説明

薬液塗布ティシュペーパーの製造方法及び製造装置

【課題】薬液塗布ティシュペーパーの製造において、薬液を循環使用する際に薬液に混入する紙粉を効率的に除去し、塗布液の粘度を安定化させ、塗布量のバラツキを抑制することができる装置および方法を提供する。
【解決手段】圧胴65Bと版胴64Aとの間を走行するティシュペーパーシートS2に、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴64Aに乗せながら塗布するように構成した設備であって、前記版胴64Aに対向し、かつ版胴64Aには接触しない清掃ヘッドを有する刷版清掃手段100を設け、高圧流体を噴射するとともに、刷面から離脱した紙粉を吸引することにより、刷版に付着した紙粉を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液塗布ティシュペーパーの製造工程において、薬液に混入した紙粉、及び薬液塗布装置内に付着した紙粉を除去する機構を有する製造装置及び製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
表面に保湿剤や柔軟剤等の薬液を塗布した、ローションタイプとも言われるティシュペーパーはよく知られる(特許文献1)。
このような薬液塗布ティシュペーパーを製造するにあたり、柔軟剤やグリセリンを主原料とする保湿剤は高価であるとともに、その廃棄は環境に与える影響を考慮すると最小限とする必要があるため、薬液塗布工程での薬液の利用効率をできるだけ高くするよう、塗布されなかった余剰の薬液は回収して再度塗布工程に供する、いわゆる薬液の循環使用を行うのが一般的である。
しかし、保湿剤や柔軟剤等の薬液を塗布しローションタイプとも言われるティシュペーパーの製造工程において、その塗布工程より回収された薬液中には、ペーパーシートから離脱し飛散した紙粉が混入し、塗布時間の経過に伴って塗布薬液中の紙粉量が増加することによって薬液の粘度が増加して塗布量が増加し、塗布幅方向や流れ方向での塗布量のばらつきが大きくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−9121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、薬液塗布ティシュペーパーの製造工程において、薬液に混入する紙粉を効率的に除去し、結果として、塗布液の粘度を安定化させ、塗布量のバラツキを抑制することができる装置および方法を提供することである。さらに、薬液塗布装置内に付着または残存した紙粉を除去する装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパー原紙に、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴の版面に乗せながら薬液を塗布する薬液塗布工程と、
回収した薬液を紙粉分と薬液分とに固液分離して前記薬液分を薬液の原液とともに一体混合させて薬液塗布手段に供給する薬液回収工程と、
前記版胴の版面に対向し、かつ版面に接触しない位置に設けられた清掃手段により、空気及び水を混合した状態の流体を前記版面に噴射し、同時に版面から除去された紙粉を含む空気及び水の混合体を吸引する刷面清掃工程と、
を含む薬液含有ティシュペーパーの製造方法。
【0006】
(作用効果)
ティシュペーパー原紙に対して薬液、たとえば保湿剤又は柔軟剤を含有する薬液を塗布する場合、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式などのロール転写方式、またスプレー塗布、インクジェット方式などの非接触式塗布方法、あるいは浸漬などの公知の塗布方法をいずれも使用することができる。しかし、いずれの塗布方法によっても塗布時薬液の全量がティシュペーパー原紙に塗布されるものではなく、浸漬槽、版、アニロックスロールやディップロールなどの印刷方式における各ロール、塗布した薬液の飛散を防止する遮蔽板等に未塗布薬液が残り、塗布薬液に未塗布液が混入される。薬液は安価ではないし、しかも、廃液とするとしても廃液処理による環境への影響もある。そこで、未塗布薬液は回収して再度塗布に供するのが望ましい。
【0007】
薬液をスプレー塗布で塗布する場合には、幅方向及び流れ方向において塗布量のばらつきを生じ易い。この点においてフレキソ印刷方式及びグラビア印刷方式は、幅方向及び流れ方向において塗布量を安定して塗布することができる利点を有する。
【0008】
しかし、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式などのロール転写方式では、高速で版やロールで薬液を塗布する際にその表面張力によってティシュペーパー原紙から離脱した紙粉が版やロールに逆転移し、版の上に残っている薬液に混入する。そして、回収した未塗布薬液の再利用を継続すると紙粉の含有量の増加に伴って徐々に薬液の粘度が高まり、ティシュペーパー原紙への塗布量が増加し、また塗布幅方向や流れ方向において塗布量のばらつきが大きくなる問題があった。また、フレキソ印刷方式やグラビア印刷方式の場合には、版の目詰まりの原因となり、部分的な塗布量の増加や、またその付着した紙粉の影響が安定していないことから均一な塗布を妨げるという問題があった。
【0009】
本発明は、回収した未塗布薬液を含む紙粉含有薬液を固液分離し、紙粉分は最終的には系外へ、分離した薬液分は塗布液として使用するようにすることにより、塗布液中への紙粉の混入を抑制することができるものである。
【0010】
薬液塗布を行うフレキソ印刷方式、グラビア印刷方式のいずれにおいても、容器に収容した薬液をティシュペーパー原紙に塗布する方式である。しかるに、その塗布される薬液の粘度は可能な限り一定であることが望ましいので、別途、貯留タンクを設けて薬液塗布装置との間で薬液を循環させる第1循環路を設けることが望ましい。
【0011】
さらに、この第1循環路から、望ましくは前記の貯留タンクから紙粉含有液を抜き出して固液分離し、その分離薬液分を第1循環路に対して、望ましくは前記の貯留タンクに返送する第2循環路を設けると、紙粉の除去を第2循環路内の固液分離手段で連続的に除去できるために、第1循環路内には紙粉の含有量が増大することなく経時的に安定した状態となり、安定した塗布量をもって塗布を行なうことができる。
【0012】
一方、フレキソ印刷方式ではアニロックスロールからの薬液を受けてシートに転写塗布する版胴の版凸部の表面に紙粉が付着する、もしくは版凹部に紙粉を詰まらせるようになる。このように版に紙粉が付着し、詰まることによって部分的な、あるいは品質に影響を与えるような塗布むらになる、という問題がある。
【0013】
また、版面からアニロックスロール表面に紙粉が逆に転移し、さらにアニロックスロール表面からチャンバー内の薬液に移ったり、あるいはディップロール表面に紙粉が転移し最終的に薬液槽に紙粉が移動する。
【0014】
そして、薬液中の紙粉の濃度が増加するとともに塗布薬液の粘度は増加し、塗布時間が経過すると版から紙への塗布量が増加していく傾向にある。また薬液の粘性が増加すると、薬液は幅方向に均等にロール間で転移しにくく、よって幅方向の塗布量のばらつきが増加する。
【0015】
グラビア印刷方式においても同様に薬液を受けてシートに転写塗布する版胴の版の凹部に紙粉を詰まらせ、ひいては薬液の粘度を増加させるようになり、上記のような流れ方向、幅方向の塗布量のばらつきを生じることになる。
【0016】
版銅の版の凹部に付着した紙粉を除去する方法として、人の手による清掃が行われてきた。人の手による清掃は、運転をしながらの実施は危険を伴うため、製造装置の運転を停止しなければならない。人の手によらず、ブラシやブレードを版面に接触させることにより掻きとる方法も想定されるが、これらの方法では、除去された紙粉の飛散による設備汚染やシートへの再付着の問題や、ブラシの毛の脱落の問題、ブレードの摩耗による設備コストの増加等の複数の問題点がある。
【0017】
本発明においては、最終的にシートに薬液を転写塗布する版胴において、版面に対向し、かつ接触しないように清掃手段を設け、当該清掃手段により、高圧流体(空気及び水の混合物)の版面への噴射、除去された紙粉を含む空気及び水の吸引を同時に行うことにより、薬液中の紙粉による版面凹部の目詰まりを防止する。このような構成においては、版面と清掃手段は接触することがないため、摩耗が生じることはなく、また、除去された紙粉の多くは直ちに吸引手段により吸引除去されるため、紙粉の飛散を軽減することができる。なお、吸引される薬液量は、少量であるため、回収して薬液塗布手段に供することなく、廃棄処分することが望ましい。
【0018】
清掃手段において刷面に向かって噴射される流体は、空気及び水の混合流体とする。空気のみでは粘着性を有する薬液を完全に除去することは難しい。また、水単独の場合と比して、空気と水の混合流体は、水中に圧縮された空気が噴出口から噴出されるときに大気圧下で膨張する効果があるため、その膨張力により刷面に高速で当たる、という利点を有する。また、空気と水の比重差により、噴射された刷面に微細な振動を与えることができ、より高い洗浄効果を奏することができるものである。ここで、水の代替として、溶剤、洗浄液等の使用は適さない。刷面に残存した溶剤等が塗布薬液に混入することで薬液の物性が変化し、塗布装置の操業性や、製造された製品の品質に影響を生じるおそれがあるためである。
【0019】
なお、後述のように、特に高速で塗布方式する場合には、フレキソ印刷方式とすることが好ましく、特にドクターチャンバーを用いたフレキソ印刷方式とすることが好ましい。高速でのフレキソ印刷方式においては、未塗布薬液中への紙粉混入、刷版への紙粉付着の度合いが大きいことを知見しており、本発明例の紙粉除去手段を有効に適用できる。
【0020】
本発明は、薬液塗布手段より回収された未塗布薬液を循環使用するに際して、薬液に混入した紙粉を効率よく除去するとともに、紙粉の付着しやすい刷版を清掃することにより、薬液に混入する紙粉の量を低減することで、シートに塗布される薬液の一定化をより確実に維持することができるものである。
【0021】
<請求項2記載の発明>
前記ティシュペーパー原紙を圧胴と版胴との間に上下方向に走行させ、前記清掃手段を版胴の下方に設ける、請求項1記載の薬液含有ティシュペーパーの製造方法。
【0022】
(作用効果)
版胴の下方に清掃手段を設けて紙粉含有液を版胴から除去するようにしたので、高圧流体(空気及び/または液体)除去した紙粉含有液が巻き上がり飛散することを防止でき、もって、シートへの付着を防止できる。
【0023】
<請求項3記載の発明>
前記清掃手段が、前記版胴の幅方向に一定速度で往復移動する清掃ヘッドである、請求項1または2に記載の薬液含有ティシュペーパーの製造方法。
【0024】
(作用効果)
清掃手段は、版胴の全幅にわたって設けることも可能であるが、その場合、高圧流体を版面に噴射するためには、多量の水を必要とし、吸引後の水の処理が煩雑となる。また、除去を要する紙粉の量は、常時全幅への高圧流体の噴射を要するほど多量ではない。よって、噴射と吸引後の処理の効率を高めるため、清掃手段を、版胴幅方向に一定速度で往復移動する清掃ヘッドとすることが好ましい。
【0025】
<請求項4記載の発明>
圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパー原紙に、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴の版面に乗せながら薬液を塗布する薬液塗布手段と、
回収した薬液を紙粉分と薬液分とに固液分離して前記薬液分を薬液の原液とともに一体混合させて薬液塗布手段に供給する薬液回収手段と、
前記版胴の版面に対向し、かつ版面に接触しない位置に設けられた清掃手段とを有し、
前記清掃手段が、空気及び水を混合した状態の流体を前記版面に噴射し、同時に版面から除去された紙粉を含む空気及び水の混合体を吸引する構成であることを特徴とする薬液含有ティシュペーパーの製造装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、最終的にシートに薬液を転写塗布する版胴において、版胴の版面に対向して高圧流体噴射手段と吸引手段とを有する清掃手段を設け、紙粉を含有する薬液を前記版胴の版面から除去するように構成したことから、前記版胴の版面における薬液中の紙粉の目詰まりを防止できる。また、薬液に混入する紙粉を効率的に除去できる結果として、塗布液の粘度を安定化させ、塗布量のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る薬液塗布装置、薬液の紙粉除去装置及び配管の一例を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る薬液塗布装置、薬液の紙粉除去装置及び配管の他の例を示すフロー図である。
【図3】刷版清掃手段の概要を示す正面図である。
【図4】刷版清掃手段の概要を示す側面図である。
【図5】刷版清掃手段の清掃ヘッドの上面図である。
【図6】プライマシンでの薬液塗布例の概要説明図である。
【図7】フレキソ塗布に係る装置の一例を示す概略図である。
【図8】グラビア塗布に係る装置の一例を示す概略図である。
【図9】刷版清掃手段の清掃ヘッドの断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(薬液塗布ティシュー製造工程の一例)
図6に、プライマシンにおいて薬液を塗布して得られるティシュペーパーの製造工程の例を示す。
抄紙機において抄紙された原紙は、連続シートとして、クレープを施し、カレンダー処理を施したうえで、これを巻き取り、一次原反ロールJR(一般的にジャンボロールともいわれている)とされる。
連続シートS11,S12は積層ローラー51で積層されて2プライとされ、必要に応じてプライマシンカレンダー52でカレンダー処理され、薬液付与手段53に送られる。薬液付与は各プライの片面側のみより行われ、薬液を付与されていない面同士が重ね合わされて、後にプライ固定を施されるのが好ましい。薬液塗布の方法は、フレキソ塗布又はグラビア塗布によるなど公知の塗布方法をいずれも使用することができる。
【0029】
薬液を塗布された2プライの連続シートは、コンタクトエンボスコロ54B及びコロロール54Aに供され、コンタクトエンボス(ナーリング)処理を施すことにより固定されることが好ましい。コンタクトエンボスは、両側部から紙幅に対して1/10〜1/20の位置に幅1〜10mmで縦方向に一様に施されるのが好ましい。プライを接着剤等で固定するなど、公知の方法のいずれを使用してもよいが、接着剤を使用する場合、肌触りが固くなりやすい、薬液付与時に剥がれやすい、等の問題があるため、コンタクトエンボスの使用がより好ましいといえる。
【0030】
コンタクトエンボスを付与した2プライの連続シートは、直接ロータリー式インターフォルダ等に供されて折り加工を施された後に製品サイズに裁断されるか、または、スリッター55により製品幅にカットされた後、ワインディングドラム56により巻き取り二次原反ロールRとされ、折り加工が施され、紙箱への収納がなされる。
【0031】
なお、本形態ではコンタクトエンボス前に薬液を付与する構成をとっているが、コンタクトエンボス後に薬液を付与する構成としてもよい。
【0032】
上述の二次原反ロールは、特にティシュペーパー製品においては折り加工工程に供される。折り加工工程としては、ロータリー式インターフォルダ、マルチスタンド式インターフォルダ等公知の方法を使用することができるが、生産性の高いマルチスタンド式インターフォルダの使用がより好ましい。
【0033】
なお、2プライのティシュペーパーの製造工程を例示したが、本発明に係る薬剤中の紙粉除去装置から供給される薬液は、他の製造工程にも有効に使用できるものであり、上記の製造工程への使用に限定されるものではない。
【0034】
(薬液塗布工程−フレキソ塗布の一例)
薬液塗布工程としては、公知の塗布手段をいずれも使用することができるが、塗布面全体にムラなく薬液塗布を行うグラビア塗布、フレキソ塗布等の印刷方式の使用が好ましい。
薬液塗布工程のうち、特にドクターチャンバー61を備えたフレキソコーターを使用すると、安定した塗布量で薬液を供給することができるため、より好ましい。
【0035】
図6及び図7にフレキソ印刷方式におけるドクターチャンバー形式の一例を示す。図7に示すように一方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Aは、薬液の入っているドクターチャンバー61Aが、回転可能なアニロックスロール63Aと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Aからアニロックスロール63Aに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Aと接し且つ積層連続シートS2の一面とも接する版胴ロール64Aが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Aから版胴ロール64Aに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの版胴ロール64Aと対向している圧胴ロール65Aとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、版胴ロール64Aから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
【0036】
そして、本形態では、この薬液塗布部53Aがコンタクトエンボス手段54のコロ54Aと対向し且つ、前述のワインディングドラム56Aとも対向する積層連続シートS2の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Aに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Aから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Aに設置されている。
【0037】
他方、図7に示すように他方のドクターチャンバー形式とされる薬液塗布部53Bは、薬液の入っているドクターチャンバー61Bが、回転可能なアニロックスロール63Bと対向して配置されていて、ドクターチャンバー61Bからアニロックスロール63Bに薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール63Bと接し且つ積層連続シートS2の他の面とも接する版胴ロール64Bが回転可能に設置されていて、このアニロックスロール63Bから版胴ロール64Bに薬液を受け渡すようになっている。さらに、積層連続シートS2を挟んでこの版胴ロール64Bと対向している圧胴ロール65Bとで積層連続シートS2に圧力を付与しつつ、版胴ロール64Bから積層連続シートS2に薬液を塗布するようになっている。
薬液の粘度によっては、版胴ロール64Bの版面に紙粉が付着しやすくなるという問題があることから、版胴ロール64B下部に刷版清掃手段100を設ける。
【0038】
そして、本実施の形態では、この薬液塗布部53Bがコロ54Aと非対向とされ且つ、前述のワインディングドラム56Aとも非対向となる積層連続シートS2の他の面側に位置している。尚、前述のドクターチャンバー61Bに対して薬液を塗布する供給ポンプ(図示しない)及び、このドクターチャンバー61Bから薬液を戻すための排出供給ポンプ(図示しない)が、ドクターチャンバー61Bにも設置されている。
従って、積層連続シートS2の両面に薬液塗布部53A及び薬液塗布部53Bから薬液がそれぞれ塗布されるが、この際、薬液塗布部53Aによるコロ54Aと対向する積層連続シートS2の面側の塗布量を薬液塗布部53Bによる他の面側の塗布量に対して少なくしつつ、積層連続シートS2の両面からそれぞれ積層連続シートS2に対して薬液を塗布することができる。
【0039】
具体的には、片面毎の塗布量を変えるだけでなく、フレキソ版の線数を15〜40線程度、頂点面積率を20〜40%程度の薬液が飛散しない程度に粗くすることが考えられ、このようにすることで、塗布直後はドット柄が残り、瞬間的に塗布部分と未塗布部分ができるようになる。
従って、本形態によれば、フレキソ印刷方式を用いることで版が樹脂であり弾力性があるため衛生用薄葉紙に多少の凹凸があっても印圧で調整可となるので、積層連続シートS2にシワが入り難くなる。他方、フレキソ印刷方式を用いることにより、加工速度が高速であっても塗布量を安定させることができ、また、一つのロールで幅広い薬液の粘度を安定的に塗布することができるようになる。具体的には、積層連続シートS2を700m/分以上とし、好ましくは900m/分以上の速度で搬送しつつ、薬液とされるローション剤を後述の範囲の塗布量で塗布する際にも、塗布が均一で蛇行無く積層連続シートS2を巻き取れるようになる。
【0040】
(薬液塗布工程−グラビア塗布の一例)
図8にグラビア塗布に係る装置の一例を示す。図8において、薬液溜めトレイ308からディップロール31が一定量の薬液を取り上げ、ディップロール31のセルに残った薬液は、グラビアロール32に移される。次いで、グラビアロール32に移された薬液は、掻取ブレード33によって掻き取られながら、積層シートS2の表面に同時に移される。
【0041】
(薬液の例)
本発明に係るティシュペーパーシートに塗布する薬液としては限定されるものではないが、好適に対象となる薬液の例について示す。
ティシュペーパーに付与する薬液の粘度は、加工速度を向上させる観点から、40℃で1〜700mPa・sとすることが好ましく、特に50〜400mPa・sとすることが好ましい。1mPa・sより小さいと薬液が飛散しやすくなり装置の汚損につながり、逆に700mPa・sより大きいと塗布量をコントロールしにくくなる。
【0042】
成分はポリオールを70〜90%、水分を1〜15%、機能性薬品を0.01〜22%含むものとすることが好ましい。
【0043】
ポリオールはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類を含む。
【0044】
機能性薬剤としては、柔軟剤、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。柔軟剤、界面活性剤はティシューに柔軟性を与えたり表面を滑らかにする効果があり、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を適用する。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールを用いることができる。
【0045】
また機能性薬剤としてポリオールの保湿性を助けたり、維持させる薬剤として親水性高分子ゲル化剤、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せ等の保湿剤を加えることができる。
また機能性薬剤として香料、各種天然エキス等のエモリエント剤、ビタミン類、配合成分を安定させる乳化剤、薬液の発泡を抑え塗布を安定させるための消泡剤、防黴剤、有機酸などの消臭剤を適宜配合することができる。さらには、ビタミンC、ビタミンEの抗酸化剤を含有させてもよい。
上記成分のうち、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールを主成分とすることが、薬液の粘度、塗布量を安定させる上で好ましい。
薬液塗布時の温度は30℃〜60℃、好ましくは35℃〜55℃とすることが好ましい。
【0046】
(薬液フローの一形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の薬液中の紙粉除去装置と配管の一例を示すフロー図である。薬液塗布工程から回収された紙粉を含む余剰分の薬液はポンプP−2により返送され、サービスタンク23に貯留される。サービスタンク23の温度は、薬液の粘度を一定の範囲内に保つため、ヒータ26により20〜60℃とされることが好ましい。サービスタンク23内の未塗布薬液には、原液タンク25からポンプP−1により送られる原液薬液が付加されることが好ましい。ティシュペーパーに付加される薬液の品質を均一化するため、循環薬液と原液とを分けてラインに導入するのではなく、薬液を一体的に処理・使用することが好ましいためである。循環薬液と原液とは、4:1〜100:1の割合で混合されることが好ましい。
【0047】
サービスタンク23内の薬液はポンプP−6により薬液塗布工程に送られる。その際、薬液は過剰量送られ、余剰分は塗布装置(図示例ではドクターチャンバー61)から戻りポンプP−2により、再びサービスタンクに返送される。このように、本発明に係る紙粉除去装置の薬液フローは、塗布装置、ポンプP−6、サービスタンク23、ポンプP−2よりなる薬液の第1循環路を有する。
【0048】
サービスタンク23の薬液は、ポンプP−3により固液分離装置(図示例では遠心沈降装置10)に供給される。固液分離装置としては、ベルトフィルター等による濾過や、遠心分離等の公知の方法をいずれも使用することができるが、遠心沈降装置、特にディスク型遠心沈降機を好ましく使用することができる。薬液を遠心沈降装置10に供する前に、脱泡装置11による脱泡処理及びヒータ12による加温(20〜60℃)のいずれか、または両方を行うことが好ましい。遠心沈降装置10における固液分離により紙粉を除去された薬液は、ポンプP−4によって再びサービスタンク23に送られる。一方、遠心沈降装置10から排出された紙粉を含む薬液は、更に円筒型遠心濾過装置22等で更に分離処理されることが好ましい。分離された薬液はポンプP−5により、サービスタンク23に送られる。残存した分離パルプ(紙粉)は廃棄物として処理される。このように、本発明に係る紙粉除去装置の薬液フローは、第1循環路に加えて、サービスタンク23、ポンプP−3、遠心沈降装置10、円筒型遠心濾過装置22、サービスタンク24、ポンプP−5を通る、薬液の第2循環路を有する。
【0049】
ポンプP−1〜P−6は、エアポンプ等、公知のポンプをいずれも使用できるが、薬液が気泡を生じると濾過工程における効率が低下するため、気泡が生じにくいギアポンプを使用することが好ましい。
【0050】
(薬液のフローの別の形態)
図2に、紙粉除去装置と薬液塗布工程との配管の別の例を示す。図2に示すように、遠心沈降装置10と円筒型遠心濾過装置22で分離された薬液が、サービスタンク23とは別のサービスタンク24に送られる構成としてもよい。この場合、薬液塗布工程において紙粉が混入した未塗布薬液と、紙粉をほとんど含まない濾液、分離液を混和することがないため、より紙粉の混入の少ない薬液を薬液塗布工程に供することができるため好ましい。しかし、薬液の濾過速度が薬液供給の律速となるため、薬液を安定的に供給するためには、遠心沈降装置として処理能力の高い装置を使用することが好ましい。
この形態においては、原薬液はサービスタンク23に供給するのではなく、サービスタンク24から薬液塗布工程に供給される薬液に混入されるのが好ましい。
【0051】
未塗布薬液の粘度が700mPa・s以下(より好ましくは400mPa・s以下)の場合は、図1の形態を使用できるが、粘度が700mPa・sを超える場合には、当該粘度が200mPa・s未満に低下するまで、図2の形態に変更することが好ましい。
【0052】
(円筒型遠心濾過装置)
ディスク型遠心沈降機10より排出された紙粉には少量の薬液が残存するため、円筒型遠心濾過機22において、更に固液分離を行うことが好ましい。円筒型遠心濾過機による分離は、下記の条件で行われるのが好ましい。
○バッグフィルター: 樹脂製、好ましくはポリエステル製
○メッシュサイズ:100〜400メッシュ
○1回あたりの分離試料量:1.0〜5.0kg
○回転数:2000〜500rpm
○分離時間:15〜45分
遠心濾過により得られた分離済みの薬液は、サービスタンク23またはサービスタンク24(図2)へ送られる。また、バッグ内に残存した分離パルプ(紙粉)は廃棄処分される。
【0053】
(刷版清掃手段)
図3,4に、本発明に係る薬液塗布手段の刷版に対向して設けられる、刷版清掃手段の一例を示す。図3,4では、フレキソ印刷方式の刷版ロール64の清掃手段100を例示する。刷版ロール64は、シャフト64S回りに回転する。清掃手段100は、レール102と清掃ヘッド部103を有し、レール102上を清掃ヘッド部103が刷版ロールの軸方向に0.15〜1.00m/分の間の一定速度で往復移動する。清掃ヘッド部103の一部は駆動バンド104に固定され、気体圧モータ、液体圧モータ又は他の種類のモータによって駆動バンド104が移動することによって、清掃ヘッド部103が移動する。モータはレール102の一方端部に設置される(図示せず)。この清掃ヘッド部103は、2本の流体供給チューブ105と1本の吸引チューブ106を有する。さらに、清掃ヘッド部103は、外部流体供給チューブ107と外部吸引チューブ108に連結される。流体供給チューブ105と外部流体供給チューブ107とは、清掃ヘッド部103の脚部103L内で接続されると共に、吸引チューブ106と外部吸引チューブ108とも、清掃ヘッド部103の脚部103L内で接続される(図示せず)。水と空気を混合して混合流体を作る混合室を備えた流体供給手段101(図1)から供給された混合流体は、外部流体供給チューブ107、流体供給チューブ105を介して、清掃ヘッド109に送られる。
【0054】
刷版ロールに接触せずに近接する、清掃ヘッド109表面の上面図を図5に示す。清掃ヘッド109は、表面に小さな多数の噴射口110を有し、当該開孔より流体供給チューブ105より供給された混合流体を高圧で版面に高圧で噴射し、版面に付着した紙粉及び薬液を版面より除去する。清掃ヘッド109は、同時に吸引口111を有し、噴射により飛散した紙粉、薬液、噴射された水分を真空により吸引し、刷面を吸引乾燥する。このように、洗浄後の版面を直ちに乾燥させることにより、噴射した水分の残存がなく、後の薬液塗布を安定して行うことが可能となる。
【0055】
噴射口110は、刷版の周方向に垂直な列をなして形成され、かつ互いに周方向に離間した複数列、特に3列以上として設けられることが好ましい。噴射口110の大きさは0.1〜2.0mm2、特に0.3〜0.7mm2とすることが好ましい。噴射口110の形状は内壁の角が無く水分中の無機物が堆積し難い円形、楕円形が好ましく、特に円形が好ましい。また、吸引口111は、刷版の周方向に垂直な細長の構造とし、複数を周方向に互いに離間させて配することが好ましい。吸引口111の刷版の周方向の長さは、5〜20mm、特に7〜15mmにすることが好ましい。このように、刷版の周方向に対して複数の噴射口列、吸引口が配されることにより、1つの清掃ヘッド109で洗浄と吸引が複数回連続して行われ、より効果的な洗浄を行うことができる。
【0056】
清掃ヘッド109は、刷版の軸方向、図5中の左右方向に往復移動する。このようにすることで、軸方向である往復移動方向に沿って刷版上に高圧混合流体が万遍なく噴出される。
【0057】
清掃ヘッド109の断面図を図9に示す。清掃ヘッド109内部には、流体路112と吸引路113がそれぞれ独立して配されている。また、噴射口110と吸引口111は、少なくとも2.0mm以上、特に3.0〜7.0mmの距離において離間している。流体路112と吸引路113を分離させ、かつ離間させて配することにより、噴射口110から噴出した流体が、刷面に到達する前に吸引されてしまうことを防止することができる。
【0058】
操業中の刷版ロール64の表面と刷版洗浄装置の清掃ヘッド109との距離は、0.5〜3.0mm、より好ましくは1.0〜2.0mmとすることが好ましい。清掃ヘッド109と刷版ロール64の表面との距離が0.5mm未満であると、噴射流体の勢いが小さくなり所望の洗浄効果が得られない、あるいは清掃ヘッド109に紙粉が溜まりやすいなどの問題が生じる。清掃ヘッド109と刷版ロール64の表面との距離が3.0mm超であると吸引力が小さくなり、所望の洗浄効果が得られない。
【0059】
流体供給チューブ105及び外部流体供給チューブ107を介した清掃ヘッド109への高圧流体の供給は、図1の流体供給手段101よりなされる。ここで、流体供給手段101に取り込まれる空気及び水の量は、それぞれ2.0〜10.0m3/分、0.1〜1.5L/分とすることが好ましい。空気及び水の噴射圧は、それぞれ4〜16Bar、3〜12Barとすることが好ましい。清掃ヘッド109において吸引された紙粉、薬液を含む混合流体は、吸引チューブ106及び外部吸引チューブ108を介して流体供給手段101へ送られ、付設のサイクロン装置(図示せず)において、紙粉等を含む水分が排出される。サイクロン装置より取り出された空気は、再度外部より流体供給手段101へ供給された水とともに混合流体を形成し、洗浄ヘッド109へ送られる。サイクロン装置より排出された紙粉等を含む水分は、次いで遠心濾過装置122へ送られ、固液分離された後にいずれも廃棄される。
【符号の説明】
【0060】
10…遠心沈降装置、11…脱泡装置、12…加温装置、22,122…円筒型遠心濾過機、23,24…サービスタンク、25…原液タンク、26…ヒータ、100…刷版清掃手段、101…流体供給手段、P−1〜P−6…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパー原紙に、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴の版面に乗せながら薬液を塗布する薬液塗布工程と、
回収した薬液を紙粉分と薬液分とに固液分離して前記薬液分を薬液の原液とともに一体混合させて薬液塗布手段に供給する薬液回収工程と、
前記版胴の版面に対向し、かつ版面に接触しない位置に設けられた清掃手段により、空気及び水を混合した状態の流体を前記版面に噴射し、同時に版面から除去された紙粉を含む空気及び水の混合体を吸引する刷面清掃工程と、
を含む薬液含有ティシュペーパーの製造方法。
【請求項2】
前記ティシュペーパー原紙を圧胴と版胴との間に上下方向に走行させ、前記清掃手段を版胴の下方に設ける、請求項1記載の薬液含有ティシュペーパーの製造方法。
【請求項3】
前記清掃手段が、前記版胴の幅方向に一定速度で往復移動する清掃ヘッドである、請求項1または2に記載の薬液含有ティシュペーパーの製造方法。
【請求項4】
圧胴と版胴との間を走行するティシュペーパー原紙に、フレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式で、薬液を前記版胴の版面に乗せながら薬液を塗布する薬液塗布手段と、
回収した薬液を紙粉分と薬液分とに固液分離して前記薬液分を薬液の原液とともに一体混合させて薬液塗布手段に供給する薬液回収手段と、
前記版胴の版面に対向し、かつ版面に接触しない位置に設けられた清掃手段とを有し、
前記清掃手段が、空気及び水を混合した状態の流体を前記版面に噴射し、同時に版面から除去された紙粉を含む空気及び水の混合体を吸引する構成であることを特徴とする薬液含有ティシュペーパーの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−11187(P2012−11187A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120238(P2011−120238)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【特許番号】特許第4792131号(P4792131)
【特許公報発行日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】