説明

薬液注入用チューブポンプ

【課題】本発明の目的は、取扱いが簡便で安全な、小型で携帯性に優れた薬液注入用チューブポンプを提供する。
【解決手段】 円筒室が形成されたポンプハウジング10と、前記円筒室の内周面に沿わせてリング状に配置され、一端に薬液の流入口、他端に薬液の流出口を有した薬液輸送用チューブ3と、薬液輸送用チューブ3のリング状内側に設けられ、チューブ3を前記内周面に対して圧迫するリング状加圧部材4と、リング状加圧部材4を前記内周面に沿って偏芯運動させる偏芯ロータ5と、偏芯ロータ5を回転するためのモータ7と、を備えた薬液注入用チューブポンプであって、薬液貯蔵タンク2、薬液輸送用チューブ3、リング状加圧部材4、及び偏芯ロータ5を収納した薬液カートリッジ1と、モータ7を収納したポンプ駆動カートリッジ6と、を着脱自在に構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に薬液の注入を行うための薬液注入用ポンプに係り、特に取扱いが簡便で安全な、小型で携帯性に優れた薬液注入用チューブポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を体内に持続的に注入するためには、ポンプ、薬液貯蔵タンク、薬液輸送用チューブ、注射器、ポンプを駆動するためのモータ及びモータ制御回路を組み合わせた薬液注入ポンプシステムが使われている。(特許文献1,2)
【0003】
この薬液注入ポンプシステムにおいては、薬液貯蔵タンクにチューブポンプを結合し、チューブポンプから薬液輸送用チューブを経て注射針に薬液貯蔵タンクを結合する作業と、更にモータ制御回路に薬液の注入量、注入持続時間等の諸情報を入力する必要がある。このように、薬液を体内に持続的に注入するには多くの煩雑な作業と、それに伴ってチューブの接続不良による液漏れ、空気混入、雑菌混入等の危険が生じるので、この作業は主として医院において習熟した看護士が担当していた。
【0004】
近年、薬液を体内に持続的に注入する必要がある患者、例えば、糖尿病患者のインスリン注射、痛み止めのモルヒネ注射等が必要な患者の増加に伴い、薬液注入用ポンプシステムを常時携帯して生活の質を向上させながらの在宅医療が求められるようになり、これが為に、作業の簡便化、チューブ結合にかかわる安全性が強く求められ、加えて、携帯使用にともなう薬液注入ポンプシステムの小型化により、薬液貯蔵タンク、薬液輸送チューブ、注射針等を頻繁に廃棄する必要が発生した。
【0005】
更に、インスリン注入の場合は、インスリンを間欠的に注入する必要があるが、注射針を挿入したままで持続すると、注射針の中で血液凝固が起こるので注射を停止してからもごく微量のインスリンを持続的注入する方法が望ましいとされている。しかし、継続的にポンプを駆動させると、電池の消耗が激しく携帯用として使用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−187136号公報
【特許文献2】特開2006−280391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの諸問題を解決する方法として、チューブポンプ、薬液貯蔵タンク、薬液輸送用チューブ、注射針等を予め結合して収納した薬液カートリッジと、ポンプ駆動用モータ、モータ制御回路、情報伝達回路、電源等を収納したポンプ駆動カートリッジに分割して、各々を着脱自在に構成することによって、簡便で且つ安全な薬液注入ポンプシステムを提供することができる。
【0008】
なお、薬液カートリッジに収納するチューブポンプは、チューブを圧迫するリング部材と、リング部材を偏芯運動させる偏芯ロータで構成し、偏芯ロータを回転させるモータはポンプ駆動カートリッジに収納し、薬液カートリッジのみを使い捨てにすることによって、薬液注入ポンプシステムを安価に提供することができる。
【0009】
更に、血液凝固対策としては、前記リング部材に2本のチューブを装着し、1本は目的の薬液注入に使用し、他の1本は、一端をチューブを圧止させる作用を行うピンチバルブを介して血液凝固防止剤(例えば商品名ヘパリン)を入れた貯蔵タンクに接続し、他端は注射針に結合する。そして、チューブポンプを停止させる直前に、情報伝達回路を通してピンチバルブを開放させることによって、適量の血液凝固防止剤を注射針内に混入させて、ポンプ駆動停止間においても注射針先端における血液凝固を防止することができる。なおピンチバルブは構造簡単で安価であるから薬液カートリッジ内に収納しておいて使い捨てにすることができる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、取扱いが簡便で安全な、小型で携帯性に優れた薬液注入用チューブポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の薬液注入用チューブポンプは、円筒室が形成されたポンプハウジングと、前記円筒室の内周面に沿わせてリング状に配置され、一端に薬液の流入口、他端に薬液の流出口を有した薬液輸送用チューブと、前記薬液輸送用チューブのリング状内側に設けられ、該チューブを前記内周面に対して圧迫するリング状加圧部材と、前記リング状加圧部材を前記内周面に沿って偏芯運動させる偏芯ロータと、前記偏芯ロータを回転するためのモータと、を備え、前記リング状加圧部材の偏芯運動によって前記薬液輸送用チューブの圧迫部分を一方向に移動させてチューブ内の薬液を送出する薬液注入用チューブポンプであって、
薬液を貯留する薬液貯蔵タンク、前記薬液輸送用チューブ、前記リング状加圧部材、及び前記偏芯ロータを予め結合して収納した薬液カートリッジと、前記モータを収納したポンプ駆動カートリッジとを着脱自在に構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項1に記載の薬液注入用チューブポンプであって、前記薬液貯蔵タンク、前記薬液輸送用チューブ、及び前記リング状加圧部材を予め結合して収納した薬液カートリッジと、前記偏芯ロータ及び前記モータを収納したポンプ駆動カートリッジとを着脱自在に構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項1乃至請求項2に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記薬液カートリッジに注射針を一体に構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項1乃至請求項3に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記ポンプ駆動カートリッジは、前記モータの駆動を制御するモータ制御回路を備え、
薬液注入量や薬液注入時間等の設定値に応じて前記モータの駆動により回転する前記ロータの回転速度および回転時間を適正値に調整する機能を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項4に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記薬液カートリッジに、血液の凝固を防止する血液凝固防止剤を貯留する血液凝固防止剤貯蔵タンクと、チューブを押し挟んで流路を開閉する作用を行うピンチバルブと、一端に血液凝固防止剤の流入口を有し前記ピンチバルブを介して他端に血液凝固防止剤の流出口を有した第2のチューブと、前記第2のチューブのリング状内側に設けられ、該チューブを前記内周面に対して圧迫する第2のリング状加圧部材と、前記第2のリング状加圧部材を前記内周面に沿って偏芯運動させる第2の偏芯ロータと、を予め結合して収納するとともに、
前記ポンプ駆動カートリッジは、前記ピンチバルブの作用を制御するピンチバルブ制御回路を備え、
前記ピンチバルブ制御回路は、前記モータ制御回路から受取った前記モータの駆動に関する情報に基づき、前記モータの停止直前に前記ピンチバルブの流路を所定期間開放するように制御して注射針内に適量の血液凝固防止剤を混入させることで、前記モータの停止期間中における注射針先端の血液凝固を防止する機能を有することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項4乃至請求項5に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記ポンプ駆動カートリッジは、注射針先端の血液凝固を防止するために薬液を所定間隔で間欠的に注入するように前記モータの駆動を制御する機能と、注射針内の血液凝固を防止するために微少量の薬液を持続的に注入するように前記モータの駆動を制御する機能と、を有することを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項4乃至請求項6に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記薬液カートリッジは、薬液の種類や容量等の薬液情報を有するバーコードまたはICタグを備え、前記ポンプ駆動カートリッジは、前記バーコードまたはICタグの薬液情報を読み取るリーダ部を備え、
前記リーダ部で読み取った薬液情報に基づき、薬液注入量や薬液注入時間等の設定を自動的に行う自動設定機能を有することを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項4乃至請求項7に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記薬液カートリッジは、薬液の種類や容量等の薬液情報を有するバーコードまたはICタグを備え、前記ポンプ駆動カートリッジは、前記バーコードまたはICタグの薬液情報を読み取るリーダ部を備え、
前記リーダ部で読み取った薬液情報に基づき、薬液注入量や薬液注入時間等の設定値について許容範囲外の設定をできないように制御するセーフティー機能を有することを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の薬液注入用チューブポンプは、請求項4乃至請求項8に記載の薬液注入用チューブポンプにおいて、前記ポンプ駆動カートリッジは、情報処理機器と接続するための通信インタフェース部を備え、
前記通信インタフェース部を介して、薬液の種類や容量等の薬液情報、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間等の管理情報を前記情報処理機器と送受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、薬液貯蔵タンク、薬液輸送用チューブ、リング状加圧部材、及び偏芯ロータを一体に構成したことで、薬液貯蔵タンクと薬液輸送用チューブとを接合する作業や、薬液輸送用チューブをポンプハウジングに取り付ける作業が不要となるため、接合作業のミスが無くなり操作が容易となるとともに、接合作業のときに雑菌が混入する可能性も無くなる。特に在宅医療において容易に安全かつ衛生的に使用できるようになる。さらに、薬液貯蔵タンク、薬液輸送用チューブ、リング状加圧部材、及び偏芯ロータを収納した薬液カートリッジと、モータを収納したポンプ駆動カートリッジとを着脱自在に構成することで、薬液注入用チューブポンプの取扱いが容易になる。例えば薬液貯蔵タンクの薬液が無くなったときに、新しい薬液カートリッジに取り替えることが容易となる。この場合、薬液カートリッジを使い捨てにすることもできる。
【0021】
請求項2の発明によれば、上記で述べた請求項1の発明の効果に加え、薬液カートリッジは、偏芯ロータを備えていないため、薬液カートリッジをより安価に製造することが可能となる。
【0022】
請求項3の発明によれば、薬液カートリッジに注射針を一体に構成することで、薬液輸送用チューブと注射器とを接合する作業が不要となるため、接合作業のミスが無くなり操作が容易となるとともに、接合作業のときに雑菌が混入する可能性も無くなる。特に在宅医療において容易に安全かつ衛生的に使用できるようになる。また薬液貯蔵タンク、薬液輸送用チューブ、リング状加圧部材、及び注射針が収納された薬液カートリッジを一括して消毒することが可能となり、雑菌が混入する可能性を無くし衛生面の向上が期待できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、モータ制御回路により偏芯ロータの回転速度および回転時間を適正値に調整するため、薬液注入量や薬液注入時間等の設定値に応じた薬液の流量精度を確保することが可能になる。
【0024】
請求項5の発明によれば、モータの停止直前に自動的に注射針内に適量の血液凝固防止剤を混入させることで、注射針先端の血液凝固を防止することが可能になる。さらに必要最低限の血液凝固防止剤を混入させるように制御することで人体への悪影響や副作用などを軽減することが可能となる。
【0025】
請求項6の発明によれば、モータの駆動を制御することで、注射針先端の血液凝固を防止することが可能になる。さらに必要最低限の血液凝固防止剤を混入させるように制御することで人体への悪影響や副作用などを軽減することが可能となる。また、薬液を所定間隔で間欠的に注入するようにモータの駆動を制御することで電池の消耗を軽減する効果がある。
【0026】
請求項7の発明によれば、薬液注入量や薬液注入時間等の設定を自動的に行うため、ポンプ駆動カートリッジの操作部で行う設定作業が軽減され、容易に適正な薬液の注入を行うことが可能になる。
【0027】
請求項8の発明によれば、手動で薬液注入量や薬液注入時間等を設定するときに、薬液注入量や薬液注入時間等の設定値について許容範囲外の設定をできないように制御するため、不適正な薬液の注入を防止することが可能になる。
【0028】
請求項9の発明によれば、通信インタフェース部を介して、薬液の送液に関する管理情報を情報処理機器と送受信することで、薬液の種類や容量等の薬液情報、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間等の管理情報を情報処理機器の画面で容易に確認することが可能になる。また通信インタフェース部として例えば無線通信部を備えることで、患者から離れた場所で(遠隔で)例えば医療関係者がその管理情報を容易に確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薬液注入用チューブポンプの構成を示した模式図(上段:B−B´矢視断面図、中段:A−A´矢視断面図、下段:C−C´矢視断面図)である。
【図2】本発明の第3実施形態に係る薬液注入用チューブポンプの構成を示した模式図(上段:B−B´矢視断面図、下段:D−D´矢視断面図)である。
【図3】本発明の第5実施形態に係る薬液注入用チューブポンプの構成を示した模式図である。
【図4】本発明の第6実施形態に係る薬液注入用チューブポンプの構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施形態により限定されるものではない。
【0031】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について、図1を用いて説明する。
【0032】
図1に示すように、薬液注入用チューブポンプ11は、円筒室が形成されたポンプハウジングと、前記円筒室の内周面に沿わせてリング状に配置され、一端に薬液の流入口、他端に薬液の流出口を有した薬液輸送用チューブ3と、薬液輸送用チューブ3のリング状内側に設けられ、該チューブを前記内周面に対して圧迫するリング状加圧部材4と、リング状加圧部材4を前記内周面に沿って偏芯運動させる偏芯ロータ5と、偏芯ロータ5を回転するためのモータ7と、モータ7の駆動を制御するモータ制御回路9と、モータ7及びモータ制御回路9を駆動するための電池8と、を備えている。
【0033】
さらに薬液注入用チューブポンプ11は、薬液を貯留する薬液貯蔵タンク2、薬液輸送用チューブ3、リング状加圧部材4、及び偏芯ロータ5を予め結合して収納した薬液カートリッジ1と、モータ7、電池8、及びモータ制御回路9を収納したポンプ駆動カートリッジ6とを着脱自在に構成され、ポンプハウジングで薬液カートリッジ1とポンプ駆動カートリッジ6とが係合するように構成されている。
【0034】
図1においてモータ7を駆動させることにより、その回転が偏芯ロータ5に伝動され、偏芯ロータ5の回転によりリング状加圧部材4が偏芯運動する。この偏芯運動によって、薬液輸送用チューブ3の圧迫部分が一方向に移動し、薬液輸送用チューブ3内の流体が送出される仕組みになっている。
【0035】
薬液輸送用チューブ3は、送出する流体に応じて選定された可撓性材料、例えばゴムまたは合成樹脂から成り、前記円筒室の内周面に沿わせてリング状に配置されている。薬液輸送用チューブ3の流入口に薬液貯蔵タンク2を接合し、薬液輸送用チューブ3の流出口に例えば注射針を接合することで、体内に薬液を注入する点滴の用途に用いることができる。
【0036】
リング状加圧部材4は、摩擦係数が小さい材料を、平面視形状が円環で一定厚のリング状に形成したものであり、例えばフッ素樹脂系の合成樹脂成形品である。偏芯ロータ5は、その外周面がリング状加圧部材4に摺接して回転し、リング状加圧部材4を内周面に沿って偏芯運動させるように構成される。リング状加圧部材4は、薬液輸送用チューブ3に固定されており、偏芯運動により薬液輸送用チューブ3の一部を内周面に対して圧迫する。したがって偏芯ロータ5がリング状加圧部材4に接する部分では、薬液輸送用チューブ3が圧迫され、薬液輸送用チューブ3内の流路が閉塞される。また偏芯ロータ5がリング状加圧部材4に接しない部分には隙間ができ、薬液輸送用チューブ3が圧迫されないため、薬液輸送用チューブ3内の流路が確保される。
【0037】
モータ7は、小型の直流モータであり電池8により給電される。モータ7の駆動を制御するモータ制御回路9は、薬液注入量や薬液注入時間等の設定値に応じてモータ7の駆動により回転する偏芯ロータ5の回転速度および回転時間を適正値に調整するように制御して、薬液の流量精度を確保する。
【0038】
また図1には図示していないが、薬液カートリッジ1またはポンプ駆動カートリッジ6に、薬液の送液に関する管理情報を表示する表示部を備えるようにしてもよい。この管理情報として、例えば薬液の種類や容量等の薬液情報、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数/残時間等の情報があり、この管理情報を前記表示部で確認し薬液注入を行うことが可能になる。
【0039】
また上述した薬液注入量や薬液注入時間等の設定値については、薬液注入前に手動で設定する場合と、自動で設定する場合とがある。自動で設定する場合については後述する。薬液注入量や薬液注入時間等の設定を手動で行う場合は、図1には図示していないが、ポンプ駆動カートリッジ6の操作部で、薬液の種類や容量等の薬液情報に基づき、例えば、その薬液情報の項目や患者に関する項目(例えば、性別、年齢、体重、既往症、使用中の薬、医者の処方箋等)を手動で設定することになる。また患者に関する項目の設定について、その設定がされない場合に、患者に関する項目としてデフォルト値(例えば、大人の標準値等)を用いることもできる。以上の設定が終わった後に手動でモータ7を駆動する操作を行い、薬液注入を開始する。
【0040】
上述したように、薬液貯蔵タンク2、薬液輸送用チューブ3、リング状加圧部材4、及び偏芯ロータ5を一体に構成したことで、薬液貯蔵タンク2と薬液輸送用チューブ3とを接合する作業や、薬液輸送用チューブ3をポンプハウジング10に取り付ける作業が不要となるため、接合作業のミスが無くなり操作が容易となるとともに、接合作業のときに雑菌が混入する可能性も無くなる。特に在宅医療において容易に安全かつ衛生的に使用することができるようになる。
【0041】
さらに、薬液カートリッジ1とポンプ駆動カートリッジ6とが着脱自在に構成されることで、薬液注入用チューブポンプ11の取扱いが容易になる。例えば薬液貯蔵タンク2の薬液が無くなったときに、新しい薬液カートリッジ1に取り替えることが容易となる。この場合、薬液カートリッジ1を使い捨てにすることもできる。
【0042】
さらに、薬液カートリッジ1に注射針を一体に構成することも可能である。この場合、薬液輸送用チューブ3と注射器とを接合する作業が不要となるため、接合作業のミスが無くなり操作が容易となるとともに、接合作業のときに雑菌が混入する可能性も無くなる。特に在宅医療において容易に安全かつ衛生的に使用できるようになる。また薬液貯蔵タンク2、薬液輸送用チューブ3、リング状加圧部材4、及び注射針が収納された薬液カートリッジ1を一括して消毒することが可能となり、雑菌が混入する可能性を無くし衛生面の向上が期待できる。
【0043】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について説明する。第1実施形態では、偏芯ロータ5が薬液カートリッジ1に収納されていたが、第2実施形態では、偏芯ロータ5がポンプ駆動カートリッジ6に収納されており、この点を除いては第1実施形態と構成は同じである。
【0044】
この場合、薬液カートリッジ1は、偏芯ロータ5を備えていないため、薬液カートリッジ1をより安価に製造することが可能となる。
【0045】
3.第3実施形態
本発明の第3実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について、図2を用いて説明する。第3実施形態の基本構成は、第1または第2実施形態と同じであり、相違点について説明する。
【0046】
図2に示すように、薬液注入用チューブポンプ11の薬液カートリッジ1には、血液の凝固を防止する血液凝固防止剤を貯留する血液凝固防止剤貯蔵タンク2aと、チューブを押し挟んで流路を開閉する作用を行うピンチバルブ10と、一端に血液凝固防止剤の流入口を有しピンチバルブ10を介して他端に血液凝固防止剤の流出口を有した第2のチューブ3aと、第2のチューブ3aのリング状内側に設けられ、該チューブを前記内周面に対して圧迫する第2のリング状加圧部材4aと、第2のリング状加圧部材を前記内周面に沿って偏芯運動させる第2の偏芯ロータ5aと、が予め結合して収納されている。
【0047】
図2においてモータ7を駆動させることにより、その回転が第2の偏芯ロータ5aに伝動され、第2の偏芯ロータ5aの回転により第2のリング状加圧部材4aが偏芯運動する。この偏芯運動によって、第2のチューブ3aの圧迫部分が一方向に移動し、第2のチューブ3a内の流体(血液凝固防止剤)が送出される仕組みになっている。
【0048】
したがって、上述した第1/第2実施形態で説明した通り、モータ7を駆動させることにより、薬液輸送用チューブ3内の流体(薬液)が送出されるとともに、第2のチューブ3a内の流体(血液凝固防止剤)が送出されることになる。そして薬液輸送用チューブ3の流出口に例えば注射針を接合する場合、その注射針に第2のチューブ3aの流出口も接合するように構成することで、体内に薬液を注入するときに適量の血液凝固防止剤を混入させることが可能になる。
【0049】
またポンプ駆動カートリッジ6は、ピンチバルブ10の作用を制御するピンチバルブ制御回路12を備えている。ピンチバルブ制御回路12は電池8により給電される。ピンチバルブ制御回路12は、モータ制御回路9から受取ったモータ7の駆動に関する情報に基づき、モータ7の停止直前にピンチバルブ10の流路を所定期間開放するように制御して注射針内に適量の血液凝固防止剤を混入させることが可能となる。すなわち、ピンチバルブ10が閉まっているときには、血液凝固防止剤は流出されず、ピンチバルブ制御回路12によりピンチバルブ10の流路を開放する制御を行うことで、血液凝固防止剤を必要な間隔、時間で混入させることが可能となる。
【0050】
以上から、薬液注入用チューブポンプ11は、モータの停止期間中における注射針先端の血液凝固を防止する機能を有している。また図2には図示していながポンプ駆動カートリッジ6の操作部で、血液凝固防止剤を混入させる間隔や時間を予め設定することができる。さらに上記の設定において、必要最低限の血液凝固防止剤を混入させるようにすることで人体への悪影響や副作用などを軽減することが可能となる。
【0051】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について説明する。第4実施形態の基本構成は、第1または第2実施形態と同じであり、相違点について説明する。
【0052】
上述した第3実施形態では、注射針先端の血液凝固を防止する機能として血液凝固防止剤を用いる場合について説明したが、第3実施形態では、血液凝固防止剤を使用せずに注射針先端の血液凝固防止を実現する機能について説明する。
【0053】
第1の機能は、ポンプ駆動カートリッジ6が、注射針先端の血液凝固を防止するために薬液を所定間隔で間欠的に注入するようにモータ7の駆動を制御する。すなわち、所定間隔(例えば、1〜2分間隔)で間欠的に注入するようにすることで、注射針先端の血液凝固防止を実現することが可能になる。さらに、薬液を所定間隔で間欠的に注入するようにモータの駆動を制御することで電池の消耗を軽減する効果がある。
【0054】
第2の機能は、ポンプ駆動カートリッジ6が、注射針内の血液凝固を防止するために微少量の薬液を持続的に注入するようにモータ7の駆動を制御する。すなわち、連続して微少量の薬液を注入するようにすることで、注射針先端の血液凝固防止を実現することが可能になる。
【0055】
また図1には図示していながポンプ駆動カートリッジ6の操作部で、上述した「所定間隔」および「微少量」の設定値を予め設定することができる。さらに上記の設定において、必要最低限の血液凝固防止剤を混入させるようにすることで人体への悪影響や副作用などを軽減することが可能となる。
【0056】
5.第5実施形態
本発明の第5実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について、図3を用いて説明する。
【0057】
図3に示すように、薬液注入用チューブポンプ11は、上述した第1実施形態乃至第4実施形態に示したポンプ駆動カートリッジ6に情報処理機器14と接続するための通信インタフェース部としてUSB(Universal Serial Bus)コネクタ部13を備えた構成となっている。
【0058】
薬液注入用チューブポンプ11は、USBコネクタ部13を介して、薬液の送液に関する管理情報を情報処理機器14と送受信する。この管理情報には、例えば、薬液の種類や容量等の薬液情報、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間の情報が含まれる。
【0059】
このような構成にすることで、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間等の管理情報を、情報処理機器14の画面で容易に確認することが可能になる。
【0060】
6.第6実施形態
本発明の第6実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について、図4を用いて説明する。
【0061】
図4に示すように、薬液注入用チューブポンプ11は、上述した第1実施形態乃至第5実施形態に示したポンプ駆動カートリッジ6に情報処理機器14と接続するための通信インタフェース部として無線通信部15を備えた構成となっている。
【0062】
薬液注入用チューブポンプ11は、無線通信部15を介して、薬液の送液に関する管理情報を前記情報処理機器14と送受信する。この管理情報には、例えば、薬液の種類や容量等の薬液情報、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間の情報が含まれる。
【0063】
このような構成にすることで、薬液の流出量、薬液液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間等の管理情報を、情報処理機器14の画面で容易に確認することが可能になる。特に患者から離れた場所で(遠隔で)例えば医療関係者がその管理情報を容易に確認することが可能になる。
【0064】
7.第7実施形態
本発明の第7実施形態に係る薬液注入用チューブポンプ11の構成について説明する。第1実施形態では、薬液注入量や薬液注入時間等の設定を手動で行う場合について説明したが、ここでは自動で設定する場合について説明する。
【0065】
図示していないが、薬液カートリッジ1は、薬液の種類や容量等の薬液情報を有するバーコードまたはICタグを備えている。ここで、バーコードとして一次元バーコードや二次元バーコード等があり、またICタグとしてRFID(Radio Frequency IDentification)やICチップ等がある。
【0066】
またポンプ駆動カートリッジ6は、前記バーコードまたはICタグの薬液情報を読み取るリーダ部を備えている。このリーダ部は、薬液カートリッジ1に備えられた前記バーコードまたはICタグから薬液情報を光学的または電気的に読み取る機能を有している。ポンプ駆動カートリッジ6は、薬液カートリッジ1が装着されたときに、その薬液情報を自動的に読み取るようにしてもよいし、あるいは薬液カートリッジ1が装着された後に、手動でリーダ部を起動するようにしてもよい。
【0067】
ポンプ駆動カートリッジ6は、前記リーダ部で読み取った薬液情報に基づき、薬液注入量や薬液注入時間等の設定を自動的に行う自動設定機能を有している。この自動設定が終わった後に手動でモータ7を駆動する操作を行い、薬液注入を開始することになる。また自動設定機能を使用するか否かはオプション選択できるようにしてあり、選択した場合は、薬液注入量や薬液注入時間等の設定について手動で行う設定作業が軽減され、容易に適正な薬液の注入を行うことが可能になる。
【0068】
また自動設定機能では、前記リーダ部で読み取った薬液情報の他に患者に関する情報(例えば、性別、年齢、体重、既往症、使用中の薬、医者の処方箋等)に基づき、薬液注入量や薬液注入時間等の設定を自動的に行うようにすることも可能である。この患者に関する情報の設定については、予めポンプ駆動カートリッジ6の操作部で設定する方法や、ポンプ駆動カートリッジ6が通信インタフェース部を備えている場合にポンプ駆動カートリッジ6と通信可能な情報処理機器13で設定する方法がある。また患者に関する情報が設定されない場合は、患者に関する情報としてデフォルト値(例えば、大人の標準値等)を設定する方法がある。
【0069】
さらに自動設定機能では、前記リーダ部で読み取った薬液情報から、薬液の使用期限が過ぎている等の不適正な薬液であることを検出すると、例えばアラーム等で警告し、モータ7を駆動する操作が行われてもモータ7を駆動させないように制御することも可能である。
【0070】
また自動設定機能を選択しなかった場合、薬液注入量や薬液注入時間等を手動で設定することになり、薬液の種類や容量等の薬液情報に基づき、例えばポンプ駆動カートリッジ6の操作部で必要な項目を手動で設定することになる。この場合、前記リーダ部で読み取った薬液情報に基づき、手動で設定される薬液注入量や薬液注入時間等の設定値が許容範囲外の設定とならないように制御するセーフティー機能を有している。
【0071】
このセーフティー機能は、手動で設定された薬液注入量や薬液注入時間等の設定値が許容範囲外である場合に、例えばアラーム等で警告し、適正な設定値を再設定するように促すようにする。適正な設定値が再設定された後に、モータ7を駆動する操作を行い、薬液注入を開始することになる。したがってセーフティー機能を使用することにより、不適正な薬液の注入を防止することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、医療用機器として例えば点滴を行う場合に体内に薬液等の輸液の注入を行うための薬液注入用チューブポンプに適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 薬液カートリッジ
2 薬液貯蔵タンク
2a 血液凝固防止剤貯蔵タンク
3 薬液輸送用チューブ
3a 第2の薬液輸送用チューブ
4 リング状加圧部材
4a 第2のリング状加圧部材
5 偏芯ロータ
5a 第2の偏芯ロータ
6 ポンプ駆動カートリッジ
7 モータ
8 電池
9 モータ制御回路
10 ピンチバルブ
11 薬液注入用チューブポンプ(薬液カートリッジ1とポンプ駆動カートリッジ6とを合体したもの)
12 ピンチバルブ制御回路
13 USBコネクタ部
14 情報処理機器
15 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒室が形成されたポンプハウジングと、前記円筒室の内周面に沿わせてリング状に配置され、一端に薬液の流入口、他端に薬液の流出口を有した薬液輸送用チューブと、前記薬液輸送用チューブのリング状内側に設けられ、該チューブを前記内周面に対して圧迫するリング状加圧部材と、前記リング状加圧部材を前記内周面に沿って偏芯運動させる偏芯ロータと、前記偏芯ロータを回転するためのモータと、を備え、前記リング状加圧部材の偏芯運動によって前記薬液輸送用チューブの圧迫部分を一方向に移動させてチューブ内の薬液を送出する薬液注入用チューブポンプであって、
薬液を貯留する薬液貯蔵タンク、前記薬液輸送用チューブ、前記リング状加圧部材、及び前記偏芯ロータを予め結合して収納した薬液カートリッジと、前記モータを収納したポンプ駆動カートリッジとを着脱自在に構成したことを特徴とする薬液注入用チューブポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液注入用チューブポンプであって、
前記薬液貯蔵タンク、前記薬液輸送用チューブ、及び前記リング状加圧部材を予め結合して収納した薬液カートリッジと、前記偏芯ロータ及び前記モータを収納したポンプ駆動カートリッジとを着脱自在に構成したことを特徴とする薬液注入用チューブポンプ。
【請求項3】
前記薬液カートリッジに注射針を一体に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の薬液注入用チューブポンプ。
【請求項4】
前記ポンプ駆動カートリッジは、前記モータの駆動を制御するモータ制御回路を備え、
薬液注入量や薬液注入時間等の設定値に応じて前記モータの駆動により回転する前記ロータの回転速度および回転時間を適正値に調整する機能を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の薬液注入用チューブポンプ。
【請求項5】
前記薬液カートリッジに、血液の凝固を防止する血液凝固防止剤を貯留する血液凝固防止剤貯蔵タンクと、チューブを押し挟んで流路を開閉する作用を行うピンチバルブと、一端に血液凝固防止剤の流入口を有し前記ピンチバルブを介して他端に血液凝固防止剤の流出口を有した第2のチューブと、前記第2のチューブのリング状内側に設けられ、該チューブを前記内周面に対して圧迫する第2のリング状加圧部材と、前記第2のリング状加圧部材を前記内周面に沿って偏芯運動させる第2の偏芯ロータと、を予め結合して収納するとともに、
前記ポンプ駆動カートリッジは、前記ピンチバルブの作用を制御するピンチバルブ制御回路を備え、
前記ピンチバルブ制御回路は、前記モータ制御回路から受取った前記モータの駆動に関する情報に基づき、前記モータの停止直前に前記ピンチバルブの流路を所定期間開放するように制御して注射針内に適量の血液凝固防止剤を混入させることで、前記モータの停止期間中における注射針先端の血液凝固を防止する機能を有することを特徴とする請求項4に記載の薬液注入用チューブポンプ。
【請求項6】
前記ポンプ駆動カートリッジは、注射針先端の血液凝固を防止するために薬液を所定間隔で間欠的に注入するように前記モータの駆動を制御する機能と、注射針内の血液凝固を防止するために微少量の薬液を持続的に注入するように前記モータの駆動を制御する機能と、を有することを特徴とする請求項4乃至請求項5に記載の薬液注入用チューブポンプ。
【請求項7】
前記薬液カートリッジは、薬液の種類や容量等の薬液情報を有するバーコードまたはICタグを備え、前記ポンプ駆動カートリッジは、前記バーコードまたはICタグの薬液情報を読み取るリーダ部を備え、
前記リーダ部で読み取った薬液情報に基づき、薬液注入量や薬液注入時間等の設定を自動的に行う自動設定機能を有することを特徴とする請求項4乃至請求項6に記載の薬液注入用チューブポンプ。
【請求項8】
前記薬液カートリッジは、薬液の種類や容量等の薬液情報を有するバーコードまたはICタグを備え、前記ポンプ駆動カートリッジは、前記バーコードまたはICタグの薬液情報を読み取るリーダ部を備え、
前記リーダ部で読み取った薬液情報に基づき、薬液注入量や薬液注入時間等の設定値について許容範囲外の設定をできないように制御するセーフティー機能を有することを特徴とする請求項4乃至請求項7に記載の薬液注入用チューブポンプ。
【請求項9】
前記ポンプ駆動カートリッジは、情報処理機器と接続するための通信インタフェース部を備え、
前記通信インタフェース部を介して、薬液の種類や容量等の薬液情報、薬液の流出量、薬液の残量、および薬液注入可能残日数または残時間等の管理情報を前記情報処理機器と送受信することを特徴とする請求項4乃至請求項8に記載の薬液注入用チューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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