説明

薬液濃度調整装置

【課題】木材に薬液を含浸させる薬液含浸装置に補充する薬液を調製し、木材に含浸させる薬液濃度を予め定めた所定値からのずれを減じて維持する薬液濃度調整装置を提供する。
【解決手段】薬液濃度調整装置2は、補充用の薬液が調製される調製槽28と、調製槽に薬液原料を供給する原料供給装置70と、原料供給装置によって供給される薬液原料を計量する計量計63と、薬液貯槽内の薬液濃度を検出する貯槽内濃度検出装置と、貯槽内濃度検出装置の検出に基づき、調製槽から薬液貯槽20に予め定めた所定量の薬液を補充することにより、薬液貯槽内の薬液濃度が予め定めた所定値になるよう、補充される薬液の濃度を補充薬液濃度として設定し、該補充薬液濃度に基づいて調製槽へ供給されるべき薬液原料の供給量を供給設定量として設定し、計量計の計量に基づき、原料供給装置を制御して供給設定量の薬液原料を調製槽に供給させる薬液調製手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液濃度調整装置に関するものであり、特に、木材に薬液を含浸させる薬液含浸装置に補充する薬液を調製し、木材に含浸させる薬液の濃度を調整する薬液濃度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、木材に防腐剤、防虫剤、難燃化剤などの薬液を含浸させるために、薬液を加圧して木材に圧入させる処理が行われている。例えば、密閉可能なタンクに木材を収容し、タンク内に薬液を加圧ポンプで導入することにより、或いは、木材を浸漬するのに十分な薬液をタンク内に導入した上で、タンク内の残余の空間に空気などの気体を圧送して薬液の圧力を上昇させることにより、木材内部に薬液を含浸させている。
【0003】
このような処理では、薬液貯槽からタンク内に導入されタンク内で木材に含浸されなかった余剰の薬液は、再び薬液貯槽に戻され、次の木材の処理に使用されるというように、外部から新たな薬液を適宜補充しつつ繰返して使用することが多い。
【0004】
上記の従来技術は、公然に実施されているものであり、出願人は、この従来技術が記載された文献を、本願出願時においては知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、当初は濃度が所定値となるよう薬液が調製されていても、タンク内で木材から滲出する水分によって薬液が希釈される等、薬液の濃度が変化してしまうことがあった。そのため、上記のように薬液を繰返し使用する場合、濃度の変化は徐々に大きくなり、処理された木材の品質が一定とならないという問題があった。加えて、実際に木材に含浸した薬液の濃度が不明であるという問題があった。
【0006】
更に、実際に含浸した薬液の濃度が所望の濃度より低い木材となることへの危惧から、現場では薬液の濃度を高めに設定することも多く行われており、過剰に高濃度の薬液が使用されることによって、薬液が無駄に消費されるという問題があった。
【0007】
また、薬液の濃度測定を随時行いながら含浸処理を行う場合も、従来では簡易な滴定法が用いられることが多いため、以下のような問題があった。すなわち、簡易な滴定法は、指示薬を含む容器に測定対象の薬液を滴下し、指示薬の色変化によって終点を確認し、終点に達するまでの薬液の滴下量から濃度を算出するものであり、指示薬の色を確認しつつ薬液を滴下する作業は、時間や手間のかかる煩雑なものであった。また、薬液の希釈、終点の判断、滴下量の読取りの操作の各段階で誤差が生じ易く、正確な濃度測定ができないという問題があった。また、滴定の都度に発生する使用済みの試薬や容器の廃棄処理に関する問題もあった。
【0008】
更に、従来では、薬液の原液や溶媒をバケツのような大きな容器で計量して薬液の調製が行われることも多く、調製された当初の段階から、実際の薬液濃度が所望の濃度とずれていることがあった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、木材に薬液を含浸させる薬液含浸装置に補充する薬液を調製し、木材に含浸させる薬液濃度を予め定めた所定値からのずれを減じて維持することができる薬液濃度調整装置の提供を、第一の課題とするものである。また、薬液の濃度を、より正確かつ簡易に調整できる薬液濃度調整装置の提供を、第二の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる薬液濃度調整装置は、「薬液貯槽から木材の収容された容器に薬液を導入して薬液を木材に含浸させ、余剰の薬液は前記薬液貯槽に戻して繰返し使用する薬液含浸装置に補充する薬液を調製し、木材に含浸させる薬液の濃度を調整する薬液濃度調整装置であって、薬液が調製される調製槽と、該調製槽に薬液原料を供給する原料供給装置と、該原料供給装置によって前記調製槽へ供給される前記薬液原料を計量する計量計と、前記薬液貯槽内の薬液の濃度を検出する貯槽内濃度検出装置と、前記貯槽内濃度検出装置の検出に基づき、前記調製槽から前記薬液貯槽に予め定めた所定量の薬液を補充することにより、前記薬液貯槽内の薬液の濃度が予め定めた所定値になるよう、補充される薬液の濃度を補充薬液濃度として設定し、該補充薬液濃度に基づいて前記調製槽へ供給されるべき前記薬液原料の供給量を供給設定量として設定し、前記計量計の計量に基づき、前記原料供給装置を制御して前記供給設定量の前記薬液原料を前記調製槽に供給させる薬液調製手段とを」を具備して構成されている。
【0011】
本発明は、薬液貯槽から木材の収容された容器に薬液を導入し、薬液を木材に含浸させた後、余剰の薬液を薬液貯槽に戻して次の木材の処理に使用するというように、薬液を繰返し使用する薬液含浸装置に補充する薬液を調製する装置である。
【0012】
「薬液原料」は、薬剤の原液、粉末・顆粒等の固体状の薬剤、溶媒、薬剤が溶媒によって希釈された溶液を包含する意味で用いている。また、「調製槽」は、供給された薬液原料が混合されて所定濃度の薬液とされる槽であり、攪拌装置、加温装置、或いは冷却装置を備えるものとしてもよい。
【0013】
「原料供給装置」は、例えば、薬液原料を貯蔵した原料タンク、原料タンクと調製槽とを接続する供給路、供給路を開閉する弁、供給路を介して薬液原料を調製槽に送るポンプを具備した構成とすることができる。或いは、原料タンクが調製槽の上方に設けられ、薬液原料が供給路を介して自然流下させられる場合は、ポンプを省略した構成とすることができる。
【0014】
「計量計」は、例えば、調製槽に供給された薬液原料の質量を、調製槽ごと測定する質量計とすることができる。或いは、それぞれの薬液原料の供給路に設けられた液体用・粉粒体用の流量計とすることもできる。
【0015】
「貯槽内濃度検出装置」は、例えば、薬液の電気伝導度、或いは比重を測定する測定器と、測定された値を濃度に換算して出力するプログラムを備えたマイクロプロセッサによって構成することができる。或いは、少量の薬液を分取して滴定を行う自動滴定装置によって構成することもできる。
【0016】
「薬液調製手段」は、検出された貯槽内の薬液濃度に基づき、予め定めた所定量の薬液を新たに調製槽から補充することによって薬液貯槽内の濃度が予め定めた所定値となるように補充薬液濃度を算出するプログラム、調製槽で調製される補充薬液の濃度が算出された補充薬液濃度になるように、それぞれの薬液原料について調製槽に供給すべき量を供給設定量として決定するプログラム、及び、決定された供給設定量の薬液原料が調製槽に供給されるべく、計量計の出力に基づいて供給設定装置による薬液原料の供給を制御するプログラムを備えたマイクロプロセッサにより構成することができる。
【0017】
ここで、薬液の「予め定めた所定量」は、例えば、薬液含浸装置で木材に含浸させる薬液量に相当する量とすることができ、含浸させる薬液量がほぼ一定のときは、予め薬液調製手段のプログラムに一定値を設定しておくことができる。或いは、薬液含浸装置における直前の処理で木材に含浸させた薬液量を、作業者によって薬液調製手段に入力させるものとすることができる。また、濃度の「予め定めた所定値」は、木材の処理に関する基準等に則り、薬液の種類、処理の目的、木材の種類等に応じて設定することができる。
【0018】
従って、本発明によれば、薬液含浸装置において薬液の濃度が変動しても、薬液貯槽内の薬液濃度を測定し、これをフィードバックして新たに補充される薬液の濃度が調整される。これにより、補充を受けた薬液含浸装置において木材に含浸させる薬液の濃度を、予め定めた所定値に対するずれを減じて維持することが可能となる。
【0019】
また、本発明にかかる薬液濃度調整装置は、上記構成に加え、「前記薬液貯槽内の薬液量を検出する貯槽内薬液量検出装置を更に具備し、前記薬液調製手段は、前記貯槽内薬液量検出装置の検出に基づき、前記調製槽から前記薬液貯槽に補充されるべき薬液量を補充薬液量として設定し、該補充薬液量及び前記補充薬液濃度に基づいて前記供給設定量を設定する」ものとすることができる。
【0020】
「貯槽内薬液量検出装置」は、例えば、薬液貯槽の液面高さを監視するレベル計、或いは、薬液貯槽内の薬液の質量を薬液貯槽ごと測定する質量計と、測定された値を薬液量に換算し出力するプログラムを備えたマイクロプロセッサによって構成することができる。
【0021】
従って、本発明によれば、薬液貯槽内に現存する薬液量に基づいて補充されるべき薬液量が適切に設定され、更に、設定された補充薬液量に基づいて補充薬液濃度が決定されることにより、薬液含浸装置において木材に含浸させる薬液の濃度を、より精密に制御することが可能となる。例えば、薬液含浸装置において木材に含浸させる薬液量が区々であり、補充すべき薬液量が毎回異なる場合であっても、作業者によって薬液量を毎回入力する手間を必要とすることなく、自動的に補充薬液量が設定される。また、木材から多量の水分が滲出する場合など、木材への含浸以外の要因で薬液量が大きく変動する場合であっても、補充すべき薬液量が常に適切に設定される。
【0022】
更に、薬液貯槽内に現存する薬液の濃度と液量とが共に考慮されることから、例えば、液量は十分であっても濃度が低くなった場合など、補充される薬液を原液或いは原液に近い濃い薬液とすることにより、木材に含浸させる薬液の液量をあまり増加させずに濃度を高めることも可能となる。
【0023】
更に、本発明にかかる薬液濃度調整装置は、「薬液には電解質溶液が用いられ、前記貯槽内濃度検出手段は、薬液の電気伝導度に基づいて薬液の濃度を検出する」ものとすることができる。
【0024】
従って、本発明によれば、貯槽内薬液検出装置による濃度の検出をより正確かつ簡易に行うことができる。例えば、薬液の濃度が小さく比重が1に近いために、比重によっては薬液の濃度が正確に検出できない場合であっても、電気伝導度によれば正確に薬液の濃度を検出することが可能となる。また、電気伝導度の測定は、測定端子を薬液に浸しておくのみで連続的な測定が可能であるため、自動化が容易である。加えて、薬液を随時分取して測定を行う自動滴定装置などに比べ、極めて簡易に薬液濃度を検出することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の第一の効果として、木材に薬液を含浸させる薬液含浸装置に補充する薬液を調製し、木材に含浸させる薬液濃度を予め定めた所定値からのずれを減じて維持することができる薬液濃度調整装置を提供することができる。また、第二の効果として、薬液の濃度を、より正確かつ簡易に調整できる薬液濃度調整装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の最良の一実施形態である薬液濃度調整装置について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、ここでは、薬液濃度調整装置が薬液含浸装置の構成として適用される場合を例示する。ここで、図1は本実施形態の薬液濃度調整装置及び該装置が適用される薬液含浸装置の構成を示す説明図であり、図2は図1の薬液含浸装置及び薬液濃度調整装置の機能的構成を示すブロック図であり、図3は図1の薬液含浸装置における処理の流れを示すフローチャートであり、図4は本実施形態の薬液濃度調整装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【0027】
まず、本実施形態の薬液濃度調整装置2が適用される薬液含浸装置1の構成について説明する。薬液含浸装置1は、図1及び図2に示されるように、密閉可能なタンク10と、薬液を貯蔵する薬液貯槽20と、薬液貯槽20からタンク10へ薬液を導入する加圧ポンプP2と、タンク10内の圧力を調整する圧力調整弁45と、木材を収容したタンク10が薬液貯槽20から送られた薬液によって満たされた充満時を検知する液面センサ52と、薬液貯槽20から導入路30を介してタンク10に導入される導入薬液量を検出する導入薬液量検出装置51と、後述の含浸薬液量制御手段8を具備して構成されている。
【0028】
ここで、タンク10は、処理対象の木材を収容するために十分な容積を有する略円筒形の耐圧性の容器であり、本実施形態では16mの内容積を有している。このタンク10内の空間の最大高さ近傍には、液面の上昇によりスイッチが作動する液面センサ52が取付けられている。更に、タンク10には、圧力計53及びリーク弁46が取付けられると共に、弁43及び脱気路33を介して真空ポンプP1が接続されている。なお、タンク10の一端には、木材を搬出入するための蓋部11が設けられている。
【0029】
薬液貯槽20は、上方に開放した略直方体の容器であり、側壁の一つに平行な区画壁25によって一部が区画されて、14mの内容積を有する第一貯槽21と4mの内容積を有する第二貯槽22が並設された構造となっている。すなわち、両槽の高さは略等しく、第一貯槽21と第二貯槽22の水平方向の断面積は7:2の割合であり、第二貯槽22の水平方向の断面積は第一貯槽21に比べてかなり小さいものとなっている。なお、木材の体積によらずタンク10を満たすことができるだけの薬液をタンク10に供給するためには、第二貯槽22の容積は、タンク10及び第一貯槽21の容積の差以上であることが望ましい。
【0030】
第一貯槽21は、主流路31及び弁41を介してタンク10と接続されている。また、第二貯槽22は、導入路30及び弁42を介してタンク10と接続されている。なお、本実施形態では、第一貯槽21はタンク10のほぼ真下に設置され、弁41を開放すればタンク10内の薬液が第一貯槽21に自然流下する構成となっている。
【0031】
加圧ポンプP2は渦巻ポンプであり、導入路30に設けられている。また、本実施形態の圧力調整弁45は加圧ポンプP2の構成としての定圧弁であり、導入路30のタンク10側の圧力が所定圧力以上に上昇した際に、排出路35を介して薬液を第二貯槽22に戻し、タンク10側の圧力を1.0〜1.5MPaに維持している。更に、導入薬液量検出装置51は、第二貯槽22の液面高さを測定するフロート式の液面高さ計55と、測定された液面高さの変化に基づいて導入薬液量を検出する導入薬液量検出手段56によって構成されている。
【0032】
次に、本実施形態の薬液濃度調整装置2の構成について説明する。薬液濃度調整装置2は、補充用の薬液が調製される調製槽28と、調製槽28に薬液原料を供給する原料供給装置70と、原料供給装置70によって調製槽28へ供給される薬液原料を計量する計量計63と、薬液貯槽20内の薬液の濃度を検出する貯槽内濃度検出装置62と、薬液貯槽20内の薬液量を検出する貯槽内薬液量検出装置61と、後述の薬液調製手段9とを具備している。なお、本実施形態では、3種類の薬液原液A液,B液,及びC液と溶媒としての水を薬液原料とし、これらを混合して薬液を調製する場合について例示する。
【0033】
更に詳細に説明すると、調製槽28は容積2mのタンクであり、調製槽28を載置するように計量計63としてのロードセルが設けられている。また、原料供給装置70は、A液,B液,C液及び溶媒をそれぞれ貯蔵する原料タンク71a,71b,71c,71wと、各原料タンクと調製槽28とをそれぞれ弁75a,75b,75c,75wを介して接続する供給路73a,73b,73c,73wを具備して構成されている。なお、本実施形態では、原料タンク71a等はそれぞれ調製槽28の上方に設けられ、弁75a等を開放すれば原料が供給路73a等を介して自然に調製槽28に供給される構成となっているが、供給路にポンプを設けて原料を送る構成とすることもできる。
【0034】
貯槽内濃度検出装置62は、薬液の電気伝導度を測定する電気伝導度計67と、測定された電気伝導度を薬液濃度に変換する貯槽内濃度検出手段68によって構成され、電気伝導度計67は第一貯槽21に設置されている。また、貯槽内薬液量検出装置61は、第二貯槽22の液面高さを測定する液面高さ計55と、測定された液面高さに基づいて第二貯槽22内の薬液量を検出する貯槽内薬液量検出手段66によって構成されている。すなわち、本実施形態では、薬液含浸装置1の導入薬液量検出装置51及び薬液濃度調整装置2の貯槽内薬液量検出装置61は、構成として液面高さ計52を共用している。なお、調製槽28と第二貯槽22とは補充路38及び弁48を介して接続され、補充路38には送液ポンプP3が設けられている。
【0035】
次に、本実施形態における機能的構成について、図2に基づいて説明する。薬液含浸装置1の機能的構成は、上記の導入薬液量検出手段56及び含浸薬液量制御手段8を主に具備して構成されている。ここで、含浸薬液量制御手段8は、液面センサ52の検知及び導入薬液量検出装置51による検出に基づき、充満時以降の導入薬液量に基づいて木材に含浸した薬液量を含浸薬液量として検出する含浸薬液量検出手段81と、液面センサ52の検知及び導入薬液量検出装置51による検出に基づき、薬液貯槽20からタンク10への薬液の導入が開始された時点から充満時までの導入薬液量及びタンク10の容積から木材体積を検出する木材体積検出手段82と、木材体積に基づいて木材に含浸させるべき薬液量を含浸薬液量設定値として設定する含浸薬液量設定手段85と、含浸薬液量を監視し含浸薬液量設定値に達した時点で導入路30の弁42及び加圧ポンプ用の駆動モータP2mを制御してタンク10への薬液の導入を停止させる導入制御手段86とを具備して構成されている。
【0036】
なお、導入薬液量検出手段56及び含浸薬液量制御手段8は何れも制御装置7に格納され、この制御装置7には、作業者が木材の種類等を入力するための操作パネル(図示しない)や、検出された含浸薬液量等を出力可能なモニタやプリンタ等の出力装置(図示しない)が設けられている。
【0037】
薬液濃度調整装置2の機能的構成の主たる構成は、貯槽内濃度検出手段68、貯槽内薬液量検出手段66及び薬液調製手段9であり、本実施形態では何れも薬液含浸装置1の制御装置7に格納されている。ここで、薬液調製手段9は、貯槽内薬液量検出装置61の検出に基づき調製槽28から薬液貯槽20に補充されるべき薬液量を補充薬液量として設定する補充薬液量設定手段92と、貯槽内濃度検出装置62の検出に基づき、補充薬液量の薬液を調製槽28から薬液貯槽20に補充することにより薬液貯槽20内の薬液の濃度が予め定めた値になるよう、補充される薬液の濃度を補充薬液濃度として設定する補充薬液濃度設定手段91と、補充薬液量及び補充薬液濃度に基づき調製槽28へ供給されるべき薬液原料の供給設定量を設定する供給量設定手段95と、計量計63の計量に基づき原料供給装置70を制御して供給設定量の薬液原料を調製槽28に供給させる供給制御手段96とを具備して構成されている。
【0038】
次に、薬液含浸装置1における処理の流れについて、図1及び図3を用いて説明する。まず、含浸処理の開始に先立ち、第一貯槽21内の薬液量は既知(V)である必要がある。なお、二回目以降の処理においては、後述のように第一貯槽21は区画壁25の高さまで薬液で満たされるため、Vは第一貯槽の容積と同一となる。なお、処理の開始に当たり、制御装置7の操作パネルから木材の種類等を入力することができる。
【0039】
タンク10内に処理対象の木材を収容し、蓋部11を閉じてタンク10を密閉状態とし、処理が開始されると、まず、液面高さ計55によって監視される第二貯槽22の液面高さ(H)が取得される(ステップS1)。次に、弁41,42及びリーク弁46が閉じられ、弁43が開放された状態で真空ポンプP1が駆動され、圧力計53による圧力の検知に基づいて、タンク10内が所定の真空度まで脱気される(ステップS2)。これにより、木材の組織の開管内の空気も除去され、薬液が浸透し易い状態となる。その後、弁43が閉じられ真空ポンプP1が停止され、弁41が開放されると、第一貯槽21内の薬液が主流路31を介してタンク10内に吸引される(ステップS3)。このとき、主流路31の第一貯槽21側の端部は、第一貯槽21の底部のごく近傍まで延ばされているため、ほぼ全量(V)の薬液がタンク10に導入される。
【0040】
この状態では、上述のようにタンク10の容量は16mであり第一貯槽21の容積は14mであるため、タンク10はまだ満たされていない。そこで、次に弁41が閉じられ弁42,46が開放され、加圧ポンプP2が駆動され、第二貯槽22から導入路30を介して薬液がタンク10内に導入される(ステップS4)。そして、液面センサ52の検知に基づき、タンク10が薬液で満たされない内は薬液の導入が継続される(ステップS5においてNO)。タンク10が薬液で満たされると(ステップS5においてYES)、この充満時における第二貯槽22の液面高さ(H1)が取得され(ステップS6)、H,H1,V,及びタンク10の容積に基づいて木材の体積が算出される(ステップS7)。この際、導入路30内の容積を考慮することもできる。
【0041】
次に、算出された木材の体積及び木材の種類に基づき、JAS基準等に則って含浸薬液量設定値(Vs)が決定される(ステップS8)。一方、弁46が閉じられてタンク10が密閉され(ステップS9)、加圧ポンプP2による薬液の導入の継続によりタンク10内の圧力が上昇すると、加圧された薬液が木材に圧入され、これに伴い薬液がタンク内に更に導入される。このとき、圧力調整弁45の作用により、導入路30のタンク10側の圧力が所定圧力以上となると排出路35を介して薬液が第二貯槽22に戻され、タンク10内の圧力は1.0〜1.5MPaに維持される。かかる薬液の導入に際して第二貯槽22の液面高さ(H)が監視され、充満時以降の第二貯槽22内の薬液の減少量に基づいて、木材に実際に含浸した含浸薬液量(V)が検出される(ステップS10,11)。なお、充満時以降の第二貯槽22内の薬液の減少量は、液面高さの変化(H1−H)と第二貯槽22の水平方向の断面積の積から求められる。
【0042】
含浸薬液量(V)が含浸薬液量設定値(Vs)に達するまでは、薬液の加圧導入が継続され(ステップS12においてNO)、含浸薬液量設定値(Vs)に達した時点で(ステップS12においてYES)、弁42が閉じられ加圧ポンプP2が停止されて、第二貯槽22からタンク10への薬液の導入が停止させられる(ステップS13)。これにより、木材の体積に応じて決定された含浸薬液量設定値(Vs)分の薬液が、確実に木材に含浸されたこととなる。
【0043】
次に、弁41及びリーク弁46を開放すると、タンク10内の剰余の薬液が主流路31を介して第一貯槽21に流下する(ステップS14)。このとき、タンク10内にあった薬液量は第一貯槽21の容積よりも大であるため、薬液は第一貯槽21を満たした後、区画壁25を越えて並設された第二貯槽22に流入する。その後、第二貯槽22の液面高さ(H2)が検出され(ステップS15)、所定の液面高さ以下となって薬液を補充する必要があるときは(ステップS16においてYES)、弁48が開かれ送液ポンプP3が駆動されて、補充路38を介して調製槽28で調製された新たな薬液が第二貯槽22に送られる(ステップS17)。一方、薬液を補充する必要がない場合は(ステップS16においてNO)、処理終了の命令の有無に応じて(ステップS18)、次の木材の処理の実行が行われ(ステップS1)、或いは含浸処理が終了する。
【0044】
次に、薬液濃度調整装置2における処理の流れについて、図1及び図4を用いて説明する。まず、薬液含浸装置1における含浸処理が終了すると(ステップS1においてYES)、第一貯槽21内の電気伝導度に基づき薬液の濃度が検出され(ステップS2)、第二貯槽22における液面高さに基づいて貯槽内薬液量が検出される(ステップS3)。このとき、第一貯槽21内の薬液量は第一貯槽21の容積と等しいため、第二貯槽22内の薬液量を検出することにより、薬液含浸装置1に現存する薬液量が検出される。次に、貯槽内薬液量と第二貯槽22内に常に貯蔵すべき薬液量の最低限として定められた値との対比、及び貯槽内濃度と予め定めた所定の濃度値との対比により、薬液の補充の要否が判断される(ステップS4)。
【0045】
補充の必要があるときは(ステップS4においてYES)、貯槽内薬液量に基づいて補充薬液量が設定され(ステップS5)、設定された補充薬液量の薬液が薬液含浸装置1に現存する薬液に加えられた後の濃度、すなわち、次の木材に含浸させる薬液の濃度が予め定めた所定濃度になるよう、補充薬液の濃度が算出される(ステップS6)。なお、薬液含浸装置1における含浸処理の際、新たに補充された薬液を含む第二貯槽22内の薬液と、第一貯槽21内の薬液とは、それぞれタンク10に導入された後にタンク10内で混合し、予め定められた所定濃度の薬液となる。
【0046】
補充薬液濃度が設定されると、補充薬液量の薬液の濃度が補充薬液濃度となるために、調製槽28に供給されるべき薬液原料の量が供給設定量として設定され(ステップS7)、この設定値に従って、原料供給装置70によって薬液原料の調製槽28への供給が行われる。例えば、A液,B液,C液及び溶媒についての供給設定量がそれぞれa,b,c,w(kg)であるとき、まず、弁75aが開放され供給路73aを介して原料タンク71aからA液が調製槽28に送られ、ロードセル(計量計63)による計量に基づいてa(kg)のA液が供給された時点で弁73aが閉じられる。そして、次に弁75bが開放され供給路73bを介してb(kg)のB液が原料タンク71bから調製槽28に供給される、というように、複数の薬液原料の供給が順次行われる。更に、供給された薬液原料は調製槽28内で混合・攪拌され、補充薬液濃度の薬液が調製される(ステップS8)。
【0047】
上記のように、本実施形態の薬液含浸装置1によれば、従来では含浸処理が終了した後でなければ把握できなかった含浸薬液量を、含浸処理の進行に伴ってリアルタイムで把握することができる。これにより、木材の種類、生育環境による木目の緻密さ、乾燥の度合い、断面形状等によって薬液の浸透し易さが異なっても、含浸させたい薬液量を確実に木材に含浸させることができる。これにより、処理された木材の品質にばらつきの小さいものとなる。
【0048】
また、含浸した薬液量が基準値に満たないために、再処理を行う必要が生じる木材の発生が抑制されるため、二度手間による労力負担やコストの増大の恐れの少ないものとなる。更に、従来では、含浸した薬液量が基準値に満たない木材となることへの危惧から、処理時間を長めに設定することも多く行われていたが、このように薬液を過剰に含浸させる必要がないため、薬液の無駄な消費を減じることができる。
【0049】
また、含浸処理が処理時間ではなく含浸薬液量によって管理されることにより、必要最小限に近い所要時間で含浸処理が行われることとなり、処理効率が良いものとなると共に、ランニングコストを必要最小限に近く抑えることが可能となる。
【0050】
更に、木材の形状によらず、その容積を精度高く検出することができ、検出された木材の体積に応じて含浸させるべき薬液量が設定されるため、個々の木材に対して適切な量の薬液を含浸させることができる。
【0051】
また、木材体積の検出、含浸薬液量設定値の設定、含浸薬液量の検出、含浸薬液量設定値と含浸薬液量との対比、及びタンク10への薬液の導入の停止という一連の処理が自動的に行われるため、極めて効率の良いものとなると共に、人手を省くことによりランニングコストを抑えることが可能となる。
【0052】
加えて、水平方向の断面積の小さい第二貯槽22において液面高さを検出しているため、液面高さ変化をより正確に知ることができる。これにより、導入薬液量ひいては含浸薬液量をより正確に検出でき、木材に含浸させる薬液量の制御がより精密なものとなる。
【0053】
また、上記のように、本実施形態の薬液濃度調整装置2によれば、薬液含浸装置1において薬液の濃度が変動しても、その濃度を測定し、これをフィードバックして補充薬液濃度が設定されることにより、繰返し使用される薬液の濃度をほぼ一定に維持することができる。これにより、薬液含浸装置1で処理された木材の品質がばらつきの小さいものとなると共に、従来のように過剰濃度の薬液が使用されることを防止でき、薬液が無駄に消費される恐れのないものとなる。
【0054】
また、薬液貯槽20内に現存する薬液量を把握した上で補充薬液濃度及び補充薬液量が設定されるため、薬液含浸処理装置1に対して、常に適切な濃度の薬液を、適切な量補充することができる。更に、電気伝導度によって薬液の濃度を検出することにより、正確かつ簡易に濃度を検出することができる。
【0055】
加えて、調整槽60に設けたロードセルによって供給される薬液原料を計量する構成としたことにより、複数の薬液原料を一つの構成で計量できるため、薬液濃度調整装置2自体が簡易な構成となり、構築コストの低廉なものとなる。
【0056】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0057】
例えば、本実施形態の薬液含浸装置1では、タンクを真空ポンプで減圧し第一貯槽から薬液を吸引させる構成を例示したが、主流路に加圧ポンプを備える構成とし、薬液を第一貯槽からタンク内に圧送してもよい。また、圧力調整弁として加圧ポンプに定圧弁が付属する場合を例示したがこれに限定されず、例えば、タンクにリリーフ弁を設け、リリーフ弁を介してタンクと薬液貯槽とが排出路で接続される構成とし、タンク内が一定の圧力以上となったときにタンクから薬液貯槽に薬液が戻されるよう構成することもできる。更に、第二貯槽の液面高さにより導入薬液量を検出する構成を例示したが、導入路・排出路に流量計を設け、流通する薬液の積算流量により導入薬液量を検出することもできる。
【0058】
また、本実施形態の薬液濃度調整装置2では、第二貯槽内の薬液量を検出し、これに基づいて補充薬液量を設定する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、上記のように、薬液含浸装置1においてタンク10から薬液が第一貯槽21に戻され、第一貯槽21を満杯にした上で薬液が第二貯槽22にも流入する場合、両槽の容積の設定や木材に含浸させる薬液量により、第二貯槽22に流入する薬液量が第一貯槽21の容積に比べて小さい場合は、第一貯槽21の容積に基づいて補充薬液濃度を設定することとしても、木材に含浸させる薬液の濃度をある程度一定の範囲内に維持することが可能である。
【0059】
更に、薬液原料の供給量を質量で計量する場合を例示したが、各供給路に流量計を設け、体積によって計量する構成とすることもできる。この場合は、複数の薬液原料について調製槽28に供給する操作を同時に行うことが可能となる。
【0060】
また、上記の実施形態では、薬液含浸装置1において液面高さ計52を設けて導入薬液量を検出している第二貯槽2に、薬液濃度調整装置2の調製槽28から補充路38を介して薬液が補充されるため、例えば、木材への薬液の含浸処理が行われている最中に調製槽から薬液の補充が行われる構成としても、木材に実際に含浸した薬液量を正確に検出することが可能となる。
【0061】
加えて、本実施形態では、薬液濃度調整装置2は薬液含浸装置1の構成の一つとされ、両装置の制御を行う各制御手段が一つの制御装置7に格納される場合を例示したが、これに限定されず、両装置を別個の装置として構成することもできる。
【0062】
また、上記の実施形態では、一つの薬液濃度調整装置2を一つの薬液含浸装置1に対して適用する場合を例示したが、例えば、図5に例示するように、調製槽で調製された薬液が送られる流路を複数設け、単一の薬液濃度調整装置から複数の薬液含浸装置に対して薬液を送る構成とすることができる。これにより、単一の薬液濃度調整装置2から薬液の補充を受けつつも、複数の薬液含浸装置で濃度や配合比の異なる薬液を木材に含浸させる処理を行うことができる。或いは、図中に破線で示したように、薬液含浸装置1の構成をタンク10は単一であるが複数の薬液貯槽20を備える構成とし、それぞれの薬液貯槽20に単一の薬液濃度調整装置2から濃度や配合比の異なる薬液を供給することにより、処理対象の木材の種類や処理の目的に応じて、異なる薬液を含浸させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態の薬液濃度調整装置及び該装置が適用される薬液含浸装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1の薬液濃度調整装置及び薬液含浸装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の薬液含浸装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の薬液濃度調整装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】薬液含浸装置に対する薬液濃度調整装置の他の適用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 薬液含浸装置
2 薬液濃度調整装置
8 含浸薬液量制御手段
9 薬液調製手段
10 タンク
20 薬液貯槽
21 第一貯槽(薬液貯槽)
22 第二貯槽(薬液貯槽)
28 調製槽
30 導入路
45 圧力調整弁
51 導入薬液量検出装置
52 液面センサ
61 貯槽内薬液量検出装置
62 貯槽内濃度検出装置
63 計量計
70 原料供給装置
P2 加圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液貯槽から木材の収容された容器に薬液を導入して薬液を木材に含浸させ、余剰の薬液は前記薬液貯槽に戻して繰返し使用する薬液含浸装置に補充する薬液を調製し、木材に含浸させる薬液の濃度を調整する薬液濃度調整装置であって、
薬液が調製される調製槽と、
該調製槽に薬液原料を供給する原料供給装置と、
該原料供給装置によって前記調製槽へ供給される前記薬液原料を計量する計量計と、
前記薬液貯槽内の薬液の濃度を検出する貯槽内濃度検出装置と、
前記貯槽内濃度検出装置の検出に基づき、前記調製槽から前記薬液貯槽に予め定めた所定量の薬液を補充することにより、前記薬液貯槽内の薬液の濃度が予め定めた所定値になるよう、補充される薬液の濃度を補充薬液濃度として設定し、該補充薬液濃度に基づいて前記調製槽へ供給されるべき前記薬液原料の供給量を供給設定量として設定し、前記計量計の計量に基づき、前記原料供給装置を制御して前記供給設定量の前記薬液原料を前記調製槽に供給させる薬液調製手段と
を具備することを特徴とする薬液濃度調整装置。
【請求項2】
前記薬液貯槽内の薬液量を検出する貯槽内薬液量検出装置を更に具備し、
前記薬液調製手段は、
前記貯槽内薬液量検出装置の検出に基づき、前記調製槽から前記薬液貯槽に補充されるべき薬液量を補充薬液量として設定し、該補充薬液量及び前記補充薬液濃度に基づいて前記供給設定量を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の薬液濃度調整装置。
【請求項3】
薬液には電解質溶液が用いられ、
前記貯槽内濃度検出手段は、薬液の電気伝導度に基づいて薬液の濃度を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬液濃度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−320200(P2007−320200A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153913(P2006−153913)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(594088259)日進油圧工業株式会社 (5)
【出願人】(390039295)株式会社コシイプレザービング (16)
【Fターム(参考)】