説明

薬液等の押出し容器

【課題】 薬液等の保管容器として要求される諸性能を充足しながら、そのままシリンジとして利用することを可能とし、煩雑なシリンジへの薬液等の吸入作業を省略する。
【解決手段】 注射針の取り付けが可能な規格のノズル25を有する容器本体20と、容器本体20のノズル25を密閉するキャップ蓋10と、容器本体20の底面21に一体化した押し子30とを備える。容器本体20は、可撓性の樹脂材料から形成され、その側面22は容易に変形することができる。押し子30を介して容器本体20の底面21を内部に押し込む操作によって、容器本体20の底面21は、容器本体20の側面22を内部に引き込みながら容器本体20内をノズル25側に進行し、収納した薬液等をノズル25から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相の医薬品や化学薬品等を収容して所定期間の保管に耐える気密性の要求を充足するとともに、注射用の薬液を収容する場合においては、ノズルに注射針を装着することによって、そのままディスポーザブル用のシリンジとして利用することを可能とした薬液等の押出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品等の保管容器には、衛生管理等の観点から厳重な気密性が要求される。特に、直接人体に注入する使用態様で用いられる各種の注射用の薬液を保管するための容器においてこの要求が強い。注射用の薬液等は、通常、1回ないし数回使用分量毎に小分けしてガラス製容器または樹脂製容器に収容して保管され、注射時においてシリンジに移し換えて利用される。したがって、注射に際しての衛生管理は、シリンジ側にも要求される。なお、衛生管理意識の向上した今日においては、使用されたシリンジおよび医薬品等の保管容器は、使用毎に廃棄される。
【0003】
薬液を保管容器からシリンジに移し換えるには、周知のように、開封した薬液容器内にシリンジの注射針を浸し、シリンジの押し子を引くことによってシリンジ内を負圧として薬液を吸入する作業による。1回ないし数回分の使用分量を収納した薬液容器は小さくて不安定なものであり、シリンジに薬液を吸入する作業は、片手で薬液容器を押さえながら、他方の片手でシリンジの押し子を引くという特有の操作要領を要する難しい作業内容である。
【0004】
そして、この作業は、同時に多数人に注射を実施する法定の予防注射時や特定時期に集中する流行性の病気に対する治療措置としての注射時には、注射処置に慣れた医師等にとっても時間を要する煩わしい作業である。また、病院に出かけたり、往診を待つ時間的余裕が確保できない重篤な発作性の疾患を患うことにより、発作が起きそうな場合に自分自身で注射をすることを要する人にとっても困難な作業内容となっている。
【0005】
この問題を解決しようとするものとして、従来、プレフィルドシリンジが考案されて市場に提供されている。例えば、次のようなものがある。
【特許文献1】 特開2002−172166号公報
【特許文献2】 特開2002−177395号公報
【特許文献3】 特開2004−97640号公報
【0006】
プレフィルドシリンジは、予めシリンジ筒内に注射用の薬液を充填して保管しておき、注射時に必要とされるシリンジ内への薬液の吸入作業を省略しようとするものである。つまり、プレフィルドシリンジは、薬液の保管容器とシリンジの機能との双方の機能を兼用させることを目的としている。
【0007】
この目的を達成するためにプレフィルドシリンジにおいて通常採用される考え方は、注射時においてシリンジ筒に対して摺動動作をすることとなる押し子の気密性を通常のシリンジに比べてより厳重なものとすることによって、薬液等の保管容器とし要求される気密性を確保しようとする。特許文献2および特許文献3に示すものがこれに属する。この方式に属するプレフィルドシリンジは、摺動部材である押し子によって薬液等を密閉する構造であり、摺動部分のシールを多重化する等の工夫によっていかに気密性を高めてもシリンジ内外の遮断性に構造上の限界があるとともに、シールを多重化することによって押し子の操作が重くなり、注射作業に支障をきたすという問題が避けられない。
【0008】
なお、特許文献1に示すプレフィルドシリンジは、薬液等を密閉構造のカートリッジ容器に収容することによって保管容器に要求される気密性を実現している。このプレフィルドシリンジにおける押し子は中空構造になっており、押し子はシリンジ筒の内部にシリンジ筒と同軸に配置されている。そして、薬液等を充填したカートリッジ容器をシリンジ筒の後端からシリンジ筒内に押し込むことによって、押し子がカートリッジ容器のシールを突き破ってカートリッジ容器内に進入し、カートリッジ容器内の薬液等が押し子の進行方向とは逆方向に押し子内を流れてノズルから排出されるユニークな構造である。したがって、シリンジに対する薬液等の吸入作業を要することなく、しかも、薬液等をカートリッジ容器によって密閉して安全に保管することができる。しかし、シリンジ筒と中空構造の押し子とが同軸に配置されるとともに、これにカートリッジ容器を組み合わせた全体としての構造は極めて複雑であり、成形上の困難さと製造コストの問題がある。特に、シリンジ筒とカートリッジ容器とが分離していることにより、シリンジが薬液等の保管容器を兼ねる機能は、失われている。
【0009】
なお、シリンジにおける押し子の動作に関しては、上記従来の技術における問題とは別に、押し子がシリンジ筒に対して随意の位置で安定に停止することが求められる。これは、シリンジから一旦空気を排出した後、押し子が不用意に後退することによってシリンジ内に空気が吸入され、これが注射施術に際して血管内に注入される危険を阻止するためである。また、押し子を随意の位置で停止させることにより、薬液等の注入量を加減する要求もあるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、容器本体が特殊な変形ないしは折畳動作をすることによって、内部に収容される薬液等をノズルを介して安定に排出させることができるとともに、内部に収容される薬液等が注射用の薬液等である場合おいては、押出し容器をそのままシリンジとしても利用することを可能とし、この際には、押出し容器の変形ないしは折畳み動作が随意の位置で安定に停止し得るものとすることによって、上記従来のプレフィルドシリンジにおいて、押し子等の摺動部材に依存して薬液等を保管することに基づく密閉性の不完全さ、注射操作の不円滑、構造の複雑性等の難点を伴なうことなく、薬液等の保管容器とシリンジとを兼用させることができる薬液等の押出し容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するための手段として、本発明は、次のような構成を採用する。
【0012】
本発明に係る薬液等の押出し容器は、収容した薬液等を排出するノズルを有する容器本体と、容器本体のノズルを密閉するキャップ蓋と、容器本体の底面に一体化した押し子とを備えてなり、容器本体は、可撓性の樹脂材料から形成され、押し子を容器本体の底面側からノズル側に向けて容器本体内に押し込む操作によって、容器本体の底面は、容器本体の側面を内部に引き込みながら容器本体内を上昇し、容器本体内に収納した薬液等をノズルを介して排出することを特徴とする。
【0013】
上記構成に係る薬液等の押出し容器においては、容器本体の開口部分はノズルの部分のみであり、したがって、ノズルにキャップ蓋を装着することで簡単に薬液等の保管容器としての要求を満足するに足る密閉構造とすることができる。また、収容した薬液等を使用する際には、キャップ蓋を取り外して、容器本体の底面に一体化した押し子を押す操作によって、内部の薬液等を強制的に押し出すことが可能である。すなわち、押し子を押すと容器本体の底面を容器本体内部に押し込む向きの力が作用し、容器本体の底面は、容器本体の側面を内部に引き込みながら容器本体内を上昇する。そして、底面によって内部に引き込まれた容器本体の側面は、その時点における容器本体の下端で折り返して未だ内部に引き込まれていない容器本体の側面の内側に重なり、容器本体の側面は、下端側から二重の状態となる。この際、容器本体の側面が二重になる幅は、押し子の操作量の2分の1であり、押し子に押されて容器本体内を上昇する底面が容器本体のノズル側に到達した時点では、側面の高さ寸法の約下側半分が二重の状態となる。このような動作において、容器本体内部を上昇する底面は、一般のシリンジにおける押し子または押し子の先端に取り付けられたピストンのように機能することにより、内部の薬液等のほぼ全量を押し出すことができるのである。この動作の各時点において、容器本体内に引き込まれた側面の一部は、引き込まれていない側面と容器本体内に進入した押し子との間に二つ折りにして挟み込まれた状態となり、押し子を前進させる向きにも後退させる向きにも作用しない。
【0014】
薬液等の押出し容器における容器本体の側面は、容器本体の側面の高さ寸法において、少なくとも下側半分を薄肉に形成することができる。
【0015】
押し子を容器本体内に押し込む際の所要操作力は、容器本体の側面の変形の容易性に大きく依存している。そこで、下側半分を薄肉に形成するとともに、他の部分を相対的に厚く形成することによって、押出し容器全体が軟弱構造となることを防止しながら押し子の操作の円滑を確保することができる。
【0016】
薬液等の押出し容器における容器本体の側面には、容器本体の側面の上側半分に属する位置に注射操作用の指掛けフランジを設けることができる。
【0017】
この場合、容器本体を人差し指と中指とで挟んで親指で押し子を押す注射操作の要領で薬液等を押し出すころが可能であり、指掛けフランジは、人差し指と中指との間で容器本体が滑るのを防止する。
【0018】
薬液等の押出し容器における容器本体と押し子とは、容器本体の底面を共有する状態で一体成形することができる。また、容器本体と押し子とは、個別に成形した後、一体化することもできる。
【0019】
上記前者の構成における薬液等の押出し容器は、成形用の金型が複雑になる反面で、容器本体と押し子と一体化する工程を省略することができるので、大量生産に適する。また、後者の構成における薬液等の押出し容器は、成形工程が容易であるとともに、容器本体と押し子とをそれぞれの機能に応じた材質によって成形することができる利点がある。
【0020】
薬液等の押出し容器における容器本体の側面は、その側面の高さ寸法において、側面の少なくとも下側半分に、リング状の折れ線を刻設することができる。
【0021】
容器本体の側面に刻設されたリング状の折れ線は、押し子を押し込んだ際に容器本体の側面が折り返すように変形するときの契機となるので、押し子の操作が円滑になるとともに、側面が不定形に変形することを防止する。
【0022】
薬液等の押出し容器における容器本体のノズルは、注射針のハブに適合する形状とすることができる。
【0023】
上記構成に係る薬液等の押出し容器は、キャップ蓋を取り外してノズルに注射針を装着すれば、そのままシリンジとして使用することが可能となる。
【0024】
薬液等の押出し容器における前記容器本体のノズルには、注射針を取り付けておくことができる。この場合、容器本体のノズルは、シート状の封止シールによって密閉されるとともに、注射針は、封止シールを介してノズルに装着され、キャップ蓋は、注射針を収納可能なサイズに形成されていることを特徴とする。
【0025】
このような薬液等の押出し容器は、注射針を別途に準備する必要がなく、注射操作に際しては、一旦注射針をノズルから取り外し、ノズルを密閉している封止シールを除去して取り外した注射針をノズルに装着することよって、容器本体内に収容した薬液等を注射針を介して排出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の薬液等の押出し容器は、ノズルを有する容器本体と、容器本体のノズルを密閉するキャップ蓋と、容器本体の底面に一体化した押し子とを備え、押し子を介して容器本体の底面を容器本体内に押し込むように操作可能としたことにより、一般のシリンジの操作と同様の操作要領によって、内部の薬液等のほぼ全量を強制的に押し出すことができるので、ノズルに注射針を取り付けて使用すれば、薬液等をシリンジに移し替える作業を要することなく、そのままシリンジとしても利用することができる。また、容器本体の開口部は、ノズルの部分のみであるから、薬液等の一般的なの保管容器としての密閉性の要求に簡単に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を引用しながら本発明に係る薬液等の押出し容器の実施の形態を説明する。
【0028】
押出し容器100は、いずれも樹脂材料からなるキャップ蓋10と、容器本体20と、押し子30とからなる(図1,図2)。これらの部材に用いる樹脂材料は、収容するものが薬液等であることを考慮して化学的に安定性の高いものを用いる。また、容器本体20に用いる樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン等の柔軟性に富む屈曲疲労に強い材料が好ましい。
【0029】
押出し容器100における容器本体20は、有底円筒状に形成され、その上端部には、ノズル孔27を設けたノズル25が形成されている。本実施の形態に示すノズル25は、容器本体20と一体に成形され、ノズル25の外形には先細りのテーパが設定されている。ノズル25のテーパ率は、所定規格の注射針50のハブ52のテーパ率に一致させてあり、したがって、容器本体20のノズル25には、注射針50を液密に嵌着することができる(図6参照)。なお、ノズル25の基部には、管用の雄ねじ24が形成されている。
【0030】
容器本体20には、密閉用のキャップ蓋10が付属している。キャップ蓋10は、上底面11と側面12と補強フランジ13とからなるキャップ状体であり、上底面11の裏面には、表面が無孔の発泡樹脂からなるシール15が装着されている(図2)。また、補強フランジ13の内周面には、ノズル25の雄ねじ24に対応する雌ねじ14が形成されている。キャップ蓋10のサイズは、容器本体20のノズル25に螺着したときにシール15がノズル25のノズル孔27に圧接されるサイズである。
【0031】
容器本体20の側面22は、目安としては、片手で簡単に変形させることができる程度の厚みT1に設定されている。ただし、本発明の容器本体20は、通常の押出し容器のように押し潰すように変形させるものではない。容器本体20の側面22の上端側は、角を落とすように形成した肩部23を介してノズル25にデザイン良く連続している。また、側面22における肩部23の厚みは、容器本体20の形態維持性を向上させるために他の部分よりも幾分厚く設定されている。
【0032】
容器本体20の底面21には、押し子30が一体成形されている。押し子30は、厚肉に形成した断面逆U字形の中空部材であり、上底面31と側面32と環状の安定化フランジ33とからなる。本実施の形態に示す容器本体20の底面21と押し子30の上底面31とは、共有状態で一体成形され、独立の2部材としては認識できない。なお、容器本体20と押し子30とを別個に成形して接着、溶着等の固着手段によって両者を一体化してもよく、この場合においても一体化した後は、当初より一体成形したものと機能上の差違はない。したがって、材質やコストの観点から決定すれば足りる。
【0033】
容器本体20の側面22の下端縁26は、内側に巻き込むように形成されて容器本体20の底面21に連続し、容器本体20の底面21は、容器本体20の肩部23の形状と相似形に形成されている。
【0034】
押し子30の側面32によって決定される押し子30の外径D2は、容器本体20の内径D1より小さく設定されている。この際の関係は、式D2≦D1−2T1で示すことができる。さらに、式D2≒D1−2T1の関係をも満たすことが好ましい。ただし、押し子30の上底面31寄りの一部分であって容器本体20の側面22の下端縁26に近接する部分には、押し子30の外径D2より幾分外径の小さな縮径部34が形成されている。また、押し子30の高さ寸法H2と容器本体20の側面22の高さ寸法H1との間には、式H1≦2H2を満たす寸法関係が設定されている。
【0035】
上記形態の押出し容器100は、任意の薬液等を収容して直立姿勢を維持することができる。したがって、直立姿勢で多数個を整然と並べて冷蔵装置等に保管しておくことができる。押し子30に設けた安定化フランジ33は、直立姿勢を維持することに寄与している。
【0036】
押出し容器100に収容した薬液等を使用するに当っては、通常の押出し容器のように容器本体20を径方向に押し潰す操作によるのではなく、押し子30を容器本体20の底面21側からノズル25側に向けて容器本体20内に押し込む操作によって、容器本体20の内部に収納した薬液等をノズル25を介して排出することができる(図3)。
【0037】
すなわち、押し子30を押すと容器本体20の底面21が押し子30に押されて容器本体20の内部をノズル25方向に変位する。この際には、容器本体20の側面22は、底面21によって牽引され、内巻きに形成した側面22の下端縁26を契機に底面21に伴なって折り返すように変形し、容器本体20の内部に引き込まれる。引き込まれた側面22は、未だ引き込まれない側面22の内側に重なり合って、側面22は、下端側から徐々に二重状態となる。また、引き込まれた側面22は、容器本体20の内部に進入した押し子30との間に挟み込まれる。したがって、二重状態となった側面22の弾性回復力は、押し子30を押し返す向きには機能し得えず、押し子30は、随意の位置で安定に停止する。この際、側面22に目盛り等を刻設しておけば、薬液等の排出量を目測することもできる。また、この動作においては、押し子30が押し戻されないことにより、容器本体20内に外気が吸入されないので、薬液等の一部使用における残存量の再保管に極めて好都合である。
【0038】
図3は、押し子30を作動限まで押し込んだ状態を示している。このときの容器本体20の側面22の高さ寸法H3は、変形前の高さ寸法H1の略1/2であり、このことから必要な押し子30の高さ寸法H2が決定されているのである。なお、押し子30を最後まで押し込んだときにおいて、容器本体20の底面21を容器本体20の肩部23の形状と相似形に設定したことにより、両者の形状が隙間なく符合するので、収容した薬液等の排出残存量を最少限に抑えることができる。
【0039】
以下、順次に本発明の薬液等の押出し容器の他の実施の形態を上記実施の形態との相異点を中心に説明する(図4ないし図6)。
【0040】
押出し容器100は、容器本体20の側面22の高さ寸法H1において、その側面22の少なくとも下側半分を薄肉に形成することができる(図4)。この際、側面22の下側半分の厚みT1は、上側半分の厚みT2の略1/2の厚みに設定され、下側半分は容易に変形可能であるとともに、上側半分は容器本体20の全体強度の向上に寄与している。この形態における押出し容器100は、押し子30を容器本体20内に押し込む際に、容器本体20の側面22が挫屈するように不定形に変形するおそれを防止しながら、押し子30の所要操作力を小さく設定することができるという特徴を有する。
【0041】
押出し容器100は、容器本体20の側面22の高さ寸法H1において、側面22の上側半分に属する位置に注射操作用の指掛けフランジ28を設けることができる(図4)。指掛けフランジ28は、側面22を取り巻く環状に形成されている。指掛けフランジ28の直近上側を人差し指と中指とで挟み、親指で押し子30を容器本体20内に押し込む注射操作要領による薬液等の排出操作が容易となる。なお、指掛けフランジ28は、容器本体20に対する径方向からの外力に対する補強部材としても機能することができる。また、指掛けフランジ28は、人差し指と中指とに対応して側面22の2箇所に分設することもできる。
【0042】
押出し容器100は、容器本体20の高さ寸法H1において、その側面22の少なくとも下側半分に、リング状の折れ線29,29…を刻設したものとすることができる(図5)。折れ線29,29…は、側面22の下端縁26に近づくに連れて間隔が密になるように多数本刻設されている。各折れ線29は、側面22の厚みT1の略1/2程度に達するV字形またはU字形の細溝であり、したがって、側面22は、折れ線29に沿って曲がり易くなっている。ただし、折れ線29は、極く細いので容器本体20の径方向の強度低下は無視し得る範囲に止まる。折れ線29設けることよって、押し子30の初期操作を軽快なものとすることができる。
【0043】
押出し容器100は、予めノズル25に注射針50を取り付けたものとすることができる(図6)。ただし、ノズル25には、注射針50を装着する前にシート状の封止シール25Sが貼着され、ノズル孔27は密閉されている。封止シール25Sは、外気遮断能の高い樹脂ラミネート金属箔材料であり、高度の塑性変形能力によって相手部材に密着させることができる。そして、注射針50は、封止シール25S上からハブ52を被せるようにしてノズル25に取り付けられている。また、キャップ蓋10は、注射針50を取り付けた状態のノズル25を収納することができるサイズに設定されている。
【0044】
このような形態の押出し容器100は、専ら注射用の薬液を収容する用途に適する。注射針50は、気密性の高いキャップ蓋10によって衛生状態を維持することができ、ノズル25の封止シール25Sは、注射針50金属製のハブ52によって覆われているため保管中に破損するおそれはない。注射操作に際しては、一旦注射針50を取り外して封止シール25Sを除去した上、ノズル25に注射針50を装着することにより、極く簡単に注射の準備を完了することができる。なお、封止シール25Sには、指先で剥離させ易いように撮み部分を形成しておくと便利である。また、封止シール25Sの性質によっては、取り外した注射針50の針先51で数回突き刺して、そのままノズル25に注射針50を装着して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】 押出し容器の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】 上記実施の形態を示す縦断面図である。
【図3】 上記実施の形態における動作説明図である。
【図4】 押出し容器の他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図5】 押出し容器の他の実施の形態を示す側面図である。
【図6】 押出し容器の他の実施の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0046】
100 押出し容器
T1 側面の厚み
T2 側面の厚み
H1 側面の高さ寸法
H2 押し子の高さ寸法
20 容器本体
21 底面
25 ノズル
25S 封止シール
28 指掛けフランジ
30 押し子
50 注射針
52 ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容した薬液等を排出するノズルを有する容器本体と、容器本体のノズルを密閉するキャップ蓋と、容器本体の底面に一体化した押し子とを備えてなり、
前記容器本体は、可撓性の樹脂材料から形成され、前記押し子を容器本体の底面側からノズル側に向けて容器本体内に押し込む操作によって、容器本体の底面は、容器本体の側面を内部に引き込みながら容器本体内を上昇し、容器本体内に収納した薬液等を前記ノズルを介して排出することを特徴とする薬液等の押出し容器。
【請求項2】
前記容器本体の側面の高さ寸法において、容器本体の側面の少なくとも下側半分を薄肉に形成することを特徴とする請求項1に記載の薬液等の押出し容器。
【請求項3】
前記容器本体の側面の高さ寸法において、容器本体の側面の上側半分に属する位置に注射操作用の指掛けフランジを設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬液等の押出し容器。
【請求項4】
前記容器本体と押し子とは、容器本体の底面を共有する状態で一体成形されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれが1項に記載の薬液等の押出し容器。
【請求項5】
前記容器本体と押し子とは、個別に成形した後、一体化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に薬液等の押出し容器。
【請求項6】
前記容器本体の高さ寸法において、容器本体の側面の少なくとも下側半分に、リング状の折れ線を刻設することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の薬液等の押出し容器。
【請求項7】
前記容器本体のノズルは、注射針のハブに適合する形状を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の薬液等の押出し容器。
【請求項8】
前記容器本体のノズルがシート状の封止シールによって密閉されるとともに、該封止シールを介してノズルに注射針が装着され、前記キャップ蓋は、注射針を収納可能なサイズに形成されていることを特徴とする請求項7に記載の薬液等の押出し容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−26373(P2006−26373A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238934(P2004−238934)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(503015503)シゲタ動物薬品工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】