハー値を表示させることができる。また、選択した薬品情報の中に、変化点の情報がない場合、画面下部の「備考」欄24に、注意内容として、コメント表示される。
【0039】
図5は、成分情報画面を示す。この画面では、薬品マスタより抜粋した情報として、表示薬品の入力用量、総容量、カロリー等の成分数値が一覧表示される。「入力容量」、「総容量」、「カロリー」以外は、項目を選択して表示させることが可能である。表下部の「表示項目選択」欄25で、各項目(分類名)にチェックを入れると、その分類に属する項目が表示される。表示項目が、9項目を超える場合、横スクロールで表示可能である。項目をチェックし、画面左下の「ユーザー登録」ボタン26をクリックすると、選択した項目が「ユーザー設定」として登録され、表示項目選択部分の「ユーザー設定」をチェックした場合に登録した項目のみが表示される。項目中、特に、「ナトリウム」、「カリウム」については、1日に摂取可能な限界量があるため、ある患者に投与する全薬品について1日の総量を算出し、限界量と比較するようにすれば、未然に事故を防止することが可能となる。
【0040】
図6は、個別薬品情報画面を示す。この画面では、薬品マスタから抜粋して読み込んだ各薬品の基本薬品情報の各項目が一覧表示される。成分情報の表示と同様に、画面上部の項目チェックボタン欄27、下部のページ選択欄28で、必要な項目を選択表示したり、ユーザー登録表示項目を表示したりすることが可能である。また、表示内容29をクリックすることにより、薬品マスタに登録された詳細情報30をポップアップ表示させることが可能である。
【0041】
また、前記配合変化詳細画面の下半部には、図4に示すように、配合変化情報画面が表示される。配合薬品群欄31をクリックすることにより、pH変動情報の薬品名称欄32に表示された薬品の組み合わせ全てを一覧表示させることができる。一覧表示させた薬品の組み合わせから任意の薬品群を選択すると、その下方に、登録されている配合変化情報が表示される。表示中の配合変化情報は書き替えてケースカードに登録することができる。
【0042】
すなわち、配合変化マスタに記憶される配合変化情報は文献等で明らかにされた正規のものであるが、実際の運用では多少変更されることも多いため、その情報をケースカードマスタに登録して優先使用するようにしたものである。配合変化コメント、時系列コメント等を入力し、「ケースカード」ボタン33をクリックすることにより、変更後の情報がケースカードに自動入力される。配合変化情報[「pH変動情報(グラフ表示)」、「混合薬品情報(総輸液、総カロリー)」、「配合変化情報」、「個別薬品情報(単独投与コメント、適用上の注意など…選択可)]を印刷するには、画面右下の「印刷」ボタン34をクリックすればよい。なお、画面右下部分の表示オプション(「配合変化結果」、「配合薬品数」)を使用することで、配合変化薬品群に表示される数を制限することが可能である。また、画面下部にて選択した薬品群について、上部分の薬品リスト部の色を(例えば、薄緑色に)変化させ、配合変化情報部分にて表示している薬品を明確にすることも可能である。
【0043】
また、ケースカードに配合変化マスタに登録されていない新たな薬品の組み合わせで配合変化情報を登録させる場合、図7に示す薬品登録画面を開き、表示される薬品一覧表35から1剤目35、2剤目36…の順で薬品を選択すればよい。
【0044】
図7は、薬品一覧表35の薬品を薬品名称順でソートし(薬品コード順でソートすることも可能)、1剤目欄36に1薬品、2剤目欄37に3薬品を選択した状態を示す。ここで、画面上部の「配合薬確定」タブ38をクリックすると、図8に示すように、選択した薬品の組み合わせの全て(ここでは、1×3=3通り)について、配合薬確定リスト画面として一覧表示される。既に登録された配合変化情報がある場合、その内容が表示され、登録された配合変化情報がない場合、「薬品量」、「配合順」、「可否」、「変化時間」、「判定コメント」等の必要な情報を入力した後、「ケースカード登録実行」タブ39をクリックすれば自動登録することができる。
【0045】
配合情報の詳細を入力する場合、該当部分をダブルクリックしたり、右クリックしたりすることにより、各項目に応じた必要事項を入力することが可能である。例えば、「用量」では、図9に示す用量入力画面が開くので、使用量の下限値、上限値、及び単位を入力することが可能である。「配合順」では、図10に示す配合順設定画面が開くので、順次薬品欄をクリックすることにより配合順を決定することができる。「可否」(配合してもよいか否か)では、図11に示す可否設定画面が開くので、「○」(配合可)、「△」(条件付配合可)、「×」(配合不可)を選択することができる。「判定コメント」では、図12に示す判定コメント設定画面が開くので、該当するコメントを選択することができる。「区分」では、図13に示す区分設定画面が開くので、該当する区分を選択することができる。
【0046】
なお、「備考」、「時系列コメント」等、その他の項目については、配合薬確定リスト画面で該当する項目を選択してキーボード等で入力することができる。また、同じ薬品コードの組み合わせで、用量の異なる配合変化情報を入力する場合、「選択行を複製」ボタンを利用し、用量のみを変更すればよい。また、不要な薬品コードの組み合わせがあれば、該当行を選択し、「選択行を削除」ボタンをクリックすればよい。配合薬確定リストに、同じ薬品の組み合わせがあれば、別ウィンドウで登録できない旨の表示がなされる。前記各薬品の情報は、図14に示す基本注射薬品情報画面を表示させ(このとき、「基本情報1」タブ40をクリックした状態の画面が表示される。)、薬品コードを入力することにより確認することが可能となっている。薬品コードが分からない場合には、薬品コード欄41をダブルクリックする等により図15に示す薬品コード選択画面を表示させ、所望の薬品を選択することが可能である。また、基本注射薬品情報画面で、「基本情報2」タブ42をクリックすると、図16に示す成分情報画面が表示され、成分情報を確認することも可能である。これら各画面に表示される情報は薬品マスタより読み込まれる。
【0047】
前記実施形態では、配合変化をチェックするための処方データをホストコンピュータから自動取込するようにしたが、図17に示す簡易処方入力画面を使用して手動で入力することも可能である。
【0048】
簡易処方入力画面中、処方入力部43には、「薬品コード」、「薬品名称」、「厚生省コード」、「数量」、「単位」が表示される(下線項目について入力する。)。画面下部の登録薬品リスト部44には、登録されている全ての薬品の「薬品名称」、「規格」、「メーカー名」、「薬効分類」が表示される。一覧表の上部には、「並び順選択」欄45と「頭出し」ボタン46が表示される。簡易処方入力画面を使用した入力では、キーボードから「薬品コード」を直接入力したり(薬品コード直接入力モード)、「薬品コードリスト」から選択したり(薬品コードリスト選択モード)、「登録薬品リスト」から選択したり(登録薬品リスト選択モード)、あるいは、「バーコードリスト」から選択したり(バーコードリスト入力モード)することができる。薬品コード直接入力モードでは、キーボードで直接薬品コードを入力することにより、薬品マスタから該当するデータ(薬品名、厚生省コード)を読み込んで表示させることができる。薬品コードリスト入力モードでは、薬品マスタに薬品コードが登録されていない場合や、薬品コードを入力しない場合、薬品コードリストを表示させて選択することができる。登録薬品リスト選択モードでは、登録薬品リストを表示させ、規格、製造メーカー、薬効分類などから薬品を特定することができる。薬品のリストの並び順には、「薬品名50音順」、「メーカー50音順」、「薬効別」があり、いずれかを選択して並び替えることが可能である。また、数量、単位は、該当欄でキーボード等により入力すればよい。単位欄では、デフォルト値として、第1単位が表示される。該当薬品が、第2単位、第3単位を持つ薬品であれば、「スペース」キーを押す毎に、「第1単位」→「第2単位」→「第3単位」→「第1単位」と切り替えることが可能である。なお、第1単位以外で入力された情報はすべて第1単位に換算され、配合変化チェックを実施され、結果表示画面に反映される。
【0049】
また、前記実施形態では、記憶装置2には薬品コード順に並び替えた薬品の組み合わせに基づいてデータベースを検索するようにしたが、ハッシュ関数に基づいて次のようにして検索するようにしてもよい。
【0050】
すなわち、配合変化情報として、配合する薬品の薬品名、薬品コード等から、薬品の組み合わせ毎にハッシュ値を求め、検索キーとして配合変化マスタに登録する。そして、配合する薬品の組み合わせから得られるハッシュ値と合致するものを配合変化マスタから検索可能とする。この場合、ハッシュ値としては、異なる薬品の組み合わせでは異なる値が得られ、かつ、薬品の配合順序が異なっても同一の値となるものが使用可能である。
【0051】
具体的に、薬品A(薬品コード:123)と、薬品B(薬品コード:456)を配合する場合、各薬品の隣り合う数値と先頭と末尾の数値とをそれぞれ掛け合わせる(薬品A:1×2=02、2×3=06、1×3=03薬品B:4×5=20、5×6=30、4×6=24)。そして、薬品コードの各数値の後ろに演算結果を挿入し(薬品A:102206303薬品B:420530624)、得られた結果を各薬品間で加算することによりハッシュ値を求める(102206303+420530624=522736927)。このようにして得られたハッシュ値によれば、異なる薬品の組み合わせでは異なる値が得られ、薬品の配合順序が異なっても同一の値となる。
【0052】
このように、ハッシュ関数を利用する場合には、配合変化マスタへの薬品の登録順序や、チェックする薬品の順序をコード順に並び替える必要がない。しかも、配合変化マスタに登録する際、配合する順序で行うようにすれば、配合順序フィールドすなわち配合変化の発生する配合順序を別途記憶させておく必要もなくなる。
【0053】
また、前記実施形態では、3薬品以上の配合の際の配合順序について格別考慮しなかったが、「配合順序有無フラグ」フィールドと、「配合順序」フィールドとを別途記憶するようにしてもよい。「配合順序有無フラグ」フィールドには配合順序の違いにより配合変化が発生する旨を記憶し、「配合順序」フィールドにはその場合の配合順序を記憶する。
【0054】
そして、配合変化チェック時に、「配合変化マスタ」で該当レコードが検索されれば、「配合順序有無フラグ」フィールドを参照して配合順序の有無を確認し、配合順序が配合変化に関係するのであれば、「配合順序」フィールドを参照して配合順序に並び替えて表示を行うと共に、配合順序が配合変化に関連する旨のコメントを表示する。これにより、配合順序まで自動的に判別でき、配合ミスを未然に防止して作業効率を格段に向上させることが可能となる。
【0055】
また、前記実施形態では、薬品コード、手技コードとして、数字による番号を使用するようにしたが、記号等のほか、薬品名や手技名そのものを使用するようにしてもよく、要は、これらコードに従って順番を並び替えることができるものであれば何でもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…中央処理装置
2…記憶装置
3…表示装置
4…印刷装置
10…読込ボタン
11…監査ボタン
12…「配合変化エラーあり」
13…「配合変化情報」ボタン
14…「次ページ」ボタン
15…「前ページ」ボタン
16…「全データ」ボタン
17…「個別データ」ボタン
18…「詳細」ボタン
19…「pH変動情報」ボタン
20…「成分情報」ボタン
21…「個別薬品情報」ボタン
22…「配合変化情報」欄
23…「一部データ有り」
24…「備考」欄
25…「表示項目選択」欄
26…「ユーザー登録」ボタン
27…項目チェックボタン欄
28…ページ選択欄
29…表示内容
30…詳細情報
31…配合薬品群欄
32…薬品名称欄
33…「ケースカード」ボタン
34…「印刷」ボタン
35…薬品一覧表
36…1剤目欄
37…2剤目欄
38…「配合薬確定」タブ
39…「ケースカード登録実行」タブ
40…「基本情報1」タブ
41…薬品コード欄
42…「基本情報2」タブ
43…処方入力部
44…登録薬品リスト部
45…「並び順選択」欄
46…「頭出し」ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品に関する薬品情報と、複数の薬品を配合する際の変化を示す配合変化情報とを記憶する記憶手段と、
ある患者の1又は2以上の処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段に記憶した配合変化情報に基づいて配合の適否を判断する配合適否判断手段とを備えた薬品管理システムにおいて、
前記記憶手段は、各薬品毎に関連付けた薬品コード、及び、該薬品コードに従って並び替えた薬品情報の組み合わせに対応する配合変化情報を記憶し、
前記配合適否判断手段は、処方箋情報に2種類以上の薬品が含まれる場合、前記記憶手段に記憶した薬品コードに基づいて薬品情報を並び替え、得られた薬品情報の順序及び組み合わせに従って前記記憶手段から呼び出した配合変化情報を参照して配合の適否を判断するようにしたことを特徴とする薬品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図18】
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【図19】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−198626(P2010−198626A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91544(P2010−91544)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【分割の表示】特願2005−505762(P2005−505762)の分割
【原出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】