説明

薬液容器収容体およびその製造方法

【課題】プラスチック製薬液容器に要求される特性を維持しつつ、酸素の透過に伴う薬液の劣化、細菌の増殖などを高度に抑制できる薬液容器収容体およびその製法を提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するために、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における酸素透過度(25℃、60%RH)が200cm/m・24h・atm以上であり、定常状態における酸素透過度(25℃、60%RH)が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチック製薬液容器に、薬液を収容、密封し、このプラスチック製薬液容器に蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理をした上で、脱酸素剤ととともに、酸素バリア性を有する外装袋に収容、密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が充填、密封された薬液容器を外装袋に収容、密封してなる薬液容器収容体と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬液を収容する容器には、軽量、柔軟で、取扱い性が良好であり、しかも、廃棄が容易なプラスチック製の容器が広く用いられており、このプラスチック製容器を形成するプラスチックとしては、薬液に対する安定性、医薬上の安全性などの観点から、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンが多用されている。
しかし、ポリオレフィンは、酸素の透過度が高い素材であることから、酸化分解などが生じ易い薬液を収容して、保存する用途には、薬液の品質保持などの観点から、必ずしも適切ではない。
【0003】
一方、特許文献1には、アミノ酸を含有した水溶液からなる輸液剤が気体透過性を有する医療用一次容器に充填され、該医療用一次容器に充填された輸液剤が脱酸素剤と共に、実質的に酸素を透過しない二次包装容器内に収納されてなることを特徴とする輸液剤の包装体が記載されている。
また、特許文献2には、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、無機化合物膜が形成されてなる、以下の(1)〜(4)物性を有する薬液容器用フィルムが記載されている。
(1)酸素透過度が1cc/m・24hr・atm以下;
(2)透湿度が1g/m・24hr・atm以下;
(3)光線透過率が80%以上;
(4)色相b値が5以下。
【0004】
また、特許文献3には、少なくとも排出口が形成された可撓壁を有した樹脂容器からなり、上記容器壁はポリビニルアルコールの中間層を境に内層と外層に分かれて多層形成され、上記最内層は、厚みが50乃至800μmの範囲のポリオレフィン層であり、上記外層の透湿量So(g/m24hrs:温度40℃、90%RH)が上記内層の透湿量Si(g/m24hrs:温度40℃、90%RH)の2倍以上になるように、上記外層が設けられていることを特徴とするガスバリアー性を有する輸液容器や、この容器を、乾燥剤を共存させて包装体で包装してある輸液容器が記載されている。また、同文献には、上記輸液容器について、オートクレーブ滅菌処理した後においても、容器壁のガスバリアー性が直ぐに回復する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−275346号公報
【特許文献2】特開平11−285520号公報
【特許文献3】特開平10−80464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の発明のように、一次容器が酸素透過性を有している場合には、二次容器の開封後に一次容器が放置されることによって、一次容器の収容液の酸化劣化を防止できなくなる。しかも、例えば、一次容器に外部から他の薬剤を混注する場合などにおいて、誤って、薬液中に細菌などが混入されたときには、一次容器の外部からの酸素の透過により、細菌の増殖が加速されるおそれがある。
【0007】
一方、従来、酸素バリア性が付与されたプラスチック(以下、単に「酸素バリア性プラスチック」という。)のフィルムとしては、例えば、シリカやアルミナが蒸着されたプラスチックフィルム、アルミニウムフィルムがラミネートされたプラスチックフィルムなどの、無機物を利用したプラスチックフィルムが知られている。
しかし、例えば、特許文献2に記載の発明のように、酸素バリア性プラスチックのフィルムを用いて形成された薬液容器は、上記フィルムの酸素バリア性に優れているがゆえに、薬液容器のヘッドスペースに酸素が含まれた状態で密封された場合に、経時的に内容物が酸化劣化したり、薬液中に誤って細菌が混入された場合に細菌が増殖したりすることを免れない。それゆえ、薬液容器への薬液の充填、密封前に、薬液の溶存酸素を低減させる処理を施したり、上記ヘッドスペースを窒素などの不活性ガスで置換して、その置換率を限りなく100%に近づけたりすることが必要になり、その結果、製造設備が複雑で大掛かりなものとなって、コストの上昇などを招いてしまう。しかも、上記の酸素バリア性プラスチックは、搬送時の振動などによる衝撃でピンホールを生じるおそれもある。
【0008】
また、酸素バリア性を有するプラスチックとして、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが知られており、これらは、フィルム状に成形されたものとしても供給されている。
しかし、これらのプラスチックフィルムは、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性、透明性などが十分でなかったり、廃棄時に焼却処理をすることが適当でないものであったり、薬液との接触によって溶出物を生じるおそれがあるものであったりすることから、そのままの状態で薬液容器の形成に使用することは適切でない。とりわけ、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体については、湿度の変化により酸素バリア性が大きく変動するという不具合がある。
【0009】
一方、特許文献3には、オートクレーブ滅菌処理後、直ちに輸液容器のガスバリア性が回復する旨が記載されているが、輸液容器内に存在する酸素について、全く考慮されていないことから、経時的な内容物の酸化劣化、細菌の増殖などの問題については解決されていない。
そこで、本発明の目的は、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性、透明性、プラスチック形成材料についての耐溶出性といった、プラスチック製薬液容器に要求される特性を維持しつつ、酸素の透過に伴う薬液の劣化、細菌の増殖などを高度に抑制することができる薬液容器収容体と、その製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、
(1)薬液が収容、密封されかつ蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされたプラスチック製薬液容器と、脱酸素剤と、前記プラスチック製薬液容器および前記脱酸素剤を収容、密封するための、酸素バリア性を有する外装袋と、を備え、前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、200cm/m・24h・atm以上であり、かつ、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、100cm/m・24h・atm以下であり、前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックが、多層フィルムであって、前記プラスチック製薬液容器の内側面側にシール層を有し、前記プラスチック製薬液容器の外側面側に保護層を有し、前記シール層と前記保護層との間に中間層を有していて、前記中間層が、前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後に相対的に高い酸素透過性を示し、定常状態において相対的に低い酸素透過性を示す材質からなることを特徴とする、薬液容器収容体、
(2)前記蒸気滅菌処理が、温度100〜121℃および水蒸気飽和状態の不活性ガス雰囲気下で、前記プラスチック製薬液容器を10〜60分間加熱する処理であることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(3)前記シール層がポリオレフィン系プラスチックからなり、前記中間層がポリオール系プラスチックからなることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(4)前記中間層を形成するポリオール系プラスチックが、エチレン含有量が10〜45モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする、前記(3)に記載の薬液容器収容体、
(5)前記多層フィルムのうち、前記中間層よりも前記プラスチック製薬液容器の外側面側に設けられる層全体の水蒸気透過度が、温度25℃、湿度90%RHにおいて、1〜50g/m・24hであることを特徴とする、前記(3)に記載の薬液容器収容体、
(6)前記多層フィルムが、前記シール層と、前記中間層との間に、さらに低吸水性プラスチックからなる低吸水性層を有していることを特徴とする、前記(3)に記載の薬液容器収容体、
(7)前記低吸水性プラスチックが、ポリ環状オレフィンであることを特徴とする、前記(6)に記載の薬液容器収容体、
(8)前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、500〜1000cm/m・24h・atmであることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(9)前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、0.5〜70cm/m・24h・atmであることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(10)前記プラスチック製薬液容器が、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後、酸素透過度が定常状態になるまでに少なくとも2日要するプラスチックから形成されていることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(11)前記プラスチック製薬液容器に収容、密封される薬液が、易酸化性物質を含む薬液であることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(12)前記外装袋は、温度25℃、湿度90%RHにおける水蒸気透過度が、0.5〜30g/m・24hであることを特徴とする、前記(1)に記載の薬液容器収容体、
(13)その内側面側にシール層を有し、その外側面側に保護層を有し、前記シール層と前記保護層との間に中間層を有する多層フィルムからなり、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックで形成され、前記中間層が前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後に相対的に高い酸素透過性を示し、定常状態において相対的に低い酸素透過性を示す材質からなるプラスチック製薬液容器に、薬液を収容して密封した後、このプラスチック製薬液容器に蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理をし、次いで、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後のプラスチック製薬液容器と、脱酸素剤とを、酸素バリア性を有する外装袋に収容して、密封することを特徴とする、薬液容器収容体の製造方法、
(14)前記蒸気滅菌処理が、温度100〜121℃および水蒸気飽和状態の不活性ガス雰囲気下で、前記プラスチック製薬液容器を10〜60分間加熱する処理であることを特徴とする、前記(13)に記載の薬液容器収容体の製造方法、
(15)前記外装袋は、温度25℃、湿度90%RHにおける水蒸気透過度が、0.5〜30g/m・24hであることを特徴とする、前記(13)に記載の薬液容器収容体の製造方法、
(16)前記プラスチック製薬液容器と、前記脱酸素剤とを、前記外装袋に収容して、密封する前に、前記プラスチック製薬液容器と前記外装袋との間の空間を不活性ガスで置換することを特徴とする、前記(13)に記載の薬液容器収容体の製造方法、
を提供するものである。
【0011】
本発明において、プラスチックの酸素透過度(OGTR)は、JIS K 7126-1987「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」に規定のB法(等圧法)に従って測定したものであり、また、プラスチックの水蒸気透過度は、JIS K 7129-1992「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)」に規定のA法(感湿センサー法)に従って測定したものである。
【0012】
また、本発明において、プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度としては、
(a)蒸気滅菌処理(水蒸気飽和状態の雰囲気下での加熱処理;例えば、蒸気滅菌、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)など)や、熱水滅菌処理(例えば、熱水シャワー滅菌、熱水スプレー滅菌など)の後に、プラスチックの表面に付着した水分を除去して、放冷し、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後から12時間以内で、かつ、温度25℃、湿度60%RHの条件下(一般的に、常温でかつ比較的中程度の湿度の環境下)で測定された値と、
(b)酸素透過度の経時変化が観察されなくなった状態、すなわち、酸素透過度が定常状態であるときに、温度25℃、湿度60%RHの条件下で測定された値と、
が規定されている。
【0013】
上記の酸素透過度は、好ましくは、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後8時間以内の測定値であり、より好ましくは、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後6時間以内の測定値である。なお、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされたプラスチックの温度を、放冷により、酸素透過度の測定温度である25℃まで低下させるには、通常、4時間程度の経過を要する。
【0014】
また、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理は、好ましくは、常圧で、または、気圧4000hPa以下の加圧雰囲気下で行われるものであり、より好ましくは、気圧2000〜3500hPaの加圧雰囲気下で行われるものである。
また、上記の定常状態とは、酸素透過度(例えば、温度25℃、湿度60%RHなどの、一定条件下で測定された酸素透過度)の経時的変化が、1時間あたり±5%以内、好ましくは、±3%以内となったときをいう。
【0015】
また、通常、薬液容器の形成に用いられるプラスチックについて、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後、放冷により、酸素透過度を定常状態にまで戻すには、一般に、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後から2日間、好ましくは、3日間、より好ましくは、4日間の経過を要する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の薬液容器収容体におけるプラスチック製薬液容器は、酸素透過度が定常状態であるときに、温度25℃、湿度60%RHの環境下での酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下である、いわゆる低酸素透過性のプラスチックで形成されていることから、本発明によれば、上記薬液容器収容体の外装袋の開封後に、上記薬液容器が放置されたとしても、薬液容器内への酸素の透過を抑制して、薬液容器に収容されている薬液の酸化劣化を防止することができる。
【0017】
また、上記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後における、温度25℃、湿度60%RHの環境下での酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であって、酸素透過度が定常状態であるときに比べて、極めて高い酸素透過性を示すものである。しかも、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後のプラスチックの酸素透過度は、通常、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされる前の状態へと急激には戻らない。このため、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後の薬液容器を、プラスチックの酸素透過度が大幅に低下するまでの間に、脱酸素剤とともに、酸素バリア性を有する外装袋に収容し、密封する本発明の薬液容器収容体の製造方法によれば、上記薬液容器内に残存した酸素(例えば、薬液容器のヘッドスペースに残存した酸素や、薬液中の溶存酸素)を、薬液容器中から除去することができる。
【0018】
それゆえ、上記の薬液容器収容体およびその製造方法によれば、薬液容器に収容された薬液についての酸化劣化を、高度に抑制することができる。また、誤って微量の細菌が混入しても、その増殖を高度に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】図2は、プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックの他の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】図3は、プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックのさらに他の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】図4は、薬液バッグの一実施形態を示す正面図である。
【図5】図5は、実施例1で得られた多層フィルムについての酸素透過度の経時的変化を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例および比較例で得られた薬液容器収容体についての溶存酸素濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例および比較例で得られた薬液容器(薬液バッグ)についての溶存酸素濃度の経時的変化を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例1で得られた多層フィルムについて、外装袋内に収容された状態での酸素透過度の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の薬液容器収容体は、薬液が収容、密封されかつ蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされたプラスチック製薬液容器と、脱酸素剤と、上記プラスチック製薬液容器および脱酸素剤を収容、密封するための外装袋とを備えている。
本発明の薬液容器収容体において、プラスチック製薬液容器は、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックで形成されていることを特徴とする。
【0021】
上記プラスチックの、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度は、上記範囲の中でも特に、好ましくは、500cm/m・24h・atm以上であり、より好ましくは、700cm/m・24h・atm以上であり、さらに好ましくは、700〜1000cm/m・24h・atmである。
【0022】
上記プラスチックについて、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、上記範囲を下回ると、プラスチック製薬液容器に対する蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後に、プラスチック製薬液容器内のヘッドスペースに含まれる酸素や薬液の溶存酸素などを当該薬液容器から外部へと除去させる効果が低下して、薬液の酸化劣化を抑制、防止する効果の低下を招いてしまう。一方、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後の酸素透過度の上限は特に限定されないが、プラスチック製薬液容器に用いられるプラスチックの性質上、1000cm/m・24h・atm程度が上限となる。
【0023】
上記プラスチックの、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度は、上記範囲の中でも特に、好ましくは、70cm/m・24h・atm以下であり、より好ましくは、30cm/m・24h・atm以下であり、さらに好ましくは、0.5〜10cm/m・24h・atmである。
上記プラスチックについて、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、上記範囲を上回ると、例えば、薬液容器収容体の外装袋の開封後、上記薬液容器が放置された場合などにおいて、薬液容器内への酸素の透過を抑制することができず、薬液容器に収容されている薬液の酸化劣化を招いてしまう。一方、酸素透過度が定常状態であるときの酸素透過度の下限は、ゼロであることが好ましいが、プラスチック製薬液容器に用いられるプラスチックの性質上、0.5cm/m・24h・atm程度が好ましい。なお、酸素透過度の下限は、1cm/m・24h・atm程度であってもよく、また、5cm/m・24h・atm程度であってもよい。
【0024】
なお、プラスチックの酸素透過度は、上述のとおり、JIS K 7126-1987「プラスチックフィルム及びシートの気体透過度試験方法」に規定のB法(等圧法)に従って測定された酸素透過度(OGTR)である。酸素透過度の測定に用いられる測定機器としては、例えば、MOCON社製の商品名「OX−TRAN(登録商標)」や、LYSSY社製の商品名「OPT−5000」などが挙げられる。
【0025】
プラスチック製薬液容器に対する蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理の処理条件は、特に限定されず、薬液が収容された容器に対する滅菌処理の一般的な処理条件に合わせて、具体的には、例えば、収容される薬液の種類、量、容器を形成するプラスチックの材質、厚みなどの条件に合わせて、かつ、内容液に対する滅菌処理が、所期の条件と適合するように、適宜設定すればよい。
【0026】
一般的には、蒸気滅菌処理は、温度100〜121℃および水蒸気飽和状態の雰囲気中にて、加熱時間を10〜60分とすればよい。また、蒸気滅菌処理時の加圧条件は、特に限定されないが、好ましくは、常圧、または、気圧4000hPa以下の加圧下であり、より好ましくは、気圧2000〜3500hPaの加圧下である。
一方、熱水滅菌処理は、従来公知の条件、または、蒸気滅菌処理の条件に準じて処理すればよく、例えば、常圧下または加圧下において、100〜120℃程度の熱水を、10〜60分間程度、噴射または噴霧すればよい。
【0027】
また、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。この場合には、外装袋に収容、密封される前の薬液容器のヘッドスペースを、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理中に、上記不活性ガスによってある程度置換させることができ、外装袋に収容、密封される前の薬液容器に含まれる酸素の量を、予め低減させることができる。また、薬液容器の外装袋への収容、密封後に、薬液容器内の酸素を除去するために必要となる脱酸素剤の量や、脱酸素処理に要する時間を少なくすることができ、薬液の酸化劣化の抑制、防止効果をより一層向上させることができる。
【0028】
上記不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴンなどの、薬液に対して酸化、その他の変質を生じさせにくい(好ましくは、生じさせない)気体であることが好ましい。
プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックについての、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後における酸素透過度や、定常状態における酸素透過度は、上記プラスチックの種類、厚みなどを変えることにより、また、上記プラスチックが多層フィルムである場合には、その層構成、厚みなどを変えることにより、それぞれ、適宜の値に設定することができる。
【0029】
また、プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックの酸素透過度について、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後における酸素透過度の値と、定常状態における酸素透過度での値とに、顕著な差を設けるためには、例えば、薬液容器を形成するプラスチックとして、ポリオール系プラスチックを用いることが好ましい。
ポリオール系プラスチックとしては、これに限定されないが、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
【0030】
なかでも、好ましくは、エチレン含有量が10〜45モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。
エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が10モル%を下回ると、例えば、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理に耐えるための十分な耐水性を確保できなくなるおそれがある。また、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理によって上昇した酸素透過度が、プラスチックの温度を低下させた後においても、元に戻らなくなるおそれがある。
【0031】
逆に、エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が45モル%を超えると、蒸気滅菌処理や熱水滅菌処理により白化して、容器の透明性が著しく低下してしまう。また、定常状態における酸素透過度が、温度25℃、湿度60%RHの条件下で上記範囲を上回るおそれがあり、その結果、薬液容器収容体の外装袋の開封後、上記薬液容器が放置された場合などにおいて、薬液容器内への酸素の透過を抑制することができなくなるおそれがある。上記エチレン含有量は、上記範囲の中でも、特に好ましくは、25〜35モル%である。
【0032】
上記ポリオール系プラスチックには、薬液容器の耐熱性を上げる目的で、必要に応じて、例えば、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン−6など。)やリン系酸化防止剤(例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなど。)を配合することができる。これらポリアミド系樹脂やリン系酸化防止剤の配合量は、薬液容器に収容される薬液に影響を及ぼさない範囲で設定すればよい。
【0033】
プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、薬液容器としての基本的性質を維持するという観点から、ポリオール系プラスチックを中間層として、この中間層よりも薬液容器の内側面側に、ポリオレフィン系プラスチックからなるシール層(最内層)を設け、上記中間層よりも薬液容器の外側面側に保護層(最外層)を設けた、多層構造のプラスチックフィルムであることが望ましい。
【0034】
上記シール層(最内層)は、例えば、輸液バッグなどを形成するためにプラスチックフィルムの周縁部が溶着される場合において、その溶着面をなすものであり、また、薬液容器の内側面となって、薬液と直接に接触する面をなすものである。それゆえ、上記シール層(最内層)を形成するプラスチックとしては、例えば、ヒートシールが可能であること、薬液に対する安全性が確立されていることなどが求められる。
【0035】
上記シール層(最内層)を形成するためのプラスチックの具体例としては、例えば、ポリオレフィン系プラスチックが挙げられる。
ポリオレフィン系プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン(エチレンホモポリマー)、エチレン・α−オレフィンコポリマー、ポリプロピレン(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・α−オレフィンランダムコポリマー、プロピレン・α−オレフィンブロックコポリマーなどが挙げられる。また、上記エチレン・α−オレフィンコポリマーのα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数3〜6のα−オレフィンが挙げられ、上記プロピレン・α−オレフィンランダムコポリマーおよびプロピレン・α−オレフィンブロックコポリマーのα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、または、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数4〜6のα−オレフィンが挙げられる。
【0036】
シール層に用いられるポリオレフィン系プラスチックは、上記例示のなかでも、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの混合樹脂などが挙げられる。
また、例えば、易剥離性を有する隔壁(易剥離シール部)で区画された複数の収容室を有する袋状の薬液容器(いわゆる複室バッグなど)を作製する場合には、易剥離シール部の形成を容易にするために、シール層をポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂からなるプラスチックで形成することが好ましい。
【0037】
上記保護層(最外層)は、プラスチック製薬液容器の外側面をなす層である。それゆえ、上記保護層(最外層)を形成するプラスチックとしては、例えば、蒸気滅菌処理時または熱水滅菌処理時において、上記ポリオール系プラスチックからなる中間層が直接水分の影響を受けないようにするという観点や、薬液容器の形状、用途などに応じて、所定の強度を保つことができるようにするという観点から、適宜選択すればよい。
【0038】
また、上記保護層(最外層)、または上記多層フィルムのうち、上記中間層よりもプラスチック製薬液容器の外側面側に設けられる層全体については、上記ポリオール系プラスチックからなる中間層が直接水分の影響を受けないようにしつつ、本発明の作用効果上、ある程度の水蒸気透過性を有していることが求められる。保護層(または、上記多層フィルムのうち、上記中間層よりもプラスチック製薬液容器の外側面側に設けられる層全体)についての水蒸気透過度としては、特に限定されないが、温度25℃、湿度90%RHにおいて、好ましくは、1〜50g/m・24hであり、より好ましくは、3〜30g/m・24hであり、さらに好ましくは、3〜10g/m・24hである。
【0039】
なお、上記水蒸気透過度は、JIS K 7129-1992「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)」に規定のA法(感湿センサー法)に従って測定したものである。
上記保護層(最外層)を形成するためのプラスチックの具体例としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系などのプラスチックが挙げられる。上記ポリオレフィン系プラスチックとしては、上記例示したのと同じものが挙げられる。また、上記ポリアミド系プラスチックとしては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10のナイロン類などが挙げられる。また、ポリエステル系のプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0040】
プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックが、多層フィルムである場合において、その具体的態様としては、例えば、上述のとおり、プラスチック製薬液容器の内側面側をなす最内層にポリオレフィン系プラスチックからなるシール層を有しており、プラスチック製薬液容器の外側面側をなす最外層に保護層を有しており、かつ、上記シール層と上記保護層との間にポリオール系プラスチックからなる中間層を有している、3層構造の多層フィルムが挙げられる。
【0041】
また、上記多層フィルムは、上記中間層よりもプラスチック製薬液容器の内側面側(シール層側)に、さらに、低吸水性プラスチックからなる低吸水性層を有していることが好ましい。この場合、上記ポリオール系プラスチックからなる中間層が、薬液中の水分による影響を受け難くすることができる。
上記低吸水性プラスチックとしては、例えば、ポリ環状オレフィンなどが挙げられる。
ポリ環状オレフィンは、吸水率が極めて低く、具体的には、0.01%以下であることから、ポリオール系プラスチックからなる中間層の水分による影響を少なくするという目的を達成する上で、好適である。
【0042】
なお、上記吸水率は、JIS K 7209-2000「プラスチック−吸水率の求め方」に規定のB法(沸騰水に浸漬後の吸水率)に従って測定したものである。
ポリ環状オレフィンの具体例としては、例えば、エチレンとジシクロペンタジエン系化合物との共重合体(またはその水素添加物)、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体(またはその水素添加物)、シクロペンタジエン系化合物の開環重合体(またはその水素添加物)、2種以上のシクロペンタジエン系化合物(またはその水素添加物)からなる開環共重合体などのポリ環状オレフィンが挙げられる。
【0043】
上記多層フィルムには、さらに、例えば、プラスチック製薬液容器に柔軟性、透明性、耐衝撃性を付与する目的で、エラストマーを含有するプラスチックからなる層を設けることができる。
上記エラストマーとしては、例えば、ポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレン系エラストマーなどのポリオレフィン系エラストマーや、例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、マレイン酸などで変性された変性SEBS、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)などのスチレン系エラストマーなどが挙げられ、なかでも、好ましくは、ポリエチレン系エラストマーが挙げられる。
【0044】
プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックとしては、これに限定されないが、例えば、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形法によってフィルム状に成形されたものが挙げられる。このプラスチックフィルムを用いて上記薬液容器を形成することにより、可撓性および柔軟性に優れたプラスチック製薬液容器を形成することができる。
図1〜3は、プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックが多層フィルムである場合の、当該多層フィルムの層構成の好適態様を示す概略断面図である。すなわち、かかる場合の好適態様としては、これに限定されないが、例えば、
(I)プラスチック製薬液容器の内側面側Iをなす最内層から外側面側Oをなす最外層にかけて、順に、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂からなるシール層1、ポリエチレンからなる層2、ポリ環状オレフィンからなる低吸水性層3、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層4、および、ポリエチレンからなる保護層5を有しており、さらに、低吸水性層3と中間層4との間、および、中間層4と保護層5との間に、それぞれ、接着性樹脂(例えば、接着性ポリオレフィンなど。)からなる接着層6,7を有している、7層構造の多層フィルム(図1参照)、
(II)プラスチック製薬液容器の内側面側Iをなす最内層から外側面側Oをなす最外層にかけて、順に、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂からなるシール層1、ポリエチレンからなる層2、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層4、および、ポリエチレンからなる保護層5を有しており、さらに、ポリエチレンからなる層2と中間層4との間、および、中間層4と保護層5との間に、それぞれ、接着性樹脂(例えば、接着性ポリオレフィンなど。)からなる接着層8,7を有している、6層構造の多層フィルム(図2参照)、
(III)プラスチック製薬液容器の内側面側Iをなす最内層から外側面側Oをなす最外層にかけて、順に、ポリエチレンからなるシール層1’、ポリ環状オレフィンからなる低吸水性層3、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる中間層4、および、ポリエチレンからなる保護層5を有している、4層構造の多層フィルム(図3参照)、
が挙げられる。
【0045】
なお、上記(III)に示す多層フィルムにおいて、低吸水性層3と中間層4との間や中間層4と保護層5との間の接着は、各層間に接着剤を塗布することにより達成することができる。また、上記(I)および(II)に示す多層フィルムの場合と同様にして、接着性樹脂からなる接着層を介在させてもよい。一方、上記(I)および(II)に示す多層フィルムにおいては、低吸水性層3と中間層4との接着や中間層4と保護層5との接着は、各層間に接着層(6,7,8)を介在させずに、単に、接着剤を塗布することにより達成することもできる。
【0046】
上記多層フィルムにおいて、各層の厚みは特に限定されず、プラスチック製薬液容器全体として、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後の酸素透過度や、定常状態での酸素透過度が、上述の範囲を満たすように設定すればよい。
また、プラスチック製薬液容器を、例えば、柔軟な薬液バッグとして形成する場合には、上記中間層の厚みを3〜20μmとし、多層フィルム全体の厚さを180〜300μm程度とすることが好ましい。
【0047】
プラスチック製薬液容器の形態は特に限定されず、上述のように、例えば、輸液バッグなどのような、可撓性および柔軟性に優れた袋状の薬液容器(図4参照)であってもよく、例えば、輸液ボトルなどのような、可撓性および柔軟性を有しつつ、それ自身で容器形状を維持し得る強度を備えた薬液容器であってもよい。また、上記輸液バッグなどの袋状の薬液容器は、単室の薬液バッグであってもよく、易剥離シール部で区画された複数の収容室を有する、いわゆる複室バッグであってもよい。
【0048】
これら輸液バッグ、輸液ボトルなどの形成方法としては、特に限定されず、例えば、ラミネート、共押出などの、種々の方法を、薬液容器の形態に応じて適宜選択して採用することができる。
本発明の薬液容器収容体において、プラスチック製薬液容器に収容される薬液は、特に限定されず、種々の薬剤が挙げられる。なかでも、上記のプラスチック製薬液容器は、薬液容器を使用する通常の環境下で、外部からの酸素の侵入が抑制されており、しかも、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後に、酸素吸収剤とともに酸素バリア性を有する外装袋に収容され、密封されることで、ヘッドスペースに残存した酸素や薬液中の溶存酸素が経時的に除去され得るものであることから、プラスチック製薬液容器に収容される薬液としては、輸液、とりわけ、L−システイン、L−トリプトファン、脂肪、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンCなどの、酸化し易い物質を含む輸液が好適である。
【0049】
本発明の薬液容器収容体において、外装袋は、酸素バリア性を有しており、温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、好ましくは、0.5cm/m・24h・atm以下であり、より好ましくは、0.1cm/24h・m・atm以下である。
外装袋の酸素透過度が上記範囲を上回ると、プラスチック製薬液容器のヘッドスペースに残存した酸素や薬液中の溶存酸素を事後的に除去する効果が得られにくくなる。
【0050】
また、外装袋は、ある程度の水蒸気透過性を有していることが好ましい。この場合、外装袋内の水分を外部に放出することができ、プラスチック製薬液容器の酸素透過度が定常状態になり易いからである。
外装袋の水蒸気透過度としては、酸素バリア性との兼ね合いもあるが、好ましくは、0.5〜30g/m・24h程度であることが好ましい。
【0051】
外装袋の形成材料としては、特に限定されないが、例えば、
・外装袋の内側面側をなす、ヒートシールが可能なプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン)からなる溶融接着層と、この溶融接着層よりも外装袋の外側面側に積層されたアルミニウム箔と、を有する多層フィルム;
・上記溶融接着層と、この溶着接着層における外装袋の外側面側表面に形成された、無機物(例えば、アルミニウムなど。)や無機酸化物(例えば、アルミナなど。)の蒸着膜とを含有している蒸着膜含有フィルム
などが挙げられる。
【0052】
上記無機酸化物の蒸着膜における無機酸化物としては、例えば、アルミナ(アルミニウム酸化物)、シリカ(ケイ素酸化物)、マグネシウム酸化物、チタン酸化物などが挙げられる。なかでも、蒸着膜の透明性の観点から、好ましくは、アルミナが挙げられる。
また、ある程度の水蒸気透過性を有する外装袋の形成材料としては、例えば、溶着接着層の外側面側に、ポリビニルアルコールやポリ塩化ビニリデンなどの、適度の酸素バリア性と水蒸気透過性とを有するプラスチック層が積層された多層フィルムが挙げられる。
【0053】
上記例示の外装袋の形成材料には、さらに、その外装袋の外側面側に、着色剤や紫外線吸収剤を含有するインクを用いた遮光印刷が施されたものであってもよく、また、外装袋の外側面側に、ポリエステルやポリオレフィンなどからなる保護フィルムが積層されたものであってもよい。
本発明の薬液容器収容体において、脱酸素剤としては、特に限定されず、種々の脱酸素剤が挙げられる。具体的には、例えば、水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄などの鉄化合物を有効成分とするもの、低分子フェノールと活性炭を用いたものなどが挙げられる。また、脱酸素剤の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の登録商標「エージレス」、日本化薬(株)製の商品名「モジュラン」、日本曹達(株)製の商品名「セキュール」、王子化工(株)製の登録商標「タモツ」などが挙げられる。
【0054】
また、脱酸素剤は、例えば、酸素透過度の高いプラスチックフィルム(例えば、ポリオレフィンなど)からなる袋に充填した状態で、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされた薬液容器とともに、上記外装袋内に収容させればよい。
本発明の薬液容器収容体およびその製造方法によれば、例えば、易酸化性物質を含む薬液であっても、長期にわたって安定して、酸化劣化させることなく保存することができる。しかも、薬液バッグの使用時において、薬液の酸化劣化を防止することができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
<プラスチック製薬液容器の作製>
プラスチック製薬液容器形成用プラスチック(多層フィルム)を構成する各成分は、次のとおりである。
・PE(1):エチレン・1−ブテン共重合体(密度0.940g/cm、水蒸気透過度7g/m・24h(25℃、90%RH、20μm)、商品名「ウルトゼックス(登録商標)4020B」、(株)プライムポリマー製)
・PE(2):エチレン・1−ブテン共重合体(密度0.920g/cm、商品名「ウルトゼックス(登録商標)2010」、(株)プライムポリマー製)45重量%と、エチレン・1−ブテン共重合体(密度0.885g/cm、商品名「タフマー(登録商標)A0585X」、(株)プライムポリマー製)50重量%と、ポリエチレンホモポリマー(密度0.965g/cm、商品名「ハイゼックス(登録商標)65150B」、(株)プライムポリマー製)5重量%との混合物
・EVOH(1):エチレン含有量27モル%、商品名「エバール(登録商標)L101」、(株)クラレ製)
・EVOH(2):エチレン含有量44モル%、商品名「エバール(登録商標)E105」、(株)クラレ製)
・COP:ノルボルネン系開環重合体水素添加物(吸水率0.01%未満、商品名「ゼオノア(登録商標)1020R」、日本ゼオン(株)製)
・PP:ポリプロピレン(密度0.900g/cm、商品名「B355」、(株)プライムポリマー製)
・NY:ナイロン−6(商品名「アミラン(登録商標)CM1017」、東レ(株)製)
・PE−PP:上記PE(1)85重量%と、ポリプロピレンホモポリマー(密度0.910g/cm、商品名「J103WA」、(株)プライムポリマー製)15重量%との混合物
・adherent PE:不飽和カルボン酸変性ポリエチレン(密度0.905g/cm、水蒸気透過度10g/m・24h(25℃、90%RH、20μm)、(株)プライムポリマー製の接着性ポリオレフィン、商品名「アドマー(登録商標)」)
・PBT:ポリブチレンテレフタレート(水蒸気透過度23g/m・24h(25℃、90%RH、10μm)、三菱エンジニアプラスチックス(株)製)
実施例1
表1に示す各層を、表1に記載した順で積層されるように、共押出成形して、図4に示す薬液バッグ(プラスチック製薬液容器)10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図1に示す7層構造のフィルムである。また、上記多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、4.1g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
【0056】
次いで、上記した多層フィルム2枚を重ね合わせて、常法に従って、周縁部11を熱シールすることにより、図4に示す薬液バッグ10を作製した。なお、口部材12には、上記PE(1)を用いて成形されたポート型の口部材を用いた。
実施例2
表1に示す各層を、表1に記載した順で積層されるように、共押出成形して、薬液バッグ10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図2に示す6層構造のフィルムである。
【0057】
次いで、上記した多層フィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図4に示す薬液バッグ10を作製した。
比較例1
表1に示す各層を、表1に記載した順で積層されるように、共押出成形して、薬液バッグ10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図1に示したものと同様の、7層構造のフィルムである。
【0058】
次いで、上記した多層フィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図4に示す薬液バッグ10を作製した。
比較例2
表1に示す各層を、表1に記載した順で積層されるように、共押出成形して、薬液バッグ10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、接着層を有しない5層構造のフィルムである。
【0059】
次いで、上記した多層フィルム2枚を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、図4に示す薬液バッグ10を作製した。
実施例1〜2および比較例1〜2について、薬液バッグ10の層構成と、薬液バッグ10を形成する多層フィルムの酸素透過度とを、表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
<プラスチック製薬液容器形成用プラスチックに対する評価試験>
実施例1で得られた多層フィルムについて、水蒸気飽和状態の窒素雰囲気(温度110℃、圧力2700hPa)中にて30分間高圧蒸気滅菌処理した後、多層フィルムの表面を約40℃の温風で1分間除水させた。蒸気滅菌処理後、この多層フィルムを、温度25℃、湿度60%RHの雰囲気下で3週間放置して、酸素透過度(温度25℃、湿度60%RH)の経時的変化を観察した。なお、酸素透過度の測定には、MOCON社製の商品名「OX−TRAN(登録商標)」を使用した。
【0062】
図5は、酸素透過度の経時的変化の測定結果を示すグラフである。図5に示すように、多層フィルムの酸素透過度(温度25℃、湿度60%RH)が定常状態に達するまでには、上記蒸気滅菌処理後、3日間程度を要した。
<薬液容器収容体の製造>
実施例1〜2および比較例1〜2で作製された薬液バッグ10に、それぞれ、注射用蒸留水300mLを充填し、密封した。なお、ヘッドスペースの容量は約30mLとし、その酸素濃度が10%となるように窒素置換(約50%)した。
【0063】
次いで、薬液バッグ10を、それぞれ滅菌釜中に載置して、水蒸気飽和状態の窒素雰囲気(温度110℃、圧力2700hPa)中にて30分間加熱することにより、高圧蒸気滅菌処理を施した。上記窒素雰囲気中の酸素濃度は、2%以下となるように調節した。
高圧蒸気滅菌処理後、約40℃の温風を1分間吹き当てて、除水させることにより、薬液バッグ10の外側表面から水分を取り除いた後、脱酸素剤(三菱ガス化学製;商品名「エージレス(登録商標)」)とともに、外装袋内に収容して、密封することにより、薬液容器収容体を得た。
【0064】
上記外装袋は、内側面側層がポリエチレン、中間層がポリビニルアルコール、外側面側が延伸ポリプロピレンからなる、3層構造の多層フィルムからなる袋体であって、温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度は、0.1cm/m・24h・atm以下であり、温度25℃、湿度90%RHでの水蒸気透過度は、0.5g/m・24hであった。また、この外装袋は、内部の空間の容積を約300〜500mLとし、窒素置換により、外装袋内の酸素濃度が2%以下となるように調整した。
【0065】
なお、高圧蒸気滅菌処理後、薬液バッグを外装袋内に収容し、密封するまでの時間は、1時間以内であった。
<薬液容器収容体に対する評価試験1>
上記実施例1〜2および比較例1〜2で得られた薬液容器収容体を、それぞれ、温度25℃、湿度60%RHの環境下に放置し、1日毎に、内容液中の酸素濃度を非破壊酸素濃度計(製品名「Fibox 3」、PreSens社製)で測定した。
【0066】
その結果、図6に示すように、実施例1、2および比較例1、2のいずれの薬液容器収容体についても、外装袋への収容、密封後、約7日を経過することにより、内容液中の酸素濃度を1ppm以下にまで低減させ得ることがわかった。
<薬液容器収容体に対する評価試験2>
上記評価試験1で使用した薬液容器収容体を、さらに、薬液容器収容体の製造から7日間放置して、内容液中の酸素濃度を0ppmにまで近づけた後、温度25℃、湿度60%RHの環境下で、薬液バッグ10を外装袋から取り出して、輸液バッグ用の吊り下げスタンドに架けた状態で、温度25℃、湿度60%RHの環境下で放置し、所定時間毎に、内容液中の酸素濃度を非破壊酸素濃度計(前出の「Fibox 3」)で測定した。
【0067】
その結果、図7に示すように、実施例1および2の薬液バッグでは、外装袋から取り出した後も、内容液中への酸素の侵入を極力抑えることができた。これに対し、比較例1および比較例2の薬液バッグでは、酸素の侵入が顕著であった。
<薬液容器収容体に対する評価試験3>
上記実施例1で得られた薬液容器収容体(評価試験1および2で使用したのとは別の検体)を、それぞれ温度25℃、湿度60%RHの環境下に、種々の日数放置したものを作製し、それぞれについて、薬液バッグを取り出し、フィルムを切り取って水分を払拭した後、その酸素透過度を、MOCON社製の商品名「OX−TRAN(登録商標)」を使用して測定した。その結果を図8に示す。
【0068】
図8に示すように、多層フィルムの酸素透過度(温度25℃、湿度60%RH)は、外装袋で包装されていたことにより、高圧蒸気滅菌処理後、3〜4日間程度は高い値を示していた。また、酸素透過度が定常状態に達するには、蒸気滅菌処理後、10日間程度を要することがわかった。よって、蒸気滅菌処理後、酸素透過度が定常状態に戻るまでの間に、薬液バッグ10内の酸素を脱酸素剤で十分に吸収することが可能であった。
<プラスチック製薬液容器の作製>
実施例3
上記例示のプラスチックを使用し、表2に示す各層を、表2に記載した順で積層されるように、共押出成形して、図4に示す薬液バッグ(プラスチック製薬液容器)10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図1に示す7層構造のフィルムである。また、上記多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、4.1g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
【0069】
次いで、上記した多層フィルム2枚を重ね合わせて、常法に従って、周縁部11を熱シールすることにより、図4に示す薬液バッグ10を作製した。なお、口部材12には、上記PE(1)を用いて成形されたポート型の口部材を用いた。
実施例4
表2に示す各層を、表2に記載した順で積層されるように、共押出成形して、薬液バッグ10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図1に示す7層構造のフィルムである。また、上記多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、7.0g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
【0070】
次いで、上記した多層フィルム2枚を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、図4に示す薬液バッグ10を作製した。
実施例5
表2に示す各層を、表2に記載した順で積層されるように、共押出成形して、薬液バッグ10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図2に示す6層構造のフィルムである。また、上記多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、5.1g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
【0071】
次いで、上記した多層フィルム2枚を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、図4に示す薬液バッグ10を作製した。
実施例6
表2に示す各層を、表2に記載した順で積層されるように、共押出成形して、薬液バッグ10を形成するための多層フィルムを得た。この多層フィルムは、図1に示す7層構造のフィルムである。また、上記多層フィルムの保護層5と接着層7とからなる積層体についての水蒸気透過度は、3.2g/m・24h(25℃、90%RH)であった。
【0072】
次いで、上記した多層フィルム2枚を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、図4に示す薬液バッグ10を作製した。
実施例3〜6について、薬液バッグ10の層構成と、薬液バッグ10を形成する多層フィルムの酸素透過度とを、表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
<薬液容器収容体の製造>
実施例3〜6で作製された薬液バッグ10に、それぞれ、注射用蒸留水300mLを充填し、密封した。なお、ヘッドスペースの容量は約30mLとし、その酸素濃度が10%となるように窒素置換(約50%)した。
次いで、薬液バッグ10を、それぞれ滅菌釜中に載置して、水蒸気飽和状態の窒素雰囲気(温度110℃、圧力2700hPa)中にて30分間加熱することにより、高圧蒸気滅菌処理を施した。上記窒素雰囲気中の酸素濃度は、2%以下となるように調節した。
【0075】
高圧蒸気滅菌処理後、約40℃の温風を1分間吹き当てて、除水させることにより、薬液バッグ10の外側表面から水分を取り除いた後、脱酸素剤(三菱ガス化学製;商品名「エージレス(登録商標)」)とともに、外装袋内に収容して、密封することにより、薬液容器収容体を得た。
上記外装袋は、実施例3、5および6においては、内側面側層がポリエチレン、中間層がポリビニルアルコール、外側面側が延伸ポリプロピレンからなる、3層構造の多層フィルムからなる袋体であって、温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、0.1cm/m・24h・atm以下であり、温度25℃、湿度90%RHでの水蒸気透過度が、0.5g/m・24hであるものを用いた。
【0076】
一方、実施例4においては、中間層がエチレン・ビニルアルコール共重合体、内外層がポリエチレンからなる、3層構造の多層フィルムからなる袋体であって、温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、0.5cm/m・24h・atmであり、温度25℃、湿度90%RHでの酸素透過度が、3cm/m・24h・atmであるものを用いた。
【0077】
また、上記外装袋は、内部の空間の容積を約300〜500mLとし、窒素置換により、外装袋内の酸素濃度が2%以下となるように調整した。
<薬液容器収容体に対する評価試験>
上記実施例3〜6で得られた薬液容器収容体について、上記評価試験1と同様の試験を行ったところ、いずれも、外装袋への収容、密封後、約7日を経過することにより、内容液中の酸素濃度を1ppm以下にまで低減させることができた。
【0078】
また、上記評価試験2と同様の試験を行ったところ、実施例3、4および6については、外装袋から取り出して96時間(4日)後において、内容液中の酸素濃度は0.5ppmを下回っていたことより、内容液中への酸素の侵入が極力抑えられていることがわかった。一方、実施例5については、外装袋から取り出して72時間(3日)後において、内容液中の酸素濃度は2ppmを下回っており、内容液中への酸素の侵入が、十分許容範囲であることがわかった。
【0079】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の薬液容器収容体およびその製造方法によれば、薬液容器に収容された薬液についての酸化劣化を、高度に抑制することができることから、本発明は、例えば、薬液容器、輸液容器などの医療用容器の用途において、とりわけ、易酸化性物質を含む薬液などを収容する医療用容器の用途において、好適である。
【符号の説明】
【0081】
1 シール層
4 中間層
5 保護層
10 プラスチック製薬液容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容、密封されかつ蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされたプラスチック製薬液容器と、脱酸素剤と、前記プラスチック製薬液容器および前記脱酸素剤を収容、密封するための、酸素バリア性を有する外装袋と、を備え、
前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、200cm/m・24h・atm以上であり、かつ、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、100cm/m・24h・atm以下であり、
前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックが、多層フィルムであって、前記プラスチック製薬液容器の内側面側にシール層を有し、前記プラスチック製薬液容器の外側面側に保護層を有し、前記シール層と前記保護層との間に中間層を有していて、
前記中間層が、前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後に相対的に高い酸素透過性を示し、定常状態において相対的に低い酸素透過性を示す材質からなることを特徴とする、薬液容器収容体。
【請求項2】
前記蒸気滅菌処理が、温度100〜121℃および水蒸気飽和状態の不活性ガス雰囲気下で、前記プラスチック製薬液容器を10〜60分間加熱する処理であることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項3】
前記シール層がポリオレフィン系プラスチックからなり、前記中間層がポリオール系プラスチックからなることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項4】
前記中間層を形成するポリオール系プラスチックが、エチレン含有量が10〜45モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする、請求項3に記載の薬液容器収容体。
【請求項5】
前記多層フィルムのうち、前記中間層よりも前記プラスチック製薬液容器の外側面側に設けられる層全体の水蒸気透過度が、温度25℃、湿度90%RHにおいて、1〜50g/m・24hであることを特徴とする、請求項3に記載の薬液容器収容体。
【請求項6】
前記多層フィルムが、前記シール層と、前記中間層との間に、さらに低吸水性プラスチックからなる低吸水性層を有していることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項7】
前記低吸水性プラスチックが、ポリ環状オレフィンであることを特徴とする、請求項6に記載の薬液容器収容体。
【請求項8】
前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、500〜1000cm/m・24h・atmであることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項9】
前記プラスチック製薬液容器を形成するプラスチックは、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が、0.5〜70cm/m・24h・atmであることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項10】
前記プラスチック製薬液容器が、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後、酸素透過度が定常状態になるまでに少なくとも2日要するプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項11】
前記プラスチック製薬液容器に収容、密封される薬液が、易酸化性物質を含む薬液であることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項12】
前記外装袋は、温度25℃、湿度90%RHにおける水蒸気透過度が、0.5〜30g/m・24hであることを特徴とする、請求項1に記載の薬液容器収容体。
【請求項13】
その内側面側にシール層を有し、その外側面側に保護層を有し、前記シール層と前記保護層との間に中間層を有する多層フィルムからなり、蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理がされてから12時間以内における温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が200cm/m・24h・atm以上であり、かつ、酸素透過度が定常状態であるときの温度25℃、湿度60%RHでの酸素透過度が100cm/m・24h・atm以下であるプラスチックで形成され、前記中間層が前記蒸気滅菌処理または前記熱水滅菌処理後に相対的に高い酸素透過性を示し、定常状態において相対的に低い酸素透過性を示す材質からなるプラスチック製薬液容器に、薬液を収容して密封した後、このプラスチック製薬液容器に蒸気滅菌処理または熱水滅菌処理をし、次いで、蒸気滅菌処理後または熱水滅菌処理後のプラスチック製薬液容器と、脱酸素剤とを、酸素バリア性を有する外装袋に収容して、密封することを特徴とする、薬液容器収容体の製造方法。
【請求項14】
前記蒸気滅菌処理が、温度100〜121℃および水蒸気飽和状態の不活性ガス雰囲気下で、前記プラスチック製薬液容器を10〜60分間加熱する処理であることを特徴とする、請求項13に記載の薬液容器収容体の製造方法。
【請求項15】
前記外装袋は、温度25℃、湿度90%RHにおける水蒸気透過度が、0.5〜30g/m・24hであることを特徴とする、請求項13に記載の薬液容器収容体の製造方法。
【請求項16】
前記プラスチック製薬液容器と、前記脱酸素剤とを、前記外装袋に収容して、密封する前に、前記プラスチック製薬液容器と前記外装袋との間の空間を不活性ガスで置換することを特徴とする、請求項13に記載の薬液容器収容体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−212505(P2011−212505A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172243(P2011−172243)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2007−514626(P2007−514626)の分割
【原出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】