説明

薬液含浸装置

【課題】比較的にシンプルな構造で、建設資材、例えば木材等の表層及び内層全体に防腐剤、難燃剤等の各種薬液を効率よく含浸して、機能性の高い木材等を製造することが可能な薬液含浸装置を提供する。
【解決手段】建設資材W、W…・・を所定量装入し、水等により希釈された防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液MWを貯留する四周壁面板15と底面板16からなり、上部を開口した密封可能な液槽10と、液槽10の上部開口部を開閉する蓋体20と、液槽10を水平に保持する複数本の脚柱30と、液槽10内の建設資材W、W…・・と薬液MWを加熱する複数の燃焼装置40と、薬液MWを液槽10に注入する注入装置50と、各種の付帯機器60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液含浸装置に係り、より詳しくは、比較的にシンプルな構造で、所定の長さ、形状に加工又は非加工の建設資材、例えば木材の表層及び内層部全体に防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴(カビ)剤等の各種薬液を効率よく含浸して、機能性の高い建設資材を製造することが可能な薬液含浸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、森林資源の有効活用の一環として、例えば、一般の木材に防腐性、難燃性、防虫性等の機能を付加することにより、これらの木材の利用範囲を拡充することが検討されている。このように、木材の機能化を目的として、木材内部に各種の機能性を向上させる薬剤を注入する各種方法、装置等が提案されている。例えば、特許文献1(第1頁、図1参照)の「不燃木材の製造方法」、特許文献2(第1頁、図2参照)の「木材へのパッシブ減圧薬剤注入方法」及び特許文献3(第1頁、図1参照)の「薬剤噴霧装置及び薬剤の噴霧方法」等である。
【0003】
特許文献1は、木材を温浴中で加熱する温浴処理工程と、この木材を少なくとも燐酸を含む難燃薬剤溶液中に浸漬して木材に難燃薬剤を含浸する冷浴処理工程と、難燃薬剤が含浸された木材を乾燥する中間乾燥工程と、木材の表面を研削する研削工程と、この木材にアルコキシ金属塩系塗料を塗布する塗装工程と、塗装された木材を乾燥する最終乾燥工程とを備えたことを特徴としている。
【0004】
特許文献2は、木材に、レーザインサイジング等で貫通孔を穿孔し、その貫通孔に蒸気を貫流させることにより、木材内に蒸気を滞留させ、あるいは木材を乾燥させるとともに、木材内に高温水蒸気を滞留させ、次いで、木材を木材保存剤などの薬剤液に浸漬し、温度低下による蒸気の凝縮で生ずる減圧を利用して木材に薬剤液を含浸させることを特徴とする、木材へのパッシブ減圧薬剤注入方法、薬剤注入木材の製造方法及びその方法で得られたことを特徴としている。
【0005】
特許文献3は、木材に防腐防蟻用の薬剤を噴霧する薬剤噴霧装置であって、前記木材の表面に薬剤を噴霧する噴霧装置と、前記木材の上下位置を反転させる反転装置とを備え、反転装置は、前記木材の少なくとも対向する側面を挟むようにして保持する保持手段と、前記保持手段を、これによって保持された木材の上下位置が反転するように、回転移動させる回転機構とを備えていることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−231652号公報
【特許文献2】特開2005−335365号公報
【特許文献3】特開2002−283304号公報
【0007】
特許文献1は、不燃木材の製造を容易にして製造効率の向上を課題としているが、その製造工程は、温浴処理工程〜最終乾燥工程まで6工程を要し、製造効率の向上という課題の解決は達成されていない。また特許文献2は、水蒸気の凝縮水により薬剤液の内部浸透が阻害され又は薬剤液が希釈されることにより、木材の全体に渡って薬剤を均一に含侵できないという問題点がある。また、この方法では、木材表面にレーザーサイジング等で開けられた複数の貫通孔が存在し、当該木材を構造材に使用したときには、その強度がかなり低下しており、構造物の強度が不十分となり、かつ、構造に狂いが生じるという問題点がある。また特許文献3は、構成部材が多数であり、その構造は複雑であるとともに装置全体が巨大であり、また木材の表面に防腐、防蟻用の薬剤を噴霧するのみであり、木材の内部まで薬剤が浸潤することができないという不具合が生じるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明が解決しようとする第1の課題は、比較的にシンプルな構造で、建設資材、例えば木材等の表層及び内層全体に防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の各種薬液を効率よく含浸して、機能性の高い木材等を製造することが可能な薬液含浸装置を提供することである。第2の課題は、装置全体を組立状態のまま又はその一部を分解し、車両又は船舶等により目的地まで搬送して移設可能な薬液含浸装置を提供することである。第3の課題は、機能性の高い建設資材を効率よく、かつ安全に製造できる薬液含浸装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、上記従来技術の問題点や不具合及び経済動向の実情等に鑑み、低コストで効率よく機能性の高い建設資材の製造について鋭意検討を重ねて本願発明を完成させたものである。課題を解決するための手段は、本願、特許請求の範囲の各請求項に記載の発明であり、その具体的な解決手段は、以下の通りである。
なお本願発明における特許請求の範囲、明細書及び要約書等に記載の用語についての解釈上の疑義を解消すべく、以下に本願発明の特許請求の範囲、明細書等に記載する用語の説明を行うこととする。
「建設資材」とは、建築工事に使用される材料のうち、木材、竹材又はコンクリート製品をいう。
「機能性」とは、建設資材が本来有する働きをいう。この働きを改質ないし改善し、建設資材としての機能を高めたり、耐用性を向上させる。
「薬液」とは、水又は溶剤等を介して防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等を所定の濃度に希釈した液体をいう。
「液槽」とは、縦断面視ほぼ凵状をなす建設資材と薬液を充填するための貯留槽をいう。
「四周壁面板」とは、液槽を構成する正面板、背面板、左側面板及び右側面板をいう。いずれも内壁板と外壁板からなり、両壁板間には保温材が介装されている。
「締付装置」とは、四周壁面板の上端面と蓋体の接触面を密着するために使用する手動ウインチ、例えばヒッパラー(登録商標)等の緊張器をいう。
「付帯機器」とは、建設資材への薬液含浸作業を円滑、安全かつ効率よく進捗するための計器、調整弁等の各種機器類をいう。
「押え杆」とは、蓋体の下面に短手方向に溶着された杆体をいう。液槽内に装入された木材や竹材等が液面より上位に浮上することを防止する。
【0010】
上記の課題を解決するための第1の発明は、請求項1に記載の発明であり、建設資材の機能性を高める各種の薬液を含浸する装置であって、建設資材を所定量装入し、水等により希釈された防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液を貯留する四周壁面板と底面板からなり、上部を開口した密封可能な液槽と、前記液槽の上部開口部を開閉する蓋体と、前記液槽を水平に保持する複数本の脚柱と、前記液槽内の建設資材と薬液を加熱するために配設される複数の燃焼装置と、水及び防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液を液槽に注入する注入装置と、前記液槽内の薬液を建設資材の表層及び内層部全体に円滑かつ安全に含浸するために配設される各種の付帯機器と、を備えていることを特徴としている。
【0011】
課題を解決するための第2の発明は、請求項2に記載の発明であり、前記四周壁面板は内壁板と外壁板からなり、前記内壁板と外壁板間には保温材が介装されている、ことを特徴としている。
【0012】
課題を解決するための第3の発明は、請求項3に記載の発明であり、前記蓋体の下面には液槽内の建設資材が液面より上部に浮揚することを防止するための押え杆が短手方向に複数配設されている、ことを特徴としている。
【0013】
課題を解決するための第4の発明は、請求項4に記載の発明であり、液槽を構成する前記四周壁面板の上端面には耐熱パッキンを配設すると共に、前記上端面と前記蓋体は複数のセッティングピンによって位置決めされると共に、前記上端面と前記蓋体の接触面を密着するための複数の締付装置を備えている、ことを特徴としている。
【0014】
課題を解決するための第5の発明は、請求項5に記載の発明であり、前記薬液含浸装置は組立状態のまま、又は各構成部材を分解し、車両又は船舶等により搬送可能な形状又は/及び大きさである、ことを特徴としている。
【0015】
課題を解決するための第6の発明は、請求項6に記載の発明であり、前記建設資材が、木材、竹材又はコンクリート製品である、ことを特徴としている。
【0016】
課題を解決するための第7の発明は、請求項7に記載の発明であり、前記付帯機器が、温度・圧力計、液面計、濃度計、減圧バルブ、ドレンバルブで、蓋体又は底面板の所定位置に配設されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る、薬液含浸装置は、上記のような特徴的構成要件から構成され、特徴的構成要件に応じた、以下のような本願発明特有の効果を奏する。また、上記のような特徴的構成要件によれば、本願発明の課題を十分に解決することができた。
即ち、第1の発明によれば、「建設資材の機能性を高める各種の薬液を含浸する装置であって、建設資材を所定量装入し、水等により希釈された防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液を貯留する四周壁面板と底面板からなり、上部を開口した密封可能な液槽と、前記液槽の上部開口部を開閉する蓋体と、前記液槽を水平に保持する複数本の脚柱と、前記液槽内の建設資材と薬液を加熱するために配設される複数の燃焼装置と、水及び防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液を液槽に注入する注入装置と、前記液槽内の薬液を建設資材の表層及び内層全体に円滑かつ安全に含浸するために配設される各種の付帯機器と、を備えている」という特徴的構成要件により、また第2の発明によれば、「前記四周壁面板は内壁板と外壁板からなり、前記内壁板と外壁板間には保温材が介装されている」という特徴的構成要件により、さらに第3の発明によれば、「前記蓋体の下面には液槽内の建設資材が液面より上部に浮揚することを防止するための押え杆が短手方向に複数配設されている」という極めて特徴的構成要件により、また第4の発明によれば、「液槽を構成する前記四周壁面板の上端面には耐熱パッキンを配設すると共に、前記上端面と前記蓋体は複数のセッティングピンによって位置決めされると共に、前記上端面と前記蓋体の接触面を密着するための複数の締付装置を備えている」という極めて特徴的構成要件により、比較的シンプルな構造で、建設資材、例えば木材等の表層及び内層部全体に防腐剤、難燃剤、防虫剤等の各種薬液を効率よく含浸して、機能性の高い木材等を製造することが可能な薬液含浸装置の提供という、第1の課題を解決することができた。即ち本願発明は、所定量の建設資材を各種の薬液と共に液槽内で加熱・昇圧し、当該建設資材に薬液を万遍なく含浸させるもので、建設資材の種類によって若干の差異はあるが、加熱温度と時間等は、各季節の外気温を勘案して適宜調整して含浸作業を進めることができ、消費燃料の節減ができる。また所定時間の含浸作業を終了すれば、直ちに液槽から蓋体を取り外し、薬液を含浸した建設資材を取り出し、新たな建設資材を液槽に装入し、所定の液面高さになるように薬液を充填し、蓋体を液槽上に載置し、締付装置を介して蓋体と液槽を密着させて、含浸作業を円滑、かつ連続的に進めることができると共に、液槽内は保温材により予熱が維持されており、さらなる消費燃料の節減という経済効果を奏する。
【0018】
第5の発明によれば、「前記薬液含浸装置は組立状態のまま、又は各構成部材を分解し、車両又は船舶等により搬送可能な形状又は/及び大きさである」という特徴的構成要件により、また第6の発明によれば、「前記建設資材が、木材、竹材又はコンクリート製品である」という特徴的構成要件により、装置全体を組立状態のまま又はその一部を分解し、車両又は船舶等により目的地まで搬送して移設可能な薬液含浸装置の提供という、第2の課題を解決することができた。即ち本願発明に係る薬液含浸装置の組立時の全長は、例えば約4.7m、高さ約2.0m、巾1.0mであり、約4tトラック上に積載し、目的地(設置場所)まで搬送し、建設資材の木材又は竹材等の伐採現場近くに本願薬液含浸装置を簡単に設置し、建設資材に薬液の含浸作業を行うことができ、建設資材の搬送費用、時間、人件費等が不要となる。また薬液含浸装置を設置するための工場用地、付帯施設等を建設するための設備資金をも不要とすることができ、これにより大幅な経済効果を奏する。
【0019】
第7の発明によれば、「前記付帯機器が、温度・圧力計、液面計、濃度計、減圧バルブ、ドレンバルブで、蓋体又は底面板の所定位置に配設されている」という特徴的構成要件により、機能性の高い建設資材を効率よく、かつ安全に製造できる薬液含浸装置の提供という、第3の課題を解決することができた。即ち、建設資材の種類により、又は各季節における気象条件等により、液槽内の液温、圧力状況等を確認しながら、最適の状況で薬液の含浸作業を円滑かつ効率よく進捗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は、本願発明に係る薬液含浸装置の全体図であり、(イ)は一部切欠正面図、(ロ)は、同左側面図、(ハ)は、同平面図である。
【図2】は、図1における2−2線断面図である。
【図3】は、図1におけるA部拡大断面図である。
【図4】は、建設資材への薬液含浸作業工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1(イ)〜(ハ)は、本願発明に係る一実施形態を示している。1は薬液含浸装置で、液槽10、蓋体20、脚柱30、燃焼装置40、注入装置50及び付帯機器60を主な構成部材としている。薬液含浸装置1の全体長さLは約4.7m、高さHは2.0m、巾寸Dは1.0mで、液槽10の高さh1は約0.9m、脚柱30の高さh2は約1.1mとすることができる。液槽10は、縦断面視ほぼ凵状をなしている(図2、参照)。液槽10内には、建設資材(例えば、所定の長さと形状に加工された木材等)W、W…が所定量装入され、水等により所定の割合に希釈された防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液MWが所定の水位に充填される。
液槽10は、正面板11、背面板12、左側面板13及び右側面板14からなる四周壁面板15と底面板16からなっている。正面板11、背面板12、左側面板13及び右側面板14は、いずれも内壁板11a、12a、13a及び14aと外壁板11b、12b、13b及び14bからなり、両壁板間には保温材、例えばガラス繊維、バサルト繊維ないしセラミック繊維からなる不織布等11c、12c、13c及び14cが介装されている(図2、参照)。内壁板11a、12a、13a及び14aと底面板16は、約25mm〜30mmのステンレス製で、外壁板11b、12b、13b及び14bは、約15mm〜20mmの鉄製とされている。
【0022】
液槽10の上部開口部10aには蓋体20が載置される。蓋体20の厚さ寸法t1は約50mmのステンレス製である。液槽10の上端面10bには耐熱パッキンPが配設されている。液槽10と蓋体20は、液槽10の側部に複数配設された締付装置、例えば手動ウインチのヒッパラー(登録商標)61によって密着される。20bはセッティングピンで、蓋体20と液槽10の位置決めと液槽10の上端面10bとの密着度をさらに強めるために複数本設けられている。脚柱30は、図示するように複数本からなる中空の鉄製角柱で、液槽10を水平状に保持し、建設資材W、W…への薬液MW含浸作業を円滑に、かつ効率よくするために、液槽10の底部に固定ボルト(不図示)等で分解可能に取り付けられている。40は燃焼装置(コンロ)で、燃料は都市ガス又はプロパンガスを使用し、液槽10内の薬液MWと建設資材W、W…を加熱し、所定の温度と内圧に昇温、昇圧して建設資材W、W…を膨潤させて薬液MWを建設資材W、W…の表層はもちろん内層全体に含浸させるものである。41はその支持台であり、分解、組立自在となっている。50は注入装置(ホッパー)で、薬液MW又は水等を液槽10内に補充する際に使用する。60は付帯機器で、建設資材W、W…への薬液MWの含浸作業を円滑、安全かつ効率よく進捗するための機器類の総称であり、62は温度・圧力計、63は液面計、64は濃度計、65は減圧バルブ、66はドレンバルブである。22は蓋体20の上面に立設された、蓋体20開閉時に使用されるクレーンのロープ用フックである。
【0023】
図2に示すように、蓋体20の下面20aには液槽10内の建設資材W、W…が液面MWaより上部に浮揚することを防止するための押え杆21が短手方向に複数本配設されている。建設資材W、W…に薬液MWを含浸させるとき、液槽10内の建設資材W、W…は、押え杆21により常に薬液MWの液面MWaより下位に浸漬されているので、薬液MWは確実に建設資材W、W…の表層はもちろん内装全体に含浸させることができる。液槽10内の薬液MWの水位は、液面計63、液温や内圧は温度・圧力計62等によって視認され、所定の水位、液温や内圧等は、減圧バルブ65やドレンバルブ66等によって適宜調整される。ヒッパラー61は、蓋体20と液槽10底部に設けられたブラケット61a、61bに係止され、蓋体20と液槽10の上端面10aが密着するように締付作業が行われる。
【0024】
図3は、図1におけるA部を拡大して示すもので、蓋体20と液槽10の上端面10bには耐熱パッキンPが配設されている。14は右側面板で、14aは内壁板、14bは外壁板、14cは保温材である。MWaは液面、66はドレンバルブである。
【0025】
図4を参照して、本願発明の薬液含浸装置1による、建設資材W、W…(例えば、木材)への薬液含浸作業工程の一例を説明する。薬液含浸作業前の準備作業として、建設資材W、W…は所定の寸法、形状に加工されている。また防腐剤、難燃剤等の各種薬剤(紛体、顆粒体又は液体)は、単独又は複数種が水又は他の溶剤によって所定の割合で混合され、他の液槽に貯留されている。また液槽10内の薬液MWは、燃焼装置40で予め所定の温度(例えば20℃〜30℃)に温められている。薬液含浸作業は、建設資材W、W…の液槽10内への装入で開始され、所定量の建設資材W、W…が液槽10内に収容される(S1)。次に薬液MWが液槽10内へ充填される(S2)。このとき薬液MWの液面MWaは、図1〜図3に図示するように、押え杆21より上位になるように充填される。続いて蓋体20の閉蓋・締付作業がヒッパラー61、セッティングピン20b等を介して行われる(S3)。次に燃焼装置(コンロ)40が点火され、液槽10内は徐々に加熱・昇温・加圧される(S4)。液槽10内における建設資材W、W…と薬液MWの関係について、実験データによれば、加熱温度が約80℃を超えると建設資材W、W…(例えば、木材)の組織の変質がみられるので、加熱・昇温の好適な温度は約70℃前後が好適で、圧力は約2.0気圧以下としている(S5)。加熱時間は、外気温との関係で調整されるが、例えば予熱の付与時間は、夏季で約1時間、冬季は約3時間が好ましく、本格的な加熱時間と温度は、約4時間と約70℃前後が好ましい。液温・圧力は温度・圧力計62により常に目視でチェックされている。所定の時間が経過すれば、燃焼装置40のガスは停止され、建設資材W、W…への薬液MW含浸作業は終了する(S6)。続いてヒッパラー61、セッティングピン20b等は取り外され、クレーン等により蓋体20は引き上げられ、液槽10内の建設資材W、W…は、槽外に取り出され、雨水に濡れない場所で自然乾燥される(S7)。
【0026】
以上建設資材W、W…が、木材の場合について説明してきたが、建設資材W、W…への薬液MW含浸作業における、薬剤の選択、加熱・加圧の温度・圧力、時間等は、対象となる建設資材W、W…によって、適宜変更されることはもちろんである。
【符号の説明】
【0027】
W、W…・・建設資材 MW・・薬液 1・・薬液含浸装置 10・・液槽 15・・四周壁面板 16・・底面板 20・・蓋体 21・・押え杆 30・・脚柱 40・・燃焼装置 50・・注入装置 60・・付帯機器 61・・ヒッパラー(登録商標) 62・・温度・圧力計 63・・液面計 64・・濃度計 65・・減圧バルブ 66・・ドレンバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設資材の機能性を高める各種の薬液を含浸する装置であって、
建設資材を所定量装入し、水等により希釈された防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液を貯留する四周壁面板と底面板からなり、上部を開口した密封可能な液槽と、
前記液槽の上部開口部を開閉する蓋体と、
前記液槽を水平に保持する複数本の脚柱と、
前記液槽内の建設資材と薬液を加熱するために配設される複数の燃焼装置と、
水及び防腐剤、難燃剤、防虫剤、防蟻材又は防黴剤等の薬液を液槽に注入する注入装置と、
前記液槽内の薬液を建設資材の表層及び内層部全体に円滑かつ安全に含浸するために配設される各種の付帯機器と、
を備えていることを特徴とする薬液含浸装置。
【請求項2】
前記四周壁面板は内壁板と外壁板からなり、前記内壁板と外壁板間には保温材が介装されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液含浸装置。
【請求項3】
前記蓋体の下面には液槽内の建設資材が液面より上部に浮揚することを防止するための押え杆が短手方向に複数配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液含浸装置。
【請求項4】
液槽を構成する前記四周壁面板の上端面には耐熱パッキンを配設すると共に、
前記上端面と前記蓋体は複数のセッティングピンによって位置決めされると共に、
前記上端面と前記蓋体の接触面を密着するための複数の締付装置を備えている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の薬液含浸装置。
【請求項5】
前記薬液含浸装置は組立状態のまま、又は各構成部材を分解し、車両又は船舶等により搬送可能な形状又は/及び大きさである、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の薬液含浸装置。
【請求項6】
前記建設資材が、木材、竹材又はコンクリート製品である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項3の何れかに記載の薬液含浸装置。
【請求項7】
前記付帯機器が、温度・圧力計、液面計、濃度計、減圧バルブ、ドレンバルブで、蓋体又は底面板の所定位置に配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液含浸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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