説明

薬液注入装置

【課題】管内流体に薬液を注入しているときでも、切換手段を特に操作することなく、薬液注入路の周面に付着している付着物を掻き取り具で掻き取ることができ、付着物を掻き取った後も、切換手段を特に操作することなく、管内流体に薬液を注入することができるようにする。
【解決手段】薬液注入路2の軸芯Xと略同芯周りでの回転操作で、薬液注入路と供給管接続路3とが連通する状態と、薬液注入路と供給管接続路との連通を遮断する状態とに管外側から切り換え操作自在な弁体6を備えた切換手段7を設けてあると共に、薬液注入路とで弁体を挟む位置に、掻き取り具挿通路5を薬液注入路と同芯状に設けて、掻き取り具4を掻き取り具挿通路と薬液注入路とに亘って挿通自在な貫通孔22を、弁体に回転軸芯と同芯状に形成し、掻き取り具と掻き取り具挿通路の周面との隙間を塞ぐシール部24を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入路を、その先端が管径方向から流体輸送用管内に入り込むように、その流体輸送用管に接続可能に設けてあると共に、薬液供給管を前記薬液注入路に対して連通接続可能な供給管接続路と、前記薬液注入路内での薬液注入路長手方向に沿う移動でその周面に付着している付着物を掻き取り自在な掻き取り具と、前記掻き取り具を管外側から移動操作自在に挿通可能な掻き取り具挿通路とを設けてある薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記薬液注入装置は、流体輸送用管内を流れるプールの水や空調用の水,冷却用の水、ボイラー水,海水などの管内流体に、殺菌剤や防蝕剤,脱酸素剤,防藻剤などの薬液を注入するために使用されており、薬液注入路をその先端が管径方向から流体輸送用管内に入り込むように接続可能に設けてあるとともに、薬液と管内流体とが反応して生成した生成物が薬液注入路内に析出してその周面に付着すると薬液の注入に支障が生じるので、それらの付着物を除去できるように、薬液注入路内での薬液注入路長手方向に沿う移動でその周面に付着している付着物を掻き取り自在な掻き取り具を設け、薬液注入路を流体輸送用管から取り外すことなく付着物を必要に応じて掻き取ることができるように、掻き取り具を管外側から移動操作自在に挿通可能な掻き取り具挿通路を設けてある。
上記薬液注入装置では、従来、薬液注入路が供給管接続路に連通する第1状態と、薬液注入路が掻き取り具挿通路に連通する第2状態とに択一的に切換操作自在な切換手段を設けて、管内流体に薬液を注入するときは、切換手段を第1状態に切り換え操作しておき、薬液注入路の周面に付着している付着物を掻き取るときは、切換手段を第2状態に切り換え操作することにより、掻き取り具挿通路に挿通した掻き取り具を薬液注入路に入り込ませることができるようにしてある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−238020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、管内流体に薬液を注入しているときは、切換手段を第2状態に切り換え操作しなければ、薬液注入路の周面に付着している付着物を掻き取り具で掻き取ることができず、従って、薬液注入路の周面に付着している付着物を掻き取った後は、切換手段を第1状態に切り換え操作しなければ、管内流体に薬液を注入することができない点で使い勝手が悪い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、管内流体に薬液を注入しているときでも、切換手段を特に操作することなく、薬液注入路の周面に付着している付着物を掻き取り具で掻き取ることができ、付着物を掻き取った後も、切換手段を特に操作することなく、管内流体に薬液を注入することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、薬液注入路を、その先端が管径方向から流体輸送用管内に入り込むように、その流体輸送用管に接続可能に設けてあると共に、薬液供給管を前記薬液注入路に対して連通接続可能な供給管接続路と、前記薬液注入路内での薬液注入路長手方向に沿う移動でその周面に付着している付着物を掻き取り自在な掻き取り具と、前記掻き取り具を管外側から移動操作自在に挿通可能な掻き取り具挿通路とを設けてある薬液注入装置であって、
前記薬液注入路の軸芯と略同芯の回転軸芯周りでの回転操作で、前記薬液注入路と前記供給管接続路とが連通する状態と、前記薬液注入路と前記供給管接続路との連通を遮断する状態とに管外側から切り換え操作自在な弁体を備えた切換手段を設けてあると共に、前記薬液注入路とで前記弁体を挟む位置に、前記掻き取り具挿通路を前記薬液注入路の軸芯と同芯状に設けて、前記掻き取り具を前記掻き取り具挿通路と前記薬液注入路とに亘って挿通自在な貫通孔を、前記弁体に前記回転軸芯と同芯状に形成し、前記掻き取り具と前記掻き取り具挿通路の周面との隙間を塞ぐシール部を設けてある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
薬液注入路の軸芯と略同芯の回転軸芯周りでの回転操作で、薬液注入路と供給管接続路とが連通する状態と、薬液注入路と供給管接続路との連通を遮断する状態とに管外側から切り換え操作自在な弁体を備えた切換手段を設けてあるので、管内流体に薬液を注入するときには、薬液注入路と供給管接続路とが連通する状態に切換手段を切り換えて、管内流体に薬液を確実に注入することができ、また、管内流体に薬液を注入しないときには、薬液注入路と供給管接続路との連通を遮断する状態に切換手段を切り換えて、管内流体への薬液の供給を確実に停止させることができる。
そして、薬液注入路とで弁体を挟む位置に、掻き取り具挿通路を薬液注入路の軸芯と同芯状に設けて、掻き取り具を掻き取り具挿通路と薬液注入路とに亘って挿通自在な貫通孔を、弁体にその回転軸芯と同芯状に形成し、掻き取り具と掻き取り具挿通路の周面との隙間を塞ぐシール部を設けてあるので、弁体の回転操作に干渉しないように、また、薬液注入路と供給管接続路とが連通する状態に切換手段を切り換えてある場合でも、薬液が弁体に形成してある貫通孔と掻き取り具挿通路を通して外部に漏れ出さないように、掻き取り具を掻き取り具挿通路と薬液注入路とに亘って挿通することができる。
従って、管内流体に薬液を注入しているときでも、切換手段を特に操作することなく、掻き取り具挿通路と薬液注入路とに亘って挿通した掻き取り具で、薬液注入路の周面に付着している付着物を掻き取ることができ、付着物を掻き取った後も、切換手段を特に操作することなく、管内流体に薬液を注入することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記弁体の回転操作具をその弁体の回転軸芯周りで回転操作自在に設け、前記掻き取り具挿通路を前記回転操作具に同芯状に形成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
弁体の回転操作具をその弁体の回転軸芯周りで回転操作自在に設け、掻き取り具挿通路を回転操作具に同芯状に形成して、掻き取り具を弁体の回転操作具に同芯状に挿通できるようにしてあるので、薬液注入装置の流体輸送用管への接続用空間が狭い場合でも、掻き取り具で付着物を掻き取ることができるようにしながら、弁体を必要に応じて回転操作することができるように、薬液注入装置を流体輸送用管に接続し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1,図2は本発明による薬液注入装置Aを示し、薬液供給管1を薬液注入路2に対して連通接続可能な供給管接続路3と、薬液注入路2内での薬液注入路長手方向に沿う移動でその周面に付着している付着物を掻き取り自在な掻き取り具4と、掻き取り具4を管外側から移動操作自在に挿通可能な掻き取り具挿通路5と、薬液注入路2と供給管接続路3とが連通する連通状態と、薬液注入路2と供給管接続路3との連通を遮断する遮断状態とに管外側から切り換え操作自在なボール弁体6を備えた切換手段としての切換弁7とを設けてある。
【0010】
前記掻き取り具4は、図3,図4にも示すように、ステンレス鋼製のロッド8の両端部に、薬液注入路2の内周面に摺接させるステンレス鋼製の円柱状のヘッド9と、操作用グリップ10とを夫々備え、ロッド8を掻き取り具挿通路5に予め挿通しておいて、ロッド8の外径よりも大径のヘッド9をその先端に取り付けてある。
【0011】
前記切換弁7は、図3,図4に示すように、薬液注入路2の軸芯Xと略同芯の回転軸芯周りでの回転操作で、前述の連通状態と遮断状態とに管外側から切り換え操作自在な硬質塩化ビニル樹脂製のボール弁体6を、ボールシート13を挟んで、硬質塩化ビニル樹脂製のハウジング11に内装して構成してあり、ボール弁体6には弁孔6aをT字型に形成してある。
【0012】
前記ハウジング11には、ボール弁体6の回転操作具12をボール弁体6の回転軸芯Xと同芯状に装着してあり、薬液供給管1の接続金具14をねじ込み固定するための供給管接続路3を、ボール弁体6の回転軸芯Xと直交する方向に沿わせて形成してある。
【0013】
前記回転操作具12は、ボール弁体6と一体に回転させる回転軸部材15と、回転軸部材15を回転操作するためのハンドル16と、回転軸部材16を挿通させた状態でハウジング11側にねじ込んで回転軸部材15の抜け止めを行う抜け止めリング17と、回転軸部材15のハンドル16からの突出端部にねじ込むスリーブナット27と、スリーブナット27にねじ込むロックナット28とを備え、回転軸部材15をハウジング11に挿通してボール弁体6に係合させて、ボール弁体6の回転軸芯X周りで回転操作自在に設けてある。
【0014】
前記薬液注入路2は、ハウジング11に形成したボス部18に硬質塩化ビニル樹脂製の横断面形状が円形の筒部材19をねじ込み固定して形成してあり、ボス部18に形成してある雄ネジ部20を、プールの水を濾過装置などに亘って循環させる循環パイプ(流体輸送用管の一例)Bの管壁にねじ込んで、薬液注入路2を、その先端が循環パイプB内に管径方向から入り込むように、循環パイプBに接続可能に設けてある。
【0015】
尚、薬液供給管1を接続金具14から外したときの、循環パイプBからの管内流体の逆流を防止するために、接続金具14には逆止弁21を内装してある。
【0016】
前記掻き取り具挿通路5は、薬液注入路2とで弁体6を挟む位置、つまり、回転軸部材15に薬液注入路2の軸芯Xと同芯状に設けて、回転操作具12に同芯状に形成してあり、ロッド8を掻き取り具挿通路5に挿通してある掻き取り具4を掻き取り具挿通路5と薬液注入路2とに亘って挿通自在な貫通孔22を、ボール弁体6にその回転軸芯Xと同芯状に形成して、掻き取り具4のヘッド9を貫通孔22に入り込ませてある。
【0017】
前記掻き取り具挿通路5に臨むハウジング11側に、掻き取り具4のロッド8と掻き取り具挿通路5の周面との隙間を塞ぐOリングパッキン23を装着してあるシール部24を設けてある。
【0018】
また、図5にも示すように、回転軸芯Xに対して直交する方向に沿わせて突出するように回転軸部材15に装着してあるピン25をハウジング11側に形成した扇形の凹部26に入り込ませた状態で、抜け止めリング17をハウジング11側にねじ込み固定して、ピン15のハウジング11側との接当により、回転操作具12の回転範囲を、ボール弁体6を連通状態に切り換える開位置と、ボール弁体6を遮断状態に切り換える閉位置とに亘る範囲に規制してある。
【0019】
そして、図5(a)に示すように、回転操作具12を開位置に回転させると、図3に示すように、薬液注入路2と供給管接続路3とがボール弁体6の弁孔6aを介して連通する連通状態に切り換わり、図5(b)に示すように、回転操作具12を閉位置に回転させると、図4に示すように、供給管接続路3をボール弁体6で塞いで、薬液注入路2と供給管接続路3との連通を遮断する遮断状態に切り換わるように構成してある。
【0020】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による薬液注入装置は、図3に示したように、掻き取り具を、常時、掻き取り具挿通路に挿通してあるものであっても良いが、掻き取り具を、必要に応じて、掻き取り具挿通路に挿通できるように構成してあっても良い。
2.本発明による薬液注入装置は、薬液注入路を全長に亘って切換手段を構成するハウジングに一体に形成してあっても良い。
3.本発明による薬液注入装置は、薬液注入路の周面に付着した藻や貝類等の付着物を掻き取り具で掻き取ることができるように構成してあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】薬液注入装置の斜視図
【図2】薬液注入装置の分解斜視図
【図3】薬液注入装置の縦断面図
【図4】薬液注入装置の縦断面図
【図5】要部の横断面図
【符号の説明】
【0022】
2 薬液注入路
3 供給管接続路
4 掻き取り具
5 掻き取り具挿通路
6 弁体
7 切換手段
12 回転操作具
22 貫通孔
24 シール部
B 流体輸送用管
X 軸芯(回転軸芯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入路を、その先端が管径方向から流体輸送用管内に入り込むように、その流体輸送用管に接続可能に設けてあると共に、
薬液供給管を前記薬液注入路に対して連通接続可能な供給管接続路と、前記薬液注入路内での薬液注入路長手方向に沿う移動でその周面に付着している付着物を掻き取り自在な掻き取り具と、前記掻き取り具を管外側から移動操作自在に挿通可能な掻き取り具挿通路とを設けてある薬液注入装置であって、
前記薬液注入路の軸芯と略同芯の回転軸芯周りでの回転操作で、前記薬液注入路と前記供給管接続路とが連通する状態と、前記薬液注入路と前記供給管接続路との連通を遮断する状態とに管外側から切り換え操作自在な弁体を備えた切換手段を設けてあると共に、
前記薬液注入路とで前記弁体を挟む位置に、前記掻き取り具挿通路を前記薬液注入路の軸芯と同芯状に設けて、前記掻き取り具を前記掻き取り具挿通路と前記薬液注入路とに亘って挿通自在な貫通孔を、前記弁体に前記回転軸芯と同芯状に形成し、
前記掻き取り具と前記掻き取り具挿通路の周面との隙間を塞ぐシール部を設けてある薬液注入装置。
【請求項2】
前記弁体の回転操作具をその弁体の回転軸芯周りで回転操作自在に設け、前記掻き取り具挿通路を前記回転操作具に同芯状に形成してある請求項1記載の薬液注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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